説明

木造建物の柱補強装置

【課題】 締付けナットが緩む等の経時変化が生じにくく、後付け施工を簡単に行うことのできる斬新な構造の、柱補強装置を提供する。
【解決手段】 柱8と基礎コンクリート6に、互いに対向する側方向に見込み幅が漸次狭くなる中空部2を備えた補強基枠1を固定する。補強基枠1の前記中空部2に充填したポルトランドセメントモルタル9に、前記補強基枠1の、前記互いに対向する側の開口端を通じて前記補強基枠1,1間にまたがる棒鋼10の端部を挿着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造建物の柱補強装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、柱側と基礎コンクリート側のそれぞれの表面に金属製の補強枠をボルトで固着し、該補強枠杆に締付けボルトをわたして、これに螺合した締付けナットを螺合、締付けて、地震等により生じる柱に負荷する引抜き力に対処するようにした構造のものがある(例えば、特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開平10−169210号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来のものは、締付けナットの締付けによって補強状態を確保するため、該ナットが緩んで当該確保にそごが生じ、補強性能に支障を来たすときがある。
【0005】
本発明は、斯様な従来例の欠点に着目し、ナットが緩むなどの経時変化が生じにくく、後付け施工を簡単に行うことのできる、斬新な構造の柱補強装置を提供することを目的として創案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
柱と基礎コンクリートに、互いに対向する側方向に見込み幅が漸次狭くなる中空部を備えた補強基枠を固定し、該補強基枠の前記中空部に充填した充填固化材に、前記補強基枠の、前記互いに対向する側の開口端を通じて前記補強基枠間にまたがる棒鋼の端部を挿着した構成とするのである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、地震時などに柱に引抜き力が作用したとき、補強基枠に充填した充填固化材が、補強基枠間において先細状のくさび状の硬化した塊となって補強基枠から抜けることがなく、従って、耐引抜き性の優れた、充填固化材と棒鋼を利用した柱の補強装置を得られる。しかも、ナットが緩む等の経時変化が少なく、後付け施工が簡単で、柱と基礎コンクリートの表面間の段差を吸収して施工でき、耐震強度の有る斬新な構造の、木造建物の柱の補強装置を提供できる。
【実施例】
【0008】
図面は、本発明に係る木造建物の柱補強装置の一実施例を示し、図1は正面図、図2は図1a−a線断面図、図3は補強基枠の斜視図、図4は施工時の状態の一部の断面図、図5は施工時の状態の他の一部の断面図である。
【0009】
図中、1は金属製の補強基枠で、補強基枠1は中央の方形の中空部2と該中空部2の両側に突設した平板状の取付部3,3で成り、横長金属板に断面ほぼハット形鋼状の金属枠を金属枠の翼部において横長金属板に熔接して形成したもので、中空部2は、内径が上下方向の一方の開口端2´から他方の開口端2´´方向に漸次縮径し、実施例の中空部2は、該中空部2を構成する前部片2aが前記一方の開口端2´から他方の開口端2´´に至るに従って該前部片2aに相対する後部片2b(前記横長金属板で構成する)に漸次近接する傾斜状を成して見込み方向幅が一方の開口端2´から他方の開口端2´に至るに従って漸次縮径する一方、見付け方向に相対して中空部2を構成する側部片2c,2c同士が一方の開口端2´から他方の開口端2´´に至るに従って漸次近接する傾斜状を成して見付け方向幅においても一方の開口端2´から他方の開口端2´´に至るに従って漸次縮径する形態を採るが、見込み方向幅において漸次縮径する内腔部形状であれば良く、従って、中空部の形態は実施例のように角筒状に限定する必要なく、円筒その他形態は制約されない。
【0010】
補強基枠1は、取付部3に設けた透孔4にねじ釘5,5´を貫通させて基礎コンクリート6と、該基礎コンクリート6上に土台7を介して立設した柱8のそれぞれの適所に締め付けたもので、基礎コンクリート6側の補強基枠1と柱8側の補強基枠1(図示では、符号1Aで示す)は、前記他端2´´側を相対向する側に配し、すなわち、互いに近接する方向に見込み幅が漸次狭くなる中空部2を備えた一方の補強基枠1を基礎コンクリート6側に、他方の補強基枠1(1A)を柱8側にそれぞれ止着し、該補強基枠1,1に充填したポルトランドセメントモルタル13中に中空部2の互いに相対向する開口端2´´,2´´を通じて棒鋼10の端部10a,10aを挿着して棒鋼10を補強基枠1,1を介して基礎コンクリート6と柱8に介在させ、該棒鋼10でこれらを連結してある。
【0011】
実施例装置を得るに、基礎コンクリート6と柱8のそれぞれの適所に、前記の通り、ねじ釘5,5´を用いて補強基枠1,1(1A)を固着し、該補強基枠1,1(1A)間に、端部10aを挿入するようにして棒鋼10を補強基枠1,1間にわたすようにして組合わせ、該組合わせ作業と、基礎コンクリート6と柱8のそれぞれに固着した状態の補強基枠1,1(1A)の下面を、蓋板18,18´を該基枠1,1(1A)に仮止めして塞ぐ作用とを相前後して行って、棒鋼10の組合わせ状態を適宜の支持手段で保持し、各補強基枠1,1(1A)の中空部2に上側からポルトランドセメントモルタル13を充填し、硬化後、棒鋼の支持手段を撤去し、また、蓋板18,18´を取り外す(必ずしも取り外す必要はない)ことにより実施例装置を得るのである。
【0012】
なお、実施例装置を得るために用いた蓋板18,18´は、図4、図5で示すように接着テープ19を用いて補強基枠1に仮止めしたが、該手段は自由に選択すれば良く、図4で示す、柱8に固着した補強基枠1に用いた蓋板18は、切込み18aを備え、該切込み18aに棒鋼10を係合するようにして棒鋼10の干渉を避けて、補強基枠に重ね合わせて仮止めし、ポルトランドセメントモルタル13の中空部2からの脱落を防ぐようにしている。
【0013】
また、棒鋼は、鉄筋に用いる所謂異形棒鋼を用いているが、これは硬化後のポルトランドセメントモルタル13中から抜けにくいものを用いる趣旨で、従って、単なる丸棒状のものに部分的に大径にした鍔(アンカーとなる)を設けたものや折り曲げ加工したもの或いは棒杆の端部にナットを螺合したもの等々抜けにくい効果を期待できるものであればその形態は問わない。もっとも、直棒状のものであってもポルトランドセメントモルタルと一体的になれば何等不都合はないから、その是非は試験によって決めれば良い。
【0014】
実施例ではポルトランドセメントモルタルを用いたが、その組成は問わず中空部(クサビ形隙間)2に充填できる流動性を持ち、充填後は固化しアンカーを保持することはできる材料を意味する充填固化材であれば良く(中空部2内で充填後固化し、アンカーが抜けないように保持できるだけの強度が必要であり、その強度は概ね圧縮強度で20N/mm2程度以上である)、充填固化材としては実施例のポルトランドセメントモルタルの外に、アルミナセメント、混合セメントなどの水硬性セメントや、エポキシ樹脂、MMA樹脂等使用することができ、適宜、骨材、体質顔料、流動化材、増粘剤等を添加することができる。また、充填固化材の流動性はモルタル状、スラリー状、グリス状、ペースト状など中空部2内に充填できる状態のものであれば使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】正面図。
【図2】図1a−a線断面図。
【図3】補強基枠の斜視図。
【図4】施工時の状態の一部の断面図。
【図5】施工時の状態の他の一部の断面図。
【符号の説明】
【0016】
1 補強基枠
2 中空部
6 基礎コンクリート
8 柱
10 棒鋼
13 ポルトランドセメントモルタル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱と基礎コンクリートに、互いに対向する側方向に見込み幅が漸次狭くなる中空部を備えた補強基枠を固定し、該補強基枠の前記中空部に充填した充填固化材に、前記補強基枠の、前記互いに対向する側の開口端を通じて前記補強基枠間にまたがる棒鋼の端部を挿着した、木造建物の柱補強装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−221779(P2009−221779A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−69313(P2008−69313)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(597170368)アサヒボンド工業株式会社 (4)
【出願人】(508082773)株式会社MG耐震技術研究所 (3)
【出願人】(591027499)株式会社カネシン (49)
【出願人】(508083987)株式会社田中組 (3)
【出願人】(598072180)ファイベックス株式会社 (24)
【出願人】(592067395)日本化成株式会社 (11)
【Fターム(参考)】