説明

木質フロア

【課題】衝撃吸収性の優れた木質フロアを得る。
【解決手段】木質フロア1Aは、木質表面材11Aと、木質表面材11Aの裏面に積層したアスカーC硬度が70度以下かつ厚み2mm以上の衝撃吸収材12Aと、を少なくとも備えた木質床材10が、床下地面に敷き詰められている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は木質フロアに関し、特に衝撃吸収性を向上させることを目的とする木質フロアに関する。
【背景技術】
【0002】
合板や木質繊維板等を基材とし、その表面側に突板のような木質表面材を積層した木質床材は知られており、適宜枚数の木質床材を床下地面に敷き詰めることによって、いわゆる木質フロアとされる。
【0003】
木質フロアでの歩行感を高めるため、あるいは防音性や遮音性を高くして階下への音等の伝播を低減するため、等の目的で、適宜の緩衝材や制振材を、木質床材における中間材あるいは裏面材として備えることも行われる。そのような材料として、例えば、特許文献1では多孔質ゴムを用いることが、特許文献2ではポリ塩化ビニルとアクリロニトリルブタジエンゴムとの混合物に炭酸カルシウムを充填した材料を用いることが、特許文献3では、基材よりも低い剛性である発泡樹脂材料を用いることが記載されている。
【0004】
近年、木質フロアにおいても、人が転倒したとき等に受ける衝撃力を効果的に吸収し緩和することの必要性が認識されるようになり、例えば、JIS A6519「体育館用鋼製床下地構成材」では一般体育館の床の硬さは100G以下であることが望ましいとしている。また、国土交通省独立行政法人自動車事故対策機構によるチャイルドシートアセスメントでは、幼児用チャイルドシートの衝突によって頭部に生じる力の基準として[優]:80G以下、としており、木質フロアでの床の硬さも80G以下であることが推奨される。なお、床の硬さとは、加速度計を取り付けたヘッドモデル(床の硬さの測定装置)を自由落下させ、床に衝突したときに加速度計で測定される加速度Gの最大値を測定して得られる値(衝撃時のG値)であって、前記JIS A6519に測定法等が記載されている。
【0005】
しかし、現在、木質床材の技術分野において、この衝撃時のG値についての検討が十分になされているとはいえず、転倒時等の衝撃力を安全に吸収できるようにした木質床材の開発が求められている。
【0006】
特許文献4には、基材と表面材がともに樹脂材料からなる衝撃吸収床材が記載されている。この衝撃吸収床材は、基材は内在するセルが厚み方向に紡錘状に延びたポリオレフィン発泡体からなるクッション層であり、表面層は樹脂シートであって、衝撃吸収床材の最大加速度G値は100以下であり、発泡体からなるクッション層の厚さは2〜15mmで、発泡倍率は4〜20倍で、内在するセルのアスペクト比Dz/Dxyの平均値は1.1〜4である、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−32255号公報
【特許文献2】特開平9−125669号公報
【特許文献3】特開平11−182007号公報
【特許文献4】特開2002−317548号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、転倒時などに生じる衝撃を木質フロアに吸収させて人体が受ける衝撃を低減することを課題とし、より具体的には、衝撃吸収性を改善して衝撃時のG値を80G以下とした木質フロアを開示することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく、本発明者は多くの実験と研究を継続して行うことにより、木質表面材と、アスカーC硬度と厚みを所要に選定した衝撃吸収材とを、木質フロアの表面から厚さ方向に沿って順次配置することにより、衝撃吸収性に優れた衝撃時のG値が80G以下である木質床材が得られることを知見した。
【0010】
本発明は上記の知見に基づいており、本出願の第1の発明である木質フロアは、木質表面材と、前記木質表面材の裏面に積層したアスカーC硬度が70度以下かつ厚み2mm以上の衝撃吸収材と、を少なくとも備えた木質床材が、床下地面に敷き詰められたことを特徴とする。
【0011】
後の実施例に示すように、第1の発明の木質フロアを構成する木質床材は、衝撃吸収性に優れており、衝撃時のG値は80G以下となる。したがって、第1の発明である木質床材を敷き詰めた木質フロアによれば、転倒時などに生じる衝撃力を木質フロアに効果的に吸収させることができ、衝撃力に対して安全性の高めることができる。
【0012】
本出願の第2の発明である木質フロアは、床下地面に敷設したアスカーC硬度70度以下かつ厚み2mm以上の衝撃吸収材と、該衝撃吸収材の表面に敷き詰められた木質床材と、を少なくとも備えることを特徴とする。
【0013】
第2の発明である木質フロアは、第1の発明のものと、比較して、木質床材と、衝撃吸収材との材料構成は同じであるので、第1の発明と同等の衝撃力の吸収性及び安全性を得ることができる。
【0014】
第1及び第2の発明に係る木質フロアの一態様において、前記床下地面と、前記衝撃吸収材の裏面との間に裏面材をさらに備えることもできる。
【0015】
第1及び第2の発明による木質フロアにおいて、木質表面材は木質系材料からなり、例として、無垢材または合板、PB、LVL、集成材、木質繊維板、これら2種以上を接着積層した複合基材、等が挙げられる。また、木質表面材に裏溝を入れたり、熱処理や蒸気処理、その他、樹脂、熱水、または薬剤等で処理(樹脂含浸を含む)したりしたものでもよい。厚さは2〜13mm程度が好ましい。木質表面材の表面に印刷したり、化粧単板または化粧シートを積層したりしてもよい。木質表面材に用いる木質繊維板には、HDF(高密度繊維板)、インシュレーションボード、MDF、ハードボード等が例として挙げられる。
【0016】
第1及び第2の発明による木質フロアにおいて、前記衝撃吸収材は、アスカーC硬度が70度以下かつ厚み2mm以上であることを条件に任意である。好ましくは、合成樹脂発泡体またはゴム発泡体である。合成樹脂発泡体には、例として、ポリエチレン系樹脂発泡体(例えば、ポリエチレン樹脂発泡体、ポリエチレンビニルアルコール樹脂発泡体、ポリエチレンビニルアセテート樹脂発泡体)、ポリスチレン系樹脂発泡体、ウレタン発泡体、またはこれら2種以上の樹脂を配合した樹脂発泡体等を挙げることができる。ゴム発泡体には、例として、合成ゴム発泡体、天然ゴム発泡体を挙げることができる。本発明者らの実験では、衝撃吸収材のアスカーC硬度が70度を越える場合には、人体を保護するに足る充分な衝撃吸収性能が得られなかった。好ましくは、衝撃吸収材のアスカーC硬度は20度以上70度以下である。20度未満の場合は床材として柔らかすぎて、歩行感が低下する場合がある。また、アスカーC硬度が70度以下であっても、厚みが2mm未満の場合には、所望の衝撃吸収性能が得られない。また、実験では、衝撃吸収材の厚みが18mmを越えても、18mmである場合以上の衝撃吸収性能の改善は見られなかった。従って、厚みが18mmを越えるものはオーバースペックであり、好ましくは衝撃吸収材の厚みは2〜18mmの範囲である。
【0017】
第1及び第2の発明による木質フロアにおいて、用いる場合での裏面材には、インシュレーションボード、MDF、HDF、ハードボード等の木質繊維板、合板、パーティクルボード、配向性ストランドボード(OSB)、LVL、集成材、無垢材、合成樹脂板、金属板、紙等が挙げられる。厚みは1mm以上であることが好ましい。裏面材の最大厚みは、得ようとする木質フロアの全体厚みから導かれる値となる。すなわち、木質フロアの全体厚みから、前記木質表面材と衝撃吸収材の厚みを引いた値として設定される。
【0018】
なお、本発明において、アスカーC硬度とは、高分子計器株式会社製のゴム硬度計で測定するゴム等の硬さの測定値として広く知られている硬さの数値であり、アスカー(高分子計器)C型、SRIS(日本ゴム協会規格)0101に準拠する規格である。このアスカーC硬度を計測する硬度計は、直径5.08mm、最大高さ2.54mmの球形状の押針をスプリング荷重が0度のとき55g、100度のとき855gの力で試料の表面に押付けて変形を与え、試料の抵抗力とスプリングの力がバランスした状態での押針の押込み深さをもとに硬度を測定するものである。測定方法は計器を両手で垂直に保持し、水平に置いた試料の表面に計器の加圧面を押付け、そのときの目盛り板上の指針の位置から読取る。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、衝撃吸収性が向上した木質フロアが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本願の第1の発明に係る形態の木質フロアを構成する木質床材の一例を示す模式図。
【図2】図1に示す木質床材を敷設した木質フロアの一例を示す模式図。
【図3】本願の第2の発明に係る形態の木質フロアの一例を示す模式図。
【図4】実施例および比較例で採用した衝撃時のG値の測定方法を説明するための図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、2つの実施の形態に基づき本発明を説明する。図1は、本願の第1の発明に係る形態の木質フロアを構成する木質床材の一例を示す模式図であり、図2は、図1に示す木質床材を敷設した木質フロアの一例を示す模式図である。図3は、本願の第2の発明に係る形態の木質フロアの一例を示す模式図である。
【0022】
この例において、木質床材10は、木質表面材11Aと、その裏面に積層した衝撃吸収材12Aと、その裏面に積層した裏面材13Aとを備える。各積層界面には従来の木質床材で用いられている適宜の接着剤が塗布されて、全体が積層一体化している。木質床材10の厚みは4〜50mm程度である。
【0023】
木質表面材11Aは、好ましくは木質系材料であり、前記したように、インシュレーションボード、MDF、HDF、ハードボード等の木質繊維板、合板、パーティクルボード、配向性ストランドボード(OSB)、LVL、集成材、無垢材が挙げられる。厚さは2〜13mm程度であり、木質表面材11Aは、さらに、表面が化粧用に印刷する場合や、化粧単板、化粧シート、突板のような表面化粧材11aを表面に積層する場合もある。
【0024】
木質表面材11Aは、衝撃吸収材12Aよりも剛性があり、衝突時の衝撃を衝撃吸収材に分散できるものを選定することが好ましいが、衝撃力により撓む又は破壊することにより、衝撃エネルギを吸収するようなものを選定してもよい。
【0025】
衝撃吸収材12Aは、アスカーC硬度が70度以下かつ厚み2mm以上の合成樹脂発泡体またはゴム発泡体である。また、衝撃吸収材12AのアスカーC硬度は、衝撃吸収材の材質や炭酸カルシウムなどの添加剤または発泡倍率等を変更することにより調整することができる。また、2種以上の樹脂を配合する場合には、その配合割合を変更することで調整できる。
【0026】
裏面材13Aは、厚み1mm以上の、MDF、HDF等の木質繊維板、合板、パーティクルボード、配向性ストランドボード(OSB)、集成材、無垢材、合成樹脂板、金属板、紙等である。前記したように、裏面材13Aは省略することができる。
【0027】
このように構成された木質床材10を、図2に示すように、床下地面に敷き詰めて木質フロア1Aを構築する。この形態による木質フロア1Aでは、木質表面材11Aの裏面にアスカーC硬度が70度以下かつ厚み2mm以上の衝撃吸収材12Aが積層されていることから、衝突時に木質表面材11Aが所要にたわむことができ、衝撃力は木質表面材11Aおよび衝撃吸収材12Aによって吸収される。
【0028】
第2の発明に係る形態は、第1の発明に係る形態に比べて、床下地面に、裏面材13B、衝撃吸収材12B、木質表面材11Bの順に敷設して、木質フロアとした点のみが相違するのであり、これらの材料構成(材質及び厚さ)は、第1の形態と同じである。以下に図3を参照して、相違点のみを詳述する。
【0029】
まず、必要に応じて床下地面もしくは裏面材13Bに接着剤を塗布もしくは両面テープを接着し、床下地面に裏面材13Bが敷設される。次に、裏面材13Bの表面もしくは衝撃吸収材12Bの裏面に接着剤が塗布もしくは両面テープを接着し、裏面材13Bの表面に衝撃吸収材12Bが敷設される。ここで、裏面材13Bを配置しない場合には、床下地面に衝撃吸収材12Bが敷設される。さらに敷設後の衝撃吸収材12Bの表面もしくは木質表面材11Bの裏面に接着剤を塗布もしくは両面テープを接着し、衝撃吸収材12Bの表面に木質表面材11Bを敷き詰めて、木質フロア1Bを構築する。
【0030】
なお、ここでは、床下地面に裏面材13B及び衝撃吸収材12Bを順次敷設したが、裏面材13Bの表面に接着剤を介して衝撃吸収材12Bを予め積層し、この積層された積層体を床下地面に配置してもよい。
【0031】
この形態による木質フロア1Bも、第1の形態と敷設方法は異なるものの、第1の形態と同様の構成となることから、衝撃力は木質表面材11Bおよび衝撃吸収材12Bによって吸収される。
【実施例】
【0032】
以下、実施例と比較例により本発明を説明する。なお、以下、本発明の実施例として、実施例A〜Hでは、JIS A6519に準じて、床下地面を合板下地面として評価したが、本発明の床下地面は、これに限定されるものではない。
【0033】
[実施例A:衝撃吸収材のアスカーC硬度]
以下に示す実施例A1〜A3及び比較例A1では、衝撃吸収材のアスカーC硬度を変化させたときの木質フロアの耐衝撃性の試験を行い、実施例A4〜A8及び比較例A2,A3では、衝撃吸収材のアスカーC硬度を変化させたときの木質フロアの踏み心地の官能試験を行った。
【0034】
[実施例A1]
木質表面材として4mm厚の合板、衝撃吸収材としてアスカーC硬度70度であり6mm厚のポリエチレン樹脂発泡体、裏面材として4mm厚の合板とを接着して、厚み14mmの木質床材とした。さらに、後述する図4に示す303mm×606mm、厚さ11mmの合板下地31の表面を床下地面とし、この床下地面(合板下地31の表面)の中央に、100mm×100mmの木質床材10を敷設して、木質フロアとした。その木質フロアの衝撃時のG値をJIS A6519に準じてヘッドモデルの落下高さを200mmとして測定した。測定に当たっては、図4に示すように、コンクリート床20の上に図示の寸法の木枠(試験台)30を配置し、この木枠30の上部の中央に、木質床材10が位置するように木質床材10を配置して、木質フロア(木質床材10と合板下地31の組合せ)を製作した。木質フロアにおける前記木枠30の中央根太32の中央部に対応する箇所を衝撃点Pとし、そこに測定装置(不図示)が落ちるようにした。
【0035】
[実施例A2]
木質表面材として4mm厚の合板、衝撃吸収材としてアスカーC硬度60度であり6mm厚のポリエチレン樹脂発泡体、裏面材として4mm厚の合板とを接着して、厚み14mmの木質床材とした。この木質床材を実施例A1と同様に合板下地に接着剤を用いて敷設して、木質フロアとした。この木質フロアの衝撃時のG値を実施例A1と同様にして測定した。その結果を表1に示した。
【0036】
[実施例A3]
木質表面材として4mm厚の合板、衝撃吸収材としてアスカーC硬度30度であり6mm厚のポリエチレンビニルアセテート樹脂発泡体、裏面材として4mm厚の合板とを接着して、厚み14mmの木質床材とした。この木質床材を実施例A1と同様に合板下地に接着剤を用いて敷設して、木質フロアとした。この木質フロアの衝撃時のG値を実施例A1と同様にして測定した。その結果を表1に示した。
【0037】
[比較例A1]
木質表面材として4mm厚の合板、衝撃吸収材としてアスカーC硬度90度(70度超え)であり、8mm厚の合成ゴム系樹脂、裏面材として4mm厚の合板とを接着して、厚み16mmの木質床材とした。この木質床材を実施例A1と同様の合板下地に接着剤を用いて敷設して、木質フロアとした。この木質フロアの衝撃時のG値を実施例A1と同様にして測定した。その結果を表1に示した。
【0038】
【表1】

【0039】
[評価]
表1に示すように、木質表面材の裏面にアスカーC硬度が70度を超えた衝撃吸収材を持つ木質フロアと比較して、アスカーC硬度が70度以下である衝撃吸収材を持つ実施例A1〜A3に係る木質フロアは、衝撃時のG値が71G以下と小さくなっており、この結果から衝撃吸収性が向上するといえ、本発明の有効性が示される。また、衝撃吸収材のアスカーC硬度が小さくなると衝撃時のG値も小さくなることがわかる。
【0040】
[実施例A4〜A8]
実施例A1と同じようにして、木質フロアを製作した。実施例A1と相違する点は、木質表面材として0.6mm厚のMDFを用いた点と、それぞれ順にアスカーC硬度が9度、20度、30度、40度、70度の衝撃吸収材を用いた点であり、衝撃吸収材の材質及び厚さは表2に示すとおりである。なお、衝撃吸収材の材質でアスカーC硬度が異なるものは、発泡倍率が相違する。
【0041】
これらの木質フロアに対して、6人の被験者により靴を脱いだ状態での踏み心地の官能試験を行った。踏み心地が良いと感じた場合を1点、踏み心地が悪いと感じた場合を0点とし、6人の被験者の合計点を評価基準とした。この結果を表2に示した。
【0042】
[比較例A2〜A3]
実施例A1と同じようにして、木質フロアを製作した。実施例A1と相違する点は、木質表面材として0.6mm厚のMDFを用いた点と、アスカーC硬度が90度、100度の衝撃吸収材を用いた点であり、これらの材質及び厚さは表2に示すとおりである。これら木質フロアの踏み心地を、実施例A4と同様にして評価した。その結果を表2に示した。
【0043】
【表2】

【0044】
[評価]
表2に示すように、実施例A4の衝撃吸収材のアスカーC硬度が9度の場合は、踏み心地の評価基準である合計点が最も低い。これは、衝撃吸収材が柔らかすぎることによると考えられる。このことから、より好ましくは、衝撃吸収材のアスカーC硬度は、20度以上であり、この場合には、踏み心地が良く、木質フロアの歩行感も良好であると考えられる。
【0045】
[実施例B:木質表面材(合板)の効果]
[実施例B1]
木質表面材として2mm厚の合板、衝撃吸収材としてアスカーC硬度40度であり6mm厚のポリエチレンビニルアセテート樹脂発泡体、裏面材として4mm厚の合板とを接着して、厚み12mmの木質床材とした。この木質床材を実施例A1と同様の合板下地に接着剤を用いて敷設して、木質フロアとした。この木質フロアの衝撃時のG値を実施例A1と同様にして測定した。その結果を表3に示した。
【0046】
[実施例B2]
木質表面材として4mm厚の合板、衝撃吸収材としてアスカーC硬度40度であり6mm厚のポリエチレンビニルアセテート樹脂発泡体、裏面材として4mm厚の合板とを接着して、厚み14mmの木質床材とした。この木質床材を実施例A1と同様の合板下地に接着剤を用いて敷設して、木質フロアとした。この木質フロアの衝撃時のG値を実施例A1と同様にして測定した。その結果を表3に示した。
【0047】
[比較例B1]
木質表面材を積層せずに、衝撃吸収材としてアスカーC硬度40度であり6mm厚のポリエチレンビニルアセテート樹脂発泡体、裏面材として4mm厚の合板とを接着して、厚み10mmの木質床材とした。この木質床材を実施例A1と同様の合板下地に接着剤を用いて敷設して、木質フロアとした。この木質フロアの衝撃時のG値を実施例A1と同様にして測定した。その結果を表3に示した。
【0048】
【表3】

【0049】
[評価]
衝撃吸収材のアスカーC硬度が同じであっても、木質表面材を備えない比較例B1は、合板を木質表面材に持つ実施例B1および実施例B2よりも、衝撃時のG値が大きくなっている。この結果から、本発明による木質フロアにおいて、木質表面材表面の衝撃力は、木質表面材を介して衝撃吸収材に分散され、よりよい効果が得られることがわかる。このことから、木質表面材を有した木質床材を敷き詰めた木質フロアが、有効であることがわかる。
【0050】
[実施例C:木質表面材(木質繊維板)の効果]
[実施例C1]
木質表面材として2mm厚の木質繊維板(MDF)、衝撃吸収材としてアスカーC硬度40度であり6mm厚のポリエチレンビニルアセテート樹脂発泡体、裏面材として4mm厚の合板とを接着して、厚み12mmの木質床材とした。この木質床材を実施例A1と同様の合板下地に接着剤を用いて敷設して、木質フロアとした。この木質フロアの衝撃時のG値を実施例A1と同様にして測定した。その結果を表4に示した。
【0051】
[実施例C2]
木質表面材として4mm厚の木質繊維板(MDF)、衝撃吸収材としてアスカーC硬度40度であり6mm厚のポリエチレンビニルアセテート樹脂発泡体、裏面材として4mm厚の合板とを接着して、厚み14mmの木質床材とした。この木質床材を実施例A1と同様の合板下地に接着剤を用いて敷設して、木質フロアとした。この木質フロアの衝撃時のG値を実施例A1と同様にして測定した。その結果を表4に示した。
【0052】
[比較例C1]
木質表面材を積層せずに、衝撃吸収材としてアスカーC硬度40度であり6mm厚のポリエチレンビニルアセテート樹脂発泡体、裏面材として4mm厚の合板とを接着して、厚み10mmの木質床材とした。この木質床材を実施例A1と同様の合板下地に接着剤を用いて敷設して、木質フロアとした。この木質フロアの衝撃時のG値を実施例A1と同様にして測定した。その結果を表4に示した。
【0053】
【表4】

【0054】
[評価]
衝撃吸収材のアスカーC硬度が同じであっても、木質表面材を備えない比較例C1は、木質繊維板(MDF)を木質表面材に持つ実施例C1および実施例C2よりも、衝撃時のG値が大きくなっている。ここでも、本発明による木質フロアにおいて、木質表面材を備えることで、よりよい効果が得られることがわかる。
【0055】
[実施例D:裏面材なしの場合]
[実施例D1]
木質表面材として4mm厚の合板と、衝撃吸収材としてアスカーC硬度40度であり4mm厚のポリエチレンビニルアセテート樹脂発泡体とを接着して、厚み8mmの木質床材とした。この木質床材を実施例A1と同様の合板下地に接着剤を用いて敷設して、木質フロアとした。この木質フロアの衝撃時のG値を実施例A1と同様にして測定した。その結果を表5に示した。
【0056】
[実施例D2]
木質表面材として4mm厚の合板と、衝撃吸収材としてアスカーC硬度40度であり6mm厚のポリエチレンビニルアセテート樹脂発泡体とを接着して、厚み10mmの木質床材とした。この木質床材を実施例A1と同様の合板下地に接着剤を用いて敷設して、木質フロアとした。この木質フロアの衝撃時のG値を実施例A1と同様にして測定した。その結果を表5に示した。
【0057】
[比較例D1]
厚さ0.2mmの突板、厚さ0.6mmのMDF、厚さ11.2mmの合板からなる厚さ12mmの木質床材を、実施例A1と同様の合板下地に接着剤を用いて敷設した木質フロアに対して、実施例A1と同様にして衝撃時のG値を測定した。その結果を表5に示した。
【0058】
【表5】

【0059】
[評価]
アスカーC硬度が本発明の範囲内(アスカーC硬度40度)にある衝撃吸収材を備えた木質フロアである実施例D1および実施例D2は、実施例A,B,Cのものと裏面材を備えない点で相違している。この実施例D1および実施例D2においても、MDFを中間層に持つ従来の木質フロアと比較して、衝撃時のG値が小さくなっている。このことから、木質表面材の裏面に衝撃吸収材を持つ木質床材を、床下地面に敷き詰めた本発明の木質フロアにおいて、床下地面と衝撃吸収材との間に、合板のような裏面材を備えることは必要な要件ではなく、省略しても所期の目的を達成できることがわかる。
【0060】
[実施例E:衝撃吸収材の厚さ]
[実施例E1]
木質表面材として4mm厚の合板、衝撃吸収材としてアスカーC硬度40度であり2mm厚のポリエチレンビニルアセテート樹脂発泡体、裏面材として4mm厚の合板とを接着して、厚み10mmの木質床材とした。この木質床材を実施例A1と同様の合板下地に接着剤を用いて敷設して、木質フロアとした。この木質フロアの衝撃時のG値を実施例A1と同様にして測定した。その結果を表6に示した。
【0061】
[実施例E2]
木質表面材として4mm厚の合板、衝撃吸収材としてアスカーC硬度40度であり4mm厚のポリエチレンビニルアセテート樹脂発泡体、裏面材として4mm厚の合板とを接着して、厚み12mmの木質床材とした。この木質床材を実施例A1と同様の合板下地に接着剤を用いて敷設して、木質フロアとした。この木質フロアの衝撃時のG値を実施例A1と同様にして測定した。その結果を表6に示した。
【0062】
[実施例E3]
木質表面材として4mm厚の合板、衝撃吸収材としてアスカーC硬度40度であり8mm厚のポリエチレンビニルアセテート樹脂発泡体、裏面材として4mm厚の合板とを接着して、厚み16mmの木質床材とした。この木質床材を実施例A1と同様の合板下地に接着剤を用いて敷設して、木質フロアとした。この木質フロアの衝撃時のG値を実施例A1と同様にして測定した。その結果を表6に示した。
【0063】
[実施例E4]
木質表面材として4mm厚の合板、衝撃吸収材としてアスカーC硬度40度であり14m厚のポリエチレンビニルアセテート樹脂発泡体、裏面材として4mm厚の合板とを接着して、厚み22mmの木質床材とした。この木質床材を実施例A1と同様の合板下地に接着剤を用いて敷設して、木質フロアとした。この木質フロアの衝撃時のG値を実施例A1と同様にして測定した。その結果を表6に示した。
【0064】
[実施例E5]
木質表面材として4mm厚の合板、衝撃吸収材としてアスカーC硬度40度であり18mm厚のポリエチレンビニルアセテート樹脂発泡体、裏面材として4mm厚の合板とを接着して、厚み26mmの木質床材とした。この木質床材を実施例A1と同様の合板下地に接着剤を用いて敷設して、木質フロアとした。この木質フロアの衝撃時のG値を実施例A1と同様にして測定した。その結果を表6に示した。
【0065】
[実施例E6]
木質表面材として4mm厚の合板、衝撃吸収材としてアスカーC硬度40度であり24mm厚のポリエチレンビニルアセテート樹脂発泡体、裏面材として4mm厚の合板とを接着して、厚み32mmの木質床材とした。この木質床材を実施例A1と同様の合板下地に接着剤を用いて敷設して、木質フロアとした。この木質フロアの衝撃時のG値を実施例A1と同様にして測定した。その結果を表6に示した。
【0066】
[比較例E1]
厚さ0.2mmの突板、厚さ0.6mmのMDF、厚さ11.2mmの合板からなる厚さ12mmの木質床材を、実施例A1と同様の合板下地に接着剤を用いて敷設した木質フロアに対して、実施例A1と同様にして衝撃時のG値を測定した。その結果を表6に示した。
【0067】
[比較例E2]
木質表面材として4mm厚の合板、衝撃吸収材としてアスカーC硬度40度であり1mm厚のポリエチレンビニルアセテート樹脂発泡体、裏面材として4mm厚の合板とを接着して、厚み9mmの木質床材とした。この木質床材を実施例A1と同様の合板下地に接着剤を用いて敷設して、木質フロアとした。この木質フロアの衝撃時のG値を実施例A1と同様にして測定した。その結果を表6に示した。
【0068】
【表6】

【0069】
[評価]
表6に示すように、MDFを中間層に持つ従来の木質フロアと比較して、木質表面材の裏面にアスカーC硬度が同じ(ここでは40度)であるが、厚みが2mm〜24mmの範囲の衝撃吸収材を持つ本発明に係る木質フロアは、衝撃時のG値が79G以下と小さくなっており本発明の有効性が示される。また、衝撃吸収材の厚みが大きくなると、それに応じて衝撃時のG値が小さくなっていることもわかる。しかし、衝撃吸収材の厚みが、実施例E5では18mm、実施例E6では24mmであるにもかかわらず、衝撃時のG値はいずれも52Gであった。このことから、18mmを越える厚みの衝撃吸収材を用いることはオーバースペックであることが分かる。さらに、比較例E2では、アスカーC硬度が同じ(40度)衝撃吸収材を用いながら、厚みが2mmの衝撃吸収材を用いた実施例E1と比較して、衝撃時のG値が83Gと大きな値となっている。これは、用いた衝撃吸収材の厚みが1mmであることに起因し、衝撃を衝撃吸収材により吸収しきれなかったと考えられる。このことから、本発明による木質フロアにおいて衝撃吸収材の厚みが2mm以上であることが有効であることがわかる。
【0070】
[実施例F:合成ゴム発泡体]
[実施例F1]
木質表面材として4mm厚の合板、衝撃吸収材としてアスカーC硬度25度であり3mm厚の合成ゴム発泡体、裏面材として4mm厚の合板とを接着して木質床材とした。この木質床材を実施例A1と同様の合板下地に接着剤を用いて敷設して、木質フロアとした。この木質フロアの衝撃時のG値を実施例A1と同様にして測定した。その結果を表7に示した。
【0071】
[比較例F1]
厚さ0.2mmの突板、厚さ0.6mmのMDF、厚さ11.2mmの合板からなる厚さ12mmの木質床材を、実施例A1と同様の合板下地に接着剤を用いて敷設した木質フロアに対して、実施例A1と同様にして衝撃時のG値を測定した。その結果を表7に示した。
【0072】
【表7】

【0073】
[評価]
表7の結果から、本発明による木質フロアにおいて、衝撃吸収材の素材として合成ゴム発泡体も有効であることがわかる。
【0074】
[実施例G及びH:木質フロアの製造方法]
[実施例G1]
木質表面材として、化粧シートを貼着した2.7mm厚のMDFと、衝撃吸収材としてアスカーC硬度70度であり6mm厚のポリエチレン樹脂発泡体とを接着剤を用いて圧着して木質床材とした。実施例A1と同様の合板下地の表面(床下地面)に接着剤を塗布して、この木質床材を床下地面に敷設して、木質フロアとした。この木質フロアの衝撃時のG値を実施例A1と同様にして測定した。その結果を表8に示した。
【0075】
[実施例G2]
実施例G1と同じように、木質フロアを製作した。実施例G1と相違する点は、MDFの厚さを5.8mm厚にした点と、衝撃吸収材としてアスカーC硬度40度であり6mm厚のポリエチレンビニルアセテート樹脂発泡体とを用いた点である。この木質フロアの衝撃時のG値を実施例A1と同様にして測定した。その結果を表8に示した。
【0076】
[実施例G3]
実施例G1と同じように、木質フロアを製作した。実施例G1と相違する点は、MDFの厚さを5.8mm厚にした点と、衝撃吸収材としてアスカーC硬度40度であり9mm厚のポリエチレンビニルアセテート樹脂発泡体とを用いた点である。この木質フロアの衝撃時のG値を実施例A1と同様にして測定した。その結果を表8に示した。
【0077】
[実施例H1]
実施例A1と同様の合板下地の表面(床下地面)に接着剤を塗布し、衝撃吸収材としてアスカーC硬度70度であり6mm厚のポリエチレン樹脂発泡体を載置した。載置した衝撃吸収材の表面に接着剤を塗布し、木質表面材として、化粧シートを貼着した2.7mm厚のMDFを載置し、接着剤を乾燥させて木質フロアとした。この木質フロアの衝撃時のG値を実施例A1と同様にして測定した。その結果を表8に示した。なお、実施例G1及び実施例H1の木質フロアの各部分の材料構成は同じである。
【0078】
[実施例H2]
実施例H1と同じように、木質フロアを製作した。実施例H1と相違する点は、MDFの厚さを5.8mm厚にした点と、衝撃吸収材としてアスカーC硬度40度であり6mm厚のポリエチレンビニルアセテート樹脂発泡体とを用いた点である。この木質フロアの衝撃時のG値を実施例A1と同様にして測定した。その結果を表8に示した。なお、実施例G2及び実施例H2の木質フロアの各部分の材料構成は同じである。
【0079】
[実施例H3]
実施例G1と同じように、木質フロアを製作した。実施例H1と相違する点は、MDFの厚さを5.8mm厚にした点と、衝撃吸収材としてアスカーC硬度40度であり9mm厚のポリエチレンビニルアセテート樹脂発泡体とを用いた点である。この木質フロアの衝撃時のG値を実施例A1と同様にして測定した。その結果を表8に示した。なお、実施例G3及び実施例H3の木質フロアの各部分の材料構成は同じである。
【0080】
【表8】

【0081】
[評価]
表8の結果から、本発明による木質フロアは、実施例G、Hのいずれの施工方法であっても、衝撃吸収性能には違いは見られず、同様の衝撃吸収の効果が得られることが示された。すなわち、第1及び第2の発明による木質フロアの衝撃吸収性能は、その材料構成に起因するものであるといえる。このことから、本願の第1の発明に係る実施例A〜Fまでの木質フロアの材料構成と同じ材料構成で、本願の第2の発明に係る実施例を実施すれば、上述した評価と同じ評価を得ることができるといえる。
以下にさらなる実施例A1〜A3に対する比較例となる試験を行った。
【0082】
[比較例I]
実施例A1と同じように木質フロアの試験体を2体製作した。実施例A1と相違する点は、木質表面材として0.6mm厚のMDF、2.7mm厚のMDFを用い、12mm厚の衝撃吸収材としてそれぞれアスカーC硬度を90度の合成ゴム系樹脂を用いた点である。これら木質フロアの衝撃時のG値を実施例A1と同様にして測定した。
【0083】
【表9】

【0084】
[評価]
表9の結果から、本発明による木質フロアは、木質表面材の材質・厚さを変更したとしても、衝撃吸収材のアスカーC硬度が90度(70度)を超えた場合には、衝撃時のG値が100Gを超えることが再確認された。
【0085】
以上、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【0086】
本発明では、衝撃吸収材の機械的特性(アスカーC硬度)が、発明の効果である衝撃時のG値に寄与するものであり、実施例では、衝撃吸収材の材料の一例として、ポリエチレンビニルアセテート樹脂発泡体を用いたが、同じ厚さで、同じアスカーC硬度のポリエチレン系樹脂(例えば、ポリエチレンビニルアルコール樹脂発泡体)であれば、略同じ衝撃時のG値が得られる。
【符号の説明】
【0087】
1A,1B…木質フロア、10…木質床材、11A,11B…木質表面材、12A,12B…衝撃吸収材、13A,13B…裏面材、20…コンクリート床、30…木枠(試験台)、31…合板下地(床下地)、32…中央根太、A…試験片(木質フロア)、P…衝撃点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質表面材と、前記木質表面材の裏面に積層したアスカーC硬度が70度以下かつ厚み2mm以上の衝撃吸収材と、を少なくとも備えた木質床材が、床下地面に敷き詰められた木質フロア。
【請求項2】
床下地面に敷設したアスカーC硬度70度以下かつ厚み2mm以上の衝撃吸収材と、該衝撃吸収材の表面に敷き詰められた木質表面材と、を少なくとも備えることを特徴とする木質フロア。
【請求項3】
前記衝撃吸収材は、合成樹脂発泡体またはゴム発泡体であることを特徴とする請求項1または2に記載の木質フロア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−190672(P2011−190672A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32837(P2011−32837)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000000413)永大産業株式会社 (243)
【Fターム(参考)】