説明

木造建築物の基礎構造

【課題】
土台だけを交換可能な木造建築物の基礎構造を提供すること。
【解決手段】
従来のアンカーボルトに相当する埋設材16の上端面17に雌ネジ18を形成した上、この埋設材16が基礎パッキン21の上面から突出しないように埋め込み高さを調整して、さらに基礎パッキン21に埋設材16を収容するための切欠22を設けておき、基礎パッキン21に載置された土台31の上面から雌ネジ18に向けてボルト41を差し込む形態の基礎構造とする。これによって建物を改修する際、切欠22を利用して基礎パッキン21を抜き取り、さらにボルト41を外すと、土台31を埋設材16と接することなく室外側に移動可能で、土台31の交換が実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸組工法による木造建築物の基礎構造に関する。
【背景技術】
【0002】
木造建築物は、適切な維持管理を行うことで数百年といった寿命も不可能ではなく、多くの歴史的建造物が現存しているが、国内の一般的な住宅は、ライフスタイルの変化などに対応できず、築後数十年程度で解体される場合が多い。しかし近年では、地球温暖化などの環境問題に対応するため、住宅においても二酸化炭素の排出削減や資源の有効活用などが求められており、その解決策として、建物の寿命を延ばすことが検討されており、政財界を中心として200年住宅といった概念が提唱されている。
【0003】
木造軸組工法は、基礎コンクリートの上面に土台を敷設して、この上に柱を載せて建物の骨格を構成している。土台は建物全体を支える最も重要な部材であり、腐食が進むと建物の強度を維持できない。しかし土台は、床下から発散される水分にさらされるほか、白アリによる食害なども受けやすく、さらに外部に一切露見しないため、居住者の知らないうちに劣化が進むことがある。仮に土台の劣化が進行すると、その補修には大規模な工事が必要になり、費用などの面で折り合いが付かない場合がある。このような背景から、200年住宅を実現するには、土台の交換をあらかじめ想定しておく必要がある。
【0004】
木造軸組工法における土台の据え付け方法の一例を図9に示す。なお図9(A)は全体構成で、図9(B)はアンカーボルト周辺の構成である。この図では、地面から突出する基礎コンクリートの上面に土台を載せているが、基礎コンクリートと土台との間には、基礎パッキンを介在させている。基礎パッキンは、アンカーボルトが突出している箇所に限定して配置されており、他の箇所では土台の下面に隙間が生じるため、基礎コンクリートに換気口を設けなくても床下の換気が実現する。なおアンカーボルトは、土台の端部などに合わせて配置されており、土台を所定の位置に仮設した後、ナットを螺合して締め付けると、土台は基礎コンクリートと強固に一体化して、地震などで土台が浮き上がることもない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
土台が腐食した場合でも、比較的簡単な方法で交換できるならば建物の長寿命化が実現する。この取り組みは既に進められており、下記特許文献などの技術が提案されている。特許文献1および2は、土台が左右に二分割されており、その分割面にアンカーボルトやホゾなどを通すことで、土台を水平方向に移動可能で、柱や基礎コンクリートに手を加えることなく土台を交換できる。この技術で実際に土台を取り外す場合、一方の土台は屋外側に移動させればよいが、他方の土台は建物の内側に移動させる必要がある。しかし建物の内側は空間に制約が多く、さらに大引きなどの部材が土台と結合していることも多く、寺院のような床下が高い建物では有効に活用できるが、一般住宅などでは作業が難しい。
【特許文献1】特開平7−173874号公報
【特許文献2】特開2001−262702号公報
【特許文献3】特開2005−171571号公報
【0006】
また特許文献3は、柱や土台などの棒状部材の交換工事を簡素化することなどを目的としており、柱などの端面に取付穴を加工して、この中に接合金物を埋め込んでいる。接合金物は、取付穴の中を自在に移動可能であり、必要に応じて全体を取付穴の中に隠すことができる。したがって柱を梁に取り付ける際は、柱の端面に接合金物を埋め込んでおき、所定の位置に仮設した後、接合金物を梁に差し込んだ上、接合金物をドリフトピンで固定することで、既存の梁の間に新たに柱を設置できる。この技術は、部材の端面を他の部材に締結することを目的としており、アンカーボルトが内部に挿通される土台には適用できない。
【0007】
本発明はこうした実情を基に開発されたもので、土台だけを交換可能な木造建築物の基礎構造の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するための請求項1記載の発明は、基礎コンクリートと、基礎コンクリートに載置する土台と、基礎コンクリートと土台の間に介在する基礎パッキンと、土台を固定するための締結具と、を備え、前記締結具は、基礎コンクリートに埋設され上端面に雌ネジが形成されている埋設材と、土台の上面から差し込まれ且つ前記雌ネジに進退可能に螺合するボルトと、からなり、前記基礎パッキンには、前記上端面が外部に飛び出ることなく収容可能な切欠が形成されており、基礎パッキンが水平移動することで、前記埋設材が前記切欠から離脱可能であることを特徴とする木造建築物の基礎構造である。
【0009】
本発明は、土台を水平方向に移動可能な構造とすることで、腐食が進んだ土台を取り外した上、新たな土台に交換できることを特徴としているが、前記特許文献1や2に示されるような、土台を左右に二分するものではない。また本発明は、締結具によって土台を基礎コンクリートに引き寄せており、さらに基礎コンクリートと土台との境界には、基礎パッキンを挟み込むことを前提としている。基礎パッキンは、基礎コンクリートと土台との境界に隙間を確保して、床下の換気を促進する機能がある。
【0010】
締結具は、埋設材とボルトで構成されるが、そのうち埋設材は、図9に示すアンカーボルトと同様の物で、全体または大半が基礎コンクリートの中に埋め込まれており、その上端面に雌ネジが形成されている。埋設材の上端部は、基礎コンクリートの上面から突出させるが、埋設材の全体を基礎コンクリートの中に埋め込むことも可能で、この場合には基礎コンクリートの上面に穴が形成され、その中に雌ネジが露見することになる。さらに埋設材の上端面は、必ず基礎パッキンの上面よりも突出しないようにする。したがって基礎パッキンの上に載置された土台は、埋設材と接触することなく水平方向に移動できる。またボルトは、土台を固定するために使用され、土台の上面から埋設材の雌ネジに向けて差し込まれる。
【0011】
本発明で用いる基礎パッキンは、図9に示すようなアンカーホールは形成されておらず、外部に開いた切欠が形成されている。従来の基礎パッキンは、中心にアンカーボルトが挿通されていたが、本発明では切欠の中に埋設材を収容するため、基礎パッキンは埋設材に拘束されることなく水平方向に移動可能であり、基礎コンクリートと土台で挟み込まれた状態でも抜き取りができる。
【0012】
このように、埋設材を基礎コンクリートに埋め込む際、その上端面が基礎パッキンの上面よりも突出しないようにして、次に基礎コンクリートの上に基礎パッキンを置き、その切欠の中に埋設材を収容した後、基礎パッキンの上に土台を敷設する。さらに土台の上面から埋設材の雌ネジに向けてボルトを差し込んで締め上げると、土台は基礎パッキンに押圧されて固定される。なお土台には、ボルトを差し込むため、所定の位置に下孔を加工しておく。そして施工後に土台を交換する際は、まず始めにボルトを取り外して、次に基礎コンクリートと土台の隙間にジャッキなどを挟み込んで土台をわずかに持ち上げ、さらに基礎パッキンを水平方向に抜き出して、土台の拘束を解除する。この段階で土台は水平方向に移動可能になり、土台の交換が実現する。
【0013】
請求項2記載の発明は、基礎パッキンに関するもので、基礎パッキンは、上下に積層された下板と上板とで構成され、下板と上板の境界は、一様な傾斜面であることを特徴とする。本発明は、基礎パッキンを抜き取る際の作業性を向上するため、基礎パッキンを上下二枚の板で構成して、その境界を一様な傾斜面とするものである。一様な傾斜面とは、途中で傾きの方向や角度が変わることのない単純な面を意味しており、この傾斜面によって下板と上板が離反するような水平分力が発生して、基礎パッキンの抜き取りが容易になる。ただし通常は、下板と上板の境界に摩擦が生じるため、下板と上板が自然に離反することはない。そのほか傾斜面の傾斜方向については、基礎パッキンを抜き取る際、埋設材と干渉しないようにする。
【0014】
請求項3記載の発明は、柱の据え付けを考慮したもので、土台は、柱によって分断されており、分断された土台の間に柱脚金物が介在しており、該柱脚金物の上面に柱が載置されていることを特徴とする。一般的な軸組工法では、土台の上に柱を載せており、土台と柱は強度を確保するため強固に一体化されている。したがって土台を水平に移動する際は、柱の取り扱いを考慮する必要がある。しかし本発明では、土台を細分化した上、土台同士の境界に柱脚金物を配置して、この柱脚金物を介して柱を据え付けているため、土台が柱に拘束されず、土台だけを水平方向に移動可能で作業性が向上する。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の発明のように、従来のアンカーボルトに相当する埋設材の上端面に雌ネジを形成して、この上端面が基礎パッキンから突出しないように埋設して、さらに基礎パッキンには埋設材を収容するための切欠を設けて、基礎パッキンの上に載置された土台の上面から雌ネジに向けてボルトを差し込む構造とすることで、建築後に基礎パッキンを水平方向に抜き取ることができ、しかもボルトを外すことで、土台を埋設材と干渉することなく水平方向に移動でき、基礎コンクリートや柱などを撤去することなく土台の交換ができる。また本発明は、土台全体を室外側に移動できるため、床下での作業量が少なく、一般住宅などの比較的小規模な建物でも問題なく実施可能で、より多くの木造建築物の長寿命化が実現する。
【0016】
請求項2記載の発明のように、基礎パッキンを下板と上板で構成して、その境界を傾斜面とすることで、基礎パッキンを抜き取る際、下板と上板が離反するような水平分力が発生するため、基礎パッキンの抜き取りが容易になり作業性が向上する。なお通常の状態では、境界面に作用する摩擦によって、下板と上板が離反することはない。
【0017】
請求項3記載の発明のように、土台を細分化して、隣接する土台の間に柱脚金物を挟み込んで、この柱脚金物を介して柱を取り付けることで、土台の上面に柱を載置しない骨格構造となり、土台を外す際、柱の仮受けなどの対策が不要で作業性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は本発明による木造建築物の基礎構造の形態例を示している。本図では、地表面から直立して線状に延びる基礎コンクリート11の一部分だけを描いており、この中に一個の埋設材16が埋め込まれている。埋設材16は、通常のアンカーボルトとは異なり、上端面17周辺だけが外部に露見しており、上端面17の中心に雌ネジ18が形成されている。また基礎コンクリート11と土台31の間に介在する基礎パッキン21は、耐久性に優れた硬質樹脂を素材としており、床下に風を送り込むための空間を確保する機能があり、その中心部にボルト41を収容するため、外部に開いた切欠22が形成されている。この切欠22によって、ボルト41や埋設材16に拘束されることなく基礎パッキン21を水平方向に移動できる。なお基礎パッキン21を基礎コンクリート11の上に載置した際、埋設材16の上端面17が、基礎パッキン21の上面よりも突出しないよう、各部の寸法が調整されている。
【0019】
土台31は矩形断面の木材であり、この中にボルト41を挿通して、その先部を雌ネジ18に螺合させることで、土台31が基礎コンクリート11と一体化する。ボルト41を挿通するため、土台31の上下を貫通する下孔32が加工されており、その上部にはボルト41の頭部を収容するため、直径を拡大した座グリ穴33が加工されている。なお座グリ穴33の底には、ボルト41による締め付け荷重を緩和するため、ワッシャ43を介在させている。土台31を据え付ける際は、基礎パッキン21を基礎コンクリート11の上面に載せた後、基礎パッキン21の中心を埋設材16の中心と一致させて、次に下孔32と雌ネジ18を同心に揃えながら、土台31を基礎パッキン11に載せる。そして座グリ穴33からボルト41を差し込んで雌ネジ18に螺合させて締め上げると、土台31が基礎コンクリート11と一体化する。
【0020】
図2は、図1に示す各要素を組み上げた状態を示しており、図2(A)は上方から見たもので、図2(B)は縦断面である。図2(A)のように、土台31は基礎コンクリート11に沿って配置されており、土台31の中央にボルト41が取り付けられている。また図2(B)のように、埋設材16の先端の上端面17付近だけが基礎コンクリート11の上面から外部に突出している。なお埋設材16は、汎用の寸切ボルトと長ナットを溶接で一体化した物である。そのほか、基礎コンクリート11と土台31の間には基礎パッキン21が介在しているが、基礎パッキン21の右半分には切欠22が形成されているため、上端面17の周囲は開放されている。また土台31に差し込まれるボルト41は、その先部が埋設材16の雌ネジ18と螺合しており、実質的に埋設材16と一体化している。しかもボルト41の頭部は、座グリ穴33によって全体が土台31の中に埋没しており、床板20など他の部材を取り付ける際、障害になることもない。なお座グリ穴33の底部とボルト41の頭部との間には、圧力を緩和するためワッシャ43を介在させている。
【0021】
土台31を取り外す工程は、まず始めに床板20を取り外した後、ボルト41を雌ネジ18から取り外す。次に基礎コンクリート11と土台31の隙間に小形のジャッキなどを挟み込んで土台31をわずかに上昇させて、基礎パッキン21を水平方向に移動させて取り外す。この段階でジャッキを外すと、土台31は基礎パッキン21やボルト41に拘束されないため、水平方向に移動させて取り外すことができる。そして、この逆の手順で土台31を取り付けることもできる。なお床板20は土台31の交換を考慮して、ネジ釘など、後に取り外しが容易な手段で取り付けることが好ましい。
【0022】
図3は、図1とは異なる本発明の形態例である。本図では基礎パッキン21が上下に分割された構造になっており、またボルト41は、中央付近に面取部42が形成されている。基礎パッキン21は、下方に位置する下板23と、上方に位置する上板24で構成され、双方の傾斜面25を接触させて使用する。したがって下板23と上板24の両方に切欠22が形成されている。傾斜面25は、文字通りの斜面になっているが傾きは全域で不変であり、上板24に垂直荷重が作用することで、傾斜面25に沿って滑り落ちるような分力が発生する。またボルト41に形成した面取部42は、工具を掛けるためのもので、図では対向する二面だけを切り欠いているが、六角断面などに切り欠いてもよい。
【0023】
図4は、図3に示す各要素を組み上げた状態を側面から見たもので、図4(A)は基礎パッキン21が組み込まれており、図4(B)は基礎パッキン21が取り外されている。図4(A)のように基礎パッキン21は、下板23と上板24の境界となる傾斜面25が右上がりに延びており、またボルト41の面取部42は、基礎コンクリート11の上面と土台31の下面の間に位置している。本図のような構成では、基礎パッキン21に垂直荷重が作用することで、下板23と上板24を離反させる方向に水平分力が発生するが、この分力よりも傾斜面25で生じる摩擦の方が大きいため、経年によって上板24が滑り落ちることはない。しかし土台31を交換するため、土台31をわずかに持ち上げた際は、傾斜面25の作用で下板23と上板24を容易に取り外すことができる。
【0024】
傾斜面25を利用して基礎パッキン21を抜き取った状態が図4(B)である。この状態では、ボルト41の面取部42が基礎コンクリート11と土台31の間に露見している。したがって面取部42に工具を掛けて回転を与えると、ボルト41を雌ネジ18から取り外すことができる。面取部42を設けることで、土台31の上に他の部材があり、ボルト41を上方に抜くことが困難な場合でも本発明を適用できる。なお本図では、ボルト41が上方に移動できるよう、座グリ穴33の深さを増大させている。
【0025】
図5は、図1に示す形態を基に、柱50を固定するための柱脚金物35を組み合わせた形態を示している。この図では左右に土台31a、31bが配置され、その境界に柱脚金物35が挟み込まれている。柱脚金物35は、中空で正方形状の箱部36と、この上に突出する円断面の棒部37で構成され、箱部36の底部中央には底孔38が形成され、棒部37の側面には横孔39が形成されている。底孔38は、柱脚金物35を基礎コンクリート11と一体化するために使用され、この中に柱脚用アンカーボルト19を差し込んだ後、ナット40を螺合して締め上げる。また柱50は柱脚金物35に載せられるが、その下面には棒部37を差し込むための軸穴51が加工されており、この軸穴51と交差するピン孔52が側面に加工されている。棒部37を軸穴51に差し込んで柱50を柱脚金物35に載せた後、ピン孔52にドリフトピン53を打ち込むと、柱50が柱脚金物35を介して基礎コンクリート11と一体化する。なお柱脚用アンカーボルト19は、埋設材16とは異なり単純な雄ネジが突出する通常の形態で、しかも基礎パッキン21の上面よりも突出していても構わない。
【0026】
土台31a、31bの固定方法については図1と全く同様だが、基礎パッキン21の切欠22は、いずれも柱脚金物35の方に向ける必要があり、基礎パッキン21を柱脚金物35とは反対の方向に移動させて土台31a、31bの抜き取りを行う。このように柱脚金物35で柱50を支持させることで、土台31の上面が拘束されないため、土台31を交換する際の作業が簡素化される。
【0027】
図6は、図5に示す各要素を組み上げた状態を示しており、図6(A)は斜め上からの見たもので、図6(B)は縦断面である。このように左右の土台31a、31bは柱脚金物35と柱50によって分断されており、土台31a、31bの端面が、柱脚金物35および柱50と接触している。したがって柱50に作用する垂直荷重は、土台31を介することなく基礎コンクリート11に伝達するため、土台31を交換する際、柱50の仮受けが不要になる。
【0028】
図7は、本発明による基礎構造において、土台31の上面に柱50を載せる場合の構成例を示している。図5の形態では土台31を交換する際に柱50を取り外す必要はないが、柱50は比較的狭い間隔で配置されることから、全ての柱50をこのように設置することはできない。そこで一部の柱50については、本図のような柱受金物55を使用して、土台31の上に柱50を載せて、土台31だけを水平移動できるようにする。柱受金物55は、金属板を折り曲げて形成した羽板56と、円断面の棒部57が一体化したもので、柱50の底部に形成されたスリット54に羽板56を差し込み、また棒部57を土台31の上面に差し込み、それぞれのピン孔52にドリフトピン53を打ち込んで土台31と柱50を一体化する。そして土台31を抜き取る際は、あらかじめ柱50を他の部材などで仮受けした後、柱50に打ち込まれたドリフトピン53を抜き取り、柱受金物55を土台31と一体で移動させる。柱受金物55の羽板56の向きを土台31の移動方向と一致させることで、柱受金物55を取り外すことなく土台31の抜き取りが実現する。
【0029】
図8は、本発明による基礎構造において、土台31に大引き45を締結する場合の構成例を示している。大引き45は土台31と同様、水平方向に敷設され、その両端が土台31によって支持されている。したがって土台31を交換する際は、土台31と大引き45を分離する必要があり、本図のような連結金物46を使用する。この連結金物46は、固定ピン47によって大引き45と一体化され、また連結ボルト48と連結ナット49によって土台31と一体化され、連結ナット49を取り外すことで大引き45を分離できる。なお、この際は大引き45を束などで仮受けする必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明による木造建築物の基礎構造の形態例を示す斜視図である。
【図2(A)(B)】図1に示す各要素を組み上げた状態を示しており、(A)は平面図で、(B)は縦断面図である。
【図3】図1とは異なる本発明の形態例を示す斜視図である。
【図4(A)(B)】図3に示す各要素を組み上げた状態の側面図であり、(A)は基礎パッキンが組み込まれており、(B)は基礎パッキンが取り外されている。
【図5】図1に示す形態を基に、柱を固定するための柱脚金物を組み合わせた形態を示す斜視図である。
【図6(A)(B)】図5に示す各要素を組み上げた状態を示しており、(A)は斜視図で、(B)は縦断面図である。
【図7】本発明による基礎構造において、土台の上面に柱を載せる場合の構成例を示す斜視図である。
【図8】本発明による基礎構造において、土台に大引きを締結する場合の構成例を示す斜視図である。
【図9(A)(B)】木造軸組工法における土台の据え付け方法の一例を示しており、(A)は全体構成で、(B)は、アンカーボルト周辺の構成である。
【符号の説明】
【0031】
11 基礎コンクリート
16 埋設材
17 上端面
18 雌ネジ
19 柱脚用アンカーボルト
20 床板
21 基礎パッキン
22 切欠
23 下板
24 上板
25 傾斜面
31 土台
32 下孔
33 座グリ穴
35 柱脚金物
36 箱部
37 棒部
38 底孔
39 横孔
40 ナット
41 ボルト
42 面取部
43 ワッシャ
45 大引き
46 連結金物
47 固定ピン
48 連結ボルト
49 連結ナット
50 柱
51 軸穴
52 ピン孔
53 ドリフトピン
54 スリット
55 柱受金物
56 羽板
57 棒部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎コンクリート(11)と、基礎コンクリート(11)に載置する土台(31)と、基礎コンクリート(11)と土台(31)の間に介在する基礎パッキン(21)と、土台(31)を固定するための締結具と、を備え、
前記締結具は、基礎コンクリート(11)に埋設され上端面(17)に雌ネジ(18)が形成されている埋設材(16)と、土台(31)の上面から差し込まれ且つ前記雌ネジ(18)に進退可能に螺合するボルト(41)と、からなり、
前記基礎パッキン(21)には、前記上端面(17)が外部に飛び出ることなく収容可能な切欠(22)が形成されており、基礎パッキン(21)が水平移動することで、前記埋設材(16)が前記切欠(22)から離脱可能であることを特徴とする木造建築物の基礎構造。
【請求項2】
前記基礎パッキン(21)は、上下に積層された下板(23)と上板(24)とで構成され、下板(23)と上板(24)の境界は、一様な傾斜面(25)であることを特徴とする請求項1記載の木造建築物の基礎構造。
【請求項3】
前記土台(31)は、柱(50)によって分断されており、分断された土台(31a、31b)の間に柱脚金物(35)が介在しており、該柱脚金物(35)の上面に柱(50)が載置されていることを特徴とする請求項1又は2記載の木造建築物の基礎構造。


【図1】
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【図2(A)(B)】
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【図3】
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【図4(A)(B)】
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【図5】
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【図6(A)(B)】
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【図7】
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【図8】
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【図9(A)(B)】
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【公開番号】特開2009−281090(P2009−281090A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−135781(P2008−135781)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【出願人】(501138161)
【Fターム(参考)】