説明

木質系床材

【課題】床暖房フロアの使用時に、木質系基材の裏面側に形成された凹溝の形状が、より床材表面に写り込み難い木質系床材を提供する。
【解決手段】木質系床材1Aは、木質系基材2Aの裏面側から、温水パイプ22を収容する凹溝6Aを形成した床暖房用の木質系床材であり、凹溝6Aの少なくとも表層6aには、保湿剤が含浸されている。好ましくは、木質系基材2Aは、厚さ方向に7プライ2a〜2gを有した合板からなり、凹溝6Aの底面6から木質系基材2Aの厚さ方向Tに、3プライ2a〜2c有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、裏面に線状熱源体を収容する凹溝が形成された木質系床材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、床下地面の上に配設された温水パイプにより床暖房を行う温水式床暖房フロアや、コード状のヒータにより床暖房を行う電気式床暖房フロアが一般的に知られている。例えば、図7aに示す温水式床暖房フロアは、温水パイプユニット20と、これを上方から覆う木質系床材1とを備えている。温水パイプユニット20は、基材シート21の上に所定のパイプパターンに形成された温水パイプ22を配置した構造となっており、温水パイプ22を覆うように上部カバー23が基材シート21に接着されている。
【0003】
一方、そこで用いる木質系床材1は、木質系基材2と、その表面に貼着された化粧材3とを備えており、木質系基材2の裏面側には、上部カバー23で覆われた温水パイプ22を収容できるように、そのパイプパターンに沿った凹溝6が形成されている。
【0004】
この態様において、温水パイプ22に温水を通湯した場合、図7bに示すように、裏面側に形成した凹溝6の形状の応じた僅かな凹みXが、化粧材3の表面に発生することがある。このような凹みXが発生すると、裏面に形成した凹溝6の形状が化粧材3の表面に写り込むようになる。化粧材3の表面の艶が高い場合に、この写り込みは鮮明なものとなり、特に表面が黒色系(濃色系)のものは、その現象が顕著に現れる。このような現象は、コード状ヒータを収容するための凹溝が形成された木質系床材においても、同様に発生する。
【0005】
これを回避するために、床材の長辺に沿った直線部分の凹溝を波形状に湾曲させ、これにより凹溝の筋模様の映り込みを低減した木質系床材が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、木質系基材の凹溝の両側に、該凹溝と並列して細溝を設け、凹溝周りの収縮を吸収する木質系床材(例えば、特許文献2参照)や、木質系基材の凹溝周りの繊維方向を特定して、木質系基材の収縮を抑制する木質系床材(例えば、特許文献3参照)等も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−266614号公報
【特許文献2】特開2005−98527号公報
【特許文献3】特開2004−183432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
写り込みを無くすためになされている従来の提案は、必ずしも十分なものとはいえず、なお改善すべき余地がある。そのような観点から、発明者らは、図7bに示す凹溝6の形状の写り込みについて、さらに研究を行うことにより、この写り込みについて、下記の(1)〜(4)に示すような知見を得た。
(1)温水パイプ22から放熱される熱により、木質系基材2の凹溝周りが加熱される。
(2)凹溝周りの木材の加熱により、加熱された領域およびその近傍に含まれる木材中の水分が、他の領域と比較してより多く蒸発し、木材が局所的に乾燥する。
(3)凹溝周りの木材の局所的な乾燥により、その領域の木材が局所的に収縮する。
(4)凹溝周りの局所的な収縮により、化粧材3の表面に凹溝6の形状に沿った凹みXが僅かに生じる。
【0008】
この知見に照らして検討すると、特許文献1の木質系床材の場合、上記(4)の現象に対処すべく、表面の凹みを目立たなくするような凹溝の構造を採用しているといえる。しかし、このような構造を採ったとしても、上記(3)に示す「凹溝周りの木材の収縮」を抑えない限りは、床材表面の凹みは依然として存在し、これにより写り込みを充分に抑えることができない。
【0009】
特許文献2及び3に記載の木質系床材では、上記(3)の現象に対処すべく、凹溝周りの木材の収縮を吸収又は抑制する構造を採用している。しかし、この場合であっても、凹溝周りの木材の収縮を充分に抑制することが難しく、床材表面への凹溝の形状の写り込みを完全に回避することは難しい。
【0010】
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、床暖房フロアの使用時に、木質系基材の裏面側に形成された凹溝の形状がその表面側に写り込むのを一層確実に阻止することのできる木質系床材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を鑑みて、発明者らは鋭意検討を重ねた結果、床暖房フロアの熱効率を損なわず、床材表面の凹溝の形状の写り込みをより確実に抑えるためには、上記(1)〜(4)に示す一連の現象のうち、(2)の「木材の局所的な水分蒸発の促進とその乾燥」の現象に対して、対策を講じることが最も効果的であると考えた。そこで、発明者らは、(2)の現象をより詳細に解明すべく、さらに繰り返し実験を行った結果、以下の新たな知見を得た。
【0012】
その新たな知見とは、「床暖房フロアの使用開始時期(使用開始から数週間〜数ヶ月)には、凹溝周りの木材の水分蒸発が促進され、凹溝周りの木材が他の領域の木材に比べより早く乾燥するので、床材表面に写り込みが顕著に現れる。しかし、さらなる使用時間の経過とともに、木質系基材の木材の乾燥状態は全体的に均一なものとなり、この写り込みが薄れて行く。したがって、床暖房フロアの使用開始時期において、木質系基材の乾燥スピードを全体的に均一に調整すればよい」というものである。
【0013】
本発明は、この新たな知見に基づくものであり、本発明に係る木質系床材は、木質系基材の裏面側から線状熱源体を収容する凹溝を形成した床暖房用の木質系床材であって、前記凹溝の少なくとも表層には、保湿剤が含浸されていることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、凹溝の少なくとも表層に保湿剤が含浸されているので、その領域には木材中の水分が移ってきて、さらには大気中の水分が吸収されて、含水率が高くなる。これにより、床暖房の使用開始時期において、木質系基材の凹溝周りにおける含水率を他の領域と比較して高くすることができる。
【0015】
床暖房時に線状熱源体からの熱が木質系床材に加えられるが、多くの熱を受ける凹溝周りは前記のように他の領域と比較して高含水率となっており、加熱により多くの水分が蒸発するとしても、凹溝周りとその他の領域での含水率の差を小さくすることができる。したがって、床暖房の使用開始時期において、木質系基材の乾燥状態を全体的にほぼ均一なものとすることが可能となり、凹溝周りでの木材の局所的な収縮は抑えられる。それにより、凹溝の形状が床材表面に写り込むのも抑制することができる。
【0016】
本発明において、木質系基材は、凹溝が形成された状態で、床材としての強度を確保することができるのであれば、無垢材、複数プライを有する合板のいずれであってもよく、合板の場合は、そのプライ数は特に限定されるものではない。
【0017】
しかしながら、より好ましい態様において、本発明の木質系床材に係る木質系基材は、厚さ方向に複数プライを有した合板からなり、前記凹溝の底部から前記木質系基材の表面側の厚さ方向に、少なくとも3プライ有するようにされる。この態様では、1プライおよび2プライのものと比較して、凹溝から床材表面までの強度を高いものとすることができる。さらに、木質系床材全体の強度もまた上がる。
【0018】
凹溝が形成される方向は、木質系床材の長辺方向に沿った方向、この長辺方向と交差する短辺方向に沿った方向、いずれであってもよいが、より好ましい態様としては、凹溝が形成される方向が、木質系床材の短辺方向に沿った方向であり、この場合、前記3プライのうち、少なくとも2プライがその繊維方向を前記長辺方向に沿ったプライである。
【0019】
この態様では、少なくとも2プライの繊維が、凹溝の溝方向と交差するようにして、床材表面側と凹溝側に各々配置されることになるので、凹溝から床材表面までの強度を高め、床材表面の写り込み現象が生じるのをさらに低減することができる。
【0020】
本発明による木質系床材の他の態様では、前記木質系床材の周囲に実部が形成されており、該実部の表層には、保湿剤が含浸されている。この態様では、実部の表層に保湿剤が含浸されているので、凹溝の表層と同様に、実部の木材の含水率を他の領域と比較して高くすることができる。この結果、使用開始時期であっても、実部の木材が他の領域と比較して局所的に乾燥することがないので、実部及びその近傍で上反りが生じるのを効果的に回避することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、床暖房フロアの使用時に、木質系基材の木材全体の乾燥状態の均一化を図ることにより、局所的な木材の収縮を抑え、この結果、木質系基材の裏面側に形成された凹溝の形状が床材表面に写り込むことを、より確実に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る木質系床材の一実施形態の斜視図。
【図2】図1の木質系床材を温水パイプユニットに配置した状態の要部断面図であり、図2aは、複数プライを有した木質系基材を説明するための断面図、図2bは、保湿剤の含浸状態を示す断面図。
【図3】図1に示す木質系床材を裏面側より見た要部斜視図。
【図4】木質系床材の他の実施形態を示した断面図であり、図4aは、各プライ厚さを変更したときの断面図、図4bは、木質繊維板をさらに配置した断面図。
【図5】木質系床材の他の実施形態を示した図であり、図5aは、2つの木質系床材の実部及び凹溝の表層に保湿剤の含浸状態を示した断面図、図5bは、それらを実接合した状態で床暖房を使用した際の断面図。
【図6】従来の2つの木質系床材を実接合した状態で床暖房を使用した際の断面図。
【図7】従来の木質系床材を温水パイプユニットに配置した状態の要部断面図であり、図7aは、床暖房使用前の要部断面図、図7bは、床暖房使用後の要部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る木質系床材の一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。図1は、本発明に係る木質系床材の一実施形態の斜視図であり、図2は、図1の木質系床材を温水パイプユニットに配置した状態の要部断面図であり、図2aは、複数プライを有した木質系基材を説明するための断面図であり、図2bは、保湿剤の含浸状態を示す断面図である。図3は、図1に示す木質系床材を裏面側より見た要部斜視図である。
【0024】
なお、本実施形態に係る木質系床材によって覆われる温水パイプユニットは、図7aに基づき一例を説明した従来知られた温水パイプユニットと同様であってよい。従って、同じ部材には同じ符号を付すことにより、温水パイプユニットの詳細な説明は省略する。
【0025】
図1〜3に示す木質系床材(以下、床材という)1Aは、床暖房用の床材であって、複数プライを有する合板製の木質系基材2Aと、木質系基材2Aの表面に貼り付けられた突板等の化粧材3とを備えている。床材1Aの外周の長辺及び短辺には雄実部4及び雌実部5が形成されている。床材1Aは、これら実部4,5を噛み合わせて床下地材(図示せず)上に順次固定される。
【0026】
図2a及び図3に示すように、木質系基材2Aは第1プライ〜第7プライまでの7層のプライを有する合板から形成され、各プライは相互に繊維方向が直角方向に交差するように積層された合板となっている。
【0027】
表面側の第1プライ2aは床材1Aの短辺方向Wと交差する長辺方向Lの繊維方向S1を有し、その下層の第2プライ2bは短辺方向Wの繊維方向S2を有し、以下、第3プライ2c、第5プライ2e、及び第7プライ2gは短辺方向Wと交差する長辺方向Lの繊維方向S3,S5,S7を有し、第4プライ2d及び第6プライ2fは短辺方向Wの繊維方向S4、S6を有している。
【0028】
なお、各プライ2a〜2gが交差する方向は直角であることに限らず、例えば長辺方向に対して70°〜80°等の適当な角度で交差するものでもよい。さらに、本実施形態では、第2,第4,第6プライ2b,2d,2fの各厚さは、第1,第3,第5,第7プライ2a,2c,2e,2gの各厚さよりも厚くなっているが、これらのプライ厚さは、同じであってもよい。
【0029】
また、木質系基材2Aには、線状熱源体である温水パイプ22を収容する凹溝6Aが、裏面の第7プライ2g側から、長辺方向Lと交差する短辺方向Wに、所定の間隔で複数本形成されている。凹溝6Aは、裏面側より第4〜第7の各プライ2d〜2gを貫通して、第3プライ2cの表面まで掘り込んだ状態で裏面に開口して形成されている。したがって、凹溝6Aの底面6aは、第3プライ2cに位置している。さらに、凹溝6Aは、温水パイプ22(図2a参照)を容易に収容することができるように断面形状が略正方形状となっており、凹溝6Aの底面6aのコーナーはアール形状に仕上げられている。
【0030】
このようにして、木質系基材2Aは、凹溝6Aの底面6aから木質系基材2Aの厚さ方向Tに、第1プライ2aから第3プライ2cまでの3プライ有し、木質系基材2Aの表面を構成する第1プライ2aの繊維方向S1及び凹溝6Aの底面6aを構成する第3プライ2cの繊維方向S3は、長辺方向Lに沿うように形成される。
【0031】
ここで、本実施形態では、図2bに示すように、凹溝6Aの表層6bに、保湿剤が含浸されている。保湿剤は、木材の表層に水を吸収して保持できるものであり、保湿剤としては、例えば、多価アルコール類、糖類、アミノ酸またはその塩、またはアルカリ金属塩等を挙げることができる。
【0032】
より具体的には、多価アルコール類としては、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、またはヘキシレングリコール等を挙げることができる。糖類としては、ショ糖、乳糖、マルトース、マンニトール、エリスリトール、キシリトール、またはマルチトール等を挙げることができる。
【0033】
また、アミノ酸及びその塩としては、乳酸ナトリウム、グリシン、セリシン、メチオニン、ロイシン、チロシン、プロリン、イソロイシン、トリプトファン、ヒドロキシプロリン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、アルギニン、ヒスチジン、またはリジン等を挙げることができる。アルカリ金属塩としては、塩化ナトリウム、塩化リチウム等を挙げることができる。その他にも、例えば、ポリアクリル酸ソーダ、(変性)澱粉などの吸水性の高分子樹脂や、ヒアルロン酸、尿素、またはコラーゲンなどであってもよい。
【0034】
このような保湿剤は、図3に示す木質系基材2Aの裏面側から、凹溝6Aの底面6aを含む表面6cに塗布することにより表面6cから木材の内部に浸透する。これにより、図2bに示すように、凹溝6Aの表層6bに保湿剤を含浸することができる。塗布方法としては、例えば、刷毛塗り、スプレー塗布、ビード塗布などを挙げることができ、保湿剤の粘度に応じて、これらの塗布方法を選定することが好ましい。
【0035】
また、保湿剤は、温水パイプから放熱される熱量に応じて、その塗布量を調整してもよく、例えば、より高温の温水が流れる温水パイプを収容する凹溝に、より多くの保湿剤を塗布してもよい。
【0036】
本実施形態の床材1Aによれば、凹溝6Aの表層6bに保湿剤が含浸されているので、その領域には木材中の水分が移ってきて、さらには大気中の水分が吸収されて、この水分が保持されるので含水率が高くなる。これにより、床暖房の使用開始時期において、木質系基材2Aの凹溝周りにおける含水率を他の領域と比較して高くすることができる。
【0037】
床暖房時に温水パイプ22からの熱が木質系床材1Aに加えられるが、多くの熱を受ける凹溝周りは前記のように他の領域と比較して高含水率となっており、加熱により多くの水分が蒸発するとしても、凹溝周りとその他の領域での含水率の差を小さくすることができる。
【0038】
この結果、床暖房の使用開始時期であっても、木質系基材2Aの木材の乾燥スピードは全体的により均一になり、凹溝周りの局所的な乾燥を抑え、その乾燥状態は時間経過に拘わらず全体的に均一なものとなる。このようにして、凹溝周りの木材の局所的な収縮は抑えられ、凹溝6Aの形状が、化粧材3の表面に写り込み難くなる。
【0039】
さらに、凹溝6Aの底面6aから木質系基材2Aの厚さ方向Tに、3プライ有することにより、図3に示すように、木質系基材2Aの表面及び凹溝6Aの底面6aの繊維方向S1,S3は長辺方向Lに沿うように形成される。これにより、床材1Aの長辺方向Lの剛性は、第1プライ2a及び第3プライ2cにより確保される。さらに、凹溝6Aに温水暖房用の温水パイプ22が収容されて床材1Aが加熱されたとしても、繊維方向が長辺方向Lに沿った第1及び第3プライ2a,2cの収縮は小さく、凹溝部分の表面側からの写り込みが、さらに見えにくくなる。
【0040】
この理由から、保湿剤がその表層6bに含浸される凹溝6Aは、木質系基材2Aの長辺方向Lと交差する短辺方向Wに形成され、かつ、凹溝6Aの底面6aから木質系基材2Aの厚さ方向Tにある3プライのうち、2プライは、繊維方向が長辺方向Lに沿ったプライであることがより好ましい。
【0041】
よって、図4(a)に示す床材1Bように、木質系基材2Bの各プライの層厚さを選定することにより、凹溝6Bは、第3プライ2cを僅かに掘り込んだ位置まで達していてもよく、この場合も、凹溝6の底面6aは第3プライ2c内に位置している。
【0042】
また、図4(b)に示す床材1Cように、木質系基材2Cの表面に木質繊維板8を接着積層して、さらに、その上に化粧材3を接着してもよい。木質繊維板8により、化粧材3の表面のくぼみの低減等、耐傷性を付与することができる。なお、この実施形態において、木質繊維板は1層のみ積層した例を示したが、木質繊維板を複数層形成してもよい。
【0043】
床材の寸法の一例として、木質繊維板を含まない場合、表面の化粧材(突板)の厚さを0.3mm、第1プライ〜第7プライまでの各プライの厚さを、順次1.2mm,2.5mm,1.2mm,2.5mm,1.2mm,2.5mm1.2mmとし、木質系基材の厚さを、計12.3mmとする。
【0044】
一方、木質繊維板を含む場合、表面の化粧材(突板)3の厚さを0.3mm、木質繊維板の厚さを0.8mmとする。第1プライ〜第7プライまでの各プライ厚さを、順次、(1)1.3mm、1.9mm×5、1.3mm、の計12.0mm、または(2)1.3mm、2.0mm、1.7mm、2.0mm、1.7mm、2.0mm、1.3mmの計12.1mmとする。
【0045】
このような寸法の木質系基材を、厚さ12.0mmとなるように両面をサンディングし、裏面に幅及び深さが7.7mmの凹溝を設けた場合には、0.4〜0.5mmの厚さの第3プライが残り、凹溝の底面から木質系基材の厚さ方向に、少なくとも3プライ有する木質系基材とすることができる。
【0046】
また、図5aに示すように、床材1Dは、さらに、雄実部4A及び雌実部5Aの表層4a,5aに保湿剤を含浸してもよい。雄実部4A及び雌実部5Aの少なくとも表層4a,5aに保湿剤が含浸されているので、保湿剤を含浸した凹溝の表層と同様に、雄実部4A及び雌実部5Aの木材の含水率を他の領域と比較して高くすることができる。
【0047】
この結果、床暖房の使用開始時期であっても、雄実部4A及び雌実部5Aの木材は、局所的に乾燥することがないので、図6に示すこれまでの雄実部4及び雌実部5の上反りを回避することができ、図5bの如く、接合部分近傍に反りのほとんどない床表面にすることができる。特に、凹溝と平行した短辺方向Wの雄実部4及び雌実部5に保湿剤を塗布することにより、長辺方向Lの反りを抑えることができ、効果的である。
【0048】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。例えば、前記の実施形態では7層のプライを有する例を示したが、9プライや11プライの合板でもよいことは勿論であり、偶数プライを有するものであってもよい。
【0049】
また、本実施形態では、凹溝に収容される線状熱源体として温水パイプを用いた温水床暖房用の木質系床材を例示したが、線状熱源体としてコード状ヒータを用いた電気式床暖房用の木質系床材であってもよい。また、実部と凹溝の表層に含浸させる保湿剤は、異なる保湿剤であってもよい。
【符号の説明】
【0050】
1A〜1D…木質系床材、2A〜2C…木質系基材、2a〜2g…第1〜第7プライ、4A:雄実部、5A:雌実部、6A〜6C…凹溝、6a…凹溝の底面、6b…凹溝の表層、6c…凹溝の表面、20…温水パイプユニット、21…基材シート、22…温水パイプ、23…上部カバー、L…長辺方向、W…短辺方向、S1〜S7…繊維方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質系基材の裏面側に線状熱源体を収容する凹溝を形成した床暖房用の木質系床材であって、前記凹溝の少なくとも表層には保湿剤が含浸されていることを特徴とする木質系床材。
【請求項2】
前記木質系基材は厚さ方向に複数プライを有した合板からなり、前記凹溝の底部から前記木質系基材の表面側の厚さ方向に、少なくとも3プライ有することを特徴とする請求項1に記載の木質系床材。
【請求項3】
前記木質系床材の周囲には実部が形成されており、該実部の表層には保湿剤が含浸されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の木質系床材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−137344(P2011−137344A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298709(P2009−298709)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000000413)永大産業株式会社 (243)
【Fターム(参考)】