説明

木質樹脂系床材

【課題】目隙や突き上げといった問題をなくし、容易な施工方法で床材と床材の間の隙間の調節が可能な木質樹脂系床材を提供すること。
【解決手段】矩形板状の木質樹脂系基材上に接着層、強度発現層、化粧層を少なくともこの順に有する木質樹脂系床材において、前記強度発現層はその厚みが0.2〜1.0mmでありその曲げ強さが35〜100MPaであり、前記矩形板状の木質樹脂系基材のそれぞれの角部を除いた四辺で、前記接着層と強度発現層と化粧層とを合わせた層部分(厚み分)が、前記木質樹脂系基材の厚みの半分以上で厚み未満の長さだけ長く設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新築、リフォーム用途に供される木質樹脂系床材に関するものであり、特に建具、壁との収まりに優れ、突き上げ、目隙の心配が無い木質樹脂系床材に関する。
【背景技術】
【0002】
床材内部に軟質層を設け、軟質部を突出させることにより軟質部同士が隣り合う様に施工され、伸縮を緩和するという床材や床材と床材の間に床材と同柄の表面を持った見切り材を挿入することにより突き上げ、目隙を防止する接続方法、床材の裏面にくし目を入れ伸縮を吸収する床材、嵌め合い形状内部に隙間を確保し、施工時にスペーサーを利用して伸縮を吸収できるよう隙間を調整する床材などがある。
【0003】
しかしながら、あらかじめ隙間を規定どおりつける為にスペーサー等を使うと目地部の隙間が大きくなり意匠上問題が残ったり、施工自体が面倒なものとなったりしてしまう。また見切り材を挿入していく方式も床材を1列貼るごとに見切り材が必要となりコスト、作業的に問題が残る。
【0004】
基材裏側にくし目を入れたり、床材内部に軟質材料を使ったりする事で伸縮に対する緩衝効果を狙うにも、施工時に突き付けで施工するため突き上げには効果が出易いものの、縮むことによる目隙に対しては効果が小さく隙間が出来てしまう事があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−191916号公報
【特許文献2】特開平8−42120号公報
【特許文献3】特開平10−8694号公報
【特許文献4】特開平10−183963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、目隙や突き上げといった問題をなくし、容易な施工方法で床材と床材の間の隙間の調節が可能な木質樹脂系床材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はこの課題を解決したものであり、すなわちその請求項1記載の発明は、矩形板状の木質樹脂系基材上に接着層、強度発現層、化粧層を少なくともこの順に有する木質樹脂系床材において、前記強度発現層はその厚みが0.2〜1.0mmでありその曲げ強さが35〜100MPa(JIS K−7171)であり、前記矩形板状の木質樹脂系基材のそれぞれの角部を除いた四辺で、前記接着層と強度発現層と化粧層とを合わせた層部分(厚み分)が、前記木質樹脂系基材の厚みの半分以上で厚み未満の長さだけ長く設けられていることを特徴とする木質樹脂系床材である。
【0008】
またその請求項2記載の発明は、前記接着層が発泡構造を持っていることを特徴とする請求項1に記載の木質樹脂系床材である。
【発明の効果】
【0009】
本発明はその請求項1記載の発明により、木質樹脂系基材より出ている化粧層、強度発現層、接着層を内側に折り込むようにして突き付け施工することで木質樹脂系、基材が伸張した場合は発泡接着層が伸びを緩和し、基材が収縮した場合は折り込まれた化粧層、強度発現層、接着層が強度発現層の復元性を生かして起き上がる為隙間を発生させる事がないという効果を奏する。
【0010】
またその請求項2記載の発明により、施工現場で基材カットして端部の長さ調整をする場合に、接着層が発泡状態であるため基材層のみ切り込みを入れる事で基材層を用意に除去する事が可能であり、残った化粧層、強度発現層、接着層を折り込むことで突き付け施工して端部を収める事が可能である。これは接着層が発泡状態であるため容易に凝集破壊を起こして剥離するという機能を有したものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の木質樹脂系床材の一実施例の断面の構造を示す説明図である。
【図2】本発明の木質樹脂系床材の一実施例の外観を示す説明図である。
【図3】本発明の木質樹脂系床材を施工した状態の断面の構造を示す説明図である。
【図4】本発明の木質樹脂系床材における木質樹脂系基材に切り込みを入れて除去する工程の断面の状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を図面に基づき詳細に説明する。図1に本発明の木質樹脂系床材の一実施例の断面の構造を示す。木質樹脂系基材1上に接着層2、強度発現層3、化粧層4をこの順に有してなる。
【0013】
本発明における木質樹脂系基材1としては、合板、無垢板、樹脂板、中密度繊維板、パーティクルボード、繊維含有樹脂板等が選択でき、コスト、性能に見合った基材を利用すればよい。木質樹脂系基材1と床下地との接着は従来の床施工工法で用いられる手法(ビス止め、接着剤施工、両面テープ施工等)を用いれば良く、特に規定しない。
【0014】
本発明における接着層2としては、前記木質樹脂系基材1と後述する強度発現層3を接着する性能を有しておればよく、特には発泡しているものを用いるのが好適である。発泡していることで凝集破壊しやすい状態にあることが望ましく、具体的には、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂等の反応型接着剤と発泡剤(重曹系発泡剤、アゾジカルボンアミド系発泡剤)を適宜混合し接着、発泡させればよい。発泡自体は化学反応又は熱分解のどちらでも良いが、発泡倍率に関しては5倍〜15倍程度で内部凝集力が適度に低下する事が望ましい。5倍以下だと凝集力低下が低く、均一に剥がれにくくなり、15倍以上だと通常の使用に悪影響をきたす可能性がある。
【0015】
本発明における強度発現層3としては、表面強度、後述する化粧層4のコシを出す為に必要な層であり、曲げ強さがJIS K−7171において35〜100MPaであるポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂や、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂等が選択でき、耐熱性、屈曲性を考慮するとポリプロピレンが好適である。厚みは0.2〜1.0mmが望ましく、0.2mmより薄いと強度が低く、折り曲げに対する復元力が低くなってしまう。1.0mmより厚いと折り曲げが困難になる。
【0016】
本発明における化粧層4としては、突板、印刷紙、印刷フィルム等を用いればよく、特に規定はしないが、非塩化ビニル系の物が良い。また表面に保護層をラミネート又は保護コートを塗工してもよい。保護層に用いるのは透明又は半透明の熱可塑性樹脂が好ましい。貼りあわせ方法はドライラミネート、押出ラミネート等、公知の方法を適宜用いればよい。保護コートは熱硬化又は電子線硬化型の樹脂コートを用いれば良く、艶調整の為の添加剤や耐候性維持の為の光安定剤、紫外線吸収剤を適宜添加しても良い。さらに傷付き性の向上として無機、有機添加剤を添加することも公知である。
【0017】
図2に本発明の木質樹脂系床材の一実施例の外観を示す。矩形板状の木質樹脂系基材のそれぞれの角部を除いた四辺で、前記接着層と強度発現層と化粧層とを合わせた層部分(厚み分)が、前記木質樹脂系基材の厚みの半分以上で厚み未満の長さだけ長く設けられている。これにより図3に示す本発明の木質樹脂系床材を複数隣り合わせに並べて施工した状態の断面でわかるように、前記木質樹脂系基材より長く設けた接着層と強度発現層と化粧層とを合わせた層部分(厚み分)が圧縮された状態で隣同士の木質樹脂系床材の間に挟まれてなる。これにより前記木質樹脂系基材が温度変化により伸縮しても挟まれた接着層と強度発現層と化粧層の伸縮に吸収されるため、木質樹脂系床材が突き上がったり、間隙ができたりすることがない。
【0018】
また、図4に示すように、前記矩形板状の木質樹脂系基材1のそれぞれの角部を除いた四辺で、前記接着層2と強度発現層3と化粧層4を合わせた層部分(厚み分)が、前記木質樹脂系基材1の厚みの半分以上で厚み未満の長さだけ長く設ける方法として、前記矩形板状の木質樹脂系基材1の大きさにあわせて前記接着層2と強度発現層3と化粧層4とを切り合わせてから、前記矩形板状の木質樹脂系基材の四辺を所定寸法のみ切断するという方法があげられるが、この場合、前記矩形板状の木質樹脂系基材1の裏面より切り込みを入れて剥がす際に、接着層2が発泡していると凝集破壊により簡単に木質樹脂系基材1のみを剥がすことが可能となる。
【実施例1】
【0019】
化粧層4として、プライムポリマー(株)製ポリプロピレン樹脂「F−704NP」を押出機で溶融しフィルム成形を行ない0.1mmのフィルムに成形した後、裏面にコロナ処理で表面活性化した後、二液硬化型ウレタンインキを用いたグラビア法で木目柄を逆刷りした。
【0020】
強度発現層3として、プライムポリマー(株)製ポリプロピレン樹脂「E200GV」を厚さ0.5mmのシート状に成形し、前記化粧層4と貼り合せる面にコロナ処理で表面活性化を行い、前記化粧層4の木目柄を設けた面に東洋モートン(株)2液硬化型接着剤「TM−593」をグラビアコート法で10g/m2の厚みで塗工し、強度発現層のコロナ処理面とドライラミネートした。
【0021】
接着層2として、DIC(株)製PUR接着剤「タイホースFH−315」と重曹を5重量部溶融混合させた発泡接着剤を用い、これを前記強度発現層3の化粧層4と貼り合せた面と逆の面に、PURアプリケータで厚さ30μで塗工し、250μの厚みに発泡させた。
【0022】
木質樹脂系基材1として、厚さ12mmの構造用合板を用い、これに前記接着層2の側を貼りあわせた。このようにして得た化粧版を354×1844mmサイズにカットした後、ランニングソーの鋸刃突き出し量を12mmに設定して周囲4辺それぞれ12mmずつ木質樹脂系基材1のみカットし、発泡接着剤層間で剥離、除去した。最後に残った化粧層、強度発現層、接着層のうち、4角の部分を切り欠いて本発明による木質樹脂系床材を得た。
【0023】
<比較例1>
強度発現層の厚みを0.1mmとした以外は実施例1と同様にして木質樹脂系床材を得た。
【0024】
<比較例2>
強度発現層の厚みを1.2mmとした以外は実施例1と同様にして木質樹脂系床材を得た。
【0025】
<比較例3>
四辺にはみ出した部分を作成しなかった以外は実施例1と同様にして木質樹脂系床材を得た。
【0026】
<性能評価>
実施例1、比較例1〜3の木質樹脂系床材をそれぞれ2100×3600の環境試験室に23℃、65%で突き付け施工し、5℃、20%120時間、40℃、60%120時間の環境テストを行ない、施工状態の確認をした。結果を表1に示す。
【0027】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の木質樹脂系床材は新築、リフォーム用途に供される床材として利用可能である。
【符号の説明】
【0029】
1…木質樹脂系基材
2…接着層
3…強度発現層
4…化粧層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形板状の木質樹脂系基材上に接着層、強度発現層、化粧層をこの順に有する木質樹脂系床材において、前記強度発現層はその厚みが0.2〜1.0mmでありその曲げ強さが35〜100MPa(JIS K−7171)であり、前記矩形板状の木質樹脂系基材のそれぞれの角部を除いた四辺で、前記接着層と強度発現層と化粧層とを合わせた層部分(厚み分)が、前記木質樹脂系基材の厚みの半分以上で厚み未満の長さだけ長く設けられていることを特徴とする木質樹脂系床材。
【請求項2】
前記接着層が発泡構造を有していることを特徴とする請求項1に記載の木質樹脂系床材。



【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−248789(P2010−248789A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99449(P2009−99449)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(593173840)株式会社トッパン・コスモ (243)
【Fターム(参考)】