説明

未硬化改良土の試料の採取器及び採取方法

【課題】改良対象地盤中に粗大な礫等が存在する場合にも用いることができ、ワイヤー等の絡みの生じるおそれのある部材を有さず、軸線が水平方向に延びる回転軸の回転に伴って鉛直方向に回転する縦型撹拌翼に取り付けることのできる、未硬化改良土の試料の採取手段を提供する。
【解決手段】未硬化改良土の試料を収容するための、一端を閉じかつ他端に開口部分を有する筒状の本体部2と、縦型撹拌翼に対して脱着可能に取り付けるための取り付け部3と、縦型撹拌翼の回転によって筒状の本体部2の中へ周囲の未硬化改良土を収容させることのできる切り込み4aを有する可撓膜体4と、筒状の本体部2と可撓膜体4の間に介在する枠体5を有する、未硬化改良土の試料の採取器。筒状の本体部2は、1つ以上の溝状の開口部2aを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良後の未硬化状態の改良土(本明細書中、未硬化改良土という。)の試料を採取するための採取器及び採取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤改良工事の直後に、任意の深さの未硬化改良土の状態を確認するために、この任意の深さまで未硬化改良土の試料の採取器を下降させ、この採取器を用いて未硬化改良土の試料を採取し、採取した試料について一軸圧縮試験等の試験を行なう方法が知られている。
この方法で用いられる未硬化改良土の試料の採取器として、種々のものが知られている。
一例として、前面にスライド機構によって開閉可能な蓋を備えた長方形のバケットを、掘削撹拌軸の撹拌羽根に、底面が水平になるようにコ字型ガイドで脱着可能に装備し、前記バケットの前面の蓋の上下に、該蓋を開閉するためのワイヤーを備えてなることを特徴とした未硬化改良地盤のコア採取装置が、提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−218356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の文献に記載されている未硬化改良地盤のコア採取装置は、ワイヤーを引っ張るかまたは緩めることによって蓋を開閉するものである。そのため、未硬化改良土の中に粗大な礫等が含まれている場合、蓋の開閉作業が、粗大な礫等によって妨げられるおそれがある。
また、このコア採取装置は、鉛直方向に延びるワイヤーを有するため、掘削撹拌軸の周りに数回転以上、回転させると、ワイヤーが掘削撹拌軸に絡まると考えられる。そのため、採取すべきコアの深さが大きい場合や、未硬化改良土の粘性が大きい場合であっても、コア採取装置の地盤への貫入・引抜き時に掘削撹拌軸を回転させることができず、掘削撹拌軸の地盤内への圧入及び引き上げの作業が困難な場合があると考えられる。
さらに、このコア採取装置は、鉛直方向に延びる掘削撹拌軸の回転に伴って水平方向に回転する撹拌羽根に取り付けて用いるためのものである。仮に、このコア採取装置を、鉛直方向に回転するロータリー式撹拌機の撹拌羽根に取り付けた場合には、コアの採取のための撹拌羽根の回転時に、ワイヤーが絡んで使用できなくなるなどの問題が生じると考えられる。
そこで、本発明は、改良対象地盤中に粗大な礫等が存在する場合にも用いることができ、ワイヤー等の絡みの生じるおそれのある部材を有さず、軸線が水平方向に延びる回転軸の回転に伴って鉛直方向に回転する撹拌翼(縦型撹拌翼)に取り付けることのできる、未硬化改良土の試料の採取手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、一端を閉じかつ他端に開口部分を有する筒状の本体部と、縦型撹拌翼に対して脱着可能に取り付けるための取り付け部を含む採取器によれば、上記目的を達成しうることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[5]を提供するものである。
[1] 縦型撹拌翼を用いる縦型回転混合撹拌方式による地盤改良後の未硬化改良土の試料を採取するための採取器であって、未硬化改良土の試料を収容するための、一端を閉じかつ他端に開口部分を有する筒状の本体部と、上記縦型撹拌翼に対して脱着可能に取り付けるための取り付け部を含むことを特徴とする未硬化改良土の試料の採取器。
[2] 上記筒状の本体部の開口部分を塞ぐように配設された可撓膜体であって、上記縦型撹拌翼の回転によって上記筒状の本体部の中へ周囲の未硬化改良土を収容させることのできる切り込みを有する可撓膜体を含む、前記[1]に記載の採取器。
[3] 上記筒状の本体部と上記可撓膜体の間に介在する枠体であって、上記筒状の本体部に対して脱着可能に取り付けられ、かつ、上記可撓膜体の縁部に固着された枠体を含む、前記[2]に記載の採取器。
[4] 上記筒状の本体部の周面を形成する周壁に、上記筒状の本体部の軸線方向に延びる、1つ以上の溝状の開口部が設けられている、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の採取器。
[5] 前記[1]〜[3]のいずれかに記載の採取器を用いた未硬化改良土の試料の採取方法であって、上記縦型撹拌翼の構成部分である2つの撹拌爪の間に、上記未硬化改良土の試料の採取器を取り付ける準備工程と、未硬化改良土の中に、上記縦型撹拌翼を、上記採取器の中に土が収容されない正回転の方向に回転させながら、任意の予め定めた深さまで下降させる下降工程と、上記任意の予め定めた深さにて、上記縦型撹拌翼を、逆回転の方向に回転させて、上記採取器の中に未硬化改良土の試料を収容させる試料収容工程と、上記縦型撹拌翼を、正回転の方向に回転させながら、地上まで上昇させる上昇工程、を含むことを特徴とする未硬化改良土の試料の採取方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の採取器は、一端を閉じかつ他端に開口部分を有する筒状の本体部を有するので、改良対象地盤中に粗大な礫等が存在する場合であっても、筒状の本体部の中への未硬化改良土の試料の収容に支障がなく、好適に用いることができる。
また、本発明の採取器は、一端を閉じかつ他端に開口部分を有する筒状の本体部を有するので、例えば、ワイヤーを用いて蓋の開閉を行なうように構成したものに比べて、ワイヤーと他の部材の絡み合いなどの問題を生じることがなく、より円滑に用いることができる。
さらに、本発明の採取器は、鉛直方向に回転する縦型撹拌翼に取り付けることができ、縦型回転混合撹拌方式による地盤改良工事において好適に用いることができる。具体的には、本発明の採取器を用いることによって、縦型回転混合撹拌方式によって改良された地盤中の任意の深さの地点にある未硬化改良土の試料を、縦型撹拌翼を有する混合撹拌装置をそのまま利用して、容易にかつ確実に、しかも迅速に採取することができる。また、採取された未硬化改良土の試料を、本発明の採取器から容易に取り出すことができ、この試料を用いて作製する供試体について、所定の材齢経過後の一軸圧縮強さ等の物性を測定することによって、この試料が、期待された物性を有しているかを確認することができる。したがって、本発明の採取器を用いると、低コストで、地盤改良工法の質の信頼性を大きく高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1の(a)は、本発明の未硬化改良土の試料の採取器の一例を示す斜視図であり、図1の(b)は、(a)に示す採取器を右方から見た図である。
【図2】図2の(a)は、本発明の未硬化改良土の試料の採取器を縦型撹拌翼に取り付けた実施形態の一例を示す正面図であり、図2の(b)は、その右側面図である。
【図3】図3の(a)は、本発明の未硬化改良土の試料の採取器を縦型撹拌翼に取り付けた実施形態の他の例を示す正面図であり、図3の(b)は、その右側面図である。
【図4】図4は、本発明の未硬化改良土の試料の採取器を取り付ける対象である撹拌装置の先端部の攪拌爪の配置の一例を示す正面図である。
【図5】図5の(a)は、縦型混合撹拌装置の一例を示す正面図であり、図5の(b)は、その右側面図である。
【図6】図6は、縦型回転混合撹拌方式による地盤改良工事を行っている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ、本発明の未硬化改良土の試料の採取器の実施形態例について詳しく説明する。
図1中、本発明の未硬化改良土の試料の採取器1は、縦型撹拌翼を用いる縦型回転混合撹拌方式による地盤改良後の未硬化改良土の試料を採取するための採取器であって、筒状の本体部2と、縦型撹拌翼に対して脱着可能に取り付けるための取り付け部3と、切り込み4aを有する可撓膜体4と、枠体5を含む。
本明細書中、「縦型撹拌翼」とは、軸線が水平方向に延びる回転軸の回転によって、鉛直方向(縦方向)に回転するように配設された撹拌翼をいう。
「縦型回転混合撹拌方式」とは、縦型撹拌翼の回転によって、固化材スラリーと地盤を構成する土を混合撹拌する工法をいう。なお、縦型回転混合撹拌方式による地盤改良施工機は、ロータリー式地盤改良撹拌機と呼ばれることがある。
本発明における地盤改良の例としては、軟弱地盤の上に建造物を構築するために、軟弱地盤を構成する土と固化材スラリーを混合撹拌して、平面視で矩形である角柱状の改良体を形成させる作業を繰り返して、予め定めた領域内の軟弱地盤の強度を増大させることが挙げられる。
【0009】
筒状の本体部2は、一端を閉じかつ他端に開口部分を有するものであり、具体的には、一端を円形の平坦な板状体(図1中の本体部2の左端)として形成し、他端を円形の開口部分(図1中の本体部2の右端)として形成し、これら両端を結ぶ部分を円筒状の胴部として形成されている。
筒状の本体部2の胴部には、スリット(溝状の開口部)2aが形成されている。スリット2aは、採取器1内に未硬化改良土の試料が十分に収容されているかを外部から目視で確認するため、及び、筒状の本体部2内の高圧水による洗浄時の洗浄水を逃がすため(特に、作業員への洗浄水の跳ね返りを低減するため)に、設けられる。スリット2aの数は、1つでもよいし複数でもよい。
なお、筒状の本体部2には、後述する棒状体6を挿通させるための2つの固定具挿通用孔が、設けられている。
本発明において、筒状の本体部2は、一端を閉じかつ他端に開口部分を有するものであればよく、図1に示す形態の他に、他の任意の形態を有することができる。他の形態例としては、例えば、一端を正方形又は長方形の平坦な板状体として形成し、他端を正方形又は長方形の開口部分として形成し、これら両端を結ぶ部分を、断面が正方形又は長方形である筒状の胴部として形成したものが挙げられる。
【0010】
取り付け部3は、縦型撹拌翼に対して採取器1を脱着可能に取り付けるためのものである。取り付け部3は、筒状の本体部2の周面に溶接等で固着された一対の板状体3a、3bと、少なくとも両端が螺刻された長尺の棒状体(例えば、長尺のボルト)3cと、棒状体3cの両端に螺合させるためのナット3dとからなる。なお、一対の板状体3a、3bは、筒状の本体部2の軸線方向に適宜の距離を隔てて、互いに平行に設けられている。一対の板状体3a、3bは、各々、2つの固定具挿通用孔を有する。なお、棒状体3cとナット3dによって、固定具を構成している。
縦型撹拌翼に採取器1を取り付ける際には、まず、縦型撹拌翼のベースプレート(図1中、斜線で位置を示す。符号Aを付してある。)を挟む形で一対の板状体3a、3bを位置決めし、次いで、板状体3a、3bの間に、固定具挿通用孔を挿通させた2本の棒状体(ボルト)3cを架け渡す。その後、2本の棒状体3cの各々の両端にナット3dを螺合させれば、取り付け作業が完了する。
本発明においては、取り付け部3を有するため、縦型撹拌翼に対する採取器1の脱着作業を容易に行なうことができる。
なお、取り付け部3は、縦型撹拌翼に対して採取器1を脱着可能に取り付けることができればよく、図1に示すもの以外の他の形態を有することができる。また、縦型撹拌翼に対する取り付け位置も、縦型撹拌翼の構成部分であれば任意であり、上述のベースプレート以外に、例えば、撹拌爪や、ベースプレートを支持するアーム等が挙げられる。なお、採取器1は、縦型撹拌翼に対して、直接取り付けてもよいし、他の部材を介在させるなどして間接的に取り付けてもよい。
【0011】
可撓膜体4は、筒状の本体部2の開口部分を塞ぐように配設され、かつ、縦型撹拌翼の逆回転時に筒状の本体部2の中へ周囲の未硬化改良土を収容させることのできるように形成された切り込み4aを有する。
可撓膜体4は、筒状の本体部2の中に収容された未硬化改良土の試料(特に、流動性の高いもの)の漏出を防ぐためのものであり、例えば、ゴム等の材質で形成することができる。
可撓膜体4の切り込み4aは、例えば、可撓膜体4の中心点を中心とするX字状に形成することができる。可撓膜体4は、縦型撹拌翼の逆回転による土圧によって筒状の本体部2の側に撓む。この時に切り込み4aに生じた隙間を通じて、周囲の未硬化改良土が筒状の本体部2の中に流入する。縦型撹拌翼の逆回転を止めて、未硬化改良土の収容が完了すると、可撓膜体4は、復元力によって元の状態に戻り、筒状の本体部2の中の未硬化改良土の漏出を防止することができる。
本発明において、未硬化改良土の試料の流動性が低い場合には、可撓膜体4及び枠体5を省略することができる。この場合、本発明の採取器は、一端を閉じかつ他端に開口部分を有する筒状の本体部2と、縦型撹拌翼に対して脱着可能に取り付けるための取り付け部3とから構成される。
【0012】
枠体5は、筒状の本体部2と可撓膜体4の間に介在する部材であって、筒状の本体部2に対して嵌合されかつ棒状体6等の固定手段で固定された嵌合部5aと、可撓膜体4の縁部に固着された環状の固着部5bを有する。なお、枠体5の嵌合部は、筒状の本体部2の外側に嵌合された短尺の円筒状の部分である。枠体5の環状の固着部は、可撓膜体4と略同一平面上に形成されている円環状の板状体であり、枠体5の嵌合部に対して垂直に折曲して形成されている。
嵌合部5aには、2つの固定具挿通用孔が設けられている。この2つの固定具挿通用孔と、上述の筒状の本体部2に設けられた2つの固定具挿通用孔を重ね合わせた後、これら4つの孔に対して、少なくとも両端が螺刻された長尺の棒状体(例えば、長尺のボルト)6を挿通させ、次いで、棒状体6の両端にナット7を螺合させることによって、枠体5を筒状の本体部2に固定することができる。なお、棒状体6は、嵌合部5aの外径より若干大きな長さを有するものであり、嵌合部5aの軸線と交差するように(換言すると、環状の固着部5bの円の中心を通るように)配設される。
枠体5は、筒状の本体部2に対して脱着可能に取り付けられるとともに、可撓膜体4の縁部に固着されているものであればよく、図1に示すもの以外の他の形態を有することができる。例えば、棒状体6及びナット7を用いずに、筒状の本体部2の開口部分である一端の外周面に、螺刻部分を形成させるとともに、枠体5の縁の内周面に、筒状の本体部2の螺刻部分に対応する螺刻部分を形成させ、筒状の本体部2の螺刻部分と枠体5の螺刻部分を螺合させることによって、枠体5を筒状の本体部2に固定してもよい。
【0013】
採取器1の容量は、採取の目的に応じて適宜定めることができるが、ここでは改良土の一軸圧縮試験を行なう場合を例にとり説明する。
この場合、一軸圧縮試験用の供試体の寸法をφ5cm×10cmとし、試験に供する材齢を3日、7日、28日の計3種類とし、各種類それぞれ3本の供試体について試験した値の平均値を算出するものとすると、1つの供試体の体積は約200cm3であるから、試料の必要量は、200cm3×3(3種類の材齢)×3(平均値の算出用の必要数)×1.3(余裕を持たせるための割増)=約2,400cm3、と計算することができる。筒状の本体部の長さを20cmとすれば、断面積は120cm2であり、円形の断面を有するとすれば、筒状の本体部の内径は約13cmである。これらの値(長さ:20cm、内径:13cm)は、実用可能な寸法である。
【0014】
本発明の未硬化改良土の試料の採取器は、例えば、図2または図3に示す形態で、縦型撹拌翼に取り付けることができる。
図2は、縦型撹拌翼11に対して本発明の採取器15を取り付けた状態を示す。図2中、図示しない水平方向に延びる回転軸の回転に伴って鉛直方向に回転するアーム12の先端に、ベースプレート13が固着されている。ベースプレート13は、矩形の平板状に形成されている。ベースプレート13の、アーム12が位置する側とは逆の側の面には、複数(図2では3つ)の撹拌爪14が設けられている。一方、本発明の採取器15は、取り付け部16、可撓膜体17、枠体18及び筒状の本体部19を有する。取り付け部の一対の板状体16aは、ベースプレート13を挟む形で位置決めされており、少なくとも両端が螺刻された棒状体(例えば、長尺のボルト)16c及びナット16dによって、ベースプレート13に固定されている。
【0015】
図3は、図2に示すものと同じ縦型撹拌翼11に対して、図2に示す採取器15とは異なる形態を有する採取器25を取り付けた状態を示す。本発明の採取器25は、取り付け部26、可撓膜体27、枠体28及び本体部29を有する。取り付け部26は、中央の撹拌爪14に取り付けるための取り付け部26aと、側方の撹拌爪14に取り付けるための取り付け部26bと、ベースプレート13に取り付けるための取り付け部26cを含む。取り付け部26a及び取り付け部26bの各々には、撹拌爪14を挿通するための断面がコの字状またはロの字状の開口部が設けられている。また、取り付け部26cは、ベースプレート13を挟む形で位置決めされており、少なくとも両端が螺刻された棒状体(例えば、長尺のボルト)26d及びナット26eによって、ベースプレート13に固定されている。
【0016】
本発明の採取器を取り付ける対象物である縦型撹拌翼について、説明する。
図4中、縦型撹拌翼31は、軸線が水平に延びる回転軸35と、回転軸35から放射状に延びるアーム32と、アーム32の先端に配設されたベースプレート33と、ベースプレート33の面上に形成された撹拌爪34を有する。また、アーム32の周面には、付着土落とし用ビット36が、回転軸35の軸線と平行にかつ内方に延びるように突設されている。回転軸35の中央からは、アーム32と平行に、かつ、ベースプレート33と干渉しないように、スタティックスタビライザ37が設けられている。本発明の採取器は、任意に選択可能な2つの撹拌爪34の間に、例えば図2または図3に示す形態で取り付けることができる。
【0017】
図5は、縦型混合撹拌装置の全体を示す図である。
縦型混合撹拌装置41は、図示しないバックホウのアームに取り付けるブラケット42と、躯体43と、駆動装置44と、縦型撹拌翼45を有する。なお、縦型撹拌翼45は、上述のとおり、回転軸46、撹拌爪47等を有する。
図6は、縦型混合撹拌装置を用いて地盤改良工事を行っている状態を示す図である。バックホウのベースマシン51には、第一のアーム52が取り付けられており、第一のアーム52には、さらに第二のアーム53が取り付けられている。第二のアーム53の先端には、縦型混合撹拌装置41が取り付けられている。第一のアーム52と第二のアーム53によって、縦型混合撹拌装置41の昇降機構を構成している。図6は、縦型混合撹拌装置41を地表面54の下方に貫入させていく状態を示し、撹拌爪47の上方には撹拌土55が形成されている。図6中の符号56は、改良下端部を示す。なお、図6中の縦型混合撹拌装置の各部には、図5と同じ符号を付けている。
【0018】
本発明の未硬化改良土の試料の採取器は、縦型混合撹拌装置に対して1つのみ取り付けてもよいし、複数取り付けてもよい。例えば、縦型混合撹拌装置の左右のアーム32(図4参照)の各々のベースプレート33に設けられた撹拌爪34に各々取り付けた計2つの採取器と、左右のアーム32の各々に取り付けた計2つの採取器との合計4つの採取器を用いることによって、これら4つの採取器で採取された各試料の一軸圧縮強さを測定して、各試料間の強度の均一性を確認することもできる。
【0019】
本発明の採取器を用いた未硬化改良土の試料の採取は、次のようにして行われる。
まず、改良対象区域に対して、地盤改良工事を行う。具体的には、図6に示すように、第一のアーム52及び第二のアーム53を回動させて、縦型混合撹拌装置41の下端を地表面54の所望の位置に定めた後、縦型撹拌翼(以下、撹拌翼と略す。)を正回転させながら、かつ、縦型混合撹拌装置41を地盤中の下方に向かって貫入させながら、固化材スラリーを吐出していく。スタティックスタビライザ37(図4参照)の下端が所望の深さに達したら、撹拌翼45を正回転させながら、かつ、撹拌翼45の付近に設けられている吐出口からセメント系固化材スラリーを吐出させながら、或いは吐出させないで、縦型混合撹拌装置41を上方に引き上げていく。そして、所定の深さの地点に達した時に固化材スラリーの吐出を中止し、その後も、縦型混合撹拌装置41を上方に引き上げていき、地盤から完全に抜けた状態になった時に停止させる。以上の作業によって、地盤改良工事が完了する。なお、地盤改良工事の完了後に、通常、縦型混合撹拌装置41の清掃が行なわれる。
【0020】
次に、縦型混合撹拌装置41の2つの撹拌爪47(図5及び図6参照)の間にて、本発明の採取器を撹拌爪のベースプレート33(図4、及び、図1中の符号3a,3bによって挟まれた斜線部分Aを参照)に取り付け、改良土が未硬化状態にあるうちに、縦型混合撹拌装置41を、地表面54上の予め定めた地点にて、予め定めた深さまで、撹拌翼45を正回転の方向に回転させながら、地盤中に貫入させる。この際、本発明の採取器は、撹拌翼45が正回転の方向に回転するときに周囲の土が収容されないように、当該採取器の閉じた端部が土圧を受ける向きに取り付けておく。なお、本明細書中、「正回転の方向」とは、本発明の採取器が土を収容しないような撹拌翼の回転方向をいい、「逆回転の方向」とは、本発明の採取器が土を収容するような撹拌翼の回転方向をいう。
【0021】
縦型混合撹拌装置41が、予め定めた深さの地点に達したら、撹拌翼45の回転を正回転から逆回転に切り替え、周囲の未硬化改良土を採取器の内部に収容させる。次いで、撹拌翼の回転を逆回転から正回転に切り替え、縦型混合撹拌装置41を上方に引き上げていき、縦型混合撹拌装置41の下端が地表面54のやや上方に達したときに、停止させる。その後、本発明の採取器を撹拌翼から外し、採取器の中の未硬化改良土の試料を取り出す。この試料について、一軸圧縮試験等の試験を行う。
なお、本発明の採取器を撹拌翼45から外す前に、採取器を構成する筒状の本体部のスリット(図1中の符号2a参照)を通して、未硬化改良土が十分に収容されているかを確認することができる。
【実施例】
【0022】
[実施例1]
図2に示す採取器(筒状の本体部の長さ:20cm、筒状の本体部の内径:13cm、ゴム製の可撓膜体を有するもの)を用い、かつ、図2及び図6に示す混合撹拌装置等の機械を用いて、所定の深さ(約10m)の地点にて、未硬化改良土の試料を採取した。採取された試料は、筒状の本体部の中に十分に充填されていた。なお、未硬化改良土の試料の採取作業は、迅速かつ円滑に行なうことができた。
【符号の説明】
【0023】
1,15,25 本発明の未硬化改良土の試料の採取器
2,19,29 筒状の本体部
2a スリット(溝状の開口部)
3,16,26 取り付け部
3a,3b,16a,16b 板状体
3c,16c,26d 棒状体
3d,7,16d,26e ナット
4,17,27 可撓膜体
4a 切り込み
5,18,28 枠体
5a 嵌合部
5b 環状の固着部
6 棒状体
11,31,45 縦型撹拌翼
12,32 アーム
13,33 ベースプレート
14,34,47 撹拌爪
26a,26b,26c 取り付け部
35,46 回転軸
36 付着土落とし用ビット
37 スタティックスタビライザ
41 縦型混合撹拌装置
42 ブラケット
43 躯体
44 駆動装置
51 ベースマシン
52 第一のアーム
53 第二のアーム
54 地表面
55 撹拌土
56 改良下端部
A 縦型撹拌翼のベースプレートの位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦型撹拌翼を用いる縦型回転混合撹拌方式による地盤改良後の未硬化改良土の試料を採取するための採取器であって、未硬化改良土の試料を収容するための、一端を閉じかつ他端に開口部分を有する筒状の本体部と、上記縦型撹拌翼に対して脱着可能に取り付けるための取り付け部を含むことを特徴とする未硬化改良土の試料の採取器。
【請求項2】
上記筒状の本体部の開口部分を塞ぐように配設された可撓膜体であって、上記縦型撹拌翼の回転によって上記筒状の本体部の中へ周囲の未硬化改良土を収容させることのできる切り込みを有する可撓膜体を含む、請求項1に記載の採取器。
【請求項3】
上記筒状の本体部と上記可撓膜体の間に介在する枠体であって、上記筒状の本体部に対して脱着可能に取り付けられ、かつ、上記可撓膜体の縁部に固着された枠体を含む、請求項2に記載の採取器。
【請求項4】
上記筒状の本体部の周面を形成する周壁に、上記筒状の本体部の軸線方向に延びる、1つ以上の溝状の開口部が設けられている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の採取器。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の採取器を用いた未硬化改良土の試料の採取方法であって、
上記縦型撹拌翼の構成部分である2つの撹拌爪の間に、上記採取器を取り付ける準備工程と、
未硬化改良土の中に、上記縦型撹拌翼を、上記採取器の中に土が収容されない正回転の方向に回転させながら、任意の予め定めた深さまで下降させる下降工程と、
上記任意の予め定めた深さにて、上記縦型撹拌翼を、逆回転の方向に回転させて、上記採取器の中に未硬化改良土の試料を収容させる試料収容工程と、
上記縦型撹拌翼を、正回転の方向に回転させながら、地上まで上昇させる上昇工程、
を含むことを特徴とする未硬化改良土の試料の採取方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−184559(P2012−184559A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47130(P2011−47130)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000185972)小野田ケミコ株式会社 (58)
【Fターム(参考)】