説明

木造住宅の壁体構造

【課題】面材耐力壁と同様に構造用合板を使用しながらも、非耐力壁とみなすことができる程度まで剪断耐力を低減することが可能な木造住宅の壁体構造を提供する。
【解決手段】この壁体構造は、面材耐力壁と同様に構造用合板10を使用しながらも、この構造用合板10を軸組1の方形枠部4に一体化させずに、軸組1に対する構造用合板10の面方向へのスライドを許容する止め付け機構20を介して止め付けることで、構造用合板10に剪断力をほとんど負担させないようにして、非耐力壁とみなすことができる程度まで剪断耐力を低減している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、剪断耐力の低減を図るようにした木造住宅の壁体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、木造住宅においては、必要壁量を満たすように耐力壁を適宜配置して、耐震性を確保している。耐力壁としては、柱材と横架材とを組み付けてなる軸組の方形枠部に、方形状の構造用合板の四周を釘打ちによって止め付けた面材耐力壁が広く知られている。
【0003】
この種の面材耐力壁を適用した木造住宅の場合、出入口や窓等の開口部分を設ける箇所を除いた軸組全体に亘って、構造用合板を一様に張り付けていることが多く、開口部分以外の無開口部分の殆どは面材耐力壁となって剪断耐力を有している。
【0004】
ところが、例えば図6に示すように、南面側において日当たりを良好にするために窓50を多く(開口部分を大きく)して、北面側において窓50を少なく(開口部分を小さく)するような場合には、北面側における面材耐力壁51の壁量が、南面側における面材耐力壁51の壁量よりも多くなって、壁量のバランスが崩れ、耐力壁全体の剛性の中心(剛心)が、住宅重量の中心(重心)よりも北面側にずれてしまって、地震発生時には木造住宅にねじれが生じ易くなるといった不具合がある。かといって、南面側における開口部分と北面側における開口部分の面積を略同じにすることで、壁量のバランスを良好に保つようにして、剛心と重心のずれ(偏心率)を小さく抑えると、設計の自由度が制限されるといった不具合がある。
【0005】
そこで、軸組の方形枠部への構造用合板の止め付けに際して、釘打ちの箇所や釘打ちの間隔を異ならせることで、壁倍率の異なる数種類の面材耐力壁を構成して、例えば開口部分を大きくした南面側に壁倍率の高い面材耐力壁を配置し、開口部分を小さくした北面側に壁倍率の低い面材耐力壁を配置することで、壁量のバランスを良好に保つようにして、偏心率を小さく抑えるといった提案がなされている(例えば特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−225967号公報
【特許文献2】特開2008−150849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、壁倍率の異なる数種類の面材耐力壁は、いずれも軸組の方形枠部に構造用合板の四周を釘打ちによって止め付けて、構造用合板を軸組に一体化させた構造となっていることから、釘打ちの箇所を少なくしたり、釘打ちの間隔を広くしたような壁倍率の低い面材耐力壁であっても、ある程度の剪断耐力を有していて、耐力壁とみなさない(非耐力壁とみなす)程度まで剪断耐力を低減させることは困難であった。
【0008】
開口部分と同様に非耐力壁とみなすことができる壁体を、開口部分を考慮して要所要所に配置すれば、壁量計算を簡単にして、壁量のバランスの調整を容易に行うことができるが、上記のように壁倍率の異なる数種類の面材耐力壁を使い分ける場合には、壁量計算が煩雑となって、壁量のバランスの調整が面倒になるといった不具合があった。
【0009】
また、例えば構造用合板と比べて強度的に弱い別の面材を用いて、この別の面材を軸組の方形枠部に止め付けることで、非耐力壁とみなすことができる壁体を構成することは可能であるが、この場合、面材耐力壁とする部分には構造用合板を使用し、非耐力壁とする部分には別の面材を使用することになって、2種類の面材使用によって材料調達面で無駄が生じ易くなり、また別の面材の選定にも多くの労力を要することになり、さらに別の面材を下地材とした外壁材の張り付けにも支障をきたすといった不具合があった。
【0010】
この発明は、上記に鑑み、面材耐力壁と同様に構造用合板を使用しながらも、非耐力壁とみなすことができる程度まで剪断耐力を低減することが可能な木造住宅の壁体構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、この発明は、左右の柱材2と上下の横架材3とによって囲まれた軸組1の方形枠部4に、方形状の構造用合板10を張り付けた木造住宅の壁体構造において、前記軸組1に対する前記構造用合板10の面方向へのスライドを許容する剪断耐力低減用の止め付け機構20を介して、前記構造用合板10を前記方形枠部4に止め付けたことを特徴とする。
【0012】
具体的に、前記止め付け機構20は、前記左側の柱材2と前記構造用合板10の縦方向に沿った左端部との間、前記右側の柱材2と前記構造用合板10の縦方向に沿った右端部との間にそれぞれ介装されて、前記軸組1に対する前記構造用合板10の主として縦方向のスライドを許容する左右一対の第1支持部材21と、前記上側の横架材3と前記構造用合板10の横方向に沿った上端部との間、前記下側の横架材3と前記構造用合板10の横方向に沿った下端部との間にそれぞれ介装されて、前記軸組1に対する前記構造用合板10の主として横方向のスライドを許容する上下一対の第2支持部材22とを備えている。
【0013】
そして、前記左右一対の第1支持部材21は、前記左右の柱材2に沿って固定した柱材側の縦下地材30と、前記構造用合板10の左右端部に沿って固定した合板側の縦下地材31とを、縦方向に相対移動可能に係合してなり、前記上下一対の第2支持部材22は、前記上下の横架材3に沿って固定した横架材側の横下地材40と、前記構造用合板10の上下端部に沿って固定した合板側の横下地材41とを、横方向に相対移動可能に係合してなる。
【0014】
また、前記左右一対の第1支持部材21における柱材側の縦下地材30と合板側の縦下地材31との間、及び/又は、前記上下一対の第2支持部材22における横架材側の横下地材40と合板側の横下地材41との間に、前記構造用合板10の面外方向への脱落を防止する脱落防止部35、37、45、47を設けている。
【0015】
さらに、前記左右一対の第1支持部材21において、前記柱材側の縦下地材30によって前記合板側の縦下地材31を屋内側から裏支えした状態で、これら縦下地材30、31同士を係合するとともに、前記上下一対の第2支持部材22において、前記横架材側の横下地材40によって前記合板側の横下地材41を屋内側から裏支えした状態で、これら横下地材40、41同士を係合している。
【0016】
さらにまた、前記止め付け機構20を、前記方形枠部4における屋内外方向の厚みT内に収まるように設けている。
【発明の効果】
【0017】
この発明の壁体構造においては、面材耐力壁と同様に構造用合板を使用しながらも、この構造用合板を軸組に一体化させずに、軸組に対する構造用合板の面方向へのスライドを許容する止め付け機構を介して止め付けているので、構造用合板に剪断力をほとんど負担させないようにして、非耐力壁とみなすことができる程度まで剪断耐力を低減することできる。従って、このような壁体構造を、窓等の開口部分を考慮して木造住宅の壁部の要所要所に適用することで、従来のように壁倍率の異なる数種類の面材耐力壁を使い分ける場合と比べて、壁量計算を簡単にして、壁量のバランスの調整を容易に行うことができる。
【0018】
また、左右一対の第1支持部材及び上下一対の第2支持部材によって止め付け機構を構成して、これら支持部材によって軸組の方形枠部の四周に構造用合板の四周を止め付けていることで、構造用合板のスライドを許容しながらも、構造用合板を安定して止め付けることができる。
【0019】
さらに、第1支持部材及び第2支持部材を、軸組側(柱材側、横架材側)の下地材と合板側の下地材とを相対移動可能に係合させただけの簡単な構造とすることで、特殊な材質の部材を使用したり、特殊な施工を施さずに済み、施工費の低減を図ることができる。
【0020】
また、軸組側(柱材側、横架材側)の下地材と合板側の下地材との間に、構造用合板の面外方向への脱落を防止する脱落防止部を設けることで、別途対策を施すことなく、安全性を高めることができる。
【0021】
さらに、軸組側(柱材側、横架材側)の下地材と合板側の下地材との係合に際して、軸組側(柱材側、横架材側)の下地材によって合板側の下地材を屋内側から裏支えすることで、軸組側(柱材側、横架材側)の下地材と合板側の下地材とを係合させた状態で、軸組側(柱材側、横架材側)の下地材を柱材や横架材に固定した後に、屋外側からの固定具の打ち込みやねじ込みによって、構造用合板を合板側の下地材に固定するといった施工が可能となり、施工性の向上を図ることができる。
【0022】
さらにまた、軸組の方形枠部における屋内外方向の厚み内に止め付け機構を収めて、止め付け機構が軸組よりも屋内外方向に出張ることがないようにすることで、構造用合板や内装下地材、外壁材等の張り付けに支障をきたすことがなく、良好な施工状態を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】面材耐力壁の分解斜視図である。
【図2】この発明の一実施形態に係る壁体構造を適用した非耐力壁の分解斜視図である。
【図3】同じくその横断面図である。
【図4】同じくその縦断面図である。
【図5】非耐力壁を適用して壁量のバランスを調整した木造住宅の壁部を示す図である。
【図6】壁量のバランスを調整していない木造住宅の壁部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、木造住宅の壁部の要所要所に配置する面材耐力壁W1を示し、図2は、木造住宅の壁部の要所要所に配置する非耐力壁W2を示している。図1、2中、1は、複数の柱材2と複数の梁材や枠材等の横架材3とを組み付けてなる軸組であって、この軸組1における左右の柱材2と上下の横架材3とによって囲まれた方形枠部4の屋外側に、外壁下地材となる方形状の構造用合板10を張り付けることによって、面材耐力壁W1、非耐力壁W2がともに構成されている。
【0025】
面材耐力壁W1と非耐力壁W2との違いは、軸組1の方形枠部4に対する構造用合板10の止め付け方を異ならせたことにある。面材耐力壁W1は、図1に示すように、軸組1の方形枠部4に構造用合板10の四周を釘打ち11によって止め付けて、構造用合板10を軸組1に一体化させた構造となっている。
【0026】
非耐力壁W2は、この発明の壁体構造を適用したものであって、図2に示すように、面材耐力壁W1のように軸組1の方形枠部4に対して構造用合板10を直接釘打ち11するのではなく、軸組1の方形枠部4に剪断耐力低減用の止め付け機構20を介して構造用合板10を止め付けて、軸組1に対する構造用合板10の面方向へのスライドを許容した構造となっている。
【0027】
止め付け機構20は、左側の柱材2と構造用合板10の縦方向に沿った左端部との間、右側の柱材2と構造用合板10の縦方向に沿った右端部との間にそれぞれ介装された左右一対の第1支持部材21と、上側の横架材3と構造用合板10の横方向に沿った上端部との間、下側の横架材3と構造用合板10の横方向に沿った下端部との間にそれぞれ介装された上下一対の第2支持部材22とを備え、軸組1の方形枠部4の枠内においてその屋内外方向の厚みT内に収まるように設けられている。
【0028】
左側の第1支持部材21は、図3に示すように、左側の柱材2に沿って固定した柱材側の縦下地材30と、構造用合板10の左端部に沿って固定した合板側の縦下地材31とを備えている。柱材側の縦下地材30は、横断面略L字状に形成されていて、左側の柱材2の右側面に釘やビス等の固定具32によって止め付けられた基部33と、この基部33から屋外側に向って突出して、左側の柱材2の右側面に対して間隔をあけて配された突部34とを備え、突部34の左側面には、左側の柱材2の右側面に近接する方向に張り出した嵌合突起35が縦方向(長手方向)に沿って形成されている。合板側の縦下地材31は、横断面略コ字状に形成されていて、構造用合板10の左端部裏面(屋内側の面)に釘やビス等の固定具36によって止め付けられ、その右側面には、嵌合溝37が縦方向(長手方向)に沿って形成されている。なお、縦下地材30、31としては、木材(製材、集成材)を加工したものが使用されている。
【0029】
この左側の第1支持部材21では、柱材側の縦下地材30の基部33によって合板側の縦下地材31が屋内側から裏支えされた状態で、且つ、柱材側の縦下地材30の突部34と左側の柱材2とによって合板側の縦下地材31が挟まれた状態で、縦下地材30、31間に設けた構造用合板10の面外方向への脱落を防止する脱落防止部としての嵌合突起35と嵌合溝37とが互いに嵌合されて、これら縦下地材30、31同士が縦方向に相対移動可能に係合されている。
【0030】
右側の第1支持部材21は、左側の第1支持部材21と同じ構造となっていて、図3に示すように、右側の柱材2に沿って固定した柱材側の縦下地材30と、構造用合板10の右端部に沿って固定した合板側の縦下地材31とを備えている。柱材側の縦下地材30は、横断面略L字状に形成されていて、右側の柱材2の左側面に釘やビス等の固定具32によって止め付けられた基部33と、この基部33から屋外側に向って突出して、右側の柱材2の左側面に対して間隔をあけて配された突部34とを備え、突部34の右側面には、右側の柱材2の左側面に近接する方向に張り出した嵌合突起35が縦方向(長手方向)に沿って形成されている。合板側の縦下地材31は、横断面略コ字状に形成されていて、構造用合板10の右端部裏面(屋内側の面)に釘やビス等の固定具36によって止め付けられ、その左側面には、嵌合溝37が縦方向(長手方向)に沿って形成されている。なお、縦下地材30、31としては、木材(製材、集成材)を加工したものが使用されている。
【0031】
この右側の第1支持部材21では、柱材側の縦下地材30の基部33によって合板側の縦下地材31が屋内側から裏支えされた状態で、且つ、柱材側の縦下地材30の突部34と右側の柱材2とによって合板側の縦下地材31が挟まれた状態で、縦下地材30、31間に設けた構造用合板10の面外方向への脱落を防止する脱落防止部としての嵌合突起35と嵌合溝37とが互いに嵌合されて、これら縦下地材30、31同士が縦方向に相対移動可能に係合されている。
【0032】
上側の第2支持部材22は、第1支持部材21を横向きにした構造となっていて、図4に示すように、上側の横架材3に沿って固定した横架材側の横下地材40と、構造用合板10の上端部に沿って固定した合板側の横下地材41とを備えている。横架材側の横下地材40は、縦断面略L字状に形成されていて、上側の横架材3の下面に釘やビス等の固定具42によって止め付けられた基部43と、この基部43から屋外側に向って突出して、上側の横架材3の下面に対して間隔をあけて配された突部44とを備え、突部44の上面には、上側の横架材3の下面に近接する方向に張り出した嵌合突起45が横方向(長手方向)に沿って形成されている。合板側の横下地材41は、縦断面略コ字状に形成されていて、構造用合板10の上端部裏面(屋内側の面)に釘やビス等の固定具46によって止め付けられ、その下面には、嵌合溝47が横方向(長手方向)に沿って形成されている。なお、横下地材40、41としては、木材(製材、集成材)を加工したものが使用されている。
【0033】
この上側の第2支持部材22では、横架材側の横下地材40の基部43によって合板側の横下地材41が屋内側から裏支えされた状態で、且つ、横架材側の横下地材40の突部44と上側の横架材3とによって合板側の横下地材41が挟まれた状態で、横下地材40、41間に設けた構造用合板10の面外方向への脱落を防止する脱落防止部としての嵌合突起45と嵌合溝47とが互いに嵌合されて、これら横下地材40、41同士が横方向に相対移動可能に係合されている。
【0034】
下側の第2支持部材22は、上側の第2支持部材22と同じ構造となっていて、図4に示すように、下側の横架材3に沿って固定した横架材側の横下地材40と、構造用合板10の下端部に沿って固定した合板側の横下地材41とを備えている。横架材側の横下地材40は、縦断面略L字状に形成されていて、下側の横架材3の上面に釘やビス等の固定具42によって止め付けられた基部43と、この基部43から屋外側に向って突出して、下側の横架材3の上面に対して間隔をあけて配された突部44とを備え、突部44の下面には、下側の横架材3の上面に近接する方向に張り出した嵌合突起45が横方向(長手方向)に沿って形成されている。合板側の横下地材41は、縦断面略コ字状に形成されていて、構造用合板10の下端部裏面(屋内側の面)に釘やビス等の固定具46によって止め付けられ、その上面には、嵌合溝47が横方向(長手方向)に沿って形成されている。なお、横下地材40、41としては、木材(製材、集成材)を加工したものが使用されている。
【0035】
この下側の第2支持部材22では、横架材側の横下地材40の基部43によって合板側の横下地材41が屋内側から裏支えされた状態で、且つ、横架材側の横下地材40の突部44と下側の横架材3とによって合板側の横下地材41が挟まれた状態で、横下地材40、41間に設けた構造用合板10の面外方向への脱落を防止する脱落防止部としての嵌合突起45と嵌合溝47とが互いに嵌合されて、これら横下地材40、41同士が横方向に相対移動可能に係合されている。
【0036】
非耐力壁W2の施工に際しては、軸組側(柱材側、横架材側)の下地材30、40と合板側の下地材31、41とを係合させた状態で、軸組側(柱材側、横架材側)の下地材30、40を柱材2や横架材3に固定する。このとき、軸組側(柱材側、横架材側)の下地材30、40の基部33、43によって、合板側の下地材31、41が屋内側から裏支えされた状態となっているので、屋外側からの固定具36、46の打ち込みやねじ込みによって、構造用合板10の四周を合板側の下地材31、41に止め付けるようにしている。
【0037】
上記構成の非耐力壁W2においては、地震発生時における軸組1の変形に際して、左右一対の第1支持部材21の縦下地材30、31同士が縦方向に相対的にずれて、軸組1に対する構造用合板10の主として縦方向のスライドを許容するとともに、上下一対の第2支持部材22の横下地材40、41同士が横方向に相対的にずれて、軸組1に対する構造用合板10の主として横方向のスライドを許容することで、軸組1の方形枠部4に対して構造用合板10の面方向への滑りを生じさせて、構造用合板10に剪断力をほとんど負担させないようにしている。すなわち、構造用合板10を軸組1に一体化させずに、止め付け機構20を介して縁切りすることで、剪断耐力を小さく抑えるようにしている。なお、左右一対の第1支持部材21と上下一対の第2支持部材22の端部間には、互いの干渉を防止するための隙間Sがそれぞれ確保されており、また縦下地材30、31同士の係合及び横下地材40、41同士の係合に際しては、僅かなクリアランスが設けられており、これらによって軸組1に対する構造用合板10の面方向へのスライドをスムーズに行わせるようにしている。
【0038】
上記のような面材耐力壁W1及び非耐力壁W2を併用した木造住宅の壁部においては、図5に示すように、例えば窓50を少なく(開口部分を小さく)した北面側に、非耐力壁W2を重点的に配置するだけで、壁量のバランスを良好に保って、剛心と重心のずれ(偏心率)を小さく抑えることができる。このため、従来のように壁倍率の異なる数種類の面材耐力壁を使い分ける場合と比べて、壁量計算を簡単にして、壁量のバランスの調整を容易に行うことができる。
【0039】
以上に、この発明の実施形態について説明したが、この発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することが可能である。
【0040】
例えば、剪断耐力低減用の止め付け機構20としては、軸組1に対する構造用合板10の面方向へのスライドを許容するようになっていれば、どのような構造であっても良い。例えば、左右一対の第1支持部材21を廃止して、上下一対の第2支持部材22のみによって止め付け機構20を構成しても良い。また、第1支持部材21又は第2支持部材22のいずれか一方にのみ、構造用合板10の面外方向への脱落を防止する脱落防止部を設けるようにしても良い。さらに、脱落防止部としては、嵌合突起35、45と嵌合溝37、47とを嵌合させた構造のものだけでなく、例えば軸組側(柱材側、横架材側)の下地材30、40と合板側の下地材31、41の傾斜面同士を当接させた構造であっても良い。
【符号の説明】
【0041】
1・・軸組、2・・柱材、3・・横架材、4・・方形枠部、10・・構造用合板、20・・止め付け機構、21・・第1支持部材、22・・第2支持部材、30・・柱材側の縦下地材、31・・合板側の縦下地材、35、37、45、47・・脱落防止部、40・・横架材側の横下地材、41・・合板側の横下地材、T・・厚み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の柱材(2)と上下の横架材(3)とによって囲まれた軸組(1)の方形枠部(4)に、方形状の構造用合板(10)を張り付けた壁体構造において、前記軸組(1)に対する前記構造用合板(10)の面方向へのスライドを許容する剪断耐力低減用の止め付け機構(20)を介して、前記構造用合板(10)を前記方形枠部(4)に止め付けたことを特徴とする木造住宅の壁体構造。
【請求項2】
前記止め付け機構(20)は、前記左側の柱材(2)と前記構造用合板(10)の縦方向に沿った左端部との間、前記右側の柱材(2)と前記構造用合板(10)の縦方向に沿った右端部との間にそれぞれ介装されて、前記軸組(1)に対する前記構造用合板(10)の主として縦方向のスライドを許容する左右一対の第1支持部材(21)と、前記上側の横架材(3)と前記構造用合板(10)の横方向に沿った上端部との間、前記下側の横架材(3)と前記構造用合板(10)の横方向に沿った下端部との間にそれぞれ介装されて、前記軸組(1)に対する前記構造用合板(10)の主として横方向のスライドを許容する上下一対の第2支持部材(22)とを備えた請求項1記載の木造住宅の壁体構造。
【請求項3】
前記左右一対の第1支持部材(21)は、前記左右の柱材(2)に沿って固定した柱材側の縦下地材(30)と、前記構造用合板(10)の左右端部に沿って固定した合板側の縦下地材(31)とを、縦方向に相対移動可能に係合してなり、前記上下一対の第2支持部材(22)は、前記上下の横架材(3)に沿って固定した横架材側の横下地材(40)と、前記構造用合板(10)の上下端部に沿って固定した合板側の横下地材(41)とを、横方向に相対移動可能に係合してなる請求項2記載の木造住宅の壁体構造。
【請求項4】
前記左右一対の第1支持部材(21)における柱材側の縦下地材(30)と合板側の縦下地材(31)との間、及び/又は、前記上下一対の第2支持部材(22)における横架材側の横下地材(40)と合板側の横下地材(41)との間に、前記構造用合板(10)の面外方向への脱落を防止する脱落防止部(35)(37)(45)(47)を設けた請求項3記載の木造住宅の壁体構造。
【請求項5】
前記左右一対の第1支持部材(21)において、前記柱材側の縦下地材(30)によって前記合板側の縦下地材(31)を屋内側から裏支えした状態で、これら縦下地材(30)(31)同士を係合するとともに、前記上下一対の第2支持部材(22)において、前記横架材側の横下地材(40)によって前記合板側の横下地材(41)を屋内側から裏支えした状態で、これら横下地材(40)(41)同士を係合した請求項3又は4記載の木造住宅の壁体構造。
【請求項6】
前記止め付け機構(20)を、前記方形枠部(4)における屋内外方向の厚み(T)内に収まるように設けた請求項1乃至5のいずれかに記載の木造住宅の壁体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−87435(P2013−87435A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226497(P2011−226497)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000198787)積水ハウス株式会社 (748)
【Fターム(参考)】