説明

木質系焼却灰からなる重金属捕集材、およびその重金属捕集材を用いて捕集した重金属の回収方法

【課題】 木質系バイオマスを燃焼した際に生じる廃棄物としての木質系焼却灰を有効活用することで、木質系バイオマスの燃料としての利用を促進し、さらには、安価で効率よく重金属を捕集し回収できる再利用可能な重金属捕集材及び重金属捕集方法を提供すること。
【解決手段】
溶液中の重金属を捕集するための重金属捕集材3であって、木質系焼却灰2をペレット状に加圧成形することで設けられ、繰り返し再利用可能な重金属捕集材3、および、木質系焼却灰2をペレット状に加圧成形した重金属捕集材3を、重金属を含む溶液中に添加し、その後、当該重金属捕集材3を強酸性溶液中に置くことで、捕集した重金属を溶液中に溶出させるようにした重金属の回収方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質系焼却灰からなる重金属捕集材、および木質系焼却灰からなる重金属捕集材を用いて捕集した重金属の回収方法に関するものであり、より詳細には、木質系バイオマスを燃焼した際に生じる廃棄物としての木質系焼却灰を有効活用し、重金属を含む汚染水(産業排水など)から安価に重金属を捕集、回収でき、かつ捕集材を再利用できる、木質系焼却灰からなる重金属捕集材、およびその重金属捕集材を用いて捕集した重金属の回収方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、間伐材を木質系バイオマスとして活用することが注目されているが、それらの木質系バイオマスを燃焼する際に発生する焼却灰が廃棄物となってしまうため、その処理コストが木質系バイオマス活用の妨げの一因となっている。
そこで、木質系バイオマスの焼却灰を有効活用する技術の開発が望まれている。
【0003】
一方、汚染水から重金属を回収する技術として、活性炭を利用することが提案されているが、活性炭の利用は高価であり、中小企業や予算の少ない県や市といった事業体にとっては利用しずらいものとなっている(特許文献1、2、3)。
【0004】
そのため、廃棄物に着目した重金属捕集材の開発が行われてきたが、いずれも捕集材として利用するために、燃焼や化学試薬を添加するなど、前処理が必要であり、より安価とするためには、前処理を必要としない資材の提供が望まれている(特許文献4、5、非特許文献1)。
【0005】
さらに、資源の少ない我が国のためには、捕集した重金属を回収できる技術が必要であり、また、工場、トンネル掘削土、埋め立て処分場からの排水は半永続的であるため、捕集材の再利用を可能にする技術が望まれている。
しかしながら、捕集した重金属を回収する技術、および捕集材を再利用することについては、従来提案されていない(非特許文献2)。
従って、従来、木質系バイオマスを燃焼する際に発生する焼却灰を重金属捕集材として活用する技術は実現されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−216215号公報
【特許文献2】特開2003−181284号公報
【特許文献3】特開2000−342962号公報
【特許文献4】特開2005−255737号公報
【特許文献5】特開2000−107726号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】男成妥夫、増山和晃、松本剛、湯浅幸久、前川明弘、RDF 焼却灰の水熱合成による無害化資源化技術開発、地域産官学共同研究事業成果普及講習会テキスト「無機系廃棄物のリサイクル技術の開発」、中小企業庁(1998)
【非特許文献2】T. Chirenje, L. Q. Ma, and L. Lu:Retention of Cd, Cu, Pb and Zn by wood ash, lime and fume dust, Water, Air, and Soil Pollution, 171, 301-314, 2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、従来、重金属捕集材として高価な活性炭を用いたり、廃棄物を捕集材として使用するために燃焼や化学試薬を添加するなどの前処理が必要であることであり、本発明の目的は、高価な活性炭を用いることなく、燃焼や化学試薬を添加するなどの前処理が不要であり、廃棄物を利用して捕集した重金属を回収でき、かつ捕集材の再利用を可能にする実用化技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、溶液中の重金属を捕集するための重金属捕集材であって、『木質系焼却灰をペレット状に加圧成形することで設けられ、繰り返し再利用可能であること』を最も主要な特徴とする。
また、本発明は、『木質系焼却灰をペレット状に加圧成形した重金属捕集材を、重金属を含む溶液中に添加し、その後、当該重金属捕集材を強酸性溶液中に置くことで、捕集した重金属を溶液中に溶出させる重金属の回収方法』であって、特に『捕集した重金属を溶液中に溶出させた後、その残渣物を再度重金属捕集材として使用する重金属の回収方法』を特徴とするものである。
【0010】
さらに、より好ましくは、前記重金属捕集材は、間伐材を燃焼して得られる焼却灰に水を加えて混練したものをペレット状に加圧成形することで設けられる。
また、前記強酸性溶液のpHは、2以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上記構成を採用したことにより、本発明による木質系焼却灰を用いた重金属捕集材は、高価な活性炭を用いたり、廃棄物を捕集材として使用するために燃焼や化学試薬を添加するなどの前処理が不要であり、廃棄物を利用して捕集した重金属を安価で効率よく回収でき、かつ捕集材の再利用を可能にする技術を提供することができる。
【0012】
即ち、本発明は、間伐材などの木質系バイオマスを燃焼する際に発生する、従来廃棄物とされてきた焼却灰を重金属捕集材として活用できる技術を提供することができるものであり、廃棄物の処理コストを削減しつつ間伐材などを木質系バイオマス燃料として積極的に活用することを促進できるため、エネルギー問題の解決策として有効であるばかりか、化石燃料や原子力に頼ることなく二酸化炭素の排出量を抑制することができ、地域経済・林業の活性化と環境問題の解決にも資することができる。
【0013】
さらに、本発明は、重金属を含む汚染水を安価に効率よく処理することを可能とすることで、環境汚染対策としても非常に有効な技術を提供できるばかりか、資源の再利用を促進することができ、環境保全および我が国経済の健全な発展に様々な観点から寄与することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の木質系焼却灰からなる重金属捕集材によって排水から重金属を回収する方法を示す概念図である。
【図2】本発明の重金属捕集材を構成する木質系焼却灰によるPb捕集量と経過時間の関係を示すグラフ図である。
【図3】本発明の重金属捕集材を構成する木質系焼却灰によって捕集した鉛の結晶構造をX線回析装置にて解析した結果を示すグラフ図である。
【図4】本発明の重金属捕集材を構成する木質系焼却灰とペレット状に加工した重金属捕集材によるPb捕集量とPb平衡濃度との関係を示すグラフ図である。
【図5】本発明の重金属捕集材を構成する木質系焼却灰のPb捕集量と溶液の初期pHとの関係を示すグラフ図である。
【図6】本発明の重金属捕集材を構成する木質系焼却灰によるCd捕集量とCd平衡濃度との関係を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、溶液中の重金属を捕集するための重金属捕集材であって、木質系焼却灰をペレット状に加圧成形することで設けられており、強酸性溶液中に置くことで、捕集した重金属を溶液中に溶出させて重金属を回収する処理を繰り返し行うことができる、再利用が可能な重金属捕集材である。
【0016】
ここで、木質系焼却灰とは、間伐材、おが屑、その他の木材、もみ殻、その他の草木を燃焼した後に得られる焼却灰である。
従って、本発明は、木質系バイオマスを燃料として利用した際に生じる廃棄物としての焼却灰を有効に活用して実施できるものである。
【0017】
即ち、本発明の重金属捕集材は、好適には間伐材を燃焼して得られる焼却灰からなるものであり、CaCO、MgO、CaSiOを主成分とする粉末であって、そのままの状態で特別の前処理をすることなく溶液中の重金属を捕集するための捕集材として使用できるものである。
よって、本発明の重金属捕集材を構成する焼却灰は、極めて安価に入手可能であるばかりか、木質系バイオマスのエネルギー源としての利用促進と、廃棄物の有効活用に繋がるものである。
なお、岐阜県飛騨地方製材所ボイラーから採取した焼却灰について、環境省告示18号に基づき焼却灰の溶出試験を行ったが、全ての重金属において環境基準を下回っており、環境上クリーンで安全なものであることが確かめられた。
【0018】
さらに、本発明の重金属捕集材は、ペレット状に加工することで、その取扱性を向上させており、排水現場への適用も容易となっている。
ペレット状とは、立方体形状、直方体形状、その他の角柱状、円柱状、角錐形状、半球状、球状、楕円球状、カプセル状、椀状、有底筒状、リング状、管状、星形形状、その他の粒子形状が含まれ、重金属捕集材に安定した形態を維持させうるものであればよい。
なお、焼却灰に水と適宜成形助剤を加え、混練したものを加圧成形することでペレット状にすることが望ましい。
【0019】
図2〜図5は、杉の間伐材を燃焼して得られる焼却灰の重金属捕集効果について示すものであり、その実験方法は、以下のとおりである。
図2に示す結果を得た実験方法。
5mM KNO 溶液に硝酸鉛を溶かし、1000ppm溶液を準備し、0.1M硝酸あるいは0.1M KOHにてpHを5に調整した。
上記にて得られた溶液40mlを50mlコニカルチューブにとり、焼却灰を0.100g添加したものを、振とう器にて3,5,10,20,30,60,120,180分間振とうした。
所定時間振とう後、0.45μmのメンブレンフィルターにてろ過し、ろ液の鉛濃度をICP−OES(Inductively Coupled Plasma-Optical Emission Spectrometry)にて測定した。
【0020】
図3に示す結果は、上記と同じ実験方法において、溶液と焼却灰の量をそれぞれ400ml、1.000gに変更し(10倍の量で実験した)、24時間振とうし、濾紙にてろ過した後、濾紙上に残った試料をX線回析装置にて結晶構造を解析した。
【0021】
図4に示す結果を得た実験方法。
5mM KNO 溶液に硝酸鉛を溶かし、それぞれ100,200,300,500,800,1000,1500,2000,3000ppm溶液を準備し、0.1M硝酸あるいは0.1M KOHにてpHを5に調整した。
上記にて得られた溶液40mlをコニカルチューブにとり、焼却灰を0.100g添加したものを、振とう器にて24時間振とうした。
振とう後、0.45μmのメンブレンフィルターにてろ過し、ろ液の鉛濃度をICP−OESにて測定した。
【0022】
図5に示す結果を得た実験方法。
5mM KNO 溶液に硝酸鉛を溶かし、1000ppm溶液を準備し、0.1M硝酸あるいは0.1M KOHにてpHをそれぞれ2,3,4,5,6,7に調整した。
上記にて得られた溶液40mlをコニカルチューブにとり、焼却灰を0.100g添加したものを、振とう器にて24時間振とうした。振とう中、0.1M硝酸あるいは0.1M KOHにて適宜所定のpHとなるように調整した。
振とう後、0.45μmのメンブレンフィルターにてろ過し、ろ液の鉛濃度をICP−OESにて測定した。
【0023】
この重金属捕集材を1000ml/L鉛溶液に添加したところ、溶液中から鉛を速やかに最大で770mg/g−乾物捕集できることが確かめられた(図4参照)。
これは、一般的なアパタイト−リン酸資材(化学試薬などに代表される工業製品)の3〜4倍の数値である。
なお、廃石膏(CaSO4)とリン酸水素二アンモニウム((NH4)2HPO4)を水溶液中で反応させ、沈殿物を乾燥して得られる重金属捕集効果に優れた安価ではないアパタイトの場合には、800mg/g−乾物捕集できる。
【0024】
また、捕集された鉛の約90%が炭酸塩の結晶構造となっており、約10%がケイ酸塩鉱物への鉛の吸着であることが確かめられた。
この鉛捕集後の焼却灰の結晶構造は、図3に示すようになっており、Hydrocerussite(Pb3(CO3)2(OH)2)が同定された。
よって、本発明の重金属捕集材による重金属の主要な捕集メカニズムは、Hydrocerussiteの沈着によるものであることが確かめられた。
【0025】
鉛捕集量に対する溶液pHの影響については、図5に示すようになっており、一般的な排水のpH(5以上)で十分な量の捕集効果を得られることが確かめられた。
特に溶液がpH2であっても鉛を捕集できることが確かめられ、これはケイ酸塩鉱物による吸着であると考えられる。
よって、同等の重金属捕集効果をCd、Ni、Zn、Cuといった他の重金属についても得ることが可能である。
【0026】
次に、上記のように捕集した鉛の回収については、鉛を捕集した本発明の重金属捕集材を酸(pH1の硝酸溶液)にて溶解させ、どの程度鉛が溶解(溶出)するかを試験したところ、鉛の回収率は、95%に達した(下記の表1参照)。
【0027】
【表1】

【0028】
この試験は、2Lの5mM KNO 溶液(鉛:1000ppm,pH5)に5.000gの焼却灰を添加し、24時間振とうした。振とう後、濾紙にてろ過し、濾紙上に残った試料を超純水にて2回洗浄した。
濾紙上に残ったサンプル(以下、「鉛捕集焼却灰」という。)を回収・風乾し、鉛の全量分析を行った。
超純水に硝酸を添加し、pH1の溶液を1L準備した。
この溶液に2.5gの鉛捕集焼却灰を添加し、ときどき撹拌しながら、6時間静置した。なお常にpHが1となっていることを確認した。
溶液の一部を0.45μmフィルターにてろ過し、ろ液の鉛濃度をICP−OESにて測定した。溶液量と鉛濃度より鉛捕集焼却灰から溶解した鉛量を算出した。
【0029】
上記のように鉛を溶出した後に残った酸不溶解物(ケイ酸塩鉱物)を用い、再度溶液中の鉛を吸着するか試験したところ、鉛を再捕集できることが確認された。
このように酸不溶解物に鉛を捕集させた後、酸(pH1)で溶解させる操作を3回繰り返した結果を以下の表2に示す。
【0030】
【表2】

【0031】
この試験は、以下の手順にて行った。
1)超純水に硝酸を添加し、pH1の溶液を準備し、これに焼却灰を添加後、ときどき撹拌しながら、静置した。
濾紙にてろ過し、超純水で2回洗浄後、濾紙上に残った残渣を回収、風乾した(以下、「酸不溶解物」という。)。
2)5mM KNO 溶液(鉛:2000ppm,pH5)溶液に固液比が1:400となるよう酸不溶解物を添加し、24時間振とう後、0.45μmフィルターにてろ過した。
フィルター上に残った残渣を回収・風乾した。
ろ液の鉛濃度を測定し、鉛捕集量を求めた(1回目捕集量)。
3)フィルター上に残った残渣を,超純水に硝酸を添加しpH1に調整した溶液に添加した。
4)ときどき撹拌しながら、静置し、0.45μmフィルターにてろ過した。フィルター上に残った残渣を回収・風乾した。
5)フィルター上に残った残渣を用い、上記2),3),4)の操作を更に2回繰り返した
【0032】
従って、本発明による重金属捕集材は、溶液中の鉛を吸着した後、酸溶液中にて鉛を溶出させて鉛を回収した後、再度鉛の捕集材として再利用できるものである。
但し、重金属捕集材を再利用する度にその重量が減少するため、重金属捕集材を補充する必要がある。
【0033】
次に、鉛の他にCd、Ni、Zn、Cuの重金属単液における重金属の最大捕集量については、それぞれ230,170,280,400mg/g−乾物捕集できることが確認された(下記の表3参照)。
【0034】
【表3】

【0035】
ここで、基本的な実験方法は、上記図4に示す結果を得た場合と同様である。
Cdは、硝酸カドミウム4水和物を用い、50,100,200,300,500,800,1000ppmの溶液で実験を行った(図6参照)。
Niは、硝酸ニッケル6水和物を用い、50,100,200,300,500,800,1000ppmの溶液にて実験した。
Znは、硝酸亜鉛6水和物を用い、75,150,300,450,750,1200,1500ppmの溶液にて実験した。
Cuは、硝酸銅3水和物を用い、75,150,300,450,750,1200,1500ppmの溶液にて実験した。
【0036】
また、Pb、Cd、Ni、Zn、Cuを含んだ重金属混液における重金属の最大捕集量については、それぞれ260,15,30,15,240mg/g−乾物捕集できることが確認された(下記の表4参照)。
【0037】
【表4】

【0038】
ここで、基本的な実験方法は、上記図4に示す結果を得た場合と同様である。
鉛、カドミウム、ニッケル、亜鉛、銅は、それぞれ硝酸鉛、硝酸カドミウム4水和物、硝酸ニッケル6水和物、硝酸亜鉛6水和物、硝酸銅3水和物を用い、溶液の濃度は、全金属共通で、50,100,200,300,500,800,1000,1500ppmの溶液にて実験した。
【0039】
従って、本発明による木質系焼却灰を用いた重金属捕集材においては、溶液中の鉛(Pb)の他、Cd、Ni、Zn、Cuといった重金属の捕集及び回収にも使用できるものである。
【実施例1】
【0040】
次に、本発明を具体化した一実施例について説明する。
この実施例は、杉の間伐材1を燃焼して得られる焼却灰2に水を加えて混練し、加圧成形してペレット状に形成した本発明による重金属捕集材3を用い、掘削土、埋め立て処分場跡地からの排水(溶液)に含まれる重金属を捕集し、重金属を回収する方法について説明する。
【0041】
まず、杉間伐材1を燃焼して得られた焼却灰2を直径10mm、長さ32mm±4mm、重さ5.0±0.5(g/個)程度の大きさの円柱形のペレット状に押し出し成形機により加圧成形することで、本発明の重金属捕集材3を用意する。
このようなペレット状に加工した重金属捕集材3による重金属の捕集効果については、粉末状の焼却灰をそのまま使用する場合よりも単位重量当たりの表面積が低下することによって効率は低下するものの、取扱性が向上することで、重金属捕集材としての再利用可能性および実用性を備えたものとすることができる。
【0042】
そして、ペレット状に加工した重金属捕集材3を排水処理槽4内に入れ、当該排水処理槽4内にて重金属捕集材3に排水を接触させる(図1参照)。
その後、重金属捕集材3を排水処理槽4内から取り出し、pH1の酸性溶液を入れた重金属回収槽5内に入れ、当該酸性溶液中に重金属を溶出させる。
【0043】
上記により重金属を取り除いた重金属捕集材3については、再利用が可能であり、再び処理されるべき排水が入った排水処理槽4内へ戻すことができる。
また、酸性溶液中に溶出した重金属については、pH値を上げるpH調節を行うこと、または電気分解などの方法により回収することができる。
【0044】
本発明は、上記各実施例の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実施することが可能であり、炭酸塩を形成する他の重金属を含む溶液(廃液・排液など)の浄化処理について本発明を具体化して実施し、それらの重金属を捕集し、回収する際に使用することも可能である。
【0045】
また、上記実施例において採用した重金属捕集材のペレットのサイズと形状は、加工性、耐久性、取扱性、溶液との接触面積の大きさ、溶液処理の効率などを考慮して実用上好適なものとして例示したものであるが、重金属捕集材として好適な他の形状を採用することも可能である。
さらに、本発明は、重金属捕集材を収納したカートリッジを使用して具体化して実施することで、重金属捕集材の取扱性・交換などを容易とするようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、国内で年間400万トン排出される間伐材を燃焼し、エネルギー回収した後に発生する産業廃棄物である木質系焼却灰を重金属捕集材として産業上利用することを提案するものであり、木質系焼却灰を用いた重金属捕集方法として、化学工場、トンネル掘削土、廃棄物埋め立て処分場跡地からの排水処理などに好適に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 間伐材
2 焼却灰
3 重金属捕集材
4 排水処理槽
5 重金属回収槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液中の重金属を捕集するための重金属捕集材であって、木質系焼却灰をペレット状に加圧成形することで設けられ、繰り返し再利用可能であることを特徴とする木質系焼却灰からなる重金属捕集材。
【請求項2】
前記重金属捕集材は、間伐材を燃焼して得られる焼却灰に水を加えて混練したものをペレット状に加圧成形することで設けられたものであることを特徴とする請求項1に記載の木質系焼却灰からなる重金属捕集材。
【請求項3】
木質系焼却灰をペレット状に加圧成形した重金属捕集材を、重金属を含む溶液中に添加し、
その後、当該重金属捕集材を強酸性溶液中に置くことで、捕集した重金属を溶液中に溶出させることを特徴とする木質系焼却灰からなる重金属捕集材を用いて捕集した重金属の回収方法。
【請求項4】
捕集した重金属を溶液中に溶出させた後、その残渣物を再度重金属捕集材として使用することを特徴とする請求項3に記載の木質系焼却灰からなる重金属捕集材を用いて捕集した重金属の回収方法。
【請求項5】
前記強酸性溶液のpHが2以下であることを特徴とする請求項3または請求項4のいずれか一項に記載の木質系焼却灰からなる重金属捕集材を用いて捕集した重金属の回収方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−240031(P2012−240031A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115867(P2011−115867)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成23年2月3日 社団法人土木学会発行の「平成22年度土木学会中部支部研究発表会講演概要集」に発表
【出願人】(304019399)国立大学法人岐阜大学 (289)
【出願人】(511126213)南城建設協同組合 (1)
【Fターム(参考)】