説明

末端二級ヒドロキシル基を含有するオリゴカーボネートポリオール

本発明は、有機カーボネートと脂肪族ポリオールとのエステル交換による末端二級ヒドロキシル基を含有する脂肪族オリゴカーボネートポリオールの製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機カーボネートを脂肪族ポリオールでエステル交換することによる、末端二級ヒドロキシル基を有する脂肪族オリゴカーボネートポリオールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オリゴカーボネートジオールは、原則として脂肪族ポリオールから、ホスゲン、ビスクロロ炭酸エステル、ジアリールカーボネート、環状カーボネート、またはジアルキルカーボネートと反応させることによって調製され得る。それらはプラスチック、コーティングおよび粘着剤の製造の重要な前駆物質である。それらは、例えば、イソシアネート、エポキシド、(環状)エステル、酸および酸無水物と反応させられる。
【0003】
DE−A 101 30 882は、例えば、脂肪族オリゴカーボネートジオールがジメチルカーボネートと脂肪族ジオールを圧力下で反応させることにより得られることを示している。この文献に開示されるジオールは、専ら一級ヒドロキシル基を有するジオールのみであり、専ら末端一級ヒドロキシル基を有する脂肪族オリゴカーボネートのみが得られる。
【0004】
更に、DE−A 101 56 896は、有機カーボネートのエステル交換によって脂肪族オリゴカーボネートポリオールを調製するために、二級または三級ヒドロキシル基を有するポリオールを使用することも更に可能であることを開示している。一級OH基を有するポリオールおよび二級OH基を有するポリオールの一回毎の段階的供給の記述はない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、二級ヒドロキシル基を有するポリオールが使用される場合、先行技術で知られている製造方法の欠点は、有機カーボネートとのエステル交換が低い転化率でしか行われないことであり、このことは、平均分子量が500g/molより大きいオリゴカーボネートポリオールが、調製され得ないか、もしくは非常に長いエステル交換時間が適用される場合にのみ得られる、という結果をもたらす。この調製は、得られる時空収量(space−time yield)の悪さのせいで不経済になる。
【0006】
一方、末端二級ヒドロキシル基を有するオリゴカーボネートポリオールは、反応性の高い(ポリ)イソシアネート(例えば、芳香族ポリイソシアネートプレポリマーの調製において、もしくは異なるOH反応性を介するウレタン化反応の制御用)の反応パートナーとして非常に興味深い。
【0007】
それゆえに、末端二級ヒドロキシル基を有する脂肪族オリゴカーボネートポリオールの経済的に使用できる製造方法を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は以下で開示される多段操作により達成される。
【0009】
本発明は、
A)最初に、過剰量の有機カーボネートと、専ら一級OH基のみを有するポリオールとを反応させ、そのようにして得られる反応生成物1molに基づいて0.3mol%以下の平均OH基濃度を有するポリマーを調製する工程、
B)エステル交換反応と同時に形成されるか、もしくは次に過剰の未転化カーボネートと共に形成される分解産物を除去する工程、および更なる工程、
C)そのようにして形成されるポリマーと、一分子毎にそれぞれ少なくとも一つの二級OH基を有する脂肪族ポリオールとを反応させ、存在する全OH基の合計に基づいて平均で5mol%以上の二級OH基を有する生成物を得る工程
により、二級OH基を有し、数平均分子量が500g/mol以上である脂肪族オリゴカーボネートポリオールの製造方法を提供する。
【0010】
工程A)からのポリマーは、好ましくは平均で0.2mol%より少ない、より好ましくは0.1mol%以下、最も好ましくは0〜0.05mol%のOH基を有する。
【0011】
工程C)の後に得られるオリゴカーボネートポリオールは、二級OH基の含量が全OH基の合計に基づいて、好ましくは5mol%以上、より好ましくは30mol%以上、最も好ましくは60〜95mol%である。
【0012】
工程C)の後に得られるオリゴカーボネートポリオールは、典型的には数平均分子量が500〜5000g/mol、好ましくは500〜3000g/mol、より好ましくは750〜2500g/molである。
【0013】
工程C)の後に得られるオリゴカーボネートポリオールは、典型的には平均OH官能価が1.80以上、好ましくは1.90以上、より好ましくは1.90〜5.0である。
【0014】
工程A)で使用される有機カーボネートは、例えば、アリールカーボネート、アルキルカーボネート、アルキレンカーボネートまたはそれらの混合物であってもよい。例示にはジフェニルカーボネート(DPC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)およびエチレンカーボネートを含む。ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネートおよびジエチルカーボネートを使用することが好ましい。ジフェニルカーボネートおよびジメチルカーボネートを使用することがより特に好ましい。
【0015】
工程A)で使用される一級脂肪族ポリオールは、典型的には鎖(分枝および/または非分枝)に炭素原子を4〜50個有し、この鎖が別のヘテロ原子(例えば酸素(O)、硫黄(S)または窒素(N))によって中断されていてもよい化合物である。A)において使用されるこれらのポリオールは、OH官能価が、好ましくは2〜8、より好ましくは2〜4である。
【0016】
好適な脂肪族一級ポリオールの例は、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,12-ドデカンジオール、シクロヘキサンジメタノール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、ビス(2-ヒドロキシエチル)エーテル、ビス(6-ヒドロキシヘキシル)エーテル、二量体ジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトールまたは一級ヒドロキシル基を有し、数平均分子量が700g/mol以下の短鎖ポリエーテルポリオール、およびこれらの混合物である。
【0017】
更に、上述の脂肪族一級ポリオールとラクトン(環状エステル)(例えばε-カプロラクトンまたはバレロラクトン)との添加生成物または混合物が使用されてもよい。
【0018】
工程C)において使用される少なくとも一つの二級ヒドロキシル基を有する脂肪族ポリオールは、典型的には、その鎖(分枝および/または非分枝)に炭素原子を4〜50個有する化合物であり、この鎖は別のヘテロ原子(例えば、酸素(O)、硫黄(S)または窒素(N))によって中断されてもよい。C)において使用されるこれらのポリオールは、好ましくはOH官能価が2〜8、より好ましくは2〜4である。
【0019】
少なくとも一つの二級ヒドロキシル基を有するそのような脂肪族ポリオールの例は、1,2-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,3-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、2,3-ヘキサンジオール、2,4-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチルペンタン-1,3-ジオール、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、グルコース、ソルビトール、二級ヒドロキシル基を有し、数平均分子量が700g/mol以下である短鎖ポリエーテルポリオール、およびこれらの混合物である。
【0020】
加えて、先行技術で知られているエステル交換を触媒する全ての化合物を本発明による方法で使用し得る。この方法に特に好適な化合物は、メンデレーエフの元素周期表の主族I、II、IIIおよびIV、および希土類を含む遷移族IIおよびIVの金属の、水酸化物、酸化物、金属アルコキシド、カーボネート、有機金属化合物および錯体、特にチタン、ジルコニウム、鉛、錫、アンチモン、イットリウムおよびイッテルビウムの化合物である。
【0021】
例示には、触媒LiOH、LiCO、KCO、Mg(OH)(CO、チタンテトラアルコキシド、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキシド、ビストリブチル錫オキシド、イットリウム(III)アセチルアセトネートおよびイッテルビウム(III)アセチルアセトネートを含む。
【0022】
エステル交換触媒の使用の場合、Mg(OH)(CO、チタンテトラアルコキシド、ジブチル錫ラウレート、イットリウム(III)アセチルアセトネートおよびイッテルビウム(III)アセチルアセトネートを使用することが好ましい。
【0023】
触媒の使用の場合、その濃度は、0.01ppm〜1000ppm(得られた本発明のオリゴカーボネートポリオールに基づく金属の含量)、好ましくは0.01ppm〜500ppmおよびより好ましくは0.1ppm〜300ppmである。
【0024】
本発明による方法は、典型的には、温度50〜250℃、好ましくは100〜200℃、および圧力0.01〜10bar(絶対圧)、好ましくは0.05〜6bar(絶対圧)で行われる。
【0025】
本発明による方法の工程C)は、実験的に決定されるヒドロキシル官能価が理論値の90%より大きく、好ましくは95%より大きい値に到達するまで行う。
【0026】
工程C)において反応を加速させるために、再度エステル交換触媒を添加し、かつ/または、反応を圧力1013mbar(絶対圧)未満で行うことが可能である。
【0027】
工程A)において使用される有機カーボネートまたは対応するポリオールの量は、調製されるオリゴカーボネートの所望の数平均分子量(M)に依存する。
【0028】
A)における有機カーボネートがポリオール中に存在する一級OH基に基づいて常に過剰に使用され、工程A)後でも前述のOH基含量で実質的にOHフリーのポリマーが生じ得ることがきわめて重要である。典型的には、過剰の有機カーボネートは、理論OH官能化合物を調製するために必要な化学量論に基づいて5〜100mol%、好ましくは10〜50mol%である。
【0029】
本発明による方法の工程A)における、一級脂肪族ポリオールと有機カーボネートとのエステル交換は、有機カーボネートを段階的に一級脂肪族ポリオール添加し、副生成物をこの過程で除去するような方法で、適当であれば1bar(絶対圧)未満の圧力において、部分的な工程においても行われ得る。また副生成物の連続除去とペアで有機カーボネートの連続計量添加も可能である。
【0030】
典型的には、工程A)における反応時間は、5〜100時間、好ましくは10〜80時間である。典型的には、工程C)における反応時間は、1〜50時間、好ましくは5〜25時間である。
【0031】
本発明による方法により得られるオリゴカーボネートポリオールは、特にコーティング、分散体、粘着剤およびシーラントの製造に好適である。
【0032】
原則として、そのようなコーティング、分散体、粘着剤およびシーラントは全ての既知の基材に適用され硬化され得る。
【実施例】
【0033】
オリゴカーボネートジオール中における末端二級ヒドロキシル基の含量、および更にヒドロキシル官能価を、対応する生成物のH NMRスペクトルの積分計算によって決定した。それぞれ基礎として使用された目標化合物は、選択された化学量論に由来する理想の構造であった。最初に、特定生成物の数平均分子量(M)を分子中における繰り返し単位のプロトン共鳴の積分を参照して計算した。この目的は、使用されるジオールからのメチレン基のシグナルによって満たし、オリゴカーボネートジオールのCH−OH基のメチレン末端基を規格化に使用した。同様に、対応するシグナルの積分およびメチレン末端基への規格化によって、非ヒドロキシル官能性末端基(実質上メチルエステル基およびメチルエーテル基)の割合を決定した。所望するオリゴカーボネートジオールの分子量および非ヒドロキシ官能性末端基を有する化合物(連鎖停止剤)の分子量の合計が全体の分子量を与える。化合物全体における連鎖停止剤の割合をmol%に相応じて計算する。実際の決定される官能価は、理論最大官能価と連鎖停止剤の含量との差を構成する。末端二級ヒドロキシル基の割合を同様に決定した。
【0034】
ヒドロキシル価(OHN)をDIN 53240−2に対して決定した。
【0035】
数平均分子量(M)をヒドロキシル価と官能価との間の関係から計算する。
【0036】
粘度をドイツ国のPhysikaからのVISKOLAB LC−3/ISO回転式粘度計によってDIN EN ISO 3219に対して決定した。
【0037】
実施例1:
1,6-ヘキサンジオール295.9gをスターラーおよび還流冷却器を有する多口フラスコ中で120℃に加熱し、2mbarで2時間脱水した。次に、窒素雰囲気下、オイルバスを110℃に冷却し、イッテルビウム(III)アセチルアセトネート0.08gを添加し、ジメチルカーボネート363.9gを20分以内で計量添加した。添加が完了すると、この反応混合物を還流下で24時間保持した。
【0038】
その後、この反応混合物を蒸留し、その過程においてメタノール副生成物、更にごく微量のジメチルカーボネートを除去した。蒸留を最初に150℃において4時間行い、180℃において更に4時間続けた。その後、温度を130℃に下げ、圧力を20mbar未満に下げた。加えて、この目的のためにこの反応混合物に窒素気流(2l/h)を通じた。最後に、上部の温度が60℃を超えないという条件で、温度を130℃から180℃に上昇させた。反応混合物をこの温度で6時間保持した。その後決定された18.8mgKOH/gのヒドロキシル価(OHN)は、オリゴカーボネートにおけるヒドロキシル濃度がまだ高すぎることを示した。次に更にジメチルカーボネート100gを、オイルバス温度120℃において添加し、この混合物を還流下2時間保持した。その後、副生成物および過剰のジメチルカーボネートを150℃において2時間蒸留した。最後に、温度を6時間以内で180℃に上昇させ、1時間温度を保持した。
【0039】
生じるオリゴカーボネートのヒドロキシル価は0であり、従ってヒドロキシル濃度は0.05mol%未満だった。
【0040】
1,3-ブタンジオール48.5gを生じるオリゴカーボネートに添加し、この混合物を180℃において8時間攪拌し、この過程において反応混合物からメタノールを副生成物として除去した。このことは以下の特性データを有するワックス状オリゴカーボネートジオールを生じた。
ヒドロキシル価(OHN) : 53.0mg KOH/g
: 2100g/mol
ヒドロキシル官能価 : 1.97
末端二級ヒドロキシル基の含量 : 75mol%
粘度 : 75℃において3500mPas
【0041】
比較例
1,3-ブタンジオール314.5gをスターラーおよび還流冷却器を有する多口フラスコ中において120℃に加熱し、20mbarにおいて2時間脱水した。次に、窒素雰囲気下、オイルバスを110℃に冷却し、イッテルビウム(III)アセチルアセトネート0.08gを添加し、ジメチルカーボネート444.5gを20分以内で計量添加した。添加が完了すると、この反応混合物を還流下で24時間保持した。
【0042】
その後、この反応混合物を蒸留し、その間にメタノール副生成物、更にごく微量のジメチルカーボネートを除去した。蒸留を最初に150℃において4時間行い、180℃において更に4時間続けた。その後、温度を130℃に下げ、圧力を20mbar未満に下げた。加えて、この目的のためにこの反応混合物に窒素気流(2l/h)を通じた。最後に、上部温度が60℃を超えない条件で温度を130℃から180℃に上昇した。反応混合物をこの温度において6時間保持した。348.5mg KOH/gのヒドロキシル価(OHN)は、実質上ポリマーの分解が起こらなかったことを示した。加えて、対応するH NMRは生成物を汚染する副生成物の大部分を示し、更なる反応(例えば(ポリ)イソシアネートとの反応)に不適当である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)最初に過剰量の有機カーボネートと専ら一級OH基のみを有するポリオールとを反応させ、そのようにして得られる反応生成物1molに基づいて平均OH基濃度が0.3mol%以下のポリマーを調製する工程、
B)エステル交換反応と同時にまたは次に過剰の未転化カーボネートと共に形成された分解産物を除去する工程、および次の工程、
C)そのように形成されたポリマーとそれぞれ一分子あたり少なくとも一つの二級OH基を有する脂肪族ポリオールとを反応させ、存在する全てのOH基の合計に基づいて平均で二級OH基が5mol%以上の生成物を得る工程
による、二級OH基を有し、数平均分子量が500g/mol以上の脂肪族オリゴカーボネートポリオールの製造方法。
【請求項2】
工程A)で調製されるポリマーが平均でOH基を0〜0.05mol%有することを特徴とする、請求項1記載の脂肪族オリゴカーボネートポリオールの製造方法。
【請求項3】
工程C)後に得られるオリゴカーボネートポリオールが全OH基の合計に基づいて60〜95mol%の二級OH基含量を有することを特徴とする、請求項1または2記載の脂肪族オリゴカーボネートポリオールの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3の一つに記載の方法によって得られる脂肪族オリゴカーボネートポリオール。
【請求項5】
平均OH官能価が1.90〜5.0であることを特徴とする、請求項4記載の脂肪族オリゴカーボネートポリオール。
【請求項6】
数平均分子量が750〜2500g/molであることを特徴とする、請求項4または5記載の脂肪族オリゴカーボネートポリオール。
【請求項7】
請求項4〜6の一つに記載の脂肪族オリゴカーボネートポリオールを用いて得られるコーティング、分散体、粘着剤および/またはシーラント。

【公表番号】特表2008−505230(P2008−505230A)
【公表日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−519654(P2007−519654)
【出願日】平成17年6月18日(2005.6.18)
【国際出願番号】PCT/EP2005/006602
【国際公開番号】WO2006/002787
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】