説明

未加硫ゴム用防着剤組成物

【課題】 良好な乾燥性を有し、従来よりも防着性に優れ、未加硫ゴム表面の滑性に優れる未加硫ゴム用防着剤組成物と、その未加硫ゴム用防着剤組成物を使用して行われる防着処理された未加硫ゴムの製造方法とを提供することである。
【解決手段】 未加硫ゴム用防着剤組成物は、水膨潤性粘土鉱物を必須成分とする無機粉体と、水溶性多糖類と、界面活性剤とを含有する組成物であって、前記無機粉体を100重量部としたときに、前記水溶性多糖類0.5〜10重量部、前記界面活性剤10〜60重量部であり、前記無機粉体に占める前記水膨潤性粘土鉱物の重量割合が30〜80重量%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は未加硫ゴムの防着剤に関する。さらに詳しくは通常密着防止が困難である天然ゴムに対して優れた防着性を発揮する未加硫ゴム用防着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム製品は、通常、次の工程により製造される。
1)まず、生ゴム(天然ゴム、合成ゴムまたはそれらの混合物)を、素練りロール、バンバリーミキサー、プラチスケーター等で素練りを行い、ゴムに可塑性を与える。
2)次に、配合剤としてのカーボンブラック、硫黄、酸化亜鉛、促進剤、老化防止剤等を素練りゴムに混入しながら、オープンロールまたはバンバリーミキサーを使用して充分に混練する。
3)その後は、ゴムの用途に応じて、成型、加硫等の工程を経て、タイヤ、チューブ等のゴム製品を製造する。
上記3)において、ゴム製品の成形加工方法は、シート成形と押出成形とに大別される。シート成形は、ゴム生地を所定の厚さと幅に圧延して、大型のプレスで熱と圧力を加えてゴムシートを成形する加工法である。未加硫ゴムシートはカレンダーロールや押出機を使って成形される。押出成形には、ラム式とスクリュー式とがあり、ラム押出機は油圧式で、シリンダーに装てんしたゴム塊をトコロテンのように押出す成形機である。ホースやウインドシールやタイヤのチューブなどの長い連続体のゴム製品はスクリュー押出機で成形されることが多い。
【0003】
このようなゴムの生産加工工程において、未加硫ゴムを次の成型、加硫等の工程に移行するまでの間、積み重ねて貯蔵することがあり、この場合にゴムの密着を防止する目的で密着防止剤(防着剤)が使用されている。
従来、この密着防止剤としては、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ベントナイト等の無機粒子が、防着性に優れるために使用されている。その使用方法としては、粉末のままゴムに吹き付ける方法や、粉末中を通過させる方法等のいわゆるドライ法;前記無機粒子の粉末を水に懸濁させ、その懸濁液をスプレーする方法や、細流にてゴムに吹きつける方法や、懸濁液中に浸漬する方法等のいわゆるウェット法を挙げることができる。ウェット法における水の使用目的は作業性の向上の他にゴムの冷却をも兼ねている。また、押出機を使用したタイヤのチューブなどの中空で薄肉の円筒成形では、密着防止剤を混入した空気をチューブに吹き込みながら押出成形することで、円筒の内面が密着しないようにしている。
【0004】
しかしながら、高性能化および多様化の進歩が著しい近年のゴム製品に対して、従来の密着防止剤では性能不足になってきている。特に天然ゴムが未加硫ゴム中に多く含まれると、密着防止が非常に困難になる。天然ゴムは、ヘベア・ヌラジリエンスと呼ばれるゴムの樹の樹液を凝固・乾燥して得られ、シス−1,4結合で構成されたイソプレンの重合体であり、分子構造の規則性が高く結晶性があるので、引張強さ、耐摩耗性などの機械的強度・低発熱性に優れる。天然ゴムは、従来からゴム製品に多用されてきたが、非石油系資源であることから、近年さらに注目を集めている。そこで、天然ゴム成分に対して防着性に優れる密着防止剤の開発が望まれている。
一方、従来の密着防止剤とは異なる発想で成分が構成された密着防止剤がある。たとえば、特許文献1にはポリスチレン樹脂粉体と特定の界面活性剤を用いた水溶液をゴム面に塗布して防着する方法が開示されている。この方法は無機粒子の粉末を使用していない点を特徴としているが、充分な密着防止の効果を発揮させるためには、高濃度で使用することが必要であり、その場合、加硫ゴムの物理的性質を低下させる問題点があるため使用方法が限定され汎用性に乏しい。
【0005】
また、特許文献2には造膜性を有する水溶性高分子30〜90重量部と陰イオン活性剤または非イオン界面活性剤70〜10重量部とからなる防着用組成物が開示されている。この防着用組成物は、粉体を使用しないことを特徴としている。しかしながら、水溶性高分子と界面活性剤のみの組成では、防着用組成物を塗布したゴム面の滑り摩擦力が大きく作業現場でゴムが滑り難く作業性の低下が懸念される。またゴムの生産加工工程において凝集して乾固した凝固物が、ゴムに混入した場合、ゴムの練り工程でその凝固物が崩壊しないでゴム中に異物として残存し加硫ゴムの物理的性質を低下させる問題点があるため実用性にかける。
また、特許文献3にはゴム表面に粉末状密着防止剤を散布し、次いで水溶性造膜剤を塗布し乾燥させることによって、ゴム表面に密着防止層を形成する方法が開示されている。この方法では粉末状密着防止剤と水溶性造膜剤をそれぞれ塗布する2段階の作業が必要であるため、作業効率が悪く実用性にかける。また、粉末状密着防止剤と水溶性造膜剤をそれぞれ単独で均一にゴム表面に塗布することは極めて困難である。
【0006】
このように、特許文献1〜3の防着剤にはそれぞれ問題がある。したがって、防着性の問題を抱えつつも、従来の防着剤を使用せざるを得ないというのが現状であった。
【0007】
【特許文献1】特開平1−258914号公報
【特許文献2】特開昭62−32127号公報
【特許文献3】特開昭53−61639号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、良好な乾燥性を有し、従来よりも防着性に優れ、未加硫ゴム表面の滑性に優れる未加硫ゴム用防着剤組成物と、その未加硫ゴム用防着剤組成物を使用して行われる防着処理された未加硫ゴムの製造方法とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、水膨潤性粘土鉱物を必須成分とする無機粉体と、水溶性多糖類と、界面活性剤とを含有する組成物であれば、無機粉体および水溶性多糖類の組合せによって防着性能が著しく向上し、課題を解決できることを見出した。そして、各成分の配合比率を最適化して本発明に到達した。
すなわち、本発明にかかる未加硫ゴム用防着剤組成物は、水膨潤性粘土鉱物を必須成分とする無機粉体と、水溶性多糖類と、界面活性剤とを含有する組成物であって、前記無機粉体を100重量部としたときに、前記水溶性多糖類0.5〜10重量部、前記界面活性剤10〜60重量部であり、前記無機粉体に占める前記水膨潤性粘土鉱物の重量割合が30〜80重量%である。
【0010】
前記水膨潤性粘土鉱物がスメクタイト族に分類される層状珪酸塩鉱物を含むと好ましい。
前記無機粉体が、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレーおよびホワイトカーボンから選ばれる少なくとも1種をさらに含有すると好ましい。
【0011】
前記水溶性多糖類が、キサンタンガム、ウェランガムおよびダイユータンガムから選ばれる少なくとも1種であると好ましい。
前記界面活性剤が非イオン性界面活性剤および/またはアニオン性界面活性剤であると好ましい。ここで、非イオン性界面活性剤が、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルおよびポリオキシアルキレン硬化ひまし油から選ばれる少なくとも1種であり、前記アニオン性界面活性剤が、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、高級脂肪酸アミドスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩および長鎖スルホコハク酸塩から選ばれる少なくとも1種であるとさらに好ましい。
【0012】
前記層状珪酸塩鉱物がモンモリロナイトであると好ましい。
前記未加硫ゴム用防着剤組成物が、水をさらに含有し、その配合量を100重量部としたときに、前記無機粉体、水溶性多糖類および界面活性剤の合計が0.5〜10重量部であると好ましい。
【0013】
また、本発明にかかる防着処理された未加硫ゴムの製造方法は、未加硫ゴム用防着剤組成物を、成形加工された未加硫ゴムの表面に付着させる処理工程を含む製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の未加硫ゴム用防着剤組成物は、良好な乾燥性を有し、未加硫ゴムに優れた防着性および滑性を付与することができ、特に従来では密着防止が困難である天然ゴム成分を主体とした未加硫ゴムに対して効果が優れる。
本発明の防着処理された未加硫ゴムの製造方法では、防着処理され、優れた防着性を有する未加硫ゴムを効率よく製造でき、製造時において粉塵発生の問題が大幅に低下する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の未加硫ゴム用防着剤組成物は、無機粉体と、水溶性多糖類と、界面活性剤とを含有する組成物である。
まず、未加硫ゴム用防着剤組成物を構成する各成分を詳しく説明する。
【0016】
〔無機粉体〕
無機粉体成分は、未加硫ゴム表面に被膜を形成して防着性および滑性を発揮する成分である。
本発明において、滑性とは、「加硫ゴム用防着剤組成物を塗布した未加硫ゴムが他のゴムや金属等と接触した場合に、その接触面に生じる摩擦抵抗を下げる性質」と定義される。未加硫ゴム用防着剤組成物を塗布したゴム表面が滑り性に優れると、ゴム成形工程において摩擦抵抗を生じる類の作業の効率が向上して好ましい。
【0017】
本発明のゴム用防着剤組成物では、無機粉体は水膨潤性粘土鉱物を必須成分として含有する。
水膨潤性粘土鉱物とは、適量の水(たとえば、水膨潤性粘土鉱物100重量部に対して少なくとも30重量部以上の水)を含んでいる時に、粘性、可塑性および膨潤性を示す鉱物と定義される。本発明のゴム用防着剤組成物が水膨潤性粘土鉱物を含有していると、ゴム用防着剤組成物は未加硫ゴム表面に容易に強固な被膜を形成することができる。特に本発明のゴム用防着剤組成物がさらに水を含有している場合には、水膨潤性粘土鉱物が適度に膨潤し、水分散液となった未加硫ゴム用防着剤組成物に粘度を付与することができ、被膜形成能をさらに高めることができる。
【0018】
無機粉体に占める水膨潤性粘土鉱物の重量割合については、特に限定はないが、ゴム表面に対する被膜性を考慮すると、通常、30〜80重量%であり、好ましくは40〜80重量%、さらに好ましくは50〜80重量%、特に好ましくは60〜80重量%、最も好ましくは60〜70重量%である。水膨潤性粘土鉱物の重量割合が80重量%超であると、未加硫ゴム用防着剤組成物のハンドリング性が低下することがある。一方、水膨潤性粘土鉱物の重量割合が30重量%未満であると、防着性が低下する。
水膨潤性粘土鉱物は、大きく分けて、層状珪酸塩鉱物、非層状珪酸塩鉱物、酸化・水酸化鉱物に分類され、水膨潤性粘土鉱物が層状珪酸塩鉱物であると、入手が容易であるので好ましい。
【0019】
層状珪酸塩鉱物は、一般に、4個の酸素原子から形成される三角錐の真ん中の隙間に1個の珪素原子が入り込んでできる珪酸四面体が平たく並んで層を形成しており、さらにその層と、アルミニウムやマグネシウム等を中心とした別の層とが、サンドイッチ状に積み重なった構造をなしている。珪酸四面体の層の積み重なり方については3つのタイプがある。その層内の原子の種類や配置等によって、ハロイサイト族、カオリナイト族、スメクタイト族、バーミキュライト族、クロライト族等に分類される。これらの層状珪酸塩鉱物のうちでも、膨潤性および吸着性に優れることから、スメクタイト族やバーミキュライト族に分類されるものが好ましく、スメクタイト族に分類されるものがさらに好ましい。
スメクタイト族は、さらに、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチーブンサイト等に分類される。これらのスメクタイト族のうちでも、特に膨潤性が著しいことから、モンモリロナイトが好ましい。
【0020】
モンモリロナイトは2八面体型含水層状珪酸塩鉱物であり、ナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、水素イオンなどを交換陽イオンとして含有する。これらの陽イオンは容易に交換される性質を有しており、かつ容易に水を取り込める性質も有している。交換陽イオンがナトリウムイオンであると、水和力で水分子を取り込みやすく、層間隔が増大し膨潤が著しい。
一般に、モンモリロナイトを主成分として含有し、石英、クリストパライト、長石類、炭酸塩鉱物等を副成分として含有する水膨潤性粘土鉱物をベントナイトと呼ぶ。ベントナイトは、未加硫ゴム表面に容易に吸着し、被膜を形成することができる。ベントナイトの被膜は、防着性および滑性に優れることから、本発明のゴム用防着剤組成物における水膨潤性粘土鉱物がベントナイトであるとさらに好ましい。また、ベントナイトがナトリウムベントナイトを高い純度で含有すると、水膨潤性の効果が著しく最も好ましい。
【0021】
無機粉体は水膨潤性粘土鉱物を必須とし、これ以外のその他の無機粉体を含んでいてもよい。その他の無機粉体としては、特に限定はないが、たとえば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム等の炭酸塩;カオリン、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、クレー、タルク、マイカ、セリサイト等のケイ酸塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の硫酸塩;シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、酸化チタン、ホワイトカーボン、酸化鉄等の金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化鉄等の金属水酸化物;ベンガラ;カーボンブラック;グラファイト等が挙げられる。これらの中でも、無機粒子が、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、ホワイトカーボンから選ばれる少なくとも1種からなると、ゴム表面への付着性に優れるという理由から好ましい。
無機粉体に占める上記その他の無機粉体の重量割合については、特に限定はないが、通常20〜70重量%であり、好ましくは20〜60重量%、さらに好ましくは20〜50重量%、特に好ましくは20〜40重量%、ゴム表面に対する被膜性を考慮すると、最も好ましくは30〜40重量%である。その他の無機粉体の重量割合が70重量部%超であると、防着性が低下する。一方、その他の無機粉体の重量割合が20重量%未満であると、未加硫ゴム用防着剤組成物のハンドリング性が低下することがある。
【0022】
〔水溶性多糖類〕
水溶性多糖類も、無機粉体成分と同様に、未加硫ゴム表面に被膜を形成して防着性および滑性を発揮する成分である。本発明において、水溶性多糖類および無機粉体は、それぞれ、それ自体が防着性を有しているが、2つの成分を組み合わせることによって防着性能をさらに向上させることができる。
本発明の未加硫ゴム用防着剤組成物が水溶性多糖類を含有することによって、未加硫ゴム用防着剤組成物がさらに水を含有する場合には、水分散液となった未加硫ゴム用防着剤組成物に粘性を付与することができる。水分散液となった未加硫ゴム用防着剤組成物に粘性が付与されていると、無機粉体をゴム表面により均一に付着できるため、防着性能は向上する。
【0023】
本発明のゴム用防着剤組成物において、未加硫ゴム表面に対して防着性および滑性を付与すると考えられる主な成分は、水溶性多糖類および無機粉体の2成分である。これらの成分の組み合わせでは、相乗的に防着性能を向上させることができ、互いに他方の性能を低下させることはない。
水溶性多糖類は、単糖類が多数のグリコシド結合を介して結び付けられた構造を有するものであり、水に溶解して粘性を付与することができる。
【0024】
水溶性多糖類は、無機粉体と組み合わせても、未加硫ゴム用防着剤組成物において悪影響が生じない。水溶性多糖類としては、たとえば、キサンタンガム、グアーガム、ウェランガム、ローカストビーンガム、ダイユータンガム、タマリンドガム、タマリンドシードガム、トラガントガム、アラビアガム、カラギーナン、ラムザンガム、サクシノグリカン、タラガム、ジェランガム、カラヤガム、ペクチン、アルギン酸誘導体、セルロースエーテル等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
水溶性多糖類が、グルコース、グルクルン酸、ラムノースから選ばれる少なくとも1種を構成単糖とし、マンノース、グルクルン酸、ラムノースから選ばれる少なくとも1種を側鎖として含有する水溶性多糖類であると、耐塩性が優れるので好ましい。このような水溶性多糖類としては、特に限定はないが、たとえば、キサンタンガム、ウェランガム、ダイユータンガム等が挙げられる。
【0025】
また、上記水溶性多糖類の水溶液は、高いシュードプラスティック流動性を有しており、低剪断速度で力が付与された場合は高い見掛け粘度を示し、高剪断速度で力が付与された場合は低い見掛け粘度を示す。つまり、本発明のゴム用防着剤組成物が上記水溶性多糖類を含有していると、水分散液となった未加硫ゴム用防着剤組成物が攪拌されているときは優れた流動性を示し、ハンドリング性に優れ、一旦未加硫ゴム表面に付着すると高粘性を示し未加硫ゴム表面に良好な被膜を形成できる。
水溶性多糖類の配合割合については、特に限定はないが、無機粉体100重量部に対して、好ましくは0.5〜10重量部、さらに好ましくは1〜8重量部、特に好ましくは1.5〜6重量部、最も好ましくは1.5〜4.5重量部である。水溶性多糖類の量が無機粉体100重量部に対し10重量部超であると、分散液の粘度が大きくなりすぎてハンドリング性に優れず、また未加硫ゴム表面に形成した被膜の乾燥性に優れず好ましくない。一方水溶性多糖類の量が0.5重量部未満であると、防着性が低下する。したがって、本発明の水溶性多糖類の量は、適正な範囲内で選択される。
【0026】
水に粘性を付与し、未加硫ゴム表面に被膜を形成する添加物としては、水溶性多糖類以外にも、たとえば、蛋白類、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、水溶性ウレタン樹脂、水溶性メラミン樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性ブタジエン樹脂、水溶性フェノール樹脂等の水溶性高分子が挙げられる。しかしながら、これらの水溶性高分子は、無機粉体と併用しても、防着性能の相乗効果が観察されないか、あるいは、無機粉体が本来持つ防着性能を低下させてしまう場合がある。
これらの水溶性高分子を無機粉体と併用した際に充分な防着効果を発揮できない理由としては、たとえば、耐塩性に優れないことが挙げられる。耐塩性に優れない水溶性高分子を無機粉体と共に水に分散させると、本来の粘性が発揮できないばかりか、沈降物が生成する場合もある。水分散液となった未加硫ゴム用防着剤組成物に粘性が付与できないと、防着性は向上しないし、沈降物が生成すると、防着性能はさらに著しく低下してしまう。
【0027】
また、これらの水溶性高分子が本発明に適していない理由としては、無機粉体の必須成分である水膨潤性粘土鉱物の膨潤特性を阻害することが挙げられる。水膨潤性粘土鉱物の膨潤が阻害されると、水膨潤性粘土鉱物が被膜化できるゴム表面の面積が減少し防着性能が著しく低下してしまうと考えられる。
以上から、本発明のゴム用防着剤組成物では、これらの水溶性高分子を実質的に含有しないことが好ましいことはいうまでもない。仮に、本発明のゴム用防着剤組成物がこれらの水溶性高分子をさらに含有する場合、その配合割合は、防着性能が損なわれることを最小限にするために、無機粉体100重量部に対して、好ましくは0.5重量部以下、さらに好ましくは0.3重量部以下、特に好ましくは0.1重量部以下、最も好ましくは0重量部である。
【0028】
〔界面活性剤〕
界面活性剤は、未加硫ゴムに対して「濡れ」を補助する成分である。界面活性剤が本発明のゴム用防着剤組成物に含まれていることによって、無機粉体および水溶性多糖類をより均一にゴム表面に被膜化できる。また、本発明のゴム用防着剤組成物が水を含む場合に、無機粉体の水中での分散性を向上できる。
ここで、「濡れ」とは、界面化学では固体または液体の表面にある一つの流体を他の液体で置換する現象と定義される。たとえば、固体/気体の界面が固体/液体の界面に置き換えられたとき、その固体は液体で濡れたという。したがって、本発明の未加硫ゴム用防着剤組成物がゴムに対して濡れたと表現するときは、ゴム/空気の界面がゴム/未加硫ゴム用防着剤組成物の界面に置き換えられたことを意味する。本発明の未加硫ゴム用防着剤組成物がゴムに対して十分濡れていないと表現するときは、ゴム/空気の界面がゴム/未加硫ゴム用防着剤組成物の界面に完全に置き換えられていないことを意味する。
【0029】
界面活性剤としては、非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられ、1種または2種以上を含んでいてもよい。界面活性剤が非イオン界面活性剤および/または陰イオン界面活性剤であると好ましい。
非イオン界面活性剤としては、たとえば、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル;ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノオレエート等のポリオキシアルキレン脂肪酸エステル;ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノオレエート等のソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等のポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル;グリセリンモノステアレート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノラウレート等のグリセリン脂肪酸エステル;等のポリオキシアルキレン硬化ひまし油;ポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステル;ポリグリセリン脂肪酸エステル;アルキルグリセリンエーテル;ポリオキシアルキレンコレステリルエーテル;アルキルポリグルコシド;ショ糖脂肪酸エステル;ポリオキシアルキレンアルキルアミン;オキシエチレンーオキシプロピレンブロックポリマー等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。なかでも、非イオン性界面活性剤が、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルおよびポリオキシアルキレン硬化ひまし油から選ばれる少なくとも1種であると、ゴム表面に対して優れた濡れを発現するので好ましい。
【0030】
陰イオン界面活性剤としては、たとえば、オレイン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、オレイン酸トリエタノールアミン等の脂肪酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ステアリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩;ステアロイルメチルタウリンNa、ラウロイルメチルタウリンNa、ミリストイルメチルタウリンNa、パルミトイルメチルタウリンNa等の高級脂肪酸アミドスルホン酸塩;ラウロイルサルコシンナトリウム等のN−アシルサルコシン塩;モノステアリルリン酸ナトリウム等のアルキルリン酸塩;ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸ナトリウム等のポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩;ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等の長鎖スルホコハク酸塩、N−ラウロイルグルタミン酸ナトリウムモノナトリウム、N−ステアロイル−L−グルタミン酸ジナトリウム等の長鎖N−アシルグルタミン酸塩等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。なかでも、アニオン性界面活性剤が、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、高級脂肪酸アミドスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩および長鎖スルホコハク酸塩から選ばれる少なくとも1種であると、ゴム表面に対して優れた濡れを発現するので好ましい。
陽イオン界面活性剤としては、たとえば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム等のアルキルトリメチルアンモニウム塩;ジアルキルジメチルアンモニウム塩;トリアルキルメチルアンモニウム塩、アルキルアミン塩が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
【0031】
両性界面活性剤としては、たとえば、2−ウンデシル−N,N−(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)−2−イミダゾリンナトリウム、2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等のイミダゾリン系両性界面活性剤;2−ヘプタデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等のベタイン系両性界面活性剤;N−ラウリルグリシン、N−ラウリルβ−アラニン、N−ステアリルβ−アラニン等のアミノ酸型両性界面活性剤等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
界面活性剤の配合割合については、特に限定はないが、無機粉体100重量部に対して、好ましくは10〜60重量部、さらに好ましくは10〜50重量部、特に好ましくは10〜40重量部、最も好ましくは10〜30重量部である。界面活性剤の量が無機粉体100重量部に対し60重量部超であると、未加硫ゴム用防着剤組成物が水を含む場合に水溶液の起泡が発生し易くなり好ましくない。一方、界面活性剤の量が10重量部未満であると、ゴム表面に対する濡れを向上させる効果が少なく、無機粉体および水溶性多糖類の被膜が不均一になり防着性および滑性が低下し好ましくない。
【0032】
〔水〕
本発明の未加硫ゴム用防着剤組成物は、無機粉体と、水溶性多糖類と、界面活性剤とを必須成分とする組成物であるが、水をさらに含有してもよい。
未加硫ゴム用防着剤組成物が水を含有する場合は、水溶性多糖類および界面活性剤が水に溶解し、無機粉体が水に分散されている状態、すなわち、未加硫ゴム用防着剤組成物が分散液であると好ましい。
【0033】
水は、水道水、イオン交換水、蒸留水等のいずれでもよい。また、本発明の未加硫ゴム用防着剤組成物に含まれる水の配合割合についても、特に限定はないが、その配合量を100重量部としたときに、無機粉体、水溶性多糖類および界面活性剤の合計(以下、3成分合計ということがある)は、好ましくは0.5〜10重量部、さらに好ましくは0.5〜8重量部、特に好ましくは0.5〜6重量部、最も好ましくは0.5〜4重量部である。3成分合計が水100重量部に対して10重量部超であると、ゴム表面に付着する3成分合計の量が多くなり水分の乾燥に要する時間が長くなり実用的でない。一方、3成分合計が水100重量部に対して0.5重量部未満であると、ゴムに対する濡れが不十分で防着性が低下することがある。
未加硫ゴム用防着剤組成物が水を含有する場合、その25℃における粘度については、特に限定はないが、好ましくは2〜200mPa・s、さらに好ましくは2〜150mPa・s、特に好ましくは2〜100mPa・s、最も好ましくは2〜50mPa・sである。未加硫ゴム用防着剤組成物が水を含有する場合の粘度が200mPa・s超であると、ゴム表面に被膜する水溶性高分子の量が多くなり水分の乾燥に要する時間が長くなり実用的でないことがある。一方、その粘度が2mPa・s未満であると、ゴム表面に対する濡れが悪くなり、防着性が低下することがある。
【0034】
未加硫ゴム用防着剤組成物が水を含有する場合、そのpHとしては、特に限定はないが、好ましくは5〜12、さらに好ましくは5〜10、特に好ましくは6〜9、最も好ましくは6〜8である。未加硫ゴム用防着剤組成物が水を含有する場合のpHが5未満または12超であると、未加硫ゴム用防着剤組成物のハンドリング性に欠ける場合がある。
【0035】
〔その他の成分等〕
本発明のゴム用防着剤組成物は、上記で説明した各成分および水以外に、消泡剤や多価アルコール、金属石鹸粒子等をさらに含有していてもよい。
消泡剤としては特に限定はないが、たとえば、ヒマシ油、ゴマ油、アマニ油、動植物油などの油脂系消泡剤;ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸などの脂肪酸系消泡剤;ステアリン酸イソアミル、こはく酸ジステアリル、エチレングリコールジステアレート、ステアリン酸ブチルなどの脂肪酸エステル系消泡剤;ポリオキシアルキレンモノハイドリックアルコールジ−t−アミルフェノキシエタノール、3−ヘプタノール、2−エチルヘキサノールなどのアルコール系消泡剤;ジ−t−アミルフェノキシエタノール3−ヘプチルセロソルブノニルセロソルブ3−ヘプチルカルビトールなどのエーテル系消泡剤;トリブチルオスフェート、トリス(ブトキシエチル)フオスフェートなどのリン酸エステル系消泡剤;ジアミルアミンなどのアミン系消泡剤;ポリアルキレンアミド、アシレートポリアミンなどのアミド系消泡剤;ラウリル硫酸エステルナトリウムなどの硫酸エステル系消泡剤;鉱物油等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
【0036】
多価アルコールとしては特に限定はないが、たとえば、グリセリン、1,3−ブタンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、マルチトール、スクロース、エリスリトール、キシリトール等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
金属石鹸粒子としては、特に限定はないが、たとえば、ラウリン酸マグネシウム、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、ミリスチン酸カルシウム、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸マグネシウム、パルミチン酸カルシウム、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、トリオクタデカン酸アルミニウム、ジオクタデカン酸アルミニウム、モノオクタデカン酸アルミニウム、オクタデカン酸カルシウム、オクタデカン酸亜鉛、オクタデカン酸マグネシウム、オクタデカン酸バリウム等からなる粒子が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
【0037】
〔未加硫ゴム用防着剤組成物の製造方法〕
未加硫ゴム用防着剤組成物の製造方法は、特に限定はなく、無機粉体、水溶性多糖類、界面活性剤、さらに水やその他の成分等を混合する方法等を挙げることができる。未加硫ゴム用防着剤組成物の製造方法において、混合順序等については特に限定はなく、全成分を同時に混合してもよく、成分ごとに順番に混合してもよく、予めいくつかの成分を混合しておいて残りの成分を後で添加混合してもよい。
混合については、特に限定はなく、容器と攪拌羽根といった極めて簡単な機構を備えた装置を用いて行うことができる。また、一般的な揺動または攪拌を行える粉体混合機を用いてもよい。粉体混合機としては、たとえば、リボン型混合機、垂直スクリュー型混合機等の揺動攪拌または攪拌を行える粉体混合機を挙げることができる。また、近年、攪拌装置を組み合わせたことにより効率のよい多機能な粉体混合機であるスーパーミキサー(株式会社カワタ製)およびハイスピードミキサー(株式会社深江製)、ニューグラムマシン(株式会社セイシン企業製)、SVミキサー(株式会社神鋼環境ソリューション社製)等を用いてもよい。他には、たとえば、ジョークラッシャー、ジャイレトリークラッシャー、コーンクラッシャー、ロールクラッシャー、インパクトクラッシャー、ハンマークラッシャー、ロッドミル、ボールミル、振動ロッドミル、振動ボールミル、円盤型ミル、ジェットミル、サイクロンミルなどの乾式粉砕機を用いてもよい。
【0038】
〔防着処理された未加硫ゴムの製造方法〕
本発明の防着処理された未加硫ゴムの製造方法は、上記未加硫ゴム用防着剤組成物を、成形加工された未加硫ゴムの表面に付着させる処理工程を含む。
成形加工された未加硫ゴムにおいて、その成形加工方法や形状等について、特に限定はない。成形加工方法としては、たとえば、カレンダーロールシート成形法、ローラーヘッドシート成形法、押出シート成形法、ラム押出成形法、スクリュー押出成形法、圧縮成形法、注入成形法、射出成形法等を挙げることができる。また、その形状としては、たとえば、シート状、フィルム状、ホース状、チューブ状、スポンジ状、パッキン、ベルト、靴底等を挙げることができる。
【0039】
未加硫ゴム用防着剤組成物の付着方法としては、たとえば、未加硫ゴムにスプレーする方法、細流にて未加硫ゴムに吹きつける方法等が挙げられる。未加硫ゴム用防着剤組成物が水や多価アルコール等を含み液状である場合は、上記方法以外に未加硫ゴムを未加硫ゴム用防着剤組成物に浸漬する方法もある。
このように付着して製造された防着処理された未加硫ゴムは、次の成型、加硫等の工程に移行するまでの間、積み重ねて貯蔵する場合に、未加硫ゴム同士の密着を防止することができる。
【実施例】
【0040】
以下に、未加硫ゴム用防着剤組成物の実施例について、具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0041】
〔分散液の不揮発分濃度〕
未加硫ゴム用防着剤組成物が水を含む分散液の場合、分散液のa(g)をアルミシートに秤取し(但し、a(g)は2〜3gの範囲)、110℃で0.5時間保った後の恒量に達した残留物の質量がb(g)である。分散液の不揮発分濃度を下式にしたがって算出する。
未加硫ゴム用防着剤組成物の不揮発分濃度(wt%)=(b/a)×100
【0042】
〔分散液の粘度の測定〕
測定装置として、ブルックフィールド型粘度計(BL型、東機産業株式会社製)を用いて20℃、12rpm、ローターNo.3の条件で粘度を測定する。
【0043】
〔乾燥性の評価〕
未加硫ゴム用防着剤組成物に100℃の温度に加熱した天然ゴム試験片を浸漬してすぐに引き上げ、ゴム表面が乾くまでの時間を目視にて測定する。下部に液溜まりができるがこれは全ての試験片に出来るので無視し、この状態に至るまでを乾燥時間として測定する。乾燥時間が100秒以下であれば、次の工程に移行するまでの待ち時間が少なく、乾燥性が良い。乾燥時間が100秒超であれば、次の工程に移行するまでの待ち時間が長く、作業性に支障をきたすため乾燥性が良くない。
【0044】
〔剥離抗力の測定〕
未加硫ゴム用防着剤組成物を任意の濃度に希釈して、これに100℃の温度に加熱した天然ゴム試験片を浸漬してすぐに引き上げる。試験片が風乾したら2枚を重ね合わせ、1000kg/mの荷重をかけ40℃の恒温槽に24時間放置する。恒温槽から出した試験片を室温まで空冷し、引張り試験機テンシロン(PT−200N型、ミネベア株式会社)を用いて100mm/minの速度下で剥離抗力(N/mm)を測定した。剥離抗力が小さいほど剥がしやすく、防着性(防着力)が高い。剥離抗力が0.05N/mm以下の場合、大きな負荷なく未加硫ゴム同士を剥がすことができ、防着性が高い。剥離抗力が0.05N/mm超の場合、未加硫ゴム同士を剥がす時の負荷が大きく、防着性が低い。さらに剥離抗力が0.1N/mm超の場合、ゴム同士が密着して剥離が困難である。
【0045】
〔摩擦抗力の評価〕
未加硫ゴム用防着剤組成物に100℃の温度に加熱した天然ゴム試験片を浸漬してすぐに引き上げる。試験片が風乾したら500gの分銅を載せ、摩擦測定機(TR−2、東洋精機製作所株式会社製)を用いて分銅がゴム上を滑る際の摩擦抗力を測定した。摩擦抗力が小さいほど分銅がゴム上を滑りやすく、滑性に優れる。摩擦抗力が7N/mm以下の場合、大きな負荷なく分銅がゴム上を滑り、滑性が優れる。剥離抗力が7N/mm超の場合、分銅がゴム上を滑りにくく、滑性が劣る。さらに剥離抗力が10N/mm超の場合、分銅がゴム上を滑りにくく、滑性がさらに劣る。
【0046】
〔測定用ゴム〕
全ての測定には、天然ゴムを用いた。用いた天然ゴムの比重は0.92であり、ムーニー粘度は45〜150である。
【0047】
〔実施例1〕
ベントナイト50g、炭酸カルシウム50g、キサンタンガム2g、POE(25)ラウリルエーテル30gを均一に混合して、未加硫ゴム用防着剤組成物を得た。
さらに、イオン交換水100gに、前記未加硫ゴム用防着剤組成物を攪拌しながら加え、水中に均一に分散した未加硫ゴム用防着剤組成物(分散液)を得た。分散液は、不揮発分濃度2.0wt%、分散液粘度14mPa・sであった。
【0048】
得られた分散液に100℃に加熱された天然ゴム試験片を浸漬してすぐに引き上げた。ゴム表面が乾くまでの時間を目視にて測定したところ、乾燥時間は24秒であり乾燥性に優れていた。ゴム試験片が風乾したら2枚を重ね合わせ、1000kg/mの荷重をかけ40℃の恒温槽に24時間放置した。剥離抗力は0.010N/mmであり、負荷なく剥離することができ、防着性が優れていた。また、摩擦抗力は3.6N/mmで、滑性が優れていた。
【0049】
〔実施例2〜21〕
実施例2〜21では、実施例1において、表1、表2および表3に示すように組成をそれぞれ変更する以外は、実施例1と同様に未加硫ゴム用防着剤組成物をそれぞれ得て、物性等も実施例1と同様に評価した。その結果をそれぞれ表1、表2および表3に示す。それらは防着性および滑性に優れていた。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
【表3】

【0053】
〔比較例1〕
ベントナイト50g、炭酸カルシウム50g、POE(25)ラウリルエーテル30gを均一に混合して、未加硫ゴム用防着剤組成物を得た。
さらに、イオン交換水100gに、前記未加硫ゴム用防着剤組成物を攪拌しながら加え、水中に均一に分散した未加硫ゴム用防着剤組成物(分散液)を得た。分散液は、不揮発分濃度2.0wt%、分散液粘度1mPa・sであった。
得られた分散液に100℃に加熱された天然ゴム試験片を浸漬してすぐに引き上げた。ゴム表面が乾くまでの時間を目視にて測定したところ、乾燥時間は22秒であり乾燥性に優れていた。ゴム試験片が風乾したら2枚を重ね合わせ、1000kg/mの荷重をかけ40℃の恒温槽に24時間放置した。剥離抗力は0.1N/mm超であり、ゴム試験片同士が密着して剥離することができなかった。また、摩擦抗力は10N/mm超で、滑性に優れなかった。
実施例1と比較して、防着性および滑性が劣っていた。

【0054】
〔比較例2〜7〕
比較例2〜7では、比較例1において、表4に示すように組成をそれぞれ変更する以外は、比較例1と同様に未加硫ゴム用防着剤組成物をそれぞれ得て、物性等も比較例1と同様に評価した。得られた比較組成物の物性等の結果も、それぞれ表4に示す。実施例2〜7と比較して、防着性および滑性が劣っていた。
【0055】
【表4】

【0056】
〔比較例8〕
ベントナイト50g、炭酸カルシウム50g、ポリビニルアルコール2g、POE(25)ラウリルエーテル30gを均一に混合して、未加硫ゴム用防着剤組成物を得た。
さらに、イオン交換水100gに、前記未加硫ゴム用防着剤組成物を攪拌しながら加え、水中に均一に分散した未加硫ゴム用防着剤組成物(分散液)を得た。分散液は、不揮発分濃度2.0wt%、分散液粘度2mPa・sであった。
【0057】
得られた分散液に100℃に加熱された天然ゴム試験片を浸漬してすぐに引き上げた。ゴム表面が乾くまでの時間を目視にて測定したところ、乾燥時間は23秒であり乾燥性に優れていた。ゴム試験片が風乾したら2枚を重ね合わせ、1000kg/mの荷重をかけ40℃の恒温槽に24時間放置した。剥離抗力は0.1N/mm超であり、ゴム試験片同士が密着して剥離することができなかった。また、摩擦抗力は10N/mm超で、滑性に優れなかった。
実施例1と比較して、防着性および滑性が劣っていた。また、比較例1と比較して、性能の向上が確認できなかった。
【0058】
〔比較例9〜13〕
比較例9〜13では、比較例8において、表5に示すように組成をそれぞれ変更する以外は、比較例8と同様に未加硫ゴム用防着剤組成物をそれぞれ得て、物性等も比較例8と同様に評価した。得られた比較組成物の物性等の結果も、それぞれ表5に示す。
実施例2〜21と比較して、防着性および滑性が劣っていた。また、比較例2〜7と同様に、性能の向上が確認できなかった。
【0059】
【表5】

【0060】
〔比較例14〕
ベントナイト10g、炭酸カルシウム90g、キサンタンガム2g、POE(25)ラウリルエーテル30gを均一に混合して、未加硫ゴム用防着剤組成物を得た。
さらに、イオン交換水100gに、前記未加硫ゴム用防着剤組成物を攪拌しながら加え、水中に均一に分散した未加硫ゴム用防着剤組成物(分散液)を得た。分散液は、不揮発分濃度2.0wt%、分散液粘度3mPa・sであった。
【0061】
得られた分散液に100℃に加熱された天然ゴム試験片を浸漬してすぐに引き上げた。ゴム表面が乾くまでの時間を目視にて測定したところ、乾燥時間は18秒であり乾燥性に優れていた。ゴム試験片が風乾したら2枚を重ね合わせ、1000kg/mの荷重をかけ40℃の恒温槽に24時間放置した。剥離抗力は0.1N/mm超であり、ゴム試験片同士が密着して剥離することができなかった。また、摩擦抗力は4.1N/mmであった。
実施例1と比較して、防着性が劣っていた。
【0062】
〔比較例15〜22〕
比較例15〜22では、比較例15において、表6に示すように組成をそれぞれ変更する以外は、比較例14と同様に未加硫ゴム用防着剤組成物をそれぞれ得て、物性等も比較例14と同様に評価した。得られた比較組成物の物性等の結果も、それぞれ表6に示す。
実施例1〜22と比較して、比較例15、16、18および19では防着性が劣り、比較例17では滑性が劣り、比較例20および21では乾燥性が劣り、比較例22では防着性および滑性が劣っていた。
【0063】
【表6】

【0064】
上記実施例および比較例において、POE(n)とは、ポリオキシエチレン(オキシエチレンの繰返し単位数:n)を意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水膨潤性粘土鉱物を必須成分とする無機粉体と、水溶性多糖類と、界面活性剤とを含有する組成物であって、
前記無機粉体を100重量部としたときに、前記水溶性多糖類0.5〜10重量部、前記界面活性剤10〜60重量部であり、
前記無機粉体に占める前記水膨潤性粘土鉱物の重量割合が30〜80重量%である、
未加硫ゴム用防着剤組成物。
【請求項2】
前記水膨潤性粘土鉱物がスメクタイト族に分類される層状珪酸塩鉱物を含む、請求項1に記載の未加硫ゴム用防着剤組成物。
【請求項3】
前記無機粉体が、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレーおよびホワイトカーボンから選ばれる少なくとも1種をさらに含有する、請求項1または2に記載の未加硫ゴム用防着剤組成物。
【請求項4】
前記水溶性多糖類が、キサンタンガム、ウェランガムおよびダイユータンガムから選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれかに記載の未加硫ゴム用防着剤組成物。
【請求項5】
前記界面活性剤が非イオン性界面活性剤および/またはアニオン性界面活性剤である、請求項1〜4のいずれかに記載の未加硫ゴム用防着剤組成物。
【請求項6】
前記非イオン性界面活性剤が、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルおよびポリオキシアルキレン硬化ひまし油から選ばれる少なくとも1種であり、前記アニオン性界面活性剤が、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、高級脂肪酸アミドスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩および長鎖スルホコハク酸塩から選ばれる少なくとも1種である、請求項5に記載の未加硫ゴム用防着剤組成物。
【請求項7】
前記層状珪酸塩鉱物がモンモリロナイトである、請求項2〜6のいずれかに記載の未加硫ゴム用防着剤組成物。
【請求項8】
水をさらに含有し、その配合量を100重量部としたときに、前記無機粉体、水溶性多糖類および界面活性剤の合計が0.5〜10重量部である、請求項1〜7のいずれかに記載の未加硫ゴム用防着剤組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の未加硫ゴム用防着剤組成物を、成形加工された未加硫ゴムの表面に付着させる処理工程を含む、防着処理された未加硫ゴムの製造方法。

【公開番号】特開2009−249533(P2009−249533A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−100368(P2008−100368)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【出願人】(000188951)松本油脂製薬株式会社 (137)
【Fターム(参考)】