説明

本および製本方法

【課題】強度を犠牲とすることなく、見開きページ間を広く開くことのできる本を提供する。
【解決手段】複数枚の紙片が綴じられた本において、前記紙片が、印刷部が印刷された印刷片12と、印刷片12と所要の間隔をおいて平行に配された綴じ代片14とに、前記間隔をおいたまま両側から透明樹脂シートが貼着され、これにより樹脂シートで覆われた印刷片12と綴じ代片14とが透明樹脂シートの連結部18で連結された紙片に形成され、該紙片が複数枚重ねられて綴じ代片14で綴じられ、該綴じ代片14の部位および連結部18の部位の外側を覆って、断面コの字状をなす脊表紙20が綴じ代片14に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ページとページの間を広角度に開くことができ、連続写真等の印刷物をのど部においてほぼ連続させることのできる本および製本方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本は、通常、紙片を所要幅を有する綴じ代の部分において重ねた状態で綴じるようにしている。このため、のど部を大きく開くことが困難となり、見開きで連続写真等の連続印刷物を連続するように配置することは困難となる。
見開きを大きく、広く開くことができるようにするには、例えば、重ねた紙片群の端面を屈曲可能な背面部材に接着剤で貼り付け、外側を柔軟な背表紙で覆うようにすることが考えられる(登録実用新案公報第3104521号:図6)。
【特許文献1】登録実用新案公報第3104521号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1のものによれば、ページ間を広く開くことができるので、連続写真等を見開きページにほぼ連続して配置することができる。
しかしながら、多数積層した紙片群の端面を背面部材に接着するだけのものなので、本としての強度が低下するという課題がある。すなわち、所要幅の綴じ代を設けないだけ広く開ける代わりに、強度を犠牲とせざるを得ないという相反する課題がある。
そこで、本発明は上記課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、強度を犠牲とすることなく、見開きページ間を広く開くことのできる本および製本方法を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記目的を達成するため次の構成を備える。
すなわち、本発明に係る本は、複数枚の紙片が綴じられた本において、前記紙片が、写真等の印刷部が印刷された印刷片と、該印刷片と所要の間隔をおいて平行に配された綴じ代片とに、前記間隔をおいたまま両側から透明樹脂シートが貼着され、これにより樹脂シートで覆われた前記印刷片と綴じ代片とが透明樹脂シートの連結部で連結された紙片に形成され、該紙片が複数枚重ねられて前記綴じ代片で綴じられ、該綴じられた綴じ代片の部位および前記透明樹脂シートの連結部の部位の外側を覆って、断面コの字状をなす脊表紙が前記綴じ代片に固定されていることを特徴とする。
【0005】
また、前記断面コの字状をなす背表紙の両端縁部が、前記紙片の、前記連結部の折り曲げ支持縁となっていることを特徴とする。
また、前記背表紙が、前記折り曲げ支持縁となるだけの強度を有する厚紙で形成されていることを特徴とする。
また、前記印刷部に写真が印刷され、見開き紙片における両写真がのど部においてほぼ連続していることを特徴とする。
【0006】
また、前記断面コの字状の背表紙の端縁部に折り曲げ部を介して表表紙、裏表紙が連設されていることを特徴とする。
前記透明樹脂シートがポリプロピレン樹脂シートであり、前記印刷片、綴じ代片に熱圧着されていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る製本方法は、綴じ代側に所要余白を残して印刷部が印刷された印刷片を形成する工程と、該印刷片の綴じ代側に印刷部に沿うようにして細長い開口部を形成する工程と、該開口部を含む前記印刷片の表裏面を覆って透明樹脂シートを貼着する工程と、該透明樹脂シートを貼着した印刷片を所要個所で切断して、印刷部が印刷された印刷片の部位と所要幅の綴じ代片とが、前記開口部で両側から貼着された透明樹脂シートの連結部で連結された紙片に形成する工程と、前記形成された紙片を複数枚積層し、積層された綴じ代片の部位で複数の紙片を綴じる工程と、該綴じられた綴じ代片の部位および前記透明樹脂シートの連結部の部位の外側を覆って、断面コの字状をなす脊表紙を前記綴じ代片に固定する工程とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、所要幅を有する綴じ代片の部位で紙片を固定するので、強固に綴じることができる。
また、紙片の印刷片が薄い連結片を介して綴じ代片に連結されているので、紙片は、薄い連結部の部位で屈曲して大きく外方に開く。対向する他方の紙片も大きく外方に開く。すなわち、連結部は印刷片に比較して薄く、各連結部間に隙間があり、このように空間的に余裕があることから、紙片は連結部においてそれぞれ曲率半径小さく屈曲でき、湾曲することなく大きく外方に開く。したがって、両外方に開いた紙片は、その屈曲部がほぼ突き合わされた状態となる。写真等の印刷部が、紙片の端縁部にまで印刷されているときは、見開きのページの写真等が連続するものとなり、山岳の連続写真など、見やすい連続写真となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本に綴じ込む紙片10の説明図、図2は、この紙片10を閉じて本とする説明図である。
紙片10は、写真等の印刷部12aが印刷された印刷片12と、印刷片12と所要の間隔Aをおいて平行に配された綴じ代片14とに、間隔Aをおいたまま両側から透明樹脂シート16が貼着され、これにより樹脂シート16で覆われた印刷片12と綴じ代片14とが透明樹脂シート16の連結部18で連結された紙片に形成されている。連結部18は、間隔Aにおける部分で表裏の透明樹脂シート16がそのまま貼着されている部位である。綴じ代片14の幅は特に限定されるものではなく、綴じた際に必要な強度が確保できるものであればよい。
【0010】
そして、上記紙片10が複数枚重ねられて綴じ代片14の部位で綴じられる。綴じ代片14を綴じる手段は特に限定されない。綴じ代片14間を接着剤で固定してもよいし、公知の固定針を用いて固定したり、接着剤と固定針とを併用するなど種々の手段を取りうる。このように所要幅を有する綴じ代片14の部位で紙片10を固定するので、強固に綴じることができる。
【0011】
上記のように、複数枚綴じた紙片10を、図2に示すように、断面コの字状をなす脊表紙20により、綴じ代片14の部位および透明樹脂シート16の連結部18の部位の外側を覆うようにして、背表紙20を綴じ代片14に固定することによって本22に形成される。
なお、断面コの字状の背表紙20の端縁部に折り曲げ部20aを介して表表紙20b、裏表紙20cが連設され、一体的な表紙として形成されている。背表紙20、折り曲げ部20a、表表紙20b、裏表紙20cは、比較的厚い厚紙で一体的に形成するとよい。
【0012】
本実施の形態においては、表表紙20b、裏表紙20cは、最表層の紙片10で代替することもできる。この場合、断面コの字状の背表紙20のみで綴じ代片14および連結部18を覆うようにすればよい。
前記透明樹脂シート16にはポリプロピレン樹脂シートを用いるのが好適であり、印刷片12、綴じ代片14に熱圧着するようにするとよい。
【0013】
断面コの字状をなす背表紙20の両端縁部(折り曲げ部20aの部位)が、紙片10の、連結部18での折り曲げ支持縁となる。
連結部18は、2枚の透明樹脂シート16が貼り合わされたものであるので、薄く、屈曲しやすい。
したがって、背表紙20の端縁部(折り曲げ部20aの部位)で支持されて(支点となり)、薄い連結部18の部位で屈曲した紙片10は大きく外方に開く。同様に他方側の紙片10も他側に大きく開く。
【0014】
この場合、図3に示すように、他方側の紙片10は、複数枚が他側に同時に屈曲する場合が生じるが、連結部18は印刷片12に比較して薄く、各連結部18間に隙間があり、このように空間的に余裕があることから、他方側の紙片10は連結部18においてそれぞれ曲率半径小さく屈曲でき、湾曲することなく全体が重なった状態で大きく外方に開く。したがって、両外方に開いた紙片10は、その屈曲部がほぼ突き合わされた状態となり、写真等の印刷部が、紙片10の端縁部にまで印刷されているときは、見開きのページの写真が連続するものとなり、山岳の連続写真など、見やすい連続写真となる。
上記のように、背表紙20の両端縁部が紙片10の折り曲げ支持縁となるので、背表紙20はそれだけの強度を有する厚紙で形成するようにするとよい。
【0015】
次に、製本の手順(製本方法)について説明する。
まず、図4に示すように、綴じ代側に所要余白を残して印刷部12aが印刷された印刷片12を形成し、この印刷片12の綴じ代側に印刷部12aに沿うようにして細長い開口部24を形成する。
次いで図5に示すように、開口部24を含む印刷片12の表裏面を透明樹脂シート16で覆い、この透明樹脂シート16を印刷片12の表裏面に貼着する(図6)。
透明樹脂シート16は、ポリプロピレン樹脂シートを用い、これを熱圧着して印刷片12の表裏面側に貼着するようにするとよい。
開口部24においては、両透明樹脂シート16同士が直接貼りあわされる。
【0016】
次いで、図7に示すように、透明樹脂シート16を貼着した印刷片12を破線部Bで切断して、印刷部12aが印刷された印刷片12の部位と所要幅の綴じ代片14とが、開口部24で貼り合された透明樹脂シートの連結部18で連結された紙片10(図1)に形成する。開口部24の両側の紙片10の部位も切断除去されるので、印刷片12と綴じ代片14とは、2枚の透明樹脂シート16が貼り合された連結部18のみで連結された状態となる。
【0017】
次に、前記したように(図2)、形成された紙片10を複数枚積層し、積層された綴じ代片14の部位で複数の紙片10を綴じ、断面コの字状をなす脊表紙20により、綴じ代片14の部位および透明樹脂シート16の連結部18の部位の外側を覆うようにして、脊表紙20を綴じ代片14に固定して製本を完了する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】紙片の説明図である。
【図2】複数枚綴じた紙片に表紙を固定する工程の説明図である。
【図3】隣接する紙片が両外方に開く状態を示した説明図である。
【図4】印刷片に開口部を形成した状態の説明図である。
【図5】図4の印刷片の表裏面を透明樹脂シートで覆った状態の説明図である。
【図6】2枚の透明樹脂シートを印刷片の表裏面に貼着した状態の説明図である。
【図7】印刷片の切断部位を示す説明図である。
【符号の説明】
【0019】
10 紙片
12 印刷片
12a 印刷部
14 綴じ代片
16 透明樹脂シート
18 連結部
20 背表紙
22 本
24 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の紙片が綴じられた本において、
前記紙片が、
写真等の印刷部が印刷された印刷片と、該印刷片と所要の間隔をおいて平行に配された綴じ代片とに、前記間隔をおいたまま両側から透明樹脂シートが貼着され、これにより樹脂シートで覆われた前記印刷片と綴じ代片とが透明樹脂シートの連結部で連結された紙片に形成され、
該紙片が複数枚重ねられて前記綴じ代片で綴じられ、
該綴じられた綴じ代片の部位および前記透明樹脂シートの連結部の部位の外側を覆って、断面コの字状をなす脊表紙が前記綴じ代片に固定されていることを特徴とする本。
【請求項2】
前記断面コの字状をなす背表紙の両端縁部が、前記紙片の、前記連結部の折り曲げ支持縁となっていることを特徴とする請求項1記載の本。
【請求項3】
前記背表紙が、前記折り曲げ支持縁となるだけの強度を有する厚紙で形成されていることを特徴とする請求項2記載の本。
【請求項4】
前記印刷部に写真が印刷され、見開き紙片における両写真がのど部においてほぼ連続していることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の本。
【請求項5】
前記断面コの字状の背表紙の端縁部に折り曲げ部を介して表表紙、裏表紙が連設されていることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の本。
【請求項6】
前記透明樹脂シートがポリプロピレン樹脂シートであり、前記印刷片、綴じ代片に熱圧着されていることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の本。
【請求項7】
綴じ代側に所要余白を残して印刷部が印刷された印刷片を形成する工程と、
該印刷片の綴じ代側に印刷部に沿うようにして細長い開口部を形成する工程と、
該開口部を含む前記印刷片の表裏面を覆って透明樹脂シートを貼着する工程と、
該透明樹脂シートを貼着した印刷片を所要個所で切断して、印刷部が印刷された印刷片の部位と所要幅の綴じ代片とが、前記開口部で両側から貼着された透明樹脂シートの連結部で連結された紙片に形成する工程と、
前記形成された紙片を複数枚積層し、積層された綴じ代片の部位で複数の紙片を綴じる工程と、
該綴じられた綴じ代片の部位および前記透明樹脂シートの連結部の部位の外側を覆って、断面コの字状をなす脊表紙を前記綴じ代片に固定する工程とを具備することを特徴とする製本方法。
【請求項8】
前記断面コの字状をなす背表紙の両端縁部が、前記紙片の、前記連結部の折り曲げ支持縁となるように形成することを特徴とする請求項7記載の製本方法。
【請求項9】
前記背表紙を、前記折り曲げ支持縁となるだけの強度を有する厚紙で形成することを特徴とする請求項8記載の製本方法。
【請求項10】
前記印刷部に写真を印刷し、見開き紙片における両写真がのど部においてほぼ連続するように形成することを特徴とする請求項7〜9いずれか1項記載の製本方法。
【請求項11】
前記透明樹脂シートにポリプロピレン樹脂シートを用い、該ポリプロピレン樹脂シートを前記印刷片に熱圧着することを特徴とする請求項7〜10いずれか1項記載の製本方法。

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図1】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−269221(P2009−269221A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−119491(P2008−119491)
【出願日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【出願人】(508132344)ダンク セキ株式会社 (2)