説明

未加硫ゴム用防着剤

【課題】 未加硫ゴム表面の滑性に優れ、脱落による粉塵発生の問題が大幅に低減され、経済的に有利な未加硫ゴム用防着剤と、その未加硫ゴム用防着剤を使用した防着処理された未加硫ゴムの製造方法とを提供することにある。
【解決手段】 未加硫ゴム用防着剤は、モンモリロナイトを必須成分とする微粉末と、高級アルコールに2種以上のアルキレンオキサイドを付加反応して得られるポリアルキレンオキサイド付加物を必須成分とする界面活性剤とを含有し、前記微粉末を100重量部としたときに、前記界面活性剤が1〜60重量部であり、モンモリロナイトの含有率が20〜50重量%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は未加硫ゴム用防着剤および防着処理された未加硫ゴムの製造方法に関する。さらに詳しくは、未加硫ゴム(以下では、未加硫ゴムを単に「ゴム」ということもある。)に対する接着性に優れ、脱落による粉塵発生の問題が大幅に低減され、経済的に有利な未加硫ゴム用防着剤およびこれを用いて防着処理された未加硫ゴムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム製品は、通常、次の工程により製造される。
1)まず、生ゴム(天然ゴム、合成ゴムまたはそれらの混合物)を、素練りロール、バンバリーミキサー、プラチスケーター等で素練りを行い、ゴムに可塑性を与える。
2)次に、配合剤としてのカーボンブラック、硫黄、酸化亜鉛、促進剤、老化防止剤等を素練りゴムに混入しながら、オープンロールまたはバンバリーミキサーを使用して充分に混練する。
3)その後は、ゴムの用途に応じて、成型、加硫等の工程を経て、タイヤ、チューブ等のゴム製品を製造する。
【0003】
上記3)において、ゴム製品の成形加工方法は、シート成形と押出成形とに大別される。シート成形は、ゴム生地を所定の厚さと幅に圧延して、大型のプレスで熱と圧力を加えてゴムシートを成形する加工法である。未加硫ゴムシートはカレンダーロールや押出機を使って成形される。押出成形には、ラム式とスクリュー式とがあり、ラム押出機は油圧式で、シリンダーに装てんしたゴム塊をトコロテンのように押出す成形機である。ホースやウインドシールやタイヤのチューブなどの長い連続体のゴム製品はスクリュー押出機で成形されることが多い。
このようなゴムの生産加工工程において、未加硫ゴムを次の成型や加硫等の工程に移行するまでの間、積み重ねて貯蔵することがあり、この場合にゴムの密着を防止する目的で密着防止剤(防着剤)が使用されている。
【0004】
従来、この密着防止剤としては、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ベントナイト等の無機粒子が、防着性に優れるために使用されている。その使用方法としては、粉末のままゴムに吹き付ける方法や、粉末中を通過させる方法等のいわゆるドライ法;前記無機粒子の粉末を水に懸濁させ、その懸濁液をスプレーする方法や、細流にてゴムに吹き付ける方法や、懸濁液中に浸漬する方法等のいわゆるウェット法を挙げることができる。ウェット法における水の使用目的は作業性の向上の他にゴムの冷却をも兼ねている。また、押出機を使用したタイヤのチューブなどの中空で薄肉の円筒成形では、密着防止剤を混入した空気をチューブに吹き込みながら押出成形することで、円筒の内面が密着しないようにしている。
しかしながら、このような密着防止剤をゴムに塗布する際に発生する粉塵が作業環境を汚染させることが問題となっている。密着防止剤をゴム表面に付着した後、次の成型や加硫等の工程に移行するまでの間に粉落ちして粉塵が発生するといった問題がある。密着防止剤は基本的にはゴム製品にとって異物であり、微量の異物でもゴム製品の物理的性質に大きな影響を与える場合があるので、密着防止剤の作業環境への粉塵飛散は極力少ないことが望ましい。粉塵発生による作業環境の汚染を抑制する方法として、局所排気装置を設置する手段もあるが、設備投資費用が必要であるし根本的な解決にはならない。このような理由から粉塵飛散が少なく、防着性に優れる密着防止剤の開発が望まれている。
【0005】
一方、従来の密着防止剤とは異なる発想で成分が構成された密着防止剤がある。たとえば、特許文献1にはポリスチレン樹脂粉体と特定の界面活性剤を用いた水溶液をゴム面に塗布して防着する方法が開示されている。この方法は無機粒子の粉末を使用していない点を特徴としているが、充分な密着防止の効果を発揮させるためには、高濃度で使用することが必要であり、その場合、加硫ゴムの物理的性質を低下させる問題点があるため使用方法が限定され汎用性に乏しい。
また、特許文献2には造膜性を有する水溶性高分子30〜90重量部と陰イオン活性剤または非イオン性界面活性剤70〜10重量部とからなる防着用組成物が開示されている。この防着用組成物は、粉体を使用しないことを特徴としている。しかしながら、水溶性高分子と界面活性剤のみの組成では、防着用組成物を塗布したゴム面の滑り摩擦力が大きく作業現場でゴムが滑り難く作業性の低下が懸念される。またゴムの生産加工工程において凝集して乾固した凝固物が、ゴムに混入した場合、ゴムの練り工程でその凝固物が崩壊しないでゴム中に異物として残存し加硫ゴムの物理的性質を低下させる問題点があるため実用性にかける。
【0006】
また、特許文献3にはゴム表面に粉末状密着防止剤を散布し、次いで水溶性造膜剤を塗布し乾燥させることによって、ゴム表面に密着防止層を形成する方法が開示されている。この方法では粉末状密着防止剤と水溶性造膜剤をそれぞれ塗布する2段階の作業が必要であるため、作業効率が悪く実用性にかける。また、粉末状密着防止剤と水溶性造膜剤をそれぞれ単独で均一にゴム表面に塗布することは極めて困難である。
このように、特許文献1〜3の防着剤にはそれぞれ問題がある。したがって、粉塵飛散の問題を抱えつつも、従来の防着剤を使用せざるを得ないというのが現状であった。
また、これとは別に、昨今のゴム原料価格高騰のために、安価な防着剤に対する要望が大きくなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平1−258914号公報
【特許文献2】特開昭62−32127号公報
【特許文献3】特開昭53−61639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、未加硫ゴム表面の滑性に優れ、脱落による粉塵発生の問題が大幅に低減され、経済的に有利な未加硫ゴム用防着剤と、これを用いて防着処理された未加硫ゴムの製造方法とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討した結果、モンモリロナイトを必須成分とする微粉末と、高級アルコールに2種以上のアルキレンオキサイドを付加反応して得られるポリアルキレンオキサイド付加物を必須成分とする界面活性剤とを組み合わせた未加硫ゴム用防着剤を用いることによって、上記課題を解決することを見出し、本発明に到達した。
本発明の未加硫ゴム用防着剤は、モンモリロナイトを必須成分とする微粉末と、高級アルコールに2種以上のアルキレンオキサイドを付加反応して得られるポリアルキレンオキサイド付加物を必須成分とする界面活性剤とを含有し、前記微粉末を100重量部としたときに、前記界面活性剤が1〜60重量部であり、モンモリロナイトの含有率が20〜50重量%である。
【0010】
前記ポリアルキレンオキサイド付加物が、下記一般式(1):
RO−(AO)n−H (1)
(但し、Rは炭素数6〜30のアルキル基またはアルケニル基を示し、直鎖または分枝鎖のいずれの構造から構成されていてもよい。AOは、オキシエチレン基、オキシプロピレン基およびオキシブチレン基から選ばれる2種以上から構成されるオキシアルキレン基を示す。nは、AOの平均付加モル数を示し、n=1〜100である。)
で表されるポリアルキレンオキサイド付加物(1)であると好ましい。
【0011】
前記ポリアルキレンオキサイド付加物が、下記一般式(2):
RO−[(PO)p/(EO)q]−H (2)
(但し、Rは炭素数6〜30のアルキル基またはアルケニル基を示し、直鎖または分枝鎖のいずれの構造から構成されていてもよい。POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基を示す。pおよびqは、各々の平均付加モル数を示し、p=1〜20およびq=1〜30である。[(PO)p/(EO)q]はpモルのPOとqモルのEOとがランダム付加してなるポリオキシアルキレン基である。)
で表されるポリアルキレンオキサイド付加物(2)であると好ましい。
【0012】
前記ポリアルキレンオキサイド付加物(2)が、
その13C−NMRスペクトルおよびH−NMRスペクトルを測定したチャートに基づいて、下記で各々定義されるNPO−PO、NPO2、NEO−R、N、NEO−OH、NPO−OH、N1OHおよびN2OHを読み取り、
PO−PO:PO−PO結合したPOの1級炭素に帰属される13C−NMRスペクトルの積分値の和
PO2:POの2級炭素に帰属される13C−NMRスペクトルの積分値の和
EO−R:R基と直接エーテル結合したEOの炭素に帰属される13C−NMRスペクトルの積分値の和
:R基のα位炭素に帰属される13C−NMRスペクトルの積分値の和
EO−OH:末端水酸基に直接結合しているEOの炭素に帰属される13C−NMRスペクトルの積分値の和
PO−OH:末端水酸基に直接結合しているPOの炭素に帰属される13C−NMRスペクトルの積分値の和
1OH:1級水酸基の結合したメチレン基のプロトンに帰属されるH−NMRスペクトルの積分値の和
2OH:2級水酸基の結合したメチン基のプロトンに帰属されるH−NMRスペクトルの積分値の和
【0013】
そして、得られた読み取り値を各々下記計算式(I)〜(IV):
(%)=100×NPO−PO/(NPO−PO+NPO2) (I)
EO−R(%)=100×NEO−R/N (II)
EO−OH(%)=100×NEO−OH/(NEO−OH+NPO−OH) (III)
OH(%)=100×N2OH/(N1OH+N2OH) (IV)
に代入して得られるランダム化指数E、R基に直結しているオキシエチレン基の百分率EEO−R、末端水酸基が直結しているオキシエチレン基の百分率EEO−OH、および末端水酸基の2級化率EOHのパラメーターが、下記数式(I−A)〜(IV−A):
1≦E≦45 (I−A)
1≦EEO−R≦49 (II−A)
51≦EEO−OH≦99 (III−A)
1≦EOH≦49 (IV−A)
を各々満足するポリアルキレンオキサイド付加物であると好ましい。
【0014】
前記ポリアルキレンオキサイド付加物が、下記一般式(3):
RO−[(PO)p/(EO)q]−(AO)r−H (3)
(但し、Rは炭素数6〜30のアルキル基またはアルケニル基を示し、直鎖または分枝鎖のいずれの構造から構成されていてもよい。POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基、AOはオキシエチレン基およびオキシプロピレン基から選ばれる1種から構成されるオキシアルキレン基を示す。p、qおよびrは、各々の平均付加モル数を示し、p=1〜20、q=1〜30およびr=1〜50である。[(PO)p/(EO)q]はpモルのPOとqモルのEOとがランダム付加してなるポリオキシアルキレン基である。)
で表されるポリアルキレンオキサイド付加物(3)であると好ましい。
【0015】
前記ポリアルキレンオキサイド付加物(3)が、上記ポリアルキレンオキサイド付加物(2)にエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドから選ばれるアルキレンオキサイドのうちの1種を供給して付加反応させて得られるポリアルキレンオキサイド付加物であると好ましい。
前記AOがオキシエチレン基であると好ましい。
【0016】
前記微粉末が、スメクタイト、カオリン、フィロ珪酸塩、炭酸塩、脂肪酸石鹸、金属石鹸、ワックス、アクリル樹脂およびスチレン系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含有すると好ましい。
前記界面活性剤が、前記ポリアルキレンオキサイド付加物以外の非イオン性界面活性剤および/またはアニオン性界面活性剤をさらに含有すると好ましい。前記非イオン性界面活性剤が、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン硬化ひまし油、ポリオキシアルキレンアセチレンジオールエーテルから選ばれる少なくとも1種であり、前記アニオン性界面活性剤が、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、高級脂肪酸アミドスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、長鎖スルホコハク酸塩、ポリカルボン酸塩、ナフタリンスルホン酸塩、メラミンスルホン酸塩およびリグニンスルホン酸塩から選ばれる少なくとも1種であるとよい。
【0017】
上記未加硫ゴム用防着剤が、ポリビニルアルコールの水溶性フィルムにより包装されていると好ましい。
防着処理された未加硫ゴムの製造方法が、上記未加硫ゴム用防着剤を、成形加工された未加硫ゴムの表面に付着させる処理工程を含むと好ましい。前記処理工程を、水100重量部に対して前記未加硫ゴム用防着剤0.5〜10重量部を配合した分散液に前記未加硫ゴムを浸漬して行うとよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の未加硫ゴム用防着剤は、未加硫ゴム表面の滑性に優れ、脱落による粉塵発生の問題を大幅に低減することができ、経済的に有利である。
本発明の防着処理された未加硫ゴムの製造方法では、ゴム表面の滑性に優れた未加硫ゴムを経済的に有利で効率よく製造でき、その際、未加硫ゴム用防着剤が表面から脱落することによる粉塵発生の問題が大幅に低減する。また、この製造方法で用いる未加硫ゴム用防着剤は安価であり、経済的に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】包装された未加硫ゴム用防着剤(未加硫ゴム用防着剤パック)の一例を示す図である。
【図2】製造例2で得られたポリアルキレンオキサイド付加物11の13C−NMRスペクトルを測定した結果を示すチャート図である。
【図3】製造例2で得られたポリアルキレンオキサイド付加物11のH−NMRスペクトルを測定した結果を示すチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の未加硫ゴム用防着剤は、モンモリロナイトを必須成分とする微粉末と、高級アルコールに2種以上のアルキレンオキサイドを付加反応して得られるポリアルキレンオキサイド付加物を必須成分とする界面活性剤とを含有する。
以下、未加硫ゴム用防着剤を構成する各成分を詳しく説明する。
【0021】
〔微粉末〕
本発明における微粉末は、未加硫ゴム表面に被膜を形成して防着性および滑性を発揮する成分である。
本発明において、滑性とは、「未加硫ゴム用防着剤を用いて処理された未加硫ゴムが他のゴムや金属等と接触した場合に、その接触面に生じる摩擦抵抗を下げる性質」と定義される。未加硫ゴム用防着剤を用いて処理されたゴム表面が滑り性に優れると、ゴム成形工程で摩擦抵抗を生じる作業において、作業効率が向上して好ましい。
【0022】
微粉末としては、無機化合物、有機化合物、無機化合物/有機化合物の混合物のいずれかで構成されるものであればよく、特に限定はないが、たとえば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト等のスメクタイト;ジ−バーミキュライト、トリ−バーミキュライト等のバーミキュライト;ハロイサイト、カオリナイト、エンデライト、ディッカイト、ナクライト、クリソタイル等のカオリン;タルク、パイロフィライト、マイカ、マーガライト、クリントナイト、白雲母、黒雲母、金雲母、合成雲母、フッ素雲母、パラゴライト、フロゴパイト、レピドライト、テトラシリリックマイカ、テニオライト等のフィロ珪酸塩;アンチゴライト等のジャモン石;ドンパサイト、スドウ石、クッカイト、クリノクロア、シャモサイト、クロライト、ナンタイト等の緑泥石等;セピヲライト、パリゴルスカイト等のピオライト−パリゴスカイト;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム等の炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の硫酸塩;シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、酸化チタン、ホワイトカーボン、酸化鉄等の金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化鉄等の金属水酸化物;ベンガラ;カーボンブラック;グラファイト;オレイン酸カリウム、オレイン酸ナトリウム、ドデカン酸カリウム、ドデカン酸ナトリウム、牛脂硬化脂肪酸ナトリウム、牛脂硬化脂肪酸カリウム、ヤシ油脂肪酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸カリウム等の脂肪酸石鹸、ラウリン酸マグネシウム、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、ミリスチン酸カルシウム、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸マグネシウム、パルミチン酸カルシウム、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、トリオクタデカン酸アルミニウム、ジオクタデカン酸アルミニウム、モノオクタデカン酸アルミニウム、オクタデカン酸カルシウム、オクタデカン酸亜鉛、オクタデカン酸マグネシウム、オクタデカン酸バリウム等の金属石鹸;パラフィンワックス、マイクロクリスタンワックス、キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス、モンタンワックス、みつろう、ラウリン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、硬化ひまし油、12−ヒドロキシステアリン酸等のワックス;メタクリル酸メチル樹脂、メタクリル酸ブチル樹脂、アクリル酸エチル樹脂、アクリル酸ブチル樹脂、変性アクリル樹脂(例えば、シリコーン変性アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂変性アクリル樹脂、アクリル−ウレタン樹脂等)、エチレン−エチルアクリレート共重合体等のアクリル樹脂;ポリカーボネート樹脂;フッ素系樹脂(ETFE,PVDF);ポリスチレン樹脂、クロロポリスチレン樹脂、ポリ−α−メチルスチレン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体(例えば、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−アクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体(例えば、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体等のスチレン系樹脂(スチレン又はスチレン置換体を含む単重合体又は共重合体);塩化ビニル樹脂;ポリ塩化ビニリデン樹脂;ロジン変性マレイン酸樹脂;フェノール樹脂;エポキシ樹脂;ポリエステル樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂;ポリブタジエン;アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂;シリコーン樹脂;ケトン樹脂;キシレン樹脂;ポリビニルブチラール樹脂;ポリアミド樹脂;変性ポリフェニレンオキサイド樹脂等から構成されるものが挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。なかでも、微粉末が、スメクタイト、カオリン、フィロ珪酸塩、炭酸塩、脂肪酸石鹸、金属石鹸、ワックス、アクリル樹脂およびスチレン系樹脂から選ばれる少なくとも1種から構成されると、防着性および滑性に優れた被膜を形成するので好ましい。
【0023】
微粉末の平均粒子径については、特に限定はないが、未加硫ゴムへの付着性等を考慮すると、好ましくは0.1〜200μm、より好ましくは0.1〜100μm、さらに好ましくは0.1〜50μm、特に好ましくは0.1〜40μm、最も好ましくは0.1〜30μmである。
微粉末の粒度分布の変動係数CVは、特に限定されないが、好ましくは35%以下、さらに好ましくは30%以下、特に好ましくは25%以下である。変動係数CVは、以下に示す計算式(1)および(2)で算出される。
【0024】
【数1】

【0025】
(式中、sは粒子径の標準偏差、<x>は平均粒子径、xはi番目の粒子径、nは粒子の数である。)
微粉末の比重については、特に限定はないが、未加硫ゴムへの付着性等を考慮すると、好ましくは0.5〜5、より好ましくは0.5〜4.5、さらに好ましくは0.5〜4、特に好ましくは0.6〜3.5、最も好ましくは0.7〜3である。
【0026】
一般に、スメクタイト、カオリンおよびフィロ珪酸塩等は層状粘土鉱物として総称される。
層状粘土鉱物とは、原子が共有結合等によって強く結合して密に配列したシートが、ファンデルワールス力、静電気力などの弱い力によってほぼ平行に積み重なった構造を持ち、層間に保持した交換性陽イオンを利用して溶媒を配位又は吸収することにより膨潤、または、へき開する性質を示す無機化合物を意味する。層状粘土鉱物は水と接触すると、層間の交換性陽イオンに水分子が次々に水和して膨潤するため、水中で効果的に分散することができる。したがって、本発明の未加硫ゴム用防着剤が、層状粘土鉱物を成分として含有すると、水に配合した際の分散性に優れ被膜性が向上するので、特に好ましい。
【0027】
これらの層状粘土鉱物のうちでも、特に膨潤性が著しいことから、スメクタイトが好ましく、スメクタイトのうちでもモンモリロナイトが特に好ましい。モンモリロナイトは2八面体型含水層状珪酸塩鉱物であり、ナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、水素イオンなどを交換陽イオンとして含有する。これらの陽イオンは容易に交換される性質を有しており、かつ容易に水を取り込める性質も有している。交換陽イオンがナトリウムイオンであると、水和力で水分子を取り込みやすく、層間隔が増大し膨潤が著しい。
本発明の未加硫ゴム用防着剤では、微粉末はモンモリロナイトを必須成分として含有する。
【0028】
未加硫ゴム用防着剤に占めるモンモリロナイトの含有率については、特に限定はないが、ゴム表面に対する被膜性を考慮すると、通常、20〜50重量%であり、好ましくは20〜45重量%、さらに好ましくは20〜40重量%、特に好ましくは20〜35重量%、最も好ましくは25〜35重量%である。モンモリロナイトの含有率が50重量%超であると、未加硫ゴム用防着剤を水に配合して得られる分散液の粘度が高くなりすぎてハンドリング性が低下し、また、未加硫ゴム表面に形成した被膜の乾燥性に優れないことがある。一方、モンモリロナイトの含有率が20重量%未満であると、防着性および滑性を向上させる効果が小さくなることがある。
一般に、モンモリロナイトを主成分として含有し、石英、クリストパライト、長石類、炭酸塩鉱物等を副成分として含有する層状粘土鉱物をベントナイトと呼ぶ。ベントナイトは、微粉末を構成する成分の一例として挙げられ、未加硫ゴム表面に容易に吸着し、被膜を形成することができる。ベントナイトの被膜は、防着性および滑性に優れることから、本発明の未加硫ゴム用防着剤における微粉末がベントナイトを必須成分とするとさらに好ましい。また、ベントナイトがナトリウムベントナイトを高い純度で含有すると、水膨潤性の効果が著しく最も好ましい。
【0029】
ベントナイトの膨潤性の定量方法としては、特に限定はないが、たとえば、膨潤力測定がある。ベントナイトの試料2.0gを秤量し、水100mlを入れたメスシリンダーに試料を10回に分けて加えて、これを24時間放置するときの器底の塊の見かけ容積を読みとり、膨潤力(ml/2g)とする。本発明の未加硫ゴム用防着剤におけるベントナイトの膨潤力としては、特に限定はないが、ゴム表面に対する被膜性を考慮すると、通常、10ml/2g以上であり、好ましくは12ml/2g以上、さらに好ましくは15ml/2g以上、特に好ましくは18ml/2g以上、最も好ましくは20ml/2g以上である。膨潤力の異なる2種以上を併用してもよい。
未加硫ゴム用防着剤に占めるベントナイトの重量割合については、特に限定はないが、ゴム表面に対する被膜性を考慮すると、好ましくは20〜90重量%であり、より好ましくは30〜90重量%、さらに好ましくは30〜80重量%、特に好ましくは40〜70重量%、最も好ましくは40〜60重量%である。ベントナイトの重量割合が90重量%超であると、未加硫ゴム用防着剤パックを水に配合して得られる分散液のハンドリング性が低下することがある。一方、ベントナイトの重量割合が20重量%未満であると、防着性が低下することがある。
【0030】
〔界面活性剤〕
界面活性剤は、未加硫ゴムに対して「濡れ」を補助する成分である。界面活性剤が本発明の未加硫ゴム用防着剤に含まれていることによって、微粉末をより均一にゴム表面に被膜化できる。
ここで、「濡れ」とは、界面化学では固体または液体の表面にある一つの流体を他の液体で置換する現象と定義される。たとえば、固体/気体の界面が固体/液体の界面に置き換えられたとき、その固体は液体で濡れたという。したがって、本発明の未加硫ゴム用防着剤がゴムに対して濡れたと表現するときは、ゴム/空気の界面がゴム/未加硫ゴム用防着剤の界面に置き換えられたことを意味する。本発明の未加硫ゴム用防着剤がゴムに対して十分濡れていないと表現するときは、ゴム/空気の界面がゴム/未加硫ゴム用防着剤の界面に完全に置き換えられていないことを意味する。
【0031】
界面活性剤の配合割合については、特に限定はないが、微粉末100重量部に対して、通常1〜60重量部、好ましくは1〜50重量部、さらに好ましくは1〜40重量部、特に好ましくは1〜30重量部、最も好ましくは10〜30重量部である。界面活性剤の量が微粉末100重量部に対し60重量部超であると、未加硫ゴム用防着剤を水に配合して分散液を調製した場合に起泡が発生し易くなることがある。一方、界面活性剤の量が1重量部未満であると、ゴム表面に対する濡れを向上させる効果が少なく、微粉末の被膜が不均一になり防着性および滑性が低下することがある。
【0032】
<ポリアルキレンオキサイド付加物>
本発明の未加硫ゴム用防着剤では、界面活性剤は高級アルコールに2種以上のアルキレンオキサイドを付加反応して得られるポリアルキレンオキサイド付加物を必須成分とする。このポリアルキレンオキサイド付加物は、非イオン性界面活性剤の1種であり、一般的に安価であるので、本発明の未加硫ゴム用防着剤は経済的に有利である。
界面活性剤に占めるポリアルキレンオキサイド付加物の重量割合については、特に限定はないが、ゴム表面に対する濡れを考慮すると、通常、10〜100重量%であり、好ましくは20〜100重量%、さらに好ましくは30〜100重量%、特に好ましくは30〜90重量%、最も好ましくは40〜90重量%である。界面活性剤全体に占めるポリアルキレンオキサイド付加物の重量割合が10重量%未満であると、ゴム表面に対する濡れを向上させる効果が少なく、微粉末の被膜が不均一になり防着性および滑性が低下することがある。一方、ポリアルキレンオキサイド付加物の重量割合は界面活性剤全体の100重量%でもよいが、多すぎると、未加硫ゴム用防着剤を水に配合して分散液を調製した場合に起泡が発生し易くなることもある。
【0033】
ポリアルキレンオキサイド付加物の原料となる高級アルコールは、直鎖または分枝鎖のいずれの構造であってもよい。高級アルコールの構造がROHであるとすると、Rの炭素数は、好ましくは6〜30、より好ましくは6〜25、さらに好ましくは6〜22、特に好ましくは8〜20、最も好ましくは10〜20である。Rの炭素数が6未満であると、未加硫ゴムに対する防着性が低下することがある。一方、Rの炭素数が30超であると、未加硫ゴムに対する濡れ性が低下することがある。
また、Rはアルキル基またはアルケニル基であると、汎用性に優れるために好ましい。
【0034】
上記高級アルコールとしては、特に限定はないが、たとえば、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナオール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、へキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ヘネイコサノール、ドコサノール、トリコサノール、テトラコサノール、ペンタコサノール、ヘキサコサノール、ヘプタコサノール、オクタコサノール、ノナコサノールおよびトリアコサノール等の直鎖アルカノール;2−エチルへキサノール、2−プロピルヘプタノール、2−ブチルオクタノール、1−メチルヘプタデカノール、2−ヘキシルオクタノール、1−ヘキシルヘプタノール、イソデカノール、イソトリデカノール、3,5,5−トリメチルヘキサノール等の分岐アルカノール;ヘキセノール、ヘプテノール、オクテノール、ノネノール、デセノール、ウンデセノール、ドデセノール、トリデセノール、テトラデセノール、ペンタデセノール、へキサデセノール、ペンタデセノール、ヘキサデセノール、ヘプタデセノール、オクタデセノール、ノナデセノール、エイセノール、ドコセノール、テトラコセノール、ペンタコセノール、ヘキサコセノール、ヘプタコセノール、ヘプタコセノール、オクタコセノール、ノナコセノールおよびトリアコンセノール等の直鎖アルケノール;イソヘキセノール、2−エチルへキセノール、イソトリデセノール、1−メチルヘプタデセノール、1−ヘキシルヘプテノール、イソトリデセノールおよびイソオクタデセノール等の分岐アルケノール等が挙げられる。これらのアルコールは、1種または2種以上を併用してもよい。高級アルコールの製品の具体例としては、特に限定はないが、たとえば、ヤシアルコール、パームアルコール等の天然油脂由来の高級アルコールや、合成アルコール等が挙げられる。これらの高級アルコールは、1種または2種以上を併用してもよい。
高級アルコールに付加反応するアルキレンオキサイドとしては、たとえば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等を挙げることができる。また、高級アルコールに付加反応する2種以上のアルキレンオキサイドの組合せとしては、たとえば、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの組合せ、エチレンオキサイドおよびブチレンオキサイドの組合せ、プロピレンオキサイドおよびブチレンオキサイドの組合せ、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドおよびブチレンオキサイドの組合せ等を挙げることができる。これらの組合せのうちでも、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの組合せが、未加硫ゴムに対する濡れ性に優れるために好ましい。
【0035】
上記付加反応は、常法によって行われ、触媒の存在下で行ってもよい。触媒としては、特に限定はないが、たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ストロンチウム等のアルカリ(土類)金属の水酸化物;酸化カリウム、酸化ナトリウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム等のアルカリ(土類)金属の酸化物;金属カリウム、金属ナトリウム等のアルカリ金属;水素化ナトリウム、水素化カリウム等の金属の水素化物;炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ(土類)金属の炭酸塩;硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム等のアルカリ(土類)金属の硫酸塩;メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の有機スルホン酸;パラトルエンスルホン酸ナトリウム、パラトルエンスルホン酸ピリジニウム等の芳香族スルホン酸塩;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、トリエチルアミン等のアミン化合物;鉄粉、アルミニウム粉、アンチモン粉、塩化アルミニウム(III)、臭化アルミニウム(III)、塩化鉄(III)、臭化鉄(III)、塩化コバルト(III)、塩化アンチモン(III)、塩化アンチモン(V)、臭化アンチモン(III)、四塩化スズ、四塩化チタン、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル等のルイス酸;硫酸、過塩素酸等のプロトン酸;過塩素酸カリウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カルシウム、過塩素酸マグネシウム等のアルカリ(土類)金属の過塩素酸塩;カルシウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、リチウムエトキシド等のアルカリ(土類)金属のアルコキシド;カリウムフェノキシド、カルシウムフェノキシド等のアルカリ(土類)金属のフェノキシド;珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、アルミノ珪酸ナトリウム、アルミノ珪酸カリウム、メタ珪酸ナトリウム、オルソ珪酸ナトリウム、ゼオライト等の珪酸塩;水酸化アルミニウム・マグネシウム焼成物、金属イオン添加酸化マグネシウム、焼成ハイドロタルサイト等のAl−Mg系複合酸化物またはそれらの表面改質物、ランタノイド系錯体等が挙げられる。これらの触媒は、1種または2種以上を併用してもよい。
触媒の使用量については、特に限定はないが、高級アルコール100重量部に対して、好ましくは0.001〜10重量部、より好ましくは0.001〜8重量部、さらに好ましくは0.01〜6重量部、特に好ましくは0.05〜5重量部、最も好ましくは0.05〜3重量部である。触媒の使用量が0.001重量部未満であると付加反応が十分に進行しないことがあり、未加硫ゴム用防着剤の製造に時間を要することがある。一方、触媒の使用量が10重量部超であるとポリアルキレンオキサイド付加物が着色し易くなり、未加硫ゴム用防着剤の品質が低下するおそれがある。
【0036】
付加反応の反応温度としては特に限定はないが、好ましくは70〜240℃、より好ましくは80〜220℃、さらに好ましくは90〜200℃、特に好ましくは100〜190℃、最も好ましくは110〜180℃である。反応温度が70℃未満であると、付加反応が十分に進行しないことがある。一方、反応温度が240℃超であると、得られるポリアルキレンオキサイド付加物の着色およびポリアルキレンオキサイド付加物中のポリオキシアルキレン基の分解が促進されることがある。
上記付加反応に要する時間(反応時間)については特に限定はないが、好ましくは0.1〜100時間、より好ましくは0.1〜80時間、さらに好ましくは0.1〜60時間、特に好ましくは0.1〜40時間、最も好ましくは0.5〜30時間である。反応時間が0.1時間未満であると、付加反応が十分に進行しないことがある。一方、反応時間が100時間超であると、生産効率が悪くなることがある。
【0037】
ポリアルキレンオキサイド付加物において、アルキレンオキサイドの付加形態については特に限定はなく、ランダム付加でもブロック付加でもよい。2種以上のアルキレンオキサイドの付加形態としては、特に限定はないが、たとえば、1)高級アルコールに2種以上のアルキレンオキサイドがランダム付加した形態や、2)高級アルコールに2種以上のアルキレンオキサイドがブロック付加した形態や、3)高級アルコールに2種以上のアルキレンオキサイドがランダム付加した後に、さらに1種または2種以上のアルキレンオキサイドがブロック付加した形態や、4)高級アルコールに1種のアルキレンオキサイドが付加した後に、2種以上のアルキレンオキサイドがランダム付加した形態や、5)高級アルコールに1種のアルキレンオキサイドが付加した後、2種以上のアルキレンオキサイドがランダム付加し、さらに1種のアルキレンオキサイドが付加した形態等が挙げられる。なかでも、3)に示した形態のポリアルキレンオキサイド付加物が、未加硫ゴムに対する濡れ性に優れるので好ましい。3)に示した形態のポリアルキレンオキサイド付加物としては、たとえば、後述の下記一般式(3)で表されるポリアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
ポリアルキレンオキサイド付加物の重量平均分子量としては、特に限定はないが、好ましくは200〜5000、より好ましくは200〜4000、さらに好ましくは200〜3000、特に好ましくは200〜2000、最も好ましくは200〜1500である。重量平均分子量が200未満であると、未加硫ゴムに対する濡れ性が十分ではないことがある。一方、重量平均分子量が5000超であると、防着性が十分ではないことがある。
【0038】
ポリアルキレンオキサイド付加物の曇点としては、特に限定はないが、好ましくは0〜95℃、より好ましくは10〜95℃、さらに好ましくは20〜95℃、特に好ましくは30〜95℃、最も好ましくは30〜85℃の範囲である。
ポリアルキレンオキサイド付加物の曇点は、ポリアルキレンオキサイド付加物の1重量%水溶液を調製し加温して一旦液を濁らせ、徐々に冷却して濁りが無くなる温度を曇点とする方法を用いて測定する。上記曇点が0℃未満であると、未加硫ゴムに対する濡れ性が十分ではないことがある。一方、上記曇点が95℃超であると、防着性が十分ではないことがある。
ポリアルキレンオキサイド付加物として、以下の一般式(1)〜(3)でそれぞれ表されるポリアルキレンオキサイド付加物(1)〜(3)を好ましいものとして挙げることができる。
【0039】
<ポリアルキレンオキサイド付加物(1)>
ポリアルキレンオキサイド付加物としては、下記一般式(1):
RO−(AO)n−H (1)
(但し、Rは炭素数6〜30のアルキル基またはアルケニル基を示し、直鎖または分枝鎖のいずれの構造から構成されていてもよい。AOは、オキシエチレン基、オキシプロピレン基およびオキシブチレン基から選ばれる2種以上から構成されるオキシアルキレン基を示す。nは、AOの平均付加モル数を示し、n=1〜100である。)
で表されるポリアルキレンオキサイド付加物(1)が挙げられ、未加硫ゴムに対する濡れ性に優れるために好ましい。
【0040】
一般式(1)中のRに対しては、上記高級アルコールROHを構成するRの説明をそのまま適用できる。Rの具体例としても、上記で具体的に例示した種々の高級アルコールからOH基を除いたアルキル基またはアルケニル基を例示することができる。
Oは、オキシエチレン基、オキシプロピレン基およびオキシブチレン基から選ばれる2種以上から構成されるオキシアルキレン基である。さらには、AOがオキシエチレン基およびオキシプロピレン基から構成されると汎用性に優れるので好ましい。
【0041】
nはAOの平均付加モル数を表す。AOの平均付加モル数nとしては、特に限定はないが、好ましくは1〜100、より好ましくは2〜80、さらに好ましくは3〜60、よりさらに好ましくは4〜40、特に好ましくは5〜30、最も好ましくは5〜20である。AOの平均付加モル数nが1未満であると、未加硫ゴムに対する濡れ性が低下することがある。一方、AOの平均付加モル数nが100超であると、未加硫ゴム用防着剤のハンドリング性が低下することがある。
ポリアルキレンオキサイド付加物(1)におけるオキシアルキレン基の付加形態(つまり、アルキレンオキサイドの付加形態)が、上記1)〜5)のいずれかであると、未加硫ゴムに対する濡れ性に優れ密着防止の効果が向上するために好ましい。
【0042】
<ポリアルキレンオキサイド付加物(2)>
ポリアルキレンオキサイド付加物としては、下記一般式(2):
RO−[(PO)p/(EO)q]−H (2)
(但し、Rは炭素数1〜30のアルキル基またはアルケニル基を示し、直鎖または分枝鎖のいずれの構造から構成されていてもよい。POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基を示す。pおよびqは、各々の平均付加モル数を示し、p=1〜20およびq=1〜30である。[(PO)p/(EO)q]はpモルのPOとqモルのEOとがランダム付加してなるポリオキシアルキレン基である。)
で表されるポリアルキレンオキサイド付加物(2)が挙げられ、未加硫ゴムに対する濡れ性に優れるために好ましい。
【0043】
一般式(2)中のRに対しては、上記高級アルコールROHを構成するRの説明をそのまま適用できる。Rの具体例としても、上記で具体的に例示した種々の高級アルコールからOH基を除いたアルキル基またはアルケニル基を例示することができる。
POはオキシプロピレン基であり、pはオキシプロピレン基の平均付加モル数を表す。オキシプロピレン基の平均付加モル数pとしては、特に限定はないが、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜18、さらに好ましくは1〜16、よりさらに好ましくは1〜14、特に好ましくは1〜12、最も好ましくは1〜10である。オキシプロピレン基の平均付加モル数が1未満であると、防着性が十分ではないことがある。一方、オキシプロピレン基の平均付加モル数が20超であると、未加硫ゴムに対する濡れ性が十分ではないことがある。
【0044】
EOはオキシエチレン基であり、qはオキシエチレン基の平均付加モル数を示す。オキシエチレン基の平均付加モル数qとしては、特に限定はないが、好ましくは1〜30、より好ましくは1〜26、さらに好ましくは2〜22、よりさらに好ましくは3〜20、特に好ましくは4〜18、最も好ましくは5〜15である。オキシエチレン基の平均付加モル数が1未満であると、未加硫ゴムに対する濡れ性が十分ではないことがある。一方、オキシエチレン基の平均付加モル数が30超であると、乾燥性が低下することがある。
[(PO)p/(EO)q]は、pモルのオキシプロピレン基とqモルのオキシエチレン基とがランダム付加してなるポリオキシアルキレン基である。本発明でランダム付加とは、オキシプロピレン基およびオキシエチレン基が無秩序に共重合して配列された付加状態になっていることを言う。
【0045】
ポリアルキレンオキサイド付加物(2)が、
その13C−NMRスペクトルおよびH−NMRスペクトルを測定したチャートに基づいて、下記で各々定義されるNPO−PO、NPO2、NEO−R、N、NEO−OH、NPO−OH、N1OHおよびN2OHを読み取り、
PO−PO:PO−PO結合したPOの1級炭素に帰属される13C−NMRスペクトルの積分値の和
PO2:POの2級炭素に帰属される13C−NMRスペクトルの積分値の和
EO−R:R基と直接エーテル結合したEOの炭素に帰属される13C−NMRスペクトルの積分値の和
:R基のα位炭素に帰属される13C−NMRスペクトルの積分値の和
EO−OH:末端水酸基に直接結合しているEOの炭素に帰属される13C−NMRスペクトルの積分値の和
PO−OH:末端水酸基に直接結合しているPOの炭素に帰属される13C−NMRスペクトルの積分値の和
1OH:1級水酸基の結合したメチレン基のプロトンに帰属されるH−NMRスペクトルの積分値の和
2OH:2級水酸基の結合したメチン基のプロトンに帰属されるH−NMRスペクトルの積分値の和
【0046】
そして、得られた読み取り値を各々下記計算式(I)〜(IV):
(%)=100×NPO−PO/(NPO−PO+NPO2) (I)
EO−R(%)=100×NEO−R/N (II)
EO−OH(%)=100×NEO−OH/(NEO−OH+NPO−OH) (III)
OH(%)=100×N2OH/(N1OH+N2OH) (IV)
に代入して得られるランダム化指数E、R基に直結しているオキシエチレン基の百分率EEO−R、末端水酸基が直結しているオキシエチレン基の百分率EEO−OH、および末端水酸基の2級化率EOHのパラメーターが、下記数式(I−A)〜(IV−A):
1≦E≦45 (I−A)
1≦EEO−R≦49 (II−A)
51≦EEO−OH≦99 (III−A)
1≦EOH≦49 (IV−A)
を各々満足するポリアルキレンオキサイド付加物(2A)であると、密着防止の効果が向上するために好ましい。
【0047】
このポリアルキレンオキサイド付加物(2A)は、たとえば、下記一般式(A):
ROH (A)
(Rは炭素数6〜30のアルキル基またはアルケニル基を示し、直鎖または分枝鎖のいずれの構造から構成されていてもよい。)
で表される高級アルコールに対して、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドを同時に供給して付加反応させる工程を含み、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの供給開始時をT0、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの供給終了時をT100とし、T0とT100との間の時間T1およびT2が、T0<T1<T2<T100および(T2−T1)/T100=0.01の関係にあるとき、
T0、T100、T1、T2の各々の時点で供給されるエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの重量比を、[EO/PO]T0、[EO/PO]T100、[EO/PO]T1および[EO/PO]T2として、下記数式(B)〜(D):
0<[EO/PO]T0<1 (B)
1<[EO/PO]T100<100 (C)
0.8<[EO/PO]T2/[EO/PO]T1<10 (D)
を同時に満足する製造方法によって得ることができる。
【0048】
通常のランダム付加を行った場合は、付加反応の進行とともに、供給されるエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの比率を、取り立てて変化させることはなく、ほぼ一定値が保たれるので、ポリアルキレンオキサイド付加物(2)を分子レベルで見たとき、そのポリオキシアルキレン基のR基側、ポリオキシアルキレン基の末端水酸基側、ポリオキシアルキレン基のR基側および末端水酸基側の中間点等のポリオキシアルキレン基のどの位置であっても、オキシプロピレン基およびオキシエチレン基のモル比は、ほぼ同一の値となる。
それに対して、ポリアルキレンオキサイド付加物(2A)のポリオキシアルキレン基において、上記モル比に大きな特徴がある。すなわち、ポリアルキレンオキサイド付加物(2A)では、上記製造方法の説明にもあるように、供給されるエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの重量比を経時的に変化させることによって、付加反応の経過と共に形成されるポリオキシアルキレン基内の位置によって、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドのモル比が異なる値となる。そして、ポリオキシアルキレン基内の位置に依存するモル比の勾配が生じるようになる。ポリアルキレンオキサイド付加物(2A)において、具体的には、1)ポリアルキレンオキサイド付加物のポリオキシアルキレン基のR基側では、オキシプロピレン基のモル比が大きく、2)ポリオキシアルキレン基のR基側からポリオキシアルキレン基の末端水酸基側に近づくにつれてポリオキシエチレン基のモル比が徐々に大きくなり、そして、3)ポリオキシアルキレン基の末端水酸基側ではオキシエチレン基のモル比が大きくなる構造となる。
【0049】
ポリアルキレンオキサイド付加物(2A)において、ポリオキシアルキレン基内の位置に依存して、オキシプロピレン基およびオキシエチレン基のモル比に勾配が生じる。この場合、上記で説明したランダム化指数E、R基に直接結合しているEO基の百分率EEO−R、末端水酸基に直接結合しているEO基の百分率EEO−OH、およびH−NMRスペクトルのピーク面積より計算される末端水酸基の2級化率EOHは、上記数式(I−A)〜(IV−A)を各々満足する。
ランダム化指数E(%)は、好ましくは1≦E≦45であり、より好ましくは1≦E≦40、さらに好ましくは1≦E≦35、特に好ましくは5≦E≦35、最も好ましくは10≦E≦35である。Eの値が小さいほど、ポリオキシアルキレン基内のランダム化率が高いことを示している。Eが1%未満であると、反応が困難となることがある。一方、Eが45%超であると、ランダム付加とは言えず、ブロック付加である。
【0050】
PO−POは、13C−NMRスペクトルにおいてPO−PO結合したPOの1級炭素に帰属される全ての積分値の和であり、74.3〜76.0ppmの範囲に確認される全ての積分値の和である。
PO2は、13C−NMRスペクトルにおいてPOの2級炭素に帰属される全ての積分値の和であり、72.2〜73.8ppmの範囲に確認される全ての積分値の和である。
【0051】
R基に直接結合しているオキシエチレン基の百分率EEO−R(%)は、好ましくは1≦EEO−R≦49、より好ましくは1≦EEO−R≦45、さらに好ましくは1≦EEO−R≦40、特に好ましくは5≦EEO−R≦40、最も好ましくは10≦EEO−R≦40である。EEO−Rが1%未満であると、ランダム付加とは言えず、ブロック付加の構造に極めて近い。一方、EEO−Rが49%超であると、乳化力が優れない場合がある。
は、13C−NMRスペクトルにおいてR基のα位炭素に帰属される全ての積分値の和であり、71.2〜72.0ppmの範囲に確認される全ての積分値の和である。
【0052】
EO−Rは、13C−NMRスペクトルにおいてR基と直接エーテル結合したオキシエチレン基に帰属される全ての積分値の和であり、69.7〜70.3ppmの範囲に確認される全ての積分値の和である。
末端水酸基に直接結合しているEOの百分率EEO−OH(%)は、好ましくは51≦EEO−OH≦99、より好ましくは55≦EEO−OH≦99、さらに好ましくは60≦EEO−OH≦99、特に好ましくは65≦EEO−OH≦99、最も好ましくは65≦EEO−OH≦95である。EEO−OHが51%未満であると、乳化力が優れない場合がある。一方、EEO−OHが、99%超であると、ランダム付加とは言えず、ブロック付加の構造に極めて近い。
【0053】
EO−OHは、13C−NMRスペクトルにおいて末端水酸基に直接結合しているEOの炭素に帰属される全ての積分値の和であり、61.0〜63.0ppmの範囲に確認される全ての積分値の和である。
PO−OHは、13C−NMRスペクトルにおいて末端水酸基に直接結合しているPOの炭素に帰属される全ての積分値の和であり、65.0〜67.5ppmの範囲に確認される全ての積分値の和である。
【0054】
末端水酸基の2級化率EOH(%)は、好ましくは1≦EOH≦49、より好ましくは1≦EOH≦45、さらに好ましくは1≦EOH≦40、特に好ましくは5≦EOH≦40、最も好ましくは10≦EOH≦40である。EOHが1%未満であると、ブロック化合物の構造に極めて近い。一方、EOHが49%超であると、乳化力が優れない場合がある。なお、EOHを求めるためのH−NMRスペクトル測定では、アルキレンオキサイド付加物を無水トリフルオロ酢酸でトリフルオロアセチル化した試料を用いる。
2OHは、H−NMRスペクトルにおいて2級水酸基の結合したメチン基のプロトンに帰属される全ての積分値の和であり、通常5.1〜5.5ppmの範囲に確認される全ての積分値の和である。
1OHは、H−NMRスペクトルにおいて1級水酸基の結合したメチレン基のプロトンに帰属される全ての積分値の和であり、通常4.3〜4.7ppmの範囲に確認される全ての積分値の和である。
【0055】
<ポリアルキレンオキサイド付加物(3)>
ポリアルキレンオキサイド付加物としては、下記一般式(3):
RO−[(PO)p/(EO)q]−(AO)r−H (3)
(但し、Rは炭素数6〜30のアルキル基またはアルケニル基を示し、直鎖または分枝鎖のいずれの構造から構成されていてもよい。POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基、AOはオキシエチレン基およびオキシプロピレン基から選ばれる1種から構成されるオキシアルキレン基を示す。p、qおよびrは、各々の平均付加モル数を示し、p=1〜20、q=1〜30およびr=1〜50である。[(PO)p/(EO)q]はpモルのPOとqモルのEOとがランダム付加してなるポリオキシアルキレン基である。)
で表されるポリアルキレンオキサイド付加物(3)が挙げられ、未加硫ゴムに対する濡れ性に優れるために好ましい。
【0056】
一般式(3)中のRに対しては、上記高級アルコールROHを構成するRの説明をそのまま適用できる。Rの具体例としても、上記で具体的に例示した種々の高級アルコールからOH基を除いたアルキル基またはアルケニル基を例示することができる。一般式(3)中のPO、EO、p、qおよび[(PO)p/(EO)q]等に対しては、一般式(2)における説明をそのまま適用できる。
Oはオキシエチレン基およびオキシプロピレン基から選ばれる1種のオキシアルキレン基である。さらには、AOがオキシエチレン基であると防着性が向上することがあるので好ましい。
【0057】
rはAOの平均付加モル数を表す。AOの平均付加モル数rとしては、特に限定はないが、好ましくは1〜100、より好ましくは1〜50、さらに好ましくは1〜40、よりさらに好ましくは1〜30、特に好ましくは2〜20、最も好ましくは2〜10である。AOの平均付加モル数nが1未満であると、未加硫ゴムに対する濡れ性が低下することがある。一方、AOの平均付加モル数nが100超であると、未加硫ゴム用防着剤のハンドリング性が低下することがある。
ポリアルキレンオキサイド付加物(3)が、上記ポリアルキレンオキサイド付加物(2)(好ましくはポリアルキレンオキサイド付加物(2A))にエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドから選ばれるアルキレンオキサイドのうちの1種を供給して付加反応させて得られるポリアルキレンオキサイド付加物であると、未加硫ゴムに対する濡れ性に優れ密着防止の効果が向上するために好ましい。
ポリアルキレンオキサイド付加物(2)にアルキレンオキサイドを供給してポリアルキレンオキサイド付加物(3)を得る付加反応の反応条件は、上記と同じでよい。
【0058】
<その他の界面活性剤>
界面活性剤はポリアルキレンオキサイド付加物を必須とし、これ以外のその他の界面活性剤を含んでいてもよい。その他の界面活性剤には、たとえば、ゴム表面に対する濡れが安定的に発揮される温度領域を拡充したり、水に配合して分散液を調製した場合に発生する起泡量を調整したり、或いは界面活性剤の占めるコストを調整したりする役割がある。
その他の界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤のいずれかで構成されるものであればよく、1種または2種以上を含んでいてもよい。その他の界面活性剤が、非イオン性界面活性剤および/またはアニオン性界面活性剤であると、ポリアルキレンオキサイド付加物と併用することによる相乗効果が大きく、効果的である。
【0059】
その他の界面活性剤である非イオン性界面活性剤としては、たとえば、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル;ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノオレエート等のポリオキシアルキレン脂肪酸エステル;ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノオレエート等のソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等のポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル;グリセリンモノステアレート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノラウレート等のグリセリン脂肪酸エステル;等のポリオキシアルキレン硬化ひまし油;ポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステル;ポリグリセリン脂肪酸エステル;アルキルグリセリンエーテル;ポリオキシアルキレンコレステリルエーテル;アルキルポリグルコシド;ショ糖脂肪酸エステル;ポリオキシアルキレンアルキルアミン;オキシエチレンーオキシプロピレンブロックポリマー;5,8−ジメチル−6−ドデシン−5,8−ジオールのエチレンオキサイド付加物(付加モル数37〜43)、2,5,8,11−テトラメチル−6−ドデシン−5,8−ジオールのエチレンオキサイド(付加モル数7〜13)/プロピレンオキサイド(付加モル数37〜43)ブロック型付加物、2,5,8,11−テトラメチル−6−ドデシン−5,8−ジオールのエチレンオキサイド(付加モル数17〜23)/プロピレンオキサイド(付加モル数17〜23)ランダム型付加物等のポリオキシアルキレンアセチレンジオールエーテル等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
その他の界面活性剤である陰イオン性界面活性剤としては、たとえば、オレイン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、オレイン酸トリエタノールアミン等の脂肪酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ステアリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩;ステアロイルメチルタウリンNa、ラウロイルメチルタウリンNa、ミリストイルメチルタウリンNa、パルミトイルメチルタウリンNa等の高級脂肪酸アミドスルホン酸塩;ラウロイルサルコシンナトリウム等のN−アシルサルコシン塩;モノステアリルリン酸ナトリウム等のアルキルリン酸塩;ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸ナトリウム等のポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩;ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等の長鎖スルホコハク酸塩、N−ラウロイルグルタミン酸ナトリウムモノナトリウム、N−ステアロイル−L−グルタミン酸ジナトリウム等の長鎖N−アシルグルタミン酸塩;ポリアクリル酸、ポリメタアクリル酸、ポリマレイン酸、ポリ無水マレイン酸、マレイン酸とイソブチレンとの共重合物、無水マレイン酸とイソブチレンとの共重合物、マレイン酸とジイソブチレンとの共重合物、無水マレイン酸とジイソブチレンとの共重合物、アクリル酸とイタコン酸との共重合物、メタアクリル酸とイタコン酸との共重合物、マレイン酸とスチレンとの共重合物、無水マレイン酸とスチレンとの共重合物、アクリル酸とメタアクリル酸との共重合物、アクリル酸とアクリル酸メチルエステルとの共重合物、アクリル酸と酢酸ビニルとの共重合物、アクリル酸とマレイン酸との共重合物、アクリル酸と無水マレイン酸との共重合物のアルカリ金属塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(マグネシウム塩、カルシウム塩等)、アンモニウム塩およびアミン塩等のポリカルボン酸塩;ナフタレンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、アルキルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、および、これらのアルカリ金属塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(マグネシウム塩、カルシウム塩等)、アンモニウム塩およびアミン塩等のナフタレンスルホン酸塩;メラミンスルホン酸、アルキルメラミンスルホン酸、メラミンスルホン酸のホルマリン縮合物、アルキルメラミンスルホン酸のホルマリン縮合物、および、これらのアルカリ金属塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(マグネシウム塩、カルシウム塩等)、アンモニウム塩およびアミン塩等のメラミンスルホン酸塩等;リグニンスルホン酸、および、これらのアルカリ金属塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(マグネシウム塩、カルシウム塩等)、アンモニウム塩およびアミン塩等のリグニンスルホン酸塩等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
【0060】
その他の界面活性剤である陽イオン性界面活性剤としては、たとえば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム等のアルキルトリメチルアンモニウム塩;ジアルキルジメチルアンモニウム塩;トリアルキルメチルアンモニウム塩、アルキルアミン塩が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
その他の界面活性剤である両性界面活性剤としては、たとえば、2−ウンデシル−N,N−(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)−2−イミダゾリンナトリウム、2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等のイミダゾリン系両性界面活性剤;2−ヘプタデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等のベタイン系両性界面活性剤;N−ラウリルグリシン、N−ラウリルβ−アラニン、N−ステアリルβ−アラニン等のアミノ酸型両性界面活性剤等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
【0061】
界面活性剤が、ポリアルキレンオキサイド付加物とその他の界面活性剤とから構成される場合の組合せについては、特に限定はないが、たとえば、ゴム表面に対して優れた濡れを発現させるという見地からは、その他の界面活性剤としては、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、高級脂肪酸アミドスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩および長鎖スルホコハク酸塩、ポリカルボン酸塩、ナフタリンスルホン酸塩、メラミンスルホン酸塩およびリグニンスルホン酸塩から選ばれる少なくとも1種等の陰イオン性界面活性剤が好ましい。
【0062】
〔その他の成分等〕
本発明の未加硫ゴム用防着剤は、上記で説明した各成分以外に、消泡剤や多価アルコール、水溶性高分子等をさらに含有していてもよい。
消泡剤としては特に限定はないが、たとえば、ヒマシ油、ゴマ油、アマニ油、動植物油などの油脂系消泡剤;ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸などの脂肪酸系消泡剤;ステアリン酸イソアミル、こはく酸ジステアリル、エチレングリコールジステアレート、ステアリン酸ブチルなどの脂肪酸エステル系消泡剤;ポリオキシアルキレンモノハイドリックアルコールジ−t−アミルフェノキシエタノール、3−ヘプタノール、2−エチルヘキサノールなどのアルコール系消泡剤;ジ−t−アミルフェノキシエタノール3−ヘプチルセロソルブノニルセロソルブ3−ヘプチルカルビトールなどのエーテル系消泡剤;トリブチルホスフェート、トリス(ブトキシエチル)ホスフェートなどのリン酸エステル系消泡剤;ジアミルアミンなどのアミン系消泡剤;ポリアルキレンアミド、アシレートポリアミンなどのアミド系消泡剤;ラウリル硫酸エステルナトリウムなどの硫酸エステル系消泡剤;シリコーン系消泡剤;鉱物油等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
【0063】
多価アルコールとしては特に限定はないが、たとえば、グリセリン、1,3−ブタンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、マルチトール、スクロース、エリスリトール、キシリトール等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
水溶性高分子としては特に限定はないが、たとえば、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、セルロースエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アラビアガム、グアーガム、キサンタンガム等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
【0064】
〔未加硫ゴム用防着剤の製造方法〕
未加硫ゴム用防着剤の製造方法については、特に限定はない。上記で説明した未加硫ゴム用防着剤を構成する各成分を同時に混合してもよく、成分ごとに順番に混合してもよく、予めいくつかの成分を混合しておいて残りの成分を後で添加混合等してもよい。
上記混合については、特に限定はなく、容器と攪拌羽根といった極めて簡単な機構を備えた装置を用いて行うことができる。また、一般的な揺動または攪拌を行える粉体混合機を用いてもよい。粉体混合機としては、たとえば、リボン型混合機、垂直スクリュー型混合機等の揺動攪拌または攪拌を行える粉体混合機を挙げることができる。また、近年、攪拌装置を組み合わせたことにより効率のよい多機能な粉体混合機であるスーパーミキサー(株式会社カワタ製)およびハイスピードミキサー(株式会社深江製)、ニューグラムマシン(株式会社セイシン企業製)、SVミキサー(株式会社神鋼環境ソリューション社製)等を用いてもよい。他には、たとえば、ジョークラッシャー、ジャイレトリークラッシャー、コーンクラッシャー、ロールクラッシャー、インパクトクラッシャー、ハンマークラッシャー、ロッドミル、ボールミル、振動ロッドミル、振動ボールミル、円盤型ミル、ジェットミル、サイクロンミルなどの乾式粉砕機を用いてもよい。
【0065】
〔未加硫ゴム用防着剤パック〕
本発明の未加硫ゴム用防着剤は、水溶性フィルムにより包装されていてもよい。水溶性フィルムにより包装された未加硫ゴム用防着剤は、本発明の未加硫ゴム用防着剤の1つの態様であるが、以下では、水溶性フィルムにより包装された未加硫ゴム用防着剤を、水溶性フィルムにより包装されていない未加硫ゴム用防着剤と区別するために、未加硫ゴム用防着剤パックということがある。また、未加硫ゴム用防着剤パックにおいて、防着性を示す包装された成分を防着性成分ということがある。
未加硫ゴム用防着剤パック1は、たとえば、図1に示すように、防着性成分2が水溶性フィルム3により包装されてなるパックである。
【0066】
未加硫ゴム用防着剤パックであれば、現場でそのまま防着用タンクに投入できるので、水に分散させる際の粉塵発生を完全に防止できるという大きな利点がある。
水溶性フィルムを構成するポリマーとしては、昜溶解性の観点から、ポリビニルアルコールが好ましい。ポリビニルアルコールは、ビニルエステルを重合して得られる重合体のけん化物である。ビニルエステルとしては、たとえば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバリン酸ビニルおよびバーサティック酸ビニル等のビニルエステルが挙げられるが、工業生産性や1,2−グリコール結合の生成の容易さの点から、酢酸ビニルが好ましい。また、ポリビニルアルコールは、上記ビニルエステル以外のコモノマーとともに重合して得られる重合体のけん化物であってもよい。このようなコモノマーとしては、たとえば、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン等のα−オレフィン;(メタ)アクリル酸およびその塩;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等の(メタ)アクリル酸エステル類;アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩またはその4級塩、N−メチロール(メタ)アクリルアミドおよびその誘導体等の(メタ)アクリルアミド類;N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のN−ビニルアミド類;ポリアルキレンオキシドを側鎖に有するアリルエーテル類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル類;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸およびその塩またはそのエステル;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル類;酢酸イソプロペニル等が挙げられる。ポリビニルアルコールはこれらのコモノマーによって変性されたものでも良く、生分解性の観点からは、ポリビニルアルコールにおけるコモノマーによる変性量は、ポリビニルアルコール全体の5モル%以下が好ましい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリ」は、「アクリ」および「メタクリ」を意味するものとする。たとえば、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸およびメタクリル酸を意味する。
【0067】
ポリビニルアルコールは、酸化防止剤や紫外線吸収剤等の安定化剤や、可塑剤をさらに含有してもよい。可塑剤については、特に限定はないが、ポリビニルアルコールの相溶性の点から多価アルコール類が好ましい。多価アルコール類としては、生分解性の点から、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコールが好ましく、1種または2種以上を併用してもよい。
水溶性フィルムの重量割合については特に限定はないが、たとえば、未加硫ゴム用防着剤パック100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.1〜9重量部、さらに好ましくは0.1〜8重量部、最も好ましくは0.1〜7重量部である。水溶性フィルムの重量割合が0.1重量部未満であると、水溶性フィルムの厚さが薄くなりすぎてフィルム強度が低下することがある。一方、水溶性フィルムの重量割合が10重量部超であると、水溶性フィルムの厚さが厚くなり、水に対する溶解時間が長くなることがある。
【0068】
ポリビニルアルコールのけん化度は、特に限定はないが、水溶性を考慮すると、好ましくは80〜93モル%、より好ましくは81〜92モル%、さらに好ましくは82〜91モル%、特に好ましくは83〜90モル%である。ポリビニルアルコールのけん化度が93モル%を超える場合には、水溶性が低下し、ハンドリング性が低下することがある。一方、ポリビニルアルコールのけん化度が80モル%未満の場合には、水溶性は優れるが、耐候性が低下することがある。
ポリビニルアルコールの重合度については、特に限定はないが、未加硫ゴムに形成されるポリビニルアルコールの被膜強度の点からは、好ましくは500〜5000、より好ましくは700〜5000、さらに好ましくは900〜5000、特に好ましくは1000〜3000である。
【0069】
水溶性フィルムの形状および透明性に特に限定はなく、ブロッキング防止性や水溶性を改善するために、フィルム表面のマット加工、ブロッキング防止剤の散布やエンボス加工が施されていてもよい。また、ピンホール発生を防ぐために、同物性または異なる物性の複数のフィルムがラミネートされた構造であってもよいし、ヒートシール性能を高めるために、水溶性紙や水解紙にフィルムがラミネートされた構造であってもよい。水溶性フィルムは、その表面に水分解性インクや水溶性インク等でグラビア印刷等されていてもよい。
水溶性フィルムの20℃における水に対する溶解時間については特に限定はないが、好ましくは60秒以下、より好ましくは1〜50秒、さらに好ましくは5〜40秒、特に好ましくは10〜30秒である。
【0070】
水溶性フィルムの厚さについては特に限定はないが、水溶性や耐衝撃性等を考慮すると、好ましくは100μm以下、より好ましくは0.1〜100μm、さらに好ましくは0.1〜90μm、特に好ましくは0.1〜80μm、最も好ましくは0.1〜75μmである。
水溶性フィルムの大きさについては、防着性成分の量に従って適宜設定されるので特に限定はないが、たとえば、図1で示す防着性成分を包装した状態の縦(cm)×横(cm)の大きさが、好ましくは(1〜120)cm×(1〜80)cm、より好ましくは(5〜100)cm×(2〜70)cm、さらに好ましくは(10〜90)cm×(5〜60)cm、最も好ましくは(20〜90)cm×(10〜60)cmである。
水溶性フィルムで包装する方法については、特に限定はなく、たとえば、未加硫ゴム用防着剤を構成する前述の各成分の混合物(防着性成分)を水溶性フィルムで包装する方法;未加硫ゴム用防着剤を構成する前述の各成分を順番に水溶性フィルムの袋に添加してパックする方法;未加硫ゴム用防着剤を構成する前述の各成分を順番に水溶性フィルム上に載せ包装する方法等を挙げることができる。
【0071】
〔防着処理された未加硫ゴムの製造方法〕
本発明の防着処理された未加硫ゴムの製造方法は、上記未加硫ゴム用防着剤を、成形加工された未加硫ゴムの表面に付着させる処理工程を含む。
成形加工された未加硫ゴムにおいて、それを製造する際の成形加工方法やその形状等について、特に限定はない。成形加工方法としては、たとえば、カレンダーロールシート成形法、ローラーヘッドシート成形法、押出シート成形法、ラム押出成形法、スクリュー押出成形法、圧縮成形法、注入成形法、射出成形法等を挙げることができる。また、成形加工された未加硫ゴムの形状としては、たとえば、シート状、フィルム状、ホース状、チューブ状、スポンジ状、パッキン、ベルト、靴底等を挙げることができる。
【0072】
処理工程は、水に未加硫ゴム用防着剤を配合した分散液を用いて行うと好ましい。この分散液が、微粉末および界面活性剤や、必要により用いられる水溶性高分子やその他の成分が水に溶解または分散されている状態であると好ましい。なお、処理工程で用いられる水は、水道水、イオン交換水、蒸留水等のいずれでもよい。
処理工程で用いる分散液に含まれる未加硫ゴム用防着剤の配合量については、特に限定はないが、水100重量部に対して、好ましくは0.5〜10重量部、さらに好ましくは0.5〜8重量部、特に好ましくは0.5〜6重量部、最も好ましくは0.5〜4重量部である。未加硫ゴム用防着剤の配合量が水100重量部に対して10重量部超であると、未加硫ゴム用防着剤がゴム表面に付着する量が多くなり、水分の乾燥に要する時間が長くなるので、実用的でない。一方、未加硫ゴム用防着剤の配合量が水100重量部に対して0.5重量部未満であると、ゴムに対する濡れが不十分で防着性が低下することがある。
【0073】
分散液の25℃における粘度については、特に限定はないが、好ましくは2〜200mPa・s、さらに好ましくは2〜150mPa・s、特に好ましくは2〜100mPa・s、最も好ましくは2〜50mPa・sである。分散液の粘度が200mPa・s超であると、防着性成分がゴム表面に付着する量が多くなり、水分の乾燥に要する時間が長くなるので、実用的でない。一方、分散液の粘度が2mPa・s未満であると、ゴム表面に対する濡れが悪くなり、防着性が低下することがある。
分散液のpHは特に限定はないが、好ましくは5〜12、さらに好ましくは5〜10、特に好ましくは6〜9、最も好ましくは6〜8である。分散液のpHが5未満または12超であると、ハンドリング性に欠ける場合があり好ましくない。
【0074】
分散液を未加硫ゴムの表面に付着させることによって、未加硫ゴム用防着剤を成形加工された未加硫ゴムの表面に付着させる方法としては、たとえば、未加硫ゴムに分散液をスプレーする方法、分散液を細流にて未加硫ゴムに吹きつける方法、未加硫ゴムを分散液に浸漬する方法等が挙げられる。これらのうちでも、未加硫ゴムを分散液に浸漬する方法が、未加硫ゴム用防着剤を均一にゴム表面に付着できるため好ましい。
未加硫ゴム用防着剤の分散液を未加硫ゴムの表面に付着させた後、ゴム表面を乾燥する工程を実施してもよい。ゴム表面を乾燥する方法としては、特に限定はないが、たとえば、熱風機やブローヒーターなどから槽内に熱風を送ることで乾燥させる熱風乾燥;水分を減圧の変化で乾燥させる真空乾燥;バレル乾燥;スピン乾燥;吸引乾燥;マランゴニー乾燥;赤外線乾燥等が挙げられる。これらのうちでも、熱風乾燥が、コスト安であるため好ましい。
このようにして製造された防着処理された未加硫ゴムでは、次の成型、加硫等の工程に移行するまでの間、積み重ねて貯蔵する場合に、未加硫ゴム同士の密着を防止することができる。
【実施例】
【0075】
以下に、未加硫ゴム用防着剤の実施例について、具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0076】
〔分散液の不揮発分濃度〕
未加硫ゴム用防着剤を水に配合して得られる分散液の場合、分散液のa(g)をアルミシートに秤取し(但し、a(g)は2〜3gの範囲)、110℃で0.5時間保った後の恒量に達した残留物の質量がb(g)である。分散液の不揮発分濃度を下式にしたがって算出する。
分散液の不揮発分濃度(wt%)=(b/a)×100
【0077】
〔モンモリロナイト含有率の測定〕
未加硫ゴム用防着剤に占めるモンモリロナイトの含有率を粉末X線回折により測定する。
【0078】
〔分散液の粘度の測定〕
測定装置として、ブルックフィールド型粘度計(BL型、東機産業株式会社製)を用いて20℃、12rpm、ローターNo.3の条件で粘度を測定する。
【0079】
〔乾燥性の評価〕
未加硫ゴム用防着剤を水に配合して得られる分散液に100℃の温度に加熱した天然ゴム試験片を浸漬してすぐに引き上げ、ゴム表面が乾くまでの時間を目視にて測定する。下部に液溜まりができるがこれは全ての試験片に出来るので無視し、この状態に至るまでを乾燥時間として測定する。乾燥時間が100秒以下であれば、次の工程に移行するまでの待ち時間が少なく、乾燥性が良い。乾燥時間が100秒超であれば、次の工程に移行するまでの待ち時間が長く、作業性に支障をきたすため乾燥性が良くない。
【0080】
〔剥離抗力の測定〕
未加硫ゴム用防着剤を水に配合して得られる分散液に100℃の温度に加熱した天然ゴム試験片を浸漬してすぐに引き上げる。試験片が風乾したら2枚を重ね合わせ、1000kg/mの荷重をかけ40℃の恒温槽に24時間放置する。恒温槽から出した試験片を室温まで空冷し、引張り試験機テンシロン(PT−200N型、ミネベア株式会社)を用いて100mm/minの速度下で剥離抗力(N/mm)を測定した。剥離抗力が小さいほど剥がしやすく、防着性(防着力)が高い。剥離抗力が0.05N/mm以下の場合、大きな負荷なく未加硫ゴム同士を剥がすことができ、防着性が高い。剥離抗力が0.05N/mm超の場合、未加硫ゴム同士を剥がす時の負荷が大きく、防着性が低い。さらに剥離抗力が0.1N/mm超の場合、ゴム同士が密着して剥離が困難である。
【0081】
〔摩擦抗力の評価〕
未加硫ゴム用防着剤を水に配合して得られる分散液に100℃の温度に加熱した天然ゴム試験片を浸漬してすぐに引き上げる。試験片が風乾したら500gの分銅を載せ、摩擦測定機(TR−2、東洋精機製作所株式会社製)を用いて分銅がゴム上を滑る際の摩擦抗力を測定した。摩擦抗力が小さいほど分銅がゴム上を滑りやすく、滑性に優れる。摩擦抗力が7N/mm以下の場合、大きな負荷なく分銅がゴム上を滑り、滑性が優れる。剥離抗力が7N/mm超の場合、分銅がゴム上を滑りにくく、滑性が劣る。さらに剥離抗力が10N/mm超の場合、分銅がゴム上を滑りにくく、滑性がさらに劣る。
〔防着処理ゴムの粉付着量および粉飛散量〕
天然ゴム試験片10×10cmを準備し、初期重量(W)を測定した。未加硫ゴム用防着剤を水に配合して得られる分散液に、100℃に加熱されたゴム試験片を2回連続で浸漬してすぐに引き上げた。試験片が風乾したらその重量(W)を測定した。さらに試験片の各6面をたわしで15回強くこすった後の試験片の重量(W)を測定した。防着処理ゴムの粉付着量および粉飛散量は下記の式により計算される。
防着処理ゴムの粉付着量(mg/100cm)=W−W
防着処理ゴムの粉飛散量(mg/100cm)=W−W
防着処理ゴムの粉付着量が大きいほど、ゴムに混入する未加硫ゴム用防着剤の量が多くなり、ゴムの物理的性質に悪影響を与える。粉付着量が10mg/100cm以下であれば、ゴムの物理的性質に大きな悪影響を与えず、好ましい。粉付着量が10mg/100cm超であれば、ゴムの物理的性質に悪影響を与える場合があり好ましくない。
防着処理ゴムの粉飛散量が大きいほど、ゴム表面から粉落ちした粉塵による飛散問題が大きくなる。粉飛散量が1mg/100cm以下であれば、粉塵発生の問題を大幅に低下できて、好ましい。粉飛散量が1mg/100cm超であれば、ゴム表面から粉落ちした粉塵による飛散が発生し好ましくない。
【0082】
〔測定用ゴム〕
全ての測定には、天然ゴムを用いた。用いた天然ゴムの比重は0.92であり、ムーニー粘度は45〜150である。
【0083】
〔微粉末〕
実施例および比較例で用いた微粉末の物性を以下に示す。
ベントナイト1:比重2.5、平均粒子径10μm、膨潤力20mg/2g
ベントナイト2:比重2.5、平均粒子径10μm、膨潤力40mg/2g
ベントナイト3:比重2.5、平均粒子径10μm、膨潤力60mg/2g
ベントナイト4:比重2.5、平均粒子径10μm、膨潤力6mg/2g
ベントナイト5:比重2.5、平均粒子径10μm、膨潤力10mg/2g
ベントナイト6:比重2.5、平均粒子径10μm、膨潤力14mg/2g
カオリン:比重2.6、平均粒子径10μm
マイカ:比重2.7、平均粒子径10μm
タルク:比重2.7、平均粒子径10μm
炭酸カルシウム:比重2.6、平均粒子径10μm
炭酸マグネシウム:比重2.5、平均粒子径10μm
ヤシ油脂肪酸カリウム:比重1.0、平均粒子径7μm
オレイン酸カリウム:比重1.0、平均粒子径7μm
ステアリン酸カルシウム:比重1.1、平均粒子径10μm
ラウリン酸ナトリウム:比重0.9、平均粒子径10μm
パラフィンワックス:比重0.9、平均粒子径8μm
カルナバワックス:比重1.0、平均粒子径7μm
ポリエチレンワックス:比重0.9、平均粒子径5μm
ポリスチレン樹脂:比重1.1、平均粒子径5μm
ポリメチルメタクリレート樹脂:比重1.0、平均粒子径5μm
【0084】
〔ポリアルキレンオキサイド付加物〕
実施例および比較例で用いた界面活性剤であるポリアルキレンオキサイド付加物1〜12について、その一般式と物性を以下に示す。代表例として、ポリアルキレンオキサイド付加物1、11および12については、その具体的な製造方法を以下の製造例1〜3に示す。
ポリアルキレンオキサイド付加物1:C12H25O−[(PO)/(EO)]−H、重量平均分子量677、曇点55℃
ポリアルキレンオキサイド付加物2:C10H21O−[(PO)/(EO)]−H、重量平均分子量729、曇点67℃
ポリアルキレンオキサイド付加物3:C13H27O−[(PO)/(EO)]−H、重量平均分子量684、曇点59℃
ポリアルキレンオキサイド付加物4:C12H25O−(PO)−(EO)−H、重量平均分子量675、曇点58℃
ポリアルキレンオキサイド付加物5:C12H25O−(EO)−(PO)−(EO)−H、重量平均分子量619、曇点55℃
ポリアルキレンオキサイド付加物6:C10H21O−[(PO)/(EO)]−(EO)−H、重量平均分子量583、曇点53℃
ポリアルキレンオキサイド付加物7:C12H25O−[(PO)/(EO)]−(EO)−H、重量平均分子量663、曇点62℃
ポリアルキレンオキサイド付加物8:C13H27O−[(PO)/(EO)]−(EO)−H、重量平均分子量714、曇点61℃
ポリアルキレンオキサイド付加物9:C12H25O−(PO)−[(PO)/(EO)10]−H、重量平均分子量867、曇点61℃
ポリアルキレンオキサイド付加物10:C12H25O−(PO)−[(PO)/(EO)]−(EO)−H、重量平均分子量779、曇点49℃
ポリアルキレンオキサイド付加物11:C12H25O−[(PO)/(EO)]−H、重量平均分子量680、曇点58℃
ポリアルキレンオキサイド付加物12:C12H25O−[(PO)/(EO)]−(EO)2−H、重量平均分子量768、曇点71℃
【0085】
〔重量平均分子量〕
ポリアルキレンオキサイド付加物を不揮発分濃度が約0.2質量%濃度となるようにテトラヒドロフランに溶かした後、以下の測定条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を測定した。次いで、分子量既知のポリエチレングリコールのGPC測定結果から、検量線を作成し、重量平均分子量を算出した。
(測定条件)
機器名:HLC−8220(東ソー社製)
カラム:KF−G、KF−402HQ、KF−403HQ各1本ずつを直列に連結(いずれもShodex社製)
溶離液:テトラヒドロフラン
注入量:10μl
溶離液の流量:0.3ml/分
温度:40℃
【0086】
〔曇点〕
ポリアルキレンオキサイド付加物の1重量%水溶液を調製し、加温して一旦液を濁らせ、徐々に冷却して濁りが無くなる温度を測定し、曇点とした。
〔ポリビニルアルコールの水溶性フィルム〕
実施例および比較例で用いた水溶性フィルムの重合度は、いずれも2000である。
【0087】
〔製造例1〕
(ポリアルキレンオキサイド付加物1の製造)
1Lのオートクレーブに、ラウリルアルコール(分子量186)100gと、水酸化カリウム0.3gとを仕込んだ後、オートクレーブ内を窒素置換してから、攪拌しつつ80℃で減圧脱水を行った。
次いで、130℃まで昇温した後、反応温度145±5℃、反応圧力3.5±0.5kg/cmを維持しつつエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドを同時に供給開始した。エチレンオキサイドでは、41g/hの供給速度を維持して供給し、約170分間で総量118gを供給した。プロピレンオキサイドでは、39g/hの供給速度を維持して供給し、約170分間で総量110gを供給した。
【0088】
供給開始時における供給されるエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの重量比[EO/PO]T0は1.1であった。供給終了時における供給されるエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの重量比[EO/PO]T100も1.1であった。製造例1では、供給されたエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの重量比[EO/PO]について、供給時間の経過とは無関係に重量比[EO/PO]は一定値にあることが分かる。
エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの供給が完了した後、反応温度を維持しつつ、内圧が低下して一定になるまで熟成させ、80℃まで冷却した。後処理として、得られた反応混合物に合成吸着剤(キョーワード700、協和化学工業(株))3gを加えて、90℃で窒素気流下1時間攪拌して処理した後、ろ過により触媒を除去して、ポリアルキレンオキサイド付加物1を得た。
【0089】
ポリアルキレンオキサイド付加物1のエチレンオキサイド付加モル数(p)は3であり、プロピレンオキサイド付加モル数(q)は7であった。
ポリアルキレンオキサイド付加物1の13C−NMRスペクトル、H−NMRスペクトルの積分値より計算されるE、EEO−R、EEO−OH、EOHは、各々20.1、53.5、44.3、55.3であった。ポリアルキレンオキサイド付加物1の重量平均分子量は677であった。曇点は55℃であった。
【0090】
〔製造例2〕
(ポリアルキレンオキサイド付加物11の製造)
エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの供給ラインを各々接続した1Lのオートクレーブに、ラウリルアルコール(分子量186)100gと、水酸化カリウム0.3gとを仕込んだ後、オートクレーブ内を窒素置換してから、攪拌しつつ80℃で減圧脱水を行った。
次いで、130℃まで昇温した後、反応温度145±5℃、反応圧力3.5±0.5kg/cmを維持しつつエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドを同時に供給開始した。エチレンオキサイドでは、10g/hの供給速度から供給を開始して、徐々に供給量を増加させて、最終70g/hの供給速度で供給を完了し、約170分間で総量118gを供給した。また、プロピレンオキサイドでは、70g/hの供給速度で供給を開始し、徐々に供給量を減少させて、最終10g/hの供給速度で供給を完了し、約170分間で総量110gを供給した。
【0091】
供給開始時における供給されるエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの重量比[EO/PO]T0は0.39であった。供給終了時における供給されるエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの重量比[EO/PO]T100は6.2であった。ここで、供給開始時から供給終了時までの時間をx軸にとり、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの重量比[EO/PO]をy軸にとって、時間の経過とともに変化するエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの重量比[EO/PO]を、x−y平面にプロットすると一次関数の関係にあった。また、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの供給は、0.9<[EO/PO]T2/[EO/PO]T1<1.2の条件を満たしていた。
エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの供給が完了した後、反応温度を維持しつつ、内圧が低下して一定になるまで熟成させ、80℃まで冷却した。後処理として、得られた反応混合物に合成吸着剤(キョーワード700、協和化学工業(株))3gを加えて、90℃で窒素気流下1時間攪拌して処理した後、ろ過により触媒を除去して、ポリアルキレンオキサイド付加物11を得た。
【0092】
ポリアルキレンオキサイド付加物11のプロピレンオキサイド付加モル数(q)は3であり、エチレンオキサイド付加モル数(p)は7であった。
ポリアルキレンオキサイド付加物11の13C−NMRスペクトル(図2)およびH−NMRスペクトル(図3)の積分値を読み取り、NPO−PO、NPO2、NEO−R、N、NEO−OH、NPO−OH、N1OH、N2OHは、各々2.59、7.36、0.50、1.46、1.00、0.22、4.19、1.00であった。これらの積分値より計算されるE、EEO−R、EEO−OH、EOHは、各々26.0、34.2、82.0、19.3であった。ポリアルキレンオキサイド付加物11の重量平均分子量は680であった。曇点は58℃であった。
【0093】
〔製造例3〕
(ポリアルキレンオキサイド付加物12の製造)
1Lのオートクレーブに、製造例2で得られたポリアルキレンオキサイド付加物11の300gと、水酸化カリウム1.0gとを仕込んだ後、オートクレーブ内を窒素置換してから、攪拌しつつ80℃で減圧脱水を行った。
次いで、130℃まで昇温した後、反応温度145±5℃、反応圧力3.5±0.5kg/cmを維持しつつ約30分間でエチレンオキサイド58gを供給した。
エチレンオキサイドの供給が完了した後、反応温度を維持しつつ、内圧が低下して一定になるまで熟成させ、80℃まで冷却した。後処理として、得られた反応混合物に合成吸着剤(キョーワード700、協和化学工業(株))9gを加えて、90℃で窒素気流下1時間攪拌して処理した後、ろ過により触媒を除去して、ポリアルキレンオキサイド付加物12を得た。
【0094】
ポリアルキレンオキサイド付加物12のエチレンオキサイド付加モル数(p)は7であり、プロピレンオキサイド付加モル数(q)は3であり、エチレンオキサイド付加モル数(r)は2であった。
ポリアルキレンオキサイド付加物12の13C−NMRスペクトル、H−NMRスペクトルの積分値より計算されるE、EEO−R、EEO−OH、EOHは、各々26.1、34.8、99.1、1.7であった。ポリアルキレンオキサイド付加物12の重量平均分子量は768であった。曇点は71℃であった。
【0095】
〔実施例1〕
ベントナイト1の50g、カオリン20g、炭酸カルシウム30g、ポリアルキレンオキサイド付加物1の10gを均一に混合して、未加硫ゴム用防着剤を得た。未加硫ゴム用防着剤は、モンモリロナイト含有率24%であった。
さらに、イオン交換水100gに、前記未加硫ゴム用防着剤2.041gを攪拌しながら加え、水中に均一に分散した未加硫ゴム用防着剤の分散液を得た。分散液は、不揮発分濃度2.0wt%、分散液粘度5mPa・sであった。
【0096】
得られた分散液に100℃に加熱された天然ゴム試験片を浸漬してすぐに引き上げた。ゴム表面が乾くまでの時間を目視にて測定したところ、乾燥時間は24秒であり乾燥性に優れていた。ゴム試験片が風乾したら2枚を重ね合わせ、1000kg/mの荷重をかけ40℃の恒温槽に24時間放置した。剥離抗力は0.009N/mmであり、負荷なく剥離することができ、防着性が優れていた。また、摩擦抗力は3.5N/mmで、滑性が優れていた。粉付着量は5.2mg/100cm、粉飛散量は0.2mg/100cmで、脱落による粉塵発生の問題が大幅に低減されていた。
【0097】
〔実施例2〜12〕
実施例2〜12では、実施例1において、表1および表2に示すように組成をそれぞれ変更する以外は、実施例1と同様に未加硫ゴム用防着剤をそれぞれ得て、物性等も実施例1と同様に評価した。その結果を表1および表2にそれぞれ示す。それらは未加硫ゴムに対する接着性に優れ脱落による粉塵発生の問題が大幅に低減されており、防着性および滑性に優れていた。
【0098】
【表1】

【0099】
【表2】

【0100】
〔実施例13〕
ベントナイト1の50g、カオリン20g、炭酸カルシウム30g、ポリアルキレンオキサイド付加物1の10gを均一に混合して、防着性成分を得た。
さらに、けん化度86〜90%、厚さ40μm、溶解時間40秒のポリビニルアルコールの水溶性フィルム0.061g(大きさ:約3cm×約1.5cm)を準備し、この水溶性フィルムで、防着性成分1.980gをパックして、未加硫ゴム用防着剤である未加硫ゴム用防着剤パック(総重量2g)を得た。未加硫ゴム用防着剤パックは、モンモリロナイト含有率23%であった。
【0101】
次いで、未加硫ゴム用防着剤パック2.041gをイオン交換水100gに攪拌しながら加え、水中に均一に分散した分散液を得た。分散液は、不揮発分濃度2.0wt%、分散液粘度4mPa・sであった。分散液を作製する際に粉塵発生は全くなかった。
得られた分散液に100℃に加熱された天然ゴム試験片を浸漬してすぐに引き上げた。ゴム表面が乾くまでの時間を目視にて測定したところ、乾燥時間は24秒であり乾燥性に優れていた。ゴム試験片が風乾したら2枚を重ね合わせ、1000kg/mの荷重をかけ40℃の恒温槽に24時間放置した。剥離抗力は0.009N/mmであり、負荷なく剥離することができ、防着性が優れていた。また、摩擦抗力は3.9N/mmで、滑性が優れていた。粉付着量は4.9mg/100cm、粉飛散量は0.2mg/100cmで、脱落による粉塵発生の問題が大幅に低減されていた。
【0102】
〔実施例14〜18〕
実施例14〜18では、実施例13において、表3に示すように組成をそれぞれ変更する以外は実施例13と同様にして、防着性成分および未加硫ゴム用防着剤パックをそれぞれ得て、物性等も実施例13と同様に評価した。その結果を表3に示す。それらは未加硫ゴムに対する接着性に優れ脱落による粉塵発生の問題が大幅に低減されており、防着性および滑性に優れていた。
【0103】
【表3】

【0104】
〔比較例1〕
ベントナイト4の50g、カオリン20g、炭酸カルシウム30g、POE(25)ラウリルエーテル10gを均一に混合して、未加硫ゴム用防着剤を得た。未加硫ゴム用防着剤は、モンモリロナイト含有率7.3%であった。
さらに、イオン交換水100gに、前記未加硫ゴム用防着剤2.041gを攪拌しながら加え、水中に均一に分散した未加硫ゴム用防着剤の分散液を得た。分散液は、不揮発分濃度2.0wt%、分散液粘度2mPa・sであった。
【0105】
得られた分散液に100℃に加熱された天然ゴム試験片を浸漬してすぐに引き上げた。ゴム表面が乾くまでの時間を目視にて測定したところ、乾燥時間は23秒であり乾燥性に優れていた。ゴム試験片が風乾したら2枚を重ね合わせ、1000kg/mの荷重をかけ40℃の恒温槽に24時間放置した。剥離抗力は0.08mmで防着性に優れなかった。また、摩擦抗力は10N/mm超で、滑性に優れなかった。粉付着量は5.8mg/100cm、粉飛散量は1.2mg/100cmで、粉付着量が10mg/100cm超、粉飛散量が1mg/100cm超であり、脱落による粉塵飛散が発生した。
比較例1は、実施例1〜21と比較して、防着性、滑性および脱落による粉塵飛散が劣っていた。
【0106】
〔比較例2〜21〕
比較例2〜21では、比較例1において、表4および表5に示すように組成をそれぞれ変更する以外は、比較例1と同様に未加硫ゴム用防着剤をそれぞれ得て、物性等も比較例1と同様に評価した。得られた比較例の物性等の結果も、表4および表5にそれぞれに示す。実施例1〜21と比較して、防着性、滑性および脱落による粉塵飛散が劣っていた。
上記実施例および比較例において、POE(n)とは、ポリオキシエチレン(オキシエチレンの繰返し単位数:n)を意味する。
【0107】
【表4】

【0108】
【表5】

【0109】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
モンモリロナイトを必須成分とする微粉末と、高級アルコールに2種以上のアルキレンオキサイドを付加反応して得られるポリアルキレンオキサイド付加物を必須成分とする界面活性剤とを含有し、
前記微粉末を100重量部としたときに、前記界面活性剤が1〜60重量部であり、
モンモリロナイトの含有率が20〜50重量%である、
未加硫ゴム用防着剤。
【請求項2】
前記ポリアルキレンオキサイド付加物が、
下記一般式(1):
RO−(AO)n−H (1)
(但し、Rは炭素数6〜30のアルキル基またはアルケニル基を示し、直鎖または分枝鎖のいずれの構造から構成されていてもよい。AOは、オキシエチレン基、オキシプロピレン基およびオキシブチレン基から選ばれる2種以上から構成されるオキシアルキレン基を示す。nは、AOの平均付加モル数を示し、n=1〜100である。)
で表されるポリアルキレンオキサイド付加物(1)である、請求項1に記載の未加硫ゴム用防着剤。
【請求項3】
前記ポリアルキレンオキサイド付加物が、
下記一般式(2):
RO−[(PO)p/(EO)q]−H (2)
(但し、Rは炭素数6〜30のアルキル基またはアルケニル基を示し、直鎖または分枝鎖のいずれの構造から構成されていてもよい。POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基を示す。pおよびqは、各々の平均付加モル数を示し、p=1〜20およびq=1〜30である。[(PO)p/(EO)q]はpモルのPOとqモルのEOとがランダム付加してなるポリオキシアルキレン基である。)
で表されるポリアルキレンオキサイド付加物(2)である、請求項1または2に記載の未加硫ゴム用防着剤。
【請求項4】
前記ポリアルキレンオキサイド付加物(2)が、
その13C−NMRスペクトルおよびH−NMRスペクトルを測定したチャートに基づいて、下記で各々定義されるNPO−PO、NPO2、NEO−R、N、NEO−OH、NPO−OH、N1OHおよびN2OHを読み取り、
PO−PO:PO−PO結合したPOの1級炭素に帰属される13C−NMRスペクトルの積分値の和
PO2:POの2級炭素に帰属される13C−NMRスペクトルの積分値の和
EO−R:R基と直接エーテル結合したEOの炭素に帰属される13C−NMRスペクトルの積分値の和
:R基のα位炭素に帰属される13C−NMRスペクトルの積分値の和
EO−OH:末端水酸基に直接結合しているEOの炭素に帰属される13C−NMRスペクトルの積分値の和
PO−OH:末端水酸基に直接結合しているPOの炭素に帰属される13C−NMRスペクトルの積分値の和
1OH:1級水酸基の結合したメチレン基のプロトンに帰属されるH−NMRスペクトルの積分値の和
2OH:2級水酸基の結合したメチン基のプロトンに帰属されるH−NMRスペクトルの積分値の和
そして、得られた読み取り値を各々下記計算式(I)〜(IV):
(%)=100×NPO−PO/(NPO−PO+NPO2) (I)
EO−R(%)=100×NEO−R/N (II)
EO−OH(%)=100×NEO−OH/(NEO−OH+NPO−OH) (III)
OH(%)=100×N2OH/(N1OH+N2OH) (IV)
に代入して得られるランダム化指数E、R基に直結しているオキシエチレン基の百分率EEO−R、末端水酸基が直結しているオキシエチレン基の百分率EEO−OH、および末端水酸基の2級化率EOHのパラメーターが、下記数式(I−A)〜(IV−A):
1≦E≦45 (I−A)
1≦EEO−R≦49 (II−A)
51≦EEO−OH≦99 (III−A)
1≦EOH≦49 (IV−A)
を各々満足するポリアルキレンオキサイド付加物である、請求項3に記載の未加硫ゴム用防着剤。
【請求項5】
前記ポリアルキレンオキサイド付加物が、
下記一般式(3):
RO−[(PO)p/(EO)q]−(AO)r−H (3)
(但し、Rは炭素数6〜30のアルキル基またはアルケニル基を示し、直鎖または分枝鎖のいずれの構造から構成されていてもよい。POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基、AOはオキシエチレン基およびオキシプロピレン基から選ばれる1種から構成されるオキシアルキレン基を示す。p、qおよびrは、各々の平均付加モル数を示し、p=1〜20、q=1〜30およびr=1〜50である。[(PO)p/(EO)q]はpモルのPOとqモルのEOとがランダム付加してなるポリオキシアルキレン基である。)
で表されるポリアルキレンオキサイド付加物(3)である、請求項1または2に記載の未加硫ゴム用防着剤。
【請求項6】
前記ポリアルキレンオキサイド付加物(3)が、請求項3または4に記載されるポリアルキレンオキサイド付加物(2)にエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドから選ばれるアルキレンオキサイドのうちの1種を供給して付加反応させて得られるポリアルキレンオキサイド付加物である、請求項5に記載の未加硫ゴム用防着剤。
【請求項7】
前記AOがオキシエチレン基である、請求項5または6に記載の未加硫ゴム用防着剤。
【請求項8】
前記微粉末が、スメクタイト、カオリン、フィロ珪酸塩、炭酸塩、脂肪酸石鹸、金属石鹸、ワックス、アクリル樹脂およびスチレン系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含有する、請求項1〜7のいずれかに記載の未加硫ゴム用防着剤。
【請求項9】
前記界面活性剤が、前記ポリアルキレンオキサイド付加物以外の非イオン性界面活性剤および/またはアニオン性界面活性剤をさらに含有する、請求項1〜8のいずれかに記載の未加硫ゴム用防着剤。
【請求項10】
前記非イオン性界面活性剤が、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン硬化ひまし油、ポリオキシアルキレンアセチレンジオールエーテルから選ばれる少なくとも1種であり、前記アニオン性界面活性剤が、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、高級脂肪酸アミドスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、長鎖スルホコハク酸塩、ポリカルボン酸塩、ナフタリンスルホン酸塩、メラミンスルホン酸塩およびリグニンスルホン酸塩から選ばれる少なくとも1種である、請求項9に記載の未加硫ゴム用防着剤。
【請求項11】
ポリビニルアルコールの水溶性フィルムにより包装されている、請求項1〜10のいずれかに記載の未加硫ゴム用防着剤。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の未加硫ゴム用防着剤を、成形加工された未加硫ゴムの表面に付着させる処理工程を含む、防着処理された未加硫ゴムの製造方法。
【請求項13】
前記処理工程を、水100重量部に対して前記未加硫ゴム用防着剤0.5〜10重量部を配合した分散液に前記未加硫ゴムを浸漬して行う、請求項12に記載の防着処理された未加硫ゴムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−1720(P2013−1720A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131063(P2011−131063)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000188951)松本油脂製薬株式会社 (137)
【Fターム(参考)】