末梢血管疾患の処置のための方法および組成物
本発明は、必要とする患者に、有効量の11-デオキシ-プロスタグランジン化合物を投与することを含む、哺乳類対象における末梢血管疾患を処置する方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のプロスタグランジン化合物を用いる哺乳類対象における末梢血管疾患を処置する方法に関する。本発明は、かかる方法に有用な組成物にも関する。
【背景技術】
【0002】
血管疾患は、血管系における灌流の低下または血管に対する物理的または生化学的傷害の結果としてしばしば起こる。
【0003】
末梢血管疾患 (PVD)は、四肢の血管の狭小化としてしばしば起こる血管の疾患として定義される。かかる障害には主に2つのタイプ、即ち、血管における欠陥を伴わず、むしろ、刺激、例えば、寒冷、ストレス、または喫煙に起因する機能性疾患と、脈管構造における構造的欠陥、例えば、動脈硬化病変、局所的炎症、または外傷性傷害に起因する器質性疾患とがある。これは、血管閉塞、異常血流、そして最終的には組織虚血を導きうる。
【0004】
臨床的意義の大きなPVDの形態の一つは末梢動脈疾患(PAD)である。PADはしばしば、血管形成術およびステントの埋め込みまたは動脈バイパス手術により処置されている。臨床症状は、閉塞した血管の位置に依存する。例えば、腸に血液を供給する動脈の狭小化の結果、閉塞した血管が消化および吸収工程に起因する上昇した酸素要求量を満たすことができないことによる、下腹部の重篤な食後疼痛が起こりうる。重篤な形態の虚血は、腸壊死を導きうる。同様に、下肢におけるPADは、活発に発症したり治まったりする通常は腓腹における間欠痛を導き得る。この障害は間欠性跛行症(IC)として知られており、静止時の持続痛、虚血性潰瘍形成へと進行し得、そしてさらには切断術に至ることもある。
【0005】
末梢血管疾患はまた、腎動脈のアテローム硬化性狭窄としても現れ、これは腎虚血および腎機能障害を導きうる。
【0006】
血管疾患およびその合併症が非常に一般的である一つの疾患は、真性糖尿病である。
【0007】
真性糖尿病は様々な生理的および解剖学的異常をもたらし、なかでももっとも顕著なことは、体がグルコースを正常に利用できないことであり、その結果、高血糖となる。慢性糖尿病はアテローム性動脈硬化症、サイズが中程度から大きい血管が関与する異常(大血管障害)および、小血管、例えば、 細動脈および毛細血管が関与する異常(微小血管障害)を含む血管系の合併症を導きうる。
【0008】
真性糖尿病患者は、神経機能の損傷(神経障害)および/または虚血を含む、疾患の長期合併症が確立される結果、1以上の足部潰瘍を発症する危険が高い。
【0009】
局所組織虚血は、糖尿病性足部潰瘍形成の鍵となる寄与因子である。大血管疾患に加えて、糖尿病患者はさらに少なくとも2つの別の形の皮膚灌流に対する脅威に苦しめられる。第一は、アテローム性動脈硬化症の工程により有害な影響を受ける非導動脈の関与によるものである。第二は、おそらくより重要であり、微小循環制御機構の障害(小血管疾患)によるものである。通常、体の部分がなんらかの形態の外傷を受けると、体の部分は、体の治癒機構の一部として、血流の上昇を経る。小血管疾患および虚血が存在する場合、多くの糖尿病の症例と同様に、この自然の血流上昇応答は顕著に低下する。この事実は、血流が低レベルである際に微小循環系において血液凝固(血栓症)を形成する糖尿病の傾向と共に、潰瘍発病における重要な因子であると考えられている。
【0010】
神経障害は、神経系の機能障害を導く疾患工程を記載する一般用語であり、真性糖尿病の主な合併症の一つであって、対症療法のため、または神経機能の進行性の低下の予防のための確立された処置法は無い。
【0011】
糖尿病により起こる毛細血管の肥厚および漏出は主に、眼(網膜症)および腎臓(腎障害)に影響する。糖尿病により起こる毛細血管の肥厚および漏出はまた、皮膚障害および神経系障害 (神経障害)を伴う。糖尿病に付随する眼疾患は、非増殖性糖尿病性網膜症、増殖性糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑症、緑内障、白内障等である。
【0012】
糖尿病に関連しているかどうかは知られていないが、末梢血管系に対するその生理的効果において類似のものもある。かかる疾患としては、レイノー病、CREST 症候群、自己免疫疾患、例えば、エリテマトーデス、リウマチ性疾患等が挙げられる。
【0013】
プロスタグランジン類(以後プロスタグランジンはPGとして示す)はヒトまたは他の哺乳類の組織または器官に含有され、広範囲の生理学的活性を示す有機カルボン酸の1群である。天然に存在するPG類(天然PG類)は一般的に、式(A)に示すプロスタン酸骨格を有する。
【化1】
【0014】
一方天然PG類の幾つかの合成アナログは修飾された骨格を持っている。天然PG類は5員環部分の構造特性によって、PGA類、PGB類、PGC類、PGD類、PGE類、PGF類、PGG類、PGH類、PGI類およびPGJ類に分類され、さらに炭素鎖部分の不飽和の数と位置によって以下の3タイプに分類される。
(下付1)...13,14−不飽和−15−OH
(下付2)...5,6−および13,14−ジ不飽和−15−OH
(下付3)...5,6−、13,14−および17,18−トリ不飽和−15−OH。
【0015】
さらに、PGF類は9位の水酸基の配置によってα(水酸基がアルファー配置である)およびβ(水酸基がベータ配置である)に分類される。
【0016】
PGE1、PGE2およびPGE3は血管拡張、血圧降下、胃液分泌減少、腸管運動亢進、子宮収縮、利尿、気管支拡張および抗潰瘍活性をもつことが知られている。また、PGF1α、PGF2αおよびPGF3αは血圧上昇、血管収縮、腸管運動亢進性、子宮収縮、黄体退行および気管収縮特性を有することが知られている。
【0017】
いくつかの15-ケト (即ち、15位にヒドロキシの代わりにオキソを有する)-PG類および13,14-ジヒドロ (即ち、13および14位の間に単結合を有する)-15-ケト-PG類は天然PG類の代謝の際に酵素の作用によって天然に生じる物質として知られている。
【0018】
上野らの米国特許第6197821号には、いくつかの15-ケト-PGE化合物が、高血圧、バージャー病、喘息、眼底疾患等に関連があると考えられているエンドセリンのアンタゴニストであることが記載されている(この文献は引用により本明細書にその内容を含める)。
【0019】
米国特許第6197821号は13位と14位の間の結合が飽和である場合、ケト-ヘミアセタール平衡が、11位のヒドロキシ基と15位のケト基の間のヘミアセタール形成によって形成されることがあることを示している(この文献は引用により本明細書にその内容を含める)。
【0020】
上野らの米国特許第5317032号は二環式互変異性体の存在を含むプロスタグランジン化合物の下剤を記載しており、上野の米国特許第6414016号は抗便秘薬として顕著な活性を有する二環式互変異性体を記載している(これらの文献は引用により本明細書にその内容を含める)。1以上のハロゲン原子によって置換されている二環式互変異性体は低用量で便秘の緩和に用いることが出来る。特にC16位にフッ素原子を有するものは便秘の緩和のために低用量にて用いることが出来る。
【0021】
現在用いられている末梢血管疾患のための経口薬剤には、シロスタゾール (市販名: プレタール)および血管拡張効果および抗血小板効果を有するプロスタグランジン (PG) 調製物 (市販名: ドーナー、オパルモン等)、主に抗血小板効果を有するチクロピジン (市販名: パナルジン)、サルポグレラート (市販名: アンプラーグ)および高脂血症にも適用されるイコサペント酸エチル (市販名: エパデール)が含まれる。それらは異なる作用機構を有し、したがって病態に応じて2または3の調製物を組み合わせて用いる必要があり得る。特に中程度の病状において、複数の薬剤が適用される場合が多い。注射用調製物には、プロスタグランジンE1調製物、抗トロンビン調製物(市販名: アルガトロバン)が含まれる。それらは入院を必要とする中程度以上の重症の病状に原則として用いられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
既存の薬剤の有効性は完全には満足のいくものではない。特に、抗血小板薬、例えば、チクロピジンまたはイコサペント酸エチルは有効性が低い。それはおそらく、それぞれの病態にどの程度血小板が関与しているのか不明であり、薬剤がかかる効果を有するとしても血管拡張効果が十分であるかどうかが不明であり、または、虚血部位での血流が選択的に十分に確証され得るのかどうか不明であるためである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
発明の概要
本発明者は鋭意研究を行った結果、11-デオキシ-プロスタグランジン化合物が末梢血管疾患に対して選択的に有意な効果を有することを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0024】
即ち、本発明は、有効量の11-デオキシ-プロスタグランジン化合物を必要とする対象に投与することを含む、哺乳類対象における末梢血管疾患を処置する方法に関する。
【0025】
本発明はさらに、有効量の11-デオキシ-プロスタグランジン化合物を含む、哺乳類対象における末梢血管疾患を処置するための組成物に関する。
【0026】
さらに、本発明は、有効量の11-デオキシ-プロスタグランジン化合物を含む哺乳類対象における末梢血管疾患の処置用の組成物の製造のための、11-デオキシ-プロスタグランジン化合物の使用に関する。
【0027】
本発明のさらなる態様は、有効量の11-デオキシ-プロスタグランジン化合物を必要とする対象に投与することを含む、哺乳類対象における損傷を受けた末梢血管壁および/または末梢血管内皮細胞を処置する方法に関する。
【0028】
図面の簡単な説明
図1Aは、ET-1によって誘導されたラットにおける末梢微小循環の低下に対する化合物A (11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1)の効果を示すグラフである。グラフにおいて、データは平均± S.E.として表し、*p<0.05は、媒体処理対照との比較である。CTBF: 皮膚組織血流。
【0029】
図1Bは、ET-1 によって誘導されたラットにおける末梢微小循環の低下に対する化合物B (11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1 イソプロピルエステル)の効果を示すグラフである。データは平均± S.E.として表し、*p<0.05は、媒体処理対照との比較である。CTBF: 皮膚組織血流。
【0030】
図2Aは、経内皮電気抵抗(TEER) の回復に対する化合物Aの効果を示すグラフである。ヒト 血管内皮細胞培養物を経内皮電気抵抗 (TEER)によって測定して集密にした。細胞培養物から窒素雰囲気中でのインキュベーションにより30 分間酸素を枯渇させた。細胞を次いで 0.1% DMSOまたは0.1% DMSO中の5 nM 化合物Aのいずれかで処理した。統計的有意性は薬剤処理後のすべてのデータ地点にて示される。 N=10 細胞。
【0031】
図2Bは、ATPレベルの回復に対する化合物Aの効果を示すグラフである。ヒト微小血管内皮細胞(成人) (HMVEC-AD)を集密まで培養した。細胞を次いで30 分間窒素雰囲気に曝し、通常の空気雰囲気に戻した。ATPレベルを示された時点でルシフェリン-ルシフェラーゼアッセイシステム(ATPlite、Perkin Elmer)を用いてモニターした。ATPレベルは相対発光として示す。各時点につきN=6 細胞。
【0032】
図3は、以下の合成例 2において得た化合物 (6) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【0033】
図4は、以下の合成例 2において得た化合物 (6) の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【0034】
図5は、以下の合成例 3において得た化合物 (9) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【0035】
図6は、以下の合成例 3において得た化合物 (9) の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【0036】
図7は、以下の合成例 4において得た化合物(12) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【0037】
図8は、以下の合成例 4において得た化合物(12) の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【0038】
図9は、以下の合成例 5において得た化合物(15) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【0039】
図10は、以下の合成例 5において得た化合物(15) の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【0040】
図11は、以下の合成例 6において得た化合物(18) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【0041】
図12は、以下の合成例 6において得た化合物(18) の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【0042】
図13は、以下の合成例 7において得た化合物(21) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【0043】
図14は、以下の合成例 7において得た化合物(21) の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【0044】
図15は、以下の合成例 8において得た化合物(23) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【0045】
図16は、以下の合成例 8において得た化合物(23) の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【0046】
図17は、以下の合成例9において得た化合物(25) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【0047】
図18は、以下の合成例 9において得た化合物(25)の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【0048】
図19は、以下の合成例10において得た化合物(34) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【0049】
図20は、以下の合成例 10において得た化合物(34)の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【0050】
発明の詳細な説明
本発明において、「11-デオキシ-プロスタグランジン化合物」(以下、「11-デオキシ-PG化合物」と称する)は、5員環の配置、二重結合の数、置換基の存在または非存在、あるいはαまたはω鎖のその他の修飾に関わりなく、プロスタン酸骨格の11位に置換基を有さない化合物のあらゆる誘導体またはアナログ (置換誘導体を含む)を含みうる。
【0051】
前記式(A)はC−20の基本骨格のものであるが、本発明では炭素数がこれによって限定されるものではない。即ち、式(A)においてPG化合物の基本骨格を構成する炭素の番号はカルボン酸を1とし5員環に向かって順に2〜7までをα鎖上の炭素に、8〜12までを5員環の炭素に、13〜20までをω鎖上に付しているが、炭素数がα鎖上で減少する場合、2位から順次番号を抹消して命名する。炭素数がα鎖上で増加する場合、カルボキシル基(C−1)の代わりに2位において対応する置換基を有する置換化合物として命名する。同様に炭素数がω鎖上で減少する場合、20位から順次番号を抹消して命名する。また、炭素数がω鎖上で増加する場合、21番目以後の炭素原子は置換基として命名する。また、立体配置に関しては、特に断りのない限り、上記基本骨格(A)の有する立体配置に従うものとする。
【0052】
前述のように、11-デオキシ-PG化合物の命名はプロスタン酸骨格に基づいて行うが、上記化合物がプロスタグランジンと類似の部分構造を有する場合には、簡略化のため「PG」の略名を利用することがある。この場合、α鎖の骨格炭素数が2個延長された11-デオキシ-PG化合物、すなわちα鎖の骨格炭素数が9である11-デオキシ-PG化合物は、2−デカルボキシ−2−(2−カルボキシエチル)−11-デオキシ-PG化合物と命名する。同様に、α鎖の骨格炭素数が11である11-デオキシ-PG化合物は、2−デカルボキシ−2−(4−カルボキシブチル)−11-デオキシ-PG化合物と命名する。また、ω鎖の骨格炭素数が2個延長された11-デオキシ-PG化合物、すなわちω鎖の骨格炭素数が10である11-デオキシ-PG化合物は、11-デオキシ-20−エチル−PG化合物と命名する。なお、命名はこれをIUPAC命名法に基づいて行うことも可能である。
【0053】
アナログ(置換誘導体を含む)または誘導体の例は、上記11-デオキシ-PG類のα鎖末端のカルボキシル基がエステル化された化合物、α鎖が延長された化合物、それらの生理学的に許容し得る塩、2−3位の炭素結合が2重結合あるいは5−6位の炭素結合が3重結合を有する化合物、3位、5位、6位、16位、17位、18位、19位および/または20位の炭素に置換基を有する化合物、9位の水酸基の代りに低級アルキル基またはヒドロキシ(低級)アルキル基を有する化合物等である。
【0054】
本発明において3位、17位、18位および/または19位の好適な置換基としては、例えば炭素数1〜4のアルキル基が挙げられ、特にメチル基、エチル基が挙げられる。16位の好適な置換基としては、メチル、エチル等の低級アルキル、ヒドロキシ、塩素、フッ素等のハロゲン原子、およびトリフルオロメチルフェノキシ等のアリールオキシが挙げられる。17位の好適な置換基としては、メチル、エチル等の低級アルキル、ヒドロキシ、塩素、フッ素等のハロゲン原子、およびトリフルオロメチルフェノキシ等のアリールオキシが挙げられる。20位の好適な置換基としては、C1−4アルキルのような飽和または不飽和の低級アルキル基、C1−4アルコキシのような低級アルコキシ基、C1−4アルコキシ−C1−4アルキルのような低級アルコキシアルキルを含む。5位の好適な置換基としては、塩素、フッ素などのハロゲン原子を含む。6位の好適な置換基としては、カルボニル基を形成するオキソ基が挙げられる。9位にヒドロキシ基、低級アルキルまたはヒドロキシ(低級)アルキル置換基を有する場合のPG類の立体配置はα,βまたはそれらの混合物であってもかまわない。
【0055】
さらに、上記アナログまたは誘導体は、ω鎖が天然のPG類より短い化合物のω鎖末端にアルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルキルオキシ基、フェノキシ基、フェニル基等の置換基を有する化合物であってもよい。
【0056】
本発明の11-デオキシ-PG化合物の命名に際しては、前記式(A)に示したプロスタン酸の番号を用いる。
【0057】
本発明に用いられる好ましい化合物は式 (I)で表される:
【化2】
[式中、
LおよびNは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキル、低級アルカノイルオキシまたはオキソ、ここで、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していていてもよい;
Aは、−CH3、−CH2OH、−COCH2OH、−COOH またはそれらの官能性誘導体;
R1は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基で置換された飽和または不飽和の二価の低〜中級脂肪族炭化水素であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい;および、
R0は、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基で置換された飽和または不飽和の低〜中級脂肪族炭化水素残基; 低級アルコキシ; 低級アルカノイルオキシ; シクロ(低級)アルキル; シクロ(低級)アルキルオキシ; アリール; アリールオキシ; 複素環基; 複素環オキシ基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい]。
【0058】
本発明において用いられるより好ましい化合物は式 (II)で表される:
【化3】
[式中、
LおよびNは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキル、低級アルカノイルオキシまたはオキソ、ここで、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい;
Aは、−CH3、−CH2OH、−COCH2OH、−COOH またはそれらの官能性誘導体;
Bは、単結合、−CH2−CH2−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH2−CH2−CH2−、−CH=CH−CH2−、−CH2−CH=CH−、−C≡C−CH2−または−CH2−C≡C−;
Zは、
【化4】
ここで、R4およびR5は、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキルであり、R4およびR5が同時にヒドロキシおよび低級アルコキシであることはない;
R1は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基で置換された飽和または不飽和の二価の低〜中級脂肪族炭化水素であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は、酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい;および、
Raは、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基で置換された飽和または不飽和の低〜中級脂肪族炭化水素残基; 低級アルコキシ; 低級アルカノイルオキシ; シクロ(低級)アルキル; シクロ(低級)アルキルオキシ; アリール; アリールオキシ; 複素環基; 複素環オキシ基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい]。
【0059】
上記化合物のなかで特に好ましい化合物の一群は式 (III)で表される:
【化5】
[式中、
Lは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキル、低級アルカノイルオキシまたはオキソ、ここで5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい;
Aは、−CH3、−CH2OH、−COCH2OH、−COOH またはそれらの官能性誘導体;
Bは、単結合、−CH2−CH2−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH2−CH2−CH2−、−CH=CH−CH2−、−CH2−CH=CH−、−C≡C−CH2−または−CH2−C≡C−;
Zは、
【化6】
ここでR4およびR5は、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキルであり、R4およびR5は同時にヒドロキシおよび低級アルコキシであることはない;
X1およびX2は、水素、低級アルキル、またはハロゲン;
R1は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基で置換された飽和または不飽和の二価の低〜中級脂肪族炭化水素であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は、酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい;および、
R2は、単結合または低級アルキレン;および、
R3は、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は、酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい]。
【0060】
上記式中、R1およびRaの定義における「不飽和」の語は、主鎖および/または側鎖の炭素原子間の結合として、1つまたはそれ以上の二重結合および/または三重結合を孤立、分離または連続して含むことを意味する。通常の命名法に従って、連続する2つの位置間の不飽和結合は若い方の位置番号を表示することにより示し、連続しない2つの位置間の不飽和結合は両方の位置番号を表示して示す。
【0061】
「低〜中級脂肪族炭化水素」の語は、炭素原子数1〜14の直鎖または分枝鎖(ただし、側鎖は炭素原子数1〜3のものが好ましい)を有する炭化水素基を意味し、R1については好ましくは炭素原子数1〜10、特に6〜10、Raについては1〜10、特に1〜8の炭化水素基である。
【0062】
「ハロゲン」の語は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を包含する。
【0063】
「低級」の語は、特にことわりのない限り炭素原子数1〜6を有する基を包含するものである。
【0064】
「低級アルキル」の語は、炭素原子数1〜6の直鎖または分枝状の飽和炭化水素基を意味し、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチルおよびヘキシルを含む。
【0065】
「低級アルキレン」の語は、1〜6の炭素原子を含む直鎖または分枝状の二価の飽和炭化水素基を意味し、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、t-ブチレン、ペンチレンおよびヘキシレンを含む。
【0066】
「低級アルコキシ」の語は、低級アルキルが上述と同意義である低級アルキル−O−基を意味する。
【0067】
「ヒドロキシ(低級)アルキル」の語は、少なくとも1つのヒドロキシ基で置換された上記のような低級アルキルを意味し、例えばヒドロキシメチル、1−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシエチルおよび1−メチル−1−ヒドロキシエチルが挙げられる。
【0068】
「低級アルカノイルオキシ」の語は、式RCO−O−(ここで、RCO−は上記のような低級アルキル基が酸化されて生じるアシル基、例えばアセチル)で示される基を意味する。
【0069】
「シクロ(低級)アルキル」の語は、炭素原子3個以上を含む上記のような低級アルキル基が閉環して生ずる環状基を意味し、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルを含む。
【0070】
「シクロ(低級)アルキルオキシ」の語は、シクロ(低級)アルキルが上述と同意義であるシクロ(低級)アルキル−O−基を意味する。
【0071】
「アリール」の語は、非置換または置換の芳香族炭化水素環基を包含し、(好ましくは単環式基の)、例えばフェニル、トリル、キシリルが例示される。置換基としては、ハロゲン原子、ハロ(低級)アルキル(ここで、ハロゲン原子および低級アルキルは前記の意味)が含まれる。
【0072】
「アリールオキシ」の語は、式ArO−(ここで、Arは上記のようなアリール)で示される基を意味する。
【0073】
「複素環基」の語としては、置換されていてもよい炭素原子および、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる1種または2種のヘテロ原子を1〜4個、好ましくは1〜3個含む、5〜14員環、好ましくは5〜10員環の、単環式〜3環式、好ましくは単環式の複素環基が含まれる。複素環基としては、フリル基、チエニル基、ピロリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、フラザニル基、ピラニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジル基、ピラジニル基、2−ピロリニル基、ピロリジニル基、2−イミダゾリニル基、イミダゾリジニル基、2−ピラゾリニル基、ピラゾリジニル基、ピペリジノ基、ピペラジニル基、モルホリノ基、インドリル基、ベンゾチエニル基、キノリル基、イソキノリル基、プリニル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、アクリジニル基、フェナントリジニル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズイミダゾリニル基、ベンゾチアゾリル基、フェノチアジニル基などが例示される。置換基としてはハロゲン、ハロゲン置換低級アルキル基(ここで、ハロゲンおよび低級アルキル基は前記の意味)が例示される。
【0074】
「複素環オキシ基」の語は、式HcO−(ここでHcは上記のような複素環基)で示される基を意味する。
【0075】
Aの「官能性誘導体」の語は、塩(好ましくは、医薬上許容し得る塩)、エーテル、エステルおよびアミド類を含む。
【0076】
適当な「医薬上許容し得る塩」としては、慣用される非毒性塩を含み、無機塩基との塩、例えばアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩等)、アンモニウム塩;または有機塩基との塩、例えばアミン塩(例えばメチルアミン塩、ジメチルアミン塩、シクロヘキシルアミン塩、ベンジルアミン塩、ピペリジン塩、エチレンジアミン塩、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、トリス(ヒドロキシメチルアミノ)エタン塩、モノメチル−モノエタノールアミン塩、プロカイン塩、カフェイン塩等)、塩基性アミノ酸塩(例えばアルギニン塩、リジン塩等)、テトラアルキルアンモニウム塩等が挙げられる。これらの塩類は、例えば対応する酸および塩基から常套の反応によってまたは塩交換によって製造し得る。
【0077】
エーテルの例としてはアルキルエーテル、例えば、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、イソブチルエーテル、t−ブチルエーテル、ペンチルエーテル、1−シクロプロピルエチルエーテル等の低級アルキルエーテル;オクチルエーテル、ジエチルヘキシルエーテル、ラウリルエーテル、セチルエーテル等の中級または高級アルキルエーテル;オレイルエーテル、リノレニルエーテル等の不飽和エーテル;ビニルエーテル、アリルエーテル等の低級アルケニルエーテル;エチニルエーテル、プロピニルエーテル等の低級アルキニルエーテル;ヒドロキシエチルエーテル、ヒドロキシイソプロピルエーテル等のヒドロキシ(低級)アルキルエーテル;メトキシメチルエーテル、1−メトキシエチルエーテル等の低級アルコキシ(低級)アルキルエーテル;例えばフェニルエーテル、トシルエーテル、t−ブチルフェニルエーテル、サリチルエーテル、3,4−ジメトキシフェニルエーテル、ベンズアミドフェニルエーテル等の所望により置換されたアリールエーテル;およびベンジルエーテル、トリチルエーテル、ベンズヒドリルエーテル等のアリール(低級)アルキルエーテルが挙げられる。
【0078】
エステルとしては、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、t−ブチルエステル、ペンチルエステル、1−シクロプロピルエチルエステル等の低級アルキルエステル;ビニルエステル、アリルエステル等の低級アルケニルエステル;エチニルエステル、プロピニルエステル等の低級アルキニルエステル;ヒドロキシエチルエステル等のヒドロキシ(低級)アルキルエステル;メトキシメチルエステル、1−メトキシエチルエステル等の低級アルコキシ(低級)アルキルエステルのような脂肪族エステル;および例えばフェニルエステル、トリルエステル、t−ブチルフェニルエステル、サリチルエステル、3,4−ジメトキシフェニルエステル、ベンズアミドフェニルエステル等の所望により置換されたアリールエステル;ベンジルエステル、トリチルエステル、ベンズヒドリルエステル等のアリール(低級)アルキルエステルが挙げられる。
【0079】
Aのアミドは、式−CONR’R''(式中、R’およびR''はそれぞれ水素、低級アルキル、アリール、アルキル−またはアリール−スルホニル、低級アルケニルおよび低級アルキニル)で示される基を意味し、例えばメチルアミド、エチルアミド、ジメチルアミド、ジエチルアミド等の低級アルキルアミド;アニリド、トルイジド等のアリールアミド;メチルスルホニルアミド、エチルスルホニルアミド、トリルスルホニルアミド等のアルキル-またはアリール-スルホニルアミドが挙げられる。
【0080】
好ましいLの例は、ヒドロキシ、オキソを含み、特にいわゆるPGFまたはPGEタイプと称される5員環構造を有するものを含む。
【0081】
好ましいAは、−COOH、その医薬上許容し得る塩、エステルまたはアミドである。
【0082】
好ましいBは、−CH2−CH2−であり、いわゆる、13,14-ジヒドロタイプの構造を提供するものである。
【0083】
好ましいX1およびX2の例は、水素、またはそれらの少なくとも1つがハロゲンであり、より好ましくは両方がハロゲンであり、特に好ましくは両方がフッ素であり、いわゆる16,16−ジフルオロタイプと称される構造を提供するものである。
【0084】
好ましいR1は、炭素原子数1〜10であり、特に好ましくは炭素原子数6〜10の炭化水素残基である。脂肪族炭化水素における少なくとも1の炭素原子は酸素、窒素または硫黄で置換されていてもよい。
【0085】
R1の具体例としては、例えば、次のものが挙げられる。
−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−、
−CH2−CH=CH−CH2−CH2−CH2−、
−CH2−CH2−CH2−CH2−CH=CH−、
−CH2−C≡C−CH2−CH2−CH2−、
−CH2−CH2−CH2−CH2−CH(CH3)−CH2−、
−CH2−CH2−CH2−CH2−O−CH2−、
−CH2−CH=CH−CH2−O−CH2−、
−CH2−C≡C−CH2−O−CH2−、
−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−、
−CH2−CH=CH−CH2−CH2−CH2−CH2−、
−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH=CH−、
−CH2−C≡C−CH2−CH2−CH2−CH2−、
−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH(CH3)−CH2−、
−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−、
−CH2−CH=CH−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−、
−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH=CH−、
−CH2−C≡C−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−、および、
−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH(CH3)−CH2−。
【0086】
好ましいRaは、1−10炭素原子、より好ましくは1−8炭素原子を有する炭化水素である。Raは1の炭素原子を有する1または2の側鎖を有していてもよい。
【0087】
好ましいR2は単結合であり、好ましいR3は低級アルキルである。R3は1つの炭素原子を含む1または2の側鎖を有していてもよい。
【0088】
上記式(I)、(II)、および(III)における環、および、α−および/またはω−鎖の配置は、天然PG類の配置と同じであっても異なっていてもよい。しかしながら、本発明は、天然タイプの配置を有する化合物と非天然タイプの配置を有する化合物の混合物も包含する。
【0089】
本発明の化合物の典型的な例は、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-16,16-ジフルオロ-PGEまたはPGF化合物、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGEまたはPGF化合物、2-デカルボキシ-2-(2-カルボキシエチル)-11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGEまたはPGF化合物、または11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-20-エチル-PGEまたはPGF化合物およびその誘導体またはアナログである。本発明の化合物の好ましい例は、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-16,16-ジフルオロ-PGE1、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1イソプロピルエステル、2-デカルボキシ-2-(2-カルボキシエチル)-11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1イソプロピルエステル、2-デカルボキシ-2-(2-カルボキシエチル)-11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-20-メチル-PGE1イソプロピルエステル、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-20-メチル-PGE1、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-20-エチル-PGE1、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1メチルエステル、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-20-エチル-PGE1イソプロピルエステルまたは11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGF1αイソプロピルエステルである。
【0090】
本発明において、いずれの異性体、例えば、個々の互変異性体、その混合物、または光学異性体、その混合物、ラセミ混合物、およびその他の立体異性体も同じ目的に用いることが出来る。
【0091】
本発明に用いられる化合物のいくつかは、米国特許第5073569、5166174、5221763、5212324、5739161および6242485号に開示の方法によって調製することが出来る (これらの引用文献は引用により本明細書に含める)。
【0092】
本発明によると、哺乳類対象は上記化合物を投与することによって本発明により処置されうる。対象はいずれの哺乳類対象であってもよく、ヒトを含む。化合物は全身または局所適用することが出来る。通常、化合物は、経口投与、鼻腔内投与、吸入投与、静脈内注射 (点滴を含む)、皮下注射、直腸内投与、膣内投与、経皮投与、眼局所投与 (例えば、眼周囲 (例えば、テノン下)、結膜下、眼球内、硝子体内、前房内、網膜下、上脈絡膜下、および眼球後投与)等によって投与することが出来る。
【0093】
投与量は動物の種類、年令、体重、処置されるべき症状、所望の治療効果、投与経路、処置期間等により変化する。1日1〜4分割用量で全身投与または連続投与する場合、1日当たり0.000001〜500mg/kg、より好ましくは0.00001〜100mg/kgの投与量で満足な効果が得られる。
【0094】
化合物は好ましくは、常套的に投与に好適な医薬組成物に製剤するとよい。組成物は、経口投与、注射または灌流に好適なものであってもよいし、外用剤、坐薬または膣坐薬であってもよい。
【0095】
本発明の組成物は生理学的に許容される添加剤をさらに含んでいてもよい。添加剤は本発明の化合物と併用される成分を含み、例えば、賦形剤、希釈剤、増量剤、溶剤、滑沢剤、補助剤、結合剤、崩壊剤、被覆剤、カプセル化剤、軟膏基剤、坐薬基剤、エアロゾル化剤、乳化剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤、保存剤、抗酸化剤、矯味剤、芳香剤、着色剤、機能性素材(例えばシクロデキストリン、生体内分解高分子など)、安定剤が挙げられる。これらの添加剤は当該技術分野で周知であり、製剤学に関する一般書籍に記載されているものから適宜選択すればよい。
【0096】
本発明の組成物における上記化合物の量は組成物の剤形に応じて変動し得、一般的には、0.000001−10.0%、より好ましくは0.00001−5.0%、最も好ましくは0.0001−1%でありうる。
【0097】
経口投与のための固体組成物の例としては、錠剤、トローチ剤、舌下錠、カプセル、丸剤、散剤、顆粒剤等が挙げられる。固体組成物は、1以上の活性成分を少なくとも1つの不活性希釈剤と混合することによって調製できる。組成物はさらに、不活性希釈剤以外の添加剤を含んでいてもよく、例えば、滑沢剤、崩壊剤および安定化剤が挙げられる。錠剤および丸剤は必要であれば腸溶または胃腸溶フィルムでコーティングしてもよい。
【0098】
それらは2以上の層で被覆してもよい。それらはまた、徐放物質に吸着させてもよいし、マイクロカプセルに封入してもよい。さらに、組成物は易分解性物質、例えばゼラチンによってカプセル化してもよい。それらはさらに適当な溶媒、例えば、脂肪酸またはそのモノ、ジまたはトリグリセリドに溶解して軟カプセルとしてもよい。即効性を要する場合には舌下錠を用いてもよい。
【0099】
経口投与のための液体組成物の例としては、乳濁液、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシル剤等が挙げられる。該組成物はさらに、常套的に用いられる不活性希釈剤、例えば、精製水またはエチルアルコールを含んでいてもよい。組成物は補助剤等の不活性希釈剤以外の添加剤、例えば、湿潤剤および懸濁化剤、甘味料、香味料、香料および保存料を含んでいてもよい。
【0100】
本発明の組成物は1以上の活性成分を含む噴霧組成物の形態であってもよく、公知の方法にしたがって調製することが出来る。
【0101】
非経口投与のための本発明の注射可能組成物の例としては、無菌の水性または非水性溶液、懸濁液および乳濁液が挙げられる。
【0102】
水溶液または懸濁液のための希釈剤としては、例えば、注射用蒸留水、生理的食塩水およびリンゲル液が挙げられる。
【0103】
溶液および懸濁液のための非水性希釈剤としては、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えば、オリーブ油、アルコール、例えば、エタノールおよびポリソルベートが挙げられる。組成物はさらに、添加剤、例えば、保存料、湿潤剤、乳化剤、分散剤等を含んでいてもよい。それらは例えば細菌保持フィルターでのろ過によって、滅菌剤を配合することによって、あるいはガスまたは放射性同位体照射滅菌によって滅菌してもよい。
【0104】
注射可能組成物は、注射用無菌溶媒に使用時に溶解される滅菌された粉末組成物として提供してもよい。
【0105】
本発明の外用剤は、皮膚科学および耳鼻科学の分野で用いられるいずれの形態の外用剤であってもよく、軟膏、クリーム、ローションおよびスプレーが挙げられる。
【0106】
本発明の化合物は、点眼液、点眼剤、眼軟膏等によっても適用される。形態としては、眼科分野に用いられる眼局所投与のためのあらゆる剤形が含まれる。
【0107】
点眼液または点眼剤は、活性成分を滅菌水溶液、例えば、食塩水および緩衝液に溶解することによって、または用時に溶解される粉末組成物を混合することによって調製される。眼軟膏は活性成分を基剤に混合することにより調製される。剤形は常套のいずれの方法によって調製してもよい。
【0108】
浸透圧調節剤は眼科分野において通常用いられるいずれのものであってもよい。浸透圧調節剤の例としては、これらに限定されないが、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二カリウム、ホウ酸、ホウ砂、水酸化ナトリウム、塩酸、マンニトール、イソソルビトール、プロピレングリコール、グルコースおよびグリセリンが挙げられる。
【0109】
さらに、眼科分野において通常用いられる添加剤を所望により本発明の組成物に添加してもよい。かかる添加剤としては、例えば、緩衝剤 (例えば、ホウ酸、リン酸一水素ナトリウムおよびリン酸二水素ナトリウム)、保存料 (例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムおよびクロロブタノール)、増粘剤 (例えば、糖類、例えば、ラクトースおよびマンニトール、マルトース; 例えば、ヒアルロン酸またはその塩、例えば、 ヒアルロン酸ナトリウムおよびヒアルロン酸カリウム; 例えば、ムコ多糖、例えば、 コンドロイチン硫酸; 例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマーおよび架橋ポリアクリル酸)が挙げられ、これらはいずれも引用により本明細書に含まれる。
【0110】
本発明の組成物の眼軟膏としての調製において、上記添加剤の他に、組成物は通常用いられる眼軟膏基剤を含んでいてもよい。かかる眼軟膏基剤としては、これらに限定されないが、油性基剤 、例えば、ワセリン、流動パラフィン、ポリエチレン、セレン50、プラスチベース、マクロゴールまたはそれらの組合せ;界面活性剤により乳化された油性相と水性相を有する乳濁基剤;および水溶性基剤、例えば、 ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシプロピルメチルセルロース、およびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0111】
本発明の組成物は保存料を含まない滅菌単位用量型として製剤してもよい。
【0112】
本発明の別の形態は、坐薬または膣坐薬であり、これは活性成分を体温で軟化する常套の基剤、例えば、カカオ脂と混合することによって調製でき、好適な軟化温度を有する非イオン性界面活性剤を吸収性を高めるために用いてもよい。
【0113】
本明細書において用いる「処置」の語は、例えば、症状の予防、治療、軽減、症状の減弱、進行の阻害などのあらゆる疾患または症状の管理手段をいう。
【0114】
本発明に用いられる化合物は、不十分な末梢循環、損傷を受けた末梢血管壁および/または末梢血管内皮細胞の回復に対する有意な効果を有する。
【0115】
したがって、本発明の化合物は、末梢血管疾患、特に末梢血管および微小血管疾患の処置に有用である。本明細書および請求の範囲における末梢血管および微小血管疾患には、網膜、皮膚、全身循環、腎臓、または末梢または自律神経系の疾患が含まれうる。かかる疾患のすべては、しばしば真性糖尿病に付随し、真性糖尿病の急性または慢性合併症に関連する症状として起こりうる。さらに、糖尿病に関連することが知られていないが、その他の疾患も末梢血管系に対する生理的効果において類似であり、かかる疾患も本発明の方法によって有効に処置される。
【0116】
本発明は末梢および自律神経障害または小血管疾患および直接に大血管疾患に起因するその他の疾患においても有益であろう。該方法の有益な効果は、小血管血流の上昇および血管内皮細胞の保護に起因すると考えられる。
【0117】
本明細書において用いられる「末梢血管疾患」という用語には、あらゆる末梢血管疾患が含まれ、例えば、末梢および自律神経障害が挙げられる。「末梢血管疾患」の例としては、末梢動脈疾患、例えば、慢性動脈閉塞、例えば、 動脈硬化症、閉塞性動脈硬化症および閉塞性血栓血管炎 (バージャー病)、大血管障害、微小血管障害、真性糖尿病、血栓性静脈炎、静脈血栓症、レイノー病、レイノー症候群、CREST 症候群、振動による健康被害、スデック症候群、間欠性跛行症、四肢の冷感、四肢の知覚異常、寒冷に対する感受性
、メニエル病、メニエル症候群、知覚麻痺、感覚低下、感覚消失、休息痛、灼熱痛(やけつく痛み)、末梢循環機能障害、神経機能障害、運動機能障害、運動麻痺、糖尿病性末梢循環障害、腰部脊柱管狭窄症、糖尿病性神経障害、ショック、自己免疫疾患、例えば、エリテマトーデス、リウマチ性疾患および関節リウマチ、自律神経障害、糖尿病性自律神経障害、自律神経失調、起立性低血圧、勃起機能障害、女性生殖機能障害、逆行性射精、膀胱機能障害、過敏膀胱、膣の潤滑不全、運動不耐性、心臓除神経、高熱不耐性、味覚性発汗、糖尿病合併症、高血糖、無自覚性低血糖、無応答性低血糖; 緑内障、血管新生緑内障、白内障、網膜症、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑症、網膜動脈閉塞、網膜中心動脈閉塞、網膜静脈閉塞、黄斑浮腫、加齢性黄斑変性症、加齢性円板状黄斑変性症、嚢胞様黄斑浮腫、眼瞼浮腫、網膜浮腫、脈絡網膜症、血管新生黄斑症、ブドウ膜炎、虹彩炎、網膜血管炎、眼内炎、全眼球炎、転移性眼炎、脈絡膜炎、網膜色素上皮炎、結膜炎、毛様体炎、強膜炎、上強膜炎、視神経炎、眼球後視神経炎、角膜炎、眼瞼炎、滲出性網膜剥離、角膜潰瘍、結膜潰瘍、慢性貨幣状角膜炎、タイジェソン角膜炎、進行性モーレン潰瘍、皮膚傷害、皮膚潰瘍、例えば、足部潰瘍、糖尿病性潰瘍、火傷潰瘍、下腿潰瘍、手術後潰瘍、外傷性潰瘍、帯状疱疹後潰瘍、放射線性潰瘍、薬物誘導性潰瘍、凍傷 (寒冷傷害)、霜焼け、壊疽および突発性壊疽、狭心症、異型血管炎、冠動脈硬化症 (慢性虚血性心疾患、無症候性虚血性心疾患、動脈硬化性心血管疾患)、心筋梗塞、心不全、うっ血性心不全および無痛性虚血性心疾患、肺水腫、高血圧、肺高血圧; 門脈圧亢進症; 糖尿病性腎障害; 褥瘡、腎不全が挙げられる。
【0118】
本発明の組成物は単一の活性成分を含むものでもよいし、2以上の活性成分の組合せを含むものでもよい。複数の活性成分の組合せにおいて、それぞれの含有量は、その治療効果および安全性を考慮して適宜増減するとよい。
【0119】
本発明の医薬組成物はさらに本発明の目的を損なわない限りその他の薬理成分を含んでいてもよい。
【0120】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を限定する意図ではない。
【実施例】
【0121】
実施例1
被験化合物A: 11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1
被験化合物B: 11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1 イソプロピルエステル
【0122】
雄性ウィスターラット(7-週齡)を本研究に用いた。動物をナトリウムチオブタバルビタール (80 mg/kg)の腹腔内注射によって麻酔した。動物の体温 (直腸温)を実験の間加温パッドによっておよそ37℃に維持した。右後足の前側を脱毛クリームによって脱毛した後、皮膚組織血流を非接触型レーザードップラー血流計 (FLO-N1、Omegawave Inc.、Japan)を用いて連続的に測定した。平均動脈血圧の測定のために、左大腿動脈に配置したポリエチレンカテーテルを増幅器 (AP-641G、Nihon Koden Inc.、Japan)に連結した圧力変換器 (TP-400T、Nihon Koden Inc.、Japan)に接続した。皮膚組織血流および血圧を記録し、コンピュータシステム (HEM Ver. 3.5、Notocord Systems、France)を用いて分析した。エンドセリン-1 (ET-1) を大腿動脈に、右大腿動脈から分岐した尾側腹壁動脈に逆行性に挿入したポリエチレンカテーテルを介してシリンジポンプを用いて200 pmol/kg/分の速度で15分間注入した。ET-1の注入速度を200 pmol/kg/分の注入が終わった後20 pmol/kg/分に低下させ、低下させた量のET-1 注入を本研究が終わるまで維持した。皮膚組織血流はET-1の大腿動脈への注入によって低下した。皮膚組織血流が新しい定常状態に達すると(ET-1 注入開始の25〜50 分間後)、媒体または各被験化合物溶液を動物に2 分間かけて1 mL/kgの体積で左大腿静脈に配置したポリエチレンカテーテルを介して投与した。被験化合物の投与量は100μg/kgであった。皮膚組織血流および血圧を連続的に測定し、5 分毎に媒体または各被験溶液の投与後60 分間記録した。
【0123】
図1Aおよび1Bに示すように、ET-1の大腿動脈注入によって、皮膚組織血流はET-1 注入の開始の25〜50 分後には、ベースライン値のおよそ 37%に低下した。媒体での処理による皮膚組織血流の変化はなかった(図1Aおよび1B)。
【0124】
100 μg/kg 化合物A (11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1) 群において、ET-1 注入によってベースライン値のおよそ 35%に低下した皮膚組織血流は、化合物Aの投与により有意に上昇した(図1A)。
【0125】
100 μg/kg 化合物B (11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1 イソプロピルエステル) 群において、ET-1 注入によってベースライン値のおよそ 38%に低下した皮膚組織血流は、化合物Bの投与により有意に上昇した(図1B)。
【0126】
血圧はET-1 注入により影響を受けなかった。100 μg/kgの化合物Aおよび化合物Bは血圧に対する有意な効果を有さなかった。
【0127】
実施例2
被験化合物A: 11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1
およそ 2.5-3.5 kg の体重の8匹の雄性ニホンシロウサギ (Std:JW/CSK)を本研究に用いた。研究にわたって一貫して各動物の同じ側の眼を被験化合物で処理し、他方の眼を媒体で処理し、各処理の間にウォッシュアウト期間を設けた。30μlの各被験化合物溶液をマイクロピペット (Pipetman、Gilson、Inc.、France)を用いて各動物の一方の眼に局所適用した。反対側の対照眼には等体積の媒体を与えた。動物には毎朝ほぼ同じ時間に投薬した。動物をホルダーに拘束した後、1滴の局所麻酔薬 (0.4% 塩酸オキシブプロカイン)を両眼に適用し、IOPを投薬前および投薬の1、2、4、6、および8 時間後に圧平眼圧計 (Model 30 ClassicTM、Mentor O & O、Inc.、USA)を用いて測定した。
【0128】
表1に示すように、化合物Aは眼圧を有意に低下させた。
表1:被験化合物による処理後の眼圧 (IOP)
【表1】
【0129】
データは平均 ± SEとして表す。*p<0.05、**p < 0.01、媒体処理反対側対照眼との比較 (対応のあるスチューデントt-検定)。
化合物A: 11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1
【0130】
実施例3
糖尿病を、7-週齡雄性 Crl: CD(SD) ラットにおいて50 mg/kg ストレプトゾトシン (STZ)の単回静脈内注射によって誘導した。STZ処理の19日後の血漿グルコースレベルが 400 mg/dL 以上の動物を本研究に用いた。STZ 注射の3週間後、動物をナトリウムチオブタバルビタールの腹腔内注射により麻酔した。動物の体温 (直腸温)を加温パッドにより実験の間およそ 37℃に維持した。脱毛クリームによる右後足の前側の脱毛後、皮膚組織血流 (CTBF)を非接触型レーザードップラー血流計 (FLO-N1、Omegawave Inc.、Japan)を用いて連続的に測定した。血圧および心拍数を同時にモニターした。化合物Aまたは媒体を動物に10 分間かけて静脈内投与した。
【0131】
表 2に示すように、化合物Aは媒体と比較して皮膚組織血流を有意に上昇させた。化合物Aは血圧 (BP)および心拍数に対する効果は有さなかった。
表 2.ストレプトゾトシン-誘導糖尿病ラットにおける皮膚組織血流に対するSAG-017の効果
【表2】
【0132】
データは平均± S.E.として表す。*p<0.05、**p<0.01、媒体対照群と比較。
化合物A: 11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1
【0133】
実施例4
4ヶ月齢雄性 Kbs: J. W. ウサギを、室温 (23-24℃)、相対湿度 (55-74%)、換気速度(10-20回/時間)および12-時間明暗周期 (照明:午前 7:00 -午後 7:00)について制御した動物室中のアルミニウムケージで飼育した。動物にウサギ用固形飼料(120 g/動物/日)および水を自動給水装置から自由に与えた。動物を少なくとも 6 日間検疫および順化に供した。この期間中に、体重測定および全身健康観察を行い、健康状態が良好であると判断された動物を本研究に用いた。
【0134】
イソフルレンの吸入麻酔下でウサギの総頸動脈にカニューレを挿入した。カニューレを介して得た9部の血液サンプルと1部の3.8 w/v % クエン酸ナトリウムを混合した。10分間 1,000 rpmでの血液サンプルの遠心分離の後、血小板に富む血漿 (PRP)を最上層から回収した。次いで最下層を15分間3,000 rpmでさらに遠心分離し、血小板の少ない血漿 (PPP) を最上層から回収した。PRPおよびPPP 画分の血小板の計数はADVIA120 Hematology system (ADVIA120、Bayer Medical Ltd.)を用いて行った。PRP 画分をPPP 画分で希釈して血小板数をおよそ 30 x104 細胞/μLに調整した。こうして得られたPRP (0.178 mL)をキュベットに入れ、37℃の温浴で 約 5 分間プレインキュベートした。プロスタグランジン E1または化合物Aを含む被験溶液 (0.022 mL)をPRPに添加した。1分後、25 μM ADP 溶液 (0.022 mL)を添加し、血小板凝集の程度を血小板凝集測定装置 (NBS hematolaser、Nikko Bioscience Inc.)を用いて測定した。各被験溶液について、二連の試験を3匹の動物からの血液サンプルに対して行った。阻害率 (%)を、被験物質群における凝集と媒体対照群における凝集(100%)を比較することによって評価した。
【0135】
表 3に示すように、プロスタグランジン E1 (PGE1)は1x10-8、1 x 10-7および1 x 10-6 g/mLの濃度でそれぞれ血小板凝集を20.9%、91.2% および89.0%阻害した。一方、化合物Aは試験した最高濃度 (1 x 10-5 g/mL)まで血小板凝集に対する効果を示さなかった。この結果は、化合物Aは血小板凝集に対する効果を有さないことを示す。
【0136】
表 3
【表3】
【0137】
最大凝集 (%)は3匹のウサギの平均 ± S.Eを表す。
**: P<0.01;媒体対照からの有意差(ダネット多重比較検定)
【0138】
実施例5
雄性 Crl: CD(SD) ラットをナトリウムチオブタバルビタールの腹腔内注射により麻酔した。動物の体温 (直腸温)を実験の間加温パッドによりおよそ 37℃に維持した。脱毛クリームによる右後足の前側の脱毛後、皮膚組織血流 (CTBF)を化合物C (11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-16,16-ジフルオロ-PGE1)または媒体の静脈内投与の前および30 分後に非接触型レーザードップラー血流計 (FLO-N1、Omegawave Inc.、Japan)を用いて測定した。血圧および心拍数もモニターした。
【0139】
表 4に示すように、化合物Bは媒体処理と比較して皮膚組織血流を有意に上昇させた。化合物Bは血圧および心拍数に対する効果を有さなかった。
【0140】
表 4.化合物Bのラットにおける皮膚組織血流に対する効果
【表4】
【0141】
データは平均 ± S.E.として表す。*p<0.05、媒体対照群との比較。
【0142】
実施例6
ヒト血管内皮細胞培養を経内皮電気抵抗 (TEER)により測定して集密にさせた。細胞培養から窒素雰囲気中でのインキュベーションにより30 分間酸素を枯渇させた。細胞を次いで0.1% DMSOまたは5 nM 化合物Aと0.1% DMSOとの組合せ(終濃度)のいずれかにより処理した。細胞密度を示された時点においてTEERにより測定した。
【0143】
図2Aに示すように、DMSO-処理細胞はTEERの非常にわずかな回復を示した。化合物A-処理細胞は迅速なTEERの回復を示した。
【0144】
この結果は、測定される内皮細胞のバリア機能である傷害されたTEERは、化合物A-処理後に迅速に回復することを示す。
【0145】
実施例7
ヒト微小血管内皮細胞(成人) (HMVEC-AD)を集密まで培養した。細胞を窒素雰囲気に30 分間曝し、通常の空気雰囲気に戻した。示された時点でルシフェリン-ルシフェラーゼアッセイシステム (ATPlite、Perkin Elmer)を用いてATPレベルをモニターした。
【0146】
図2Bに示すように、ATPレベルは細胞を窒素雰囲気に曝すと低下した。ATPレベルは0.01% DMSOのみで処理した細胞と比較して5 nM 化合物Aで処理した細胞においてより迅速に回復した。
【0147】
実施例8
インスリン非依存性糖尿病の自然モデルである雄性 GK/Jcl ラットをナトリウムチオブタバルビタールの腹腔内注射により麻酔した。動物の体温 (直腸温)を加温パッドにより実験の間およそ 37℃に維持した。脱毛クリームによる右後足の前側の脱毛後、皮膚組織血流 (CTBF)を非接触型レーザードップラー血流計 (FLO-N1、Omegawave Inc.、Japan)を用いて化合物Aまたは媒体の静脈内投与の前(ベースライン)および20分後に測定した。データはベースライン皮膚組織血流と比較しての%として表す。
【0148】
表 5に示すように、化合物Aは媒体と比較して自然糖尿病ラットにおける皮膚組織血流を有意に上昇させた。
【0149】
表 5.自然糖尿病ラットにおける皮膚組織血流に対する化合物Aの効果
【表5】
【0150】
データは平均 ± S.E.として表す。*p<0.05、媒体対照群との比較。
【0151】
合成例 1
【化7】
【0152】
16,16-ジフルオロ-PGA1 ベンジルエステル (2) の合成
16,16-ジフルオロ-PGE1 ベンジルエステル (1) (457.8 mg、0.95 mmol) を酢酸 (13.7 mL、0.24 mol)に溶解し、溶液を80℃で18 時間撹拌した。反応混合物を室温まで冷却した。10 mLのトルエンを溶液に添加し、減圧下で濃縮した。 この操作を5回繰り返して酢酸を除去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (シリカゲル: FL60D (70 g)、Fuji Silysia、ヘキサン/酢酸エチル (2:1))で精製して化合物 (2)を黄色油状物として得た。収率: 391.6 mg (88.9%)
【0153】
11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-16,16-ジフルオロ-PGE1 (3) の合成
16,16-ジフルオロ-PGA1 ベンジルエステル (化合物 (2)) (382.5 mg、0.83 mmol)を酢酸エチル (10 mL)中、10% パラジウム-炭素 (57.4 mg、50% w/wの水で湿っている) の存在下で室温、大気圧で2 時間水素化した。反応混合物をセライトパッドでろ過し、フィルターケーキを酢酸エチルで洗浄し、次いでろ液を減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (シリカゲル BW-300SP (50 g、15% w/w の水で湿っている)、Fuji Silysia、ヘキサン/酢酸エチル (1:1)) で精製し、粗化合物 (3) (298.5 mg、95.7%)を得た。
【0154】
粗化合物 (3)を別のロットの粗化合物と合わせた。次いで、全部で約350 mgの粗化合物 を分取HPLC (YMC-Pack D-SIL-5-06 20×250mm、ヘキサン/2-プロパノール/酢酸 (250:5:1)、20 mL/分)で精製して化合物 (3)を無色油状物として得た。 収率: 297.3 mg (HPLC 精製回収率: 83.5%)
1H-NMR (200MHz、CDCl3) δ
0.94 (3H、t、J=7.1Hz)、1.22-2.29 (28H、m)、2.34 (2H、t、J=7.3Hz)、3.65-3.81 (1H、m)
13C-NMR(50MHz、CDCl3) δ
13.70、22.40、23.25、24.32、26.28、26.63)、27.18、27.58、28.49、29.09、30.39、31.77 (t、J=24.4Hz)、33.67、37.63、41.05、54.76、72.73 (t、J=29.0Hz)、124.09 (t、J=244.3Hz)、179.07、220.79
【0155】
合成例 2
【化8】
【0156】
合成例 1に記載のものと同様にして、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1 イソプロピルエステル (化合物 (6))を上記2工程反応により無色油状物として得た。収率: 0.285g (第一工程: 96.2%、第二工程: 97.6%、HPLC 精製:回収率 81.0%)。
化合物 (6)の1H-NMR (200MHz、CDCl3)および 13C-NMR(50MHz、CDCl3)をそれぞれ図 3 および4に示す。
【0157】
合成例 3
【化9】
【0158】
合成例 1に記載のものと同様にして、2-デカルボキシ-2-(2-カルボキシエチル)-11-デオキシ-13,14- ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1 イソプロピルエステル (化合物 (9)) を無色油状物として得た。収率: 0.402g (第一工程: 94.9%、第二工程: 92.2%、HPLC 精製:回収率 83.1%)。
化合物 (9)の1H-NMR (200MHz、CDCl3)および 13C-NMR(50MHz、CDCl3)をそれぞれ図 5 および6に示す。
【0159】
合成例 4
【化10】
【0160】
合成例 1に記載のものと同様にして、2-デカルボキシ-2-(2-カルボキシエチル)-11-デオキシ-13,14- ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1 (化合物 (12)) を無色油状物として得た。収率: 0.696g(第一工程: 95.6%、第二工程: 99.3%、HPLC 精製:回収率: 87.4%)。
化合物 (12) の1H-NMR (200MHz、CDCl3) および13C-NMR(50MHz、CDCl3)をそれぞれ図 7および8に示す。
【0161】
合成例 5
【化11】
【0162】
合成例 1に記載のものと同様にして、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ- 20-メチル-PGE1 イソプロピルエステル (化合物 (15)) を無色油状物として得た。収率: 0.271g (第一工程: 91.4%、第二工程: 97.3%、HPLC 精製:回収率: 79.0%)。
化合物 (15)の 1H-NMR (200MHz、CDCl3)および13C-NMR(50MHz、CDCl3)をそれぞれ図 9および10に示す。
【0163】
合成例 6
【化12】
【0164】
合成例 1に記載のものと同様にして、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ- 20-メチル-PGE1 (化合物 (18)) を無色油状物として得た。収率: 0.637g (第一工程: 93.3%、第二工程: 96.6%、HPLC 精製:回収率: 73.9%)。
化合物 (18)の 1H-NMR (200MHz、CDCl3)および13C-NMR(50MHz、CDCl3)をそれぞれ図 11および12に示す。
【0165】
合成例 7
【化13】
【0166】
合成例 1に記載のものと同様にして、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-20-エチル-PGE1 (化合物 (21)) を無色油状物として得た。収率: 0.401g (第一工程: 90.6%、第二工程: 92.7%、HPLC 精製:回収率: 29.2%)。
化合物 (21)の 1H-NMR (200MHz、CDCl3)および13C-NMR(50MHz、CDCl3)をそれぞれ図 13および14に示す。
【0167】
合成例 8
【化14】
【0168】
11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1 メチル エステル (化合物 (23)) を化合物 (22)のジアゾメタンによるエステル化により無色油状物として得た。収率: 0.860g (72.9%、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製後)。
化合物 (23)の 1H-NMR (200MHz、CDCl3)および13C-NMR(50MHz、CDCl3)を図 15 および16に示す。
【0169】
合成例 9
【化15】
【0170】
化合物 (24) (0.67g、1.66mmol) をDMF (13mL)に溶解し、K2CO3 (460.1mg、3.33mmol)およびヨウ化イソプロピル (831μL、8.32mmol)を添加した。溶液を室温で2 時間撹拌した。反応混合物を氷で冷却し、水 (10mL)および塩水を添加し、酢酸エチル (30mL)で抽出した。有機層を塩水 (10mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、次いで減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (シリカゲル FL60D (50 g)、Fuji Silysia、ヘキサン/酢酸エチル (5:1)) で精製し、粗 11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-20-エチル-PGE1 イソプロピルエステル (化合物 (25)) (0.70g、94.6%)を得た。粗化合物 (25) を分取HPLCで精製し、化合物 (25)を無色油状物として得た。収率 245.8mg (35.1%)。
化合物 (25)の 1H-NMR (200MHz、CDCl3)および13C-NMR(50MHz、CDCl3)をそれぞれ図 17 および 18に示す。
【0171】
合成例 10
【0172】
【化16】
【化17】
【0173】
化合物 (26) (8.71g、20.2mmol)を1,2-ジクロロエタン(70mL)に溶解し、1,1’- チオカルボニルジイミダゾール (5.41g、30.3mmol)を添加した。溶液を70℃で1時間撹拌した。反応混合物を室温まで冷却し、次いで減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (シリカゲル BW-300SP (650 g)、Fuji Silysia、ヘキサン/酢酸エチル (1:1)) で精製し、化合物 (27)を明黄色油状物(10.61g、97.0%)として得た。
【0174】
Bu3SnH (11.21g、38.5mmol) をトルエン (224mL)に溶解し、加熱により還流した。トルエン (208mL)中の化合物 (27) (10.41g、19.2mmol)の溶液を反応混合物に還流温度で70 分間滴下した。次いで、反応混合物を室温まで冷却し、減圧下で濃縮し、粗化合物 (28) を明黄色油状物として得た。
【0175】
粗化合物 (28) (19.2mmol) をTHF (52mL)に溶解し、TBAF 溶液 (THF中1.0M、38.5mL、38.5mmol)を10 分間滴下した。1時間後、TBAF 溶液 (THF中1.0M、19.2mL、19.2mmol)を溶液に滴下した。計3.5 時間撹拌した後、反応混合物を減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (シリカゲル BW-300SP (1,000 g)、Fuji Silysia、ヘキサン/酢酸エチル (1:1)) で精製し、化合物 (29)を黄色油状物(4.01g、69.3%)として得た。
【0176】
化合物 (31)をSwern 酸化およびω-鎖の導入により化合物 (29)から得た。
【0177】
化合物 (31) (807.4mg、1.88mmol)を10% パラジウム-炭素の存在下で酢酸エチル (8mL)中で室温で2 時間水素化した。反応混合物をセライトパッドでろ過し、ろ液を減圧下で濃縮し、粗化合物 (32)を明褐色油状物として得た。
【0178】
粗化合物 (32) (1.88mmol)をEtOH (8mL)に溶解した。1N-NaOH 溶液 (7.4mL、7.4mol)を溶液に室温で10 分間滴下した。反応混合物を室温で10 時間撹拌し、次いで氷で冷却した。1N-HCl (7.1mL)を反応混合物に滴下してpHを約3-4に調整した。反応混合物をTBME (30mL)で抽出した。有機層を水 (10mL)および塩水 (10mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、次いで減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (シリカゲル 15% 水含有FL-60D (80 g)、Fuji Silysia、ヘキサン/酢酸エチル (2:1)) で精製し 、化合物 (33)を明黄色油状物(481.4mg、68.8%)として得た。
【0179】
合成例 9に記載のものと同様にして、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ- PGF1α イソプロピルエステル (化合物 (34))を化合物 (33)から無色油状物として得た。収率: 166.6mg (反応工程91.9%: HPLC 精製:回収率: 55.4%)。
化合物 (34)の 1H-NMR (200MHz、CDCl3)および13C-NMR(50MHz、CDCl3)をそれぞれ図 19および20に示す。
【図面の簡単な説明】
【0180】
【図1−A】図1Aは、ET-1によって誘導されたラットにおける末梢微小循環の低下に対する化合物A (11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1)の効果を示すグラフである。グラフにおいて、データは平均± S.E.として表し、*p<0.05は、媒体処理対照との比較である。CTBF: 皮膚組織血流。
【図1−B】図1Bは、ET-1 によって誘導されたラットにおける末梢微小循環の低下に対する化合物B (11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1 イソプロピルエステル)の効果を示すグラフである。データは平均± S.E.として表し、*p<0.05は、媒体処理対照との比較である。CTBF: 皮膚組織血流。
【図2−A】図2Aは、経内皮電気抵抗(TEER) の回復に対する化合物Aの効果を示すグラフである。ヒト 血管内皮細胞培養物を経内皮電気抵抗 (TEER)によって測定して集密にした。細胞培養物から窒素雰囲気中でのインキュベーションにより30 分間酸素を枯渇させた。細胞を次いで 0.1% DMSOまたは0.1% DMSO中の5 nM 化合物Aのいずれかで処理した。統計的有意性は薬剤処理後のすべてのデータ地点にて示される。 N=10 細胞。
【図2−B】図2Bは、ATPレベルの回復に対する化合物Aの効果を示すグラフである。ヒト微小血管内皮細胞(成人) (HMVEC-AD)を集密まで培養した。細胞を次いで30 分間窒素雰囲気に曝し、通常の空気雰囲気に戻した。ATPレベルを示された時点でルシフェリン-ルシフェラーゼアッセイシステム(ATPlite、Perkin Elmer)を用いてモニターした。ATPレベルは相対発光として示す。各時点につきN=6 細胞。
【図3】図3は、以下の合成例 2において得た化合物 (6) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【図4】図4は、以下の合成例 2において得た化合物 (6) の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【図5】図5は、以下の合成例 3において得た化合物 (9) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【図6】図6は、以下の合成例 3において得た化合物 (9) の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【図7】図7は、以下の合成例 4において得た化合物(12) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【図8】図8は、以下の合成例 4において得た化合物(12) の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【図9】図9は、以下の合成例 5において得た化合物(15) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【図10】図10は、以下の合成例 5において得た化合物(15) の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【図11】図11は、以下の合成例 6において得た化合物(18) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【図12】図12は、以下の合成例 6において得た化合物(18) の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【図13】図13は、以下の合成例 7において得た化合物(21) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【図14】図14は、以下の合成例 7において得た化合物(21) の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【図15】図15は、以下の合成例 8において得た化合物(23) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【図16】図16は、以下の合成例 8において得た化合物(23) の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【図17】図17は、以下の合成例9において得た化合物(25) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【図18】図18は、以下の合成例 9において得た化合物(25)の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【図19】図19は、以下の合成例10において得た化合物(34) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【図20】図20は、以下の合成例 10において得た化合物(34)の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のプロスタグランジン化合物を用いる哺乳類対象における末梢血管疾患を処置する方法に関する。本発明は、かかる方法に有用な組成物にも関する。
【背景技術】
【0002】
血管疾患は、血管系における灌流の低下または血管に対する物理的または生化学的傷害の結果としてしばしば起こる。
【0003】
末梢血管疾患 (PVD)は、四肢の血管の狭小化としてしばしば起こる血管の疾患として定義される。かかる障害には主に2つのタイプ、即ち、血管における欠陥を伴わず、むしろ、刺激、例えば、寒冷、ストレス、または喫煙に起因する機能性疾患と、脈管構造における構造的欠陥、例えば、動脈硬化病変、局所的炎症、または外傷性傷害に起因する器質性疾患とがある。これは、血管閉塞、異常血流、そして最終的には組織虚血を導きうる。
【0004】
臨床的意義の大きなPVDの形態の一つは末梢動脈疾患(PAD)である。PADはしばしば、血管形成術およびステントの埋め込みまたは動脈バイパス手術により処置されている。臨床症状は、閉塞した血管の位置に依存する。例えば、腸に血液を供給する動脈の狭小化の結果、閉塞した血管が消化および吸収工程に起因する上昇した酸素要求量を満たすことができないことによる、下腹部の重篤な食後疼痛が起こりうる。重篤な形態の虚血は、腸壊死を導きうる。同様に、下肢におけるPADは、活発に発症したり治まったりする通常は腓腹における間欠痛を導き得る。この障害は間欠性跛行症(IC)として知られており、静止時の持続痛、虚血性潰瘍形成へと進行し得、そしてさらには切断術に至ることもある。
【0005】
末梢血管疾患はまた、腎動脈のアテローム硬化性狭窄としても現れ、これは腎虚血および腎機能障害を導きうる。
【0006】
血管疾患およびその合併症が非常に一般的である一つの疾患は、真性糖尿病である。
【0007】
真性糖尿病は様々な生理的および解剖学的異常をもたらし、なかでももっとも顕著なことは、体がグルコースを正常に利用できないことであり、その結果、高血糖となる。慢性糖尿病はアテローム性動脈硬化症、サイズが中程度から大きい血管が関与する異常(大血管障害)および、小血管、例えば、 細動脈および毛細血管が関与する異常(微小血管障害)を含む血管系の合併症を導きうる。
【0008】
真性糖尿病患者は、神経機能の損傷(神経障害)および/または虚血を含む、疾患の長期合併症が確立される結果、1以上の足部潰瘍を発症する危険が高い。
【0009】
局所組織虚血は、糖尿病性足部潰瘍形成の鍵となる寄与因子である。大血管疾患に加えて、糖尿病患者はさらに少なくとも2つの別の形の皮膚灌流に対する脅威に苦しめられる。第一は、アテローム性動脈硬化症の工程により有害な影響を受ける非導動脈の関与によるものである。第二は、おそらくより重要であり、微小循環制御機構の障害(小血管疾患)によるものである。通常、体の部分がなんらかの形態の外傷を受けると、体の部分は、体の治癒機構の一部として、血流の上昇を経る。小血管疾患および虚血が存在する場合、多くの糖尿病の症例と同様に、この自然の血流上昇応答は顕著に低下する。この事実は、血流が低レベルである際に微小循環系において血液凝固(血栓症)を形成する糖尿病の傾向と共に、潰瘍発病における重要な因子であると考えられている。
【0010】
神経障害は、神経系の機能障害を導く疾患工程を記載する一般用語であり、真性糖尿病の主な合併症の一つであって、対症療法のため、または神経機能の進行性の低下の予防のための確立された処置法は無い。
【0011】
糖尿病により起こる毛細血管の肥厚および漏出は主に、眼(網膜症)および腎臓(腎障害)に影響する。糖尿病により起こる毛細血管の肥厚および漏出はまた、皮膚障害および神経系障害 (神経障害)を伴う。糖尿病に付随する眼疾患は、非増殖性糖尿病性網膜症、増殖性糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑症、緑内障、白内障等である。
【0012】
糖尿病に関連しているかどうかは知られていないが、末梢血管系に対するその生理的効果において類似のものもある。かかる疾患としては、レイノー病、CREST 症候群、自己免疫疾患、例えば、エリテマトーデス、リウマチ性疾患等が挙げられる。
【0013】
プロスタグランジン類(以後プロスタグランジンはPGとして示す)はヒトまたは他の哺乳類の組織または器官に含有され、広範囲の生理学的活性を示す有機カルボン酸の1群である。天然に存在するPG類(天然PG類)は一般的に、式(A)に示すプロスタン酸骨格を有する。
【化1】
【0014】
一方天然PG類の幾つかの合成アナログは修飾された骨格を持っている。天然PG類は5員環部分の構造特性によって、PGA類、PGB類、PGC類、PGD類、PGE類、PGF類、PGG類、PGH類、PGI類およびPGJ類に分類され、さらに炭素鎖部分の不飽和の数と位置によって以下の3タイプに分類される。
(下付1)...13,14−不飽和−15−OH
(下付2)...5,6−および13,14−ジ不飽和−15−OH
(下付3)...5,6−、13,14−および17,18−トリ不飽和−15−OH。
【0015】
さらに、PGF類は9位の水酸基の配置によってα(水酸基がアルファー配置である)およびβ(水酸基がベータ配置である)に分類される。
【0016】
PGE1、PGE2およびPGE3は血管拡張、血圧降下、胃液分泌減少、腸管運動亢進、子宮収縮、利尿、気管支拡張および抗潰瘍活性をもつことが知られている。また、PGF1α、PGF2αおよびPGF3αは血圧上昇、血管収縮、腸管運動亢進性、子宮収縮、黄体退行および気管収縮特性を有することが知られている。
【0017】
いくつかの15-ケト (即ち、15位にヒドロキシの代わりにオキソを有する)-PG類および13,14-ジヒドロ (即ち、13および14位の間に単結合を有する)-15-ケト-PG類は天然PG類の代謝の際に酵素の作用によって天然に生じる物質として知られている。
【0018】
上野らの米国特許第6197821号には、いくつかの15-ケト-PGE化合物が、高血圧、バージャー病、喘息、眼底疾患等に関連があると考えられているエンドセリンのアンタゴニストであることが記載されている(この文献は引用により本明細書にその内容を含める)。
【0019】
米国特許第6197821号は13位と14位の間の結合が飽和である場合、ケト-ヘミアセタール平衡が、11位のヒドロキシ基と15位のケト基の間のヘミアセタール形成によって形成されることがあることを示している(この文献は引用により本明細書にその内容を含める)。
【0020】
上野らの米国特許第5317032号は二環式互変異性体の存在を含むプロスタグランジン化合物の下剤を記載しており、上野の米国特許第6414016号は抗便秘薬として顕著な活性を有する二環式互変異性体を記載している(これらの文献は引用により本明細書にその内容を含める)。1以上のハロゲン原子によって置換されている二環式互変異性体は低用量で便秘の緩和に用いることが出来る。特にC16位にフッ素原子を有するものは便秘の緩和のために低用量にて用いることが出来る。
【0021】
現在用いられている末梢血管疾患のための経口薬剤には、シロスタゾール (市販名: プレタール)および血管拡張効果および抗血小板効果を有するプロスタグランジン (PG) 調製物 (市販名: ドーナー、オパルモン等)、主に抗血小板効果を有するチクロピジン (市販名: パナルジン)、サルポグレラート (市販名: アンプラーグ)および高脂血症にも適用されるイコサペント酸エチル (市販名: エパデール)が含まれる。それらは異なる作用機構を有し、したがって病態に応じて2または3の調製物を組み合わせて用いる必要があり得る。特に中程度の病状において、複数の薬剤が適用される場合が多い。注射用調製物には、プロスタグランジンE1調製物、抗トロンビン調製物(市販名: アルガトロバン)が含まれる。それらは入院を必要とする中程度以上の重症の病状に原則として用いられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
既存の薬剤の有効性は完全には満足のいくものではない。特に、抗血小板薬、例えば、チクロピジンまたはイコサペント酸エチルは有効性が低い。それはおそらく、それぞれの病態にどの程度血小板が関与しているのか不明であり、薬剤がかかる効果を有するとしても血管拡張効果が十分であるかどうかが不明であり、または、虚血部位での血流が選択的に十分に確証され得るのかどうか不明であるためである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
発明の概要
本発明者は鋭意研究を行った結果、11-デオキシ-プロスタグランジン化合物が末梢血管疾患に対して選択的に有意な効果を有することを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0024】
即ち、本発明は、有効量の11-デオキシ-プロスタグランジン化合物を必要とする対象に投与することを含む、哺乳類対象における末梢血管疾患を処置する方法に関する。
【0025】
本発明はさらに、有効量の11-デオキシ-プロスタグランジン化合物を含む、哺乳類対象における末梢血管疾患を処置するための組成物に関する。
【0026】
さらに、本発明は、有効量の11-デオキシ-プロスタグランジン化合物を含む哺乳類対象における末梢血管疾患の処置用の組成物の製造のための、11-デオキシ-プロスタグランジン化合物の使用に関する。
【0027】
本発明のさらなる態様は、有効量の11-デオキシ-プロスタグランジン化合物を必要とする対象に投与することを含む、哺乳類対象における損傷を受けた末梢血管壁および/または末梢血管内皮細胞を処置する方法に関する。
【0028】
図面の簡単な説明
図1Aは、ET-1によって誘導されたラットにおける末梢微小循環の低下に対する化合物A (11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1)の効果を示すグラフである。グラフにおいて、データは平均± S.E.として表し、*p<0.05は、媒体処理対照との比較である。CTBF: 皮膚組織血流。
【0029】
図1Bは、ET-1 によって誘導されたラットにおける末梢微小循環の低下に対する化合物B (11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1 イソプロピルエステル)の効果を示すグラフである。データは平均± S.E.として表し、*p<0.05は、媒体処理対照との比較である。CTBF: 皮膚組織血流。
【0030】
図2Aは、経内皮電気抵抗(TEER) の回復に対する化合物Aの効果を示すグラフである。ヒト 血管内皮細胞培養物を経内皮電気抵抗 (TEER)によって測定して集密にした。細胞培養物から窒素雰囲気中でのインキュベーションにより30 分間酸素を枯渇させた。細胞を次いで 0.1% DMSOまたは0.1% DMSO中の5 nM 化合物Aのいずれかで処理した。統計的有意性は薬剤処理後のすべてのデータ地点にて示される。 N=10 細胞。
【0031】
図2Bは、ATPレベルの回復に対する化合物Aの効果を示すグラフである。ヒト微小血管内皮細胞(成人) (HMVEC-AD)を集密まで培養した。細胞を次いで30 分間窒素雰囲気に曝し、通常の空気雰囲気に戻した。ATPレベルを示された時点でルシフェリン-ルシフェラーゼアッセイシステム(ATPlite、Perkin Elmer)を用いてモニターした。ATPレベルは相対発光として示す。各時点につきN=6 細胞。
【0032】
図3は、以下の合成例 2において得た化合物 (6) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【0033】
図4は、以下の合成例 2において得た化合物 (6) の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【0034】
図5は、以下の合成例 3において得た化合物 (9) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【0035】
図6は、以下の合成例 3において得た化合物 (9) の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【0036】
図7は、以下の合成例 4において得た化合物(12) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【0037】
図8は、以下の合成例 4において得た化合物(12) の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【0038】
図9は、以下の合成例 5において得た化合物(15) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【0039】
図10は、以下の合成例 5において得た化合物(15) の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【0040】
図11は、以下の合成例 6において得た化合物(18) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【0041】
図12は、以下の合成例 6において得た化合物(18) の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【0042】
図13は、以下の合成例 7において得た化合物(21) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【0043】
図14は、以下の合成例 7において得た化合物(21) の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【0044】
図15は、以下の合成例 8において得た化合物(23) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【0045】
図16は、以下の合成例 8において得た化合物(23) の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【0046】
図17は、以下の合成例9において得た化合物(25) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【0047】
図18は、以下の合成例 9において得た化合物(25)の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【0048】
図19は、以下の合成例10において得た化合物(34) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【0049】
図20は、以下の合成例 10において得た化合物(34)の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【0050】
発明の詳細な説明
本発明において、「11-デオキシ-プロスタグランジン化合物」(以下、「11-デオキシ-PG化合物」と称する)は、5員環の配置、二重結合の数、置換基の存在または非存在、あるいはαまたはω鎖のその他の修飾に関わりなく、プロスタン酸骨格の11位に置換基を有さない化合物のあらゆる誘導体またはアナログ (置換誘導体を含む)を含みうる。
【0051】
前記式(A)はC−20の基本骨格のものであるが、本発明では炭素数がこれによって限定されるものではない。即ち、式(A)においてPG化合物の基本骨格を構成する炭素の番号はカルボン酸を1とし5員環に向かって順に2〜7までをα鎖上の炭素に、8〜12までを5員環の炭素に、13〜20までをω鎖上に付しているが、炭素数がα鎖上で減少する場合、2位から順次番号を抹消して命名する。炭素数がα鎖上で増加する場合、カルボキシル基(C−1)の代わりに2位において対応する置換基を有する置換化合物として命名する。同様に炭素数がω鎖上で減少する場合、20位から順次番号を抹消して命名する。また、炭素数がω鎖上で増加する場合、21番目以後の炭素原子は置換基として命名する。また、立体配置に関しては、特に断りのない限り、上記基本骨格(A)の有する立体配置に従うものとする。
【0052】
前述のように、11-デオキシ-PG化合物の命名はプロスタン酸骨格に基づいて行うが、上記化合物がプロスタグランジンと類似の部分構造を有する場合には、簡略化のため「PG」の略名を利用することがある。この場合、α鎖の骨格炭素数が2個延長された11-デオキシ-PG化合物、すなわちα鎖の骨格炭素数が9である11-デオキシ-PG化合物は、2−デカルボキシ−2−(2−カルボキシエチル)−11-デオキシ-PG化合物と命名する。同様に、α鎖の骨格炭素数が11である11-デオキシ-PG化合物は、2−デカルボキシ−2−(4−カルボキシブチル)−11-デオキシ-PG化合物と命名する。また、ω鎖の骨格炭素数が2個延長された11-デオキシ-PG化合物、すなわちω鎖の骨格炭素数が10である11-デオキシ-PG化合物は、11-デオキシ-20−エチル−PG化合物と命名する。なお、命名はこれをIUPAC命名法に基づいて行うことも可能である。
【0053】
アナログ(置換誘導体を含む)または誘導体の例は、上記11-デオキシ-PG類のα鎖末端のカルボキシル基がエステル化された化合物、α鎖が延長された化合物、それらの生理学的に許容し得る塩、2−3位の炭素結合が2重結合あるいは5−6位の炭素結合が3重結合を有する化合物、3位、5位、6位、16位、17位、18位、19位および/または20位の炭素に置換基を有する化合物、9位の水酸基の代りに低級アルキル基またはヒドロキシ(低級)アルキル基を有する化合物等である。
【0054】
本発明において3位、17位、18位および/または19位の好適な置換基としては、例えば炭素数1〜4のアルキル基が挙げられ、特にメチル基、エチル基が挙げられる。16位の好適な置換基としては、メチル、エチル等の低級アルキル、ヒドロキシ、塩素、フッ素等のハロゲン原子、およびトリフルオロメチルフェノキシ等のアリールオキシが挙げられる。17位の好適な置換基としては、メチル、エチル等の低級アルキル、ヒドロキシ、塩素、フッ素等のハロゲン原子、およびトリフルオロメチルフェノキシ等のアリールオキシが挙げられる。20位の好適な置換基としては、C1−4アルキルのような飽和または不飽和の低級アルキル基、C1−4アルコキシのような低級アルコキシ基、C1−4アルコキシ−C1−4アルキルのような低級アルコキシアルキルを含む。5位の好適な置換基としては、塩素、フッ素などのハロゲン原子を含む。6位の好適な置換基としては、カルボニル基を形成するオキソ基が挙げられる。9位にヒドロキシ基、低級アルキルまたはヒドロキシ(低級)アルキル置換基を有する場合のPG類の立体配置はα,βまたはそれらの混合物であってもかまわない。
【0055】
さらに、上記アナログまたは誘導体は、ω鎖が天然のPG類より短い化合物のω鎖末端にアルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルキルオキシ基、フェノキシ基、フェニル基等の置換基を有する化合物であってもよい。
【0056】
本発明の11-デオキシ-PG化合物の命名に際しては、前記式(A)に示したプロスタン酸の番号を用いる。
【0057】
本発明に用いられる好ましい化合物は式 (I)で表される:
【化2】
[式中、
LおよびNは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキル、低級アルカノイルオキシまたはオキソ、ここで、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していていてもよい;
Aは、−CH3、−CH2OH、−COCH2OH、−COOH またはそれらの官能性誘導体;
R1は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基で置換された飽和または不飽和の二価の低〜中級脂肪族炭化水素であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい;および、
R0は、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基で置換された飽和または不飽和の低〜中級脂肪族炭化水素残基; 低級アルコキシ; 低級アルカノイルオキシ; シクロ(低級)アルキル; シクロ(低級)アルキルオキシ; アリール; アリールオキシ; 複素環基; 複素環オキシ基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい]。
【0058】
本発明において用いられるより好ましい化合物は式 (II)で表される:
【化3】
[式中、
LおよびNは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキル、低級アルカノイルオキシまたはオキソ、ここで、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい;
Aは、−CH3、−CH2OH、−COCH2OH、−COOH またはそれらの官能性誘導体;
Bは、単結合、−CH2−CH2−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH2−CH2−CH2−、−CH=CH−CH2−、−CH2−CH=CH−、−C≡C−CH2−または−CH2−C≡C−;
Zは、
【化4】
ここで、R4およびR5は、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキルであり、R4およびR5が同時にヒドロキシおよび低級アルコキシであることはない;
R1は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基で置換された飽和または不飽和の二価の低〜中級脂肪族炭化水素であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は、酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい;および、
Raは、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基で置換された飽和または不飽和の低〜中級脂肪族炭化水素残基; 低級アルコキシ; 低級アルカノイルオキシ; シクロ(低級)アルキル; シクロ(低級)アルキルオキシ; アリール; アリールオキシ; 複素環基; 複素環オキシ基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい]。
【0059】
上記化合物のなかで特に好ましい化合物の一群は式 (III)で表される:
【化5】
[式中、
Lは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキル、低級アルカノイルオキシまたはオキソ、ここで5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい;
Aは、−CH3、−CH2OH、−COCH2OH、−COOH またはそれらの官能性誘導体;
Bは、単結合、−CH2−CH2−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH2−CH2−CH2−、−CH=CH−CH2−、−CH2−CH=CH−、−C≡C−CH2−または−CH2−C≡C−;
Zは、
【化6】
ここでR4およびR5は、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキルであり、R4およびR5は同時にヒドロキシおよび低級アルコキシであることはない;
X1およびX2は、水素、低級アルキル、またはハロゲン;
R1は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基で置換された飽和または不飽和の二価の低〜中級脂肪族炭化水素であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は、酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい;および、
R2は、単結合または低級アルキレン;および、
R3は、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は、酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい]。
【0060】
上記式中、R1およびRaの定義における「不飽和」の語は、主鎖および/または側鎖の炭素原子間の結合として、1つまたはそれ以上の二重結合および/または三重結合を孤立、分離または連続して含むことを意味する。通常の命名法に従って、連続する2つの位置間の不飽和結合は若い方の位置番号を表示することにより示し、連続しない2つの位置間の不飽和結合は両方の位置番号を表示して示す。
【0061】
「低〜中級脂肪族炭化水素」の語は、炭素原子数1〜14の直鎖または分枝鎖(ただし、側鎖は炭素原子数1〜3のものが好ましい)を有する炭化水素基を意味し、R1については好ましくは炭素原子数1〜10、特に6〜10、Raについては1〜10、特に1〜8の炭化水素基である。
【0062】
「ハロゲン」の語は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を包含する。
【0063】
「低級」の語は、特にことわりのない限り炭素原子数1〜6を有する基を包含するものである。
【0064】
「低級アルキル」の語は、炭素原子数1〜6の直鎖または分枝状の飽和炭化水素基を意味し、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチルおよびヘキシルを含む。
【0065】
「低級アルキレン」の語は、1〜6の炭素原子を含む直鎖または分枝状の二価の飽和炭化水素基を意味し、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、t-ブチレン、ペンチレンおよびヘキシレンを含む。
【0066】
「低級アルコキシ」の語は、低級アルキルが上述と同意義である低級アルキル−O−基を意味する。
【0067】
「ヒドロキシ(低級)アルキル」の語は、少なくとも1つのヒドロキシ基で置換された上記のような低級アルキルを意味し、例えばヒドロキシメチル、1−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシエチルおよび1−メチル−1−ヒドロキシエチルが挙げられる。
【0068】
「低級アルカノイルオキシ」の語は、式RCO−O−(ここで、RCO−は上記のような低級アルキル基が酸化されて生じるアシル基、例えばアセチル)で示される基を意味する。
【0069】
「シクロ(低級)アルキル」の語は、炭素原子3個以上を含む上記のような低級アルキル基が閉環して生ずる環状基を意味し、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルを含む。
【0070】
「シクロ(低級)アルキルオキシ」の語は、シクロ(低級)アルキルが上述と同意義であるシクロ(低級)アルキル−O−基を意味する。
【0071】
「アリール」の語は、非置換または置換の芳香族炭化水素環基を包含し、(好ましくは単環式基の)、例えばフェニル、トリル、キシリルが例示される。置換基としては、ハロゲン原子、ハロ(低級)アルキル(ここで、ハロゲン原子および低級アルキルは前記の意味)が含まれる。
【0072】
「アリールオキシ」の語は、式ArO−(ここで、Arは上記のようなアリール)で示される基を意味する。
【0073】
「複素環基」の語としては、置換されていてもよい炭素原子および、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる1種または2種のヘテロ原子を1〜4個、好ましくは1〜3個含む、5〜14員環、好ましくは5〜10員環の、単環式〜3環式、好ましくは単環式の複素環基が含まれる。複素環基としては、フリル基、チエニル基、ピロリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、フラザニル基、ピラニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジル基、ピラジニル基、2−ピロリニル基、ピロリジニル基、2−イミダゾリニル基、イミダゾリジニル基、2−ピラゾリニル基、ピラゾリジニル基、ピペリジノ基、ピペラジニル基、モルホリノ基、インドリル基、ベンゾチエニル基、キノリル基、イソキノリル基、プリニル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、アクリジニル基、フェナントリジニル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズイミダゾリニル基、ベンゾチアゾリル基、フェノチアジニル基などが例示される。置換基としてはハロゲン、ハロゲン置換低級アルキル基(ここで、ハロゲンおよび低級アルキル基は前記の意味)が例示される。
【0074】
「複素環オキシ基」の語は、式HcO−(ここでHcは上記のような複素環基)で示される基を意味する。
【0075】
Aの「官能性誘導体」の語は、塩(好ましくは、医薬上許容し得る塩)、エーテル、エステルおよびアミド類を含む。
【0076】
適当な「医薬上許容し得る塩」としては、慣用される非毒性塩を含み、無機塩基との塩、例えばアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩等)、アンモニウム塩;または有機塩基との塩、例えばアミン塩(例えばメチルアミン塩、ジメチルアミン塩、シクロヘキシルアミン塩、ベンジルアミン塩、ピペリジン塩、エチレンジアミン塩、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、トリス(ヒドロキシメチルアミノ)エタン塩、モノメチル−モノエタノールアミン塩、プロカイン塩、カフェイン塩等)、塩基性アミノ酸塩(例えばアルギニン塩、リジン塩等)、テトラアルキルアンモニウム塩等が挙げられる。これらの塩類は、例えば対応する酸および塩基から常套の反応によってまたは塩交換によって製造し得る。
【0077】
エーテルの例としてはアルキルエーテル、例えば、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、イソブチルエーテル、t−ブチルエーテル、ペンチルエーテル、1−シクロプロピルエチルエーテル等の低級アルキルエーテル;オクチルエーテル、ジエチルヘキシルエーテル、ラウリルエーテル、セチルエーテル等の中級または高級アルキルエーテル;オレイルエーテル、リノレニルエーテル等の不飽和エーテル;ビニルエーテル、アリルエーテル等の低級アルケニルエーテル;エチニルエーテル、プロピニルエーテル等の低級アルキニルエーテル;ヒドロキシエチルエーテル、ヒドロキシイソプロピルエーテル等のヒドロキシ(低級)アルキルエーテル;メトキシメチルエーテル、1−メトキシエチルエーテル等の低級アルコキシ(低級)アルキルエーテル;例えばフェニルエーテル、トシルエーテル、t−ブチルフェニルエーテル、サリチルエーテル、3,4−ジメトキシフェニルエーテル、ベンズアミドフェニルエーテル等の所望により置換されたアリールエーテル;およびベンジルエーテル、トリチルエーテル、ベンズヒドリルエーテル等のアリール(低級)アルキルエーテルが挙げられる。
【0078】
エステルとしては、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、t−ブチルエステル、ペンチルエステル、1−シクロプロピルエチルエステル等の低級アルキルエステル;ビニルエステル、アリルエステル等の低級アルケニルエステル;エチニルエステル、プロピニルエステル等の低級アルキニルエステル;ヒドロキシエチルエステル等のヒドロキシ(低級)アルキルエステル;メトキシメチルエステル、1−メトキシエチルエステル等の低級アルコキシ(低級)アルキルエステルのような脂肪族エステル;および例えばフェニルエステル、トリルエステル、t−ブチルフェニルエステル、サリチルエステル、3,4−ジメトキシフェニルエステル、ベンズアミドフェニルエステル等の所望により置換されたアリールエステル;ベンジルエステル、トリチルエステル、ベンズヒドリルエステル等のアリール(低級)アルキルエステルが挙げられる。
【0079】
Aのアミドは、式−CONR’R''(式中、R’およびR''はそれぞれ水素、低級アルキル、アリール、アルキル−またはアリール−スルホニル、低級アルケニルおよび低級アルキニル)で示される基を意味し、例えばメチルアミド、エチルアミド、ジメチルアミド、ジエチルアミド等の低級アルキルアミド;アニリド、トルイジド等のアリールアミド;メチルスルホニルアミド、エチルスルホニルアミド、トリルスルホニルアミド等のアルキル-またはアリール-スルホニルアミドが挙げられる。
【0080】
好ましいLの例は、ヒドロキシ、オキソを含み、特にいわゆるPGFまたはPGEタイプと称される5員環構造を有するものを含む。
【0081】
好ましいAは、−COOH、その医薬上許容し得る塩、エステルまたはアミドである。
【0082】
好ましいBは、−CH2−CH2−であり、いわゆる、13,14-ジヒドロタイプの構造を提供するものである。
【0083】
好ましいX1およびX2の例は、水素、またはそれらの少なくとも1つがハロゲンであり、より好ましくは両方がハロゲンであり、特に好ましくは両方がフッ素であり、いわゆる16,16−ジフルオロタイプと称される構造を提供するものである。
【0084】
好ましいR1は、炭素原子数1〜10であり、特に好ましくは炭素原子数6〜10の炭化水素残基である。脂肪族炭化水素における少なくとも1の炭素原子は酸素、窒素または硫黄で置換されていてもよい。
【0085】
R1の具体例としては、例えば、次のものが挙げられる。
−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−、
−CH2−CH=CH−CH2−CH2−CH2−、
−CH2−CH2−CH2−CH2−CH=CH−、
−CH2−C≡C−CH2−CH2−CH2−、
−CH2−CH2−CH2−CH2−CH(CH3)−CH2−、
−CH2−CH2−CH2−CH2−O−CH2−、
−CH2−CH=CH−CH2−O−CH2−、
−CH2−C≡C−CH2−O−CH2−、
−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−、
−CH2−CH=CH−CH2−CH2−CH2−CH2−、
−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH=CH−、
−CH2−C≡C−CH2−CH2−CH2−CH2−、
−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH(CH3)−CH2−、
−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−、
−CH2−CH=CH−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−、
−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH=CH−、
−CH2−C≡C−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−、および、
−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH(CH3)−CH2−。
【0086】
好ましいRaは、1−10炭素原子、より好ましくは1−8炭素原子を有する炭化水素である。Raは1の炭素原子を有する1または2の側鎖を有していてもよい。
【0087】
好ましいR2は単結合であり、好ましいR3は低級アルキルである。R3は1つの炭素原子を含む1または2の側鎖を有していてもよい。
【0088】
上記式(I)、(II)、および(III)における環、および、α−および/またはω−鎖の配置は、天然PG類の配置と同じであっても異なっていてもよい。しかしながら、本発明は、天然タイプの配置を有する化合物と非天然タイプの配置を有する化合物の混合物も包含する。
【0089】
本発明の化合物の典型的な例は、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-16,16-ジフルオロ-PGEまたはPGF化合物、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGEまたはPGF化合物、2-デカルボキシ-2-(2-カルボキシエチル)-11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGEまたはPGF化合物、または11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-20-エチル-PGEまたはPGF化合物およびその誘導体またはアナログである。本発明の化合物の好ましい例は、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-16,16-ジフルオロ-PGE1、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1イソプロピルエステル、2-デカルボキシ-2-(2-カルボキシエチル)-11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1イソプロピルエステル、2-デカルボキシ-2-(2-カルボキシエチル)-11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-20-メチル-PGE1イソプロピルエステル、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-20-メチル-PGE1、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-20-エチル-PGE1、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1メチルエステル、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-20-エチル-PGE1イソプロピルエステルまたは11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGF1αイソプロピルエステルである。
【0090】
本発明において、いずれの異性体、例えば、個々の互変異性体、その混合物、または光学異性体、その混合物、ラセミ混合物、およびその他の立体異性体も同じ目的に用いることが出来る。
【0091】
本発明に用いられる化合物のいくつかは、米国特許第5073569、5166174、5221763、5212324、5739161および6242485号に開示の方法によって調製することが出来る (これらの引用文献は引用により本明細書に含める)。
【0092】
本発明によると、哺乳類対象は上記化合物を投与することによって本発明により処置されうる。対象はいずれの哺乳類対象であってもよく、ヒトを含む。化合物は全身または局所適用することが出来る。通常、化合物は、経口投与、鼻腔内投与、吸入投与、静脈内注射 (点滴を含む)、皮下注射、直腸内投与、膣内投与、経皮投与、眼局所投与 (例えば、眼周囲 (例えば、テノン下)、結膜下、眼球内、硝子体内、前房内、網膜下、上脈絡膜下、および眼球後投与)等によって投与することが出来る。
【0093】
投与量は動物の種類、年令、体重、処置されるべき症状、所望の治療効果、投与経路、処置期間等により変化する。1日1〜4分割用量で全身投与または連続投与する場合、1日当たり0.000001〜500mg/kg、より好ましくは0.00001〜100mg/kgの投与量で満足な効果が得られる。
【0094】
化合物は好ましくは、常套的に投与に好適な医薬組成物に製剤するとよい。組成物は、経口投与、注射または灌流に好適なものであってもよいし、外用剤、坐薬または膣坐薬であってもよい。
【0095】
本発明の組成物は生理学的に許容される添加剤をさらに含んでいてもよい。添加剤は本発明の化合物と併用される成分を含み、例えば、賦形剤、希釈剤、増量剤、溶剤、滑沢剤、補助剤、結合剤、崩壊剤、被覆剤、カプセル化剤、軟膏基剤、坐薬基剤、エアロゾル化剤、乳化剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤、保存剤、抗酸化剤、矯味剤、芳香剤、着色剤、機能性素材(例えばシクロデキストリン、生体内分解高分子など)、安定剤が挙げられる。これらの添加剤は当該技術分野で周知であり、製剤学に関する一般書籍に記載されているものから適宜選択すればよい。
【0096】
本発明の組成物における上記化合物の量は組成物の剤形に応じて変動し得、一般的には、0.000001−10.0%、より好ましくは0.00001−5.0%、最も好ましくは0.0001−1%でありうる。
【0097】
経口投与のための固体組成物の例としては、錠剤、トローチ剤、舌下錠、カプセル、丸剤、散剤、顆粒剤等が挙げられる。固体組成物は、1以上の活性成分を少なくとも1つの不活性希釈剤と混合することによって調製できる。組成物はさらに、不活性希釈剤以外の添加剤を含んでいてもよく、例えば、滑沢剤、崩壊剤および安定化剤が挙げられる。錠剤および丸剤は必要であれば腸溶または胃腸溶フィルムでコーティングしてもよい。
【0098】
それらは2以上の層で被覆してもよい。それらはまた、徐放物質に吸着させてもよいし、マイクロカプセルに封入してもよい。さらに、組成物は易分解性物質、例えばゼラチンによってカプセル化してもよい。それらはさらに適当な溶媒、例えば、脂肪酸またはそのモノ、ジまたはトリグリセリドに溶解して軟カプセルとしてもよい。即効性を要する場合には舌下錠を用いてもよい。
【0099】
経口投与のための液体組成物の例としては、乳濁液、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシル剤等が挙げられる。該組成物はさらに、常套的に用いられる不活性希釈剤、例えば、精製水またはエチルアルコールを含んでいてもよい。組成物は補助剤等の不活性希釈剤以外の添加剤、例えば、湿潤剤および懸濁化剤、甘味料、香味料、香料および保存料を含んでいてもよい。
【0100】
本発明の組成物は1以上の活性成分を含む噴霧組成物の形態であってもよく、公知の方法にしたがって調製することが出来る。
【0101】
非経口投与のための本発明の注射可能組成物の例としては、無菌の水性または非水性溶液、懸濁液および乳濁液が挙げられる。
【0102】
水溶液または懸濁液のための希釈剤としては、例えば、注射用蒸留水、生理的食塩水およびリンゲル液が挙げられる。
【0103】
溶液および懸濁液のための非水性希釈剤としては、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えば、オリーブ油、アルコール、例えば、エタノールおよびポリソルベートが挙げられる。組成物はさらに、添加剤、例えば、保存料、湿潤剤、乳化剤、分散剤等を含んでいてもよい。それらは例えば細菌保持フィルターでのろ過によって、滅菌剤を配合することによって、あるいはガスまたは放射性同位体照射滅菌によって滅菌してもよい。
【0104】
注射可能組成物は、注射用無菌溶媒に使用時に溶解される滅菌された粉末組成物として提供してもよい。
【0105】
本発明の外用剤は、皮膚科学および耳鼻科学の分野で用いられるいずれの形態の外用剤であってもよく、軟膏、クリーム、ローションおよびスプレーが挙げられる。
【0106】
本発明の化合物は、点眼液、点眼剤、眼軟膏等によっても適用される。形態としては、眼科分野に用いられる眼局所投与のためのあらゆる剤形が含まれる。
【0107】
点眼液または点眼剤は、活性成分を滅菌水溶液、例えば、食塩水および緩衝液に溶解することによって、または用時に溶解される粉末組成物を混合することによって調製される。眼軟膏は活性成分を基剤に混合することにより調製される。剤形は常套のいずれの方法によって調製してもよい。
【0108】
浸透圧調節剤は眼科分野において通常用いられるいずれのものであってもよい。浸透圧調節剤の例としては、これらに限定されないが、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二カリウム、ホウ酸、ホウ砂、水酸化ナトリウム、塩酸、マンニトール、イソソルビトール、プロピレングリコール、グルコースおよびグリセリンが挙げられる。
【0109】
さらに、眼科分野において通常用いられる添加剤を所望により本発明の組成物に添加してもよい。かかる添加剤としては、例えば、緩衝剤 (例えば、ホウ酸、リン酸一水素ナトリウムおよびリン酸二水素ナトリウム)、保存料 (例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムおよびクロロブタノール)、増粘剤 (例えば、糖類、例えば、ラクトースおよびマンニトール、マルトース; 例えば、ヒアルロン酸またはその塩、例えば、 ヒアルロン酸ナトリウムおよびヒアルロン酸カリウム; 例えば、ムコ多糖、例えば、 コンドロイチン硫酸; 例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマーおよび架橋ポリアクリル酸)が挙げられ、これらはいずれも引用により本明細書に含まれる。
【0110】
本発明の組成物の眼軟膏としての調製において、上記添加剤の他に、組成物は通常用いられる眼軟膏基剤を含んでいてもよい。かかる眼軟膏基剤としては、これらに限定されないが、油性基剤 、例えば、ワセリン、流動パラフィン、ポリエチレン、セレン50、プラスチベース、マクロゴールまたはそれらの組合せ;界面活性剤により乳化された油性相と水性相を有する乳濁基剤;および水溶性基剤、例えば、 ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシプロピルメチルセルロース、およびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0111】
本発明の組成物は保存料を含まない滅菌単位用量型として製剤してもよい。
【0112】
本発明の別の形態は、坐薬または膣坐薬であり、これは活性成分を体温で軟化する常套の基剤、例えば、カカオ脂と混合することによって調製でき、好適な軟化温度を有する非イオン性界面活性剤を吸収性を高めるために用いてもよい。
【0113】
本明細書において用いる「処置」の語は、例えば、症状の予防、治療、軽減、症状の減弱、進行の阻害などのあらゆる疾患または症状の管理手段をいう。
【0114】
本発明に用いられる化合物は、不十分な末梢循環、損傷を受けた末梢血管壁および/または末梢血管内皮細胞の回復に対する有意な効果を有する。
【0115】
したがって、本発明の化合物は、末梢血管疾患、特に末梢血管および微小血管疾患の処置に有用である。本明細書および請求の範囲における末梢血管および微小血管疾患には、網膜、皮膚、全身循環、腎臓、または末梢または自律神経系の疾患が含まれうる。かかる疾患のすべては、しばしば真性糖尿病に付随し、真性糖尿病の急性または慢性合併症に関連する症状として起こりうる。さらに、糖尿病に関連することが知られていないが、その他の疾患も末梢血管系に対する生理的効果において類似であり、かかる疾患も本発明の方法によって有効に処置される。
【0116】
本発明は末梢および自律神経障害または小血管疾患および直接に大血管疾患に起因するその他の疾患においても有益であろう。該方法の有益な効果は、小血管血流の上昇および血管内皮細胞の保護に起因すると考えられる。
【0117】
本明細書において用いられる「末梢血管疾患」という用語には、あらゆる末梢血管疾患が含まれ、例えば、末梢および自律神経障害が挙げられる。「末梢血管疾患」の例としては、末梢動脈疾患、例えば、慢性動脈閉塞、例えば、 動脈硬化症、閉塞性動脈硬化症および閉塞性血栓血管炎 (バージャー病)、大血管障害、微小血管障害、真性糖尿病、血栓性静脈炎、静脈血栓症、レイノー病、レイノー症候群、CREST 症候群、振動による健康被害、スデック症候群、間欠性跛行症、四肢の冷感、四肢の知覚異常、寒冷に対する感受性
、メニエル病、メニエル症候群、知覚麻痺、感覚低下、感覚消失、休息痛、灼熱痛(やけつく痛み)、末梢循環機能障害、神経機能障害、運動機能障害、運動麻痺、糖尿病性末梢循環障害、腰部脊柱管狭窄症、糖尿病性神経障害、ショック、自己免疫疾患、例えば、エリテマトーデス、リウマチ性疾患および関節リウマチ、自律神経障害、糖尿病性自律神経障害、自律神経失調、起立性低血圧、勃起機能障害、女性生殖機能障害、逆行性射精、膀胱機能障害、過敏膀胱、膣の潤滑不全、運動不耐性、心臓除神経、高熱不耐性、味覚性発汗、糖尿病合併症、高血糖、無自覚性低血糖、無応答性低血糖; 緑内障、血管新生緑内障、白内障、網膜症、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑症、網膜動脈閉塞、網膜中心動脈閉塞、網膜静脈閉塞、黄斑浮腫、加齢性黄斑変性症、加齢性円板状黄斑変性症、嚢胞様黄斑浮腫、眼瞼浮腫、網膜浮腫、脈絡網膜症、血管新生黄斑症、ブドウ膜炎、虹彩炎、網膜血管炎、眼内炎、全眼球炎、転移性眼炎、脈絡膜炎、網膜色素上皮炎、結膜炎、毛様体炎、強膜炎、上強膜炎、視神経炎、眼球後視神経炎、角膜炎、眼瞼炎、滲出性網膜剥離、角膜潰瘍、結膜潰瘍、慢性貨幣状角膜炎、タイジェソン角膜炎、進行性モーレン潰瘍、皮膚傷害、皮膚潰瘍、例えば、足部潰瘍、糖尿病性潰瘍、火傷潰瘍、下腿潰瘍、手術後潰瘍、外傷性潰瘍、帯状疱疹後潰瘍、放射線性潰瘍、薬物誘導性潰瘍、凍傷 (寒冷傷害)、霜焼け、壊疽および突発性壊疽、狭心症、異型血管炎、冠動脈硬化症 (慢性虚血性心疾患、無症候性虚血性心疾患、動脈硬化性心血管疾患)、心筋梗塞、心不全、うっ血性心不全および無痛性虚血性心疾患、肺水腫、高血圧、肺高血圧; 門脈圧亢進症; 糖尿病性腎障害; 褥瘡、腎不全が挙げられる。
【0118】
本発明の組成物は単一の活性成分を含むものでもよいし、2以上の活性成分の組合せを含むものでもよい。複数の活性成分の組合せにおいて、それぞれの含有量は、その治療効果および安全性を考慮して適宜増減するとよい。
【0119】
本発明の医薬組成物はさらに本発明の目的を損なわない限りその他の薬理成分を含んでいてもよい。
【0120】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を限定する意図ではない。
【実施例】
【0121】
実施例1
被験化合物A: 11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1
被験化合物B: 11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1 イソプロピルエステル
【0122】
雄性ウィスターラット(7-週齡)を本研究に用いた。動物をナトリウムチオブタバルビタール (80 mg/kg)の腹腔内注射によって麻酔した。動物の体温 (直腸温)を実験の間加温パッドによっておよそ37℃に維持した。右後足の前側を脱毛クリームによって脱毛した後、皮膚組織血流を非接触型レーザードップラー血流計 (FLO-N1、Omegawave Inc.、Japan)を用いて連続的に測定した。平均動脈血圧の測定のために、左大腿動脈に配置したポリエチレンカテーテルを増幅器 (AP-641G、Nihon Koden Inc.、Japan)に連結した圧力変換器 (TP-400T、Nihon Koden Inc.、Japan)に接続した。皮膚組織血流および血圧を記録し、コンピュータシステム (HEM Ver. 3.5、Notocord Systems、France)を用いて分析した。エンドセリン-1 (ET-1) を大腿動脈に、右大腿動脈から分岐した尾側腹壁動脈に逆行性に挿入したポリエチレンカテーテルを介してシリンジポンプを用いて200 pmol/kg/分の速度で15分間注入した。ET-1の注入速度を200 pmol/kg/分の注入が終わった後20 pmol/kg/分に低下させ、低下させた量のET-1 注入を本研究が終わるまで維持した。皮膚組織血流はET-1の大腿動脈への注入によって低下した。皮膚組織血流が新しい定常状態に達すると(ET-1 注入開始の25〜50 分間後)、媒体または各被験化合物溶液を動物に2 分間かけて1 mL/kgの体積で左大腿静脈に配置したポリエチレンカテーテルを介して投与した。被験化合物の投与量は100μg/kgであった。皮膚組織血流および血圧を連続的に測定し、5 分毎に媒体または各被験溶液の投与後60 分間記録した。
【0123】
図1Aおよび1Bに示すように、ET-1の大腿動脈注入によって、皮膚組織血流はET-1 注入の開始の25〜50 分後には、ベースライン値のおよそ 37%に低下した。媒体での処理による皮膚組織血流の変化はなかった(図1Aおよび1B)。
【0124】
100 μg/kg 化合物A (11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1) 群において、ET-1 注入によってベースライン値のおよそ 35%に低下した皮膚組織血流は、化合物Aの投与により有意に上昇した(図1A)。
【0125】
100 μg/kg 化合物B (11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1 イソプロピルエステル) 群において、ET-1 注入によってベースライン値のおよそ 38%に低下した皮膚組織血流は、化合物Bの投与により有意に上昇した(図1B)。
【0126】
血圧はET-1 注入により影響を受けなかった。100 μg/kgの化合物Aおよび化合物Bは血圧に対する有意な効果を有さなかった。
【0127】
実施例2
被験化合物A: 11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1
およそ 2.5-3.5 kg の体重の8匹の雄性ニホンシロウサギ (Std:JW/CSK)を本研究に用いた。研究にわたって一貫して各動物の同じ側の眼を被験化合物で処理し、他方の眼を媒体で処理し、各処理の間にウォッシュアウト期間を設けた。30μlの各被験化合物溶液をマイクロピペット (Pipetman、Gilson、Inc.、France)を用いて各動物の一方の眼に局所適用した。反対側の対照眼には等体積の媒体を与えた。動物には毎朝ほぼ同じ時間に投薬した。動物をホルダーに拘束した後、1滴の局所麻酔薬 (0.4% 塩酸オキシブプロカイン)を両眼に適用し、IOPを投薬前および投薬の1、2、4、6、および8 時間後に圧平眼圧計 (Model 30 ClassicTM、Mentor O & O、Inc.、USA)を用いて測定した。
【0128】
表1に示すように、化合物Aは眼圧を有意に低下させた。
表1:被験化合物による処理後の眼圧 (IOP)
【表1】
【0129】
データは平均 ± SEとして表す。*p<0.05、**p < 0.01、媒体処理反対側対照眼との比較 (対応のあるスチューデントt-検定)。
化合物A: 11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1
【0130】
実施例3
糖尿病を、7-週齡雄性 Crl: CD(SD) ラットにおいて50 mg/kg ストレプトゾトシン (STZ)の単回静脈内注射によって誘導した。STZ処理の19日後の血漿グルコースレベルが 400 mg/dL 以上の動物を本研究に用いた。STZ 注射の3週間後、動物をナトリウムチオブタバルビタールの腹腔内注射により麻酔した。動物の体温 (直腸温)を加温パッドにより実験の間およそ 37℃に維持した。脱毛クリームによる右後足の前側の脱毛後、皮膚組織血流 (CTBF)を非接触型レーザードップラー血流計 (FLO-N1、Omegawave Inc.、Japan)を用いて連続的に測定した。血圧および心拍数を同時にモニターした。化合物Aまたは媒体を動物に10 分間かけて静脈内投与した。
【0131】
表 2に示すように、化合物Aは媒体と比較して皮膚組織血流を有意に上昇させた。化合物Aは血圧 (BP)および心拍数に対する効果は有さなかった。
表 2.ストレプトゾトシン-誘導糖尿病ラットにおける皮膚組織血流に対するSAG-017の効果
【表2】
【0132】
データは平均± S.E.として表す。*p<0.05、**p<0.01、媒体対照群と比較。
化合物A: 11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1
【0133】
実施例4
4ヶ月齢雄性 Kbs: J. W. ウサギを、室温 (23-24℃)、相対湿度 (55-74%)、換気速度(10-20回/時間)および12-時間明暗周期 (照明:午前 7:00 -午後 7:00)について制御した動物室中のアルミニウムケージで飼育した。動物にウサギ用固形飼料(120 g/動物/日)および水を自動給水装置から自由に与えた。動物を少なくとも 6 日間検疫および順化に供した。この期間中に、体重測定および全身健康観察を行い、健康状態が良好であると判断された動物を本研究に用いた。
【0134】
イソフルレンの吸入麻酔下でウサギの総頸動脈にカニューレを挿入した。カニューレを介して得た9部の血液サンプルと1部の3.8 w/v % クエン酸ナトリウムを混合した。10分間 1,000 rpmでの血液サンプルの遠心分離の後、血小板に富む血漿 (PRP)を最上層から回収した。次いで最下層を15分間3,000 rpmでさらに遠心分離し、血小板の少ない血漿 (PPP) を最上層から回収した。PRPおよびPPP 画分の血小板の計数はADVIA120 Hematology system (ADVIA120、Bayer Medical Ltd.)を用いて行った。PRP 画分をPPP 画分で希釈して血小板数をおよそ 30 x104 細胞/μLに調整した。こうして得られたPRP (0.178 mL)をキュベットに入れ、37℃の温浴で 約 5 分間プレインキュベートした。プロスタグランジン E1または化合物Aを含む被験溶液 (0.022 mL)をPRPに添加した。1分後、25 μM ADP 溶液 (0.022 mL)を添加し、血小板凝集の程度を血小板凝集測定装置 (NBS hematolaser、Nikko Bioscience Inc.)を用いて測定した。各被験溶液について、二連の試験を3匹の動物からの血液サンプルに対して行った。阻害率 (%)を、被験物質群における凝集と媒体対照群における凝集(100%)を比較することによって評価した。
【0135】
表 3に示すように、プロスタグランジン E1 (PGE1)は1x10-8、1 x 10-7および1 x 10-6 g/mLの濃度でそれぞれ血小板凝集を20.9%、91.2% および89.0%阻害した。一方、化合物Aは試験した最高濃度 (1 x 10-5 g/mL)まで血小板凝集に対する効果を示さなかった。この結果は、化合物Aは血小板凝集に対する効果を有さないことを示す。
【0136】
表 3
【表3】
【0137】
最大凝集 (%)は3匹のウサギの平均 ± S.Eを表す。
**: P<0.01;媒体対照からの有意差(ダネット多重比較検定)
【0138】
実施例5
雄性 Crl: CD(SD) ラットをナトリウムチオブタバルビタールの腹腔内注射により麻酔した。動物の体温 (直腸温)を実験の間加温パッドによりおよそ 37℃に維持した。脱毛クリームによる右後足の前側の脱毛後、皮膚組織血流 (CTBF)を化合物C (11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-16,16-ジフルオロ-PGE1)または媒体の静脈内投与の前および30 分後に非接触型レーザードップラー血流計 (FLO-N1、Omegawave Inc.、Japan)を用いて測定した。血圧および心拍数もモニターした。
【0139】
表 4に示すように、化合物Bは媒体処理と比較して皮膚組織血流を有意に上昇させた。化合物Bは血圧および心拍数に対する効果を有さなかった。
【0140】
表 4.化合物Bのラットにおける皮膚組織血流に対する効果
【表4】
【0141】
データは平均 ± S.E.として表す。*p<0.05、媒体対照群との比較。
【0142】
実施例6
ヒト血管内皮細胞培養を経内皮電気抵抗 (TEER)により測定して集密にさせた。細胞培養から窒素雰囲気中でのインキュベーションにより30 分間酸素を枯渇させた。細胞を次いで0.1% DMSOまたは5 nM 化合物Aと0.1% DMSOとの組合せ(終濃度)のいずれかにより処理した。細胞密度を示された時点においてTEERにより測定した。
【0143】
図2Aに示すように、DMSO-処理細胞はTEERの非常にわずかな回復を示した。化合物A-処理細胞は迅速なTEERの回復を示した。
【0144】
この結果は、測定される内皮細胞のバリア機能である傷害されたTEERは、化合物A-処理後に迅速に回復することを示す。
【0145】
実施例7
ヒト微小血管内皮細胞(成人) (HMVEC-AD)を集密まで培養した。細胞を窒素雰囲気に30 分間曝し、通常の空気雰囲気に戻した。示された時点でルシフェリン-ルシフェラーゼアッセイシステム (ATPlite、Perkin Elmer)を用いてATPレベルをモニターした。
【0146】
図2Bに示すように、ATPレベルは細胞を窒素雰囲気に曝すと低下した。ATPレベルは0.01% DMSOのみで処理した細胞と比較して5 nM 化合物Aで処理した細胞においてより迅速に回復した。
【0147】
実施例8
インスリン非依存性糖尿病の自然モデルである雄性 GK/Jcl ラットをナトリウムチオブタバルビタールの腹腔内注射により麻酔した。動物の体温 (直腸温)を加温パッドにより実験の間およそ 37℃に維持した。脱毛クリームによる右後足の前側の脱毛後、皮膚組織血流 (CTBF)を非接触型レーザードップラー血流計 (FLO-N1、Omegawave Inc.、Japan)を用いて化合物Aまたは媒体の静脈内投与の前(ベースライン)および20分後に測定した。データはベースライン皮膚組織血流と比較しての%として表す。
【0148】
表 5に示すように、化合物Aは媒体と比較して自然糖尿病ラットにおける皮膚組織血流を有意に上昇させた。
【0149】
表 5.自然糖尿病ラットにおける皮膚組織血流に対する化合物Aの効果
【表5】
【0150】
データは平均 ± S.E.として表す。*p<0.05、媒体対照群との比較。
【0151】
合成例 1
【化7】
【0152】
16,16-ジフルオロ-PGA1 ベンジルエステル (2) の合成
16,16-ジフルオロ-PGE1 ベンジルエステル (1) (457.8 mg、0.95 mmol) を酢酸 (13.7 mL、0.24 mol)に溶解し、溶液を80℃で18 時間撹拌した。反応混合物を室温まで冷却した。10 mLのトルエンを溶液に添加し、減圧下で濃縮した。 この操作を5回繰り返して酢酸を除去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (シリカゲル: FL60D (70 g)、Fuji Silysia、ヘキサン/酢酸エチル (2:1))で精製して化合物 (2)を黄色油状物として得た。収率: 391.6 mg (88.9%)
【0153】
11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-16,16-ジフルオロ-PGE1 (3) の合成
16,16-ジフルオロ-PGA1 ベンジルエステル (化合物 (2)) (382.5 mg、0.83 mmol)を酢酸エチル (10 mL)中、10% パラジウム-炭素 (57.4 mg、50% w/wの水で湿っている) の存在下で室温、大気圧で2 時間水素化した。反応混合物をセライトパッドでろ過し、フィルターケーキを酢酸エチルで洗浄し、次いでろ液を減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (シリカゲル BW-300SP (50 g、15% w/w の水で湿っている)、Fuji Silysia、ヘキサン/酢酸エチル (1:1)) で精製し、粗化合物 (3) (298.5 mg、95.7%)を得た。
【0154】
粗化合物 (3)を別のロットの粗化合物と合わせた。次いで、全部で約350 mgの粗化合物 を分取HPLC (YMC-Pack D-SIL-5-06 20×250mm、ヘキサン/2-プロパノール/酢酸 (250:5:1)、20 mL/分)で精製して化合物 (3)を無色油状物として得た。 収率: 297.3 mg (HPLC 精製回収率: 83.5%)
1H-NMR (200MHz、CDCl3) δ
0.94 (3H、t、J=7.1Hz)、1.22-2.29 (28H、m)、2.34 (2H、t、J=7.3Hz)、3.65-3.81 (1H、m)
13C-NMR(50MHz、CDCl3) δ
13.70、22.40、23.25、24.32、26.28、26.63)、27.18、27.58、28.49、29.09、30.39、31.77 (t、J=24.4Hz)、33.67、37.63、41.05、54.76、72.73 (t、J=29.0Hz)、124.09 (t、J=244.3Hz)、179.07、220.79
【0155】
合成例 2
【化8】
【0156】
合成例 1に記載のものと同様にして、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1 イソプロピルエステル (化合物 (6))を上記2工程反応により無色油状物として得た。収率: 0.285g (第一工程: 96.2%、第二工程: 97.6%、HPLC 精製:回収率 81.0%)。
化合物 (6)の1H-NMR (200MHz、CDCl3)および 13C-NMR(50MHz、CDCl3)をそれぞれ図 3 および4に示す。
【0157】
合成例 3
【化9】
【0158】
合成例 1に記載のものと同様にして、2-デカルボキシ-2-(2-カルボキシエチル)-11-デオキシ-13,14- ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1 イソプロピルエステル (化合物 (9)) を無色油状物として得た。収率: 0.402g (第一工程: 94.9%、第二工程: 92.2%、HPLC 精製:回収率 83.1%)。
化合物 (9)の1H-NMR (200MHz、CDCl3)および 13C-NMR(50MHz、CDCl3)をそれぞれ図 5 および6に示す。
【0159】
合成例 4
【化10】
【0160】
合成例 1に記載のものと同様にして、2-デカルボキシ-2-(2-カルボキシエチル)-11-デオキシ-13,14- ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1 (化合物 (12)) を無色油状物として得た。収率: 0.696g(第一工程: 95.6%、第二工程: 99.3%、HPLC 精製:回収率: 87.4%)。
化合物 (12) の1H-NMR (200MHz、CDCl3) および13C-NMR(50MHz、CDCl3)をそれぞれ図 7および8に示す。
【0161】
合成例 5
【化11】
【0162】
合成例 1に記載のものと同様にして、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ- 20-メチル-PGE1 イソプロピルエステル (化合物 (15)) を無色油状物として得た。収率: 0.271g (第一工程: 91.4%、第二工程: 97.3%、HPLC 精製:回収率: 79.0%)。
化合物 (15)の 1H-NMR (200MHz、CDCl3)および13C-NMR(50MHz、CDCl3)をそれぞれ図 9および10に示す。
【0163】
合成例 6
【化12】
【0164】
合成例 1に記載のものと同様にして、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ- 20-メチル-PGE1 (化合物 (18)) を無色油状物として得た。収率: 0.637g (第一工程: 93.3%、第二工程: 96.6%、HPLC 精製:回収率: 73.9%)。
化合物 (18)の 1H-NMR (200MHz、CDCl3)および13C-NMR(50MHz、CDCl3)をそれぞれ図 11および12に示す。
【0165】
合成例 7
【化13】
【0166】
合成例 1に記載のものと同様にして、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-20-エチル-PGE1 (化合物 (21)) を無色油状物として得た。収率: 0.401g (第一工程: 90.6%、第二工程: 92.7%、HPLC 精製:回収率: 29.2%)。
化合物 (21)の 1H-NMR (200MHz、CDCl3)および13C-NMR(50MHz、CDCl3)をそれぞれ図 13および14に示す。
【0167】
合成例 8
【化14】
【0168】
11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1 メチル エステル (化合物 (23)) を化合物 (22)のジアゾメタンによるエステル化により無色油状物として得た。収率: 0.860g (72.9%、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製後)。
化合物 (23)の 1H-NMR (200MHz、CDCl3)および13C-NMR(50MHz、CDCl3)を図 15 および16に示す。
【0169】
合成例 9
【化15】
【0170】
化合物 (24) (0.67g、1.66mmol) をDMF (13mL)に溶解し、K2CO3 (460.1mg、3.33mmol)およびヨウ化イソプロピル (831μL、8.32mmol)を添加した。溶液を室温で2 時間撹拌した。反応混合物を氷で冷却し、水 (10mL)および塩水を添加し、酢酸エチル (30mL)で抽出した。有機層を塩水 (10mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、次いで減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (シリカゲル FL60D (50 g)、Fuji Silysia、ヘキサン/酢酸エチル (5:1)) で精製し、粗 11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-20-エチル-PGE1 イソプロピルエステル (化合物 (25)) (0.70g、94.6%)を得た。粗化合物 (25) を分取HPLCで精製し、化合物 (25)を無色油状物として得た。収率 245.8mg (35.1%)。
化合物 (25)の 1H-NMR (200MHz、CDCl3)および13C-NMR(50MHz、CDCl3)をそれぞれ図 17 および 18に示す。
【0171】
合成例 10
【0172】
【化16】
【化17】
【0173】
化合物 (26) (8.71g、20.2mmol)を1,2-ジクロロエタン(70mL)に溶解し、1,1’- チオカルボニルジイミダゾール (5.41g、30.3mmol)を添加した。溶液を70℃で1時間撹拌した。反応混合物を室温まで冷却し、次いで減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (シリカゲル BW-300SP (650 g)、Fuji Silysia、ヘキサン/酢酸エチル (1:1)) で精製し、化合物 (27)を明黄色油状物(10.61g、97.0%)として得た。
【0174】
Bu3SnH (11.21g、38.5mmol) をトルエン (224mL)に溶解し、加熱により還流した。トルエン (208mL)中の化合物 (27) (10.41g、19.2mmol)の溶液を反応混合物に還流温度で70 分間滴下した。次いで、反応混合物を室温まで冷却し、減圧下で濃縮し、粗化合物 (28) を明黄色油状物として得た。
【0175】
粗化合物 (28) (19.2mmol) をTHF (52mL)に溶解し、TBAF 溶液 (THF中1.0M、38.5mL、38.5mmol)を10 分間滴下した。1時間後、TBAF 溶液 (THF中1.0M、19.2mL、19.2mmol)を溶液に滴下した。計3.5 時間撹拌した後、反応混合物を減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (シリカゲル BW-300SP (1,000 g)、Fuji Silysia、ヘキサン/酢酸エチル (1:1)) で精製し、化合物 (29)を黄色油状物(4.01g、69.3%)として得た。
【0176】
化合物 (31)をSwern 酸化およびω-鎖の導入により化合物 (29)から得た。
【0177】
化合物 (31) (807.4mg、1.88mmol)を10% パラジウム-炭素の存在下で酢酸エチル (8mL)中で室温で2 時間水素化した。反応混合物をセライトパッドでろ過し、ろ液を減圧下で濃縮し、粗化合物 (32)を明褐色油状物として得た。
【0178】
粗化合物 (32) (1.88mmol)をEtOH (8mL)に溶解した。1N-NaOH 溶液 (7.4mL、7.4mol)を溶液に室温で10 分間滴下した。反応混合物を室温で10 時間撹拌し、次いで氷で冷却した。1N-HCl (7.1mL)を反応混合物に滴下してpHを約3-4に調整した。反応混合物をTBME (30mL)で抽出した。有機層を水 (10mL)および塩水 (10mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、次いで減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (シリカゲル 15% 水含有FL-60D (80 g)、Fuji Silysia、ヘキサン/酢酸エチル (2:1)) で精製し 、化合物 (33)を明黄色油状物(481.4mg、68.8%)として得た。
【0179】
合成例 9に記載のものと同様にして、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ- PGF1α イソプロピルエステル (化合物 (34))を化合物 (33)から無色油状物として得た。収率: 166.6mg (反応工程91.9%: HPLC 精製:回収率: 55.4%)。
化合物 (34)の 1H-NMR (200MHz、CDCl3)および13C-NMR(50MHz、CDCl3)をそれぞれ図 19および20に示す。
【図面の簡単な説明】
【0180】
【図1−A】図1Aは、ET-1によって誘導されたラットにおける末梢微小循環の低下に対する化合物A (11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1)の効果を示すグラフである。グラフにおいて、データは平均± S.E.として表し、*p<0.05は、媒体処理対照との比較である。CTBF: 皮膚組織血流。
【図1−B】図1Bは、ET-1 によって誘導されたラットにおける末梢微小循環の低下に対する化合物B (11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1 イソプロピルエステル)の効果を示すグラフである。データは平均± S.E.として表し、*p<0.05は、媒体処理対照との比較である。CTBF: 皮膚組織血流。
【図2−A】図2Aは、経内皮電気抵抗(TEER) の回復に対する化合物Aの効果を示すグラフである。ヒト 血管内皮細胞培養物を経内皮電気抵抗 (TEER)によって測定して集密にした。細胞培養物から窒素雰囲気中でのインキュベーションにより30 分間酸素を枯渇させた。細胞を次いで 0.1% DMSOまたは0.1% DMSO中の5 nM 化合物Aのいずれかで処理した。統計的有意性は薬剤処理後のすべてのデータ地点にて示される。 N=10 細胞。
【図2−B】図2Bは、ATPレベルの回復に対する化合物Aの効果を示すグラフである。ヒト微小血管内皮細胞(成人) (HMVEC-AD)を集密まで培養した。細胞を次いで30 分間窒素雰囲気に曝し、通常の空気雰囲気に戻した。ATPレベルを示された時点でルシフェリン-ルシフェラーゼアッセイシステム(ATPlite、Perkin Elmer)を用いてモニターした。ATPレベルは相対発光として示す。各時点につきN=6 細胞。
【図3】図3は、以下の合成例 2において得た化合物 (6) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【図4】図4は、以下の合成例 2において得た化合物 (6) の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【図5】図5は、以下の合成例 3において得た化合物 (9) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【図6】図6は、以下の合成例 3において得た化合物 (9) の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【図7】図7は、以下の合成例 4において得た化合物(12) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【図8】図8は、以下の合成例 4において得た化合物(12) の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【図9】図9は、以下の合成例 5において得た化合物(15) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【図10】図10は、以下の合成例 5において得た化合物(15) の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【図11】図11は、以下の合成例 6において得た化合物(18) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【図12】図12は、以下の合成例 6において得た化合物(18) の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【図13】図13は、以下の合成例 7において得た化合物(21) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【図14】図14は、以下の合成例 7において得た化合物(21) の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【図15】図15は、以下の合成例 8において得た化合物(23) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【図16】図16は、以下の合成例 8において得た化合物(23) の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【図17】図17は、以下の合成例9において得た化合物(25) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【図18】図18は、以下の合成例 9において得た化合物(25)の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【図19】図19は、以下の合成例10において得た化合物(34) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【図20】図20は、以下の合成例 10において得た化合物(34)の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量の11-デオキシ-プロスタグランジン化合物を必要とする対象に投与することを含む、哺乳類対象における末梢血管疾患を処置する方法。
【請求項2】
該11-デオキシ-プロスタグランジン化合物が下記一般式 (I)で表される化合物である請求項 1の方法:
【化1】
[式中、
LおよびNは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキル、低級アルカノイルオキシまたはオキソ、ここで、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい;
Aは、−CH3、−CH2OH、−COCH2OH、−COOHまたはそれらの官能性誘導体;
R1は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基で置換された飽和または不飽和の二価の低〜中級脂肪族炭化水素であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は酸素、窒素または硫黄により置換されていてもよい; そして、
R0は、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基で置換された飽和または不飽和の低〜中級脂肪族炭化水素残基; 低級アルコキシ; 低級アルカノイルオキシ; シクロ(低級)アルキル; シクロ(低級)アルキルオキシ; アリール; アリールオキシ; 複素環基; 複素環オキシ基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は酸素、窒素または硫黄により置換されていてもよい]。
【請求項3】
該11-デオキシ-プロスタグランジン化合物が11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-プロスタグランジン化合物である請求項 1の方法。
【請求項4】
該11-デオキシ-プロスタグランジン化合物が11-デオキシ-15-ケト-プロスタグランジン化合物である請求項 1の方法。
【請求項5】
該11-デオキシ-プロスタグランジン化合物が11-デオキシ-16-モノまたはジハロゲン-プロスタグランジン化合物である請求項 1の方法。
【請求項6】
該11-デオキシ-プロスタグランジン化合物が11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-16-モノまたはジハロゲン-プロスタグランジン化合物である請求項 1の方法。
【請求項7】
該11-デオキシ-プロスタグランジン化合物が11-デオキシ-15-ケト-16-モノまたはジハロゲン-プロスタグランジン化合物である請求項 1の方法。
【請求項8】
該11-デオキシ-プロスタグランジン化合物が11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16-モノまたはジハロゲン-プロスタグランジン化合物である請求項 1の方法。
【請求項9】
該11-デオキシ-プロスタグランジン化合物が11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16-モノまたはジフルオロ-プロスタグランジン化合物である請求項 1の方法。
【請求項10】
該11-デオキシ-プロスタグランジン化合物が11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16-モノまたはジハロゲン-プロスタグランジンEまたはF化合物である請求項 1の方法。
【請求項11】
該プロスタグランジン化合物が11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16-モノまたはジフルオロ-プロスタグランジンEまたはF化合物である請求項 1の方法。
【請求項12】
該プロスタグランジン化合物が11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジンE1化合物である請求項 1の方法。
【請求項13】
該末梢血管疾患が末梢動脈疾患である請求項 1の方法。
【請求項14】
該末梢動脈疾患が動脈硬化症である請求項 13の方法。
【請求項15】
有効量の11-デオキシ-プロスタグランジン化合物を含む、哺乳類対象における末梢血管疾患を処置するための組成物。
【請求項16】
有効量の11-デオキシ-プロスタグランジン化合物を含む哺乳類対象における末梢血管疾患を処置するための組成物の製造のための、11-デオキシ-プロスタグランジン化合物の使用。
【請求項17】
有効量の11-デオキシ-プロスタグランジン化合物を必要とする対象に投与することを含む、哺乳類対象における損傷を受けた末梢血管壁を処置する方法。
【請求項18】
有効量の11-デオキシ-プロスタグランジン化合物を必要とする対象に投与することを含む、哺乳類対象における損傷を受けた末梢血管内皮細胞を処置する方法。
【請求項1】
有効量の11-デオキシ-プロスタグランジン化合物を必要とする対象に投与することを含む、哺乳類対象における末梢血管疾患を処置する方法。
【請求項2】
該11-デオキシ-プロスタグランジン化合物が下記一般式 (I)で表される化合物である請求項 1の方法:
【化1】
[式中、
LおよびNは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキル、低級アルカノイルオキシまたはオキソ、ここで、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい;
Aは、−CH3、−CH2OH、−COCH2OH、−COOHまたはそれらの官能性誘導体;
R1は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基で置換された飽和または不飽和の二価の低〜中級脂肪族炭化水素であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は酸素、窒素または硫黄により置換されていてもよい; そして、
R0は、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基で置換された飽和または不飽和の低〜中級脂肪族炭化水素残基; 低級アルコキシ; 低級アルカノイルオキシ; シクロ(低級)アルキル; シクロ(低級)アルキルオキシ; アリール; アリールオキシ; 複素環基; 複素環オキシ基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は酸素、窒素または硫黄により置換されていてもよい]。
【請求項3】
該11-デオキシ-プロスタグランジン化合物が11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-プロスタグランジン化合物である請求項 1の方法。
【請求項4】
該11-デオキシ-プロスタグランジン化合物が11-デオキシ-15-ケト-プロスタグランジン化合物である請求項 1の方法。
【請求項5】
該11-デオキシ-プロスタグランジン化合物が11-デオキシ-16-モノまたはジハロゲン-プロスタグランジン化合物である請求項 1の方法。
【請求項6】
該11-デオキシ-プロスタグランジン化合物が11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-16-モノまたはジハロゲン-プロスタグランジン化合物である請求項 1の方法。
【請求項7】
該11-デオキシ-プロスタグランジン化合物が11-デオキシ-15-ケト-16-モノまたはジハロゲン-プロスタグランジン化合物である請求項 1の方法。
【請求項8】
該11-デオキシ-プロスタグランジン化合物が11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16-モノまたはジハロゲン-プロスタグランジン化合物である請求項 1の方法。
【請求項9】
該11-デオキシ-プロスタグランジン化合物が11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16-モノまたはジフルオロ-プロスタグランジン化合物である請求項 1の方法。
【請求項10】
該11-デオキシ-プロスタグランジン化合物が11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16-モノまたはジハロゲン-プロスタグランジンEまたはF化合物である請求項 1の方法。
【請求項11】
該プロスタグランジン化合物が11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16-モノまたはジフルオロ-プロスタグランジンEまたはF化合物である請求項 1の方法。
【請求項12】
該プロスタグランジン化合物が11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジンE1化合物である請求項 1の方法。
【請求項13】
該末梢血管疾患が末梢動脈疾患である請求項 1の方法。
【請求項14】
該末梢動脈疾患が動脈硬化症である請求項 13の方法。
【請求項15】
有効量の11-デオキシ-プロスタグランジン化合物を含む、哺乳類対象における末梢血管疾患を処置するための組成物。
【請求項16】
有効量の11-デオキシ-プロスタグランジン化合物を含む哺乳類対象における末梢血管疾患を処置するための組成物の製造のための、11-デオキシ-プロスタグランジン化合物の使用。
【請求項17】
有効量の11-デオキシ-プロスタグランジン化合物を必要とする対象に投与することを含む、哺乳類対象における損傷を受けた末梢血管壁を処置する方法。
【請求項18】
有効量の11-デオキシ-プロスタグランジン化合物を必要とする対象に投与することを含む、哺乳類対象における損傷を受けた末梢血管内皮細胞を処置する方法。
【図1−A】
【図1−B】
【図2−A】
【図2−B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図1−B】
【図2−A】
【図2−B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公表番号】特表2008−531468(P2008−531468A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−541517(P2007−541517)
【出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【国際出願番号】PCT/JP2006/304667
【国際公開番号】WO2006/093348
【国際公開日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(501131276)スキャンポ・アーゲー (37)
【氏名又は名称原語表記】Sucampo AG
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【国際出願番号】PCT/JP2006/304667
【国際公開番号】WO2006/093348
【国際公開日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(501131276)スキャンポ・アーゲー (37)
【氏名又は名称原語表記】Sucampo AG
【Fターム(参考)】
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