説明

末端に水酸基を有するポリカーボネート/ポリエーテルブロック共重合体

【課題】低粘度化されたポリカーボネート系ポリオールを提供する。
【解決手段】1,6−ヘキサンジオールおよび1,5−ペンタンジオールからなる共重合ポリカーボネートジオールとポリオキシテトラメチレングリコールをエステル交換反応(解重合反応)させて両末端に水酸基を有するポリカーボネートジオール/ポリエーテルブロック共重合体を得る。
【効果】UV・EB硬化型樹脂や水系ウレタン塗料用樹脂に用いることにより、硬化後の皮膜が柔軟で低温においてもそれを維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は末端に水酸基を有するポリカーボネート/ポリエーテルブロック共重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、脂肪族ポリカーボネートジオールは、耐加水分解性、耐熱性が良好なジオールであるために、スパンデックス、繊維処理剤、コーティング剤、合成皮革、成型体等の分野において高機能ポリウレタンの原料として使用されている。
一般的に、1,6-ヘキサンジオールとジアルキルカーボネートやアルキレンカーボネートから得られるヘキサメチレン基を有するポリカーボネートジオールは、ポリエステルジオールと比較して、耐加水分解性、耐カビ性に優れ、ポリエーテルジオールと比較して耐光性、耐熱性、耐油性に優れるために、高耐久性ポリウレタンを製造するための原料として使用されている。
【0003】
しかし、このカーボネートジオールは結晶性を有するため、これを用いたポリウレタンは、柔軟性や弾性回復性に乏しいという欠点を有しており、低温では、これらの性質がさらに低下する。
また、ポリカーボネートジオール自身、またはこれを用いた末端イソシアネートプレポリマーやウレタンアクリレートプレポリマーなどの誘導体は、ポリカーボネートジオール鎖の部分が融点を有するために、温度50℃以下で結晶が生成しやすく、このために製品の流動性が阻害され、取り扱いが著しく困難になる欠点を有する。
この点を改良する技術として、特許文献1には炭素数5および6のジオールを原料とした共重合ポリカーボネートジオールや特許文献2には炭素数4および6のジオールを原料とした共重合ポリカーボネートジオールが提案されている。これらの共重合ポリカーボネートジオールは常温で液体であるためにポリウレタンやウレタンプレポリマーを合成する際の取扱いが容易であり、また、得られたポリウレタンやウレタンプレポリマーが柔軟である特長を有する。
【0004】
しかし、用途によってはさらに低粘度化されたポリカーボネート系ジオールが望まれている。特に、UV・EB硬化型樹脂や、水系ウレタン塗料用樹脂の分野では、低粘度化されたポリカーボネート系ジオールの要求が強い。UV・EB硬化型樹脂として使用されるウレタンアクリレートの場合、その原料であるポリオールが低粘度化されれば、製品のウレタンアクリレートを低粘度化することができるので、低温流動性が良好になり、さらにウレタンアクリレートの基材への塗布が容易になり、硬化後の皮膜は柔軟であってしかも低温においてもそれを維持できるなどの利点がある。水系ポリウレタンの分野では、ポリウレタンあるいは、ウレタンプレポリマーが低粘度化できれば、水へ分散させる工程が容易になる利点があり、その皮膜は柔軟であってしかも低温でもそれを維持できるなどの利点がある。
【特許文献1】特開平4−7327号公報
【特許文献2】特開平5−25264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、従来技術の問題点を解決しうるポリカーボネート系ジオール共重合体を提供するものであり、これを原料とした、ウレタンプレポリマー、溶剤系ポリウレタン、水系ポリウレタン、バルク重合ポリウリタン、ウレタンアクリレート等の製品が、溶融状態で低粘度化でき、これらの製品を使用したとき、塗布、成型、攪拌などの機械的操作が容易であり、ポリウレタンにした場合耐光性の低下が少なく、ポリカーボネートジオールおよびポリエーテルジオールの両者との親和性が良好であるため、これらの両者を混合する場合の相溶化剤として使用できる共重合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するため、炭素数5および6の脂肪族ジオール成分からなる共重合ポリカーボネート鎖とポリオキシアルキレン鎖とをブロック共重合させた末端に水酸基を有するポリカーボネート/ポリエーテルブロック共重合体が低粘度であることを見出し、本発明をなすに至った。
すなわち本発明は、下記(1)から(10)の発明である。
(1) 下記の繰り返し単位式(I)、式(II)および式(III)を含み、ポリカーボネート鎖の部分は繰り返し単位式(I)と式(II)からなる共重合鎖を形成し、該ポリカーボネート鎖と繰り返し単位式(III)からなるポリエーテル鎖とはブロック共重合鎖を形成し、製品中に含まれる繰り返し単位式(I)と式(II)の個数の合計をc、繰り返し単位式(III)の個数をeとした場合、カーボネート組成比c/(c+e)が0.1以上0.9以下であり、末端に水酸基を有する、数平均分子量300以上50000以下のポリカーボネート/ポリエーテルブロック共重合体。
【0007】
【化1】

【0008】
【化2】

【0009】
【化3】

【0010】
(Rはオキシテトラメチレン基およびまたはオキシ2,2-ジメチルトリメチレン基である)
(2) 繰り返し単位式(III)がオキシテトラメチレン基である前記(1)のポリカーボネート/ポリエーテルブロック共重合体
(3) 繰り返し単位式(III)が、オキシテトラメチレン基およびオキシ2,2-ジメチルトリメチレン基である前記(1)のポリカーボネート/ポリエーテルブロック共重合体。
(4) 繰り返し単位式(III)が、その数平均重合度が2以上14以下である前記(1)、(2)または(3)のポリカーボネート/ポリエーテルブロック共重合体。
(5) 繰り返し単位式(I)と式(II)からなる共重合ポリカーボネート鎖が、その数平均重合度が2以上22以下である前記(1)、(2)または(3)のポリカーボネート/ポリエーテルブロック共重合体。
(6) ポリカーボネート/ポリエーテルブロック共重合体が、数平均分子量が300以上5000以下である前記(1)、(2)または(3)のポリカーボネート/ポリエーテルブロック共重合体
【0011】
(7) 繰り返し単位式(I)と式(II)からなる共重合ポリカーボネートジオールとポリオキシテトラメチレングリコールをエステル交換反応させることにより前記(2)のポリカーボネート/ポリエーテルブロック共重合体を製造する方法。
(8) 繰り返し単位式(I)と式(II)からなる共重合ポリカーボネートジオールと、オキシテトラメチレン基およびオキシ2,2-ジメチルトリメチレン基からなる共重合ポリオキシアルキレングリコールをエステル交換反応させることにより前記(3)のポリカーボネート/ポリエーテルブロック共重合体を製造する方法。
(9) ポリオキシテトラメチレングリコールが、数平均重合度2以上14以下である前記(7)の方法。
(10) ポリオキシアルキレングリコールが、数平均重合度2以上14以下である前記(8)の方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の末端に水酸基を有するポリカーボネート/ポリエーテルブロック共重合体は、低粘度である特徴を有するために、これを原料とした、ウレタンプレポリマー、溶剤系ポリウレタン、水系ポリウレタン、バルク重合ポリウリタン、ウレタンアクリレート等の製品が、溶融状態で低粘度化でき、これらの製品を使用したとき、塗布、成型、攪拌などの機械的操作が容易になる利点があり、ポリウレタンにした場合耐光性の低下が少なく、また、ポリカーボネートジオールおよびポリエーテルジオールの両者との親和性が良好であるため、これらの両者を混合する場合の相溶化剤として使用できる共重合体を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明について、以下具体的に説明する。本発明のポリカーボネート/ポリエーテルブロック共重合体は、ポリカーボネート鎖とポリエーテル鎖とが、ブロック共重合体を形成し、末端に水酸基を有する。繰り返し単位式(I)中のメチレン鎖の数は5であり、繰り返し式(II)中のメチレン鎖の数は6であるが、これらの繰り返し単位は共重合鎖を形成し、この炭素数5と炭素数6の比は1/9から9/1である。これらの範囲を外れた場合は、カーボネート結合を含む繰り返し単位よりなる部分の結晶性が増加するので好ましくない。繰り返し単位式(I)と式(II)からなる共重合ポリカーボネート鎖の数平均重合度の好ましい範囲は、2以上36以下である。36を超えた場合、本発明の末端に水酸基を有するポリカーボネート/ポリエーテルブロック共重合体や、これを応用した製品である、末端イソシアナートウレタンプレポリマー等のウレタンプレポリマーやポリウレタンの粘度が高くなるため取り扱いが困難になる。より好ましい範囲は、2以上22以下である。
繰り返し単位式(III)からなるポリエーテル鎖は、下記に示すオキシテトラメチレン基式(IV)あるいはオキシテトラメチレン基式(IV)およびオキシ2,2-ジメチルトリメチレン基式(V)の共重合鎖からなる。
【0014】
【化4】

【0015】
【化5】

【0016】
式(IV)の割合(個数比)IV/(IV+V))は0.1以上1以下が好ましい。この範囲を外れると、ポリウレタンにした場合に柔軟性が低下する。繰り返し単位式(III)の数平均重合度の好ましい範囲は、2以上70以下である。70を超えた場合、本発明の末端に水酸基を有するポリカーボネート/ポリエーテルブロック共重合体や、これを応用した製品である、末端イソシアナートウレタンプレポリマー等のウレタンプレポリマーやポリウレタンの粘度が高くなるため取り扱いが困難になり易い。より好ましい範囲は、2以上42以下であり、さらに好ましくは2以上28以下である。本発明の末端に水酸基を有するポリカーボネート/ポリエーテルブロック共重合体の一分子中にカーボネート結合とエーテル結合の両者が含まれる確率を高くするためには、繰り返し単位(III)の数平均重合度は2以上14以下がもっとも好ましい。本発明のポリカーボネート/ポリエーテルブロック共重合体の数平均分子量は300以上50000以下である。300未満では、ポリウレタンのソフトセグメントとしての性質が失われ、50000以上では、該ブロック共重合体の粘度が著しく高くなるため、取り扱い難くなる。より好ましくは、300以上5000以下である。
【0017】
本発明の末端に水酸基を有するポリカーボネート/ポリエーテルブロック共重合体一分子中の共重合ポリカーボネート鎖からなるブロック部分とポリエーテル鎖からなるブロック部分はそれぞれ1個で存在しても、複数で存在しても良い。また、末端は-(CH2)6OH、-(CH2)5OH、-(CH2)4OH、-CH2C(CH3)2CH2-OHのいずれでも良い。また、不純物としてのこれら以外の末端が含まれていても良い。これら以外の末端としては、-(CH2)2-OH、二級水酸基末端、アルキル基末端等が例示できる。不純物としての末端がイソシアナートに対して不活性である場合、ポリウレタンの最終到達分子量が低くなる。したがって、イソシアナートと反応性が良好な末端一級水酸基の純度は極力高い方が好ましい。具体的には、末端一級水酸基の純度は、その個数で計算した場合、95%以上が好ましく、さらには、97%以上が好ましい。末端一級水酸基純度の測定は、WO01/90213公報に記載の方法で行うことができる。本発明の末端に水酸基を有するポリカーボネート/ポリエーテルブロック共重合体の製品中に含まれるカーボネート繰り返し単位(I)および(II)の合計個数をc、エーテル繰り返し単位(III)の個数をeとした場合、カーボネート組成比c/(c+e)は0.1以上0.9以下である。0.1より小さい場合は、ポリウレタンにした場合耐光性が低下し、0.9より大きい場合はポリオールの流動性が低下する。
【0018】
本発明の末端に水酸基を有するポリカーボネート/ポリエーテルブロック共重合体の末端水酸基は、用途により種々の官能基に変換することが可能である。例えば末端にアクリロイル基またはメタクリロイル基を導入することができ、これは紫外線-電子線(UV-EB)硬化型プレポリマーとして使用可能である。この紫外線-電子線硬化型プレポリマーは、塗料や接着剤として使用される。脂肪族ポリカーボネートジオールは、芳香族ポリカーボネート樹脂への親和性が高いので、特に芳香族ポリカーボネート樹脂用のUV-EB硬化型接着剤として好適である。末端にアクリロイル基またはメタクリロイル基を導入する方法としては、末端の水酸基をアクリロイルクロライドまたはメタクリロイルクロライドと直接反応させる方法や、一旦末端を芳香族あるいは脂肪族ポリイソシアナートと反応させて末端をイソシアナートにした後ヒドロキシエチルアクリレートまたはヒドロキシエチルメタクリレートなどのヒドロキシアルキルアルキレートまたはヒドロキシアルキルメタクリレートと反応させる方法がある。
【0019】
末端にイソシアナート基を導入したものはウレタンプレポリマーとして使用できる。末端にイソシアナート基を導入する方法としては、末端の水酸基をOH当量と等量あるいはOH当量より過剰の芳香族ポリイソシアナートあるいは脂肪族ポリイソシアナートと反応させれば良い。
末端にアルコキシシランあるいはシラノールを導入したものは、常温25℃架橋型プレポリマーとして使用できる。末端にアルコキシシラン基を導入するには、例えば芳香族あるいは脂肪族ポリイソシアナートと反応させて末端をイソシアナートにした後、アミノアルキルアルコキシシランなどのアミノ基を有するシランカップリング剤と反応させればよい。
【0020】
末端にエポキシ基またはオキセタニル基を導入したものは、エポキシ樹脂の添加剤やカチオン硬化型プレポリマーとして使用可能である。エポキシ基あるいはオキセタン基を導入するには、例えば芳香族あるいは脂肪族ポリイソシアナートと反応させて末端をイソシアナートにした後、水酸基を有するエポキシ化合物や水酸基を有するオキセタン化合物と反応させればよい。
本発明の末端に水酸基を有するポリカーボネート/ポリエーテルブロック共重合体は平均2官能を超える官能基数を有するポリオールに変換することも可能である。この方法としては例えば、水酸基を一分子中に3個以上有する低分子あるいは高分子アルコールで解重合を行うか、3官能以上のポリイソシアナートと反応させれば良い。
【0021】
本発明の末端に水酸基を有するポリカーボネート/ポリエーテルブロック共重合体は、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ポリオキシアルキレングリコールにカーボネート化合物を反応させて合成することができる。カーボネート化合物としては、ジアルキルカーボネート、アルキレンカーボネート、ジアリールカーボネートが使用できる。より具体的には、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ-n-プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、エチレンカーボネート、4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、1,3-プロピレンカーボネート、ジフェニルカーボネートなどが例示できる。1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ポリオキシアルキレングリコール、およびカーボネート化合物の反応はエステル交換反応による縮重合反応であり、次式に示すとおり、カーボネート化合物に対応するモノアルコールまたはジオールを反応系外に留出させることにより重合反応が進行する。
(n+1) HO-R-OH +n R1-OCOO-R1 → HO-(R-OCOO-)n-R-OH + 2n R1-OH
(HO-R-OHは1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ポリオキシアルキレングリコールを表す。)
上記式中の左辺のカーボネート化合物に対応するモノアルコールまたはジオールが留出した後にさらに分子量を上げるためには、以下の式に示す自己縮重合反応を利用する。
HO-(R-OCOO-)a-R-OH +HO-(R-OCOO-)b-R-OH → HO-(R-OCOO-)a+b-R-OH + HO-R-OH
【0022】
このとき反応系から、原料ジオールが留出し、その結果分子量が増大する。これらの反応の温度は通常100-250℃である。上に示したこれらの反応においては、エステル交換触媒を使用することができる。このエステル交換触媒として一般的に使用されている触媒が使用可能である。アルカリ金属アルコラート、有機酸、無機酸、イオン交換樹脂、遷移金属アルコラート、金属酸化物などが例示できるが、より具体的には、ナトリウムメチラート、カリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムエチラート、酢酸鉛、チタニウムテトラアルコキシド、酸化カルシウム、酸化亜鉛SnO(OR)3などが好適である。原料として1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ポリオキシアルキレングリコール以外の低分子ポリオールを上記ジオール化合物と共に併用することが可能である。また、3官能以上の多価アルコールを使用した場合は、目的物を多官能アルコールにすることができる。これらの低分子ジオールとしては、炭素数2から10のポリオールが例示できる。さらに具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレン1,2-ジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが例示できる。
【0023】
本発明の末端に水酸基を有するポリカーボネート/ポリエーテルブロック共重合体の他の製造方法として、下記式に示す解重合による方法が採用可能である。
a HO-(R-OCOO-)n-R-OH +b HO-R-OH → c HO-(R-OCOO-)p-R-OH (p<n)
この方法は、繰り返し単位(I)と(II)からなる共重合ポリカーボネートジオールと、ポリオキシアルキレングリコールとをエステル交換反応させる方法である。この方法においても、前記の方法と同様にポリカーボネートとポリエーテルのブロック共重合体が生成する。繰り返し単位(I)と(II)からなる共重合ポリカーボネートジオールの数平均重合度には特に制限はないが、数平均重合度が大になると粘度が高くなるので、反応器への仕込の容易さから通常、2以上36以下とすることが好ましい。
繰り返し単位(III)の数平均重合度の好ましい範囲は、2以上28以下である。本発明の末端に水酸基を有するポリカーボネート/ポリエーテルブロック共重合体の一分子中にカーボネート結合とエーテル結合の両者が含まれる確率を高くするためには、繰り返し単位(III)の数平均重合度は2以上14以下がもっとも好ましい。
【0024】
反応温度は通常100-250℃である。このエステル交換反応すなわち解重合反応においても前述の方法と同様なエステル交換触媒を使用することができる。分子量分布の正確な制御と、ポリエーテルの熱分解反応を極力避けるために、このエステル交換反応を採用することが好ましい。ポリオキシアルキレングリコールと共に低分子ポリオールを併用することも可能である。また、3官能以上の多価アルコールを使用した場合は、目的物を多官能アルコールにすることができる。これらの低分子ジオールとしては、炭素数2から10のポリオールが例示できる。具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレン1,2-ジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリンなどが例示できる。
【0025】
本発明の末端に水酸基を有するポリカーボネート/ポリエーテルブロック共重合体は、ウレタンプレポリマー、溶剤系ポリウレタン、水系ポリウレタン、バルク重合ポリウレタン、ウレタンアクリレート、熱可塑性ポリウレタン、熱硬化性ポリウレタン、ポリウレタン系粉体樹脂などのポリウレタンの原料として使用できる。さらに具体には、自動車用耐チッピング塗料、溶剤系接着剤、水系接着剤、ポリウレタン成型体、靴底、パッキン、ポリウレタン発泡体、スポーツ用品、シーリング剤、半導体封止剤、エポキシ樹脂改質剤、UV・EB硬化型接着剤、UV・EB硬化型樹脂、樹脂用塗料、スラッシュ成型用粉体、木工用塗料、粉体塗料、UV硬化型粉体塗料、水系UV硬化型塗料、繊維処理剤、合成皮革、人工皮革、スパンデックス等の原料としての用途や、ポリカーボネートジオールとポリエーテルジオールを混合する場合の相溶化剤としての用途が例示できる。
【実施例】
【0026】
本発明を実施例に基づいて説明する。
〔実施例1〕
攪拌機と蒸留塔を備えた減圧可能な反応器に、1,6-ヘキサンジオール100重量部、1,5-ペンタンジオール88.1重量部、エチレンカーボネート74.6重量部、チタニウムテトラブトキシド0.0187重量部を仕込み、150℃常圧でエステル交換反応を開始し、徐々に反応温度を200℃まで昇温し、同時に圧力を徐々に5Torrまで減じた。このとき、反応の前半では、蒸留塔の塔頂からエチレングリコールが少量の共沸するエチレンカーボネートを伴って留出し、反応の後半では、自己縮合反応により生成した1,6-ヘキサンジオールと1,5-ペンタンジオールが留出した。反応終了後に反応器内には生成物である共重合ポリカーボネートジオール(PCD-A)が残った。PCD-Aの数平均分子量を、アセチル化法による水酸基末端定量により求めたところ、2004(OH価=56mgKOH/g)であった。苛性ソーダ水溶液によりPCD-Aを分解して、繰り返し単位(I)と(II)の組成比を求めたところ、48/52であった。
【0027】
攪拌機付き反応器にPCD-Aを198.8重量部、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)(BASF社製PolyTHF250、数平均分子量=253、OH価=443.7mgKOH/g)を51.33重量部仕込み、150℃で4時間エステル交換反応(解重合反応)を行った。反応系は、前半は二相系であったが、後半は均一になった。得られた末端に水酸基を有するポリカーボネート/ポリエーテルブロック共重合体(PCPED-1)は室温で無色あるいは淡黄色透明の粘性液体であり、数平均分子量は828(OH価=135.5mgKOH/g)であった。37℃での粘度をB型粘度計No.4ローター(東京計器)で測定したところ1700mPa・sであり、比較例1のPCD-Cよりも低粘度であった。製品PCPED-1中のカーボネート組成比c/(c+e)は0.674である。表1にカーボネート組成比と37℃での粘度を示した。
GPCとIRを測定した結果を図1、図2に示す。なお、これらの測定条件は以下の通りである。
GPC測定装置東ソーHLC-8820、カラム TSKgel G4000HXL×1 G3000HXL×1 G2000HXL×2
ガードカラム、溶離液 THF、流量 1mL/min、温度 40℃、検出器 RI。
IR
測定装置 日本分光FT-IR430、KBr結晶板
【0028】
本実施例1の末端に水酸基を有するポリカーボネート/ポリエーテルブロック共重合体は、低粘度である特徴を有するために、これを原料とした、ウレタンプレポリマー、溶剤系ポリウレタン、水系ポリウレタン、バルク重合ポリウリタン、ウレタンアクリレート等の製品が、溶融状態で低粘度化でき、これらの製品を使用したとき、塗布、成型、攪拌などの機械的操作が容易になる利点があり、ポリウレタンにした場合耐光性の低下が少なく、また、ポリカーボネートジオールおよびポリエーテルジオールの両者との親和性が良好であるため、これらの両者を混合する場合の相溶化剤として使用できる共重合体を提供できた。
【0029】
〔実施例2〕
実施例1と同様な方法で、1,6-ヘキサンジオール100重量部、1,5-ペンタンジオール88.1重量部、エチレンカーボネート74.6重量部、チタニウムテトラブトキシド0.0187重量部を反応させ、数平均分子量989(OH価=113.5mgKOH/g)の共重合ポリカーボネートジオール(PCD-B)を得た。苛性ソーダ水溶液によりPCD-Bを分解して、繰り返し単位(I)と(II)の組成比を求めたところ、49/51であった。
実施例1と同様な方法で、PCD-Bを152.5重量部、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)(BASF社製PolyTHF650、数平均分子量=655、OH価=171.2mgKOH/g)97.69重量部を仕込み、150℃で4時間エステル交換反応(解重合反応)を行った。反応系は、前半は二相系であったが、後半は均一になった。得られた末端に水酸基を有するポリカーボネート/ポリエーテルブロック共重合体(PCPED-2)は室温で無色あるいは淡黄色透明の粘性液体であり、数平均分子量は825(OH価=136.0mgKOH/g)であった。37℃での粘度をB型粘度計No.4ローター(東京計器)で測定したところ1040mPa・sであり、比較例1のPCD-Cよりも低粘度であった。製品PCPED-2中のカーボネート組成比c/(c+e)は0.428である。表1にカーボネート組成比と37℃での粘度を示した。GPCとIRを測定した結果を図3、図4に示す。
【0030】
〔実施例3〕
実施例1と同様な方法で、PCD-Bを152.2重量部、オキシテトラメチレングリコールユニットとオキシ2,2-ジメチルトリメチレングリコールユニットがこの順に90対10の割合で含有された共重合ポリオキシアルキレングリコール(数平均分子量=652、OH価=172.1mgKOH/g)97.61重量部を仕込み、150℃で4時間エステル交換反応(解重合反応)を行った。反応系は、前半は二相系であったが、後半は均一になった。得られた末端に水酸基を有するポリカーボネート/ポリエーテルブロック共重合体(PCPED-3)は室温で無色あるいは淡黄色透明の粘性液体であり、数平均分子量は823(OH価=136.4mgKOH/g)であった。37℃での粘度をB型粘度計No.4ローター(東京計器)で測定したところ1005mPa・sであり、比較例1のPCD-Cよりも低粘度であった。製品PCPED-3中のカーボネート組成比c/(c+e)は0.433である。表1にカーボネート組成比と37℃での粘度を示した。
【0031】
〔比較例1〕
実施例1と同様な方法で、1,6-ヘキサンジオール100重量部、1,5-ペンタンジオール88.1重量部、エチレンカーボネート74.6重量部、チタニウムテトラブトキシド0.0187重量部を仕込み、数平均分子量826(OH価=135.8mgKOH/g)の共重合ポリカーボネートジオール(PCD-C)を得た。PCD-Cは室温で無色あるいは淡黄色透明の粘性液体であった。苛性ソーダ水溶液によりPCD-Cを分解して、繰り返し単位(I)と(II)の組成比を求めたところ、50/50であった。37℃での粘度をB型粘度計No.4ローター(東京計器)で測定したところ2580mPa・sであった。表1にカーボネート組成比と37℃での粘度を示した。
【0032】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は水系ポリウレタン、溶剤系ポリウレタン、ポリウレタン樹脂、ウレタンプレポリマー、ウレタンアクリレートなどの分野で好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施例1に記載したPCPED-1のGPCである。
【図2】実施例1に記載したPCPED-1のIRスペクトルである。
【図3】実施例2に記載したPCPED-2のGPCである。
【図4】実施例2に記載したPCPED-2のIRスペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の繰り返し単位式(I)、式(II)および式(III)を含み、ポリカーボネート鎖の部分は繰り返し単位式(I)と式(II)からなる共重合鎖を形成し、該ポリカーボネート鎖と繰り返し単位式(III)からなるポリエーテル鎖とはブロック共重合鎖を形成し、製品中に含まれる繰り返し単位式(I)と式(II)の個数の合計をc、繰り返し単位式(III)の個数をeとした場合、カーボネート組成比c/(c+e)が0.1以上0.9以下であり、末端に水酸基を有する、数平均分子量300以上50000以下のポリカーボネート/ポリエーテルブロック共重合体。
【化1】

【化2】

【化3】

(Rはオキシテトラメチレン基およびまたはオキシ2,2-ジメチルトリメチレン基である)
【請求項2】
繰り返し単位式(III)がオキシテトラメチレン基である請求項1のポリカーボネート/ポリエーテルブロック共重合体
【請求項3】
繰り返し単位式(III)が、オキシテトラメチレン基およびオキシ2,2-ジメチルトリメチレン基である請求項1のポリカーボネート/ポリエーテルブロック共重合体。
【請求項4】
繰り返し単位式(III)が、その数平均重合度が2以上14以下である請求項1、請求項2または請求項3のポリカーボネート/ポリエーテルブロック共重合体。
【請求項5】
繰り返し単位式(I)と式(II)からなる共重合ポリカーボネート鎖が、その数平均重合度が2以上22以下である請求項1、請求項2または請求項3のポリカーボネート/ポリエーテルブロック共重合体。
【請求項6】
ポリカーボネート/ポリエーテルブロック共重合体が、数平均分子量が300以上5000以下である請求項1、請求項2または請求項3のポリカーボネート/ポリエーテルブロック共重合体
【請求項7】
繰り返し単位式(I)と式(II)からなる共重合ポリカーボネートジオールとポリオキシテトラメチレングリコールをエステル交換反応させることにより請求項2のポリカーボネート/ポリエーテルブロック共重合体を製造する方法。
【請求項8】
繰り返し単位式(I)と式(II)からなる共重合ポリカーボネートジオールと、オキシテトラメチレン基およびオキシ2,2-ジメチルトリメチレン基からなる共重合ポリオキシアルキレングリコールをエステル交換反応させることにより請求項3のポリカーボネート/ポリエーテルブロック共重合体を製造する方法。
【請求項9】
ポリオキシテトラメチレングリコールが、数平均重合度2以上14以下である請求項7の方法。
【請求項10】
ポリオキシアルキレングリコールが、数平均重合度2以上14以下である請求項8の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−124485(P2006−124485A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−313301(P2004−313301)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】