説明

未焙煎豆の製造方法

【課題】個々の消費者であっても、コーヒーの風味を損なわないように、また、多くの煙やゴミ並びに独特の臭気を伴わずに焙煎を行え、さらに長期の保存期間を担保した未焙煎豆を製造する方法を提供する。
【解決手段】コーヒー生豆を加熱することによって未焙煎豆を得る、未焙煎豆の製造方法であって、コーヒー生豆の加熱を開始し、コーヒー生豆の加熱を開始し、その後、コーヒー生豆内の水分が蒸発する終末期で、前記加熱を停止した状態を保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーヒー生豆を加熱することによって未焙煎豆を得る未焙煎豆の製造方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料としてのコーヒーとは、コーヒー生豆に所定の熱処理である焙煎を施すことにより焙煎豆とし、当該焙煎豆を所定の大きさに破砕し、水または湯に浸して当該焙煎豆が含有する成分を抽出するという一連の処理により得られる抽出液を指す。
【0003】
消費者は、コーヒー生豆を購入して上記一連の処理を自分で行うことにより、コーヒーを得ることも可能である。
しかしながら、消費者の多くは、焙煎豆あるいは焙煎豆を破砕したものを業者から購入することが多い。
これは、焙煎豆を得るための焙煎が、コーヒーの風味を決定する重要な要素であり、個々の消費者が、コーヒーの風味を損なわないように当該焙煎を行うことが事実上困難であること、および、当該焙煎を行うにあたり、多くの煙やゴミ、並びに独特の臭気を伴うことによる。
【0004】
さらに、焙煎豆は、コーヒー生豆に比べて保存期間が短く、3日程度で風味が低下してしまうという問題を有する。
【0005】
従来、水洗した生豆に後遠心脱水処理を施すことにより、コーヒー生豆に付着しているゴミや種皮類を除去し、生豆の品質を安定させる方法は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
また、コーヒー生豆に所定の熱処理を施すことにより、コーヒー生豆と焙煎豆との中間体たる中途焙煎豆とする方法も公知となっている。例えば、特許文献2に記載の如くである。
【特許文献1】特許第3022885号公報
【特許文献2】特許第3027281号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来における水洗した生豆に後遠心脱水処理を施す方法により得られたコーヒー豆は、コーヒー生豆と同様、個々の消費者がコーヒーの風味を損なわないように焙煎を行うことは困難であり、また、当該焙煎には独特の臭気を伴う。
また、中途焙煎豆にあっては、細胞破壊を伴う第一爆ぜを終えたものであるため、コーヒー生豆に比べて保存期間が劣る。
本発明は以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、個々の消費者であっても、コーヒーの風味を損なわないように、また、多くの煙やゴミ並びに独特の臭気を伴わずに焙煎を行え、さらに長期の保存期間を担保した未焙煎豆を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、コーヒー生豆を加熱することによって未焙煎豆を得る、未焙煎豆の製造方法であって、コーヒー生豆の加熱を開始し、その後、コーヒー生豆内の水分が蒸発する終末期で、前記加熱を停止した状態を保持するものである。
【0009】
請求項2においては、コーヒー生豆を加熱することによって未焙煎豆を得る、未焙煎豆の製造方法であって、コーヒー生豆の加熱を開始し、その後、加熱されるコーヒー生豆の温度を70℃以上100℃未満で保持し、その後、コーヒー生豆内の水分が蒸発する終末期で、前記加熱を停止した状態を保持するものである。
【0010】
請求項3においては、前記コーヒー生豆内の水分が蒸発する終末期は、前記未焙煎豆のL値が30以上50以下としたものである。
【0011】
請求項4においては、前記コーヒー生豆内の水分が蒸発する終末期は、前記未焙煎豆の含水率が3%以上7%未満としたものである。
【0012】
請求項5においては、前記未焙煎豆に、当該未焙煎豆の表面に付着している内果皮、夾雑物、銀皮を除去する研磨加工を施すものである。
【0013】
請求項6においては、前記未焙煎豆に、350℃以上450℃未満の温度で5秒以上10秒未満の間、加熱加工を施すものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0015】
本発明に係る未焙煎豆の製造方法によって得られた未焙煎豆であれば、個々の消費者であっても、コーヒーの風味を損なわないように、また、多くの煙やゴミ並びに独特の臭気を伴わずに焙煎を行うことができる。つまり、個々の消費者であっても、容易に焙煎を行うことができる。
また、本発明に係る未焙煎豆の製造方法によって、長期の保存期間を担保した未焙煎豆を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、発明の実施の形態を説明する。
【0017】
まずコーヒー生豆について説明する。
【0018】
コーヒーの果実からコーヒーの種子を取り出す作業を精製工程といい、当該精製工程は、コーヒーの果実およびコーヒーの種子を乾燥させ、また、研磨することによってなされる。
前記精製工程が施された後のコーヒーの種子をコーヒー生豆(以下、生豆)といい、当該生豆の含水率は、約15%程度となる。また、生豆であっても、内果皮、銀皮については完全に除去されず、さらに、その表面には、夾雑物が付着している。
生豆は、生豆の産地からコーヒー消費国へ輸出される。そして、当該コーヒー消費国においては、生豆を購入した輸入販売元から、焙煎業者や、自家焙煎をしている喫茶店や、コーヒー豆専門店等に流通する。
生豆の保存期間については、麻袋に入れられた状態等の簡易な保管方法で、通常2年間程度の保存が可能である。
コーヒーを飲用するためには、生豆に焙煎を施すことにより焙煎豆とし、当該焙煎豆を所定の大きさに破砕し、水または湯に浸して当該焙煎豆に含まれる香りや味の成分を抽出する必要がある。
【0019】
次に、図1(A)および図1(B)を用いて、生豆の焙煎について説明する。
図1(A)は、生豆を焙煎する際における、生豆の焙煎開始からの経過時間(分)と、当該経過時間に対応する焙煎機内の温度(℃)と、当該経過時間に対応する豆のL値との関係を示した図である。
図1(B)は、生豆を焙煎する際における、生豆の焙煎開始からの経過時間(分)と、当該経過時間に対応する焙煎機内の温度(℃)との関係を示した図である。
図1(A)および図1(B)における、T1は経過時間0分の時点の焙煎機内温度状態を示す。T2は経過時間3分の時点の焙煎機内温度状態を示す。T3は経過時間7分の時点の焙煎機内温度状態を示す。T4は経過時間8分の時点の焙煎機内温度状態を示す。T5は経過時間10分の時点の焙煎機内温度状態を示す。T6は経過時間11分の時点の焙煎機内温度状態を示す。
【0020】
通常、生豆の焙煎は、焙煎機を用いて行われる。まず、焙煎機内の温度を200℃前後に昇温させ、その中に生豆を投入する。図1(A)および図1(B)においてはT1が相当する。
生豆を焙煎機内に投入してから約3分間の間に、豆中の自由水の多くは、独特の臭気を伴う水蒸気として蒸発する。このため、焙煎機の温度は約120℃まで下降する。図1(A)および図1(B)においてはT2が相当する。またこの間に、生豆に付着していた内果皮、夾雑物は、多くの煙を伴って燃え出す。また、生豆に付着していた銀皮がはがれ落ち始め、当該はがれ落ちた銀皮は、焙煎機内にゴミとして残る。なお、夾雑物とは、生豆に付着した、埃、ゴミ、麻繊維等をいう。
焙煎をつづけると、焙煎機内の温度は上昇し始め、生豆を焙煎機内に投入てから約7分経過後に、焙煎機内の温度は約160℃に達する。この際、豆中の自由水が大方蒸発した状態となる。図1(A)および図1(B)においてはT3が相当する。
さらに焙煎をつづけると、豆中の結合水(たんぱく質や炭水化物等と結合していた水分)が蒸発し始める。そして、生豆を焙煎機内に投入てから約8分経過後に、焙煎機内の温度は約175℃に達し、豆は、豆の細胞が膨張して第一爆ぜを起しはじめる。図1(A)および図1(B)においてはT4が相当する。
さらに焙煎をつづけて、生豆を焙煎機内に投入してから約10分経過後に、焙煎機内の温度が約200℃を超えると、豆は第二爆ぜを起し始める。図1(A)および図1(B)においてはT5が相当する。
そして、生豆を焙煎機内に投入してから約10分経過後に加熱を停止したものが焙煎豆となる。
【0021】
このように、生豆の焙煎には、多くの煙や銀皮等のゴミ、並びに水蒸気の独特の臭気を伴うといった問題を有する。
また、焙煎時間や、焙煎時の温度調節等によって、コーヒーの風味に大きく差が出てくる。このため、生豆を焙煎し、好みの味や香りの成分を有する焙煎豆を得るためには、熟練した技術や知識や経験等が必要となる。
以上のことから、生豆が一般消費者等へ直接流通することはほとんど無く、生豆の多くは、生豆輸入販売元から焙煎業者等へ流通し、当該焙煎業者等によって焙煎されている。
【0022】
第一爆ぜとは、豆中の水分の膨張(水蒸気)による豆の細胞組織の破壊が進んだことによる現象を言いう。第一爆ぜが起こった後の豆は、生豆の大きさに比べ約1.5倍の大きさに膨張する。
また、第一爆ぜが起こる時期に、豆が含有している成分は化学変化を起こしはじめ、当該豆内にコーヒーの香りや味となる成分が発生する。そして、これらの香りや味となる成分は、豆の細胞の細胞膜や細胞中の空洞に付着する。豆の細胞の細胞膜や細胞中の空洞に付着しているこれらの香りや味の成分については、空気中からの酸素や水分の浸入によって、焙煎直後から酸化が進行する。
前記化学変化と同時期に、豆中に炭酸ガスが発生する。この炭酸ガスは、豆の細胞内にできた空胞内に閉じ込められているが、この空胞内の炭酸ガスは、時間の経過とともに、豆の細胞内に含まれている酸化が進んでいない香り成分を伴って豆の外に流出する。
したがって、第一爆ぜが起こった後の豆は、保管や流通の際にはより大きいスペースを必要とし、短期間で香りや味の成分を損なうこととなり、また、生豆に比べて保存期間は劣ることとなる。
【0023】
そして、第一爆ぜが起こった後から豆の加熱を停止するまでの間においては、豆が含有している香りや味の成分の化学変化、および、豆の細胞破壊はさらに進行していくこととなる。つまり、焙煎豆に関しては、香りや味の成分の化学変化、および、豆の細胞破壊は、第一爆ぜ直後の状態と比べて、さらに進行した状態にある。
具体的には、焙煎豆の保存期間については、3日程度で風味が低下してしまい、真空パック等で密封した状態で保存した場合でも、2週間程度で賞味期限をむかえてしまう。このため、焙煎豆を原料とする加工品を製造している工場や、焙煎豆を一般消費者向けに販売している街中の専門店やデパート等の焙煎豆を扱う業者おいては、焙煎豆の在庫管理が困難で、排棄しなければならない焙煎豆も少なくない。また、焙煎業者にあっては、賞味期限切れの焙煎豆の回収や、少量単位で多頻度の供給対応を行っているのが現状である。
【0024】
次に、本発明に係る未焙煎豆の製造方法の第一実施形態について説明する。
【0025】
本実施形態における未焙煎豆の製造法は、生豆の加熱を開始し、その後、生豆内の水分が蒸発する終末期で、前記加熱を停止した状態を保持することによって、未焙煎豆を得るものである。
具体的には、焙煎機を用いて当該未焙煎豆の製造方法を実施する場合には、200℃前後の温度に昇温させた焙煎機内に生豆を投入することによって、生豆の加熱を開始する。そして、当該生豆の加熱を開始した後、3分から7分までの間に当該加熱を停止し、そして当該加熱を停止した状態を保持する。(図1(A)および図1(B)参照)。
つまり、図1(B)におけるT2からT3の範囲が、生豆内の水分が蒸発する終末期をさす。このようにして、当該未焙煎豆の製造方法を実施して、未焙煎豆を得ることができる。
【0026】
ここで、生豆内の水分が蒸発する終末期とは、豆中の自由水が大方蒸発した状態をいう。つまり、本発明における生豆内の水分が蒸発する終末期とは、生豆の加熱を開始した後、当該生豆中から水蒸気がほとんど出てこなくなった状態や、水蒸気が伴う独特の臭気がほとんど感じられない状態や、豆の細胞が膨張する直前の状態(第一爆ぜが起こっていない状態)をいう。
【0027】
加熱を停止するとは、加熱された豆を焙煎機内から取り出すことのみに限定するものではなく、加熱された豆が焙煎機内にある状態で、豆を冷却すること等、他の方法によって加熱を停止した場合も含まれる。
【0028】
加熱を停止した状態を保持するとは、加熱を継続すること、若しくは、後に加熱することを含まない。例えば、加熱された豆が焙煎機内にある状態で、熱元としてのバーナーを遮断しただけでは、焙煎機内の余熱によって加熱を継続していることとなるため、この様な場合には、加熱を停止した状態を保持することに含まれない。また、加熱を停止した直後に第一爆ぜが起こった場合も、生豆内の水分が蒸発する終末期で、前記加熱を停止した状態を保持することに含まれない。
【0029】
なお、生豆を加熱する手段としては、焙煎機を用いることに特に限定するものではなく、例えば、落花生を焙煎するための乾燥機等、その他の加熱を施して乾燥するためのあらゆる手段を含むものとする。
【0030】
このようにして得られた前記未焙煎豆の含水率は3%以上7%未満の未焙煎豆となる。
つまり、前記未焙煎豆には、焙煎時の水蒸気のもととなる自由水がほとんど含まれていない状態にある。
したがって、前記未焙煎豆を焙煎しても、水蒸気による独特の臭いがほとんど発生しないこととなる。
【0031】
生豆の焙煎には、上記で説明した通常の焙煎であれば、約10〜15分の焙煎が必要である。一方、前記未焙煎豆の製造方法を実施することによって得られた未焙煎豆であれば、前記の通り、含水率が3%以上7%未満の未焙煎豆、即ち、通常の生豆の焙煎における大方の自由水が蒸発した状態にある。
このため、当該未焙煎豆であれば、2分〜7分程度の時間で焙煎が可能である。したがって、焙煎中の火加減調節を要する時間や、焙煎により豆を焦がす等の失敗が減少することとなるため、生豆から焙煎することと比べ、熟練を要さずに焙煎が可能となる。
【0032】
このようにして得られた前記未焙煎豆は、生豆に付着していた内果皮、夾雑物の一部が、除去された状態となっている。生豆の加熱開始から生豆中の自由水の多くが蒸発するまでの間に、自由水が蒸発していく過程で豆の形状が微細な変化を起こし、あるいは、当該生豆が発する蒸気に影響をうけ、生豆に付着している内果皮、夾雑物の一部は、生豆から剥がれ落ち、また、生豆の加熱開始から生豆中の自由水の多くが蒸発するまでの間に、生豆に付着している内果皮、夾雑物の一部は燃えてしまうためである。
したがって、前記未焙煎豆を焙煎した際には、生豆を焙煎することと比べ、焙煎に伴う煙を低減させることができる。
【0033】
以上のようにして得られた前記未焙煎豆は、当該未焙煎豆を焙煎しても独特の臭気は発生せず、熟練を要さずとも風味を損なわないように焙煎を行え、また、多くの煙やゴミを伴わずに焙煎を行えるものである。
つまり、当該未焙煎豆であれば、焙煎業者が有する本格的な焙煎機ではなく、簡易式の焙煎機によっても容易に焙煎することができ、一般家庭の個々の消費者や喫茶店やデパートの地下等であっても、容易に焙煎することができる。
【0034】
また、前記未焙煎豆の製造方法を実施することによって得られた未焙煎豆は、これを粉砕して湯等に通しても、コーヒー飲料として飲用可能な味を有する飲料とはならない。つまり、生豆に含まれている香りや味の成分の化学変化は起きておらず、コーヒー本来の味や香り等の成分は作られていない状態である。即ち、加熱によって化学変化を起こした香りや味の成分が酸化することや、これらの成分が空気中に流出することはない。さらに豆の細胞破壊も起きていない。したがって、前記未焙煎豆の製造方法によって、焙煎豆の様に密封包装することなく、生豆同様の簡易な包装で流通させることが可能な未焙煎豆を提供することができる。
【0035】
生豆の保存期間については、通常2年〜3年間を経過した後に、賞味期限を迎えるが、このことは、生豆が含んでいる自由水が、微生物が利用可能な水分で、この自由水の存在によって微生物が容易に繁殖しえ、生豆の腐敗、変質が進行することとなるためである。
一方、以上のようにして得られた未焙煎豆は、豆中の自由水がほとんど含まれていない状態となっている。つまり、微生物の発生を極力低減させた、清潔な状態で、且つ、長期の保存期間(4年〜7年の保存期間)を担保した未焙煎豆を提供することができる。
【0036】
また、前記未焙煎豆の製造方法は、生豆内の水分が蒸発する終末期で加熱を停止したものであるが、係る終末期で加熱を停止すれば、当該未焙煎豆は膨張していない状態にある。即ち、その容積が小さい分、一袋あたりの豆の納入量は、第一爆ぜを終えた豆に比べて多くなる。つまり、焙煎豆および中途焙煎豆に比べて、豆の一回あたりの運送量を多くすることができるため、流通費用を削減することができる。
【0037】
なお、生豆の加熱温度を100℃とした場合には、前記未焙煎豆の製造方法を実施することによって得られる未焙煎豆の表面に付着している内果皮、夾雑物の付着率は、生豆の表面の付着率に対して、50%未満の付着率となる。
もっとも、前記未焙煎豆の製造方法を実施することによって得られる未焙煎豆を焙煎した際に発生する銀皮等のゴミを減少させるためには、生豆を加熱する温度が高温であるほど好ましい。また、前記加熱を行う際に生豆同士が擦れ合うように加熱を行う、例えば、焙煎釜が回転するような焙煎機によって当該加熱を行うことで、生豆に付着している内果皮、夾雑物の一部を生豆から剥がすことができる。このように生豆の加熱を行って未焙煎豆を得ることで、当該未焙煎豆を焙煎した際に伴う煙をさらに減少させることができる。
【0038】
もっとも、生豆の加熱温度は、300℃以下の温度であることが好ましい。300℃以上の温度で生豆を加熱した場合には、自由水が蒸発するまでに、豆が焦げてコーヒーの味に影響が生じ、また、豆の細胞を破壊してしまう恐れがあるためである。
【0039】
以下に、本発明に係る未焙煎豆の製造方法の第二実施形態について説明する。
【0040】
本実施形態における未焙煎豆の製造方法は、生豆の加熱を開始し、その後、加熱されるコーヒー生豆の温度を70℃以上100℃未満で保持し、その後、コーヒー生豆内の水分が蒸発する終末期で、前記加熱を停止した状態を保持することによって、未焙煎豆を得るものである。
【0041】
具体的には、焙煎機を用いて当該未焙煎豆の製造方法を実施する場合には、70℃以上100℃未満の温度に昇温させた焙煎機内に生豆を投入することによって、生豆の加熱を開始し、生豆内の水分が蒸発する終末期で当該加熱を停止した状態を保持することによって、当該未焙煎豆を得る。
【0042】
生豆の加熱温度を100℃未満とした場合には、豆中の結合水は蒸発しないため、豆の細胞破壊が起こりにくくなる。また、生豆の加熱温度を100℃未満とした場合には、豆の表面からの水分蒸発速度と豆内の拡散速度とが好適な状態にあるため、豆の表面側と豆の内部側とで水分蒸発が均一となって、当該加熱によっても豆がひび割れ等を起こしにくくなる。このため、生豆の加熱温度は100℃未満とすることが好ましい。
【0043】
生豆の加熱温度を70℃未満とした場合には、生豆に付着している内果皮、夾雑物が効果的に燃えず、効果的な未焙煎豆を得ることができないこととなる。また、生豆の加熱温度を70℃未満とした場合には、生豆中の自由水を蒸発させるためには生豆の加熱時間が長時間なものとなり不経済となる。このため、生豆の加熱温度は70℃以上とすることが好ましい。
【0044】
もっとも、前記で説明した70℃以上100℃未満とする加熱温度は、当該加熱温度が数分程度70℃以上100℃未満となった状態を、70℃以上100℃未満の加熱温度とするものではない。即ち、生豆の加熱温度の中心となる温度が70℃以上100℃未満であれば、70℃以上100℃未満とする加熱温度に含まれるものとする。
【0045】
以下に、本発明に係る未焙煎豆の製造方法の第三実施形態を説明する。
【0046】
本実施形態における未焙煎豆の製造方法においては、生豆内の水分が蒸発する終末期を、前記未焙煎豆のL値が40以上50以下とし、未焙煎豆のL値が40以上50以下の状態で、生豆の加熱を停止した状態を保持することによって、未焙煎豆を得ようとするものである。
図1(A)に示す如く、T2では豆のL値は54であり、また、T3では豆のL値は37である。つまり、上記で説明した第一実施形態および第二実施形態における未焙煎豆の製造方法を実施すること、即ち、生豆の加熱を開始して、生豆内の水分が蒸発する終末期で、当該加熱を停止した状態を保持することによって、L値40以上L値50以下の未焙煎豆を得ることができる。
換言すると、生豆の加熱を開始して、加熱中の豆のL値がL値30以上L値50以下の状態となった時点で当該加熱を停止すれば、当該未焙煎豆を確実に得ることができる。
なお、前記未焙煎豆のL値の測定は、日本電色工業株式会社製の色差計SZ−Σ80によって測定したものである。
【0047】
以下に、本発明に係る未焙煎豆の製造方法の第四実施形態について説明する。
【0048】
本実施形態においては、本発明に係る未焙煎豆の製造方法を実施することによって得られた未焙煎豆に、当該未焙煎豆の表面に付着している内果皮、夾雑物、銀皮を除去する研磨工程を施すことによって未焙煎豆を得ようとするものである。
本実施形態における研磨工程は、例えば、通常のコーヒー果実の精製工程で行われている研磨装置によって行われる。
【0049】
以上のように、本発明に係る未焙煎豆の製造方法を実施することによって得られた未焙煎豆に前記研磨工程を施すことによって、当該未焙煎豆に付着している内果皮、銀皮、夾雑物の一部を除去することができる。このため、未焙煎豆に付着している内果皮、銀皮、夾雑物をさらに低減させることができる。
即ち、本実施形態に係る加熱加工を施した未焙煎豆であれば、さらに容易に焙煎することができる。つまり、焙煎業者が有する本格的な焙煎機ではなく、簡易式の焙煎機によっても容易に焙煎することができ、一般家庭の個々の消費者や喫茶店やデパートの地下等であってもさらに容易に焙煎することができる。
【0050】
なお、本実施形態における研磨工程の度合いによって、内果皮、銀皮、夾雑物の付着率を限りなく0%に近づけることも可能であり、また、当該付着率が低いほど、容易に焙煎することができる。
【0051】
また、第一爆ぜが起こった後の豆は、豆自体の強度が極端に低下するため、これに研磨工程を施した際には、豆自体の形が崩れてしまう恐れがある。
しかしながら、当該未焙煎豆は、第一爆ぜを起こしておらず、生豆と同等の強度を有するため、加熱された後の豆であっても、研磨工程を施すことが可能である。
【0052】
なお、研磨工程とは、通常のコーヒー果実の精製工程で行われている研磨装置や、脱穀機はもとより、その他のあらゆる研磨、あるいは脱穀の手段をいう。
【0053】
以下に、本発明に係る未焙煎豆の製造方法の第五実施形態について説明する。
【0054】
本実施形態においては、本発明に係る未焙煎豆の製造方法を実施することによって得られた未焙煎豆に、350℃以上450℃未満の温度で、5秒以上10秒未満の間、加熱加工を施すことによって、未焙煎豆を得ようとするものである。
【0055】
具体的には、当該未焙煎豆の製造方法を実施することによって得られた未焙煎豆を、350℃以上450℃未満の温度に昇温させた焙煎機内に投入し、当該投入後、5秒以上10秒未満の間に、焙煎機内に投入した未焙煎豆を取り出すことによって行う。
【0056】
以上のように、本発明に係る未焙煎豆の製造方法を実施することによって得られた未焙煎豆に前記加熱加工を施すことによって、当該未焙煎豆に付着している内果皮、銀皮、夾雑物の一部を燃やし、除去することができる。このため、未焙煎豆に付着している内果皮、銀皮、夾雑物付着率を低減させることができる。
即ち、前記加熱加工を施した未焙煎豆であれば、さらに簡便な焙煎が可能となる。したがって、焙煎業者が有する本格的な焙煎機ではなく、自家焙煎を行っている喫茶店や、一般家庭等にある簡易式の焙煎機であっても容易に焙煎することができ、ここの消費者であっても容易に焙煎することが可能となる。
【0057】
なお、前記加熱加工時の温度を350℃未満とした場合には、未焙煎豆に付着している内果皮、銀皮、夾雑物を効果的に除去することはできず、また、結合水が蒸発しえる温度および時間で、未焙煎豆を加熱するため、豆の細胞破壊を招く恐れがあり、好ましくない。前記加熱加工時の温度を450℃以上とした場合には、容易に、未焙煎豆が焦げて、また、未焙煎豆の細胞を破壊してしまう恐れがあるため、好ましくない。
当該加熱加工時の温度を350℃以上450℃未満とした場合において、前記加熱加工時の時間を5秒以上10秒未満とすることで、効果的に内果皮、銀皮、夾雑物付着率を低減させることができ、且つ、未焙煎豆の焦げや細胞破壊を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】(A)は、生豆を焙煎する際における、生豆の焙煎開始からの経過時間(分)と、当該経過時間に対応する焙煎機内の温度(℃)と、当該経過時間に対応する豆のL値との関係を示した図、(B)は、生豆を焙煎する際における、生豆の焙煎開始からの経過時間(分)と、当該経過時間に対応する焙煎機内の温度(℃)との関係を示した図。
【符号の説明】
【0059】
T1、T2、T3、T4、T5、T6 コーヒー生豆の焙煎開始からの経過時間(分)と、当該経過時間に対応する焙煎機内の温度状態を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーヒー生豆を加熱することによって未焙煎豆を得る、未焙煎豆の製造方法であって、
コーヒー生豆の加熱を開始し、
その後、コーヒー生豆内の水分が蒸発する終末期で、前記加熱を停止した状態を保持することを特徴とする、未焙煎豆の製造方法。
【請求項2】
コーヒー生豆を加熱することによって未焙煎豆を得る、未焙煎豆の製造方法であって、
コーヒー生豆の加熱を開始し、
その後、加熱されるコーヒー生豆の温度を70℃以上100℃未満で保持し、
その後、コーヒー生豆内の水分が蒸発する終末期で、前記加熱を停止した状態を保持することを特徴とする、未焙煎豆の製造方法。
【請求項3】
前記コーヒー生豆内の水分が蒸発する終末期は、前記未焙煎豆のL値が30以上50以下である請求項1または請求項2に記載の未焙煎豆の製造方法。
【請求項4】
前記コーヒー生豆内の水分が蒸発する終末期は、前記未焙煎豆の含水率が3%以上7%未満である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の未焙煎豆の製造方法。
【請求項5】
前記未焙煎豆に、当該未焙煎豆の表面に付着している内果皮、夾雑物、銀皮を除去する研磨加工を施した請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の未焙煎豆の製造方法。
【請求項6】
前記未焙煎豆に、350℃以上450℃未満の温度で5秒以上10秒未満の間、加熱加工を施した請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の未焙煎豆の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−63376(P2010−63376A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−230309(P2008−230309)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【出願人】(596099033)ジエットコーヒー株式会社 (1)
【出願人】(393029538)
【Fターム(参考)】