説明

木造建築物の筋かい接合金物

【課題】筋かい材の設置角度・太さ・幅の大小を選ばず、あらゆる状況での筋かい材設置を可能とする接合金物を提供する。
【解決手段】横架材に当接固定される横架材金物4と、筋かい材に当接固定される筋かい金物8と、横架材金物4と筋かい金物8を接合するための接合用金物で構成する。横架材金物4は、横架材にビスで固定される板状部と板状部に垂直固定された係止溝及びボルト挿通孔を有する筋かい金物受部からなり、筋かい金物8は筋かいにビスで固定されボルト挿通孔を形成した細長板体からなり、接合用金物は、ボルト挿通孔及び突起孔を形成した胴部と胴部の両端から立設された翼板からなり、筋かい金物8のボルト挿通孔、横架材金物4の筋かい金物受部の係止溝、接合用金物のボルト挿通孔に挿通ボルトを挿入し、接合用金物の突起孔、横架材金物4の筋かい金物受部のボルト挿通孔にラグスクリューボルトを挿入して接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造建築物の鉛直材と横架材との接合部に筋かい材を固定する筋かい接合金物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、鉛直材と横架材との接合部に筋かい材を固定する場合、例えば(図7)に示すように、一枚の金属板に複数の釘孔と1つのボルト孔が設けられた筋かい金具等が一般に用いられている。
【0003】
また、特許文献1に示すように、鉛直材に止着する鉛直材固定板と横架材に止着する横架材固定板とを互いに直交に連設し、これら固定板の一側縁間に、止着杆挿通用の適宜数の挿通孔を備えた筋かい取付板を連設した接合金具を用いた接合方法(図8)が用いられている。
【特許文献1】特許第3012624号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示すように従来技術では、柱等の鉛直材と梁、土台等の横架材を設置した上でなければ、筋かい接合金物を鉛直材・横架材それぞれに当接することができないため、現場にて取付けることを余儀なくされ、現場作業に時間を要していた。
【0005】
また、従来のように筋かい材を固定する場合に、鉛直材と横架材の両方に接合金物を固定する場合には、地震時の横揺れによって筋かい材に掛かるせん断力が鉛直材に伝わり、鉛直材が破壊されることが懸念された。
【0006】
筋かい材を固定する場合、筋かい材の太さ・幅の大小の違いによって、それぞれに適応した大きさの筋かい接合金物を用意しなくてはならなかった。
【0007】
さらに、同一鉛直材の2辺あるいは3辺にそれぞれ筋かい材を固定する場合、各筋かい材を固定する筋かい接合金物に使用する釘等が同一鉛直材内でお互いに干渉する恐れがあり、その都度筋かい接合金物の固定箇所をずらして固定せざるを得なかった。
【0008】
その上、筋かい材を固定する場合、組合わされる鉛直材と横架材の長さの比率によって、固定される筋かい材の固定角度が変わる。そのため、従来の筋かい接合金物を使用した場合では、筋かい材の角度によって、それぞれに適応した筋かい接合金物を用意しなくてはならなかった。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、設置する筋かい材の角度や太さ・幅の大小を問わず固定することが可能であり、鉛直材が負担する力を軽減することができ、加えてコストダウンや作業効率の良い筋かい接合金物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の接合金物は、
木造建築物の鉛直材と横架材との接合部に筋かい材を固定する筋かい接合金物であって、
横架材に当接固定される横架材金物と、
筋かい材に当接固定される筋かい金物と、
横架材金物と筋かい金物を接合するための接合用金物とを備え、
前記横架材金物は、板状部と板状部に垂直固定された断面コ字型の筋かい金物受部から構成され、前記板状部にはビス孔を設け、前記筋かい金物受部には係止溝及びボルト挿通孔を形成し、
前記筋かい金物は、細長板体の部材からなり、ビス孔及びボルト挿通孔を形成し、
前記接合用金物は、胴部と胴部の両端から立設された翼板からなり、胴部には、ボルト挿通孔及び突起孔を形成し、
前記筋かい金物のボルト挿通孔、前記横架材金物の筋かい金物受部の係止溝、前記接合用金物のボルト挿通孔に挿通ボルトを挿入し、
前記接合用金物の突起孔、前記横架材金物の筋かい金物受部のボルト挿通孔にラグスクリューボルトを挿入することによって固定することを特徴とする。
【0011】
請求項2の接合金物は、
前記筋かい金物のボルト挿通孔は、前記横架材金物の筋かい金物受部に形成された係止溝に係合するための突起状の挿通孔であることを特徴とする。
【0012】
請求項3の接合金物は、
前記横架材金物の板状部の横架材設置面に小突起を設け、横架材に形成された嵌合溝に嵌合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、
横架材に当接固定される横架材金物、筋かい材に当接固定される筋かい金物、横架材金物と筋かい金物を接合するための接合用金物とを別体に構成しているため、予め工場において、横架材に横架材金物を、筋かい材に筋かい金物を固定してから現場へ配送する事が可能であり、現場では、各金物をボルトで固定する作業のみでよいため、作業効率が向上する。
【0014】
また、筋かい接合金物は、鉛直材には固定しないため、地震時の横揺れによって筋かいに掛かるせん断力が横架材にのみ伝わるため、鉛直材への負担が軽減される。
【0015】
さらに、横架材金物と筋かい金物は、筋かい材の太さ・幅の大小を選ばないため、あらゆる状況での筋かい材設置の際に使用することが可能であり、コスト削減が実現する。
【0016】
その上、筋かい接合金物は、同一鉛直材の2辺あるいは3辺にそれぞれ筋かい材を固定する場合でも、各筋かい材を固定する筋かい接合金物に使用する釘等がお互いに干渉する事はない。
【0017】
請求項2の発明によれば、
筋かい金物のボルト挿通孔を突起状とすることで、筋かい金物を横架材金物に固定する際に、筋かい金物のボルト挿通孔が横架材金物の筋かい金物受部の係止溝に係合されることで、必然的に筋かいの位置決めをすることができる。
また、筋かい金物のボルト挿通孔が係止溝内部を自在に摺動し得る事が可能であるため、筋かい材の角度を自由自在に設置することが可能である。
【0018】
請求項3の発明によれば、
横架材金物の横架材設置面に形成された小突起が、横架材の嵌合溝に嵌合することによって、必然的に横架材金物の位置が決定され、設置位置のずれを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
【0020】
ここで、図1は本発明の筋かい接合金物のうち横架材金物の平面図、側面図、背面図である。また、図2は該筋かい接合金物のうち筋かい金物の平面図、側面図、背面図であり、図3は該筋かい接合金物のうち接合用金物の平面図、側面図、背面図である。図4は、該筋かい接合金物を横架材と筋かいに設置した際の斜視図、図5は筋かい接合を説明するための工程図である。図6は、筋かい材の角度が自由自在に設置する事ができる側面図である。
【0021】
図4に示すように、本発明の筋かい接合金物1は、木造建築物の鉛直材10と横架材2との接合部に筋かい材3を固定する筋かい接合金物であって、
図1ないし3に示されるように、横架材2に当接固定される横架材金物4、筋かい材3に当接固定される筋かい金物8、横架材金物と筋かい金物を接合するための接合用金物9を備えている。
【0022】
図1に示すように、横架材金物4は、金属板からなる板状部5と板状部に対して、垂直に溶接固定された金属板を断面コ字型に折曲した筋かい金物受部6から構成され、板状部5には横架材2に固定する複数のビス孔5a、横架材側への設置面に1つの小突起5bが設けられ、筋かい金物受部6には下端が半円形の係止溝7a及び円形のボルト挿通孔7bを有している。係止溝7aは、筋かい金物受部6の上縁から下縁に向かって形成され、予め決められた深さを有している。また、係止溝7aの側には面取りとしての傾斜面7cが形成されている。
【0023】
図2に示すように、筋かい金物8には、筋かい材3に固定する複数のビス孔8aと、先端部に突起状の挿通孔8bが設けられた細長板体の金属板からなり、突起状の挿通孔8bは横架材金物4の平筋かい金物受部6に形成された係止溝7aの幅にほぼ等しいか、あるいは、わずかに小さく、係止溝7aの内部を自在に摺動し得るような直径に設定されている。
【0024】
図3に示すように、接合用金物9は、横架材金物4に形成された筋かい金物受部6の内側に密着するように胴部13と胴部の両端から立設された翼板14からなり、筋かい金物受部6と合わせたときに、筋かい金物受部6に形成された係止溝7a及びボルト挿通孔7bと同位置にボルト挿通孔9a及び突起孔9bを形成している。
【0025】
次に本発明による筋かい接合金物を用いて筋かいを鉛直材10及び横架材2の接合部に固定する手順の一例について説明する。
【0026】
図5に示すように、先ず、鉛直材10と横架材2とが成す隅角部の横架材部分に、横架材金物4に形成された小突起5bが嵌合される嵌合溝2aを設け、嵌合溝2aに横架材金物4の小突起5bを嵌合して当接させ、ビス孔5aからビスを打ちつけ、横架材2に横架材金物4を固定する。
【0027】
また、筋かい材3の端部を鉛直材10と横架材2との接合部に合わせて加工し、端部に筋かい金物8を突起状の挿通孔8bが外側になるよう当接し、ビス孔8aからビスを打ちつけ、筋かい材3に筋かい金物8を固定する。
また、筋かい材3には突起状の挿通孔8bと同一直線上に並ぶ位置に貫通孔3aを形成する。
【0028】
次に、筋かい材3に固定した筋かい金物8を横架材2に固定した横架材金物4に接合する。このとき、横架材金物4の筋かい金物受部6に形成された係止溝7aに、筋かい金物受部6の背面側から筋かい金物8に形成された突起状の挿通孔8bを上から降ろすように係合していく。
なお、係止溝7aの上縁の側に形成された面取りとしての傾斜面7cは、係止溝7aへの係合を容易にする作用を奏している。
【0029】
さらに、接合用金物9を、横架材金物4の筋かい金物受部6の内側から当接する。このとき、接合用金物9に形成されたボルト挿通孔9aを筋かい金物受部6に形成された係止溝7aに合わせ、突起孔9bをボルト挿通孔7bに嵌入する。
【0030】
そして、筋かい3に形成した貫通孔3aに、筋かい金物8が設置された側面と反対側より挿通ボルト11aを挿通し、筋かい金物8の突起状の挿通孔8b、横架材金物4の筋かい金物受部6に形成された係止溝7a、接合用金物9のボルト挿通孔9aを貫通させて、接合用金物9側で締付けナット11bにて締める。
同時に、今度は、接合用金物9に形成された突起孔9bからラグスクリューボルト12を挿通し、横架材金物4のボルト挿通孔7bを貫通させ、筋かい材3に締付けて固定する。
【0031】
このように、本実施形態に係る筋かい接合金物1は、鉛直材10に当接することがないため、予め工場において横架材2に横架材金物4を固定し、筋かい材3に筋かい金物8を固定した上で、現場へ配送する事が可能であり、現場にておいてはそれらの金物をボルトにて接合することで固定する事を実現でき、作業効率を向上させることが可能である。
【0032】
また、地震時の横揺れに対して筋かい材3に掛かる力は、本発明の筋かい接合金物1によってその大半が横架材2のみ伝わるため、鉛直材10への負担が軽減され、鉛直材10の破壊を防ぐことができる。
【0033】
さらに、筋かい材3に固定した筋かい金物8をを横架材2に固定した横架材金物4に接合する際には、挿通ボルト11aを締付けナット11bにて締め、ラグスクリューボルト12にて固定させる接合方法であるため、筋かい材3の太さ・幅の大小を選ばず、あらゆる状況での筋かい材3の設置に使用することが可能であり、コスト削減が実現する。
【0034】
その上、筋かい材3に固定した筋かい金物8を横架材2に固定した横架材金物4に接合する事で、筋かい金物8の突起状の挿通孔8bが横架材金物4の筋かい金物受部6に形成された係止溝7aの内部を自在に摺動し得る事が可能であるため、図6に示すように筋かい材3の角度が自由自在に設置することが可能である。
【0035】
なお、実施形態に係る筋かい接合金物1は、前述の構造に限定されるものではなく、種々の構造上の変更が可能である。
例えば、筋かい金物8、横架材金物4、接合用金物9を接合する際に使用する挿通ボルト11a、ラグスクリューボルト12を複数にし、それぞれのボルト挿通孔、小突起を複数に形成しても良く、本発明の趣旨を超えない範囲にて変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の筋かい接合金物のうち横架材金物の平面図、側面図、背面図である。
【図2】本発明の筋かい接合金物のうち筋かい金物の平面図、側面図、背面図である。
【図3】本発明の筋かい接合金物のうち接合用金物の平面図、側面図、背面図である。
【図4】本発明の筋かい接合金物を横架材と筋かい材に設置した際の斜視図である。
【図5】本発明の筋かい接合金物における筋かい材固定を説明するための工程図である。
【図6】本発明の筋かい接合金物において、筋かい材の角度が自由自在に設置する事ができる側面図である。
【図7】従来の筋かいプレートにより鉛直材と横架材と筋かいが固定されている状態を示す斜視図である。
【図8】従来の筋かい接合金物を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0037】
1 筋かい接合金物
2 横架材
3 筋かい材
4 横架材金物
5 横架材金物の板状部
5a 横架材金物のビス孔
5b 横架材金物の小突起
6 筋かい金物受部
7a 半円形の係止溝
7b ボルト挿通孔
7c 傾斜面
8 筋かい金物
8a 筋かい金物のビス孔
8b 筋かい金物の突起状の挿通孔
9 接合用金物
9a 接合用金物のボルト挿通孔
9b 接合用金物の突起孔
10 鉛直材
11a 挿通ボルト
11b 締付けナット
12 ラグスクリューボルト
13 接合用金物の胴部
14 接合用金物の翼板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木造建築物の鉛直材と横架材との接合部に筋かい材を固定する筋かい接合金物であって、
横架材に当接固定される横架材金物と、
筋かい材に当接固定される筋かい金物と、
横架材金物と筋かい金物を接合するための接合用金物とを備え、
前記横架材金物は、板状部と板状部に垂直固定された断面コ字型の筋かい金物受部から構成され、前記板状部にはビス孔を設け、前記筋かい金物受部には係止溝及びボルト挿通孔を形成し、
前記筋かい金物は、細長板体の部材からなり、ビス孔及びボルト挿通孔を形成し、
前記接合用金物は、胴部と胴部の両端から立設された翼板からなり、胴部には、ボルト挿通孔及び突起孔を形成し、
前記筋かい金物のボルト挿通孔と前記横架材金物の筋かい金物受部の係止溝と前記接合用金物のボルト挿通孔に挿通ボルトを挿入し、
前記接合用金物の突起孔と前記横架材金物の筋かい金物受部のボルト挿通孔にラグスクリューボルトを挿入することによって固定することを特徴とする接合金物。
【請求項2】
前記筋かい金物のボルト挿通孔は、前記横架材金物の筋かい金物受部に形成された係止溝に係合するための突起状の挿通孔であることを特徴とする請求項1に記載の接合金物。
【請求項3】
前記横架材金物の板状部の横架材設置面に小突起を設け、横架材に形成された嵌合溝に嵌合することを特徴とする請求項1および請求項2に記載の接合金物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−46952(P2009−46952A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−238495(P2007−238495)
【出願日】平成19年8月17日(2007.8.17)
【出願人】(397022276)富士ハウス株式会社 (5)
【Fターム(参考)】