説明

木質系成形板の製造方法

【課題】接着剤として比較的安価な非乳化型の(すなわち、水で乳化することが困難な汎用の)有機イソシアネート系化合物をそのまま使用しているにもかかわらず、均質で接着力と耐久性に優れた木質系成形板の製造方法を提供すること。
【解決手段】木質材に、粒径が100μm未満である微粒子状の非乳化型の有機イソシアネート系化合物及び水を別々に吹き付け塗布することを特徴とする木質系成形板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、接着剤として有機イソシアネート系化合物を使用したパーティクルボード、MDF等の木質系成形板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】接着剤として有機イソシアネート系化合物を使用して得られるパーティクルボード、MDF等の木質系成形板は、従来の尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、尿素メラミンホルムアルデヒド樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂等の接着剤を使用した場合に比べて接着剤の使用量が少なくてすみ、しかも接着力、耐久性に優れた特性を有していることはよく知られている。また、ホルムアルデヒドの放出がないという利点も有している。
【0003】このような木質系成形板の製造に当たっては、有機イソシアネート系化合物は水性エマルジョンとして使用するのが一般的であり、例えば、水で乳化可能な有機イソシアネート系化合物と水とをスタチックミキサー等を通して連続的に乳化させて、これを木材チップや木材繊維に塗布する方法や、汎用の有機イソシアネート系化合物と水とを界面活性剤の存在下で乳化させて塗布する方法がとられていた。しかしながら、このような水性エマルジョンは安定性が悪く、混合機やノズル中で硬化して目詰まりを起こしやすく、たびたび清掃する必要があるという問題があった。更に、水で乳化可能な有機イソシアネート系化合物や界面活性剤は高価であり、コストアップの要因にもなるという問題もあった。
【0004】これは、有機イソシアネート系化合物をそのまま使用したのでは、塗布量が少ないことから、木材チップや木材繊維に均一に塗布することが困難であり、そのため均質で優れた性能を有する木質系成形板を製造することが困難であるという事情によるものであった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述した問題点を解決して、接着剤として比較的安価な非乳化型の(すなわち、水で乳化することが困難な汎用の)有機イソシアネート系化合物をそのまま使用しているにもかかわらず、均質で接着力と耐久性に優れた木質系成形板の製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、有機イソシアネート系化合物と水とを別々に微粒子状にして吹き付け塗布した場合に、上記問題が解決しうること、また、特別な二重構造を持つノズルを用いれば、容易に有機イソシアネート系化合物を微粒子状で吹き付け塗布することができることを見いだし本発明に到った。
【0007】すなわち、本発明は、下記■から■をその要旨とするものである。
■ 木質材に、粒径が100μm未満である微粒子状の非乳化型の有機イソシアネート系化合物及び水を別々に吹き付け塗布することを特徴とする木質系成形板の製造方法。
■ 非乳化型の有機イソシアネート系化合物がポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート(ポリメリックMDI)であることを特徴とする■記載の木質系成形板の製造方法。
■ 少なくとも有機イソシアネート系化合物の吹き付け塗布用のノズル及び水の吹き付け塗布用のノズルを各々1個以上装着したブレンダー内で、有機イソシアネート系化合物と水を木質材に吹き付け塗布することを特徴とする■又は■記載の木質系成形板の製造方法。
■ 有機イソシアネート系化合物の吹き付けにエアーアトマイジングノズルを使用することを特徴とする■記載の木質系成形板の製造方法。
【0008】
【実施の形態】以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明の木質系成形品は、通常のパーティクルボード、MDF等の木質系成形板の製造と同様に、原材料である木質材としてのリグノセルロース材の小片若しくは繊維状物、例えば、木材チップ、木材繊維等に接着剤を塗布したものをコール盤上にフォーミングし、次いで熱圧プレスする方法で製造するのであるが、その際、本発明においては、接着剤として非乳化型の有機イソシアネート系化合物を使用し、当該非乳化型の有機イソシアネート系化合物を、水との水性エマルジョンにしたり、希釈剤で希釈することなく木質材に吹き付け塗布するのである。
【0009】したがって、本発明においては有機イソシアネート化合物に単官能のアルコールを付加させた乳化可能な有機イソシアネート化合物ではなく、安価に入手可能な汎用の有機イソシアネート化合物として販売されている非乳化型の有機イソシアネート系化合物をそのまま使用することを意味している。このような有機イソシアネート化合物としては、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックMDI、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート及びポリイソシアネート類のほか、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、リジンメチルエステルジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート及びポリイソシアネート類、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート等の脂環式イソシアネート及びポリイソシアネート類が挙げられるが、本発明においては、毒性や価格の面からポリメリックMDIが特に好ましい。
【0010】更に、本発明においては、上述した有機イソシアネート系化合物を木質材に吹き付け塗布するにあたって、当該有機イソシアネート系化合物の粒径が100μm以下の微粒子状にすることが必要である。吹き付け塗布の際の粒径が100μmを越えると木質材に対して使用する有機イソシアネート系化合物の使用量が少ないため均一に塗布することが困難となり、安定した品質の木質系成形品が得られなくなるので好ましくない。また、吹き付け塗布するにあたって有機イソシアネート系化合物と水とは別々に吹き付け塗布する必要がある。有機イソシアネート系化合物と水を混合しても有機イソシアネート系化合物が非乳化型である関係上、水性エマルジョンとはならずに各々が相分離して、有機イソシアネート系化合物の粒径が却って大きくなり均一に塗布することが困難になるので好ましくない。
【0011】有機イソシアネート系化合物の塗布量は、目標とする木質系成形板の種類によっても異なるが、表層部分で木質材に対して概ね5〜10wt%、芯層部分で概ね3〜6wt%程度使用するのが一般的であるが、芯層には接着剤として有機イソシアネート系化合物を使用し、表層には従来から使用されている尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、尿素メラミンホルムアルデヒド樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂等を使用することももちろん可能である。
【0012】本発明の木質系成形板の製造方法においては、例えば、通常のパーティクルボード、MDFの製造と同様に、フレーカー、リファイナー等によってチップ状、或いは繊維状とした各種木質材を乾燥した後、内部に有機イソシアネート系化合物用のノズルと水用のノズルを各々少なくとも1個以上装着したブレンダーに搬送し、当該ブレンダー内で撹拌しながら有機イソシアネート系化合物と水を別々に吹き付け塗布するのである。この際、有機イソシアネート系化合物用のノズルとしては、通常市販されているエアーアトマイジングノズルをそのまま使用することができる。このノズルを用いて加圧給液システムを用いると、液体の有機イソシアネート系化合物は加圧されてノズルに送られ、有機イソシアネート系化合物と圧縮空気が内部混合されて完全に霧化され、有機イソシアネート系化合物を容易に100μm以下の粒径の微粒子にして、木質材に均一に塗布することが可能となる。
【0013】一方、木質材に対する水の吹き付け塗布方法については特に制限はないが、上述した有機イソシアネート系化合物の吹き付け塗布方法と同様にすることが好ましい。通常、これらの吹き付け塗布は、木質材を撹拌・搬送する機能、及び有機イソシアネート系化合物の吹き付け塗布用のノズル及び水の吹き付け塗布用のノズルを各々1個以上装着したブレンダー装置を使用することによって達成される。また、水の吹き付け塗布量は、接着剤として使用する有機イソシアネート系化合物の硬化、及び熱圧プレス時に水蒸気となって全体を均一に加熱するのに必要な量であれば良く、通常使用される塗布量をそのまま適用することができる。このようにして、接着剤が吹き付け塗布され、しかも適当な含水率を有する木質材を、従来と同様にマット状にフォーミングして熱圧プレスすることによって本発明の木質系成形板が得られる。
【0014】
【実施例】実施例1芯層用のチップを市販のエアーアトマイジングノズルを6個装着し、3個のノズルにはポリメリックMDI及び2barの圧縮空気を供給し、残りの3個のノズルには水と2barの圧縮空気を供給するようにした搬送撹拌型のブレンダーを用いて、ポリメリックMDIが4.5wt%、マット含水量が9wt%となるように吹き付け塗布を行った。このとき、ノズルから吹き出されるポリメリックMDIの平均粒径は約70μmであり、芯層用チップの表面に均一にポリメリックMDIを吹き付け塗布することができた。この芯層用チップと、メラミンホルムアルデヒド樹脂が13wt%、及びマット含水量が15wt%になるように塗布した表層用の木材チップとを3層構造となるようにフォーミングしてマットを形成し、180℃で3分間熱圧プレスして、厚さ15mm、比重0.80の3層パーティクルボードを得た。このパーティクルボードは、常態曲げ強度が25.4N/mm2、湿潤(70℃)曲げ強度が14.1N/mm2であり、芯層における接着剤の塗布量が少ないにも関わらず、優れた機械的強度をしめした。また、このようなパーティクルボードを安定した品質で製造することができた。更に、このパーティクルボードの遊離ホルマリン量を測定したところ、従来のホルムアルデヒド型の接着剤のみを使用した場合に比べて約半分の0.7ng/lであった。
【0015】
【効果】本発明の方法によって、乳化タイプの有機イソシアネート系化合物よりも安価な非乳化型の有機イソシアネート系化合物を特別な設備を導入することなく使用することが可能となったので、ノンホルマリンタイプのパーティクルボードやMDFを安価に提供することが可能となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】木質材に、粒径が100μm未満である微粒子状の非乳化型の有機イソシアネート系化合物及び水を別々に吹き付け塗布することを特徴とする木質系成形板の製造方法。
【請求項2】非乳化型の有機イソシアネート系化合物がポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート(ポリメリックMDI)であることを特徴とする請求項1記載の木質系成形板の製造方法。
【請求項3】少なくとも有機イソシアネート系化合物の吹き付け塗布用のノズル及び水の吹き付け塗布用のノズルを各々1個以上装着したブレンダー内で、有機イソシアネート系化合物と水を木質材に吹き付け塗布することを特徴とする請求項1又は2記載の木質系成形板の製造方法。
【請求項4】有機イソシアネート系化合物の吹き付けにエアーアトマイジングノズルを使用することを特徴とする請求項3記載の木質系成形板の製造方法。

【公開番号】特開2000−301503(P2000−301503A)
【公開日】平成12年10月31日(2000.10.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−113394
【出願日】平成11年4月21日(1999.4.21)
【出願人】(000206473)大倉工業株式会社 (124)
【Fターム(参考)】