説明

末梢神経障害の治療のための化合物

脱髄性末梢神経障害の治療に使用するための、式A1またはA2の化合物:[式中、Aは、COOR、OPO(OR、PO(OR、SOOR、PORORまたは1H−テトラゾール−5−イルであり、Rは、Hまたはエステル形成基、場合によってC1〜6アルキルであり;Wは、結合、C1〜3アルキレンまたはC2〜3アルケニレンであり;Yは、C6〜10アリールまたはC2〜9ヘテロアリール例えばC3〜9ヘテロアリールであり、ハロゲン、OH、NO、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ;ハロ置換C1〜6アルキルおよびハロ置換C1〜6アルコキシから選択される1から3個までの基で場合によって置換されており;Zは、式(I):[式中、Zの星印はそれぞれ、−C(R)(R)−と式(Ia)もしくは式(Ib)のAとの間の結合点を示しており;Rは、水素およびC1〜6アルキルから選ばれ;JおよびJは、独立に、メチレンであるかもしくはS、OおよびNRから選ばれるヘテロ原子であり;ここで、Rは、水素およびC1〜6アルキルから選ばれ;Zの任意のアルキレンは、ハロ、ヒドロキシ、C1〜6アルキルから選ばれる1から3個までの基でさらに置換されていてよく;またはRは、Yの炭素原子に結合されて5〜7員環を形成し得る]から選ばれ;Rは、C6〜10アリールまたはC2〜9ヘテロアリール例えばC3〜9ヘテロアリールであり、C1〜6アルキル、C6〜10アリール、C6〜10アリールC1〜4アルキル、C3〜9ヘテロアリール、C3〜9ヘテロアリールC1〜4アルキル、C3〜8シクロアルキル、C3〜8シクロアルキルC1〜4アルキル、C3〜8ヘテロシクロアルキルまたはC3〜8ヘテロシクロアルキルC1〜4アルキルで場合によって置換されており;ここで、Rの任意のアリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルは、ハロゲン、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシおよびハロ置換C1〜6アルキルまたはハロ置換C1〜6アルコキシから選択される1から5個までの基で置換されていてよく;Rは、H、C1〜6アルキル、ハロ置換C1〜6アルキル、C2〜6アルケニルまたはC2〜6アルキニルであり;RおよびRのそれぞれは、独立に、H、ハロゲン、OH、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシまたはハロ置換C1〜6アルキルもしくはハロ置換C1〜6アルコキシである];およびそのN−オキシド誘導体もしくはそのプロドラッグ、またはその薬理学的に許容される塩、溶媒和物もしくは水和物。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫抑制化合物および治療におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
炎症性神経障害または免疫介在性神経障害は、ギラン−バレー症候群(GBS)、慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(CIDP)、伝導ブロックを伴う多巣性運動神経障害(MMN)およびパラプロテイン血症性脱髄性末梢神経障害(PDN)のような末梢神経障害を含む、多様なグループの疾患である。炎症性神経障害の病因は、まだなお研究中である。
【0003】
いくつかの脱髄性末梢神経障害を、次に論じる。
【0004】
したがって、末梢神経障害は、末梢神経系を冒し、通常は急性の感染過程によって誘発される急性自己免疫性多発性神経障害であるギラン−バレー症候群(Guillain-Barre syndrome)を含む。いくつかのタイプのGBSが存在し、最も一般的な形は、急性炎症性脱髄性多発神経炎(AIDP)である。GBSは、重症であることが多く、脚の筋力低下によって気付かれ、深部腱反射の完全な消失を伴って上肢および顔面に広がる上行性麻痺として通常は現れる。サプレッサーT細胞応答が低減し、このことは、細胞性免疫反応が末梢神経に向けられることを示唆している。
【0005】
多巣性運動神経障害(Multifocal motor neuropathy)は、手の筋力低下を特徴とする進行性の筋障害であり、体の片側から他方側まで、影響を受ける特異的な筋肉に相違がある。症状には、筋肉の消耗、痙攣および脚筋の不随意収縮または単収縮も含まれる。多巣性運動神経障害は、免疫介在性障害であると認識されている。
【0006】
パラプロテイン血症性脱髄性神経障害(Paraproteinaemic Demyelinating Neuropathy)は、遅発性脱髄性神経障害の主な原因であり、CIDPに非常に類似しているが、より慢性的である。この傷害にはたいてい、60歳以上の人が罹患する。患者は戦うべき多くの症状を有し、それは長期にわたる疾病になりがちである。
【0007】
慢性炎症性脱髄性多発神経炎(Chronic inflammatory demyelinating polyneuropathy)(CIDP)は、脚および腕における進行性の筋力低下および感覚機能障害を特徴とする。これらの症状は、末梢神経のミエリン鞘に対する損傷によって引き起こされる。CIDPは、刺痛またはしびれ感(足指および手指において始まる)、腕および脚の筋力低下、深部腱反射の消失、疲労ならびに知覚異常を含む症状を呈することが多い。CIDPの有病率は、100,000人当たり約2〜4人である。病因は確定されていないが、T細胞およびB細胞の両方を媒介した機構が関与している可能性がある。
【0008】
CIDPの経過は、個体間で大きく異なる。ある者は、CIDPがある期間続いた後、自然に回復することもあるが、他の者は再発の間に部分的に回復しながら何度も発症を繰り返すこともある。CIDPは、結果としてかなりの数の患者に重症の身体障害を引き起こすことになる。現在の治療は、寛解を達成し、機能の状態を維持するために、免疫応答を調節することを目的としている。
【0009】
WO2004/103306およびUS2005/0014728は、リンパ球の相互作用によって媒介される疾患または障害の治療に有用な化合物を記載している。上述の公開物、特にUS2005/0014728の以下の部分:段落[0006]から[0015]まで、[0022]から[0042]まで、[0102]から[0124]までおよび[0126]から[0149]までならびに表1は、すべての目的のために参照により本明細書に完全に組み込まれる。特に言及されているのは、US2005/0014728の実施例1から5までである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様では、末梢神経障害、例えばCIDPの治療に使用するための、以下に言及される化合物を提供する。本発明の別の態様は、末梢神経障害、例えばCIDPを有する対象を治療する方法であって、以下に言及される化合物の有効量を対象に投与することを含む方法に属する。本発明のさらなる態様は、末梢神経障害、例えばCIDPを治療する際に使用するための医薬品を製造するための、以下に言及される化合物の使用である。
【0011】
本出願が関連する化合物は、WO04/103306およびUS2005/0014728、WO05/000833、WO05/103309またはWO05/113330に開示されている化合物、例えば式A1またはA2
【0012】
【化1】


の化合物
[式中、
Aは、COOR、OPO(OR、PO(OR、SOOR、PORORまたは1H−テトラゾール−5−イルであり、Rは、Hまたはエステル形成基、例えばC1〜6アルキルであり;
Wは、結合、C1〜3アルキレンまたはC2〜3アルケニレンであり;
Yは、C6〜10アリールまたはC2〜9ヘテロアリール例えばC3〜9ヘテロアリールであり、ハロゲン、OH、NO、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ;ハロ置換C1〜6アルキルおよびハロ置換
1〜6アルコキシから選択される1から3個までの基で場合によって置換されており;
Zは、
【0013】
【化2】


[式中、Zの左右の星印はそれぞれ、−C(R)(R)−と式Iaもしくは式IbのAとの間の結合点を示しており;Rは、水素およびC1〜6アルキルから選ばれ;JおよびJは、独立に、メチレンであるかもしくはS、OおよびNRから選ばれるヘテロ原子であり;ここで、Rは、水素およびC1〜6アルキルから選ばれ;Zの任意のアルキレンは、ハロ、ヒドロキシ、C1〜6アルキルから選ばれる1から3個までの基でさらに置換されていてよく;またはRは、Yの炭素原子に結合されて5〜7員環を形成し得る]
から選ばれ;
は、C6〜10アリールまたはC2〜9ヘテロアリール例えばC3〜9ヘテロアリールであり、C1〜6アルキル、C6〜10アリール、C6〜10アリールC1〜4アルキル、C3〜9ヘテロアリール、C3〜9ヘテロアリールC1〜4アルキル、C3〜8シクロアルキル、C3〜8シクロアルキルC1〜4アルキル、C3〜8ヘテロシクロアルキルまたはC3〜8ヘテロシクロアルキルC1〜4アルキルで場合によって置換されており;ここで、Rの任意のアリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルは、ハロゲン、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシおよびハロ置換C1〜6アルキルまたはハロ置換C1〜6アルコキシから選択される1から5個までの基で置換されていてよく;
は、H、C1〜6アルキル、ハロ置換C1〜6アルキル、C2〜6アルケニルまたはC2〜6アルキニルであり;
またはRのそれぞれは、独立に、H、ハロゲン、OH、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシまたはハロ置換C1〜6アルキルもしくはハロ置換C1〜6アルコキシである];
およびそのN−オキシド誘導体もしくはそのプロドラッグ、
またはその薬理学的に許容される塩、溶媒和物もしくは水和物である。
【0014】
また、末梢神経障害、例えばCIDPを治療する際に使用するための、本開示の化合物と場合によって薬学的に許容される賦形剤または担体とを含む医薬製剤を提供する。実施形態では、医薬製剤は、1つまたは複数の追加の治療薬を含有する。
【0015】
本発明は、末梢神経障害、例えばCIDPを治療する際の、同時使用、個別使用または逐次使用のための混合製剤として、本開示の化合物および治療薬を含む製品も提供する。
【0016】
別の態様では、本発明は、本開示の化合物および末梢神経障害、例えばCIDPの治療に有用な治療薬を含む医薬製剤を提供する。
【0017】
本発明の化合物は、遊離酸、遊離塩基、エステルおよび他のプロドラッグ、塩および互変異性体などの種々の形で存在することができ、例えば、本開示は、本化合物のすべての変形を含む。
【0018】
保護の外延には、そのような化合物を実際に含有しているかどうかに関係なく、かつ任意のそのような化合物が治療有効量で含有されているかどうかに関係なく、本発明の化合物を含有するかまたは含有すると称している偽造品(counterfeit)または不正品(fraudulent)が含まれる。
【0019】
パッケージが本発明の種または医薬製剤を含有することを示す説明書または指示書と、そのような製剤または種であるかまたはそれを含む、あるいはそれであるかまたはそれを含むと称する製品とを含むパッケージは、保護の範囲に含まれる。そのようなパッケージは、必ずしもそうとは限らないが、偽造または不正である可能性がある。
【0020】
本発明の特定の態様、実施形態または実施例と併せて記載されている特徴、整数、特性、化合物、化学部分または化学基は、矛盾しない限り、本明細書に記載されている任意の他の態様、実施形態または実施例に適用できることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1Aは、水媒体およびCMC媒体で処理したEANラットについて、免疫化からの日数に伴う神経学的スコアの変動を示す図である。図1Bは、3および10mg/kg濃度の化合物A懸濁液で処理したEANラットについて、免疫化からの日数に伴う神経学的スコアの変動を示す図である。
【図2】図2Aは、水媒体およびCMC媒体で処理したEANラットについて、免疫化からの日数に伴う体重の変動を示す図である。図2Bは、3および10mg/kg濃度の化合物A懸濁液で処理したEANラットについて、免疫化からの日数に伴う体重の変動を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
定義
本明細書において、他に特に定義しない限り以下の通り定義する。
【0023】
アルキル、アルケニル、アルキニル
基としてのおよび他の基の構成要素としての「アルキル」、例えばハロ置換されている、アルキル、アルコキシ、アシル、アルキルチオ、アルキルスルホニルおよびアルキルスルフィニルは、直鎖状または分枝状のどちらでもよく、他に特に指示がない限り、1から6個までの炭素原子を有し得る。C〜Cアルキル部分は、1、2、3、4、5または6個の炭素原子を有し得る。基としてのおよび他の基の構成要素としての「アルケニル」は、1個または複数の炭素−炭素二重結合を含有し、直鎖状または分枝状のどちらでもよい。二重結合は、シス配置またはトランス配置であってよい。基としてのおよび他の基および化合物の構成要素としての「アルキニル」は、少なくとも1個のC≡C三重結合を含有し、1個または複数のC=C二重結合も含有することができ、可能な限り、直鎖状または分枝状のどちらでもよい。他に特に指示がない限り、アルケニルおよびアルキニル残基は、2、3、4、5または6個の炭素原子を有し得る。単独でのまたは他の基の構成要素としての任意のシクロアルキル基は、3、4、5、6、7または8個の炭素原子、好ましくは3、4、5または6個の炭素原子を含有することができる。「アルキレン」および「アルケニレン」は、それぞれ「アルキル」基および「アルケニル」基から誘導される2価の基である。本出願において、Rの任意のアルキル基は、場合によって、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−NR20−および−O−(ここで、R20は、水素またはC1〜6アルキルである)から選択される基の一員で置き換えられたメチレンを有する中断されたアルキル基である。これらの基には、例えば、−CH−O−CH−、−CH−S(O)−CH−、−(CH−NR20−CH、−CH−O−(CH−が含まれる。一実施形態では、そのような中断されたアルキル基は存在せず、それに含まれるのは、すべてのアルキル基が中断されていない化合物の類である。
【0024】
アリール
「アリール」は、6から10個までの環炭素原子を含有する単環式または縮合二環式の芳香族環アセンブリーを意味する。例えば、C6〜10アリールは、フェニル、ビフェニルまたはナフチル、好ましくはフェニルであり得る。縮合二環式環は、部分的に飽和していてよく、例えば、1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレンなどであり得る。「アリーレン」は、アリール基から誘導される2価の基を意味する。例えば、本出願において使用されるアリーレンは、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレンなどであり得る。
【0025】
ハロゲン
「ハロ」または「ハロゲン」は、F、Cl、BrまたはI、好ましくはFまたはClを意味する。ハロ置換されているアルキル基および化合物は、部分的にハロゲン化または過ハロゲン化されていてよく、これによって、多ハロゲン化の場合には、ハロゲン置換基は、同一であるかまたは異なっていることがある。好ましい過ハロゲン化アルキル基は、例えばトリフルオロメチルまたはトリフルオロメトキシである。
【0026】
ヘテロアリール
「ヘテロアリール」は、本出願において定義される場合、環構造に、N、OまたはSから選択される少なくとも1個のヘテロ原子部分を含むアリールを意味し、他に特に明記しない限り、各環は、5から6個までの環原子を含む。例えば、Cヘテロアリールには、オキサジアゾール、トリアゾールなどが含まれる。Cヘテロアリールには、キノリン、1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリンなどが含まれる。本出願において使用されるC2〜9ヘテロアリールには、チエニル、ピリジニル、フラニル、イソオキサゾリル、ベンゾオキサゾリルまたはベンゾ[1,3]ジオキソリル、好ましくはチエニル、フラニルまたはピリジニルが含まれる。「ヘテロアリーレン」は、本出願において定義される場合、ヘテロアリールを意味し、ただし、環アセンブリーは2価の基を含む。縮合二環式ヘテロアリール環系は、部分的に飽和していてよく、例えば、2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール、1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリンなどであり得る。
【0027】
置換されている
他に特に指示がない限り、ある部分に関して本明細書において使用される「置換されている」という用語は、前記部分における、1個または複数の、特に5個までの、より特には1、2または3個の水素原子が、互いに独立に、相当する数の記載されている置換基で置き換えられていることを意味する。本明細書において使用される「場合によって置換されている」という用語は、置換されているかまたは置換されていないことを意味する。
【0028】
言うまでもなく、置換基が化学的に可能な位置でのみ存在することは理解されるはずであり、当業者であれば、不適切な努力をせずに、特定の置換基が可能であるかどうかを(実験的にまたは理論的に)決定することができる。例えば、遊離水素を有するアミノ基またはヒドロキシ基は、不飽和(例えばオレフィン)結合を有する炭素原子に結合している場合には、不安定であり得る。
【0029】
薬学的に許容される
本明細書において使用される「薬学的に許容される」という用語は、適切な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応または他の問題もしくは合併症なしにヒトまたは動物の組織と接触して使用するのに適しており、妥当な利益/リスク比に見合うそれらの化合物、材料、組成物および/または剤形への言及を含む。この用語は、ヒトおよび動物用の両方の目的のための忍容性を含む。
【0030】
独立に
原子または基のリストから選択される2個以上の部分が、「それぞれ独立に」存在すると記載されている場合、これは、その部分が同一であるかまたは異なっていてよいことを意味する。したがって、それぞれの部分が何であるかということは、1個または複数の他の部分が何であるかということと無関係である。
【0031】
化合物
本出願は、WO2004/103306およびUS2005/0014728、WO05/000833、WO05/103309またはWO05/113330に開示されているような化合物、例えば式A1またはA2
【0032】
【化3】


の化合物
[式中、
Aは、COOR、OPO(OR、PO(OR、SOOR、PORORまたは1H−テトラゾール−5−イルであり、Rは、Hまたはエステル形成基、例えばC1〜6アルキルであり;
Wは、結合、C1〜3アルキレンまたはC2〜3アルケニレンであり;
Yは、C6〜10アリールまたはC2〜9ヘテロアリール例えばC3〜9ヘテロアリールであり、ハロゲン、OH、NO、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ;ハロ置換C1〜6アルキルおよびハロ置換
1〜6アルコキシから選択される1から3個までの基で場合によって置換されており;
Zは、
【0033】
【化4】


[式中、Zの星印はそれぞれ、−C(R)(R)−と式Iaもしくは式IbのAとの間の結合点を示しており;Rは、水素およびC1〜6アルキルから選ばれ;JおよびJは、独立に、メチレンであるかもしくはS、OおよびNRから選ばれるヘテロ原子であり;ここで、Rは、水素およびC1〜6アルキルから選ばれ;Zの任意のアルキレンは、ハロ、ヒドロキシ、C1〜6アルキルから選ばれる1から3個までの基でさらに置換されていてよく;またはRは、Yの炭素原子に結合されて5〜7員環を形成し得る]
から選ばれ;
は、C6〜10アリールまたはC2〜9ヘテロアリール例えばC3〜9ヘテロアリールであり、C1〜6アルキル、C6〜10アリール、C6〜10アリールC1〜4アルキル、C3〜9ヘテロアリール、C3〜9ヘテロアリールC1〜4アルキル、C3〜8シクロアルキル、C3〜8シクロアルキルC1〜4アルキル、C3〜8ヘテロシクロアルキルまたはC3〜8ヘテロシクロアルキルC1〜4アルキルで場合によって置換されており;ここで、Rの任意のアリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルは、ハロゲン、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシおよびハロ置換C1〜6アルキルまたはハロ置換C1〜6アルコキシから選択される1から5個までの基で置換されていてよく;
は、H、C1〜6アルキル、ハロ置換C1〜6アルキル、C2〜6アルケニルまたはC2〜6アルキニルであり;
またはRのそれぞれは、独立に、H、ハロゲン、OH、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシまたはハロ置換C1〜6アルキルもしくはハロ置換C1〜6アルコキシである];
およびそのN−オキシド誘導体もしくはそのプロドラッグ、またはその薬理学的に許容される塩、溶媒和物もしくは水和物に関する。
【0034】
本発明のさらなる実施形態は、以下に記載されている。さらなる実施形態を提供するために、各実施形態において明記されている特徴を、他の明記されている特徴と組み合わせてもよいことは認識されるであろう。
【0035】
Aは、COOR、OPO(OR、PO(OR、SOOR、PORORまたは1H−テトラゾール−5−イルであり、Rは、Hまたはエステル形成基、例えばC1〜6アルキルである。Aは、特にCOOR、例えばCOOHである。
【0036】
Wは、結合、C、CもしくはCアルキレンまたはC2〜3アルケニレンである。実施形態では、Wはエチレンである。
【0037】
Yは、C6〜10アリールまたはC2〜9ヘテロアリール例えばC3〜9ヘテロアリールであり、ハロゲン、OH、NO、アルキル、アルコキシ;ハロ置換アルキルおよびハロ置換アルコキシから選択される1から3個までの基で場合によって置換されており、ここで、基としてのまたはアルコキシの一部としてのアルキルは、ハロ置換されていてもされていなくても、1、2、3、4、5または6個の炭素原子を有する。Yは、特にフェニルまたはCヘテロアリールであり、いずれの場合にも、前述のように場合によって置換されている。前記アリール基、例えばフェニル基またはヘテロアリール基は、1個の置換基、例えば単一の前記アルキル置換基を有し得る。例示的なアルキル置換基は、エチルである。ハロゲンは、特にFまたはClである。
【0038】
Zは、上記に言及されているような部分であり、特に、WO2004/103306に示されているような複素環基、例えばアゼチジン、特に分子の残部に1位および3位で結合されているアゼチジンである。同様に、言及されるべきものは、いずれの場合にも、分子の残部に1位および3位で結合されているピロリジンおよびピペリジン;ならびに分子の残部を形成しているそれぞれの部分で1,4−二置換されているピペリジンである。これらの複素環は、いくつかの化合物において、部分AによりN−置換(1−置換)されており、CRにより、3位でまたは場合によっては4位で置換されている。
【0039】
は、C6〜10アリールまたはC2〜9ヘテロアリール例えばC3〜9ヘテロアリールであり、C1〜6アルキル、C6〜10アリール、C6〜10アリールC1〜4アルキル、C3〜9ヘテロアリール、C3〜9ヘテロアリールC1〜4アルキル、C3〜8シクロアルキル、C3〜8シクロアルキルC1〜4アルキル、C3〜8ヘテロシクロアルキルまたはC3〜8ヘテロシクロアルキルC1〜4アルキルで場合によって置換されており;ここで、Rの任意のアリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルは、ハロゲン、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシおよびハロ置換C1〜6アルキルまたはハロ置換C1〜6アルコキシから選択される1から5個までの基で置換されていてよい。Rは、特に、前述のように場合によって置換されているフェニルまたはCヘテロアリールである。Rは、いくつかの実施形態では、場合によってハロ置換されている、1、2、3、4、5または6個の炭素原子を有するアルキル(例えばトリフルオロメチル)、場合によってハロ置換されているフェニルおよび場合によってハロ置換されているC3〜8シクロアルキル(例えばシクロヘキシル)から選択される2個の置換基を有し、例えばRは、場合によってハロ置換されている1個のアルキル基および場合によってハロ置換されているフェニル基およびC3〜8(例えばC)シクロアルキル基から選択される1個の環状部分を有し得る。Rは、いくつかの化合物において、フェニルまたはCヘテロアリールであり、特に、3−トリフルオロメチル−4−シクロヘキシルフェニルの場合のように、前述のように3,4−二置換されているフェニルである。
【0040】
は、H、C1〜6アルキル、ハロ置換C1〜6アルキル、C2〜6アルケニルまたはC2〜6アルキニルである。したがって、アルキルは、ハロ置換されていてもされていなくても、1、2、3、4、5または6個の炭素原子を有し得る。Rは、特にメチルである。
【0041】
およびRのそれぞれは、独立に、H、ハロゲン、OH、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシまたはハロ置換C1〜6アルキルもしくはハロ置換C1〜6アルコキシである。したがって、アルキルは、ハロ置換されていてもされていなくても、かつ/またはアルコキシの一部であってもそうでなくても、1、2、3、4、5または6個の炭素原子を有し得る。RまたはRは、一例として、それぞれ独立に、H、ハロゲン、メチルまたはハロ置換メチルであり得る。特に、RおよびRは、両方ともHであり得る。
【0042】
本発明の目的のために有用な好ましい化合物は、1−{4−[1−(4−シクロヘキシル−3−トリフルオロメチル−ベンジルオキシイミノ)−エチル]−2−エチル−ベンジル}−アゼチジン−3−カルボン酸:
【0043】
【化5】


である。
【0044】
本発明の目的のために有用なさらなる化合物には、
【0045】
【化6】



が含まれる。
【0046】
同様に、言及されるべきものは、WO2004/103306の実施例および表1の他の化合物である。
【0047】
本発明の化合物は、薬学的に許容される塩の形であり得る。本開示の薬学的に許容される塩は、塩基性部分または酸性部分を含有する親化合物から、従来の化学的方法によって合成することができる。一般に、そのような塩は、これらの化合物の遊離酸または遊離塩基の形を、化学量論量の適切な塩基または酸と、水中または有機溶媒中または2つの混合液中で反応させることによって調製することができ、一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノールまたはアセトニトリルなどの非水媒質が好ましい。適した塩のリストは、その開示が参照によって本明細書に組み込まれるRemington’s Pharmaceutical Sciences、第17版、Mack Publishing Company、Easton、Pa.、US、1985、1418ページに見出される。同様に、Stahl他編、「Handbook of Pharmaceutical Salts Properties Selection and Use」、Verlag Helvetica Chimica Acta and Wiley−VCH、2002も参照されたい。
【0048】
それ故に、本開示は、親化合物が、その酸塩または塩基塩を作製することによって改変される、開示されている化合物の薬学的に許容される塩を含む。例えば、従来の非毒性塩または第4級アンモニウム塩は、例えば、無機または有機の酸または塩基から形成される。そのような酸付加塩の例には、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩(pamoate)、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩およびウンデカン酸塩が含まれる。塩基塩には、アンモニウム塩、ナトリウム塩およびカリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩およびマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N−メチル−D−グルカミンなどの有機塩基との塩ならびにアルギニン、リシンなどのアミノ酸との塩が含まれる。同様に、塩基性窒素含有基は、メチル、エチル、プロピルおよびブチルの塩化物、臭化物およびヨウ化物などの低級アルキルのハロゲン化物;硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジブチルおよび硫酸ジアミルのような硫酸ジアルキル;デシル、ラウリル、ミリスチルおよびステアリルの塩化物、臭化物およびヨウ化物などの長鎖ハロゲン化物、ベンジルおよびフェネチルの臭化物などのアラルキルのハロゲン化物などのような薬剤で4級化され得る。
【0049】
本発明は、本発明の活性のある薬学的種のためのプロドラッグを含み、例えば、そのようなプロドラッグにおいて、1個または複数の官能基は保護または誘導体化されるが、インビボでその官能基に、カルボン酸のエステルの場合には遊離酸に、または保護されているアミンの場合には遊離アミノ基にインビボで変換可能であるように、変換され得る。本明細書において使用される「プロドラッグ」という用語は、特に、インビボで、例えば、血液中での加水分解によって、親化合物に急速に転換される化合物を表す。詳しくは、T.HiguchiおよびV.Stella、Pro−drugs as Novel Delivery Systems、A.C.S.Symposium Seriesの14巻、Edward B.Roche編、Bioreversible Carriers in Drug Design、American Pharmaceutical Association and Pergamon Press、1987;H Bundgaard編、Design of Prodrugs、Elsevier、1985;およびJudkins他、Synthetic Communications、26(23)、4351〜4367ページ(1996)に論じられており、そのそれぞれが参照により本明細書に組み込まれる。
【0050】
したがって、プロドラッグは、その可逆な誘導体に転換されている官能基を有する薬物を含む。典型的には、そのようなプロドラッグは、加水分解によって活性薬物に転換される。例として、以下を言及することができる。
官能基 可逆な誘導体
カルボン酸 エステル、例えばアルキルエステルおよび
アシルオキシアルキルエステルなど;アミド
アルコール エステル、例えば硫酸エステルおよびリン酸エステル
ならびにカルボン酸(例えばアルカン酸)エステルなど
アミン アミド、カルバミン酸エステル、イミン、エナミン、
カルボニル(アルデヒド、 イミン、オキシム、アセタール/ケタール、
ケトン) エノールエステル、オキサゾリジンおよびチアゾキソリジン
【0051】
プロドラッグはまた、酸化または還元反応によって活性薬物に変換可能な化合物を含む。例として、以下を言及することができる。

酸化的活性化
・N−およびO−脱アルキル化
・酸化的脱アミノ化
・N−酸化
・エポキシ化

還元的活性化
・アゾ還元
・スルホキシド還元
・ジスルフィド還元
・生物還元的アルキル化
・ニトロ還元
【0052】
同様に、プロドラッグの代謝活性化として言及されるべきものは、ヌクレオチド活性化、リン酸化活性化および脱カルボキシル化活性化である。追加の情報については、参照により本明細書に組み込まれる、「The Organic Chemistry of Drug Design and Drug Action」、R B Silverman(特に第8章、497〜546ページ)を参照されたい。
【0053】
保護基の使用は、「Protective Groups in Organic Chemistry」、J W F McOmie編、Plenum Press(1973)および「Protective Groups in Organic Synthesis」、第2版、T W Greene & P G M Wutz、Wiley−Interscience(1991)に十分に記載されている。
【0054】
それ故に、本開示の化合物の保護された誘導体は、それ自体、薬理活性を持たない場合があるが、それらは、例えば非経口投与または経口投与され、その後、体内で代謝されて、薬理的に活性である本発明の化合物を形成し得ることが当業者によって認識される。したがって、そのような誘導体が「プロドラッグ」の例である。記載されている化合物のすべてのプロドラッグが、本開示の範囲内に含まれる。
【0055】
本明細書に言及されているいくつかの基(特にヘテロ原子および共役結合を含有するもの)には、互変異性形で存在するものがあり、これらの互変異性体はすべて、本開示の範囲内に含まれる。より一般的には、例えば、有機酸およびそれらの対アニオンの場合のように、多くの種は平衡状態で存在する可能性があり;よって、本明細書における、種への言及は、そのすべての平衡形態への言及を含む。
【0056】
本開示の化合物はまた、1個または複数の非対称の炭素原子を含有する可能性があり、したがって、光学異性および/またはジアステレオ異性を示し得る。すべてのジアステレオ異性体は、従来の技術、例えばクロマトグラフィーまたは分別結晶を使用して分離することができる。種々の立体異性体は、従来の、例えば分別結晶またはHPLCなどの技術を使用して、化合物のラセミ混合物または他の混合物を分離することによって単離され得る。あるいは、所望の光学異性体は、適切な光学活性の出発物質と例えばホモキラルな酸との、ラセミ化またはエピマー化を引き起こさない条件下での反応または誘導体化に続いて、従来の手段(例えばHPLC、シリカ上でのクロマトグラフィー)によるジアステレオマー誘導体の分離によって作製することができる。すべての立体異性体は、本開示の範囲内に含まれる。単一のエナンチオマーまたはジアステレオマーが開示される場合、本開示はまた、他のエナンチオマーまたはジアステレオマーおよびラセミ化合物も包含する;このことに関しては、本明細書に掲載されている特定の化合物に特に言及される。
【0057】
幾何異性体も、本開示の化合物中に存在し得る。本開示は、炭素−炭素二重結合の周囲の置換基の配置に起因する、種々の幾何異性体およびその混合物を企図し、そのような異性体をZ配置またはE配置と称する。ここで、「Z」という用語は、炭素−炭素二重結合の同じ側にある置換基を表し、「E」という用語は、炭素−炭素二重結合の反対側にある置換基を表す。
【0058】
したがって、本開示は、定義された化合物のすべての変形、例えば、定義された化合物の、任意の互変異性体または任意の薬学的に許容される塩、エステル、酸または他の変形およびそれらの互変異性体ならびに投与時に、以上に定義された化合物を直接的にもしくは間接的に提供することができる物質またはそのような化合物とともに平衡状態で存在することができる種を提供することができる物質を含む。
【0059】
合成
化合物は、上記に参照文献として引用した特許明細書、例えばWO04/103306およびUS2005/0014728に記載されているように合成され得る。
【0060】
投与および医薬製剤
本発明の化合物は、通常、経口、静脈内、皮下、舌下、経腸、経皮、経鼻、気管、気管支、他の任意の非経口経路によって、口腔内もしくは鼻内スプレーとしてまたは吸入によって投与される。化合物は、薬学的に許容される剤形中に、遊離化合物としてまたは例えば、薬学的に許容される、非毒性の有機もしくは無機の酸付加塩もしくは塩基付加塩として、プロドラッグまたは活性化合物を含む医薬製剤の形で投与され得る。治療される疾患および患者ならびに投与経路に応じて、組成物は、様々な用量で投与され得る。
【0061】
したがって、典型的には、本発明の医薬化合物は、宿主に経口または非経口投与され得る(本明細書において使用される「非経口」は、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内、皮下および関節内の注射ならびに注入を含む投与方法を指す)。ヒトなどの、より大型の動物の場合には、薬学的に許容される賦形剤、添加剤または担体と組み合わせた組成物としての投与に代わる方法として、化合物は単独で投与され得る。
【0062】
本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の投与量レベルは、特定の患者、組成物および投与方法に関して、所望の治療応答を達成するのに有効である(1種または複数種の)活性化合物の量を得るために、変化させることができる。選択される投与量レベルは、特定の化合物の活性、投与経路、治療される状態の重症度ならびに治療される患者の状態および前の病歴によって決まる。しかし、所望の治療効果を達成するのに必要なレベルよりも低いレベルで化合物の投与を開始し、所望の効果が達成されるまで投与量を徐々に増やしていくことは、当技術分野の技量の範囲内である。
【0063】
末梢神経障害の症状の治療、予防、抑制、改善または緩和において、適切な投与量レベルは、一般に、1日に患者の体重1kg当たり約0.01から500mgまでであり、これを単回用量でまたは多回用量で投与することができる。投与量レベルは、約0.1から約250mg/kg/日まで;例えば約0.5から約100mg/kg/日までであり得る。適した投与量レベルは、約0.01から250mg/kg/日まで、約0.05から100mg/kg/日までまたは約0.1から50mg/kg/日までであり得る。この範囲内で、投与量は、0.05から0.5mg/kg/日まで、0.5から5mg/kg/日までまたは5から50mg/kg/日までであり得る。経口投与に関しては、組成物は、1.0から1000ミリグラムまでの活性成分、特に1.0、5.0、10.0、15.0、20.0、25.0、50.0、75.0、100.0、150.0、200.0、250.0、300.0、400.0、500.0、600.0、750.0、800.0、900.0または1000.0ミリグラムの活性成分を含有する錠剤の形で提供され得る。化合物は、1日1回から4回まで、好ましくは1日1回または2回の投与計画で投与され得る。投与計画は、最適な治療応答をもたらすために調節され得る。
【0064】
それ故に、本発明のさらなる態様によると、本開示の化合物を含む医薬組成物は、薬学的に許容されるアジュバント、賦形剤または担体と混合して提供される。
【0065】
非経口注射のための本発明の医薬組成物は、薬学的に許容される無菌の水溶液または非水溶液、分散液、懸濁液または乳液および使用直前に無菌注射用溶液または分散液中に再構成するための無菌散剤を適切に含む。適した水性および非水性の担体、賦形剤、溶媒または媒体の例には、水、エタノール、ポリオール(グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)およびそれらの適した混合物、植物油(オリーブ油など)ならびにオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルが含まれる。適正な流動性は、例えばレシチンなどのコーティング材料の使用によって、分散液の場合には、必要とされる粒子サイズの維持によっておよび界面活性剤の使用によって維持することができる。
【0066】
これらの組成物は、保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤などのアジュバントも含有し得る。微生物の作用の予防は、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノールまたはフェノールソルビン酸を含むことによって保証され得る。例えば、糖または塩化ナトリウムなどの等張化剤を含むことも望ましい場合がある。注射用医薬剤形の持続的吸収は、吸収を遅延させる薬剤(例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)を含むことによってもたらすことができる。
【0067】
ある場合には、薬物の効果を延長させるために、皮下注射または筋肉内注射からの薬物の吸収を遅らせることが望ましい。これは、水への溶解度が低い結晶質または非晶質材料の液体懸濁液の使用によって成し遂げることができる。次いで、薬物の吸収速度は、その溶解速度によって決まり、言い換えれば、結晶サイズおよび結晶形によって決まり得る。あるいは、非経口投与した薬物剤形の遅延吸収は、油性媒体中に薬物を溶解または懸濁させることによって成し遂げられる。
【0068】
注射用デポー剤形は、生体分解性ポリマー、例えばポリラクチド−ポリグリコリド中に薬剤のマイクロカプセルマトリックス(microencapsule matrix)を形成することによって適切に作製される。ポリマーに対する薬物の比率および用いられる特定のポリマーの性質に応じて、薬物放出速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例には、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が含まれる。注射用デポー製剤は、体内組織に適合するリポソームまたはマイクロエマルジョン中に、薬物を閉じ込めることによっても調製され得る。注射用製剤は、例えば、細菌保持フィルターを通すろ過によってまたは使用直前に無菌水もしくは他の無菌注射用媒質に溶解もしくは分散させることができる無菌固体組成物の形で滅菌剤を組み込むことによって滅菌することができる。
【0069】
経口投与用の固体剤形には、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤および顆粒剤が含まれる。そのような固体剤形において、活性化合物は、典型的には、少なくとも1種の不活性な、薬学的に許容される添加剤または担体、例えば、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムおよび/または1種または複数種の:a)充填剤または増量剤、例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよびケイ酸など;b)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよびアラビアゴムなど;c)保湿剤、例えば、グリセロールなど;d)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプンまたはタピオカデンプン、アルギン酸、ある特定のケイ酸塩および炭酸ナトリウムなど;e)溶解遅延剤、例えば、パラフィンなど;f)吸収促進剤、例えば、第4級アンモニウム化合物など;g)湿潤剤、例えば、セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールなど;h)吸収剤、例えば、カオリンおよびベントナイト粘土などならびにi)滑沢剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムなどおよびそれらの混合物と混合される。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合には、剤形は、緩衝剤も含み得る。類似のタイプの固体組成物はまた、例えば、ラクトースまたは乳糖および高分子量ポリエチレングリコールなどの添加剤を使用して、軟ゼラチンカプセルおよび硬充填ゼラチンカプセル中の充填剤として用いられ得る。
【0070】
適切には、経口製剤は、溶解助剤を含有する。溶解助剤は、それが薬学的に許容される限り、それが何であるかということについては限定されない。例には、非イオン性界面活性剤として、スクロース脂肪酸エステル、グリセロール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル(例えばトリオレイン酸ソルビタン)、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン水添ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、メトキシポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルチオエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマー、ポリオキシエチレングリセロール脂肪酸エステル、ペンタエリトリトール脂肪酸エステル、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミドおよびアルキルアミンオキシドなど;胆汁酸およびその塩(例えばケノデオキシコール酸、コール酸、デオキシコール酸、デヒドロコール酸およびその塩ならびにそのグリシン抱合体またはタウリン抱合体);イオン性界面活性剤として、ラウリル硫酸ナトリウム、脂肪酸セッケン、アルキルスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、エーテルリン酸塩、塩基性アミノ酸の脂肪酸塩;トリエタノールアミンセッケンおよびアルキル第4級アンモニウム塩;ならびに両性界面活性剤として、ベタインおよびアミノカルボン酸塩が含まれる。
【0071】
錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤および顆粒剤である固体剤形は、腸溶性コーティングおよび医薬製剤分野においてよく知られている他のコーティングなどのコーティングおよびシェルを用いて調製することができる。それらは、不透明化剤を場合によって含有することができ、それらが(1種または複数種の)活性成分のみを放出するような、または選択的に、腸管のある特定の部分におよび/または遅延された方式で放出するような組成物でもあり得る。包埋組成物の例には、ポリマー物質およびワックスが含まれる。
【0072】
活性化合物は、適切な場合、上述の1種または複数種の添加剤でマイクロカプセル化された形であってもよい。
【0073】
活性化合物は、微細に分割された形であってよく、例えば微粉化されてもよい。
【0074】
経口投与用の液体剤形には、薬学的に許容される乳剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤が含まれる。活性化合物に加えて、液体剤形は、当技術分野において一般に使用されている、水または他の溶媒などの不活性賦形剤、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステルなどの可溶化剤および乳化剤ならびにそれらの混合物を含有することができる。不活性賦形剤の他に、経口組成物は、湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、甘味剤、着香剤および芳香剤などのアジュバントを含むこともできる。懸濁剤は、活性化合物に加えて、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天およびトラガカントならびにその混合物などの懸濁化剤を含有し得る。
【0075】
直腸または経膣投与用の組成物は、カカオバター、ポリエチレングリコールまたは坐剤用ワックスなどの、室温では固体であるが体温では液体であるために、直腸腔内または膣腔内で融解して活性化合物を放出する、非刺激性の、適した添加剤または担体と、本発明の化合物とを混合することによって調製することができる坐剤であることが好ましい。
【0076】
本発明の化合物は、リポソームの形でも投与することができる。当技術分野において知られているように、リポソームは、一般に、リン脂質または他の脂質物質から誘導される。リポソームは、水性媒質中に分散される、単層状または多層状の水和液晶によって形成される。リポソームを形成することができる、非毒性で、生理的に許容され、代謝可能ないずれの脂質も使用することができる。リポソームの形の本組成物は、本発明の化合物に加えて、安定化剤、保存剤、添加剤などを含有することができる。好ましい脂質は、天然および合成の両方のリン脂質およびホスファチジルコリン(レシチン)である。リポソームを形成する方法は、当技術分野において知られており、例えば、Prescott編、Methods in Cell Biology、XIV巻、Academic Press、New York、N.Y.(1976)、33ページ以下を参照されたい。
【0077】
有利には、本発明の化合物は、経口で活性であり、活性が急速に開始し、低毒性であり得る。
【0078】
本発明の化合物は、先行技術において知られている化合物に比べて、より有効であり、低毒性であり、長時間作用し、広範囲の活性を有し、強力であり、副作用が少なく、容易に吸収されるという利点を有する、または他の有用な薬理学的特性を有することができる。
【0079】
併用療法
本発明の化合物は、1種または複数種の追加の治療薬と組み合わせて投与され得る。よって、本発明は、追加の薬剤を含む医薬組成物を提供する。本発明はまた、治療における、同時使用、個別使用または逐次使用のための混合製剤として、本発明の化合物および薬剤を含む製品を提供する。
【0080】
特に、本発明の組成物または製品は、以下から選択される治療薬をさらに含み得る。例えば、本開示の化合物は、末梢神経障害、例えば脱髄性末梢神経障害を治療するのに有用な薬剤と組み合わせて投与され得る。そのような第2の薬剤の例として、言及することができるのは、免疫抑制剤(例えば、シクロスポリンA、シクロスポリンG、FK−506、ABT−281、ASM981、ラパマイシン、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン、コルチコステロイド、シクロホスファミド、アザチオプリン、メトトレキサート、レフルノミド、ミゾリビン、ミコフェノール酸モフェチルまたは15−デオキシスペルグアリン)、ステロイド(例えば、プレドニゾンまたはヒドロコルチゾン)、免疫グロブリンまたは1型インターフェロンである。本開示の化合物および第2の薬剤は、同時にまたは連続して投与することができる。本開示の化合物および第2の薬剤が同時に投与される場合には、それらは単一の組成物にまたは別個の組成物に製剤され得る。
【0081】
使用
本発明の化合物は、種々の末梢神経障害、特に急性または慢性の脱髄性神経障害の治療に有用であり得る。したがって、本開示の化合物は、ギラン−バレー症候群(GBS)、慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(CIDP)、伝導ブロックを伴う多巣性運動神経障害(MMN)およびパラプロテイン血症性脱髄性末梢神経障害(PDN)のうちの1つまたは複数の治療に有用であり得る。特に、神経障害はCIDPである。化合物の有効性は、患者間で変化し得る。
【0082】
「療法」という用語は、末梢神経障害の1つまたは複数の症状を緩和するためのまたは例えば、脱髄、例えば末梢の脱髄を予防するかもしくは遅らせることによって、そのような疾患の進行を遅延させるための治療を含み;また、そのような疾患を治癒させるための、対象を機能状態に至らせるためのおよび/または対象を機能状態で維持するためのまたは再発するまでの時間を引き延ばすための治療を含む。
【0083】
化合物の治療的使用は、存在する疾患の重症度を抑制または軽減するための治療のみならず、対象が罹患する危険性がある末梢神経障害の重症度を予防、抑制または軽減するための予防的使用を含み得る。化合物は、症状が発現する前に投与することができ;症状が発現した後に投与することができる。化合物は、末梢神経障害に罹患する危険性がある対象に投与することができる。
【0084】
したがって、化合物が使用され得る治療は、末梢神経障害を有する、有する疑いがあるまたは罹患する危険性がある患者の病状および/または快適性を改善、維持またはその悪化を遅延させることができる。
【実施例】
【0085】
以下の実施例は、本発明を説明するものである。
【0086】
[実施例1]
(化合物Aの合成)
1−{4−[1−(4−シクロヘキシル−3−トリフルオロメチル−ベンジルオキシイミノ)−エチル]−2−エチル−ベンジル}−アゼチジン−3−カルボン酸(化合物A)
MnO(10eq)のジオキサン中懸濁液に、1−(3−エチル−4−ヒドロキシメチル−フェニル)−エタノンO−(4−シクロヘキシル−3−トリフルオロメチル−ベンジル)−オキシム(1eq)を加える。得られた混合物を10分間還流させる。ろ過および濃縮後、残渣をMeOHに溶解し、アゼチジン−3−カルボン酸(2eq)およびEt3N(1.5eq)で処理する。得られた混合物を50℃で30分加熱する。室温に冷却後、NaBHCN(3eq)を分けて加える。分取用LCMSによって精製することにより、1−{4−[1−(4−シクロヘキシル−3−トリフルオロメチル−ベンジルオキシイミノ)−エチル]−2−エチル−ベンジル}−アゼチジン−3−カルボン酸を得る;1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 1.24 (t, 3H), 1.30-1. 60 (m, 5H), 1.74-1. 92 (m, 5H), 2.28 (s, 3H), 2.79 (q, 2H), 2.92 (m, 1H), 3.68 (m, 1H), 4.32 (m, 4H), 4.51 (s, 2H) 5.22 (s, 2H), 7.38 (d, 1H), 7.50-7. 68 (m, 5H). MS: (ES+) : 517.3 (M+1)+
【0087】
[実施例2]
(実験的自己免疫性神経炎(Experimental Autoimmune Neuritis)に及ぼす化合物Aの抑制作用)
雄Lewisラット(8〜10週齢、180〜200g、Elevage−Janvier、France)を、12時間明/12時間暗サイクル下で飼育し、飼料および水を自由に摂取させた。すべての動物手順は、地元のAdministration District Official Committeeによって認可されたプロトコルに従った。動物の数および動物の苦痛を最小限にするすべての努力を行った。
【0088】
EAN誘発
EAN誘発に関しては、神経突起生成性の合成P2 57〜81ペプチド100μg(GeneScript Corporation、Scotch Plains、NJ、USA)を含有する接種材料100μLを用い、両後肢足蹠への皮下注射によってラットを免疫した。ペプチドをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(2mg/mL)に溶解し、次いで、2mg/mLヒト型結核菌を含有する同量の完全フロイントアジュバント(CFA)を用いて乳化し、1mg/mLの最終濃度を得た。
【0089】
EAN臨床スコアを、以下の通り、毎日評価した:0=正常、1=尾の緊張の低減、2=軟弱な尾、立直り障害、3=立直り欠如、4=歩行失調、5=後肢の軽度不全麻痺、6=中等度の不全対麻痺、7=後肢の重症の不全対麻痺または対麻痺、8=四肢不全麻痺、9=瀕死および10=死亡(Zhang他、2009A)。
【0090】
化合物A処理
化合物Aを、懸濁液の2つの濃度(3および10mg/kg、1%カルボキシメチルセルロース(CMC、Blanose、Hercules−Aqualon、Dusseldorf、Germany)に懸濁)で別々に試験した。化合物A懸濁液を、誘発直後におよびその後は22日目まで1日1回胃内投与した(1群当たりラット5匹)。対照EANラットに関しては、水中1%CMCの同量を投与した。
【0091】
免疫組織化学法
PNSの炎症性細胞浸潤および病理変化を評価するために、16日目から、化合物A処理ラット5例(両方の濃度について)および対照EANラット5例を屠殺した。ラットをエーテルで深く麻酔し、4℃、PBS中4%パラホルムアルデヒドで心臓内灌流した。左右の坐骨神経を直ちに除去し、4%ホルムアルデヒド中、一晩4℃で後固定した。坐骨神経を2本の等しい長さの断片に切り、パラフィンに包埋し、連続的に切片(3μm)を作製し、シランカバースライドガラス上に載せた。
【0092】
脱ワックス後、坐骨神経の断面を、クエン酸緩衝液(クエン酸ナトリウム2.1g/L、pH6)中、(600W電子レンジ中で)15分間煮沸した。内因性ペルオキシダーゼを、メタノール中1%Hで15分間阻害した。免疫グロブリンの非特異的結合をブロックするために、10%正常ブタ血清(Biochrom、Berlin、Germany)を用いて切片をインキュベートし、次いで、以下のモノクロナール抗体:Tリンパ球についてはW3/13(1:50;Serotec、Oxford、UK)、B細胞についてはOX22(1:200;Serotec、Oxford、UK)、活性化マクロファージについてはED1(1:100;Serotec、Oxford、UK)でインキュベートした。組織切片への抗体結合を、ビチオン化IgG F(ab)2第2次抗体フラグメント(ウサギ抗マウスまたはウサギ抗ヤギ;1:400;DAKO、Hamburg、Germany)で視覚化した。続いて、切片をストレプトアビジン/アビジン−ビオチン複合体(DAKO、Hamburg、Germany)でインキュベートした後、ジアミノベンジジン(DAB)基質(Fluka、Neu−Ulm、Germany)で発色させた。最後に、切片をMaier’s Hemalumで対比染色した。
【0093】
免疫染色データを評価するために、免疫反応性(IR)の領域の坐骨神経断面の領域に対する百分率を計算した。パラメータを固定してNikon Coolscope(Nikon、Dusseldorf、Germany)を使用して、坐骨神経断面の画像を拡大倍率50倍で取得した。MetaMorph Offline 7.1(Molecular Devices、Toronto、Canada)を使用して、画像を解析した。IRの領域を色素量閾値分割によって選択し、すべての画像について、すべてのパラメータを固定した。坐骨神経断面の領域を、手動で選択した。各EANラットについて、両側の神経根部および中央部から4枚の断面を解析した。結果を、IRの領域の坐骨神経断面の領域に対する百分率の相加平均および平均の標準誤差(SEM)として得た。
【0094】
ミエリンを示すために、通常のルクソール−ファスト−ブルー(LFB)染色を適用した。化合物AのEANラットと対照EANラットとの間の組織学的変化を、確立された半定量法によって比較した。簡単に言えば、EANラットの両側の根元および中央レベルから4枚の断面を解析した。断面中に存在する血管周囲のすべての領域が、処理について知らされていない2名の観察者によって評価され、病理学的変性の程度を半定量的に、以下のスケールに等級付けされた:0=正常な血管周囲領域、1=血管に隣接した軽度の細胞浸潤物;2=血管に極めて接近した細胞浸潤および脱髄;ならびに3=断面全体の細胞浸潤および脱髄。結果を、平均組織学的スコアとして得た(Hartung他、1988)。
【0095】
評価および統計解析
対応のないt検定を行い、化合物AのEANラットと対照EANラットとの間の差を比較した(windowsのGraph Pad Prism 4.0)。すべての統計解析に関して、有意水準をp<0.05に設定した。
【0096】
結果
化合物AによるEANの抑制処理
EANの誘発は、神経突起生成性の合成P2ペプチドを皮下注射することによって行った。抑制処理に関しては、水中1%CMC(対照群)または化合物Aを、免疫化直後におよびその後は22日目まで1日1回経口投与した。対照EANラットの最初の神経学的徴候(尾の緊張の低減)が、9日目に観測された(平均臨床スコア:0.20±0.13)。EANの神経学的重症度は、対照群において急速に増加し、13日目に最大スコアとなった(平均神経学的スコア:4.80±0.51)。その後、EANの重症度は緩やかに減少し、ラットは22日目までに完全に回復した(平均臨床スコア:0±0)。化合物A処理EANラットにおいて、14日目に、非常に軽減された神経学的徴候が見られ、15日目に最大スコアとなり、ラットの完全な回復が19日目までに見られた。したがって、化合物A処理は、水/cmc媒体と比較して、非常に有効に、EANの臨床的徴候の発症をほとんど防止し、その発現を劇的に遅延し、神経学的重症度を減少し、EANの期間を短縮した(図1Aおよび図1B)。
【0097】
EANのさらなる特徴は、疾患が発現した後の進行性の体重減少である。対照EANラットおよび化合物A処理EANラットにおいて、緩やかで持続的な体重増加が、EANの発現(9日目)まで観察された。その後、対照EANラットは、免疫化後10日目から18日目までの神経疾患の期間中に、有意な体重減少を示した後、回復期間中に体重増加を示した(図2A)。対照的に、化合物Aによって処理されたEANラットでは、疾患の発現のピーク時に、より低濃度の化合物A懸濁液において、低減されたレベルの体重減少が、11日目から16日目まで観察され、ここでも重症の経過を示すことははるかに少ないことが示された。この効果は、より高用量の懸濁液ではより顕著であり、11日目と12日目との間にわずかな体重減少が見られたものの、その後は体重が増加した(図2B)。
【0098】
EAN坐骨神経における病理組織学的変化に及ぼす化合物A抑制処理の作用
16日目(n=5)の、対照EANラットまたは化合物A処理EANラットの坐骨神経における種々のタイプの炎症細胞の浸潤を、免疫組織化学法によって解析した。T細胞(W3/13)、B細胞(OX22)およびマクロファージ(ED1)の浸潤が、対照EANラットの坐骨神経に見られた。主な浸潤細胞は、マクロファージであり、そのIRの領域は、断面上の坐骨神経の全領域の約2%を占めていた。これらの結果を下表1に示す。
【0099】
【表1】

【0100】
EANラットの坐骨神経において、化合物Aは、T細胞、B細胞およびマクロファージの浸潤を有意に抑制した。
【0101】
坐骨神経において、LFB染色によって測定された平均組織学的スコアは、化合物A処理EANラットで著しく低かった。これらの結果を下表2に示す。
【0102】
【表2】

【0103】
これらの結果は、化合物Aでの抑制処理が、EANをほとんど防止し、局所脱髄の減少とともに、末梢神経中のリンパ球およびマクロファージの浸潤を十分に低減したことによって、不全対麻痺を抑制したことを実証している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱髄性末梢神経障害の治療に使用するための、式A1またはA2
【化7】


の化合物
[式中、
Aは、COOR、OPO(OR、PO(OR、SOOR、PORORまたは1H−テトラゾール−5−イルであり、Rは、Hまたはエステル形成基、場合によってC1〜6アルキルであり;
Wは、結合、C1〜3アルキレンまたはC2〜3アルケニレンであり;
Yは、C6〜10アリールまたはC2〜9ヘテロアリール例えばC3〜9ヘテロアリールであり、ハロゲン、OH、NO、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ;ハロ置換C1〜6アルキルおよびハロ置換
1〜6アルコキシから選択される1から3個までの基で場合によって置換されており;
Zは、
【化8】


[式中、Zの左右の星印はそれぞれ、−C(R)(R)−と式Iaもしくは式IbのAとの間の結合点を示しており;Rは、水素およびC1〜6アルキルから選ばれ;JおよびJは、独立に、メチレンであるかもしくはS、OおよびNRから選ばれるヘテロ原子であり;ここで、Rは、水素およびC1〜6アルキルから選ばれ;Zの任意のアルキレンは、ハロ、ヒドロキシ、C1〜6アルキルから選ばれる1から3個までの基でさらに置換されていてよく;またはRは、Yの炭素原子に結合されて5〜7員環を形成し得る]
から選ばれ;
は、C6〜10アリールまたはC2〜9ヘテロアリール例えばC3〜9ヘテロアリールであり、C1〜6アルキル、C6〜10アリール、C6〜10アリールC1〜4アルキル、C3〜9ヘテロアリール、C3〜9ヘテロアリールC1〜4アルキル、C3〜8シクロアルキル、C3〜8シクロアルキルC1〜4アルキル、C3〜8ヘテロシクロアルキルまたはC3〜8ヘテロシクロアルキルC1〜4アルキルで場合によって置換されており;ここで、Rの任意のアリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルは、ハロゲン、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシおよびハロ置換C1〜6アルキルまたはハロ置換C1〜6アルコキシから選択される1から5個までの基で置換されていてよく;
は、H、C1〜6アルキル、ハロ置換C1〜6アルキル、C2〜6アルケニルまたはC2〜6アルキニルであり;
およびRのそれぞれは、独立に、H、ハロゲン、OH、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシまたはハロ置換C1〜6アルキルもしくはハロ置換C1〜6アルコキシである];
およびそのN−オキシド誘導体もしくはそのプロドラッグ、
またはその薬理学的に許容される塩、溶媒和物もしくは水和物。
【請求項2】
神経障害が、ギラン−バレー症候群である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
神経障害が、慢性炎症性脱髄性多発根神経炎である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
神経障害が、伝導ブロックを伴う多巣性運動神経障害である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
神経障害が、パラプロテイン血症性脱髄性末梢神経障害である、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
AがCOORである、前記請求項のいずれかに記載の化合物。
【請求項7】
AがCOOHである、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
Wがエチレンである、前記請求項のいずれかに記載の化合物。
【請求項9】
Yが、場合によって置換されているフェニルまたはCヘテロアリールである、前記請求項のいずれかに記載の化合物。
【請求項10】
Yが、単一のC1〜6アルキル置換基で置換されているC6〜10アリールまたはC3〜9ヘテロアリールである、請求項1から8のいずれかに記載の化合物。
【請求項11】
Yが、エチルで場合によって置換されているフェニルである、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
Zが、分子の残部に1位および3位で結合されている、複素環アゼチジン、ピロリジンもしくはピペリジン;分子の残部に1位および4位で結合されているピペリジンから選択され;場合によって、複素環が、部分AによりN−置換(1−置換)されており、−C(R)(R)−により、3位でまたは場合によっては4位で置換されている、前記請求項のいずれかに記載の化合物。
【請求項13】
が、場合によって置換されているフェニルまたは場合によって置換されているCヘテロアリールである、前記請求項のいずれかに記載の化合物。
【請求項14】
が、場合によってハロ置換されている、1、2、3、4、5または6個の炭素原子を有するアルキル、場合によってハロ置換されているフェニルおよび場合によってハロ置換されているC3〜8シクロアルキルから選択される2個の置換基を有する、前記請求項のいずれかに記載の化合物。
【請求項15】
が、フェニルまたはCヘテロアリールである、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
が、場合によってハロ置換されている1個のアルキル基、および場合によってハロ置換されているフェニル基およびC3〜8シクロアルキル基から選択される1個の環状部分を有する、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
がメチルである、前記請求項のいずれかに記載の化合物。
【請求項18】
およびRが、それぞれ独立に、H、ハロゲン、メチルまたはハロ置換メチルである、前記請求項のいずれかに記載の化合物。
【請求項19】
およびRが、両方ともHである、請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
【化9】



から選択される、請求項1から5のいずれかに記載の化合物。
【請求項21】
1−{4−[1−(4−シクロヘキシル−3−トリフルオロメチル−ベンジルオキシイミノ)−エチル]−2−エチル−ベンジル}−アゼチジン−3−カルボン酸:
【化10】


である、請求項1から5のいずれかに記載の化合物。
【請求項22】
脱髄性末梢神経障害を有する対象を治療する方法であって、請求項1および6から21のいずれかに記載の構造を有する化合物の有効量を対象に投与することを含む方法。
【請求項23】
脱髄性末梢神経障害の、症状を緩和する、進行を遅延させるまたは再発するまでの時間を引き延ばす方法であって、請求項1および6から21のいずれかに記載の構造を有する化合物の有効量を対象に投与することを含む方法。
【請求項24】
脱髄性末梢神経障害を有する対象の状態を改善もしくは維持するまたはその悪化を遅延させる方法であって、請求項1および6から21のいずれかに記載の構造を有する化合物の有効量を対象に投与することを含む方法。
【請求項25】
神経障害が、ギラン−バレー症候群である、請求項22、23または24に記載の方法。
【請求項26】
神経障害が、慢性炎症性脱髄性多発根神経炎である、請求項22、23または24に記載の方法。
【請求項27】
神経障害が、伝導ブロックを伴う多巣性運動神経障害である、請求項22、23または24に記載の方法。
【請求項28】
神経障害が、パラプロテイン血症性脱髄性末梢神経障害である、請求項22、23または24に記載の方法。
【請求項29】
請求項1および6から21のいずれかに記載の構造を有する化合物を、脱髄性末梢神経障害を有する患者を治療するのに有用な少なくとも1種のさらなる治療薬と組み合わせて含む医薬製剤。
【請求項30】
少なくとも1種のさらなる治療薬が、免疫抑制剤(例えば、シクロスポリンA、シクロスポリンG、FK−506、ABT−281、ASM981、ラパマイシン、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン、コルチコステロイド、シクロホスファミド、アザチオプリン、メトトレキサート、レフルノミド、ミゾリビン、ミコフェノール酸モフェチルまたは15−デオキシスペルグアリン)、ステロイド(例えば、プレドニゾンまたはヒドロコルチゾン)、免疫グロブリン、または1型インターフェロンから選択される、請求項29に記載の製剤。
【請求項31】
請求項29または30に記載の少なくとも1種のさらなる薬剤とともに、同時に、個別にまたは逐次的に併用投与するための、請求項1および6から21のいずれかに記載の構造を有する化合物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−500247(P2012−500247A)
【公表日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523409(P2011−523409)
【出願日】平成21年8月17日(2009.8.17)
【国際出願番号】PCT/EP2009/060611
【国際公開番号】WO2010/020610
【国際公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】