説明

木質化粧板の製造方法

【課題】木質繊維板と表面化粧材とを水性接着剤を用いて加熱圧着した木質化粧板に発生する反り、表面化粧材の目開きやよれ等を原因とする不良品を低減できる木質化粧板の製造方法を提供する。
【解決手段】木質繊維板またはそれを表面に有する複合材の表面に100℃未満の温度で硬化する水性接着剤を塗布し、その塗布面に表面化粧材を積層して積層体を形成し、前記木質繊維板の表面温度が前記水性接着剤の硬化温度以上100℃未満の範囲内となるように前記積層体を加熱圧着して木質化粧板を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内装建材等に使用される木質化粧板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、木質繊維板またはそれを表面に有する木質繊維板複合材の表面に表面化粧材を積層一体化させた木質化粧板が知られている。木質繊維板は一般的には衝撃力等の外力が加わると欠けや層間剥離が生じやすいという欠点があり、木質化粧板の製造の際、その製造工程で受ける衝撃力によって木質繊維板に部分的に欠けや層間剥離が生じる場合があった。これらは不良品として廃棄されコストアップの一因となっている。
【0003】
そこで、木質繊維板の表面にホルマリン系樹脂以外の高分子化合物を塗布含浸させ、高分子化合物が未硬化の状態でその上に水性接着剤を塗布し、さらに表面化粧材を積層し、熱プレスで加熱圧着して木質化粧板を製造する方法が報告されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3462656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載の木質化粧板の製造方法によれば、木質繊維板の表層部に、高分子化合物による高硬度の樹脂含浸層が形成される。これによって、木質繊維板の耐衝撃強度および剥離強度が向上し、製造工程で受ける衝撃力により木質繊維板に生じる欠けや層間剥離を低減することができる。
【0006】
しかしながら、上記木質化粧板の製造方法においては以下の問題が指摘されている。すなわち、熱プレスによる加熱圧着時、水性接着剤中の水分等が加熱水や水蒸気となり、この加熱水や水蒸気が木質繊維板内において表面化粧材を積層した側から反対の側の部分に向かって浸透する。加熱水や水蒸気の作用は浸透の程度が大きいほど大きくなるため、木質繊維板内において表面化粧材を積層した側の部分では、加熱水や水蒸気の作用によって湿熱負荷およびそれに伴う収縮が反対側の部分よりも大きくなり、木質化粧板に凹反りが発生する。また、水性接着剤の硬化が不十分である場合には、熱プレスの開圧時に表面化粧材の目開きやよれ等が発生する場合がある。反り変動量が大きい場合、目開きやよれ等が発生した場合には不良品として廃棄される。
【0007】
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、木質繊維板と表面化粧材とを水性接着剤を用いて加熱圧着した木質化粧板に発生する反り、表面化粧材の目開きやよれ等を原因とする不良品を低減できる木質化粧板の製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の木質化粧板の製造方法は、木質繊維板またはそれを表面に有する複合材の表面に100℃未満の温度で硬化する水性接着剤を塗布し、その塗布面に表面化粧材を積層して積層体を形成し、前記木質繊維板の表面温度が前記水性接着剤の硬化温度以上100℃未満の範囲内となるように前記積層体を加熱圧着して木質化粧板を製造することを特徴とする。
この木質化粧板の製造方法においては、前記木質繊維板が、中密度繊維板であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の木質化粧板の製造方法によれば、木質繊維板と表面化粧材とを水性接着剤を用いて加熱圧着した木質化粧板に発生する反り、表面化粧材の目開きやよれ等を原因とする不良品を低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、木質繊維板の表面に水性接着剤を塗布し、その塗布面に表面化粧材を積層して積層体を形成する。次いで、この積層体を熱プレス等で加熱圧着することにより一体化して木質化粧板を製造している。
【0011】
積層体の加熱圧着の際には、水性接着剤中の水分等が加熱水や水蒸気となって木質繊維板に作用し、湿熱負荷に伴って木質繊維板に収縮が生じる。木質繊維板において、水性接着剤の塗布面側の部分とその反対面側の部分との収縮量に差があると木質化粧板に反りが発生し、その収縮量の差が大きい場合には木質化粧板に発生する反り変動量が大きくなり不良品となる。加熱水や水蒸気は水性接着剤の塗布面側から反対面側に向かって木質繊維板に浸透する。加熱水や水蒸気の作用は浸透の程度が大きいほど大きくなるため、木質繊維板において水性接着剤の塗布面側の部分の収縮量が反対面側の部分よりも大きくなり、木質化粧板に凹反りが発生する。
【0012】
本発明では、木質繊維板の表面温度が100℃未満になるように積層体を加熱圧着している。これによって、加熱水や水蒸気の作用による湿熱負荷とそれに伴う収縮が低減し、木質繊維板において水性接着剤の塗布面側の部分に生じる収縮とその反対側の部分に生じる収縮との差が小さくなり、木質化粧板に反りが生じにくくなる。また、反りが発生してもその反り変動量は小さく、不良品の発生を低減することができる。これに対し、木質繊維板の表面温度が100℃以上になるような温度で積層体を加熱圧着すると、水蒸気の作用によって木質繊維板が膨潤して繊維の結合が緩み、木質化粧板に発生する反り変動量が大きくなり、不良品の発生を低減することができない。
【0013】
加熱圧着する際の木質繊維板の表面温度の下限値は、水性接着剤の硬化温度である。このため、本発明では100℃未満の温度で硬化する水性接着剤を使用する。木質繊維板の表面温度が水性接着剤の硬化温度以上であれば、水性接着剤を硬化させ、もしくは、凝集し硬化させることができるので、木質繊維板と表面化粧材とを効果的に接着させることができる。これによって、熱プレスによる加熱圧着終了に伴う熱プレスの開圧時において、表面化粧材の目開きやよれ等の発生を低減し、不良品の発生を低減することができる。木質繊維板の表面温度が水性接着剤の硬化温度未満の場合には、木質繊維板と表面化粧材との間の接着硬化が不十分となり、表面化粧材の目開きやよれ等の発生を低減することができず、不良品の発生を低減することができない。
【0014】
水性接着剤を用いて木質繊維板と表面化粧材とを一体化する際、従来は100℃以上、例えば110℃〜120℃の温度で加熱圧着するのが一般的であった。これは、従来使用されてきた水性接着剤の硬化が100℃以上で起こることに起因する。すなわち、水性接着剤中の水分や、表面化粧材が湿式単板である場合にはその単板中の水分を一定状態まで蒸散させる必要があったため、100℃以上の温度での加熱圧着が必要とされていた。本発明では、水分が残っている状態でも硬化、もしくは凝集し硬化が起こる水性接着剤を使用する。つまり、100℃未満の温度で硬化、もしくは凝集し硬化する水性接着剤を使用する。
【0015】
水性接着剤の形態としては、水溶性接着剤、エマルジョン系接着剤等各種の形態ものが考慮される。接着成分としては、例えば、グリオキザール、アミン系化合物、エポキシ系化合物、アジリジン系化合物等を硬化剤とする、ビニル系接着剤、アクリル系接着剤、セルロース系接着剤、ポリエステル系接着剤等が挙げられる。
【0016】
アミン系化合物は、例えば、分子中にアミノ基を2個以上含有するものが挙げられる。具体例としては、ポリエチレンイミン、アミノエチル化アクリルポリマー等が挙げられる。
エポキシ系化合物は、例えば、分子中に2個以上のエポキシ基又はグリシジル基を有するものが挙げられる。具体例としては、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
アジリジン系化合物は、分子中にアジリジニル基を少なくとも2個以上含有するものが挙げられる。
【0017】
ビニル系接着剤は、例えば、酢酸ビニル樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂等を含む接着剤である。アクリル系接着剤は、例えば、アルキル基の炭素数が1〜20程度の(メタ)アクリル酸アルキルエステルをモノマーとして合成したアクリル樹脂、酢酸ビニル・アクリル共重合樹脂、スチレン・アクリル共重合樹脂等を含む接着剤である。セルロース系接着剤は、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシセルロース、カルボキシルセルロース等を含む接着剤である。
【0018】
本発明において用いられる木質繊維板は、例えば、ラワン、カラマツ、スギ等の木質繊維を原料としてこれをボード状に成型したものであり、バインダーとして樹脂成分が含まれていてもよい。木質繊維板の具体例としては、中密度繊維板(MDF)、高密度繊維板(HDF)、インシュレーションボード等が挙げられる。その他、ケナフ繊維、ジュート繊維、合成繊維等を解繊混合し、これを圧締したものなどでもよい。比重や厚さは特に限定されない。本発明の効果をさらに向上させる観点から、またコスト等を考慮すると、MDFが好ましく用いられる。
【0019】
木質繊維板は、強度を大きく損なわない程度に撥水剤が含有されていてもよい。撥水剤が木質繊維板中に含有されていると、木質繊維板と表面化粧材とを加熱圧着する際、木質繊維板への水性接着剤中の水分等の浸透が抑制され、加熱水の作用による湿熱負荷が低減し、結果として反りの発生や反り変動量が抑制されるので好ましい。撥水剤の含有率としては、例えば木質繊維板に対して1wt%以上5%wt%以下とすることができる。
【0020】
撥水剤としては、撥水成分としてパラフィンワックスや脂肪酸アミド等を含有するものが挙げられる。また、アクリル樹脂を含有するものも挙げられる。
パラフィンワックスの具体例としては、石油抽出系や合成系の直鎖炭化水素系パラフィンワックス、分岐炭化水素系パラフィンワックス、これらを空気酸化した直鎖炭化水素系酸化パラフィンワックス、分岐炭化水素系酸化パラフィンワックス等が挙げられる。また、分子量400〜4000程度の低分子ポリエチレンや低分子ポリプロピレン、さらにこれらを空気酸化した酸化ポリエチレンや酸化ポリプロピレン、低分子ポリエチレンや低分子ポリプロピレンの無水マレイン酸部分付加物等も挙げられる。脂肪酸アミドの具体例としては、N,N’−エチレンビスラウリン酸アミド、N,N’−メチレンビスラウリン酸アミド、N,N’−エチレンビスステアリン酸アミド、N,N’−エチレンビスオレイン酸アミド等が挙げられる。アクリル樹脂は、例えば(メタ)アクリル酸エステル等の重合体や共重合体である。(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば炭素数1〜4のものを挙げることができ、具体例として、メチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルの共重合体としては、(メタ)アクリル酸エステルおよびスチレンの共重合体である(メタ)アクリル酸エステル・スチレン共重合体等が挙げられる。
以上の撥水成分は、単独もしくは複数種組合わせて使用することができる。
【0021】
撥水剤は、木質繊維板と表面化粧材とを加熱圧着する際の加熱温度よりも高い溶融温度を有するものが好ましく用いられる。このような溶融温度を有する撥水剤を用いると、木質繊維板と表面化粧材との加熱圧着の際、木質繊維板から撥水剤の流出を効果的に防止できる。また、加熱圧着時には撥水剤が溶融しないので、撥水剤の有する耐熱水性が有効に働く。これにより、木質繊維板に対する水性接着剤中の水分等の浸透がより抑制され、木質繊維板の寸法変化が軽減し、反りの発生や反り変動量がより一層効果的に抑制される。
【0022】
以上の撥水剤は、木質繊維板に水性接着剤を塗布する前に、木質繊維板の表面に塗布することで、木質繊維板に含有させることができる。
【0023】
本発明において用いられる表面化粧材は、例えば、突板、単板、印刷シート、これらの表面に塗装が施されているものなどが挙げられる。表面化粧材として水分を含浸した湿式突板を用いた場合、従来法では、加熱圧着時に木質繊維板の表面側の部分が受ける湿熱負荷が特に大きくなり木質化粧板の反り変動量も大きくなる。本方法によれば、表面化粧材として湿式突板を用いた場合でも、木質化粧板の反りの発生や反り変動量を低減することができる。また、表面化粧材の目開きやよれの発生を抑えることができる。
【0024】
木質化粧板は、木質繊維板の裏面(水性接着剤の塗布面とは反対側の面)側に、合板、パーティクルボード、OSB(Oriented Strand Board)、無機質板等の基材が上記した水性接着剤等の接着剤で接着されているものであってもよい。この木質化粧板は、木質繊維板と基材とを接着して複合化し、複合材とした後、木質繊維板の表面に水性接着剤を塗布し、その塗布面に表面化粧材を積層して加熱圧着することによって製造される。
【0025】
以上のようにして製造された木質化粧板は、反りの程度が小さく、しかも、表面化粧材の目開きやよれの発生が抑えられており、床材や収納建具材等の内装建材等に好ましく用いられる。
【0026】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【実施例】
【0027】
<実施例1−2、比較例1−4>
木質繊維板と基材とを水性ビニル接着剤で接着複合化し複合材とした。この複合材の木質繊維板の表面に水性接着剤を塗布し、その塗布面に表面化粧材を載置してプレス温度を変えて熱プレスで加熱圧着(1MPa、1分保持)して木質化粧板を得た。次いで、木質化粧板の表面をサンダー仕上げし、床用塗装仕上げを施した。加熱圧着する際のプレス温度は表1に示す木質繊維板の表面温度となるように熱プレスのプレス温度を設定した。
【0028】
使用した木質繊維板、基材、表面化粧材、水性接着剤は下記の通りである。なお、用いた2種類の水性接着剤の硬化温度は、予め、木質繊維板の表面に水性接着剤を塗布しその塗布面に表面化粧材を載置してプレス温度を変えて熱プレスで加熱圧着(1MPa、1分保持)して木質繊維板と表面化粧材の接着性を確認することで確認した。その結果、接着剤1は木質繊維板の表面温度90℃以上の温度で硬化する接着剤であり、接着剤2は木質繊維板の表面温度95℃では硬化せず100℃以上の温度で硬化する接着剤であることを確認した。
【0029】
・木質繊維板
MDF、2.7mm厚、比重0.8
・基材
ファルカタ合板、9.0mm厚
・表面化粧材
湿式突板、0.2mm厚、樹種:ブナ、含水率:60%
・水性接着剤
接着剤1(100℃未満の温度で硬化する接着剤)
主剤 酢酸ビニル接着剤
硬化剤 グリオキザール水溶液
接着剤2(100℃以上の温度で硬化する接着剤)
主剤 スチレンブタジエン変性ゴムラテックス接着剤
硬化剤 メラミン樹脂とゴムラテックス混合品
【0030】
得られた木質化粧板の1日後の反り変動量を測定して合否を判定した。また、熱プレスによる加熱圧着において開圧直後の木質化粧板の外観及び塗装仕上げ後の外観を観察し、木質化粧材の目開きやよれの発生の有無を確認した。その結果を表1に示す。また、木質化粧板の反り変動量の大きさ、目開きやよれ発生の有無から木質化粧板の合否を判定し、その結果を表1に総合判定(「○」(合格)、「×」(不合格))として示した。木質繊維板に発生した反り変動量の測定方法および合否の判定基準は下記のとおりである。
【0031】
<反り変動量の測定方法と合否の判定基準>
木質化粧板のサイズは幅30cm×長さ180cmとし、表面化粧材の加熱圧着前後での幅方向の反り変動量を測定した。凸反りを+、凹反りを−とした。反り変動量が−0.5mm以上+0.5mm以下の範囲の場合には幅反り変動が問題となり難いため「○」(合格)とし、その範囲から外れる場合には「×」(不合格)とした。
【0032】
【表1】

【0033】
表1の結果より、100℃未満の温度で硬化する水性接着剤を使用して木質繊維板の表面温度が水性接着剤の硬化温度以上100℃未満の範囲内となるように加熱圧着して製造した実施例1−2の木質化粧板は、反り変動量が抑えられていることが確認できた。また、表面化粧材の目開きやよれの発生が無いことも確認できた。さらに、木質化粧板において平面剥離強度の不具合が見られないことも確認できた。
【0034】
これに対して、100℃以上の温度で硬化する水性接着剤を使用して木質繊維板の表面温度が100℃未満となるように加熱圧着して製造した比較例1の木質化粧板は、水性接着剤の接着硬化が不十分であり、表面化粧材の目開きが発生していることが確認できた。木質繊維板の表面温度が100℃以上となるように加熱圧着して製造した比較例2−4の木質化粧板は、反り変動量が大きくなっていることが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質繊維板またはそれを表面に有する複合材の表面に100℃未満の温度で硬化する水性接着剤を塗布し、その塗布面に表面化粧材を積層して積層体を形成し、前記木質繊維板の表面温度が前記水性接着剤の硬化温度以上100℃未満の範囲内となるように前記積層体を加熱圧着して木質化粧板を製造することを特徴とする木質化粧板の製造方法。
【請求項2】
前記木質繊維板が、中密度繊維板であることを特徴とする請求項1に記載の木質化粧板の製造方法。

【公開番号】特開2013−35252(P2013−35252A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175346(P2011−175346)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】