説明

末端官能基含有ポリオレフィンの製造方法

【課題】末端官能基含有ポリオレフィンを効率が良く製造する方法を提供すること。
【解決手段】(A)特定の遷移金属化合物と(B)(B-1)有機アルミニウム化合物、(B-2) 遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物から選ばれる1種以上の化合物、からなるオレフィン重合触媒成分の存在下、エチレン、炭素数3〜10のα−オレフィンより選ばれる1種以上のオレフィンを重合することによって片末端Al含有オレフィン重合体を製造する工程1と、生成した片末端Al含有オレフィン重合体を酸素含有化合物、ハロゲン含有物、窒素含有化合物、硫黄含有化合物と反応させる工程2により水酸基含有基、ハロゲン含有基、窒素含有化合物、硫黄含有化合物から選択される1種の官能基を含有する片末端官能基含有オレフィン重合体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、片末端官能基含有ポリオレフィンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィンは、耐溶剤・耐酸・耐アルカリ性が高く、またその成形体は高い強度を示す材料であり、幅広い用途で使用されている。しかしながら、その高い化学的安定性ゆえ、他材料との接着性が低い欠点がある。このような欠点を改善する方法の一つとして、ポリマー末端に官能基を導入する方法があり、Progress Polymer Science, 27, 39(2002)にそれらの方法が開示されている。その方法の一つとしてMacromolecular Rapid Communication, 13, 371(1992)に開示されているように、片末端不飽和結合を有するポリオレフィンと有機アルミニウム化合物との反応により、ポリマー末端にAl含有基を導入した末端Alポリオレフィンを合成し、更にそこから酸素、ハロゲンを作用させて末端水酸基、末端ハロゲン基含有ポリオレフィンを製造する方法が知られている。Al末端を持つポリオレフィンは、このような末端官能基含有ポリオレフィン合成の重要な中間体であるが、末端不飽和ポリオレフィンの合成、末端Al化、末端官能基化の3工程を必要とし、効率的ではなかった。また、特開平8−109218号公報、特開平8−120020号公報には固体状チタン触媒成分と有機アルミニウムからなる触媒系により高温で重合することにより、直接、末端Al含有ポリプロピレンを製造する方法が開示されている。この方法だと、効率よく変性体を合成できるが、ポリプロピレン部分の分子量を制御することが難しく、望んだ物性の変性体を得ることは難しかった。また、ポリエチレンの末端Al含有体は合成することができなかった。一方、Organometallics, 21, 1882 (2002)、Macromolecules 36, 9707(2003)、Organometallics 23, 460 (2004)において、トリスピラゾリルボレート配位子を有する遷移金属錯体とメチルアルモキサンの組合わせにより、片末端Al含有ポリエチレンが生成することが報告されている。しかしながら、この触媒系を用いた場合、生成物分子量、分子量分布の制御という面で難点があった。
【特許文献1】特開平8−109218号公報
【特許文献2】特開平8−120020号公報
【非特許文献1】Progress Polymer Science,27,39(2002)
【非特許文献2】Macromolecular Rapid Communication,13,371(1992)
【非特許文献3】Organometallics, 21,1882(2002)
【非特許文献4】Macromolecules 36, 9707(2003)
【非特許文献5】Organometallics 23, 460(2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、所望の分子量体の末端官能基含有ポリオレフィンを効率が良く製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、片末端官能基含有ポリオレフィンの製造法に関する。
【発明の効果】
【0005】
本発明によって、従来知られている片末端官能基含有ポリオレフィンの製造法に比べ、所望の分子量、分子量分布の重合体を効率よく製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、各項目毎に課題を解決するための手段について詳細に述べる。
本発明に係る、片末端官能基含有オレフィン重合体は、
(A)下記一般式(I)で表される遷移金属化合物と
(B)(B-1)有機アルミニウム化合物
(B-2) 遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物
から選ばれる1種以上の化合物
からなるオレフィン重合触媒成分の存在下、からなるオレフィン重合触媒成分の存在下、エチレン、炭素数3〜10のα−オレフィン、環状オレフィンより選ばれる1種以上のオレフィンを重合することにより、片末端Al含有オレフィン重合体を製造する工程1と、生成した片末端Al含有オレフィン重合体を酸素含有化合物、ハロゲン含有化合物、窒素含有化合物、硫黄含有化合物と反応させる工程2によって製造され、官能基が、水酸基含有基、ハロゲン含有基、窒素含有化合物、硫黄含有化合物から選択される1種の官能基であり、
分子量(Mw)が、5000≦Mw≦100万の範囲にあり、
官能基の1000炭素当たりの個数(N)が、
N≧14000/Mw であることを特徴としている。
【0007】
【化1】

【0008】
式中、MはZrまたはHfを示し、mは1または2の整数を示し、Aは2位に一つ以上のアルキル置換基を有する6員環炭化水素基を示し、飽和でも不飽和でも良く、R〜Rは、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよく、
また、mが2の場合にはR〜Rで示される基のうち2個の基が連結されていてもよく[但し、R同士が結合されることはない]、(4-m)はMの価数を満たす数であり、Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、nが2以上の場合は、Xで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、またXで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。
【0009】
本発明の工程1において製造される片末端Al含有オレフィン重合体は、エチレンまたは炭素数3〜10のα−オレフィン、環状オレフィンから選ばれる1種以上のオレフィンを重合することによって製造することができ、好ましくはエチレン単独、もしくはエチレンと炭素数3〜10のα−オレフィン、エチレンと環状オレフィンが好ましい。重合体を構成するモノマーの含量は、エチレンが90〜100%、α―オレフィン、または環状オレフィンが0〜10%であることが好ましい。 使用する炭素数3〜10のα−オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン等、が挙げられ、この中でも特にプロピレン、ブテンが好ましい。環状オレフィンとしてはシクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2-メチル1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレンなどが例示できる。
【0010】
本発明の片末端官能基含有ポリオレフィンは、工程1で製造した片末端Al含有ポリオレフィンと酸素含有化合物、ハロゲン含有物、窒素含有化合物、硫黄含有化合物と反応させる工程2によって製造できる。
【0011】
片末端Al含有ポリオレフィンと反応させる酸素含有化合物としては、酸素、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等が例示され、好ましくは酸素が挙げられる。反応は、不活性ガス雰囲気下、炭化水素溶媒中、0℃〜150℃の温度で、片末端Al含有ポリオレフィンの溶液、またはスラリー中に乾燥酸素、または空気を導入することによって行われる。この反応によって、末端OH化ポリオレフィンが合成できる。ハロゲン化合物としては塩素、臭素、沃素が用いられる。反応は、不活性ガス雰囲気下、炭化水素、ハロゲン化炭化水素溶媒中、ピリジン等の塩基存在下0℃〜150℃の温度で、片末端Al含有ポリオレフィンの溶液、またはスラリー中に直接ハロゲン化合物を導入することによって行われる。
【0012】
本発明に係る片末端官能基含有オレフィン重合体の分子量(Mw)は、5000≦Mw≦100万、好ましくは7000≦Mw≦75万、より好ましくは7000≦Mw≦30万である。
【0013】
本発明に係る片末端官能基含有オレフィン重合体の分子量はミリポア社製GPC−150を用い以下のようにして測定した。分離カラムは、TSK GNH HTであり、カラムサイズは直径7.5mm、長さ300mmであり、カラム温度は140℃とし、移動相にはo-ジクロルベンゼン(和光純薬)及び酸化防止剤としてBHT(武田薬品)0.025重量%を用い、1.0ml/minで移動させ、試料濃度は0.1重量%とし、試料注入量は500マイクロリットルとし、検出器として示差屈折計を用いた。標準ポリスチレンは東ソー社製を用いた。 本発明に係る官能基含有オレフィン系重合体中の1000炭素当たりの官能基の個数Nは、下記一般式(a)を満たす。
【0014】
N≧14000/Mw -----(a)
本発明に係る片末端官能基含有オレフィン重合体中に含有される官能基の1000炭素当たりの個数NはH-NMRによって定量することができる。ポリエチレンの場合を例に挙げるとH-NMRの場合、官能基が結合した末端炭素に結合した水素のピーク強度I(λ)と、反対側の末端メチル基に置換した水素原子に由来するピーク強度I(δ)、メチレン炭素に置換した水素に由来するピーク強度I(γ)より、官能基の個数Nは下記一般式(b)によって求めることができる。
【0015】
N = [(I(λ)/2)/{(I(λ)/2)+(I(δ)/3)+(I(γ)/2)}]×1000
------(b)
【0016】
本発明に係る工程1における片末端Al含有オレフィン重合体を製造するに際して使用するオレフィン重合触媒成分について説明する。 本発明で用いられる遷移金属化合物(A)は下記一般式(I)で表される化合物である。
【0017】
【化2】

【0018】
一般式(I)中、MはZr、Hfを示す。mは、1または2の整数を示し、Aは2位に一つ以上のアルキル置換基を有する6員環炭化水素基を示し、飽和でも不飽和でも良く、好ましくは下記一般式(II)、または(III)を示す。
【0019】
【化3】

【0020】
【化4】

【0021】
上記式(II)および(III)中、R、Rは、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜20の直鎖、または分岐アルキル基を示し、R、Rの少なくとも一方はアルキル基を示す。 R〜Rは、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよく、Rは、好ましくは炭化水素基であり、特に好ましくは、t―ブチル基、アミル基、アダマンチル基、フェニルエチル基、ジフェニルメチル基、クミル基、ジフェニルエチル基、トリフェニルメチル基である。また、mが2の場合にはR〜Rで示される基のうち2個の基が連結されていてもよく、(4-m)は、Mの価数を満たす数であり、
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、nが2以上の場合は、Xで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、またXで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。
【0022】
以下に、(A)上記一般式(I)で表される遷移金属化合物の具体的な例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0023】
【化5】

【0024】
【化6】

【0025】
【化7】

【0026】
式中、MはZr,またはHfを示し、Adはアダマンチル基を示す。
【0027】
(B-1)有機アルミニウム化合物
本発明で使用する有機アルミニウム化合物(B-1)は、
【0028】
一般式 RamAl(ORbnpq
(式中、Ra およびRb は、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である。)で表される。 具体的には、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムハイドライド、ジアルキルアルミニウムクロライド、ジアルキルアルミニウムアルコキシド、モノアルキルアルミニウムジクロライド、メチルアルモキサンが使用でき、好ましくは、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルオクチルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、メチルアルモキサンが使用され、特に好ましくはトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、メチルアルモキサンが使用できる。
【0029】
また、これらの有機アルミニウム化合物は2種以上同時に使用することもでき、好ましい組合わせは、トリメチルアルミニウムとメチルアルモキサン、トリエチルアルミニウムとメチルアルモキサン、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、メチルアルモキサンである。
【0030】
有機アルミニウム化合物(B-1)は、遷移金属化合物(A)に対し500当量以上、好ましくは750当量以上使用する。
【0031】
(B-2)遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物
本発明で用いられる遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(B-2) (以下、「イオン化イオン性化合物」という。)としては、特開平1−501950号公報、特開平1−502036号公報、特開平3−179005号公報、特開平3−179006号公報、特開平3−207703号公報、特開平3−207704号公報、USP−5321106号などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物などを挙げることができる。
【0032】
具体的には、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェロセニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムペンタフェニルシクロペンタジエニル錯体、N,N-ジエチルアニリニウムペンタフェニルシクロペンタジエニル錯体、下記式(VII)または(VIII)で表されるホウ素化合物などを挙げることができる。
【0033】
【化8】


(式中、Etはエチル基を示す。)
【0034】
【化9】

【0035】
これらの遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(B-2)は、有機アルミニウム化合物(B-1)と併用して使用することが好ましい。
【0036】
(C)微粒子状担体
本発明に係るオレフィン重合触媒成分として、微粒子状担体(C)を用いることができる。 本発明で用いられる(C)微粒子状担体は、無機または有機の化合物である。
【0037】
このうち無機化合物としては、多孔質酸化物、無機塩化物、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物が好ましい。
【0038】
多孔質酸化物として、具体的にはSiO、Al、MgO、ZrO、TiO、B、CaO、ZnO、BaO、ThOなど、またはこれらを含む複合物または混合物を使用、例えば天然または合成ゼオライト、SiO-MgO、SiO-Al、SiO-TiO、SiO-V、SiO-Cr、SiO-TiO-MgOなどを使用することができる。これらのうち、SiO2および/またはAl2O3を主成分とするものが好ましい。
【0039】
このような多孔質酸化物は、種類および製法によりその性状は異なるが、本発明に好ましく用いられる担体は、粒径が3〜300μm、好ましくは3.5〜200μmであって、比表面積が50〜1200m/g、好ましくは200〜850m/gの範囲にあり、細孔容積が0.3〜3.0cm/gの範囲にあることが望ましい。このような担体は、必要に応じて100〜1000℃、好ましくは150〜700℃で焼成して使用される。
【0040】
無機塩化物としては、MgCl、MgBr、MnCl、MnBr等が用いられる。無機塩化物は、そのまま用いてもよいし、ボールミル、振動ミルにより粉砕した後に用いてもよい。また、アルコールなどの溶媒に無機塩化物を溶解させた後、析出剤によってを微粒子状に析出させたものを用いることもできる。
【0041】
本発明で用いられる粘土は、通常粘土鉱物を主成分として構成される。
【0042】
また、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物として、粘土、粘土鉱物、また、六方細密パッキング型、アンチモン型、CdCl型、CdI型などの層状の結晶構造を有するイオン結晶性化合物などを例示することができる。
【0043】
このような粘土、粘土鉱物としては、カオリン、ベントナイト、木節粘土、ガイロメ粘土、アロフェン、ヒシンゲル石、パイロフィライト、ウンモ群、モンモリロナイト群、バーミキュライト、リョクデイ石群、パリゴルスカイト、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイトなどが挙げられ、イオン交換性層状化合物としては、α−Zr(HAsO)・HO、α−Zr(HPO)、α−Zr(KPO)・3HO、α−Ti(HPO)、α−Ti(HAsO)・HO、α−Sn(HPO)・HO、γ―Zr(HPO)、γ−Ti(HPO)、γ−Ti(NHPO)・HOなどの多価金属の結晶性酸性塩などが挙げられる。
【0044】
本発明で用いられる粘土、粘土鉱物には、化学処理を施すことも好ましい。化学処理としては、表面に付着している不純物を除去する表面処理、粘土の結晶構造に影響を与える処理など、何れも使用できる。
【0045】
本発明で用いられる粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物は、そのまま用いてもよく、またボールミル、ふるい分けなどの処理を行った後に用いてもよい。また、新たに水を添加吸着させ、あるいは加熱脱水処理した後に用いてもよい。さらに、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
これらのうち、好ましいものは粘土または粘土鉱物であり、特に好ましいものはモンモリロナイト、バーミキュライト、ペクトライト、テニオライトおよび合成雲母である。
【0047】
有機化合物としては、粒径が5〜300μmの範囲にある顆粒状ないしは微粒子状固体を挙げることができる。具体的には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテンなどの炭素原子数が2〜14のα−オレフィンを主成分として生成される(共)重合体またはビニルシクロヘキサン、スチレンを主成分として生成される(共)重合体、およびそれらの変成体を例示することができる。
【0048】
本発明に係るオレフィン重合用触媒の調製工程を示す。
重合の際には、各成分の使用法、添加順序は任意に選ばれるが、以下のような方法が例示される。
[1]成分(A)をおよび成分(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。
[2]成分(A)と成分(B)とを予め接触させた触媒を重合器に添加する方法。
[3]成分(A)と成分(B)を予め接触させた触媒成分、および成分(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。この場合、成分(B)は、同一でも異なっていてもよい。
[4]成分(A)を微粒子状担体(C)に担持した固体触媒触媒成分、および成分(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。
[5]成分(A)と成分(B)とを担体(C)に担持した固体触媒成分、および成分(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。この場合、成分(B)は、同一でも異なっていてもよい。
[6]成分(B)を担体(C)に担持した固体触媒成分、および成分(A)を任意の順序で重合器に添加する方法。
[7]成分(B)を担体(C)に担持した固体触媒成分、成分(A)、および成分(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。この場合、成分(B)は、同一でも異なっていてもよい。
【0049】
本発明では、重合は溶解重合、懸濁重合などの液相重合法または気相重合法のいずれにおいても実施できる。
【0050】
液相重合法において用いられる不活性炭化水素媒体として具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素またはこれらの混合物などを挙げることができ、オレフィン自身を溶媒として用いることもできる。
【0051】
上記のようなオレフィン重合用触媒を用いて、オレフィンの重合を行うに際して、成分(A)は、反応容積1リットル当り、通常10−12 〜10−2モル、好ましくは10−10〜10−3モルとなるような量で用いられる。
【0052】
成分(B-1) は、成分(B-1)中のAl原子と、成分(A)中の遷移金属原子(M)とのモル比〔Al/M〕が、通常500〜100000、好ましくは750〜50000となるような量で用いられる。成分(B-2) は、成分(B-2) と、成分(A)中の遷移金属原子(M)とのモル比〔(B-2) /M〕が、通常1〜20、好ましくは1〜10となるような量で用いられる。
【0053】
また、このようなオレフィン重合触媒を用いたオレフィンの重合温度は、通常−50〜+200℃、好ましくは0〜170℃の範囲である。重合圧力は、通常常圧〜100kg/cm 、好ましくは常圧〜50kg/cmの条件下であり、重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。
【0054】
得られる片末端Al含有オレフィン重合体の分子量は、成分(B-1)の量、または重合温度を変化させることによって調節することができる。さらに、使用する成分(B)の違いにより調節することもできる。
【0055】
得られる片末端Al含有オレフィン重合体の分子量分布は成分(B-1)の量、または重合時間を変化させることによって調節することができる。さらに、使用する成分(B)の違いにより調節することもできる。
【0056】
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0057】
充分に窒素置換した内容積500mlのガラス製オートクレーブにトルエン250mlを装入し、液相および気相をエチレンで飽和させた。その後、メチルアルミノキサンをアルミニウム原子換算で0.25mmol、トリメチルアルミニウム6.0mmol添加した。引き続き遷移金属化合物A2−60 を0.0005mmol(Al/Zr=12500)を加え重合を開始した。常圧のエチレンガス雰囲気下、25℃で5分間反応させた。重合終了後、50℃に昇温し、乾燥酸素を20L/Lで重合系に流通させ、反応を実施した。生成物スラリーを、10mlのHClを加えた1Lのメタノールに投入してポリマーを全量析出させ、グラスフィルターで濾過した。得られたポリマーを80℃、10時間で減圧乾燥した後、ポリエチレン(PE)を1.09g得た。生成ポリエチレンの分子量(Mw)は10,200、分子量分布(Mw/Mn)は2.12、13C-NMRで測定した結果、片末端OH基は1.51個/1000炭素であった。
【0058】
【化10】

【産業上の利用可能性】
【0059】
従来知られている片末端官能基含有ポリオレフィンの製造法に比べ、所望の分子量、分子量分布の重合体を効率よく製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(I)で表される遷移金属化合物と
(B)(B-1)有機アルミニウム化合物、
(B-2) 遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物
から選ばれる1種以上の化合物、
からなるオレフィン重合触媒成分の存在下、エチレン、炭素数3〜10のα−オレフィンより選ばれる1種以上のオレフィンを重合することによって片末端Al含有オレフィン重合体を製造する工程1と、
生成した片末端Al含有オレフィン重合体を酸素含有化合物、ハロゲン含有物、窒素含有化合物、硫黄含有化合物と反応させる工程2により生成する片末端官能基含有オレフィン重合体であって
官能基が、水酸基含有基、ハロゲン含有基、窒素含有化合物、硫黄含有化合物から選択される1種の官能基であり、生成する片末端官能基含有オレフィン重合体の、
分子量(Mw)が、5000≦Mw≦100万、
官能基の1000炭素当たりの個数(N)が、
N≧14000/Mw
であることを特徴とする片末端官能基含有オレフィン重合体の製造方法。
【化1】


〔式中、MはZrまたはHfを示し、mは1または2の整数を示し、Aは2位に一つ以上のアルキル置換基を有する6員環炭化水素基を示し、飽和でも不飽和でも良く、R〜Rは、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよく、また、mが2の場合にはR〜Rで示される基のうち2個の基が連結されていてもよく[但し、R同士が結合されることはない]、(4-m)は、Mの価数を満たす数であり、Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、nが2以上の場合は、Xで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、またXで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。〕
【請求項2】
オレフィン重合体中を構成するオレフィン成分が、エチレン単独、もしくはエチレンと炭素数3〜10のα−オレフィン、エチレンと環状オレフィンの共重合体でからなり、エチレンに由来する成分が90〜100%であることを特徴とする請求項1に記載の片末端Al含有オレフィン重合体の製造方法。
【請求項3】
微粒子状担体(C)を含む重合触媒成分の存在下で、エチレン、炭素数3〜10のα−オレフィンより選ばれる1種以上のオレフィンを重合することを特徴とする請求項1または2に記載の片末端官能基含有オレフィン重合体の製造方法。
【請求項4】
工程2における酸素含有化合物が、酸素であることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の片末端官能基含有オレフィン重合体の製造方法。
【請求項5】
工程2におけるハロゲン含有化合物が、塩素、臭素、沃素であることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の片末端官能基含有オレフィン重合体の製造方法。
【請求項6】
遷移金属化合物(I)中のAが下記一般式(II)であることを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の片末端Al含有オレフィン重合体の製造方法。
【化2】


(R、Rは、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜20の直鎖、または分岐アルキル基を示し、少なくとも一方は炭素数1〜20の直鎖、または分岐アルキル基である)
【請求項7】
請求項1に記載の遷移金属化合物(I)中のAが下記一般式(III)であることを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の片末端Al含有オレフィン重合体の製造方法。
【化3】


(R、Rは、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜20の直鎖、または分岐アルキル基を示し、少なくとも一方は炭素数1〜20の直鎖、または分岐アルキル基である)

【公開番号】特開2006−219537(P2006−219537A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−32221(P2005−32221)
【出願日】平成17年2月8日(2005.2.8)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】