説明

末端不飽和グリシドール系マクロモノマー、これから得られるポリマー、調製及び使用

本発明はマクロモノマーの製造方法に関し、出発化合物H2C=CR1−C64-s(R4s−R3−OH又はH2C=CR2−CO−NH−R3−OH(式中R1及びR2はそれぞれ、H又は1〜4個の炭素原子を有する直鎖の若しくは分岐したアルキル基であり、R3は1つ以上のヒドロキシ基を含有し得る1〜20個の炭素原子を有する直鎖の又は分岐したアルキレン、アラルキレン基であり、R4基は独立に1〜20個の炭素原子を有する直鎖の又は分岐したアルキル、アラルキル、アルコキシ又はアラルコキシ基であり、sは0〜4である)を、部分的な脱プロトン化後にフリーラジカル重合阻害剤の存在下で少なくとも1つのヒドロキシ官能性オキシラン化合物をオキシラン環の開環を伴って反応させ、用いる物質量のモル比n(出発化合物):n(オキシラン化合物)が1:100〜1:1の範囲にある。本発明はさらに、この方法により得られるマクロモノマー、これから得られるポリマー及びコーティング剤、プラスチック及び化粧品中でのその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は末端不飽和グリシドール系マクロモノマー、これらの調製方法、これから得られることができるポリマー、並びにコーティング組成物、プラスチック及び化粧品における添加物としてのポリマーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
マクロモノマーは、少なくとも1つの官能性末端基を有し、これを介して重合反応が起こり得るオリゴマー又はポリマーである。従ってマクロモノマーは、反応して制御された構造を有するホモポリマー又はコポリマーを形成することができる高分子モノマーである。例えば、エチレン性不飽和末端基を有するマクロモノマーは、フリーラジカル重合により、制御された側鎖長を有するグラフトコポリマー又は櫛型ポリマーに転化し得る。
【0003】
非特許文献1は、末端スチレン基を有する線状グリシドール系マクロモノマーの調製を記載している。末端スチレン基は停止反応により導入される。ここでの不利点は、中間体の完全な官能基化を達成することを可能にするために、過剰量の停止剤(p−クロロメチルスチレン)の使用を必要とすることである。当モル量のみの停止剤を用いた場合には、官能基化は定量的でない。過剰量の停止剤を用いる必要性と進行する二次的反応のため、最終生成物を精製する必要がある。
特許文献1は、グリシジルエステルと脂肪族アルコールの反応と得られる付加体の続く加水分解による、1級水酸基を有する線状ポリグリセロールモノアルキルエーテルの調製を記載する。この線状ポリグリセロールモノアルキルエーテルは末端不飽和基を有さない。
特許文献2は、保護基を有する特定のグリシドール誘導体と有機アルコールの付加重合によるポリグリセロールの調製を記載する。この保護基はその後に除かれる。
特許文献3は、グリシドールのアニオン性開環重合による、種々のアルコールのポリグリセロールモノエーテルの調製を記載する。この方法は、食料品又は化粧品における使用に適しているとされるポリグリセロールモノエーテルを与えると述べられている。
特許文献4は、活性水素原子を有する出発分子(starter molecule)の存在下でのグリシドールのアニオン性開環重合による高度に分岐したポリオールの調製を記載する。出発分子はアリル基または10−ウンデセニル基を含有し得る。
特許文献5はエマルション重合のための乳化剤の調製を記載する。乳化剤を合成するために、グリシジル(メタ)アクリラートのオキシラン環をアルコールによりまず開環する。生じる付加体の2級水酸基をグリシドールの重合に続いて用いる。得られた乳化剤は、分岐した置換アルキルエーテル基により必ず結合する(メタ)アクリラート系頭部基とポリグリシドール基とを有する。
【0004】
W.F. Hoskyns (Research Disclosure 174, 32-33 (1978)) は、グリシドールと種々のヒドロキシ官能性不飽和化合物とのポリマー付加体を記載している。ヒドロキシ官能性不飽和化合物として、(メタ)アクリル酸エステル、例えば2−ヒドロキシエチルメタクリラートを用いることが好ましい。ポリマー付加体を調製するために、グリシドールを反応容器に入れ、触媒(例えば水酸化カリウム)、フリーラジカル重合の阻害剤及び2−ヒドロキシエチルメタクリラートの混合物と150℃の温度で混合する。グリシドールの自家重合によるホモポリグリシドールの形成のような望ましくない二次的反応や、エステル基の酸素上での望ましくない二次的反応(“バックバイティング(back-biting)”,エステル交換)が、不飽和化合物としてのエステル、高い反応温度及び記載の反応順序により促進される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09−188755号公報
【特許文献2】特開平09−235246号公報
【特許文献3】欧州特許出願公開第1785410号公報
【特許文献4】米国特許出願公開第2003/0120022号明細書
【特許文献5】特開2007−154075号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Dworak et al. (Polymer Bulletin 40, 461-468 (1998))
【非特許文献2】W.F. Hoskyns (Research Disclosure 174, 32-33 (1978))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
1分子当たり少なくとも1つのフリーラジカル重合可能な頭部基(head group)を有し、非常に低レベルの副生成物を含有し、並びにコーティング組成物、プラスチック及び/又は化粧品の添加物として用いることができる新規ホモポリマー及び/又はコポリマーを、適切な場合には他のコモノマーとのフリーラジカル単独重合又は共重合により得ることを可能にするグリシドール系マクロモノマー並びにその調製方法を提供することが本発明の目的である。この調製方法は、非常に均一で十分に制御された構造を有するこれらのグリシドール系マクロモノマーを与えるべきである。二次的反応及び副生成物の割合は非常に低くなるだろう。具体的には、実質的に全く「バックバイティング」が起こらない。
【0008】
グリシドール系マクロモノマー、及び適切な場合には他のコモノマーから得ることができ、コーティング組成物、プラスチック及び化粧品の添加物としての使用に適する新規ホモポリマー及び/又はコポリマー並びにその調製方法を提供することが本発明の他の目的である。
【0009】
コーティング組成物若しくはコーティング、プラスチック及び/又は化粧品の性質を、添加物としてのホモポリマー及び/又はコポリマーの使用によって目的に従って変えることが可能である。
例えば、均展材に適し、コーティング組成物若しくはコーティング又はプラスチックの例えば均展性、光沢及び/又はオパール色を改善することができる添加物を得ることができる。
例えば、コーティング組成物若しくはコーティング及び/又はプラスチックにノンスティック(nonstick)表面を付与する添加物を得ることができ、例えば防汚、撥水及び/又は撥油面を得ることができる。
例えば、湿潤剤及び分散剤に適し、例えば顔料及び/又は充填剤含有コーティング組成物の粘度を下げ、及び/又はコーティング組成物、プラスチック若しくは化粧品中の顔料及び/又は充填剤の分散を安定化させることができる添加物を得ることができる。
【0010】
例えば、コーティング組成物若しくはコーティング及び/又はプラスチックに改善されたぬれ性を付与する添加物を得ることができ、例えばより容易に印刷可能な面が得られ及び/又はコーティングの付着性が改善される。多くのコーティング、ポリマー成形組成物及び熱可塑性プラスチックは低い表面エネルギーを有する無極性表面を有する。従って、例えば水性コーティング組成物、印刷用インク、水性ポリマー分散体、接着剤又は結合剤によりこのような表面をぬらすこと(上塗り適合性)は課題である。極性の(例えば水性の)コーティング組成物によるこのような基材表面のぬれ性を改善するために、基材の表面エネルギーを添加物の使用により高める必要があり、そのため基材表面をより極性にする。この理由のため、ぬれ性を改善する、つまり例えば種々のコーティング、ポリマー成形組成物及び熱可塑性プラスチックの印刷性又は被覆性を改善するための、適切な添加物を開発する必要がある。
【0011】
さらに、これらの改善した性質をもたらすために加える添加物は、コーティング組成物若しくはコーティング、プラスチック又は化粧品の他の性質に殆ど悪影響を有さない必要がある。また、加える添加物は比較的少量でその効果を示すべきである。コーティング及びプラスチック(ポリマー成形組成物及び熱可塑性プラスチック)は、何年もの長期間に亘って屋外での風化に晒された際でさえも、改善された表面性質を実質的に保持する必要がある。このことは、何回もの洗浄サイクルにわたって、効果、例えばノンスティック及び/又は防汚効果の持続をも含む。
【0012】
さらに、このような改善された性質を有するコーティング組成物又はコーティング及びプラスチック(すなわち、ポリマー成形組成物及び熱可塑性プラスチック)及び化粧品を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
独立請求項の対象によれば上記目的を驚くべきことに達成する。本発明の詳細な実施形態を従属請求項に記載する。
(A)出発化合物U−OH
(ここでU−O−は
a)一般式(I)の基
2C=CR1−C64-s(R4s−R3−O− (I)、及び
b)一般式(II)の基
2C=CR2−CO−NH−R3−O− (II)
(式中、R1及びR2はそれぞれH又は1〜4個の炭素原子を有する直鎖の又は分岐したアルキル基であり、
3は1〜20個の炭素原子を有する直鎖の又は分岐したアルキレン、アラルキレン(aralkylene)基であり、1つ以上のヒドロキシ基を有していてもよく、
並びにR4基はそれぞれ互いに独立して、1〜20個の炭素原子を有する直鎖の又は分岐したアルキル、アラルキル、アルコキシ又はアラルコキシ基であり、sは0〜4である)
からなる群から選択されるエチレン性不飽和頭部基である)
を、アルカリ金属水酸化物又はアルコキシドの添加により、水又はアルコールの生成を伴って部分的に脱プロトン化して、出発化合物のプロトン化(U−OH)及び脱プロトン化(U−O(-))分子の混合物を生じ、
(B)次に、生じた水又は生じたアルコールを反応混合物から実質的に除去し、
(C)続いて、出発化合物のプロトン化(U−OH)及び脱プロトン化(U−O(-))分子の混合物を式(III)の少なくとも1種のオキシラン化合物
【0014】
【化1】

【0015】
(式中、Raは水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル又はtert−ブチルであり、Rbは1〜6個の炭素原子及び保護基により任意にエーテル化され得る少なくとも1つのヒドロキシ基を有する直鎖の又は分岐したアルキル基である)、及び
適切な場合には、フリーラジカル重合阻害剤の存在下で少なくとも1つのアルキレンオキシドと、オキシラン環の開環を伴って反応させる(ここで、用いる量の分子比n(出発材料):n(オキシラン化合物)が1:100〜1:1の範囲にある)
マクロモノマーの調製方法を提供する。
【0016】
本発明は、上記の方法により得ることができるマクロモノマーをさらに提供する。
本発明は、1種以上の上記マクロモノマーと、適切な場合には1種以上のさらなるフリーラジカル重合可能なコモノマーとのフリーラジカル重合により得ることができるポリマーをさらに提供する。
本発明は、少なくとも1種の上記マクロモノマー及び適切な場合には1種以上のさらなるフリーラジカル重合可能なコモノマーをフリーラジカル重合する上記ポリマーの調製方法をさらに提供する。
本発明は、上記ポリマーの、コーティング組成物、プラスチック又は化粧品における添加物としての使用をさらに提供する。
本発明は、少なくとも1種の上記ポリマーを含有するコーティング組成物、プラスチック及び化粧品をさらに提供する。
【発明の効果】
【0017】
出発化合物U−OHは、ヒドロキシ基−OHに加えて、さらに容易に加水分解する基、特にエステル酸素を含まないことが本発明には重要である。このことは、アニオン性開環重合中、これらの基で他に起こり得る望ましくない二次反応(バックバイティング)をほぼ回避することができるという利点を有する。特に、出発化合物U−OHが、N−(2−ヒドロキシエチル)メタクリラート(HEMA)のような(メタ)アクリル酸エステルであることが重要である。このことは、(ヒドロキシル基における所望の重合反応に加えて)、“バックバイティング”、すなわち難溶性で使用に適さない副生成物(例えば、ホモポリグリシドール(homopolyglycidol)及び1つを超えるエチレン性不飽和基を含有する生成物)をもたらし得るエステル酸素上での望ましくない反応を回避する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
マクロモノマー及びその調製
出発化合物U−OH
出発化合物U−OHは、以下
a)一般式(I)の基
2C=CR1−C64-s(R4s−R3−O− (I)、及び
b)一般式(II)の基
2C=CR2−CO−NH−R3−O− (II)
(式中、R1及びR2はそれぞれ、H又は1〜4個の炭素原子を有する直鎖の又は分岐したアルキル基であって、好ましくはH又はCH3であり、並びに
3は1〜20個の炭素原子を有する直鎖の又は分岐したアルキレン基、アラルキレン基であり、1つ以上のヒドロキシ基を有していてもよく、並びに
4基はそれぞれ互いに独立して、1〜20個の炭素原子を有する直鎖の又は分岐したアルキル基、アラルキル基、アルコキシ基又はアラルコキシ基であり、及びsは0〜4である)
から成る群から選択されるエチレン性不飽和頭部基U−O−を有する。
【0019】
一般式(I)の基において、フェニル環(−C64-s(R4s−)上の置換基(H2C=CR1−)及び(−R3−O−)は、互いに対してオルト、メタ又はパラ位にあってよい。加えて、フェニル環(−C64-s(R4s−)はさらなる置換基R4を有さないか(s=0)、1〜4個有する(s=1〜4)。
【0020】
従って、適切な出発化合物は、
a)式 H2C=CR1−C64-s(R4s−R3−OHの置換された又は無置換のα−ビニルフェニルアルキル−ω−ヒドロキシ化合物、例えばビニルベンジルアルコール(H2C=CH−C64−CH2−OH)、又は
b)式 H2C=CR2−CO−NH−R3−OHの置換された又は無置換のN−(ヒドロキシアルキル)アクリルアミド、例えばN−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリアミド(H2C=C(CH3)−CO−NH−CH2−CH(CH3)−OH、N−[1−(ヒドロキシメチル)プロピル]メタクリルアミド(H2C=C(CH3)−CO−NH−CH(CH2−CH3)−CH2−OH)、又はN−(2,3−ジヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(H2C=C(CH3)−CO−NH−CH2−CH(OH)−CH2−OH)
である。
置換基R1、R2、R3及びR4は上記した通りである。
エチレン性不飽和頭部基U−O−は、好ましくは一般式(II)の基である
2C=CR2−CO−NH−R3−O− (II)
(式中、R2=H又はCH3、及び
3=エチル又はプロピル)。
【0021】
この場合に、出発化合物U−OHは、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド及びヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミドから成る群から選択される化合物である。“(メタ)アクリル”なる表記は、“アクリル”及び“メタクリル”の両方を包含する。
エチレン性不飽和頭部基は、特に好ましくは一般式(II)の基である
2C=CR2−CO−NH−R3−O−
(式中、R2はCH3であり、及び
3=エチルである)。
この場合に、出発化合物U−OHは、化合物N−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミドである。
【0022】
出発化合物U−OHは、ヒドロキシ基−OHに加えて、さらに容易に加水分解する基、特にエステル酸素を含まないことが本発明には重要である。このことは、アニオン性開環重合中、これらの基で他に起こり得る望ましくない二次反応(バックバイティング)をほぼ回避することができるという利点を有する。特に、出発化合物U−OHが、N−(2−ヒドロキシエチル)メタクリラート(HEMA)のような(メタ)アクリル酸エステルであることが重要である。このことは、(ヒドロキシル基における所望の重合反応に加えて)、“バックバイティング”、すなわち難溶性で使用に適さない副生成物(例えば、ホモポリグリシドール(homopolyglycidol)及び1つを超えるエチレン性不飽和基を含有する生成物)をもたらし得るエステル酸素上での望ましくない反応を回避する。
【0023】
また、このような副生成物の存在は、とりわけ得られるマクロモノマーの続く共重合において以下の問題:存在するあらゆるホモポリグリシドールを同様に共重合にて反応させると、添加物として不適合性のような望ましくない性質を有し、及び表面不良をもたらし得るホモポリグリシドール含有共重合生成物をもたらし得るため、望ましくない。他方で、存在し得る1つを超える不飽和基を含有するいずれもの副生成物は、コポリマーの望ましくない架橋をもたらし得る。
【0024】
ヒドロキシ官能性オキシラン化合物
オキシラン化合物は、式(III)に該当する
【0025】
【化2】

【0026】
(式中、Raは水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル又はtert−ブチルであり、Rbは1〜6個の炭素原子及び保護基により任意にエーテル化され得る少なくとも1つのヒドロキシ基を有する直鎖の又は分岐したアルキル基である)。
aは好ましくは水素である。
【0027】
アルキル基Rbは好ましくは、正確に1つのヒドロキシ基を有する。アルキル基Rbは好ましくは、末端ヒドロキシ基を有する。アルキル基Rbは特に好ましくは、正確に1つの末端ヒドロキシ基を有する。
【0028】
アルキル基Rbは直鎖であっても、分岐していてもよい。Rbは好ましくは、1〜3個の炭素原子、好ましくは1個又は2個の炭素原子を有するアルキル基である。
アルキル基Rbは非常に特に好ましくは、ヒドロキシメチル基である。
例えば、グリシドール(1,2−エポキシ−3−ヒドロキシプロパン)をオキシラン化合物として用いることができる。
アルキル基Rbのヒドロキシ基は遊離形態にあってもよく、又は保護基によりエーテル化されていてもよい。
【0029】
分岐したオキシラン系基を有するマクロモノマーを得ようとする場合には、少なくとも1つの遊離ヒドロキシ基を有する少なくとも1種のオキシラン化合物を用いる。塩基性触媒の存在下でオキシラン環を開いて、まず2級ヒドロキシ基を生じ、そのプロトンはオキシラン化合物の遊離ヒドロキシ基のものと迅速に交換される。生じる分子のさらなるヒドロキシ基をも包む迅速なプロトン交換は、全てのヒドロキシ基が重合反応において活性であり、鎖延長点として使用できることを確実にするため、分岐した生成物が得られる。用いる全てのオキシラン化合物に基づいて、遊離ヒドロキシ基を有するオキシラン化合物の割合が比較的高い場合には、比較的高度に分岐した生成物が一般的に得られる。
【0030】
他方で、線状のオキシラン系基を有するマクロモノマーを得ようとする場合には、アニオン性開環重合前に、オキシラン化合物のヒドロキシ基にまず適切な保護基を与える。適切な保護基はアニオン性開環重合下で安定であって、重合が完了した後に例えば加水分解により容易に再び除去できて元のヒドロキシル基を再び与えるようなものである。好ましい保護基の例はエトキシエチル基、O−tert−ブチル基及びO−ベンジル基のようなアセタール基である。ブレンステッド酸(例えばHCl)又はルイス酸(例えばAlCl3)を用いて容易に除去できるため、アセタール基は特に好ましい。例えば、グリシドール(2,3−エポキシ−1−プロパノール)をまずエチルビニルエーテルと反応させてエトキシエチルグリシジルエーテル(EEGE)を生成することができる[Fitton A, Hill J, Jane D, Millar R. Synthesis 1987, 1140]。オキシラン化合物のアルキル基Rbのヒドロキシル基上の保護基の存在の結果、1つのみの活性ヒドロキシル基が、アニオン性開環重合の間常に成長高分子鎖における鎖延長点として利用でき、従って線状の生成物が得られる。重合完了後に保護基を続く反応段階で除去して、オキシランモノマーの元のヒドロキシル基を再び与えることができる。
【0031】
アルキレンオキシド
式(III)のオキシラン化合物のアニオン性開環重合を1種以上のアルキレンオキシドの存在下で行うことができる。
本発明の目的のため、アルキレンオキシドは式(IV)及び式(V)(グリシジルエーテル)のアルキレンオキシドである:
【0032】
【化3】

【0033】
ここで、RC、Rd及びRe基は、1〜20個の炭素原子を有する直鎖の又は分岐したアルキル、アリール及びアラルキルから成る群から独立して選択される。加えて、Rc及びRdは水素であってもよい。
【0034】
式(IV)の適切なアルキレンオキシドの例は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、ペンチレンオキシド(1,2−エポキシペンタン)及びヘキシレンオキシド(1,2−エポキシヘキサン)、並びにスチレンオキシドである。式(V)の適切なグリシジルエーテルの例は、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、n−ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、ラウリルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル及びフェニルグリシジルエーテルである。エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドが好ましい。式(III)の上記のオキシラン化合物とは対照的に、式(IV)及び(V)のアルキレンオキシドはヒドロキシ基を有さない。マクロモノマーの合成を必要な場合、例えばエチレンオキシドのようなガス状のアルキレンオキシドを用いる場合には、過圧下で行うことができる。
【0035】
本発明の好ましい実施形態において、アルキレンオキシドを用いない。しかしながら、1種以上のアルキレンオキシドの使用は、発泡、粘度及び結晶化度のような後の性質に影響を与えうる。少なくとも1種のアルキレンオキシドを用いる場合には、用いる量のモル比[n(オキシラン化合物)+n(アルキレンオキシト゛)]:n(出発化合物)は、100:1〜2:1、より好ましくは50:1〜3:1、特に好ましくは20:1〜3:1の範囲にある。
式(III)、(IV)及び(V)のオキシラン化合物は、ランダム重合、ブロック重合又は段階的に重合(polymerized with a gradient)し得る。
【0036】
アニオン性重合によるマクロモノマーの調製
(A)出発化合物U−OH
(ここで、U−O−は、
a)一般式(I)の基
2C=CR1−C64-s(R4s−R3−O− (I)、及び
b)一般式(II)の基
2C=CR2−CO−NH−R3−O− (II)
(式中、R1及びR2はそれぞれ、H又は1〜4個の炭素原子を有する直鎖の又は分岐したアルキル基であり、
3は、1〜20個の炭素原子を有する直鎖の又は分岐したアルキレン基、アラルキレン基であって、1つ以上のヒドロキシ基を有していてよく、並びに
4は基それぞれ互いに独立して、1〜20個の炭素原子を有する直鎖の又は分岐したアルキル基、アラルキル基、アルコキシ基またはアラルコキシ基であり、sは0〜4である)
から成る群から選択されるエチレン性不飽和頭部基である)
をアルカリ金属水酸化物又はアルコキシドの添加によって水又はアルコールの生成を伴いながら部分的に脱プロトン化して出発化合物のプロトン化(U−OH)及び脱プロトン化(U−(O)(-))分子の混合物を生じた後、
(B)反応混合物から生じた水と生じたアルコールとを実質的に除去し、続いて
(C)出発化合物のプロトン化(U−OH)及び脱プロトン化(U−(O)(-))分子の混合物を、式(III)の少なくとも1種のオキシラン化合物
【0037】
【化4】

【0038】
(式中、Raは水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル又はtert−ブチルであり、及び
bは、1〜6個の炭素原子、及び保護基により任意にエーテル化され得る少なくとも1つのヒドロキシ基を有する直鎖の又は分岐したアルキル基である)
及び適切な場合には少なくとも1種のアルキレンオキシドと共に、フリーラジカル重合阻害剤の存在下で、オキシラン環の開環を伴って反応させることによりマクロモノマーを調製することができ、ここで用いる量のモル比n(出発化合物):n(オキシラン化合物)は1:100〜1:1の範囲にある。
【0039】
アルカリ金属水酸化物又はアルコキシドとして、出発化合物の−OH基の部分的又は完全な脱プロトン化に影響を与えうる塩基性化合物を用いることができる。適切な化合物の例は、アルカリ金属水酸化物、例えば水酸化カリウム、又はカリウムアルカノラート(potassium alkanolate)のようなアルカリ金属アルコキシド、例えばカリウムtert−ブトキシドである。この化合物をまず出発化合物に加えて、出発化合物のOH基の部分的な若しくは完全な脱プロトン化により生じる水又は生じるアルコールを、蒸留により反応混合物から実質的に除去する。出発化合物のOH基のうち好ましくは0.1〜80%、特に好ましくは2〜20%がアルカリ金属水酸化物又はアルカリ金属アルコキシドの添加により脱プロトン化されることが好ましく、従って出発化合物の0.1〜80%の脱プロトン化(U−O(-))分子及び20〜99.9%のプロトン化(U−OH)分子の混合物、特に好ましくは、出発化合物の2〜20%の脱プロトン化(U−O(-))分子及び20〜99.9%のプロトン化(U−OH)分子の混合物が存在する。本発明の目的では、「実質的に除去される」とは、生じた水又はアルコールの大部分が除去されて、ほんの少しの残量、すなわち反応混合物に基づいて0.1重量%未満の水又はアルコールが反応混合物中に残存することを意味する。
【0040】
出発化合物のフリーラジカル重合可能な頭部基Uの早すぎる重合を防ぐために、アニオン性開環重合を、少なくとも1種のフリーラジカル重合阻害剤の存在下で行う。上記フリーラジカル重合阻害剤は、アニオン性重合中に生じる可能性があるフリーラジカルを除去することができ、従って出発化合物中の及び得られるマクロモノマー中のフリーラジカル重合可能なエチレン性不飽和頭部基Uの安定性は、反応中及びその後の貯蔵の間にわたって確保される。フリーラジカル重合の適切な阻害剤は、例えばヒドロキノン又はヒドロキノンモノメチルエーテルである。
【0041】
例えば、マクロモノマーの調製方法を以下の通りに行うことができる。不活性ガス下、例えば窒素流又はアルゴン流の下で反応を行う。出発化合物U−OHを適切な塩基(例えばアルカリ金属水酸化物又はアルカリ金属アルコキシド)を用いて部分的に脱プロトン化する。例えば、出発化合物のOH基の0.1〜80%のOH基、好ましくは2〜20%が脱プロトン化される。生じる水又は生じるアルコールを蒸留により除去する。例えば、出発化合物の0.1〜80%の脱プロトン化(U−O(-))分子及び20〜99.9%のプロトン化(U−OH)分子の混合物、好ましくは出発化合物の2〜20%の脱プロトン化(U−O(-))分子及び20〜99.9%のプロトン化(U−OH)分子の混合物が得られる。これを40℃〜120℃まで、好ましくは50℃〜100℃まで、特に好ましくは60℃〜90℃まで加熱した後、場合により保護基を備えたオキシラン化合物及び適切な場合にはアルキレンオキシドコモノマーをこの温度で加える。より制御された構造がゆっくりと添加する場合に得られるために、オキシラン化合物をゆっくりと添加することが好ましい。アニオン性開環重合はヒドロキシ基間のプロトンの迅速な交換により制御され、狭い分子量分布を有するより制御された生成物を与える。
【0042】
重合を1種以上のアルキレンオキシド(例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド)の存在下で行う場合には、既知の方法により行うことができる。当業者に知られる通常の方法の適切な反応条件及び過圧下での合成に適する器具についての記載を、例えばNikolaus Schonfeldt, "Grenzflaechenaktive Aethylenoxid-Addukte", Wissenschaftliche Verlagsgesellschaft mbH, Stuttgart (1984)及びそこに挙げられる参照に見出すことができる。
【0043】
反応が完了した後、生成物を酸の添加によって、又は酸性イオン交換樹脂を用いる処理によって中和することができ、中和生成物を除去することができる。保護基を有するオキシラン化合物を用いた場合は、これらを例えば酸加水分解によって同時に又は後で除去することができる。例えばアセタール保護基が存在する場合には、これらを、過剰の酸の添加又は酸性イオン交換樹脂を用いる処理により反応媒質を酸性にすることによって、加水分解により生成物から容易に除去することができ、同時に最終生成物を過剰の酸により中和するか、酸性イオン交換樹脂により捕捉することができる。
【0044】
アニオン性開環重合を1種以上の適切な溶媒の存在下で行うことができる。適切な溶媒とは、アニオン性開環重合に干渉しない、すなわち例えば重合の間に開環し得る不安定基又は環状基を有さず、及び例えば塩基性反応条件下でオキシラン化合物、出発化合物又は生じたマクロモノマーのヒドロキシル基と、又は他の方法で反応し得るいかなる基も含有しないものである。適切な溶媒は、例えば対応する脂肪族溶媒、脂環式溶媒及び芳香族溶媒並びにブロックポリアルキレンオキシド(blocked polyalkylene oxide)及びその混合物である。適切な溶媒は具体的には、例えばトルエン、キシレン、グリム(1,2−ジメトキシエタン)、ジグリム((2−メトキシエチル)エーテル)、ブチルジグリム(ジエチレングリコールジブチルエーテル)、及び200g/モルを超える分子量を有するポリエチレングリコールジメチルエーテルのようなポリグリムである。
【0045】
得られるマクロモノマーのヒドロキシル基は遊離形態にある、すなわち保護されていないか、保護基を完全に若しくは部分的に有するか、及び/又は官能基化され得る。このように、マクロモノマー及び/又はこれから得られうるポリマーの性質は、例えばコーティング系又は種々のプラスチック又は化粧品配合物との適合性に影響を与えることができる。例えば考えられる発泡、表面での吸着及び表面での生成物の配向に影響を与えることができる。
【0046】
得られるマクロモノマーのヒドロキシル基を例えば、ε−カプロラクトン又はδ−バレロラクトンのようなラクトンを用いてラクトン環を開環しながら、場合によりラクトンの重合を伴って修飾することができる。
【0047】
例えばヒドロキシル基のイソシアナートとの反応によってウレタン基を形成することによりさらなる側鎖を得ることができる。つまり、例えばポリアルキレンオキシド側鎖、例えばポリエチレン(EO)、ポリプロピレン(PO)及び/又は混合EO/PO鎖(EO/POモノマーのランダムな、ブロック状又は段階的な分布(gradated distribution)を有するもの)は、ヒドロキシル基のポリアルキレンオキシド及びTDI(トリレンジイソシアナート)のモノ付加体との反応によりグラフト化されてよい。
【0048】
マクロモノマーのヒドロキシル基を修飾するさらなる方法は、例えば、エポキシドとの反応、ウイリアムソンエーテル合成、ジアゾメタンを用いるメチル化、酸無水物を用いるアセチル化又は環状の酸無水物との反応、及びカルボキシメチル化である。原則として、続くフリーラジカル重合に対して又はエチレン性不飽和頭部基Uに悪影響を有さないあらゆる修飾が適している。
【0049】
ポリマー、その調製及び使用
1つ以上の上記のマクロモノマー、及び適切な場合には1つ以上のさらなるフリーラジカル重合可能なコモノマーのフリーラジカル重合によりポリマーを得ることができる。
ポリマーを調製するために、1種以上の異なる上記のマクロモノマーをフリーラジカルによる単独重合又は共重合することができる。マクロモノマーの中でも、上記の好ましい実施形態により得られるこれらのマクロモノマーを好ましくは、ポリマーの調製に用いる。
ポリマーはホモポリマーであってもコポリマーであってもよい。ポリマーは好ましくはコポリマーである。
【0050】
コモノマー
上記のマクロモノマーに加えて、これとは異なり、フリーラジカル重合可能である1種以上のコモノマーをフリーラジカル重合に用いることができる。少なくとも1種のこのようなコモノマーを使用することが好ましい。本発明の目的では、フリーラジカル重合可能なコモノマーは、少なくとも1つのフリーラジカル重合可能な基を有する化合物である。フリーラジカル重合可能な基は、この目的で通常の条件下でのフリーラジカルメカニズムにより重合することができる官能基であり、例えばエチレン性不飽和基である。このエチレン性不飽和基は、とりわけ用いるマクロモノマーがアクリル基、メタクリル基又はスチレン基を頭部基Uとして有する場合には、好ましくは置換又は無置換のアクリル基、メタクリル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、アクリルアミドアルキル基、メタクリルアミドアルキル基、スチリル基、α−メチルスチリル基、アリル基、ビニルベンジル基、ビニルエーテル基、ビニルエステル基及びビニルケトン基から成る群から選択される。
【0051】
適切なコモノマーの例は、1〜24個の炭素原子を有する直鎖の、分岐した又は脂環式アルコールのアルキルアクリラート及びアルキルメタクリラート、8〜18個の炭素原子を有するアラルキルアルコールのアラルキルアクリラート及びアラルキルメタクリラート、2〜36個の炭素原子を有する直鎖の、分岐した又は脂環式ジオールのヒドロキシアルキル(メタ)アクリラート、1〜22個の炭素原子を有する直鎖の、分岐した又は脂環式アミンのアルキル(メタ)アクリルアミド、2〜8個の炭素原子を有する直鎖の、分岐した又は環状アミノアルコールのアミノアルキル(メタ)アクリラート、アルコキシル化(メタ)アクリラート(例えば、ポリエチレングリコール(メタ)アクリラート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリラート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリラート、ポリエステル修飾(メタ)アクリラート(例えば、例としてDaicel, Japan から入手することができるカプロラクトン修飾(メタ)アクリラート)、(メタ)アクリロニトリル、2〜30個の炭素原子を有するビニルアルカノアート、アルケン及びアリールアルケン、スチレン及び置換スチレン、α−メチルスチレン及び置換α−メチルスチレン、アルキルビニルエーテル、ペルフルオロアルキル(メタ)アクリラート及び対応する部分的にフッ素化された(メタ)アクリラート、ペルフルオロアルキルブロックポリエーテル(メタ)アクリラート、ペルフルオロアルキルエチルチオカルボニルアミノエチル(メタ)アクリラート、ペルフルオロオレフィン、(メタ)アクリロキシアルキルシロキサン、(メタ)アクリロキシアルキルポリシロキサン、(メタ)アクリロキシポリエーテルアルキルポリシロキサン、n−ビニルカルバゾール、マレイン酸の、フマル酸の、イタコン酸の及びメサコン酸(メチルフマル酸)のフッ素化アルキルエステル及びフッ素を含まないアルキルエステル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド類、メタクリル酸、アクリル酸、ヒドロキシ−官能性アルキル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシ−官能性アルキルビニルエーテル、ビニルスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸ナトリウム、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、N−ビニルピロール、N−ビニル−2−ピロリドン、2−ビニルオキサゾリジン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、1−[2−(メタクリロキシ)エチル]−2−イミダゾリジノン、アミノアルキル(メタ)アクリラート、例えばN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリラート及びN,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリラート、1〜22個の炭素原子を有する直鎖の、分岐した又は脂環式アルキル基を有するN−アルキル−及びN,N−ジアルキル置換アクリルアミド、例えばN−(t−ブチル)アクリルアミド及びN,N−ジメチルアクリルアミド;イオン性モノマー、アリルアルコール、アルコキシ化アリルアルコール誘導体(例えば、エトキシ化アリルアルコール、プロポキシ化アリルアルコール、及びある割合のエチレンオキシドとプロピレンオキシドを含有する混合アルコキシ化アリルアルコール)、並びに(例えばカプロラクトンを用いることにより)ポリエステル修飾したアリルアルコール系誘導体である。
【0052】
ポリジメチルシロキサンモノ(メタ)アクリラート、例として、線状(メタ)アクリロキシアルキルポリジメチルシロキサン(例えば、α−ブチルジメチルシロキシ−ω−(3−メタクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサン又はα−ブチルジメチルシロキシ−ω−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシプロピル)ポリジメチルシロキサン)、分岐した(メタ)アクリロキシアルキルポリジメチルシロキサン(例としてメタクリロキシプロピル−末端の分岐したポリジメチルシロキサン、例えば(メタクリロキシプロピル)メチルシロキサン−ポリジメチルシロキサンコポリマー又はT型構造を有するメタクリロキシプロピルポリジメチルシロキサン)、(メタ)アクリルポリエーテルアルキルポリジメチルシロキサン(例えば、α−ブチルジメチルシロキシ−ω−(3−メタクリロキシ(ポリエチレンオキシド)プロピル)ポリジメチルシロキサン、又はポリジメチルシロキサンモノアルケンのようなコモノマーを用いることが好ましく、ポリジメチルシロキサンモノ(メタ)アクリラートが特に好ましい。これは、添加物として用いることができ、コーティング組成物及びプラスチックの表面張力を低下させるか、又は長期の防指紋性効果及び防汚性を有する傷防止表面を得るための優れた効果をコポリマーに与える。
【0053】
フッ素化コモノマーを用いることが好ましい。これは、コーティング組成物及びプラスチックの表面張力を低下させる又は防汚性表面を得るために、添加物として、均展材として特に良好に用いることができるコポリマーを与える。
【0054】
アルカノール、例えばC1〜C14−モノヒドロキシアルカンとの(メタ)アクリル酸のエステルをコモノマーとして用いることが好ましい。これは、添加物として、コーティング組成物若しくはコーティング又はプラスチックの均展性、光沢及び/又はオパール色を改善するのに非常に良好に用いることができるコポリマーを与える。例えば、n−ブチルアクリラート、i−ブチルアクリラート、t−ブチルアクリラート、メチルアクリラート、エチルアクリラート、プロピルアクリラート、ヘキシルアクリラート、2−エチルヘキシルアクリラート、シクロヘキシルアクリラート、ラウリルアクリラート、テトラデシルアクリラート、イソボルニルアクリラート、n−ブチルメタクリラート、i-ブチルメタクリラート、t−ブチルメタクリラート、メチルメタクリラート、エチルメタクリラート、プロピルメタクリラート、ヘキシルメタクリラート、2−エチルヘキシルメタクリラート、シクロヘキシルメタクリラート、ラウリルメタクリラート、テトラデシルメタクリラート、及び/又はイソボルニルメタクリラートを用いることができる。さらに好ましいモノマーは、ヒドロキシエチルアクリラート、ヒドロキシブチルアクリラート、ヒドロキシエチルメタクリラート、ヒドロキシブチルメタクリラート、2−メトキシエチルアクリラート、2−メトキシエチルアクリラート、スチレン、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、メタクリル酸及びアクリル酸である。
【0055】
湿潤剤及び分散剤、結合剤及び乳化剤の調製のため、以下のコモノマーが好ましい:無水マレイン酸、ポリエチレングリコールモノメタクリラート、ポリプロピレングリコールモノメタクリラート、N,N‘−ジメチルアミノエチルメタクリラート、N,N’−ジメチルアミノエチルアクリラート、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、ビニルイミダゾール。
上記の好ましいコモノマーの混合物、及びこれらのコモノマーと他のコモノマーの混合物の使用も好ましい。
(メタ)アクリラートとの表記は、アクリラートとメタクリラートの双方を包含する。
【0056】
イオン性基は、対応するイオン性のエチレン性不飽和モノマーとしてポリマーに導入することができ、又はポリマー類似反応、例えば塩形成又は第三級アミノ化合物の四級化により後に生じうる。
従って、例えばポリマーにおける酸官能基、例としてカルボン酸及びリン酸エステルを塩基と反応させることができる。無水マレイン酸のような酸無水物から出発して、まず水による加水分解により、又は一価アルコール若しくはポリエーテルとのモノエステル若しくは部分エステルの生成によりカルボン酸を生成し、続いてこれを塩基と反応させることもできる。
【0057】
ポリマーにおけるオキシラン構造をo−リン酸のような求核試薬と反応させた後、塩基を用いて塩形成してイオン性基を生ずることができる。
ポリマーにおけるヒドロキシ官能基をポリリン酸と反応させてリン酸エステルを生じた後に、塩基を用いて塩形成してイオン性基を生成することができる。
【0058】
適切な塩基は、例えば、例としてジメチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−(ジメチルアミノ)プロパン−1−オール、トリエチルアミン、ブチルアミン及びジブチルアミンのようなアミン、元素周期表の第1〜第3主族の金属の水酸化物、酸化物及び炭酸水素塩、例として水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アルミニウム及び炭酸水素ナトリウムである。
【0059】
US 6111054 に記載されるように、カルボン酸又はリン酸及びそのエステルを用いて、ポリマーに結合したアミンを塩にすることも可能である。
さらにアミンを、ハロゲン化アルキル例えば塩化ベンジルとの、又はオキシランとカルボン酸の組み合わせとのアルキル化反応において第四級アンモニウム塩に転化することもできる。
第四級アミンを、酸素、過カルボン酸のようなペルオキソ化合物及び過酸化水素を用いてアミンオキシドに転化し、これを塩酸のような酸によって塩にさらに転化することもできる。
【0060】
イオン性のエチレン性不飽和モノマーの例は以下のリストから選ぶことができ、ここで(メタ)アクリラートという表記はアクリラートとメタクリラートの双方を含む:アクリル酸、メタクリル酸又はマレイン酸の塩;第四級アミノアルキル(メタ)アクリラート、例えば2−トリメチルアンモニウムエチルメタクリラートクロリド及び2−ベンジルジメチルアンモニウムエチル(メタ)アクリラートクロリド;リン酸を含むモノマーの塩、例えばナトリウムトリプロピレングリコールメタクリラートホスファート。
【0061】
自己架橋ポリマーを、例えばエポキシ官能性コモノマー、例としてグリシジルアクリラート及びグリシジルメタクリラートを用いて、又はシラン官能性コモノマーを用いて制御しながら調製することができる。
ポリマーはホモポリマーであるか、コポリマーであり得る。ポリマーは好ましくはコポリマーである。
【0062】
1種以上のコモノマーをグリシドール系マクロモノマーのフリーラジカル重合にて用いる場合にも、生じるコポリマー中のグリシドール系マクロモノマー単位の割合は、いずれの場合も全体のコポリマーに基づいて、マクロモノマー単位の好ましくは1〜60モル%、好ましくは2〜30モル%、非常に特に好ましくは2〜15モル%である。
【0063】
ポリマーの調製(フリーラジカル重合)
フリーラジカル重合によるポリマーの調製を、有機溶媒中で又は塊状で、過酸化物又はアゾ化合物のようなフリーラジカル開始剤の存在下で、当業者に知られる方法で行うことができる。適する溶媒は、具体的には、酢酸エチル、酢酸n−ブチル又は1−メトキシ−2−プロピルアセタートのようなエステル、トルエン又はキシレンのような芳香族溶媒、及びメチルイソブチルケトン又はメチルエチルケトンのようなケトン、並びにこれらの混合物である。また、溶媒の選択は、後に意図されるポリマーの用途によって決まる。ポリマーを100%濃度製品として用いる用途の場合、例えばUV硬化コーティング系又はポリマーにおいて溶媒を容易に除去できるため、低沸点溶媒を用いることが好ましい。
フリーラジカル重合を、約40℃〜180℃、好ましくは60℃〜150℃、特に好ましくは80℃〜130℃の温度で行う。
【0064】
フリーラジカル重合を、連続処理又はバッチ処理で行うことができる。
フリーラジカル重合を、例えば、バルク重合、溶液重合、沈殿重合、乳化重合、又は懸濁重合として行うことができる。
フリーラジカル重合を、制御しないフリーラジカル重合として、又は制御されたフリーラジカル重合として行うことができる。
【0065】
制御されるフリーラジカル重合法は、狭い分子量分布を有するより制御されたポリマー構造を得ることを可能にする。当業者に知られる制御されるフリーラジカル重合法、例えばATPR(原子移動ラジカル重合)、GTP(グループトランスファー重合)、NMP(ニトロキシドを介した重合)、RAFT(可逆的付加開裂連鎖移動プロセス)、又はMADIX(キサンタートの交換を介した高分子設計)を用いることができる。
【0066】
制御される重合法は、具体的には、特定の重合調節剤を用いる場合には「MADIX」(キサンタートの交換を介した高分子設計)及び「付加開裂連鎖移動」とも呼ばれる「可逆的付加開裂連鎖移動プロセス」(RAFT)を含む。RAFTは、例えば Polym. Int. 2000, 49, 993, Aust. J. Chem 2005, 58, 379, J. Polym. Sci. Part A: Polym. Chem. 2005, 43, 5347, Chem. Lett. 1993, 22, 1089, J. Polym. Sci., Part A 1989, 27, 1741 及び 1991, 29, 1053 及び 1993, 31, 1551 及び 1994, 32, 2745 及び 1996, 34, 95 及び 2003, 41, 645 及び 2004, 42, 597 及び 2004, 42, 6021、 また Macromol. Rapid Commun. 2003, 24, 197、並びに US 6 291 620, WO 98/01478, WO 98/58974 and WO 99/31144 に記載されている。
制御される重合のさらなる方法は、重合調整剤としてニトロキシル化合物(NMP)を用い、例えば Chem. Rev. 2001, 101, 3661 に開示されている。
【0067】
他の制御される重合法は、「グループトランスファー重合」であり、例えば O.W. Webster により “Group Transfer Polymerization", “Encyclopedia of Polymer Science and Engineering", Volume 7, H.F. Mark, N.M. Bikales, C.G. Overberger and G. Menges, Eds., Wiley Interscience, New York 1987, page 580 ff.,に、及び O.W. Webster, Adv. Polym. Sci. 2004, 167, 1-34 に記載されている。
例えば Macromol. Symp. 1996, 111, 63 に記載される、テトラフェニルエタンを用いる制御されるフリーラジカル重合は、制御される重合のさらなる例である。
重合調節剤として1,1−ジフェニルエタンを用いる制御されたフリーラジカル重合が、例えば Macromolecular Rapid Communications 2001, 22, 700 に記載されている。
【0068】
イニファーターを用いる制御されたフリーラジカル重合が、例えば Makromol. Chem. Rapid. Commun. 1982, 3, 127 に開示されている。
有機コバルト錯体を用いる制御されるフリーラジカル重合が、例えば、J. Am. Chem. Soc. 1994, 116, 7973, Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry, Vol. 38, 1753-1766 (2000),Chem. Rev. 2001, 101, 36113659 及び Macromolecules 2006, 39, 8219-8222 から知られている。
さらなる制御される重合技術は、ヨウ素化合物を用いる退化性連鎖移動(degenerative chain transfer)であり、例えば Macromolecules 2008, 41, 6261 or in US 7 034 085 に記載される。
チオケトンの存在下での制御されるフリーラジカル重合が、例えば Chem. Commun., 2006, 835-837 及び Macromol. Rapid Commun. 2007, 28, 746-753 に記載されている。
【0069】
ポリマーはホモポリマーであるかコポリマーであり得る。コポリマーはランダムコポリマー、ブロックコポリマー又はグラジエントコポリマーであってよく、2つ以上の親水性及び/又は疎水性モノマーから形成され得る。
【0070】
ポリマーの数平均分子量は1500〜200000、好ましくは5000〜75000の範囲にあり、特に好ましくは7500〜50000の範囲にある。ポリマーの数平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィーにより測定される。
【0071】
ポリマーの数平均分子量と分子量分布を左右するのに、適切な制御剤又は連鎖移動剤を用いる。例は、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン又は t−ドデシルメルカプタン及びα−メチルスチレンの二量体のようなチオールを含む。例えば、重合において、少量の二官能性モノマー(例えばヘキサンジオールジアクリラート)を用いて分子量を目標まで高めることができる。
【0072】
ポリマーを、重合類似反応を用いて続いて修飾することができる。例えば、無水マレイン酸との後の反応は、反応性二重結合と酸官能基を取り込むことを可能にする。この酸官能基はまた、例えばトリエタノールアミンを用いて塩に換えて水中での溶解性を向上させることができる。さらに、続くヒドロキシ−官能性(メタ)アクリラートとのエステル交換反応は、UV硬化及び電子線硬化のような放射線硬化方法においてさえも、表面コーティング系中に決まった状態で導入され得る生成物を得ることを可能にする。遊離OH基を、例えば無水酢酸との後の反応によりエステル化して、ポリマーを表面コーティング中での均展材として用いる場合に、考えられ得る中間層の付着問題を回避することもできる。
【0073】
ポリマーの使用
本発明はさらに、コーティング組成物、プラスチック又は化粧品における添加物としてのポリマーの使用を提供する。
本発明の目的では、プラスチックはポリマー成形組成物及び熱可塑性プラスチックである。
【0074】
本発明の目的では、化粧品は化粧品組成物である。化粧品組成物は、洗浄、ケア又は外観若しくは体臭に影響を与えるため又は香りの印象を与えるために、ヒトに又はヒトの口腔中に外部塗布することを意図される材料から構成される材料又は製剤である。皮膚の洗浄及びケアは審美的機能も満たし、また装飾用化粧品は一般的に、保護効果とケア効果を同時に有するために、ボディケア製品と装飾用化粧品との間に本質的な差はない。つまり、ボディケア製品と装飾用化粧品とは、化粧品組成物に含まれる。化粧品製剤は、義歯の洗浄及びケアのための材料及び製剤をも含む。他方で、疾病(disease)、疾患(malady)、肉体的損傷若しくは肉体的疾患を緩和する若しくは除く、又は体型に影響を与えることを主に意図される材料及び製剤は、化粧品組成物でない。
【0075】
ポリマーを、例えばコーティング組成物中で均展材(levelling agent)として用いて、例えば得られるコーティングの光学的性質を改善することができる。均展材としてのポリマーの使用は、例えば、コーティング組成物若しくはコーティング又はプラスチックの均展性、光沢及び/又はオパール色を改善することを可能にする。
【0076】
ポリマーを、例えば、コーティング、ポリマー成形組成物及び熱可塑性プラスチックの表面性質を変えるために用いることもできる。ポリマーの添加は、コーティング、ポリマー成形組成物及び熱可塑性プラスチックの表面エネルギーに影響を与えることができる。表面をより親水性に又はより疎水性にすることができるため、表面への付着を改善するか若しくは防ぎ、その結果として防汚性で掃除しやすい表面を得ることができる。一般に、表面エネルギーを高めると、より親水性の表面が得られて、これはより容易にぬらすこと及びより良い付着状態を提供することができる。他方で、表面エネルギーを下げるとより疎水性の表面を一般的に与えて、これはぬれにくく防汚性のノンスティック性質を有する。
【0077】
表面エネルギーを高めるのに適するポリマーを、例えば、比較的親水性のマクロモノマー(例えばエトキシ化マクロモノマーに基づくもの)の重合によって、又はかなり親水性のコモノマー(例えば、ポリエチレングリコール(メタ)アクリラートのような親水性アクリラート又は(メタ)アクリル酸)との共重合によって得ることができる。表面エネルギーを下げるのに適するポリマーを、例えば、比較的疎水性のマクロモノマー(例えばプロポキシ化マクロモノマーに基づくもの)の重合によって、又はかなり疎水性の若しくは特に適するコモノマー、例えばペルフルオロ基及び/又はポリシロキサン基を含有するコモノマーとの共重合によって得ることができる。
【0078】
防汚性のノンスティック表面を得るための添加物
コーティング組成物、ポリマー成形組成物及び熱可塑性プラスチックに添加することができて、その添加により防汚性の、掃除し易い、ノンスティック表面を得ることを可能にするコポリマーを、例えば少なくとも1種のマクロモノマーの重合、又は少なくとも1種のマクロモノマーと少なくとも1種のコモノマーとの共重合によって調製することができ、例えばコモノマーはペルフルオロ基及び/又はポリシロキサン基を含んでいる。
【0079】
適切なコモノマーを添加するコーティング組成物、ポリマー成形組成物及び熱可塑性プラスチックは優れたノンスティック性質及び防汚性質を有する。また、コポリマーはコーティング組成物若しくはコーティング、ポリマー成形組成物又は熱可塑性プラスチックの他の性質に殆ど悪影響を有さない。これらのコポリマーを比較的少量(添加量)でコーティング組成物、ポリマー成形組成物又は熱可塑性プラスチックに加えることができる。具体的には、コーティング組成物並びにポリマー成形組成物及び熱可塑性プラスチックのようなプラスチックにおいて、いずれの場合も全コーティング組成物又は全プラスチックに基づいて、0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜2重量%及び特に好ましくは0.1〜1重量%の比較的少量でポリマーを用いることもできる。
【0080】
元のコーティング組成物若しくはコーティング、ポリマー成形組成物及び熱可塑性プラスチックの物理的性質、例えば防食、光沢維持及び耐候性に関して、低濃度の添加物によって悪影響を及ぼすことはない。コポリマーを含むコーティング組成物又はコーティング、ポリマー成形組成物及び熱可塑性プラスチックは一般に、何年もの期間にわたって所望の性質を示し、また何回もの洗浄サイクルにわたってもこれらの性質を維持し続ける。
【0081】
さらに、ポリマー中のグリシドール系マクロモノマー単位のヒドロキシル基をバインダーの反応基と架橋させることができ、従って永続的効果を確実にすることが特に有利であることが見出された。
また、コーティング組成物、ポリマー成形組成物又は熱可塑性プラスチック中におけるポリマー及び添加物の使用は、ノンスティック性質又は防汚性質を有する表面を得ることを可能にする。
【0082】
ぬれ易い表面を得るための添加物
適切なコモノマーを加えたコーティング、ポリマー成形組成物及び熱可塑性プラスチックは高いぬれ性の表面を有する。ぬれ性を従来法を用いて、水に対しての表面の接触角を測定することにより決定することができる。親水性の表面では、接触角は<60°であるべきである。また、コポリマーは、コーティング組成物若しくはコーティング、ポリマー成形組成物又は熱可塑性プラスチックの他の性質に殆ど悪影響を有さない。これらのコポリマーをコーティング組成物、ポリマー成形組成物又は熱可塑性プラスチックに比較的少量(添加量)で、それぞれの場合において全コーティング組成物又は全プラスチックに基づいて、好ましくは0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜2重量%、特に好ましくは0.1〜1重量%の量で加えることができる。元のコーティング組成物又はコーティング、ポリマー成形組成物及び熱可塑性プラスチックの物理的性質、例えば耐食、光沢維持及び耐候性に関して、低濃度の添加物によっては悪影響を与えない。コポリマーを含むコーティング組成物又はコーティング、ポリマー成形組成物及び熱可塑性プラスチックは一般的に、何年もの期間にわたって所望の性質を示し続け、さらに何回もの洗浄サイクルにわたってこれらの性質を維持し続ける。
【0083】
さらに、ポリマーにおけるグリシドール系マクロモノマー単位のヒドロキシル基をバインダーの反応基と架橋させることができ、従って永続的効果を確実にすることが特に有利であることが見出された。
【0084】
湿潤剤及び分散剤
ポリマーを、従来技術で知られる分散用途の分野における分散剤として用いることもでき、ここで、ポリマーを分散剤として、従来技術により知られる分散剤の代わりに、又は組み合わせて用いることができる。つまり、例えばこれらを、表面コーティング、印刷インク、紙コーティング、革及び布着色料、ペースト、顔料コンセントレート、セラミックス又は化粧品製剤の製造又は処理において、特にこれらが顔料及び/又はフィラーのような固体を含有する場合に用いることができる。また、合成、半合成又は天然高分子材料、例えばポリビニルクロリド、飽和又は不飽和ポリエステル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリアクリラート、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィンに基づく鋳造組成物及び/又は成形組成物の製造又は処理において用いることもできる。例えば、コポリマーを鋳造組成物、PVCプラスチゾル、ゲルコート、ポリマーコンクリート、回路基板、工業用表面コーティング、木材及び家具の表面コーティング、車両塗装、船舶塗料、防食塗料、缶及びコイルコーティング、販売塗料、並びに建物塗料を製造するために用いることができ、ここでバインダー及び/又は溶媒、顔料、及び適切な場合にはフィラー、櫛形ポリマー及び従来の添加物が混合される。従来のバインダーの例は、ポリウレタン、硝酸セルロース、セルロースアセトブチラート、アルキド、メラミン、ポリエステル、クロロゴム、エポキシド及びアクリラートに基づく樹脂である。水系コーティングの例は、例えば車体のための、陰極又は陽極電気泳動塗料である。プラスター及び下塗り、ケイ酸塩塗料、エマルション塗料、水希釈アルキド系の水系塗料、アルキドエマルション、ハイブリッド系、2成分系、ポリウレタン分散剤及びアクリラート分散剤がさらなる例である。
【0085】
また、コポリマーは、固体のコンセントレート、例えば顔料コンセントレートを製造するための分散剤として特に適する。この目的で、コポリマーを例えば、有機溶媒、可塑剤及び/又は水等の分散媒中にまず入れて、攪拌しながら分散させようとする固体を加える。これらのコンセントレートはバインダー及び/又は他の助剤をさらに含んでいてもよい。しかしながら、とりわけ、コポリマーを用いて、適切なバインダーを含まない顔料コンセントレートを製造することができる。同様に、ポリマーを用いて、顔料のプレスケーキから流動性コンセントレートを製造することも可能である。ここで、有機溶媒、可塑剤及び/又は水をなお含み得るプレスケーキ中にコポリマーを混合して、このように得られた混合物を分散する。その後、種々の方法で製造された固体のコンセントレートを、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリラート樹脂、ポリウレタン樹脂又はエポキシ樹脂等の種々の基材に取り込むことができる。しかしながら、溶剤なしで顔料をコポリマー中に直接分散させることもでき、その場合には熱可塑性及び熱硬化性ポリマー配合物を着色するのに特に適する。
【0086】
また、コポリマーを、「サーマルインクジェット」及び「バブルジェットプロセス」のような「ノンインパクト」印刷方法用のインクの製造に有利に用いることができる。これらのインクは、例えば水性インク配合物、溶剤系インク配合物、UV用途用の溶剤を含まない若しくは低溶剤インク、またワックス様インクであり得る。
【0087】
液晶ディスプレイ、液晶VDU、色分解装置(colour resolution instrument)、センサー、プラズマスクリーン、SED(表面伝導型電子放出素子ディスプレイ)に基づくディスプレイの、及びMLCC(積層セラミックコンパウンド)のカラーフィルターの製造にコポリマーを有利に用いることもできる。ここで、カラーレジストとも呼ばれる液状のカラーフィルターコーティング組成物を種々の塗布法、例えばスピンコーティング、ドクターブレードコーティング、この2つの組み合わせにより、又は「ノンインパクト」印刷方法、例えばインクジェット法により塗布することができる。MLCC技術は、マイクロチップ及び回路基板の製造に用いられる。
【0088】
コポリマーを化粧品配合物、例えばメイクアップ、パウダー、リップスティック、ヘアカラー、クリーム、マニキュア液及び日焼け止め製剤を製造するために用いることもできる。これらは通常の形態で、例えばW/O又はO/Wエマルション、溶液、ゲル、クリーム、ローション又はスプレイで存在し得る。コポリマーは、これらの配合物を製造するために用いられる分散系で用いられ得る。これらは化粧品中にその目的で通常分散媒、例えば水、ヒマシ油又はシリコーン油を含み、及び固体、例えば二酸化チタン又は酸化鉄のような有機又は無機顔料を含み得る。
【0089】
最後に、このような分散剤を基材上に着色したコーティングを製造するのに用いることもでき、着色した表面コーティング組成物を基材に塗布して、塗布した着色した表面コーティング組成物を焼成又は硬化又は架橋する。
【0090】
コポリマーは、従来技術において単独で又はバインダーと共に通常用いられ得る。コポリマーをポリオレフィン中で用いる場合、例えば、櫛形コポリマーと併せてキャリア材料として適切な低分子量ポリオレフィンを用いることが有利であろう。
【0091】
コポリマーの他の考えられる用途は、分散性粉末粒子及び/又は繊維状微粒子固体、とりわけ分散性顔料又は高分子フィラーの製造であり、粒子は櫛形コポリマーによりコーティングされている。有機及び無機固体のこのようなコーティングは、例えば EP-A-0 270 126 に記載されるような既知の方法で行う。ここで、溶媒又はエマルション媒体は除去され得るか、又は混合物中に残存してペーストを形成してもよい。これらのペーストは従来の市販製品であり、さらにバインダーを、加えてさらなる助剤及び添加剤を含んでいてもよい。特に顔料の場合には、顔料表面のコーティングは顔料の合成中若しくは合成後に、例えば顔料懸濁液へのコポリマーの添加によって、又は顔料仕上げ中若しくは顔料仕上げ後に行うことができる。このように前処理された顔料は容易な取り込み性(incorporability)と、加えて改善された粘度、フロキュレーション及び光沢挙動並びに未処理の顔料に比べて高い色濃度を示す。
【0092】
顔料の例はモノアゾ、ジアゾ、トリアゾ及びポリアゾ顔料、オキサジン顔料、ジオキサジン顔料、トリアジン顔料、ジケトピロロピロール、フタロシアニン、ウルトラマリン、及び他の金属錯体顔料、インジゴイド顔料、ジフェニルメタン、トリアリールメタン、キサンテン、アクリジン、キナクリドン及びメチン顔料、アントラキノン、ピラントロン及びペリレン顔料並びに他の多環式カルボニル顔料である。有機顔料のさらなる例がモノグラフ:W. Herbst, K. Hunger "Industrial Organic Pigments", 1997 (publisher: Wiley-VCH, ISBN: 3-527-28836-8) に見出され得る。無機顔料の例は、カーボンブラック、グラファイト、亜鉛、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、リン酸亜鉛、硫酸バリウム、リトポン、酸化鉄、ウルトラマリン、リン酸マンガン、アルミン酸コバルト、スズ酸コバルト、亜鉛酸コバルト、酸化アンチモン、硫化アンチモン、酸化クロム、クロム酸亜鉛に基づく顔料、ニッケル、ビスマス、バナジウム、モリブデン、カドミウム、チタン、亜鉛、マンガン、コバルト、鉄、クロム、アンチモン、マグネシウム、アルミニウムに基づく混合金属酸化物(例えば、ニッケルチタニウムイエロー、バナジウム酸ニッケルイエロー又はクロムチタンイエロー)である。さらなる例が、モノグラフ:G. Buxbaum "Industrial Inorganic Pigments", 1998 (publisher: Wiley-VCH, ISBN: 3-527-28878-3) に示される。また、無機顔料は、純鉄、酸化鉄及び酸化クロム又は混合酸化物に基づく磁性顔料、アルミニウム、亜鉛、銅又は黄銅を含む金属エフェクト顔料、並びに真珠光沢顔料、蛍光及びりん光発光顔料であってもよい。さらなる例は、100nmより小さい粒径を有するナノサイズの有機又は無機フィラーであって、例えばあるタイプのカーボンブラック、又は金属若しくは半金属酸化物又は水酸化物からなる粒子、並びに混合金属及び/又は半金属酸化物又は水酸化物からなる粒子である。例えば、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、チタン等の酸化物及び/又は酸化水酸化物をこのようなかなり微粉化した固体を製造するために用いることができる。これらの酸化物又は水酸化物又は酸化−水酸化物粒子は種々の方法、例えばイオン交換法、プラズマ法、ゾル−ゲル法、沈殿、粉砕(例えば製粉による)、又は火炎加水分解等によって製造することができる。これらのナノサイズの固体は、無機コアと有機殻、又はその逆から成るハイブリッド粒子であってもよい。
【0093】
粉状又は繊維状フィラーの例は、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、珪藻土(kieselguhr)、珪藻土(diatomaceous earth)、石英、シリカゲル、タルク、カオリン、雲母、パーライト、長石、土壌頁岩(ground shale)、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、方解石、白雲石、ガラス又は炭素の粉末粒子又は繊維状粒子で構成されているものである。顔料又はフィラーのさらなる例は、例えば EP-A-0 270 126 に見出され得る。水酸化アルミニウム又は水酸化マグネシウムのような難燃剤及びシリカ等の艶消し剤を同様に分散して非常に安定化させることができる。
また、コポリマーをエマルションの乳化剤として用いることができる。エマルションは自然に形成されない通常不安定な系であるが、振とう、攪拌、均質化又は噴霧法によってのみ互いの相の分散を得ることができるため、乳化剤を用いてこれらの不安定な構造を安定化する。乳化剤の使用は相の分離を防ぐ。
【0094】
コポリマーをレオロジー添加剤として用いることもできる。
また、コポリマーを結合剤として用いることもできる。
【0095】
ポリマーを、コーティング組成物、ポリマー成形組成物、熱可塑性プラスチック又は化粧品中で、それぞれの場合において全コーティング組成物、全プラスチック又は全化粧品に基づいて、0.01〜100重量%、好ましくは0.05〜50重量%、非常に特に好ましくは0.1〜40重量%の比較的幅広い範囲の量で用いることができる。
とりわけコーティング組成物、プラスチック(ポリマー成形組成物及び熱可塑性プラスチック)及び化粧品において、ポリマーを好ましくは、それぞれの場合において全コーティング組成物、全プラスチック又は全化粧品に基づいて、0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜2重量%、特に好ましくは0.1〜1重量%の比較的少量で用いることもできる。
【0096】
ポリマーは、溶液、エマルションとして、又は100%濃度材料として、コーティング組成物、ポリマー成形組成物、熱可塑性プラスチック、化粧品又は他の組成物のタイプ及び塗布方法によって用いることができる。
【0097】
本発明はさらに、本発明によるコポリマーと、1種以上の顔料、有機溶媒及び/又は水、適切な場合にはバインダー及び表面コーティングにおいて常用の助剤を含む、表面コーティング組成物、ペースト及び成形組成物を提供する。さらに、本発明のコポリマーでコーティングされた顔料を本発明により提供する。
【0098】
本発明はさらに、コーティング組成物及び固体のコンセントレート、例えば顔料コンセントレートであって、添加物として本発明による少なくとも1種のポリマーを、例えば均展材として、防汚表面を得るための添加物として、湿潤剤/分散剤として又は結合剤として含むものを提供する。
【0099】
本発明はさらに、添加物として本発明による少なくとも1種のポリマーを、例えば均展材として、防汚表面を得るための添加物として、湿潤剤/分散剤として、又は結合剤として含むポリマー成形組成物及び熱可塑性プラスチックを提供する。
【0100】
本発明はさらに、本発明による少なくとも1種のポリマーを、例えば均展材として、防汚表面を得るための添加物として、湿潤剤/分散剤として、又は結合剤として含むコーティング組成物でコーティングされた表面及び本体を提供する。
【0101】

略記
EEGE エトキシエチルグリシジルエーテル
VBA ビニルベンジルアルコール
HEMA ヒドロキシエチルメタクリラート
HEMAm ヒドロキシエチルメタクリルアミド
BA n−ブチルアクリラート
EHA 2−エチルヘキシルアクリラート
Silaplane FM0721 ポリシロキサン−モノメチルアクリラート
(Mw〜5000) Chisso Corp.から入手可能
Bisomer MPEG550MA メトキシポリエチレングリコールモノメタクリラート
(Mw〜628) Cognis から入手可能
TEMPO 2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ
ニトロキシド
AMBN 2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)
AIBN 2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)
DMSO ジメチルスルホキシド
DMF ジメチルホルムアミド
DOWANOL PM モノプロピレングリコールモノメチルエーテル
(Dow Chemical Company から入手可能)
Amberlyst 15 強酸性陽イオン交換体(Rohm and Haas から入手可能 )
【0102】
測定方法
DMF−GPC:
溶離液としてジメチルホルムアミド(DMF)を用いるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を、HPLCポンプ(Bischoff HPLC Compact Pump)、屈折率検出器(Jasco RI-2031plus)、オートサンプラー(Jaso AS-2055plus)及びPSS GRAMカラム(100Å,1000Å,3000Å)を用いて25℃で行った。DMF+1g/lのLiBrを溶離液として用いた。溶離速度は1.0ml/分であった。ポリメチルメタクリラート及びポリスチレン標準を用いて従来通り較正した。数平均分子量Mn、重量平均分子量Mw、及び多分散性Q=Mw/Mnを PSS WinGPC Unity programme を用いて計算した。
THF−GPC:
テトラヒドロフラン(THF)を溶離液として用いるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を、HPLCポンプ(ERC Model 6420)、屈折率検出器(Jasco RI-2031plus)、オートサンプラー(Schambeck S 5200)、及び MZ SDplus カラム(50Å,100Å,1000Å,10000Å)を用いて25℃で行った。THFを、溶離液として1.0ml/分の溶離速度で用いた。BHT(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール)を内部標準として用いた。ポリメチルメタクリラート及びポリスチレン標準を用いて従来通り較正した。数平均分子量Mn、重量平均分子量Mw、及び多分散性Q=Mw/Mnを PSS WinGPC Unity programme を用いて計算した。
THF+AcOH−GPC:
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を、HPLCポンプ(Waters Alliance 2690)、屈折率検出器(Waters 410)、オートサンプラー(WATERS 717)、及び Styragel カラム(100Å,500Å,10000Å)を用いて室温で行った。溶離液は、流速1ml/分のテトラヒドロフラン+1%の酢酸であった。ポリスチレン標準を用いて従来通り較正した。数平均分子量Mn、重量平均分子量Mw、及び多分散性Q=Mw/Mnを NTeqGPC programme を用いて計算した。
NMR分光法
NMR装置(Bruker DPX 300)を用いて300MHz(1H)及び75MHz(13C)においてNMR測定を行った。重水素化クロロホルム(CDCl3)及び重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO−d6)を溶媒として用いた。
【0103】
以下に記載する全ての反応を窒素雰囲気下で行った。
1.マクロモノマー
1.1 線状VBA−グリシドールマクロモノマーの合成
1.1.1 VBAの合成
【0104】
【化5】

【0105】
酢酸カリウム(11.06g,113mmol)、ビニルベンジルクロリド(15.0g,98mmol)及びヒドロキノン(1.5mg)を、35mlのDMSOと共に反応容器に入れて、40℃で48時間攪拌した。混合物をクロロホルムで3回抽出して、有機層をNa2SO4にて乾燥させた。Na2SO4を濾過により除き、クロロホルムを減圧下で除去した。残渣を、NaOH(7.0g)、水(7ml)、ヒドロキノン(1.5mg)及び40mlのエタノールの混合物に加え、沸点で90分間加熱した。混合物をクロロホルムで3回抽出して、有機層をNa2SO4にて乾燥させた。Na2SO4を濾過により除き、クロロホルムを減圧下で除去した。続く精製を分留(1mbarにおいて沸点80〜90℃)により行った。
1H−NMR(300mHz,CDCl3):
δ(ppm)=2.98(s,1H,OH),4.53(d,1H,CH2−9),5.18−5.24(dd,1H,CH2−1),5.67−5.75(dd,1H,CH2−1),6.62−6.72(m,1H,CH−2),7.14−7.34(m,4H,CH−4,5,7,8)ppm。
【0106】
1.1.2 線状VBA−グリシドールマクロモノマーの合成
【0107】
【化6】

【0108】
焼いたシュレンクフラスコ中で、VBA(11.2g,83.4mmol)を80mlのジグリムに溶解させて、室温でカリウムtert−ブトキシド(KOtBu)(THF中1M,16.68ml,0.2当量)と混合した。30分間攪拌した後、生じた tert−ブタノールを減圧下で除去し、EEGE(73.15g,500.4mmol)及びヒドロキノン(15mg)を加えた。80℃の温度での16時間の反応時間後に、ジグリムを減圧下で除去した。マクロモノマーを粘性の液体として得た。
GPC(THF)及びNMRによる結果:
【0109】
【表1】

【0110】
アセタール保護基の除去
マクロモノマーをTHFに溶解させ(約30ml/1gのマクロモノマー)、濃塩酸(約1ml/1gのポリマー)と混合して、3時間激しく攪拌した。生成物は粘性オイルとして沈殿しないため、混合物をNa2CO3により中和した後、THFを回転エバポレーターで除去した。残渣を少量のメタノールに溶かし、ジエチルエーテル中での沈殿により精製した。500ppmの阻害剤2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールを加え、溶媒を減圧下で除去した。
1H−NMR(300MHz,DMSO−D6
δ(ppm)=3.37−3.58(m,CH2−10,12,CH−11),4.49(d,CH2−9),4.84(s,OH),5.23−5.29(dd,CH2−1),5.79−5.86(dd,CH2−1),6.68−6.79(m,CH−2),7.23−7.47(m,CH−4,5,7,8)ppm。
【0111】
1.2 線状HEMAm−グリシドールマクロモノマーの合成
1.2.1 HEMAmの合成
【0112】
【化7】

【0113】
アミノエタノール(25.0ml,0.41mol)及びトリエチルアミン(10ml,0.13mol)を、35mlのジクロロメタンと共に反応容器に入れ、0℃まで冷やした。メタクリロイルクロリド(20ml,0.205mol)を35mlのジクロロメタンに溶解させ、先の溶液にゆっくりと滴下して加えた。0℃で3時間攪拌した後、溶液を室温まで終夜で昇温させた。沈殿したトリエチルアミン塩酸塩を濾過して除き、ジクロロメタンを減圧下で除去した。シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーによって精製を行った。20:80の比率のメタノールとジクロロメタンの混合物を溶離剤として用いた。
1H−NMR(300MHz,CDCl3):
δ(ppm)=1.96(s,3H,CH3−3),3.45(tr,2H,CH2−7),3.73(tr,2H,CH2−6),5.35(s,1H,CH2−1),5.74(s,1H,CH2−1),6.75(s,1H,NH−5)ppm。
【0114】
1.2.2 線状HEMAm−グリシドールマクロモノマーの合成
【0115】
【化8】

【0116】
焼いたシュレンクフラスコ中で、HEMAm(6.93g,53.6mmol)を60mlのジグリムに溶解させて、室温でカリウムtert−ブトキシド(KOtBu)(THF中1M,10.7ml,0.2当量)と混合した。30分間攪拌した後、生じた tert−ブタノールを減圧下で除去し、EEGE(47.01g,321.6mmol)及びヒドロキノン(10mg)を加えた。80℃の温度での18時間の反応時間後に、ジグリムを減圧下で除去した。マクロモノマーを粘性の液体として得た。
GPC(THF)及びNMRによる結果:
【0117】
【表2】

【0118】
アセタール保護基の除去
マクロモノマーをTHFに溶解させ(約30ml/1gのマクロモノマー)、濃塩酸(約1ml/1gのポリマー)と混合して、3時間激しく攪拌して、生成物を粘性オイルとして得た。THFをデカント除去し、残渣をTHFにより何回も洗浄した。生成物を少量のメタノールに溶かし、適切なフラスコに移した。500ppmの阻害剤2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールを加え、溶媒を減圧下で除去した。
1H−NMR(300MHz,DMSO−d6):
δ(ppm)=1.86(s,CH3−3),3.34−3.62(m,CH2−6,7,8,10,CH−9),4.72(s,OH),4.96(s,CH2−1),5.13(s,CH2−1)ppm。
【0119】
1.3 分岐VBA−グリシドールマクロモノマーの合成
【0120】
【化9】

【0121】
焼いたシュレンクフラスコ中で、ビニルベンジルアルコール(10.34g,77.1mmol)を50mlのジグリムに溶解させ、ヒドロキノン(10mg)と混合し、室温でカリウムtert−ブトキシド(KOtBu)(THF中1M,7.7ml,0.1当量)と混合した。30分攪拌した後、生じたtert−ブタノールを減圧下で除去した。反応を80℃の温度で開始した。グリシドール(22.85g,308.4mmol)をシリンジポンプを用いて4ml/hの速度でゆっくりと加えた。16時間の反応時間後、ジグリムを減圧下で除去した。残渣をメタノールに溶かし、Amberlyst 15 を加えた。4時間攪拌した後、イオン交換体を濾過して除き、メタノールを減圧下で除去した。マクロモノマーを粘性の液体として得た。
1H−NMR(300MHz,DMSO−d6
δ(ppm)=3.34−3.78(m,CH2−10,12,CH−11),3.81−4.30(br s,OH),4.49(d,CH2−9),5.20−5.27(dd,CH2−1),5.77−5.85(dd,CH2−1),6.67−6.77(m,CH−2),7.28−7.47(m,CH−4,5,7,8)ppm。
GPC(DMF)による結果:
【0122】
【表3】

【0123】
1.4 分岐HEMAm−グリシドールマクロモノマーの合成
【0124】
【化10】

【0125】
焼いたシュレンクフラスコ中で、HEMAm(0.553g,4.25mmol)を5mlのDMFに溶解させ、ヒドロキノン(2mg)と混合し、また室温でカリウムtert−ブトキシド(THF中1M,0.85ml,0.2当量)と混合した。30分間攪拌した後、生じたtert−ブタノールを減圧下で除去した。反応を80℃の温度で開始した。グリシドール(1.259g,17mmol)をシリンジポンプを用いて0.4ml/hの速度でゆっくりと加えた。16時間の反応時間後、ジグリムを減圧下で除去した。残渣をメタノールに溶かし、Amberlyst 15 を加えた。4時間攪拌した後、イオン交換体を濾過して除去し、メタノールを減圧下で除去した。マクロモノマーを粘性の液体として得た。
1H−NMR(300MHz,DMSO−d6):
δ(ppm)=1.85(s,3H,CH3−3),3.33−3.79(m,CH2−6,7,8,10,CH−9),3.81−4.30(br s,OH),5.33(s,1H,CH−1),5.65(s,1H,CH−1),7.96(s,1H,NH−5)ppm。
GPC(DMF)による結果
【0126】
【表4】

【0127】
2.ポリマー
2.1 線状HEMAm−グリシドールマクロモノマーとBAのコポリマーの合成
焼いたシュレンクフラスコ中で、0.288gの例1.2.2からのHEMAm−グリシドールマクロモノマー及び0.266gのBAを10mlのDMFに窒素雰囲気下で溶解させた。21mgのAIBNを加え、溶液を3回の凍結融解サイクルにより脱気した。80℃の温度での18時間の反応時間後、DMFを減圧下で除去した。
GPC(DMF)による結果:
【0128】
【表5】

【0129】
2.2 線状HEMAm−グリシドールマクロモノマーとEHAのコポリマーの合成
焼いたシュレンクフラスコ中で、0.288gの例1.2.2からのHEMAm−グリシドールマクロモノマーと0.383gのEHAを5mlのDMF中で窒素雰囲気下で溶解させた。13mgのAIBNを加え、溶液を3回の凍結融解サイクルにより脱気した。100℃の温度での18時間の反応時間後、DMFを減圧下で除去した。
GPC(DMF)による結果:
【0130】
【表6】

【0131】
2.3 分岐VBA−グリシドールマクロモノマーとスチレンのコポリマーの合成
1.2gの例1.3からのVBA−グリシドールマクロモノマーと1.2gのスチレンを、5mlのDMFと共に窒素雰囲気下で焼いたシュレンクフラスコ中に入れた。37.5mgのTEMPO及び39.4mgのAIBNの添加後に、反応混合物を3回の凍結融解サイクルにより脱気した。反応溶液を130℃で72時間攪拌した。減圧下でDMFを除去した後、生成物を褐色の非常に粘性の物質として単離した。
1H−NMR(300MHz,DMSO−d7):
δ(ppm)=0.81−2.42(m,6H.CH−2,8,CH2−1,7),3.30−4.15(m,20H,CH2−14,16,CH−15),4.38−5.10(m,2H,CH2−13,OH),6.32−7.51(m,9H,CH−4,5,6,10,11)ppm。
GPC(DMF)による結果:
【0132】
【表7】

【0133】
2.4 分岐VBA−グリシドールマクロモノマー、EHA及び Silaplane FM-0721のコポリマーの合成
16.62gの例1.3からのVBA−グリシドールマクロモノマーと115gの Dowanol PM を、スターラー、温度計、蒸留装置、滴下漏斗及び窒素注入管を備えたガラスフラスコに入れた。全ての反応の間、反応混合物に窒素を通過させる。110℃まで反応温度を上げた後、1.48gのAMBN,1.83gのα−メチルスチレン二量体、37.95gのEHA及び65.43gの Silaplane FM-0721 の混合物を210分間に亘り均一速度で計り入れた。添加が完了した後、反応温度を110℃にさらに180分間維持した。
続いて0.2gのAMBNを加えた。添加が完了した後、反応温度を110℃にさらに180分間維持した。その後溶媒を、回転エバポレーターにて減圧下で蒸留除去した。
GPC(THF+AcOH)による結果:
【0134】
【表8】

【0135】
分岐VBA−グリシドールマクロモノマー、BA及びSilaplane FM-0721 のコポリマーの合成
18.40gの例1.3からのVBA−グリシドールマクロモノマーと115gのDowanol PM を、スターラー、温度計、蒸留装置、滴下漏斗及び窒素注入管を備えたガラスフラスコに入れた。全ての反応の間、反応混合物に窒素を通過させる。110℃まで反応温度を上げた後、1.64gのAMBN,2.02gのα−メチルスチレン二量体、29.18gのBA及び72.43gの Silaplane FM-0721 の混合物を210分間に亘り均一速度で計り入れた。添加が完了した後、反応温度を110℃にさらに180分間維持した。
続いて0.27gのAMBNを加えた。添加が完了した後、反応温度を110℃にさらに180分間維持した。その後用いた溶媒を、回転エバポレーターにて減圧下で蒸留除去した。
GPC(THF+AcOH)による結果:
【0136】
【表9】

【0137】
2.6 分岐HEMAm−グリシドールマクロモノマー,EHA,Bisomer MPEG550MA 及び Silaplane FM-0721 のコポリマーの合成
76gのDowanol PM を、スターラー、温度計、蒸留装置、滴下漏斗及び窒素注入管を備えたガラスフラスコに入れる。全ての反応の間、反応混合物に窒素を通過させる。110℃まで反応温度を上げた後、1.79gのAMBN,2.21gのα−メチルスチレン二量体、38.98gのEHA、31.63gの Silaplane FM-0721 の混合物、及び20.09gの例1.4からのHEMAm−グリシドールマクロモノマー、29.30gの Bisomer MPEG550MA の混合物を同時に、180分間に亘り均一速度で計り入れる。添加が完了した後、反応温度を110℃にさらに120分間維持する。
続いて0.3gのAMBNを加える。添加が完了した後、反応温度を110℃にさらに120分間維持する。その後、用いた溶媒を、回転エバポレーターにて減圧下で蒸留除去する。
GPC(THF+AcOH)による結果:
【0138】
【表10】

【0139】
3.比較例
分岐HEMA−グリシドールマクロモノマーの合成(W.F. Hoskyns (Research Disclosure 174, 32-33 (1978))に記載される反応)
グリシドール(8.88g,120mmol)を焼いたシュレンクフラスコに入れて150℃まで加熱した。KOH(20mg)、ヒドロキノン(130mg)及びHEMA(2.6g,20mmol)の混合物をグリシドールに、シリンジポンプを用いて2時間に亘って加えた。反応混合物を150℃でさらに2時間攪拌した。生成物を粘性の褐色物質として得る。しかしながら、大部分が不溶であるポリマー粒子が反応中に生じる。これらは、また、反応後に再溶解させることもできない。
【0140】
4.使用例
防汚表面及び均展性
テストシステム:アクリラート−メラミン焼付けエナメル,透明
組成物(数字は重量部):
Setalux 1760 VB 64 44.0
Setalux C 91389 VX 45 16.5
Luwipal 018 25.3
ブチルジグリコールアセタート 2.1
Solvesso 150 4.8
ブタノール 6.1
ブチルジグリコール 1.2
を混合した後、
ブタノール 8.0
Solvesso 150 3.8
ブチルジグリコール 1.8
を加える。
Setalux 1760 VB 64 =アクリラート焼付けエナメル樹脂,Nuplex Resins, Bergen op Zoom
Setalux C 91389 VX 45 =アクリラート焼付けエナメル樹脂,Nuplex Resins, Bergen op Zoom
Luwipal 018 =メラミン焼付けエナメル樹脂,BASF AG, Ludwigshafen
【0141】
ポリマー(例2.4からのポリマー、例2.5からのポリマー、例2.6からのポリマー又は添加物なし、以下の表の通り)を、塗布前に1日取り込んだ。加えた量は、全混合物に基づいて、0.15重量%であった。
塗布の日に、粘度を、24秒、DIN4mmオリフィスカップ(23℃)に、Solvesso 150 により設定した。塗布を吹き付けロボットによって行った。30分間空気乾燥した後、140℃で30分間硬化を行った。層の厚さは20μmであった。
得られた表面コーティングを以下の通りに試験する。
【0142】
防汚表面の達成
得られた表面コーティングを、その防汚作用、撥水作用及び撥油作用に関して以下の基準に従って評価する。
【0143】
コーティング表面の目視評価:
コーティングの表面をフィルム中の濁り、及び表面不良、例えばクレーター、傷及び不適合性について調べる。
評価:1〜5
1=表面不良のないコーティング表面
5=クレーター/傷を有するコーティング表面
【0144】
エディングテスト(Edding test)
「Edding 400」マジックインキを用いてコーティング表面に文字を書き、目視評価を、表面に書くことができるかどうかについて行う。インクが表面に広がるか互いに凝縮するか否かを評価する。インクを乾燥した後、乾いた布を用いてこれを拭き取ってみる。
評価:1〜5
1=インクが互いに凝縮し、残留物を残すことなくティッシュペーパーで除去することができる
5=インクは基材上にかなり広がり、除去することが事実上できない
【0145】
ビチューメンテスト
ビチューメンを、コーティングの表面に塗布することができるほど十分に液状になるまで加熱した。目視評価は、塊の冷却後、ビューチメン塊を、残留物を残すことなく表面から再び手作業で除くことがいかによく出来るかに関する。
評価:1〜5:
1=残留物を残すことなく、ビューチメンを容易に除去することができる
5=ビューチメンが表面に強く付着し、除去することが事実上不可能である
【0146】
水流去テスト
水滴を表面に置く。続いて、コーティングのコーティングされた表面を、水滴が流れ去るまで傾ける。水滴が流れる角度と、水滴が残留物を残すことなく流れ去るか否かを視覚的に評価する。
評価:1〜5:
1=低い角度で十分であり、水滴が「ノーズ形成(nose formation)」を全くせず、及び水滴を残すことなく流れ去る
5=コーティングされた金属シートは、水滴が流れ去るまでしっかりと傾ける必要がある;水の残留物がコーティング表面に残り得る
【0147】
鉱油除去テスト:
市販の鉱油の滴をコーティングの表面に置いた。続いて、コーティングされた基材を滴が約10cm流れるまで傾けた。5分後、油跡又は新たに形成した滴を視覚的に評価した。
評価:1〜5:
1=油跡が即座に個々の滴を再び形成した
5=油跡は改善されず、代わりにさらに広がる
【0148】
得られた結果を以下の表に示す。
【0149】
【表11】

【0150】
結果は、汚れ、油及び水を非常によくはじく表面が、本発明のポリマーを添加物として用いる場合に得ることができるということを示す。
【0151】
均展材としてのポリマーの使用
均展性は、Byk-Gardner 製のウエーブスキャンDOI装置を用いて、長波、短波、及びDOI(像の鮮明度(distinctness of image))の値を測定することにより決定した。光沢及びヘイズを、Byk-Gardner 製のヘイズ−グロス計を用いて測定した。
【0152】
【表12】

【0153】
結果は、本発明のポリマーを均展材として用いた場合には、均展材を用いない場合と比べて、均展性、光沢及びヘイズに関して改善された結果が得られることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)出発化合物U−OH
(ここで、U−O−は、
a)一般式(I)の基
2C=CR1−C64-s(R4s−R3−O− (I)、及び
b)一般式(II)の基
2C=CR2−CO−NH−R3−O− (II)
(式中、R1及びR2はそれぞれ、H又は1〜4個の炭素原子を有する直鎖の若しくは分岐したアルキル基であり、
3は、1〜20個の炭素原子を有する直鎖の又は分岐したアルキレン、アラルキレン基であり、1つ以上のヒドロキシ基を含有していてもよく、及び
4基はそれぞれ互いに独立して、1〜20個の炭素原子を有する直鎖の又は分岐したアルキル、アラルキル、アルコキシ又はアラルコキシ基であり、sは0〜4である)
からなる群から選択されるエチレン性不飽和頭部基(head group)である)
を、アルカリ金属水酸化物又はアルコキシドの添加によって、水又はアルコールの生成を伴いながら脱プロトン化して、出発化合物のプロトン化(U−OH)及び脱プロトン化(U−O(-))分子を生じ、
(B)生じた水又は生じたアルコールを反応混合物から実質的に除去し、
(C)続いて、出発化合物のプロトン化(U−OH)及び脱プロトン化(U−O(-))分子の混合物を、式(III)の少なくとも1種のオキシラン化合物
【化1】

(式中、Raは水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル又はtert−ブチルであり、Rbは1〜6個の炭素原子及び保護基により任意にエーテル化し得る少なくとも1つのヒドロキシ基を有する直鎖の又は分岐したアルキル基である)、及び
適切な場合には、フリーラジカル重合阻害剤の存在下で少なくとも1種のアルキレンオキシド
と、オキシラン環の開環を伴って反応させる(ここで、用いる量のモル比n(出発化合物):n(オキシラン化合物)は、1:100〜1:1の範囲にある)
ことを特徴とするマクロモノマーの調製方法。
【請求項2】
前記エチレン性不飽和頭部基U−O−が、一般式(II)の基
2C=CR2−CO−NH−R3−O− (II)
(式中、R2=H又はCH3、R3=エチル又はプロピル)
であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
2=CH3及びR3=エチルであることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、ペンチレンオキシド及びヘキシレンオキシドからなる群からの少なくとも1種のアルキレンオキシドを用い、用いるモル量の比[n(オキシラン化合物)+n(アルキレンオキシト゛)]:n(出発化合物)が100:1〜2:1の範囲にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の方法により調製することができるマクロモノマー。
【請求項6】
請求項5に記載の1種以上のマクロモノマー、及び適切な場合には、1種以上のさらなるフリーラジカル重合可能なコモノマーのフリーラジカル重合により得ることができるポリマー。
【請求項7】
少なくとも1種のさらなる、フリーラジカル重合可能なコモノマーが、請求項5に記載のマクロモノマーに加えて用いられることを特徴とする請求項6に記載のポリマー。
【請求項8】
前記少なくとも1種のさらなる、フリーラジカル重合可能なコモノマーが、n−ブチルアクリラート、i−ブチルアクリラート、t−ブチルアクリラート、メチルアクリラート、エチルアクリラート、プロピルアクリラート、ヘキシルアクリラート、2−エチルヘキシルアクリラート、シクロヘキシルアクリラート、ラウリルアクリラート、テトラデシルアクリラート、イソボルニルアクリラート、n−ブチルメタクリラート、i−ブチルメタクリラート、t−ブチルメタクリラート、メチルメタクリラート、エチルメタクリラート、プロピルメタクリラート、ヘキシルメタクリラート、2−エチルヘキシルメタクリラート、シクロヘキシルメタクリラート、ラウリルメタクリラート、テトラデシルメタクリラート、イソボルニルメタクリラート、ヒドロキシエチルアクリラート、ヒドロキシブチルアクリラート、ヒドロキシエチルメタクリラート、ヒドロキシブチルメタクリラート、2−メトキシエチルアクリラート、2−メトキシエチルメタクリラート、スチレン、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸、ポリエチレングリコールモノメタクリラート、ポリプロピレングリコールモノメタクリラート、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノメタクリラート、α−ブチルジメチルシロキシ−ω−(3−メタクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサン、α−ブチルジメチルシロキシ−ω−(3−メタクリロキシ(ポリエチレンオキシド)プロピル)ポリジメチルシロキサン、N,N’−ジメチルアミノエチルメタクリラート、N,N’−ジメチルアミノエチルアクリラート、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、及びビニルイミダゾールからなる群から選択されることを特徴とするポリマー。
【請求項9】
請求項5に記載の前記マクロモノマーの割合が、いずれの場合にも、用いる全てのマクロモノマー及びコモノマーの全モル量に基づいて1〜60モル%、好ましくは2〜30モル%、特に好ましくは2〜15モル%であることを特徴とする請求項6〜8の1項以上に記載のポリマー。
【請求項10】
請求項5に記載の少なくとも1種のマクロモノマー、及び適切な場合には、1種以上のさらなるフリーラジカル重合可能なコモノマーをフリーラジカル重合することを特徴とする請求項6に記載のポリマーを調製する方法。
【請求項11】
コーティング組成物、プラスチック又は化粧品中での添加物としての、請求項6〜8の1項以上に記載のポリマーの使用。
【請求項12】
前記ポリマーを、前記コーティング組成物、前記プラスチック又は前記化粧品に、いずれの場合にも、全コーティング組成物、全プラスチック又は全化粧品に基づいて0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜2重量%、特に好ましくは0.1〜1重量%の量で加えることを特徴とする請求項11に記載の使用。
【請求項13】
請求項6に記載の少なくとも1種のポリマーを含有するコーティング組成物。
【請求項14】
請求項6に記載の少なくとも1種のポリマーを含有する化粧品。
【請求項15】
請求項6に記載の少なくとも1種のポリマーを含有するプラスチック。

【公表番号】特表2012−530160(P2012−530160A)
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515374(P2012−515374)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【国際出願番号】PCT/EP2010/003387
【国際公開番号】WO2010/145761
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(598067245)ベーイプシロンカー ヘミー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクター ハフトゥング (30)
【Fターム(参考)】