説明

末端変性多官能ビニル芳香族共重合体及びレジスト組成物

【課題】従来のレジスト材料を上回る現像特性、プロセス適応性を有し、露光後のパターン形状が良好であり、更に優れた耐熱パターン形状保持性を示す可溶性多官能ビニル芳香族共重合体及びレジスト組成物、特に化学増幅ポジ型レジスト組成物を得る。
【解決手段】ジビニル芳香族化合物由来の構造単位(a)及びモノビニル芳香族化合物由来の構造単位(b)を含む共重合体であって、その末端に平均して1分子あたり1個以上の下記式(1)で表されるカテコール系化合物由来の末端基を有し、数平均分子量が500〜10,000であり、ケトン類、芳香族炭化水素類、アルコール類等の有機溶媒に可溶である多官能ビニル芳香族共重合体、及びこの多官能ビニル芳香族共重合体と酸発生剤を含有する化学増幅ポジ型レジスト組成物。式(1)において、R2は水素原子又は酸不安定基であり、R2中の5〜50モル%は酸不安定基である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアルカリ溶解性、耐熱性が改善された末端変性多官能ビニル芳香族共重合体に関する。また、本発明はこの末端変性官能ビニル芳香族共重合体を含有するレジスト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールのより微細化の求めに応じて遠紫外線リソグラフィーが実用化されてきた。遠紫外線リソグラフィーは0.3μm以下の加工も可能であり、光吸収の低いレジスト材料を用いた場合、基板に対して垂直に近い側壁を有したパターン形成が可能になる。
【0003】
そして、これら短波長の放射線に対応する高解像度レジストとして、例えば、酸を触媒とした化学増幅ポジ型レジスト材料は、遠紫外線の光源として高輝度なKrFエキシマレーザーを利用し、感度、解像性、ドライエッチング耐性が高く、優れた特徴を有した遠紫外線リソグラフィー用のレジスト材料であり、ベースポリマー、酸発生剤からなる二成分系、ベースポリマー、酸発生剤、酸不安定基を有する溶解阻止剤からなる三成分系が知られている(特許文献1〜3)。
【0004】
例えば、特許文献3及び4はヒドロキシスチレン単位を有する重合体のヒドロキシ基の水素原子の一部を酸不安定基で置換された重合体を使用したレジスト材料が開示されている。そして、ポジ型レジスト材料は重合体の他に有機溶剤、酸発生剤、塩基性化合物又は溶解阻止剤を含むことが記載されている。
【0005】
このような化学増幅ポジ型レジスト材料は、遠紫外線リソグラフィーにおいて非常に有用なものであるが、近年、リソグラフィーパターンの微細化に伴う工程数の増加等の問題があり、LSIの生産性向上のために良好なリソグラフィーパターン形成と耐エッチング性、耐熱性等を更に向上させることが望まれている。
【0006】
一方、特許文献6にはジビニル芳香族化合物(a)及びモノビニル芳香族化合物(b)を有機溶媒中、ルイス酸触媒及び特定構造の開始剤の存在下、20〜100℃の温度で重合させることによって得られる可溶性多官能ビニル芳香族共重合体が開示されている。また、特許文献7には4級アンモニウム塩の存在下で、ルイス酸触媒及び特定構造の開始剤により、ジビニル芳香族化合物(a)を20〜100モル%含有してなる単量体成分を20〜120℃の温度でカチオン重合させることにより制御された分子量分布を有する可溶性多官能ビニル芳香族共重合体の製造方法が開示されている。これらの技術によって得られる共重合体は溶剤可溶性及び加工性に優れ、これを使用することによってガラス転移温度の高い耐熱性に優れた硬化物を得ることができるが、金属等との接着性を与える極性基を有していないという問題点を有していた。
【0007】
上記問題を解決するため、特許文献5にはジビニル芳香族化合物、モノビニル芳香族化合物とフェノール化合物から得られ、末端にフェノール性水酸基を有し、かつ、ジビニル芳香族化合物に由来するペンダントビニル基を有する有機溶媒に可溶な多官能ビニル芳香族共重合体が開示されている。しかし、ここで使用されるフェノール化合物は1つだけのヒドロキシ基を有するものであるため、得られる多官能ビニル芳香族共重合体は接着性が優れ、ガラス転移温度の高い耐熱性に優れた硬化物とはなるが、アルカリ溶液への溶解性に乏しくレジスト材料として使用することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公平2−27660号公報
【特許文献2】特開昭63−27829号公報
【特許文献3】特開2005−114968公報
【特許文献4】特開2003−342434号公報
【特許文献5】特開2008−189745号公報
【特許文献6】特開2004−123873号公報
【特許文献7】特開2005−213443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、従来のレジスト材料を上回る現像特性、プロセス適応性を有し、露光後のパターン形状が良好であり、更に優れた耐熱パターン形状保持性を示すレジスト組成物、特に化学増幅ポジ型レジスト組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ジビニル芳香族化合物由来の構造単位(a)及びモノビニル芳香族化合物由来の構造単位(b)を含む共重合体であって、その末端に平均して1分子あたり1個以上の下記式(1)
【化1】

(ここで、R1は酸素原子及び窒素原子を含んでもよい炭素数1〜18の炭化水素基であり、nは0〜3の整数を表す。R2は水素原子又は酸不安定基であり、R2中の5〜50モル%は酸不安定基である)
で表されるカテコール系化合物由来の末端基を有し、数平均分子量が500〜10,000であり、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、エタノール又はイソプロパノールに可溶であることを特徴とする多官能ビニル芳香族共重合体である。
【0011】
上記多官能ビニル芳香族共重合体において、ジビニル芳香族化合物由来の構造単位(a)及びモノビニル芳香族化合物由来の構造単位(b)の存在モル分率をそれぞれa及びbとしたとき、a/(a+b)=0.05〜0.96を満足することが好ましい。
【0012】
モノビニル芳香族化合物由来の構造単位(b)を与えるモノビニル芳香族化合物としては、スチレン、エチルビニルベンゼン、ビニルナフタレン、核置換ビニルナフタレン、ビニルビフェニル、核置換ビニルビフェニル、アセナフチレン、核置換アセナフチレン、ビニルアントラセン、核置換ビニルアントラセンからなる群から選ばれるモノビニル芳香族化合物が好ましい。
【0013】
また、本発明は上記の多官能ビニル芳香族共重合体を含有することを特徴とするレジスト組成物である。更に、本発明は上記の多官能ビニル芳香族共重合体と酸発生剤を含有してなることを特徴とする化学増幅ポジ型レジスト組成物である。この化学増幅ポジ型レジスト組成物は溶解阻止剤が含有されることが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の多官能ビニル芳香族共重合体は、カテコール系化合物由来の末端基を有するものであり、酸によって末端基中の保護基の開裂が可能で、アルカリ可溶性が発現する。そのため、本発明の共重合体はレジスト組成物に有用であり、露光前後のアルカリ溶解性のコントラストに優れ、更に耐熱性に優れたレジスト組成物が得られる。特に、超LSI製造用及びフォトマスクの微細パターン形成材料として好適な化学増幅ポジ型レジスト組成物として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の多官能ビニル芳香族共重合体は、ジビニル芳香族化合物、モノビニル芳香族化合物及びカテコール系化合物を反応して得られる構造の共重合体であり、上記式(1)で表される末端基を有する。本発明の多官能ビニル芳香族共重合体は、共重合後に末端を変性したものであってもよい。そして、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、エタノール及びイソプロパノールから選ばれる少なくとも1種の有機溶媒に可溶である。本発明の多官能ビニル芳香族共重合体は、上記のように末端が変性され、上記有機溶媒に可溶である。本発明の多官能ビニル芳香族共重合体は、末端が変性され、溶媒可溶性を示す多官能ビニル芳香族共重合体であるが、誤解を生じない場合は共重合体又は本発明の共重合体と略称する。
【0016】
ところで、ジビニル芳香族化合物及びモノビニル芳香族化合物を反応して得られる共重合体であって、有機溶媒に可溶である多官能ビニル芳香族共重合体は、前記特許文献5〜7等で知られている。したがって、本発明の多官能ビニル芳香族共重合体は、前記特許文献5〜7等で知られている多官能ビニル芳香族共重合体の末端基を改良したものであるともいえる。
【0017】
本発明の共重合体は、ジビニル芳香族化合物に由来する構造単位(a)及びモノビニル芳香族化合物に由来する構造単位(b)の他、カテコール系化合物に由来する上記式(1)で表される構造単位(以下、構造単位(c)という)を有する。そして、上記式(1)で表される末端基を末端基(c)という。そして、ジビニル芳香族化合物及びモノビニル芳香族化合物は重合性官能基であるビニル基を有するので単量体であり、カテコール系化合物は、共重合体末端の不飽和基と反応するが、それ自体は重合性の不飽和基を有しないので、単量体ではなく末端変性剤である。本発明の共重合体の重合鎖(主鎖及び側鎖)は単量体から生じ、末端の一部はカテコール系化合物から生ずる。全構造単位というときは、主鎖、側鎖及び末端の全部の構造単位をいう。
【0018】
それぞれの構造単位の存在モル分率をa、b及びcとすれば、a/(a+b)は0.05〜0.96、好ましくは0.4〜0.95、より好ましくは0.50〜0.90の範囲であることがよい。なお、b/(a+b)は0.04〜0.95、好ましくは0.05〜0.6である。また、c/(a+b+c)は0.1〜0.6、好ましくは0.2〜0.4、より好ましくは0.2〜0.35の範囲であることがよい。別の観点からは、構造単位(a)は、全構造単位の合計100モル%に対して、20〜60モル%であることが好ましい。全構造単位の合計100モル%に対して、構造単位(b)は5〜40モル%であることが好ましく、構造単位(c)は10〜60モル%であることが好ましい。そして、本発明の共重合体一分子当りの末端基(c)の導入量は、平均として1.0個以上であり、好ましくは2〜5個である。
【0019】
上記式(1)において、R1は酸素原子及び窒素原子を含んでもよい炭素数1〜18の炭化水素基であるが、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。nは0〜3の整数を表すが、好ましくは0又は1である。
【0020】
本発明の共重合体の末端に末端基(c)を上記の関係を満足するように導入することによって、高い熱履歴に対しても優れた耐熱性と高接着性を有し、酸不安定基が除去された後のアルカリ溶解性に優れた樹脂組成物とすることができる。末端基(c)の量が少ないとアルカリ溶解性が低下し、多すぎるとポリマーとしての機械物性が維持できず、更に耐熱性が低下する。
【0021】
本発明の共重合体は、上記式(1)で表される末端基を末端基(c)を有する。式(1)において、R2は水素又は酸不安定基であるが、R2に占める酸不安定基は5〜50モル%であり、水素は50〜95モル%である。酸不安定基としては、酸の存在下に加水分解して-OR2が-OHとなるものであれば特に制限はない。好ましくは、炭素数3〜10のアルキル基、炭素数3〜30のトリアルキルシリル基、−CH2C(=O)O−R3(R3は炭素数1〜10のアルキル基を表す)で表されるアルキルオキシカルボニルメチル基、又は−C(=O)O−R3(R3は炭素数1〜10のアルキル基を表す)で表されるアルキルオキシカルボニル基がある。
【0022】
これらの酸不安定基を末端基に導入するには、ヒドロキシ基と反応性の酸不安定基含有化合物を反応させる公知の方法が採用できる。酸不安定基の好ましい例を以下に示す。
【0023】
アルキル基としては、炭素数3〜10のアルキル基であり、分岐構造、環状構造、置換基を有していてもよい。更に具体的には、n−ブチル基、n−ペンチル基等の直鎖状アルキル基、tert−ブチル基のような分岐状アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基、1−メトキシエチル基、1−エトキシエチル基基等の置換基を有するアルキル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基等の置換基と環状構造を構成するアルキル基が挙げられる。
【0024】
トリアルキルシリル基としては、炭素数3〜30のトリアルキルシリル基であり、具体的には、トリメチルシリル基、ジメチルエチルシリル基が挙げられる。アルキルオキシカルボニル基としては、−C(=O)O−R3で表される炭素数1〜10のアルキル基を有するアルキルオキシカルボニル基であり、具体的にはtert−ブトキシカルボニル基、1−エトキシエトキシカルボニル基等が挙げられる。
【0025】
アルキルオキシカルボニルメチル基としては、−CH2C(=O)O−R3で表される炭素数1〜10のアルキル基を有するアルキルオキシカルボニルメチル基であり、具体的にはtert−ブトキシカルボニルメチル基、1−エトキシエトキシカルボニルメチル基等が挙げられる。
【0026】
これらの中で、耐熱性、感光材料としての諸特性のバランスにおいて、更に好適に使用されるのは、tert−ブトキシカルボニル基、エトキシエチル基、ブトキシエチル基、エトキシプロピル基、テトラヒドロピラニル基である。
【0027】
式(1)において、R2における水素と酸不安定基の割合は、有機溶剤への溶解性や酸不安定基除去前後のアルカリ溶解性の差異、最終物性調整等のためにR2の5〜50モル%が酸不安定基となる範囲で設定する。好ましくはR2の5〜40モル%、更に好ましくは10〜35モル%が酸不安定基となるようにする。酸不安定基の比率が5%より低いと酸により酸不安定基が除去される前後でのアルカリ溶解性の差が小さくレジストパターンのコントラストが不鮮明となりやすい。また、50%を超える場合は、置換基による耐熱性の低下などの物性低下が起こりやすくなり好ましくない。したがって、本発明の共重合体は、アルカリ不溶性であるが、酸不安定基が除去された状態ではアルカリ可溶性となる。しかし、アルカリ溶解性の差が十分にあれば、アルカリ不溶性及びアルカリ可溶性の程度は重要ではない。
【0028】
本発明の共重合体において、ジビニル芳香族化合物に由来する構造単位(a)は、耐熱性を発現させるための架橋成分としてのビニル基を含み、一方、モノビニル芳香族化合物に由来する構造単位(b)は、硬化反応に関与するビニル基を有しないため分子の直線性、すなわち溶解性が向上される。したがって、a/(a+b)が0.05未満ではレジストの耐熱性が不足し、0.96超ではアルカリ溶解性が低下する。
【0029】
共重合体中では、ジビニル芳香族化合物に由来する構造単位(a)は、一部は架橋して分岐構造を与え、一部は末端ビニル基として残存し、この末端ビニル基の一部は前記末端構造単位(c)と結合し、一部は重合鎖中に不飽和基として残る。したがって、ジビニル芳香族化合物に由来する構造単位(a)は、共重合体を分岐して末端を増やすと共に、重合硬化性を与える。しかし、ジビニル芳香族化合物の多くが架橋すると硬化して溶剤可溶性を示さなくなるので、溶剤可溶性を示すように重合させる。好ましくは、末端ビニル基が全構造単位の0.5〜20モル%、好ましくは1〜10モル%となるようにする。末端ビニル基は硬化物の耐熱性等の物性を向上させるが、アルカリ溶解性を妨げる場合はなくともよい。
【0030】
本発明の共重合体のMn(ここで、Mnはゲル浸透クロマトグラフィーを用いて測定される標準ポリスチレン換算の数平均分子量である)は500〜10,000であり、好ましくは700〜5,000、更に好ましくは1,000〜4,000である。Mnが500未満であると共重合体の粘度が低すぎるため、厚膜の形成が困難になるなど、加工性が低下し、また、Mnが10,000を超えると、ゲルが生成しやすくなり、薄膜を成形した場合、解像度の低下を招くとともに、末端官能基の数が低下するため、アルカリ溶解性の向上が望めない。分子量分布(Mw/Mn)の値は50.0以下、好ましくは20.0以下、より好ましくは1.5〜3.0である。Mw/Mnが50.0を超えると、共重合体の溶解特性の悪化、ゲルの発生といった問題点を生ずる。
【0031】
本発明の共重合体は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、エタノール及びイソプロパノールから選ばれるいずれか1以上の有機溶媒に可溶であり、更に15%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に可溶であるが、有利には上記有機溶媒のいずれにも可溶である。有機溶媒及びアルカリ溶液に可溶でな共重合体であるためには、ジビニル芳香族化合物のビニル基の一部は架橋せずに残存し適度な架橋度とすることにより可能である。ここで、可溶であるとは有機溶媒及びアルカリ溶液等の溶媒100mlに、25℃で、1g以上が溶解することをいう。
【0032】
本発明の共重合体は上記特許文献等に示される方法に準じて得ることができる。具体的には、ジビニル芳香族化合物とモノビニル芳香族化合物と下記式(5)で表されるカテコール系化合物を使用し、共重合させて、カテコール系化合物由来の末端基を有する中間共重合体を得て、その後中間共重合体の末端ヒドロキシの水素の一部を酸不安定基に置換することにより得ることができる。式(5)において、R1及びnは式1のR1及びnと同じ意味である。
【0033】
【化2】

【0034】
例えば、中間共重合体の製造方法としては、ジビニル芳香族化合物、モノビニル芳香族化合物及びカテコール系化合物を、ルイス酸触媒、エステル化合物から選ばれる助触媒の存在下、カチオン共重合させることにより得ることができる。
【0035】
ジビニル芳香族化合物とモノビニル芳香族化合物とカテコール化合物の使用量は、本発明の共重合体の組成を与えるように決められるが、ジビニル芳香族化合物を、好ましくは全単量体の10〜90モル%、より好ましくは40〜95モル%、更に好ましくは50〜90モル%使用する。モノビニル芳香族化合物を好ましくは全単量体の90〜10モル%、より好ましくは5〜60モル%、更に好ましくは10〜50モル%使用する。
【0036】
単量体は上記のように重合性不飽和結合を有する成分をいうが、その他の単量体を全単量体の50モル%以下、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下使用してもよい。その他の単量体としては、脂肪族ビニル化合物等がある。
【0037】
中間共重合体の製造で用いられるルイス酸触媒としては、金属イオン(酸)と配位子(塩基)からなる化合物であって、電子対を受け取ることのできるものであれば特に制限なく使用できる。分子量及び分子量分布の制御及び重合活性の観点から、三フッ化ホウ素のエーテル(ジエチルエーテル、ジメチルエーテル等)錯体が最も好ましく使用される。ルイス酸触媒はカテコール系化合物1モルに対して、0.001〜10モルの範囲内で用いるが、より好ましくは0.001〜0.01モルである。ルイス酸触媒の使用量が過大であると、重合速度が大きくなりすぎるため、分子量分布の制御が困難となるばかりでなく、フェノール性水酸基の導入量が減少する。
【0038】
助触媒としてはエステル化合物から選ばれる1種以上が挙げられる。その中で、重合速度及び共重合体の分子量分布制御の観点から炭素数4〜30のエステル化合物が好適に使用される。入手の容易さの観点から、酢酸エチル、酢酸プロピル及び酢酸ブチルが好適に使用される。助触媒はカテコール系化合物1モルに対して0.001〜10モルの範囲内で使用するが、より好ましくは0.01〜1モルである。助触媒の使用量が過大であると、重合速度が減少し、共重合体の収率が低下し、フェノール性水酸基の導入量が減少する。一方、助触媒の使用量が過少であると、重合反応の選択性が低下し、分子量分布の増大、ゲルの生成等が生じる他、重合反応の制御が困難となる。
【0039】
カテコール系化合物は重合反応時に重合活性種との間で連鎖移動反応を起こし、中間共重合体の末端に、アルカリ溶解性の付与を可能にするカテコール性水酸基を導入する役割を果たす化合物である。カテコール系化合物は重合性の不飽和基を有しないので、末端のみに存在する。カテコール系化合物の使用量は、全単量体1モルに対し、0.01〜10モルの範囲が好ましく、より好ましくは0.5〜5モルである。カテコール系化合物の使用量が少ないと末端基(c)の導入量が減少し、アルカリ溶解性、接着性等の機能が低下する。また、多いと共重合体中のビニル基の含有量が著しく低下するため、共重合体の硬化が困難となり、共重合体から得られる硬化物のアルカリ溶解性の低下が十分に起こらず、また耐熱性も低下する。なお、カテコール系化合物はビニル基と反応するため、過剰の場合は未反応で残る。
【0040】
カテコール系化合物としては、カテコール、アルキルカテコール、ジアルキルカテコール、フェニルカテコール、アルキルフェニルカテコール等の炭素数6〜30のカテコール系化合物が挙げられる。これらのカテコール系化合物の内、反応性、入手の容易さの観点から、カテコールが好ましく用いられる。
【0041】
ジビニル芳香族化合物は耐熱性を発現させるための架橋成分として重要な役割を果たす。これらの例としては、ジビニルベンゼン(m−およびp−両方の異性体)、ジビニルナフタレン(各異性体を含む)、ジビニルビフェニル(各異性体を含む)等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。また、これらは単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
モノビニル芳香族化合物は、本発明の多官能ビニル芳香族共重合体の溶剤可溶性及び加工性を改善する機能を有する。使用されるモノビニル芳香族化合物の例としては、スチレン、核アルキル置換モノビニル芳香族化合物、α−アルキル置換モノビニル芳香族化合物、β−アルキル置換スチレン、アルコキシ置換スチレン等があるが、これらに制限されるものではない。重合体のゲル化を防ぎ、溶媒への溶解性、加工性の改するために、特にスチレン、エチルビニルベンゼン(m−およびp−両方の異性体)、ビニルナフタレン、核置換ビニルナフタレン、ビニルビフェニル、核置換ビニルビフェニル、アセナフチレン、核置換アセナフチレン、ビニルアントラセン、核置換ビニルアントラセンが好まれて使用される。ここで、核置換ビニルナフタレン等の核置換化合物の置換基としては炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。
【0043】
重合反応は、生成する中間共重合体を溶解し、誘電率が2〜15である1種以上の溶媒中で行わうことがよい。溶媒としては、トルエン、キシレン、n−へキサン、シクロへキサン、メチルシクロへキサン及びエチルシクロへキサンが特に好ましい。また、溶媒の使用量は、得られる重合溶液の粘度や除熱の容易さを考慮して、重合終了時において重合溶液中の共重合体の濃度が1〜80wt%、好ましくは5〜60wt%、特に好ましくは7〜50wt%となるように決定される。重合温度は20〜120℃の範囲であるが、好ましくは40〜100℃である。
【0044】
次に、得られた中間共重合体を、ジ-t-ブチルジカーボネート等の酸不安定性基を有する化合物と反応させて、本発明の共重合体とする。本発明の共重合体は、上記末端基で末端が酸不安定基により一部置換されたカテコールで変性されているため酸発生剤との共存でポジ型レジストとしての使用が可能である。したがって、光・放射線酸発生剤との組成物とした場合、酸が発生した部分でのみアルカリ現像性が発現する化学増幅ポジ型レジストとなる。
【0045】
次に、本発明のレジスト組成物(レジスト材料ともいう)について説明する。
【0046】
本発明のレジスト材料は、公知の二成分系又は三成分系の化学増幅ポジ型レジスト材料として構成でき、本発明の共集合体は、有機溶媒、酸発生剤、場合によっては更に溶解阻止剤を主成分とするレジスト材料中に配合することができる。
【0047】
ここで、有機溶媒としては、シクロヘキサノン、メチル−2−n−アミルケトンなどのケトン類、3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノールなどのアルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、メチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−エトキシプロピオネートなどのエステル類が挙げられ、これらの一種類を単独で又は二種類以上を混合して使用することができる。これらの中では、レジスト成分中の酸発生剤の溶解性が最も優れているジエチレングリコールジメチルエーテルや1−エトキシ−2−プロパノールが好ましく使用される。なお、有機溶媒の使用量は、多官能ビニル芳香族共重合体100重量部に対し200〜1,000重量部、好ましくは400〜800重量部である。200部より少ないと相溶性が低下し、成膜性に劣る場合が生じ、1,000重量部を超えるとレジスト膜を形成した場合に薄膜になり、使用に供し得ない場合が生じる。
【0048】
酸発生剤としては、公知のものを使用できる、例えばオニウム塩、スルホン酸エステル、ジアゾスルホン等が挙げられるが、オニウム塩が好ましく、オニウム塩としては、トリフェニルスルホニウムトリフレート誘導体、トリフェニルスルホニウムトシレート誘導体等が挙げられる。酸発生剤の添加量は、多官能ビニル芳香族共重合体100重量部に対し1〜20重量部、好ましくは2〜10重量部である。
【0049】
レジスト材料には、更に溶解阻止剤を添加することができる。溶解阻止剤としては、分子内に一つ以上の酸不安定基を有するものが好ましい。溶解阻止剤としては公知のものを使用でき、具体的にはビスフェノールA誘導体、フェノールフタレイン誘導体等が例示されるが、特に、水酸基の水素原子をtert−ブトキシカルボニル基で置換した化合物が好ましく使用される。溶解阻止剤の添加量は、可溶性多官能ビニル芳香族共重合体100重量部に対し5〜50重量部、好ましくは10〜30重量部である。
【0050】
更に、本発明のレジスト材料には、含窒素有機化合物を配合してもよい、含窒素有機化合物は、酸発生剤より発生する酸がレジスト膜中に拡散する際の拡散速度を抑制することができ、このような含窒素有機化合物の配合により、レジスト膜中での酸の拡散速度が抑制されて解像度が向上し、露光後の感度変化を抑制したり、基板や環境依存性を少なくし、露光余裕度やパターンプロファイル等を向上することができる。また、感度、硬化性を向上させるために他の多官能低分子モノマーとして各種(メタ)アクリレート化合物や塗布性を向上させるために界面活性剤、基板よりの乱反射の影響を少なくするために吸光性材料を配合することができる。
【0051】
本発明のポジ型レジスト組成物を使用してパターンを形成するには、公知のリソグラフィー技術を採用して行うことができ、例えばシリコーンウエハー上へスピンコーティング法によりレジストを塗布し、プリベークすることでレジスト膜を形成する。その後、遠赤外線、電子線、X線等の光エネルギー線を照射して露光後、アルカリ水溶液で現像することにより行うことができる。その後、高温ベークして硬化を進めることがよい。
【実施例】
【0052】
次に実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらにより制限されるものではない。なお、各例中の部はいずれも重量部である。また、実施例中の軟化温度等の測定は以下に示す方法により試料調製及び測定を行った。
【0053】
1)ポリマーの分子量及び分子量分布
多官能芳香族共重合体の分子量及び分子量分布測定はGPC(東ソー製、HLC−8120GPC)を使用し、溶媒にテトラヒドロフラン、流量1.0ml/min、カラム温度38℃、単分散ポリスチレンによる検量線を用いて行った。
【0054】
2)ポリマーの構造
日本電子製JNM−LA600型核磁気共鳴分光装置を用い、13C−NMR及び1H−NMR分析により決定した。溶媒としてクロロホルム−d1を使用し、テトラメチルシランの共鳴線を内部標準として使用した。
3)末端基の解析
末端基の算出は、上記のGPC測定より得られる数平均分子量と1H−NMR測定と元素分析の結果より得られるモノマー総量に対する末端基を導入するために使用した誘導体量とから、多官能ビニル芳香族共重合体1分子中に含まれる末端基数を算出した。
【0055】
4)硬化物のガラス転移温度(Tg)及び軟化温度測定の試料調製及び測定
乾燥後の厚さが20μmになるように、ガラス基板に多官能ビニル芳香族共重合体溶液を均一に塗布し、ホットプレートを用いて90分で30分間加熱し、乾燥させた。ガラス基板とともに得られた樹脂膜はTMA(熱機械分析装置)にセットし、窒素気流下、昇温速度10℃/分で220℃まで昇温し、更に220℃で20分間加熱処理することにより残存する溶媒を除去するとともに多官能ビニル芳香族共重合体を硬化した。ガラス基板を室温まで放冷した後、TMA測定装置中の試料に分析用プローブを接触させ、窒素気流下、昇温速度10℃/分で30℃から360℃までスキャン測定を行い、接線法で軟化温度を求めた。
【0056】
5)レジストパターン及び高温ベーク後レジストパターン耐熱性の評価
得られたパターンの形状は、走査型電子顕微鏡を用いて観察した。更に,現像後のシリコーンウエハーを130℃の高温で5分間ベークし,パターンの劣化の状態を同様に走査型電子顕微鏡により観察し、目視にて
◎:加熱前後のパターン形状の変化全くなし
○:矩形は維持しているが、加熱前後のパターン形状に若干の変化が見られる
×:加熱後、熱垂れのためパターン劣化
と評価した。
【0057】
6)有機溶媒及びアルカリ水溶液への溶解試験
25℃の各種有機溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、エタノール及びイソプロパノール)100mlに対し、共重合体1gを加え、マグネチックスターラーを用いて30分攪拌した後に目視で溶解性を確認した。完全に溶解した場合を可溶性とした。また、アルカリ水溶液への溶解試験としては、共重合体1.0gをエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート15gに溶かして溶液とし、スピンコート法によりシリコーンウエハー上に成膜した。膜厚は乾燥後の膜厚で約1μmとなるような回転数で塗布した。80℃で20分間プリベークを行った。この共重合体薄膜に対し、2.38%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(花王株式会社製、クリーンスルーKS−5020)を用いて25秒間現像を行い、残存膜厚を測定した。残存膜厚がゼロであった場合を可溶性とし溶解性を確認した。
【0058】
合成例1
ジビニルベンゼン1.701モル(242.3mL)、エチルビニルベンゼン0.399モル(56.8mL)、アセナフチレン0.900モル(137.0g)、カテコール3.15モル(346.8g)、酢酸ブチル400.0mL、トルエン800.0mLを3.0Lの反応器内に投入し、60℃で50ミリモルの三フッ化ホウ素のジエチルエーテル錯体を添加し、60℃で1時間、90℃で3時間反応させた。重合反応をメタノールで停止させた後、室温で反応混合液を大量のヘキサンに投入し、重合体を析出させた。得られた重合体をメタノールに溶解させ、少量の塩酸を溶解させた大量の水中に投入して重合体を析出させた、水洗、濾別、乾燥、秤量して、共重合体A 311.12gを得た。
【0059】
得られた共重合体AのMnは906、Mwは1720、Mw/Mnは1.90であった。13C‐NMR及び1H‐NMR分析を行うことにより、共重合体Aはカテコールに由来する末端基の共鳴線が観察された。共重合体Aの元素分析結果と標準ポリスチレン換算の数平均分子量から算出される可溶性多官能ビニル芳香族共重合体のカテコール由来の末端基の導入量(c1)は2.6(個/分子)で、全構造単位の31.6モル%であった。また、ジビニルベンゼン由来の構造単位を72.3モル%及びアセナフチレンとエチルベンゼン由来の構造単位を合計27.7モル%含有していた(末端構造単位を除く)。共重合体A中に含まれるビニル基含有量は、3.4モル%であった(末端構造単位を除く)。また全構造単位に対するジビニルベンゼン由来の構造単位は49.5%であった。なお、「末端構造単位を除く」は、ジビニル芳香族化合物の構造単位(a)及びモノビニル芳香族化合物の構造単位(b)の合計を100モル%として計算したという意味である。
共重合体Aはメタノール、エタノール、THF、アセトン、メチルエチルケトンなどの有機溶剤に可溶であった。また、2.38%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液にも可溶であり、アルカリ可溶性を有していた。ゲルの生成は認められなかった。
【0060】
合成例2
ジビニルベンゼン2.098モル(298.8mL)、エチルビニルベンゼン0.492モル(70.1mL)、スチレン0.410モル(47.0mL)、カテコール3.15モル(346.8g)、酢酸ブチル400.0mL、トルエン800.0mLを3.0Lの反応器内に投入し、50℃で50ミリモルの三フッ化ホウ素のジエチルエーテル錯体を添加し、50℃で3時間、90℃で3時間反応させた。重合反応をメタノールで停止させた後、室温で反応混合液を大量のヘキサンに投入し、重合体を析出させた。得られた重合体をメタノールに溶解させ、少量の塩酸を溶解させた大量の水中に投入して重合体を析出させた、水洗、濾別、乾燥、秤量して、共重合体B 393.78gを得た。
【0061】
得られた共重合体BのMnは1260、Mwは2340、Mw/Mnは1.86であった。13C‐NMR及び1H‐NMR分析を行うことにより、共重合体Bはカテコールに由来する末端基の共鳴線が観察された。共重合体Bの元素分析結果と標準ポリスチレン換算の数平均分子量から算出される可溶性多官能ビニル芳香族共重合体のカテコール由来の末端基の導入量(c1)は2.8(個/分子)で、全構造単位の24.5モル%であった。また、ジビニルベンゼン由来の構造単位を73.1モル%及びスチレンとエチルベンゼン由来の構造単位を合計26.9モル%含有していた(末端構造単位を除く)。共重合体B中に含まれるビニル基含有量は、2.1モル%であった(末端構造単位を除く)。また全構造単位に対するジビニルベンゼン由来の構造単位は55.2%であった。
共重合体Bはメタノール、エタノール、THF、アセトン、メチルエチルケトンなどの有機溶剤に可溶であった。また、2.38%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液にも可溶であり、アルカリ可溶性を有していた。ゲルの生成は認められなかった。
【0062】
合成例3
ジビニルベンゼン2.098モル(298.8mL)、エチルビニルベンゼン0.492モル(70.1mL)、スチレン0.410モル(47.0mL)、フェノール3.15モル(346.8g)、酢酸ブチル400.0mL、トルエン800.0mLを3.0Lの反応器内に投入し、50℃で50ミリモルの三フッ化ホウ素のジエチルエーテル錯体を添加し、50℃で3時間、90℃で3時間反応させた。重合反応をメタノールで停止させた後、室温で反応混合液を大量のヘキサンに投入し、重合体を析出させた。得られた重合体をメタノールに溶解させ、少量の塩酸を溶解させた大量の水中に投入して重合体を析出させた、水洗、濾別、乾燥、秤量して、共重合体C 339.45gを得た。
【0063】
得られた共重合体CのMnは1140、Mwは2520、Mw/Mnは2.21であった。13C‐NMR及び1H‐NMR分析を行うことにより、共重合体Cはフェノールに由来する末端基の共鳴線が観察された。共重合体Bの元素分析結果と標準ポリスチレン換算の数平均分子量から算出される可溶性多官能ビニル芳香族共重合体のフェノール由来の末端の導入量(c1)は2.9(個/分子)で、全構造単位の23.9モル%であった。また、ジビニルベンゼン由来の構造単位を72.6モル%及びスチレンとエチルベンゼン由来の構造単位を合計27.4モル%含有していた(末端構造単位を除く)。共重合体C中に含まれるビニル基含有量は、1.6モル%であった(末端構造単位を除く)。また全構造単位に対するジビニルベンゼン由来の構造単位は55.2%であった。
共重合体Cはメタノール、エタノール、THF、アセトン、メチルエチルケトンといった有機溶剤に可溶であった。しかし、2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いた場合、残膜率は80%であり、更に強い15.0%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を使用した場合でも30%の残膜率であり、パターン形成が可能なアルカリ可溶性は示さなかった。一方、ゲルの生成は認められなかった。
【0064】
実施例1
合成例1で得られた共重合体A2.3g、アセトン15mlを50mlフラスコに仕込み、溶解させた。これにジt−ブチルジカーボネート1.09g(0.005mol)、無水炭酸カリウム0.76g(0.0055mol)を加え、50℃で15時間攪拌を行った。得られた反応液から塩類を除去した後、500mlの0.1%塩酸に投入し、生じた沈澱物を濾過した。50℃で真空乾燥後、得られた固形分をTHF15mlに溶解させ、不溶解成分を除去後、500mlの0.1%塩酸に投入し、生じた沈澱を濾過した(再沈操作)。この再沈操作を2回繰り返した後、乾燥し、2.68gのt−ブチルオキシカルボニルオキシ基を導入した共重合体(共重合体D)を得た。共重合体Dは、Mn=1010であり、t−ブチルオキシカルボニルオキシ基/フェノール性水酸基の比率は、24/76であった。
【0065】
実施例2
合成例2で得られた共重合体Bを使用したこと以外は、実施例5と同様の方法によりt−ブチルオキシカルボニルオキシ基を導入した共重合体(共重合体E)を得た。得られた重合体は、Mn=1430であり、t−ブチルオキシカルボニルオキシ基/フェノール性水酸基の比率は、29/71であった。
【0066】
比較例1
合成例3で得られた共重合体Cを使用したこと以外は、実施例5と同様の方法によりt−ブチルオキシカルボニルオキシ基を導入した共重合体(共重合体F)を得た。得られた重合体は、Mn=1360であり、t−ブチルオキシカルボニルオキシ基/フェノール性水酸基の比率は、25/75であった。
【0067】
実施例3〜12、比較例2
実施例1〜2及び比較例1で得られた共重合体D〜Fと、下記式(PAG1〜4)で示される酸発生剤と、下記式(DRI1)又は(DRI2)で示される溶解阻止剤を表1に示す組成で溶媒に溶解し、これを0.2μmのテフロン(登録商標)製フィルターで濾過することにより、ポジ型レジスト組成物溶液を調製した。
【0068】
得られたポジ型レジスト組成物溶液を、シリコーンウエハー上へスピンコーティングし、0.8μmの厚さに塗布した。次いで、このシリコーンウエハーをホットプレートを用いて100℃で120秒間ベークした。ベーク後の膜厚は0.78μmであった。これをエキシマレーザーステッパー(ニコン社、NSR−2005EX8A,NA−0.5)を用いて露光し、90℃で60秒ベークを施し、2.38%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で現像を行い、ポジ型のパターンを得た。更に,現像後のシリコーンウエハーを130℃の高温で5分間ベークし,パターンの劣化の状態を同様に走査型電子顕微鏡により観察した。結果を表1に示す。
【0069】
表中の記号の説明。
DGLM:ジエチレングリコールジメチルエーテル
NMP:2−メチルピロリジノン
【0070】
【化3】

【0071】
【化4】

【0072】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジビニル芳香族化合物由来の構造単位(a)及びモノビニル芳香族化合物由来の構造単位(b)を含む共重合体であって、その末端に平均して1分子あたり1個以上の下記式(1)
【化1】

(ここで、R1は酸素原子及び窒素原子を含んでもよい炭素数1〜18の炭化水素基であり、nは0〜3の整数を表す。R2は水素原子又は酸不安定基であり、R2中の5〜50モル%は酸不安定基である。)
で表されるカテコール系化合物由来の末端基を有し、数平均分子量が500〜10,000であり、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、エタノール又はイソプロパノールに可溶であることを特徴とする多官能ビニル芳香族共重合体。
【請求項2】
ジビニル芳香族化合物由来の構造単位(a)及びモノビニル芳香族化合物由来の構造単位(b)の存在モル分率をそれぞれa及びbとしたとき、a/(a+b)=0.05〜0.96を満足する請求項1に記載の多官能ビニル芳香族共重合体。
【請求項3】
モノビニル芳香族化合物由来の構造単位(b)を与えるモノビニル芳香族化合物が、スチレン、エチルビニルベンゼン、ビニルナフタレン、核置換ビニルナフタレン、ビニルビフェニル、核置換ビニルビフェニル、アセナフチレン、核置換アセナフチレン、ビニルアントラセン、核置換ビニルアントラセンからなる群から選ばれるモノビニル芳香族化合物である請求項1又は2に記載の多官能ビニル芳香族共重合体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の多官能ビニル芳香族共重合体を含有することを特徴とするレジスト組成物。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の多官能ビニル芳香族共重合体と酸発生剤を含有してなることを特徴とする化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【請求項6】
更に、溶解阻止剤が含有された請求項5に記載の化学増幅ポジ型レジスト組成物。

【公開番号】特開2010−229262(P2010−229262A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−77373(P2009−77373)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000006644)新日鐵化学株式会社 (747)
【Fターム(参考)】