説明

木質系複合床材の表面塗装方法

【課題】合板等に突き板を貼着して得られた木質系複合床材の表面を無垢の単板と同様の手触り、外観を有するように塗装することのできる木質系複合床材の塗装方法を提供する。
【解決手段】木質基材の上に突き板ロを貼着してなる木質系複合床材Aの表面を塗装する方法であって、上記木質基材の上に貼着された突き板ロに下塗り塗装を施し、下塗り塗装後、塗膜を乾燥させ、乾燥工程終了後、圧締ロールPで塗膜の表面を圧締、平滑化させ、しかる後、中塗り塗装を行い、中塗り塗膜形成後、上塗り塗料を塗布して仕上げる木質系複合床材の表面塗装方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床材の表面塗装方法に関する。さらに詳しくは、合板、MDF等の木質基材に突き板を貼着、一体化してなる木質系複合床材の表面を塗装する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、木材資源の枯渇化が進み、無垢の木材の入手が困難となり、その価格も高騰しつつある。そこで、合板、集成材、中密度繊維板(MDF)、パーティクルボード等、種々の木質基板に突き板を貼着し、表面を化粧した木質系複合床材が普及している。この木質系複合床材は、必要に応じて、突き板の種類を変化させ、床材のみならず、壁材、天井材等の分野にも広く使用されている。
【0003】
一方、特開2007−105695号公報には、厚単板、特に無垢の単板の表面を化粧し、樹木の種類に限定されることなく、無垢の単板を重厚な高級感のある木質系床材に仕上げる技術が開示されている。すなわち、上記特許文献1には、上記木質系床材に下塗り塗装を施し、下塗りした木質系床材の表面を乾燥後、圧締ロールによってロール加工し、圧締された下塗り塗装膜をさらに上塗りし、仕上げることを特徴とする木質系床材の塗装方法が開示されている。
【0004】
すなわち、ナラ、スギ、ヒノキ、マツ、クス等の無垢単板、あるいはこれらの木材のチップを一体的に集成してなる集成材等を基材として用い、塗装するに先だって、床材としての高級感、重量感を出すため着色され、該着色は顔料や染料等によって、薄茶色、焦げ茶色、黒色等の所望の色となるようにされる。そして、樹木の種類に限定されることなく、厚さ5〜10mmの無垢単板に下塗り塗装を施し、さらに上塗り塗装して仕上げることにより、無垢の単板を重厚な高級感のある木質系床材に仕上げることができると記載されている。
【特許文献1】特開2007−105695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、突き板は、厚さが0.2〜1.0mm程度にナラ、スギ、ヒノキ、マツ、クス等の天然木を薄くスライスして得られた木目模様を有する薄板であり、表面に毛羽たちやザラツキがあり、そのまま塗装をすると塗膜に気泡等が生じて塗装不良となるため、十分な下地処理が必要となる。そこで、平滑な表面塗装を行うには、毛羽たちやザラツキをなくすために、目止めや研磨等の手間のかかる前処理を行う必要がある。
【0006】
本願発明は、上記背景技術に鑑みてなしたものであり、その目的は、例えば、合板等、定尺の木質基板に上記突き板を接着等の手段により貼着、一体化して得られた木質系複合床材の表面を無垢の単板と同様の手触り、外観を有するように塗装することのできる木質系複合床材の塗装方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本願請求項1に記載の発明に係る木質系複合床材の塗装方法は、木質基材の上に突き板を貼着してなる木質系複合床材の表面を塗装する方法であって、上記木質基材の上に貼着された突き板に下塗り塗装を施し、下塗り塗装後、塗膜を乾燥させ、乾燥工程終了後、圧締ロールで塗膜の表面を圧締、平滑化し、しかる後、中塗り塗装を行い、中塗り塗膜形成後、上塗り塗料を塗布して仕上げることを特徴としている。
【0008】
上記木質基板としては、合板、集成材、中密度繊維板(MDF)、パーティクルボード等、種々の定尺の木質系基材が用いられる。また、突き板としては、厚さが0.2〜1.0mm程度にスライスして得られた木目模様が美麗な天然木の化粧突き板が用いられる。この突き板を木質基板、例えば、合板の上に接着剤を用いて貼着、一体化して得られた木質系複合床材の表面を本願発明に係る塗装方法を用いて塗装する。
【0009】
上記接着剤としては、酢酸ビニル樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、イソシアネート、SBR、NBR等の合成樹脂あるいはゴム系の接着剤が好適に用いられる。
【0010】
請求項2に記載の木質系複合床材の塗装方法は、請求項1に記載の発明に加えて、上記下塗り塗料として着色液を用いて下塗り塗装を行うことを特徴としている。着色液としては、通常、ステイン塗料、すなわち、染料系の水性ステイン、油性ステイン、アルコールステインや顔料系の水性ステイン、油性ステイン、アルコールステイン等が用いられる。これらは任意に選択されるが、有害な化学物質を出すことのない水性ステインが好ましく用いられる。
【0011】
上記した着色液はスポンジロールを使用して突き板に擦りつけるようにして塗布する。このとき、金属製のリバースロールを木質系複合床材がベルトコンベアで搬送される方向と逆方向に回転させ、余分の着色液を掻き取るようにすることが好ましい。
【0012】
請求項3に記載の木質系複合床材の塗装方法は、請求項1に記載の発明に加えて、上記圧締ロールとして鉄ロールを用いることを特徴としている。鉄ロールとしては、表面が鏡面仕上げされた鉄ロールを用いることが好ましい。また、鉄ロールと硬質ゴムロールとの間に上記下塗りされた木質系複合床材を挟むようにして、鉄ロールで圧締してもよい。
【0013】
請求項4に記載の木質系複合床材の塗装方法は、請求項1に記載の発明に加えて、上塗り塗料として透明塗料を用いることを特徴としている。上記上塗り塗料を構成する樹脂としては、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アミノアルキッド樹脂等をあげることができ、中でも、紫外線硬化型のクリアないしは半クリアな透明塗料を用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明にかかる木質系複合床材の塗装方法においては、特に、木質基材の上に貼着された突き板に下塗り塗装を施し、下塗り塗装後、塗膜を乾燥させ、乾燥工程終了後、圧締ロールで塗膜の表面を圧締、平滑化しているため、下塗り塗装工程において、塗装中に巻き込まれた空気、未乾燥のまま残留した水分等が加熱されて塗膜に生じた気泡等を潰し、下塗り塗膜の表面の平滑化が行われる。
【0015】
そして平滑化された下塗り塗膜の上に中塗り塗料を重ね塗りすることにより、下塗り塗膜と中塗り塗膜との密着性を向上させて中塗り塗膜を形成することができる。さらに、中塗り塗膜形成後、上塗り塗料を塗布して仕上げることにより、表面を平滑に、また手触りよく仕上げることができる。
【0016】
請求項2記載の発明に係る木質系複合床材の塗装方法においては、特に、下塗り塗料として着色液を用いるため、突き板の表面の天然木の導管部分に多くの着色液が刷り込まれて木目が強調された着色が行われ、突き板が本来有する木目がさらに活かされて、高級感、重量感を出すことができる。
【0017】
請求項3記載の発明に係る木質系複合床材の塗装方法においては、特に、圧締ロールとして鉄ロール、好ましくは鏡面仕上げをされた鉄ロールを用いて圧締するため、突き板自身の毛羽立ちを押さえ、あるいは、下塗り塗装工程において生じた気泡等を潰し、下塗り塗膜の表面の平滑化を効果的に行うことができる。
【0018】
請求項4記載の発明に係る木質系複合床材の塗装方法においては、特に、上記上塗り塗料として透明塗料を用いて仕上げ塗装を行うことにより、表面を平滑に、また見映えよく仕上げることができる。また、食器等を落としても表面が傷付き難い耐衝撃性に優れた塗膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。本実施形態においては、木質基板として合板を用い、その上に突き板を貼着した木質系複合床材の表面を塗装する方法について説明する。
【0020】
図1は、本願発明にかかる木質系複合床材Aの表面を塗装する方法を示す工程図である。図1に示すように、上記した木質系複合床材Aの突き板表面に、まず、下塗り塗装工程1により下塗り塗装を施す。ついで、下塗り塗膜を乾燥工程2で乾燥させた後、得られた塗膜表面を圧締工程3において、圧締ロールにより圧締する。この圧締工程3においては、突き板自身の毛羽立ちを押さえ、あるいは、下塗り塗装工程1において、空気、水分等が加熱されて塗膜に生じた気泡等を潰し、下塗り塗膜の表面の平滑化が行われる。上記のようにして圧締処理された下塗り塗膜は、さらに中塗り塗装工程4で中塗り塗装され、最終的に上塗り塗装工程5で上塗り塗装を行って製品床板とされる。
【0021】
図2は、図1に示す下塗り塗装工程1を示す説明図である。図2に示すように、合板イに突き板ロを貼着してなる木質系複合床材Aの表面は、図外下塗り塗料供給手段から供給され、スポンジロールSpに滲入した下塗り塗料によりロールコートされる。このとき、上記木質系複合床材Aの表面は、貼着された突き板ロによって、既に天然木の地肌を有しているが、本来有する木目をさらに活かして高級感、重量感を出すため、下塗り塗料として着色ステイン塗料を用いて突き板ロを下塗り塗装する。
【0022】
ここで、スポンジロールSpで突き板ロの表面の導管孔等の木目内に着色ステイン塗料を刷り込むようにロールコートするとともに、それ以外の部分の余剰の着色ステイン塗料は金属製のリバースロールRで掻き取られ、図外下塗り塗料供給手段に戻される。このようにすることにより、表面の木目模様の輪郭が明確になり、突き板の有する木質感がさらに強調された下塗り塗膜が形成される。
【0023】
ついで、上記着色ステイン塗料が塗布された木質系複合床材Aは、乾燥工程2で溶媒としての水分を飛ばし、乾燥させる。乾燥手段としては、例えば、ジエットドライヤーや電気加熱器等が用いられ、温度を約80〜150℃とし、時間を30秒ないし3分の条件のもとで乾燥される。
【0024】
上記乾燥工程2を終了した後、下塗り塗装された木質系複合床材Aは、ついで、圧締工程3で表面が鏡面仕上げされた鉄ロールによって圧締される。圧締圧力は2〜10kgf/cm2とされ、被塗装品である木質系複合床材Aの種類、最終製品である床材の用途等によって、上記圧力は適宜調節される。この圧締工程3によって下塗り塗膜中に生じた気泡等を潰し、表面を平滑化することにより、次工程である中塗り塗装工程4において泡立ちすることを防ぎ、平滑な中塗り塗膜を形成させることができる。
【0025】
上記、中塗り塗料としては、常温硬化型のウレタン系塗料、あるいは加熱硬化型のメラミン系塗料、尿素・メラミン系塗料、ポリエステル系塗料、アクリル系塗料、あるいは、紫外線硬化型のウレタン系塗料、ポリエステル変性アクリル系塗料等の中塗り塗料が用いられる。
【0026】
上記のようにして形成された中塗り塗膜の上に、上塗り塗料として透明塗料を用い仕上げ塗装を行う。透明塗料としては、アクリル樹脂塗料、アミノアルキド樹脂塗料、ビニル樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、ポリウレタン樹脂塗料等が好適に用いられる。上記透明塗料が中塗り塗膜の上に塗布され、クリア、あるいは半クリアな塗膜が形成されるため、この塗膜が保護層として機能し、食器等を落としても表面が傷付きにくい耐衝撃性に優れた床材を得ることができる。
【0027】
[実施例]
図3は、本願発明に係る木質系複合床材Aの表面塗装方法の実施例を模式的に示す説明図である。本実施例においては、木質系複合床材Aとして3尺×6尺の合板イにナラの突き板ロを貼着したものが用いられた。以下、図3を参照して、その表面を塗装した例について説明する。
【0028】
まず、下塗り塗装工程1で、下塗り塗料として中国塗料製、着色ステイン塗料(W UN)をスポンジロールSpでロールコートした。突き板ロの表面の導管孔等の木目内にロールコートされた以外の余剰の着色ステイン塗料は金属製のリバースロールRで掻き取られ、スポンジロールSpに着色ステイン塗料を供給する図外下塗り塗料供給手段へ戻され、再利用された。
【0029】
ついで、乾燥工程2でジェットドライヤーにより約100℃で約60秒加熱し、溶媒としての水分を飛ばすことにより、木質系複合床材Aの表面に下塗り塗膜ハが形成された。その後、圧締工程3にベルトコンベアで搬送され、表面が鏡面仕上げされた圧締ロールPで2〜10kgf/cm2の加圧下で圧締し、下塗り塗膜ハに生じた気泡等を潰し、表面を平滑化した。
【0030】
上記平滑な下塗り塗膜ハを有する木質系複合床材Aは、ついで、中塗り塗装工程4に搬送され、スポンジロールSpによってDIC製、中塗り塗料(ポリメディックSKS−610P)でロールコートし、紫外線照射装置で紫外線を数秒間照射して、中塗り塗膜ニを形成させた。
【0031】
上記したように突き板ロが下塗り塗装され、さらに中塗り塗装された木質系複合床材Aは上塗り塗装工程5で、最後にナチュラルロールNによってDIC製、上塗り塗料(ポリメディックEX050818−1)でロールコートされ、紫外線照射装置で紫外線を数秒間照射して、上塗り塗膜ホを形成させた。
【0032】
上記の方法によって表面を塗装された木質系複合床材Aは、見映えよく鏡面塗装され、耐衝撃性にすぐれ、局所的荷重や、耐キャスター付きワゴン性に優れたものであった。なお、上記実施例においては、中塗り塗装、上塗り塗装をそれぞれ、1回行った場合について述べたが、それぞれ、数回重ね塗りをしてもよい。このように重ね塗りをした形態も本願発明に係る木質系複合床材の表面塗装方法の技術的範囲に属する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本願発明にかかる木質系複合床材の表面塗装方法を示す工程図。
【図2】図1に示す下塗り塗装工程を示す説明図。
【図3】本願発明に係る木質系複合床材の表面塗装方法の実施例を模式的に示す説明図。
【符号の説明】
【0034】
A 本願発明に係る木質系複合床材
Sp スポンジロール
R リバースロール
N ナチュラルロール
P 圧締ロール
1 下塗り塗装工程
2 乾燥工程
3 圧締工程
4 中塗り塗装工程
5 上塗り塗装工程
イ 合板
ロ 突き板
ハ 下塗り塗膜
ニ 中塗り塗膜
ホ 上塗り塗膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質基材の上に突き板を貼着してなる木質系複合床材の表面を塗装する方法であって、上記木質基材の上に貼着された突き板に下塗り塗装を施し、下塗り塗装後、塗膜を乾燥させ、乾燥工程終了後、圧締ロールで塗膜の表面を圧締、平滑化し、しかる後、中塗り塗装を行い、中塗り塗膜形成後、上塗り塗料を塗布して仕上げる木質系複合床材の表面塗装方法。
【請求項2】
上記下塗り塗料として着色液を用いて下塗り塗装を行う請求項1に記載の木質系複合床材の表面塗装方法。
【請求項3】
上記圧締ロールとして鉄ロールを用いる請求項1に記載の木質系複合床材の表面塗装方法。
【請求項4】
上記上塗り塗料として透明塗料を用いて仕上げ塗装を行う請求項1に記載の木質系複合床材の表面塗装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−172547(P2009−172547A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−16104(P2008−16104)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】