説明

末端官能基化ポリオレフィン

【課題】新規な末端官能基化ポリオレフィン及びその製造方法を提供する。
【解決手段】末端官能基化ポリオレフィンは、下記の一般式で表される。


(式中nは20〜1000の整数、各Rは、H、−CH、−C、および−CHCH(CHからなる群から独立に選択され、Xは、末端に、−OH、−COOY、−NH、−N(CH、−N(CHCH、−SOH、及びハロゲンからなる群から選択される官能基を有する基であり、Yは、H、アルキル基、または金属である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な末端官能基化ポリオレフィン及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン、例えばポリプロピレンは、安価で耐油性、耐薬品性に優れ、しかも環境負荷が少ないといった特徴を有しており、このようなポリマー特有の性質を利用して種々の用途に用いられている。
【0003】
しかしながら、ポリプロピレンは非極性の高分子であり、かつ官能基を導くことが困難であるために、他の極性物質との相互作用が乏しく、他の極性基を有する高分子との混合による強化が困難であることや、塗装性、接着性に劣るという問題点を有する。そこで、ポリプロピレンに極性基や官能基を導入する方法が試みられている。
【0004】
そのような官能基を導入したポリオレフィンとして、本発明者らはすでに、ポリオレフィンの高度制御熱分解により得られる両末端二重結合含有ポリオレフィンを出発原料とする、無水マレイン酸変性ポリオレフィンを提供した(特許文献1)。
【0005】
また、近年、クリックケミストリーの一つとしてチオール−エン反応が注目されており、様々な応用が開発されている。クリックケミストリーとは、温和な反応条件、高い反応性、副生成物が生成しないといった反応を指す。有機合成だけでなく、高分子への応用も盛んに試みられている。(非特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−161141号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Charles E. Hoyle, et al., Journal of Polymer Science : Part A : Polymer Chemistry, 42, 5301−5338(2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、テレケリックポリオレフィンの両末端に官能基を有する新規な末端官能基化ポリオレフィン及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意研究した結果、下記式に表されるように、本発明者等により見出されたイソタクチックポリオレフィンの熱分解で得られるテレケリックポリオレフィンの両末端に、官能基を有するポリオレフィンが得られることを見出した。
【0010】
すなわち本発明は、下記一般式(i)で表される末端官能基化ポリオレフィン
【化1】

(式中nは20〜1000の整数、各Rは、H、−CH、−C、および−CHCH(CHからなる群から独立に選択され、Xは、末端に、−OH、−COOY、−NH、−N(CH、−N(CHCH、−SOH、及びハロゲンからなる群から選択される官能基を有する基であり、Yは、H、アルキル基、または金属である。)に関する。
【0011】
さらに、本発明は、前記Xが、−CHCHOH、−CHCOOY、−CH(COOY)CHCOOY、−CHCH(OH)CHOH、−N(CH、−N(CHCHからなる群から選択されることを特徴とする末端官能基化ポリオレフィンに関する。
【0012】
また、本発明は、下記一般式(ii)で表される両末端二重結合を有するポリオレフィンと、HS−Xで表されるチオール化合物とを反応させることにより、一般式(i)で表される末端官能基化ポリオレフィンを製造する方法
【化2】

(式中nは20〜1000の整数、各Rは、H、−CH、−C、および−CHCH(CHからなる群から独立に選択され、Xは、末端に、−OH、−COOY、−NH、−N(CH、−N(CHCH、−SOH、及びハロゲンからなる群から選択される官能基を有する基であり、Yは、H、アルキル基、または金属である。)に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、両末端に官能基を有する新規なポリオレフィンを提供することができる。両末端の官能基が反応性に富むことから、種々のポリマーの改質および機能性ポリマーの製造原料として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】iPP−TVD及びiPP−2−MEの1H−NMRスペクトル。
【図2】iPP−TVD及びiPP−TGAの1H−NMRスペクトル。
【図3】iPP−TVD及びiPP−MSA−Meの1H−NMRスペクトル。
【図4】iPP−MSA−Me、iPP−MSA/K、及びiPP−MSAのIRスペクトル
【図5】iPP−TVD及びiPP−MPDO(実施例5)の1H−NMRスペクトル。
【図6】iPP−TVD及びiPP−MPDO(実施例6、7)の1H−NMRスペクトル。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(両末端に官能基を有するポリオレフィン)
本発明に係る両末端に官能基を有するポリオレフィンは上記一般式(i)の構造を有する。
【0016】
前記各式中、各RはH、−CH、−C、および−CHCH(CHからなる群から独立に選択される。すなわち、ポリオレフィン鎖を構成するポリオレフィンには、ポリプロピレン(Rがすべて−CH)、ポリ1−ブテン(Rがすべて−C)、エチレン・プロピレン共重合体(RがH又は−CH)、エチレン・1−ブテン共重合体(RがH又は−C)、プロピレン・1−ブテン共重合体(Rが、−CH又は−C)又はポリ4−メチル−1−ペンテン(Rがすべて−CHCH(CH)であるもの等が含まれる。なお、共重合体に関してはランダム共重合体およびブロック共重合体の両方を含む。本発明において、Rは−CHが好ましい。
【0017】
前記各式中、nはモノマー単位の繰返し数を表す。nは20〜1000である。好ましくは、20〜500である。また、数平均分子量Mnは1000〜40000、重量平均分子量は1000〜1000000である。
【0018】
前記各式中、Xは、末端に、−OH、−COOY、−NH、−N(CH、−N(CHCH、−SOH、及びハロゲンからなる群から選択される官能基を有する基であり、Yは、H、アルキル基、または金属である。
【0019】
本発明において、Yは、H又はアルカリ金属が好ましい。さらに、本発明において、Xは、−CHCHOH、−CHCOOH、−CH(COOH)CHCOOH、−N(CHCH、又は−CHCH(OH)CHOHが好ましい。
【0020】
(両末端に官能基を有するポリオレフィンの製造方法)
本発明に係る両末端に官能基を有するポリオレフィンは、上記一般式(ii)で表される両末端二重結合を有するポリオレフィンと、HS−Xで表されるチオール化合物とを反応させることにより製造できる。
【0021】
両末端二重結合を有するポリオレフィンは、本発明者らが開発した制御熱分解(Macromolecules,28,7973(1995)参照。)によるポリオレフィンの熱分解生成物として得られる。
【0022】
ポリプロピレンを例に説明すると、制御熱分解法によって得られるポリプロピレンの熱分解生成物は、数平均分子量Mnが20〜1000、分散度Mw/Mnが1.0〜5.0、1分子当たりの二重結合の平均数が1.3〜1.9程度であり、分解前の原料ポリプロピレンの立体規則性を保持しているという特性を有している。分解前の原料のポリプロピレンの数平均分子量は、100000〜10000000の範囲内、好ましくは100000〜1000000の範囲内である。
【0023】
熱分解装置としては、Journal of Polymer Science:Polymer Chemistry Edition, 21, 703(1983)に開示された装置を用いることができる。パイレックス(登録商標)ガラス製熱分解装置の反応容器内にポリプロピレンを入れて、減圧下、溶融ポリマー相を窒素ガスで激しくバブリングし、揮発性生成物を抜き出すことにより、2次反応を抑制しながら、所定温度で所定時間、熱分解反応させる。熱分解反応終了後、反応容器中の残存物を熱キシレンに溶解し、熱時濾過後、アルコールで再沈殿させ精製する。再沈物を濾過回収して、真空乾燥することによりテレケリックポリプロピレンが得られる。
【0024】
熱分解条件は、分解前のポリプロピレンの分子量と最終目的物のブロック共重合体の1次構造からテレケリックポリプロピレンの分子量を予測し、予め実施した実験の結果を勘案して調整する。熱分解温度は300〜450℃の範囲が好ましい。300℃より低い温度ではポリプロピレンの熱分解反応が充分に進行しない恐れがあり、450℃より高い温度ではテレケリックポリプロピレンの劣化が進行する恐れがある。
【0025】
両末端二重結合を有するポリオレフィンとチオール化合物とを反応させる方法は特に制限されるものではなく、従来公知の反応が適用できる。本発明において特に好ましい反応は、チオール化合物とともにラジカル開始剤を使用する方法である。ここで、ラジカル開始剤は特に制限はないが、具体的にはα,α’−アゾビスイソブチロニトリルが好ましい。
【0026】
本発明の製造方法によれば、例えば、両末端二重結合を有するポリオレフィンと2-メルカプトエタノール(HS−CHCHOH)とを反応させることにより、両末端に水酸基を有するポリオレフィンを製造することができる。両末端に水酸基を有するポリオレフィンを製造する方法としては、両末端二重結合を有するポリオレフィンの末端二重結合を、ハイドロボレーションと続く酸化反応によって水酸基に変換する方法が従来知られている。具体的には、両末端二重結合を有するポリオレフィンに、ボラン−テトラヒドロフラン錯体THF溶液を加え、加熱した後、水酸化ナトリウムと過酸化水素水溶液を加え、さらに加熱還流する方法である。このように、両末端に水酸基を有するポリオレフィンを製造する従来法は、多段階反応であって製造工程が煩雑である。これに対して、本発明の製造方法は、使用する試薬は入手しやすく、さらに、1段階の反応工程であるため、コスト面においても非常に優れた方法である。
【0027】
また、本発明の製造方法によれば、例えば、両末端二重結合を有するポリオレフィンとメルカプト酢酸(HS−CHCHCOOH)とを反応させることにより、両末端にカルボキシル基を有するポリオレフィンを製造することができる。両末端にカルボキシル基を有するポリオレフィンを製造する方法としては、両末端二重結合を有するポリオレフィンの末端二重結合を、ハイドロボレーションと続く酸化反応によって水酸基に変換した後、酸化する方法が従来知られている。具体的には、上記のとおり、両末端に水酸基を有するポリオレフィンを得た後、両末端に水酸基を有するポリオレフィンに過マンガン酸カリウムを加え、加熱する方法である。このように、両末端にカルボキシル基を有するポリオレフィンを製造する従来法は、両末端に水酸基を有するポリオレフィンを製造する方法と同様に、多段階反応であって製造工程が煩雑である。これに対して、本発明の製造方法は、使用する試薬は入手しやすく、さらに、1段階の反応工程であるため、コスト面においても非常に優れた方法である。
【0028】
また、本発明の製造方法によれば、例えば、両末端二重結合を有するポリオレフィンとメルカプトコハク酸(HS−CH(COOH)CHCOOH)とを反応させることにより、両末端に−CH(COOH)CHCOOH基を有するポリオレフィンを製造することができる。両末端に−CH(COOH)CHCOOH基を有するポリオレフィンを製造する方法としては、両末端二重結合を有するポリオレフィンと無水マレイン酸を反応させる方法が従来知られている。しかし、この従来法では、カルボン酸の導入量が制御できない。すなわち、両末端に−CH(COOH)CHCOOH基を有するポリオレフィンを選択的に得ることができない。これに対して、本発明の製造方法では、より簡便に、両末端に−CH(COOH)CHCOOH基を有するポリオレフィンを定量的に製造することができる。
【0029】
本発明のポリオレフィンは、両末端に反応性に富む官能基を有している。このため、本発明のポリオレフィンはその末端官能基を利用することにより、新規なポリマーを製造するための原料として好適である。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、各実施例において1H−NMRスペクトルは、JEOL社製JNM−GX400で測定し、IRスペクトルは、Perkin−Elmer6100で測定した。分子量は、GPC分析装置(HLC−8121GPC/HT(東ソー(株)製))で測定した。その際、オルトジクロロベンゼンを移動相として測定し、ポリスチレン換算の分子量を求めた。
【0031】
(実施例1)
イソタクチックポリプロピレン(日本ポリプロ社製、Mn=150000、Mw/Mn=3.5)を高度制御熱分解することによりテレケリックポリプロピレン(以下、iPPv−TVDと記す。)を得た。得られたiPPv−TVDは、Mn=1800、Mw/Mn=1.1、ftvd=1.8であった。
【0032】
iPPv−TVD(0.2mmol、0.20g)とα,α’-アゾビスイソブチロニトリル(1mmol,0.164g)、トルエン(2ml)、及び2-メルカプトエタノール(以下、2−MEと記す。)(20mmol、1.4ml)を加え、窒素置換後80℃で4時間撹拌した。反応終了後、過剰量のメタノールで再沈殿精製し、沈殿を吸引ろ過により回収し生成物iPP−2−MEを得た。
【0033】
図1にiPP‐TVD及びiPP−2−MEの1H−NMRスペクトルを示す。iPP−TVDの4.6及び4.7ppmの末端二重結合に由来するシグナルeは、チオール−エン反応により消失した。そして、結合部のメチレンプロトンのシグナルgが2.2〜2.7ppmに出現した。また、2-ME由来の2.7ppm及び3.7ppmのシグナルh,iが出現したことにより、反応の定量的進行が確認された。
【0034】
(実施例2)
iPPv−TVD(1mmol、1.0g)とα,α’-アゾビスイソブチロニトリル (0.2mmol、0.033g)、トルエン(10ml)、及びメルカプト酢酸(以下、TGAと記す。)(3mmol、0.21ml)を加え、窒素置換後80℃で4時間撹拌した。反応終了後、過剰量のメタノールで再沈殿精製し,沈殿を吸引ろ過により回収し生成物iPP‐TGAを得た。
【0035】
図2にiPP‐TVD及びiPP−TGAの1H−NMRスペクトルを示す。iPP−TVDの4.6及び4.7ppmの末端二重結合に由来するシグナルeは、チオール−エン反応により消失した。そして、結合部のメチレンプロトンのシグナルgが2.2〜2.7ppmに出現した。また、TGA由来の3.2ppmのシグナルhが出現したことにより、反応の定量的進行が確認された。
【0036】
(実施例3)
iPPv−TVD(0.2mmol、0.20g)とα,α’−アゾビスイソブチロニトリル (0.4mmol、0.066g)、トルエン(2ml)、及びメルカプトこはく酸メチル(以下、MSA−Meと記す。)(20mmol、3.56ml)を加え、窒素置換後80℃で8時間撹拌した。反応終了後、過剰量のメタノールで再沈殿精製し、沈殿を吸引ろ過により回収し生成物iPP−MSA−Meを得た。
【0037】
図3にiPP‐TVD及びiPP−MSA−Meの1H−NMRスペクトルを示す。iPP−TVDの4.6及び4.7ppmの末端二重結合に由来するシグナルeは、チオール−エン反応により消失した。そして、結合部のメチレンプロトンのシグナルgが2.2〜2.7ppmに出現した。また、MSA−Me由来の2.7ppm,3ppm及び3.6−3.8ppmのシグナルh,i,j,kが出現したことにより、反応の定量的進行が確認された。
【0038】
(実施例4)
実施例3で得られたiPP−MSA−MeをTHFに溶解後、水酸化カリウム/エタノール溶液を加え、還流下3時間撹拌した。反応終了後、過剰量のメタノールで再沈殿精製し、沈殿を吸引ろ過により回収し生成物iPP−MSA/Kを得た。さらにiPP−MSA/Kのメタノール分散液に塩酸を加え室温で3時間撹拌した。反応終了後、吸引ろ過により回収し生成物iPP‐MSAを得た。
【0039】
図4にiPP−MSA−Me,iPP−MSA/K及びiPP−MSAのIRスペクトルを示す。iPP−MSA/KにおいてはiPP−MSA−Meの1740cm−1付近に見られる脂肪酸と脂肪族アルコールのエステルのC=Oの伸縮振動の吸収が消失し、1600cm−1付近にカルボキシレートの非対称伸縮振動の吸収が出現した。また、iPP−MSAにおいては1600cm−1付近の吸収が消失し、1710cm−1付近に脂肪族カルボン酸のC=O間の伸縮振動の吸収が出現したことにより、反応の定量的進行が確認された。
【0040】
(実施例5)
iPPv−TVD(0.2mmol、0.2g)とα,α’−アゾビスイソブチロニトリル(0.8mmol、0.131g)、トルエン(2ml)、3−メルカプト−1,2-プロパンジオール(以下、MPDOと記す。)(20mmol、1.73ml)を加え、窒素置換後80℃で4時間撹拌した。さらにα,α’−アゾビスイソブチロニトリル(0.8mmol,0.131g)を加え80℃で4時間撹拌した。反応終了後、過剰量のメタノールで再沈殿精製し、沈殿を吸引ろ過により回収し生成物iPP−MPDOを得た。
【0041】
図5にiPP−TVD及びiPP−MPDOの1H−NMRスペクトルを示す。iPP−TVDの4.6及び4.7ppmの末端二重結合に由来するシグナルeは、チオール−エン反応により消失した。iPP−TVDの4.6及び4.7ppmの末端二重結合に由来するシグナルeは、チオール‐エン反応により消失した。そして、結合部のメチレンプロトンのシグナルgが2.2〜2.7ppmに出現した。また、MPDO由来の2.2〜2.7pmm,3.6ppm及び3.8ppmのシグナルh,i,jが出現したことにより、反応の定量的進行が確認された。
【0042】
(実施例6)
iPPv−TVD(0.2mmol、0.2g)とα,α’−アゾビスイソブチロニトリル(0.4mmol、0.066g)、トルエン(2ml)、3−メルカプト−1,2-プロパンジオール(以下、MPDOと記す。)(20mmol、1.73ml)を加え、窒素置換後80℃で4時間撹拌した。反応終了後、過剰量のメタノールで再沈殿精製し、沈殿を吸引ろ過により回収し生成物iPP−MPDOを得た。
【0043】
(実施例7)
実施例6において、窒素置換を酸素置換に変更した以外は、同じ方法により生成物iPP−MPDOを得た。
【0044】
図6に、iPP−TVD、実施例6で得られたiPP−MPDO(N)、及び実施例7で得られたiPP−MPDO(O)の1H−NMRスペクトルを示す。実施例6ではiPPv−TVDの4.6及び4.7ppmの末端二重結合に由来するシグナルeは、チオール‐エン反応により80%消失した。実施例7ではiPP−TVDの4.6及び4.7ppmの末端二重結合に由来するシグナルeは、チオール‐エン反応により100%消失した。そして、結合部のメチレンプロトンのシグナルgが2.2〜2.7ppmに出現した。また、MPDO由来の2.2〜2.7pmm,3.6ppm及び3.8ppmのシグナルh,i,jが出現した。このことから、酸素雰囲気下で反応を行った場合には反応の進行が速く、また、少量の重合開始剤で反応が進行することが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(i)で表される末端官能基化ポリオレフィン。
【化1】


(式中nは20〜1000の整数、各Rは、H、−CH、−C、および−CHCH(CHからなる群から独立に選択され、Xは、末端に、−OH、−COOY、−NH、−N(CH、−N(CHCH、−SOH、及びハロゲンからなる群から選択される官能基を有する基であり、Yは、H、アルキル基、または金属である。)
【請求項2】
前記Xは、−CHCHOH、−CHCOOH、−CH(COOH)CHCOOH、−N(CHCH、および−CHCH(OH)CHOHからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1記載の末端官能基化ポリオレフィン。
【請求項3】
下記一般式(ii)で表される末端二重結合を有するポリレフィンと、HS−Xで表されるチオール化合物とを反応させることにより、一般式(i)で表される末端官能基化ポリオレフィンを製造する方法。
【化2】

(式中nは20〜1000の整数、各Rは、H、−CH、−C、および−CHCH(CHからなる群から独立に選択され、Xは、末端に、−OH、−COOY、−NH、−N(CH、−N(CHCH、−SOH、及びハロゲンからなる群から選択される官能基を有する基であり、Yは、H、アルキル基、または金属である。)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−100390(P2013−100390A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243934(P2011−243934)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(899000057)学校法人日本大学 (650)
【出願人】(596056896)株式会社三栄興業 (12)
【Fターム(参考)】