説明

木質バイオマス焚きマイクロガスタービン発電装置とその運転制御方法

【課題】 小容量の木質バイオマス焚きマイクロガスタービン発電装置の構造の簡単化と小型化並びに製造コストの引下げを可能にすると共に、発電効率及びエネルギ利用効率を大幅に高める。
【解決手段】 筒型の装置本体の内部に下方から順に本質バイオマス燃料の燃焼装置と高温熱交換器と排熱回収ボイラ装置の熱交換管とを配設して成る木質バイオマス燃焼装置Aと、マイクロガスタービン装置と圧縮機と発電機とを駆動連結軸を介して連結したマイクロガスタービン発電装置Bとから形成され、前記圧縮機からの圧縮空気流を高温熱交換器へ流通させて木質バイオマス燃料の燃焼により生じた燃焼ガスにより加熱すると共に、高温熱交換器からの高温圧縮空気流をマイクロガスタービン装置へ作動用流体として供給し、当該マイクロガスタービン装置からの排出空気流を前記装置本体内のバイオマス燃料の燃焼装置へ燃焼用空気として供給し、更に、前記排熱回収ボイラ装置からの蒸気を、前記圧縮機からの圧縮空気流内へ供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木屑や間伐材、建設廃木材等の所謂木質バイオマスの燃焼熱を利用してガスタービンの作動用流体を加熱することにより、発電効率のみならず総合的なエネルギー利用効率の大幅な向上を図り、木質バイオマス資源のより有効な利用を可能とした熱・電併給式の木質バイオマス焚きマイクロガスタービン装置とその運転制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、所謂化石燃料の消費を削減する見地からバイオマス資源の利用が積極的に図られている。しかし、バイオマス資源は一般に分散して存在するため、大量のバイオマス資源を集中的に利用することは、収集及び運搬等の点から困難な状態にある。
そのため、バイオマス資源の有効利用を図るには、小規模且つ小容量で、しかも高効率な利用システムの開発が急務となっている。
【0003】
而して、従前の所謂木質バイオマスを燃料とする発電装置では、木屑焚きボイラで蒸気を発生し、その蒸気でタービン発電機を駆動した後、排出蒸気を冷却して復水として回収し、これを再度ボイラに給水すると云う蒸気サイクル(ランキンサイクル)が用いられてきた。
しかし、出力が10〜20MW規模のバイオマス発電では、蒸気の高温高圧化に限界があるうえ、冷却水による熱損失が大きいためにエネルギー利用効率を高める点にも限界があること等により、発電効率は10〜15%の間に溜っている。また、バイオマスの年間処理規模も3万トン〜6万トン程度が限度であり、バイオマス資源の集中が現実に困難なことから、年間処理規模を約6万トン以上とすることは不可能な状態にある。
【0004】
一方、上述の如き蒸気タービン発電サイクルの欠点を克服し、バイオマス発電の高効率化を達成するものとしてガス化発電システムが提案されている。また、このガス化発電システムに使用するためのガス化炉の開発やガス化効率の向上、効率的なタール除去やガスクリーンアップ・プロセスの開発、メタノール合成による液化触媒の開発など、多くの努力がこれ迄に払われて来た。しかし、ガス化プロセスが複雑なうえ、ガスエンジン発電機が安定的に運用できるようなタール除去の有効な手立てが得られないため、実用的な成果が挙がっていないのが実情である。
【0005】
また、こうした内燃機関を利用したガス化エンジン発電システムの欠点を克服する簡便なエンジン発電システムとして、外燃機関であるスターリングエンジンを利用したバイオマス直焚き発電システムが提案されている。スターリングエンジンは外燃機関であるため、各種燃料への対応性に優れているからである。しかし、作動ガス温度が650℃と高くて排ガス損失が大きいことから、発電効率は5〜10%に過ぎない。また、エンジンのボア径とストロークの点から自ら作動ガスの封入容量に限界があり、灰分の多い木質バイオマス燃料に適した形状の加熱部熱交換器を形成することが困難な状態にある。その結果、十分な作動熱量を確保できずに必要な出力性能が得られないか、又は発電効率の低下が避けられないかの何れかの状況にある。
【0006】
ところで、我国のバイオマス資源を利用した熱電供給装置等の分野に於いては、バイオマス利用システムの目標として、「バイオマス処理量20トン/日の設備で発電効率を20%以上に、100トン/日の設備で30%以上に(日本バイオマス戦略)」することが具体的な目標数値として挙げられており、これ等の目標を達成するために、例えば図2に示す如きバイオマスからのガス発生手段20、ガス分配器21、ガスタービン発電装置22及び熱発生手段23等から成るバイオマスを利用した熱電供給装置が開発されている。
【0007】
即ち、図2の熱電供給装置においては、先ず製材残材等のバイオマス資源24をガス発生手段20へ供給し、可燃性ガス24を発生させる。次に、発生させた可燃性ガス24をガス分配器21において分流させ、分流せしめた一方の可燃性ガス24aを高温バグフィルタ25を通して燃焼器26へ供給し、空気流a2の存在下でこれを燃焼させると共に、その燃焼ガスKでもってガスタービン22aを回転駆動させる。また、分流せしめた他方の可燃性ガス24bを供給ノズル27を通して熱発生手段23内へ供給し、空気流a3の存在下でこれを燃焼させると共に、その燃焼熱により加熱管23aを介して水Wを加熱し、蒸気Sを発生させる。更に、圧縮機22b及び発電機22cは、ガスタービン22aの駆動力を利用して回転駆動され、これによって空気流aの圧縮と発電等が行われる。
尚、図2において、28は空気予熱器、23bは空気噴射ノズル、Cはバイオマス資源である。
【特許文献1】特開2005−213631号
【特許文献2】特開2006−000808号
【特許文献3】特開2005−155559号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、図2の熱・電力供給装置においては、ガス発生手段20やガス分配器21、熱発生手段23等を個別に設けているため、装置が必然的に大型となり、設備費の削減が難しいと云う難点がある。
【0009】
また、ガス発生手段20のガス発生効率が総体的に低いため、ガスタービン発電装置22の容量に比較してガス発生手段20の所要容積が大きくなり、設備費が高騰すると共にバイオマスエネルギの利用効率が極めて低いと云う問題がある。
【0010】
更に、ガス発生手段20とガスタービン発電装置22との円滑な連続運転を可能とするためには、高温バグフィルタ25以外に可燃性ガス24a内のタール分を除去するためのガス精製装置やその排水処理設備等が必要となり、設備費及び運転費の削減が図れないと云う問題がある。
【0011】
加えて、図2の如き構成の熱電供給装置は、発電効率やエネルギーの総合利用効率の点から相当大容量の設備でなければ採用が困難であり、バイオマス処理量が1〜10トン/日程度の小規模設備には事実上適用できないと云う問題がある。
【0012】
本発明は、従前のバイオマス資源を利用した熱電供給装置における上述の如き問題の解決を課題とするものであり、複雑で厄介な前処理装置を必要とせず、構造が単純でしかも多くの運転実績に基づく高い信頼性を備えた従前のバイオマス焚き燃焼装置を用いて、バイオマス処理量が1〜10トン/日程度の小規模設備であり乍ら、発電効率20%以上及び総合エネルギー利用効率75%以上の達成を可能とした熱電供給装置を提供するものである。
【0013】
より具体的には、本願発明は、木質バイオマスを燃料とし、日処理量1トン〜10トン又は年間処理量300〜3000トン、発電出力30kW〜300kWの熱電供給装置において、発電効率20%以上及び総合エネルギー利用効率70%以上の高効率な熱電供給を可能とした、木質バイオマス焚きマイクロガスタービン発電装置とその運転制御方法を提供するものであり、作動流体として、バイオマス直焚き蒸気ボイラで発生させた蒸気とマイクロタービンからの圧縮空気とを混合した流体を用いるハイブリッドサイクルのマイクロタービン装置を原動機とし、これに発電機を直結した構成を具備するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記発明を課題を解決するため、請求項1の発明に於いては、筒型の装置本体の内部に下方から順に本質バイオマス燃料の燃焼装置と高温熱交換器と排熱回収ボイラ装置の熱交換管とを配設して成る木質バイオマス燃焼装置Aと、マイクロガスタービン装置と圧縮機と発電機とを駆動連結軸を介して連結したマイクロガスタービン発電装置Bとから形成され、前記圧縮機からの圧縮空気流を高温熱交換器へ流通させて木質バイオマス燃料の燃焼により生じた燃焼ガスにより加熱すると共に、高温熱交換器からの高温圧縮空気流をマイクロガスタービン装置へ作動用流体として供給し、また、当該マイクロガスタービン装置からの排出空気流を前記装置本体内のバイオマス燃料の燃焼装置へ燃焼用空気として供給し、更に、前記排熱回収ボイラ装置で生じた蒸気を前記圧縮機からの圧縮空気流内へ供給する構成としたことを発明の基本構成とするものである。
【0015】
請求項2の発明は請求項1の発明において、高温熱交換器を、上方に位置する低温側熱交換器と下方に位置する高温側熱交換器とを直列状に連結した構成とすると共に、前記排熱回収ボイラ装置で生じた蒸気を低温側熱交換器の入口側と高温側熱交換器の入口側の何れか一方又は両方から圧縮空気流内へ供給する構成としたものである。
【0016】
請求項3の発明は請求項1の発明において、高温熱交換器の圧縮空気流の出口側とマイクロガスタービン装置の作動用流体供給口との間に助燃バーナ装置を設け、当該助燃バーナ装置により高温熱交換器からの高温圧縮空気流を加熱する構成としたものである。
【0017】
請求項4の発明は請求項1の発明において、木質バイオマス燃料を木質ペレットとすると共に木質バイオマス燃料の燃焼装置を流動層式燃焼装置とし、且つ燃焼排ガス内の固形分をサイクロン装置により分離して前記流動層式燃焼装置内へ戻す構成としたものである。
【0018】
請求項5の発明は、請求項1の発明において、排熱回収ボイラ装置で発生した蒸気の一部を外部の蒸気負荷へ供給する構成としたものである。
【0019】
請求項6の発明は、請求項1の発明において、装置本体を水管壁構造とすると共に、当該水管壁の一部を高温熱交換器及び又は排熱回収ボイラ装置の形成部材とする構成としたものである。
【0020】
請求項7の発明は、請求項1に記載の木質バイオマス焚きマイクロガスタービン発電装置において、マイクロガスタービン装置の出力を木質バイオマス燃料の供給量を調整することにより制御すると共に、発電機から外部へ供給する電気出力を調整することにより、前記マイクロガスタービン装置の回転数を所定値に制御することを発明の基本構成とするものである。
【0021】
請求項8の発明は、請求項1に記載の木質バイオマス焚きマイクロガスタービン発電装置において、マイクロガスタービン装置の出力を木質バイオマス燃料の供給量を調整することにより制御すると共に、排熱回収ボイラ装置からの蒸気又は外部からの水を高温熱交換器の加熱管内へ供給することにより、マイクロガスタービン装置へ供給する高温圧縮空気流の温度を一定値に保持することを発明の基本構成とするものである。
【0022】
請求項9の発明は、請求項1記載の木質バイオマス焚きマイクロガスタービン発電装置において、マイクロガスタービン装置の出力を木質バイオマス燃料の供給量を調整することにより制御すると共に、高温熱交換器からマイクロガスタービン装置へ供給する高温圧縮空気流(作動用流体)を助燃バーナ装置により加熱することにより、前記マイクロガスタービン装置へ供給する高温圧縮空気流の温度を一定値に保持することを発明の基本構成とするものである。
【発明の効果】
【0023】
本願請求項1の発明においては、木質バイオマス燃焼装置とマイクロガスタービン発電装置とを有機的に連結し、装置本体内の高温熱交換器を再生用熱交換器としてマイクロガスタービン装置の作動用流体を加熱すると共に、排熱回収ボイラ装置で発生した蒸気を作動用流体内へ供給することにより蒸気をマイクロガスタービン装置の駆動力として有効に活用するようにしている。その結果、従前のガス化装置を備えた木質バイオマス資源を活用する熱・電供給装置に比較して、木質バイオマス焚きマイクロガスタービン発電装置の大幅な小型化と低コスト化が図れると共に、小容量又は小規模の装置であっても、約20%以上の発電効率と約75%以上の高い資源エネルギーの有効利用効率を得ることが可能となり、優れた実用的効用が奏される。
【0024】
また、本願請求項2〜6の発明においては、作動用流体の供給温度を容易に一定に保ったり、分離した固形分の再燃焼を行ったり、外部の蒸気負荷へ蒸気を供給したり、或いは装置の大幅な小型化を図ったりすることが可能となる。
【0025】
更に、本願の請求項7〜9の発明に於いては、木質バイオマス燃料と云う特殊な燃焼特性を有する燃料を使用するにも拘わらず、比較的容易にマイクロガスタービン装置の出力を一定値に保持することができ、安定した木質バイオマス焚きマイクロガスタービン発電装置の運転制御が可能となる。
【0026】
本発明は上述の通り、設備の小型化が図れること、建設コストの引下げが図れること、小容量にも拘わらず高い発電効率とエネルギー利用効率が得られること、及び安定した運転が行えること等の優れた実用的効用を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明に係る木質バイオマス焚きマイクロガスタービン発電装置の全体構成図であり、図1に於いて、Aは木質バイオマス燃焼装置、Bはマイクロガスタービン発電装置、Cは木質バイオマス燃料、Fは化石燃料、Eは空気流、E1は圧縮空気流、E2は高温圧縮空気流(作動用混合流体)、E3は排出空気流、Gは燃焼ガス、G0は燃焼排ガス、Wは給水、Sは蒸気、1は燃焼装置本体、2は燃焼装置、3は高温熱交換器、4は排熱回収ボイラ装置、5は燃料貯留槽、6はサイクロン装置、7はフィルタ装置、8は助燃バーナ装置、9は圧縮機、10はガスタービン装置、11は発電機、12は空気導入管、13は駆動連結軸、14は起動用バーナ装置、15は燃焼空気供給管である。
【0028】
本発明に係る木質バイオマス焚きマイクロガスタービン発電装置は、木質バイオマス燃焼装置Aとマイクロガスタービン発電装置Bとから形成されており、また、前記木質バイオマス燃焼装置Aは、堅筒形の燃焼装置本体1、本体1の下方に設けた燃焼装置2、燃焼装置2の上方に設けた高温熱交換器3、高温燃焼交換器3の上方に設けた排熱回収ボイラ装置4、木質バイオマス燃料の貯留槽5、サイクロン装置6及び起動用バーナ装置14等から構成されている。
【0029】
更に、前記マイクロガスタービン発電装置Bは、圧縮機9、ガスタービン装置10、発電機11と、フィルタ装置7、助燃バーナ装置8及び駆動連結軸13等から構成されており、前記木質バイオマス燃焼装置Aを形成する高温熱交換器3が、所謂従前のマイクロガスタービン装置における再生器の機能を果すものである。
【0030】
尚、前記燃焼装置本体1は、鋼板と耐火材等とから、或いは鋼板と耐火材と水管壁等とから堅形の筒状体に形成されており、且つ水管壁そのものは、通常のボイラ等と同様に排熱回収ボイラ装置4の構成部材の一つを形成している。
【0031】
また、前記燃焼装置2は、多孔板2aと多孔板2aの上方に配設した起動用バーナ装置14と、必要に応じて多孔板2a上に配設した流動媒体(図示省略)と、燃料供給口5bから供給されたペレット状の木質バイオマス燃料C等とから所謂流動層式の燃焼装置に構成されており、ガスタービン装置10から排出された作動用流体(排出空気流E3)が燃焼空気供給管15を通して空気供給口2bから装置本体1内へ供給されることにより、多孔板2a上へ投入されたペレット状木質バイオマス燃料Cが所謂流動層燃焼をし、高温の燃焼ガスGが発生する。
【0032】
更に、前記再生器を形成する高温熱交換器3は、下方に位置する高温側熱交換器3bと上方に位置する低温側熱交換器3aとを直列状に連結することにより構成されており、制御弁V1、V2を通して蒸気ドラム4aから適宜量の蒸気Sが低温側及び又は高温側の熱交換器3a、3bへ供給されることにより、ガスタービン装置10へ供給する高温圧縮空気流E2の温度調整及び作動用流体としての動力の増強が行われる。
また、前記高温側熱交換器3bの出口側の空気管路に設けた助燃バーナ装置8は、同様にガスタービン装置10へ供給する高温圧縮空気流(作動用流体)E2の温度調整に利用されるものであり、主として作動用流体E2の昇温に用いられる。
【0033】
前記流動熱交換式排熱ボイラ装置4は熱交換管4cと蒸気ドラム4aと給水タンク4b等から形成されており、燃焼ガスGoの熱により給水Wが加熱されることにより蒸気ドラム4a内で蒸気Sが発生すると共に、発生蒸気Sは前述の通り低温側熱交換器3a及び又は高温側熱交換器3bの入口側へ圧縮空気流E2の温度調整用及び作動用流体としての動力の向上のために供給される。
【0034】
また、発生蒸気Sが過剰な場合には、制御弁V3を通して必要な蒸気負荷(図示省略)へ蒸気Sの供給が行われることは勿論である。
【0035】
前記サイクロン装置6は主として燃焼排ガスGo内の固形物を分離選別するものであり、分離された燃焼残渣等の固形物は固形物戻し管6c及び固形物戻し口6dを通して、装置本体1内の燃焼装置2上へ供給される。
【0036】
前記木質バイオマス燃料Cとしては、所謂木質ペレットが使用されるが、ペレットのみならず、間伐材や廃木材から成るチップ材であっても良いことは勿論である。本実施形態では比重量0.5kg/l、高位発熱量17.0〜17.5MJ/kg、低位発熱量15.9〜16.0MJ/kg、水分12〜15wt%、固定炭素16〜16.2wt%、揮発分83〜83.4wt%であって、元素成分が炭素43.2wt%、水素5.5wt%、酸素38wt%、残部N、Cl及びS等の木質ペレットが、木質バイオマス燃料Cとして利用されている。
【0037】
次に、本発明の作動について説明する。図1を参照して、マイクロガスタービン発電装置Bの圧縮機9は、フィルター装置7を通して空気流E(約15℃)を吸引し、圧縮空気流E1(約202℃、0.42MPa)を高温熱交換器3へ供給する。
一方、木質バイオマス燃焼装置Aの燃焼装置2では、ガスタービン装置10からの排出空気流(タービン排気ガス)(約582℃)E3が空気供給口2bから装置本体1内へ供給されることにより、燃料貯留槽5、燃料導入管5a、燃料供給口5bを通して本体1内へ供給された木質バイオマス燃料(木質ペレット)Cが流動燃焼され、これにより燃焼ガス(約900℃)Gが生成される。
【0038】
前記高温熱交換器3内の圧縮空気流E1は、上記燃焼ガスGにより加熱され、高温高圧の圧縮空気流(作動用空気流)(約800℃、0.41MPa)E2となり、助燃バーナ装置8を経てマイクロガスタービン装置10へ供給され、これを回転駆動する。
【0039】
尚、マイクロガスタービン装置10の発生動力は駆動連結軸13を介して圧縮機9及び発電機11へ伝達され、これにより電力の発生及び供給(約45kw)が行われる。
【0040】
高温熱交換器3で圧縮空気流E1を加熱(約202℃、0.42MPaから約800℃、0.41MPa)することにより熱を奪われた燃焼ガス(約294℃)Gは、引き続き排熱回収ボイラ装置4の熱交換管4cを介して給水Wを加熱したあと、燃焼排ガス(約125℃)Goとして燃焼排ガス導出口6e及び燃焼排ガス導出管6aを通してサイクロン装置6内へ導出され、固形物の分離が行われる。
尚、固形物を分離したあとの燃焼排ガス(約125℃)Goは大気中へ放散され、また、分離された固形物は固形物戻し管6c及び固形物戻し口6dを経て流動層燃焼装置2内へ戻される。
【0041】
前記排熱回収ボイラ装置4で発生した蒸気Sの全量または一部は、圧縮空気流E1内に噴射されることにより、マイクロガスタービン装置10の作動用ガスの温度調整用並びに作動用ガスの一部として作用し、動力として回収される。その結果、マイクロガスタービン発電装置Bの発電効率は約21%(発電機端)にまで上昇する。また、余剰の蒸気Sはプロセス側へ供給され、温水または蒸気として利用される。この結果、エネルギーの総合利用効率は70〜75%となる。
【0042】
尚、前記図1の実施形態においては、圧縮機9への供給空気流Eの流量0.48〜0.50kg/s、15℃、圧縮比4、総熱入量225kw、ボイラ給水温度60℃、発電電力45kwを夫々ベースにして、前記ヒートバランス上の各数値が求められている。
【0043】
また、前記図1の実施形態は、木質バイオマス燃料Cを燃焼させた場合を示すものであるが、本発明に係る木質バイオマス焚きマイクロガスタービン発電装置は、従前のマイクロガスタービン発電装置と同様の状態下で、即ち木質バイオマス燃焼装置Aを作動させずに運転することも可能なことは勿論である。
この場合には、圧縮機9からの圧縮空気流(約202℃、0.42MPa)E1は高温熱交換器3へ供給され、マイクロガスタービン装置10からの排出空気流(約582℃)E3によって加熱されることにより高温圧縮空気流(約515℃)E2となる。この高温圧縮空気流E2は、その後引き続き助燃バーナ装置8により加熱され、高温高圧の作動用ガス(約800℃、0.41MPa)E2が生成され、これによってマイクロガスタービン発電装置Bが回転駆動されることになる。
【0044】
更に、マイクロガスタービン装置10からの前記排出空気流(約563℃)E3は、高温熱交換器3で熱回収された後、排気ガス(294℃)Goとして排熱回収ボイラ装置4内へ流入する。その結果、マイクロガスタービン発電装置Bの発電効率は約21%(発電機端)となる。更に、前記約294℃の高温を有する排気ガスGoは、排熱回収ボイラ装置4により熱回収され、温水または蒸気として利用される。この結果、総合エネルギー利用効率は約70〜75%となる。
【0045】
次に、本発明に係る木質バイオマス焚きマイクロガスタービン発電装置の運転制御方法について説明する。図1を参照して、マイクロガスタービン装置10の出力調整は燃料投入量を増減することによって行うのが、従前からの基本的な制御システムである。しかし、木質ペレットなどのバイオマス燃料Cの投入量、発熱量及び燃焼速度は常に大きく変動し、一定になることは殆どない。そのため、都市ガスや油などのガスタービン用燃料の場合と異なって、木質バイオマス燃料Cの場合には、熱発生率が一定にならない。即ち、マイクロガスタービン装置10への高温高圧空気流E2の熱入力及び入口温度は時々刻々と変化することになり、当然にマイクロガスタービン装置10の出力も安定しなくなる。
【0046】
そのため、従前のこの種マイクロガスタービン発電装置のように熱入力側の制御のみで出力及び回転数を一定に制御することは至難の技で、現実には不可能に近いことである。
依って、本発明では、燃料投入量の調整によりマイクロガスタービン装置10の出力調整を行うものの、当該出力調整の及ばない範囲においてはガスタービン装置10の回転数は成り行きとする。そして、発電機11を超高速発電機とし、インバーターを介して商用電源出力を得る構成とすると共に、超高速発電機11の出力電圧及び電流、即ち出力電力を調整することによって、マイクロガスタービン装置10の回転数を一定に保つ。
【0047】
また、マイクロタービン装置10の入口のガス量及びガス温度は、前述の通り時々刻々変化するため、助燃バーナ装置8の運転により作動用空気流E2の加熱を行い、高温・高圧空気流E2のタービン入口温度が一定になるように調整をする。
【0048】
更に、高温・高圧空気流E2のタービン入口温度を一定に保持するため、高温熱交換器3を低温側熱交換器3aと高温側熱交換器3bとから形成すると共に、その何れか一方又は両方へ蒸気又は水を供給することにより、高温高圧空気流E2のタービン入口温度が一定となるように調整する。
【0049】
前記図1に示した実施形態に於いては、木質バイオマス燃料Cとして木質ペレット燃料を使用しているが、木質バイオマス燃料Cは木質ペレット燃料のみに限定されるものではなく、木くず、バーク、バガス、籾殻などのバイオマス燃料を含むものである。また、木質以外の廃油、廃プラスチック、RDF、汚泥、都市ごみ等の廃棄物燃料やバイオガス、メタンガス、フレアガス、乾留ガスなどの可燃性低カロリーガス燃料、石油、石炭、LPG、都市ガス等の化石燃料であっても、燃料として使用できることは勿論である。
【0050】
また、前記図1に示した実施形態に於いては、木質バイオマス燃焼装置Aを流動層燃焼装置2を備えた構成のものとしているが、燃焼装置2としては、前記各種の燃料に対して最適な燃焼装置が使用されることは勿論である。例えば、木質ペレットなどバイオマス燃料には、供給される燃料の形状により火格子、流動層、循環流動層、気流などの燃焼装置が、また、廃棄物燃料には、供給される燃料の形状によりバーナー噴霧、火格子、流動層やガス化燃焼などの燃焼装置が、更に、低カロリーガスには、保炎性の高い低カロリー燃焼装置が、化石燃料にはそれぞれの化石燃料に適した燃焼装置が選択されることになる。
【0051】
更に、前記図1に示した実施形態に於いては、高温空気加熱器3を、燃焼ガスGの流れが所謂1パスとなるような構成のものにしているが、バイオマス燃料Cの種類や燃焼装置2の構造に応じて、燃焼ガスGの流れが2パス或いは3パスとなるものであっても良い。
【0052】
同様に、高温熱交換器3を水管壁で構成し、当該高温熱交換器3を構成する各機器全体を水管ボイラ内に内蔵した構成の高温熱交換器3とすることも可能である。
【0053】
加えて、図1の実施形態では、排熱回収ボイラ装置4を流動熱交換式排熱回収ボイラとしているが、当該排熱回収ボイラ装置は如何なる型式もののであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明に係る木質バイオマス焚きマイクロガスタービン発電装置は、一般的な熱電供給装置としての利用以外に、廃棄物処理用としても利用可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施形態に係る木質バイオマス焚きマイクロガスタービン発電装置の全体構成図である。
【図2】従前のガス発生装置を用いた熱・電供給装置の全体構成図である。
【符号の説明】
【0056】
Aは木質バイオマス燃焼装置
Bはマイクロガスタービン発電装置
Cは木質バイオマス燃料
1は燃焼装置本体
2は燃焼装置
2aは多孔板
2bは空気供給口
3は高温熱交換器
3aは低温側熱交換器
3bは高温側熱交換器
4は流動熱交換式排熱回収ボイラ装置
4aは蒸気ドラム
4bは給水タンク
4cは熱交換管
5は燃料貯留槽
5aは燃料導入管
5bは燃料供給口
6はサイクロン装置
6aは燃焼排ガス導出管
6bは燃焼排ガス排出管
6cは固形物戻し管
6dは固形物戻し口
6eは燃焼排ガス導出口
7はフィルタ装置
8は助燃バーナ装置
9は圧縮機
10はマイクロガスタービン装置
11は発電機
12は空気導入管
13は駆動連結軸
14は起動用バーナ装置
15は燃焼空気供給管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒型の装置本体の内部に下方から順に本質バイオマス燃料の燃焼装置と高温熱交換器と排熱回収ボイラ装置の熱交換管とを配設して成る木質バイオマス燃焼装置Aと、マイクロガスタービン装置と圧縮機と発電機とを駆動連結軸を介して連結したマイクロガスタービン発電装置Bとから形成され、前記圧縮機からの圧縮空気流を高温熱交換器へ流通させて木質バイオマス燃料の燃焼により生じた燃焼ガスにより加熱すると共に、高温熱交換器からの高温圧縮空気流をマイクロガスタービン装置へ作動用流体として供給し、また、当該マイクロガスタービン装置からの排出空気流を前記装置本体内のバイオマス燃料の燃焼装置へ燃焼用空気として供給し、更に、前記排熱回収ボイラ装置で生じた蒸気を前記圧縮機からの圧縮空気流内へ供給する構成としたことを特徴とする木質バイオマス焚きマイクロガスタービン発電装置。
【請求項2】
高温熱交換器を、上方に位置する低温側熱交換器と下方に位置する高温側熱交換器とを直列状に連結した構成とすると共に、前記排熱回収ボイラ装置で生じた蒸気を低温側熱交換器の入口側と高温側熱交換器の入口側の何れか一方又は両方から圧縮空気流内へ供給する構成とした請求項1に記載の木質バイオマス焚きマイクロガスタービン発電装置。
【請求項3】
高温熱交換器の圧縮空気流の出口側とマイクロガスタービン装置の作動用流体供給口との間に助燃バーナ装置を設け、当該助燃バーナ装置により高温熱交換器からの高温圧縮空気流を加熱する構成とした請求項1に記載の木質バイオマス焚きマイクロガスタービン発電装置。
【請求項4】
木質バイオマス燃料を木質ペレットとすると共に木質バイオマス燃料の燃焼装置を流動層式燃焼装置とし、且つ、燃焼排ガス内の固形分をサイクロン装置により分離して前記流動層式燃焼装置内へ戻す構成としたことを特徴とする請求項1に記載の木質バイオマス焚きマイクロガスタービン発電装置。
【請求項5】
排熱回収ボイラ装置で発生した蒸気の一部を外部の蒸気負荷へ供給する構成とした請求項1に記載の木質バイオマス焚きマイクロガスタービン発電装置。
【請求項6】
装置本体を水管壁構造とすると共に、当該水管壁の一部を高温熱交換器及び又は排熱回収ボイラ装置の形成部材とする構成とした請求項1に記載の木質バイオマス焚きマイクロガスタービン発電装置。
【請求項7】
請求項1に記載の木質バイオマス焚きマイクロガスタービン発電装置において、マイクロガスタービン装置の出力を木質バイオマス燃料の供給量を調整することにより制御すると共に、発電機から外部へ供給する電気出力を調整することにより、前記マイクロガスタービン装置の回転数を所定値に制御する構成としたことを特徴とする木質バイオマス焚きマイクロガスタービン発電装置の運転制御方法。
【請求項8】
請求項1に記載の木質バイオマス焚きマイクロガスタービン発電装置において、マイクロガスタービン装置の出力を木質バイオマス燃料の供給量を調整することにより制御すると共に、排熱回収ボイラ装置で生じた蒸気又は外部からの水を高温熱交換器の加熱管内へ供給することにより、マイクロガスタービン装置へ供給する高温圧縮空気流の温度を一定値に保持する構成としたことを特徴とする木質バイオマス焚きマイクロガスタービン発電装置の運転制御方法。
【請求項9】
請求項1記載の木質バイオマス焚きマイクロガスタービン発電装置において、マイクロガスタービン装置の出力を木質バイオマス燃料の供給量を調整することにより制御すると共に、高温熱交換器からマイクロガスタービン装置へ供給する高温圧縮空気流(作動用流体)を助燃バーナ装置により加熱することにより、前記マイクロガスタービン装置へ供給する高温圧縮空気流の温度を一定値に保持する構成としたことを特徴とする木質バイオマス焚きマイクロガスタービン発電装置の運転制御方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−101474(P2008−101474A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−282401(P2006−282401)
【出願日】平成18年10月17日(2006.10.17)
【出願人】(000133032)株式会社タクマ (308)
【Fターム(参考)】