説明

本人確認書類真贋判定装置

【課題】コンピュータ・スキャナを用いた安価なハードウェア構成で、本人確認書類の真贋判定を簡易的に行う。
【解決手段】この本人確認書類真贋判定装置は、本人確認書類の画像を読み取る画像読取部と、前記画像読取部により読み取られた前記画像から単色の塗りつぶし領域を切り出す切出部と、前記切出部により切り出された前記単色の塗りつぶし領域に特定の画像パターンが存在した前記本人確認書類を偽造と判定し、前記塗りつぶし領域に前記特定の画像パターンが存在しない前記本人確認書類を非偽造と判定する判定部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば金融機関および通信会社の窓口などで契約の際に申請者から提出される運転免許証、健康保険証などの本人確認書類を真贋判定する本人確認書類真贋判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本人確認法の施行により、金融機関や携帯電話キャリアなどは、契約者の本人確認を行うことが義務付けられている。これを回避するため、運転免許証などを偽造するケースが増えつつある。以前はこのような運転免許証の偽造には極めて高価な装置が必要であった。
【0003】
しかし、今では、コンピュータ・プリンタ・スキャナなどの高性能化により、一見すると、本物と見間違うような偽造運転免許証を、誰でも簡単に作成できるようになりつつある。
【0004】
これらコンピュータ・プリンタ・スキャナなどを用いた簡易的な偽造書類は、紙質が本物と違っていたり、また濡らせばインクが落ちるなど、確認者が注意をすれば、本物と見分けることができる程度の品質ではある。
【0005】
しかし、金融機関や携帯電話会社などの窓口では、担当者が契約者から受け取った契約書の内容と、契約者自信から渡された本人確認書類とを短時間に見比べて返却する必要があることから、担当者による本人確認書類の確認作業が繁雑になり、偽造身分証明書を見逃す可能性もある。
【0006】
これを防ぐために、最近では、本人確認書類の偽造を防ぐべく、ICチップを埋め込んだ本人確認カード(例えば住民基本台帳カード(住基カード)や平成19年からICカード化がなされた運転免許証など)が発行されている。ICカード化されたこれらの本人確認カードは、ICカードリーダで読み取ることで簡単に真贋判定を行える。
【0007】
しかしながら、ICカードリーダは、個人情報保護のため数桁のパスワードを必要とする。従って、これらの本人確認カードを受付窓口で扱うためには、ICカードリーダおよびキーボードを備えた新しい端末の導入が必要となり、高額な投資が必要になるという問題があった。
【0008】
また、ICカードはパスワードの入力を数回誤ると機能を停止するように作られている。例えば運転免許証の場合、パスワードは滅多に使わないので、ユーザとしても誤入力で機能が停止してしまうリスクがあり、この種のカード確認機器は、受付窓口にあまり導入されていないのが現実である。
【0009】
カラーコピー機で複製した偽造紙葉類を安価な構成で識別する技術としては、例えば紙葉類の表面における印刷インクの凹凸の情報を検出することで、正券と偽造券(正券をカラーコピーしたもの)とを識別する技術がすでにある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−141595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記技術の場合、印刷インクの凹凸の情報を検出するための凹凸検出部として、コンピュータ以外の特殊なハードウェア(凹凸に対応した荷電変化を起こす感応素子)を用いる必要があり、ICカード化と同様に専用機器への投資が必要になるという問題がある。
【0012】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、窓口に常設されているコンピュータ・スキャナを用いた安価なハードウェア構成で、本人確認書類の真贋判定を簡易的に行うことのできる本人確認書類真贋判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明の本人確認書類真贋判定装置は、本人確認書類の画像を読み取る画像読取部と、前記画像読取部により読み取られた前記画像から単色の塗りつぶし領域を切り出す切出部と、前記切出部により切り出された前記単色の塗りつぶし領域に特定の画像パターンが存在した場合、前記本人確認書類を偽造と判定し、前記塗りつぶし領域に前記特定の画像パターンが存在しない前記本人確認書類を非偽造と判定する判定部とを具備することを特徴とする。
【0014】
本発明の本人確認書類真贋判定装置は、本人確認書類の画像を読み取る画像読取部と、前記画像読取部により読み取られた前記画像から単色の塗りつぶし領域を切り出す切出部と、前記切出部により切り出された前記単色の塗りつぶし領域を、異なる色の画像に分離し、分離したいずれか一つの色の画像に、特定の画像パターンが存在した前記本人確認書類を偽造と判定し、前記塗りつぶし領域に前記特定の画像パターンが存在しない前記本人確認書類を非偽造と判定する判定部とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、コンピュータ・スキャナを用いた安価な構成で、本人確認書類の真贋判定を簡易的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態の本人確認書類真贋判定装置の構成を示す図である。
【図2】安価なプリンタで灰色を印刷した画像とその部分を拡大した様子を示す図である。
【図3】コピーした写真を免許証に貼って作成するなどした偽造免許証とその写真の背景部分をスキャンしたスキャン画像の一部の拡大図である。
【図4】本人確認書類真贋判定装置による、免許証に対する真贋判定動作を示すフローチャートである。
【図5】健康保険証に対する真贋判定動作を示すフローチャートである。
【図6】健康保険証をスキャンしてジェットプリンタにて印刷した偽造健康保険証の太線部に生じるモアレ縞を示す拡大図である。
【図7】偽造書類の写真部分の画像を、青、赤、緑にカラー分離したときの画像を示す図である。
【図8】免許証の背景部分のカラー画像を示す図である。
【図9】図8のカラー画像をカラー分離したときの青画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の一つの実施の形態の本人確認書類真贋判定装置を詳細に説明する。図1は本人確認書類真贋判定装置の構成を示す図である。
【0018】
図1に示すように、この実施形態の本人確認書類真贋判定装置1は、本人確認書類としての運転免許証2(以下「免許証2」と称す)の表面を、例えばCCDなどで走査(スキャン)して画像情報(イメージデータ)を取得(生成)するイメージスキャナ3(以下スキャナ3と称す)と、このスキャナ3に接続され、免許証2から読み取った画像(イメージデータ)から、写真の背景部分33などの単色の塗りつぶし領域の画像を切り出しその画像からのモアレ縞の有無を検出するコンピュータ10とを有している。
【0019】
(モアレ縞の発生原理)
インクジェットプリンタによる印刷では、写真部分を階調表現するために網点を用いている。すなわち、インクジェットプリンタは、色の濃さを、規則正しく配置された点それぞれの大きさで表現する。このため、インクジェットプリンタで印刷されたカラー写真では、複数の色の網点を重ねて印刷するため、周期的な色模様がみえ、これがモアレ縞となる。モアレ縞は網点が印刷された写真とスキャナとの分解能の差次第で発生する。したがって、本物の免許証2をスキャナ3で読み取った場合は、網点が存在しないためモアレ縞は発生しない。
【0020】
スキャナ3は、免許証2の表面をCCDセンサにより走査してカラー画像(イメージデータ)を取得し、その画像をコンピュータ10に入力する。コンピュータ10は入力された画像から単色の塗りつぶし領域の画像を抽出する。
【0021】
つまりスキャナ3は、本人確認書類の画像を取得する画像取得部として機能する。スキャナ3の読み取り解像度は、600dpiなどに設定されているものとする。
【0022】
コンピュータ10は、操作部11、通信I/F12、記憶部としてのメモリ13、表示部14、ハードディスク装置15、CPU16とを備えている。操作部11は、キーボート、マウスなどのユーザが操作を行う入力手段である。通信I/F12は、コンピュータに設けられた、例えばUSB接続機器をコンピュータ10に接続するためのUSBポートを含む外部機器接続用のインターフェースである。
【0023】
メモリ13には、画像から免許証2の領域およびその中の写真部分の領域を検出するための書類フォーマット13aおよび真贋判定情報13bが記憶されている。
【0024】
書類フォーマット13aは、スキャナ3により得られた画像のうち、免許証2や健康保険証5などの本人確認書類の外枠の位置や傾きなど検出し、検出した画像内の単色塗りつぶし領域を切り出すための書式情報であり、書類の種別毎に設定されているものとする。
【0025】
本人確認書類が免許証2か健康保険証5かを種別判定することについては、書類読み取り時に、書類の種別を操作部11から指示するか、または書類の画像から各書類の特徴を読み取って書類の種別を判定するものとする。また予めいずれか一方のみの書類しか処理しない場合は該当書類の書式情報だけを利用するよう設定しておいてもよい。
【0026】
書類フォーマット13aには、スキャナ3から得られた画像のうち、切り出し領域の情報(画像全体の左上角の位置座標をX座標0,Y座標0)とした場合の免許証2の枠や写真が貼られている部分やその中で人が写っていない青色の背景領域(単色の塗りつぶし領域)の各切り出しエリアを指定する指定情報)が設定されている。
【0027】
真贋判定情報13bは、単色の塗りつぶし領域(例えば免許証2では青色の背景部分、健康保険証5では書類名称を囲む太線部)に対してフーリエ変換を行って得られた値(周波数成分)がモアレ縞であるものと判定するための範囲データまたは閾値データが記憶されている。
【0028】
なお、例えば免許証2などには所定の位置に特徴的な文字(例えば「年」、「月」、「日」など)が数カ所印字されているため、それぞれの文字の位置(座標と文字間の距離データなど)を基準とした免許証2の外形や写真部分、その写真内の青色の背景部分(単色の塗りつぶし領域)の位置座標を記憶しておくことで、免許証2の外形、写真部分および青色の背景部分(単色の塗りつぶし領域)を特定してもよい。
【0029】
表示部14は、スキャナ3が取り込んだ本人確認書類の画像やその一部の切り出し領域の画像からモアレ縞の有無を判定した結果(真贋判定結果)の報知画面、報知メッセージなどを表示する。
【0030】
ハードディスク装置15には、オペレーティングシステム(以下OSと称す)と、CPU16に各部の制御動作を行わせる制御プログラム(ソフトウェア)とがインストールされており、これらが協動して本システムの動作を実現する。動作説明ではコンピュータ起動後のCPU16の動作として説明する。
【0031】
すなわち、CPU16は、スキャナ3により取得された本人確認書類の画像の中から単色の塗りつぶし領域(免許証1の場合は写真の背景部分)を切り出し、その単色の塗りつぶし領域に所定パターン配置の画像パターン(モアレ縞)が存在するか否かを判定し、所定パターン配置の画像パターンが存在した場合、その本人確認書類を偽造書類と判定し、存在しない場合は非偽造書類と判定する判定部として機能する。
【0032】
また、CPU16は、スキャナ3により取得された本人確認書類のカラー画像の中から単色の塗りつぶし領域を切り出し、その単色の塗りつぶし領域を、異なる色の画像(R・G・B)に分離し、分離したいずれか一つの色の画像に、特定の画像パターン(疎な点のパターン)が存在した本人確認書類を偽造書類(偽物)と判定し、塗りつぶし領域に特定の画像パターンが存在しない本人確認書類を非偽造書類(本物)と判定する判定部として機能する。
【0033】
CPU16は、偽物と判定した場合、偽造を示すメッセージを表示部14へ出力し報知する。またCPU16は、本物と判定した場合、本物を示すメッセージを表示部14へ出力し報知する。
【0034】
ここで、図2、図3を参照して本人確認書類の真贋判定の原理について説明する。
一般に市販されている安価なプリンタ(レーザープリンタやインクジェットプリンタなど)では、赤・シアン・緑・黒などの少ない色数のインクを用いて印刷を行う。従って、例えば薄い灰色を実現するには、インク自体を薄くするのではなく、インクの点を小さくして印刷する。
【0035】
従って、上記のような安価なプリンタで、図2に示すように、灰色に印刷された領域31を拡大してみると、黒い小さなインクの点32が微少な間隔(例えば1/100mm間隔程度)を隔てて並んでいるように印刷される。人間は、このような細かな点の集まりを認識することができないため、インクの点32は紙の背景の白色と混ざって見えるため、このような印刷を灰色に感じる。
【0036】
図3に示すように、免許証2に印刷されている写真の青色の背景部分33など、同じ色(単色)で塗りつぶされている箇所を大きく拡大すると、モアレ縞34と呼ばれる縞模様が現れる。本物の免許証2は、スクリーン印刷などのため、このような縞模様は現れない。そこで、この装置では、免許証画像からモアレ縞が検出されることで免許証2を偽造品と簡易判定を行う。
【0037】
以下、図4のフローチャートを参照してこの本人確認書類真贋判定装置1の動作を説明する。この本人確認書類真贋判定装置1では、スキャナ3により免許証2がスキャニングされて(図4のステップS101)、その画像がコンピュータ10に入力されると、CPU16は、その画像をメモリ13に一旦記憶する。
【0038】
次に、CPU16は、メモリ13から書類フォーマット13aと画像を読み出し、書類フォーマット13aから写真領域を検出し、画像から写真領域を切り出す(ステップS102)。
【0039】
続いて、CPU16は、切り出した写真領域から、書類フォーマット13a上に設定されている切り出し領域(単色の塗りつぶし領域)である、左上の青色の背景部分の画像を切り出す(ステップS103)。
【0040】
CPU16は、切り出した青色の背景部分の画像をフーリエ変換することで、周波数成分を求め、その値と予めメモリ13に設定されていた真贋判定情報13bと比較することで、モアレ縞の有無を検出する(ステップS104)。例えば周波数成分の値が所定の閾値(真贋判定情報13b)を超えた場合に、CPU16は、モアレ縞の存在を検出する。
【0041】
CPU16は、モアレ縞の存在を検出すると(ステップS105のYes)、免許証2が偽造書類であるものと報知する(ステップS106)。またCPU16は、周波数成分の値が所定の閾値(真贋判定情報13b)以下の場合に、モアレ縞が検出されなかったものとし(ステップS105のNo)、免許証2が偽造書類でないもの(本物)と報知する(ステップS107)。
【0042】
報知方法については、例えば表示部14に「偽物」または「本物」などといったメッセージを出すなどの方法がある。この他、「偽物」のときにコンピュータ1に内蔵されているブザーを鳴らすだけであってもよい。
【0043】
次に、図5,図6を参照してこの本人確認書類真贋判定装置1の健康保険証5の真贋判定動作について説明する。健康保険証5には、この保険証の名称の枠が太く印刷されており、幅と高さが一定以上ある塗りつぶし領域が存在する。そこで、この動作例では、健康保険証5の太線部を真贋判定に利用する。
【0044】
この場合、スキャナ3により健康保険証5がスキャニングされて(図5のステップS201)、その画像がコンピュータ1に入力されると、CPU16は、その画像をメモリ13に一旦記憶する。
【0045】
次に、CPU16は、メモリ13から書類フォーマット13aと画像を読み出し、書類フォーマット13aから太線部の領域を検出し(ステップS202)、書類フォーマット13a上に設定されている切り出し領域(単色の塗りつぶし領域)である、左角の太線部の画像51(図6参照)を切り出す(ステップS203)。
【0046】
CPU16は、切り出した太線部の領域の画像51をフーリエ変換することで、周波数成分を求め、その値と予めメモリ13に設定されていた真贋判定情報13bとを比較することで、モアレ縞の有無を検出する(ステップS204)。例えば周波数成分の値が所定の閾値(真贋判定情報13b)を超えた場合に、CPU16は、モアレ縞の存在を検出(判定)する。
【0047】
CPU16は、モアレ縞の存在を検出(判定)すると(ステップS205のYes)、健康保険証5が偽造書類であるものと報知する(ステップS206)。
【0048】
また、CPU16は、周波数成分の値が所定の閾値(真贋判定情報13b)以下の場合に、モアレ縞が検出されなかったものとし(ステップS205のNo)、健康保険証5が偽造書類でないもの(本物)と報知する(ステップS207)。
【0049】
なお、これと同じ原理を用いれば、健康保険証5だけではなく、例えば上述した免許証2の有効期限欄にある帯状の領域を切り出し、モアレ縞の有無を検出することで、免許証2の真贋判定を行うことができる。
【0050】
このようにこの実施形態の本人確認書類真贋判定装置1によれば、コンピュータ・スキャナを用いた安価なハードウェア構成で、例えば免許証2や健康保険証5などの本人確認書類の真贋判定を簡易的に行うことができる。
【0051】
なお、本装置は、写真製版などの比較的高価な装置を用いた偽造運転免許証を検出しえない欠点がある。しかし、高価な装置は出荷数も少量であり、比較的追跡のための労力は少ないといえる。
【0052】
しかし、スキャナやプリンタを用いた偽造は、それと比べて小規模でありかつ多数の、犯人により行われることが多く、追跡のために多量の労力を要する。本装置はこれら小規模でかつ多数の犯罪に対応できるため、安価な装置ながら導入効果が大きいといえる。
【0053】
次に、図7を参照して本人確認書類真贋判定装置の応用例を説明する。この応用例では、免許証2の写真領域を利用する。図7に示すように、免許証2の画像はカラー画像であり、その免許証2の写真領域の一部の人物を含まない背景画像71は青色、つまり単色の塗りつぶし領域である。
この応用例では、CPU16は、カラー画像である青色の背景画像71から、青色成分の青色画像(B)72、赤色成分の赤色画像(R)73、緑色成分の緑色画像(G)74をそれぞれ分離し、その中で、背景色に近似する画像、つまり青色画像72を取り出し、取り出した青色画像72に対してカラープリンタでの偽造の特徴を示すパターンの有無を検出する。
【0054】
免許証2の写真の背景は青色である。もしこの色が完全な青色ならば、青色(B)に分離した画像72で、青い眼鏡で見たのと同じく、真っ白に見えるはずである。
しかし、実際に免許証2をコピーして作成した偽物(偽造免許証)の色は、完全な青色ではないため、分離した青色画像72には、少しだけ他色(緑や赤)の成分が含まれている。この少量の緑や赤の成分は、レーザープリンタやインクジェットプリンタでは、点75がまばらに存在するパターン(これを「疎な点のパターン」と称す)として印刷される。
【0055】
従って、図7に示すように、偽造免許証の画像からカラー分離して取り出した青色画像72には、疎な点75のパターンが現れる。このようなパターンは、本物の免許証2をスキャンしても現れない。
【0056】
この例では、CPU16は、分解した中の青色画像7に疎な点のパターンが存在するかどうかを塗りつぶし技術により検出する。検出の結果、疎な点のパターンが存在するものと判別された場合、CPU16は、それを偽造と判定して報知する。
【0057】
疎な点のパターンが存在するかどうかについては、例えば予めメモリ13に記憶したおいた疎な点の基本パターンと各画像のパターンとを比較して互いのパターンが一致または近似した場合に偽造と判定する。なお、背景が青色とはかぎらない場合、分離した青色画像72,赤色画像73,緑色画像74毎に疎な点のパターンが存在するかどうかを検出してもよい。
【0058】
この応用例によれば、疎な点のパターンは、塗りつぶし技術により検出することができるので、上述したフーリエ変換に比べて計算量が少なく、真贋判定を高速に実行できる。
【0059】
次に、図8、図9を参照して本人確認書類真贋判定装置の他の応用例を説明する。
この応用例は、免許証2のカラー画像のうち、文字や写真が印刷されていない背景の色を利用する。免許証2の背景は、ほとんど白色であるがわずかに黄色がかった色(カラー)である。
【0060】
従って、免許証2を偽造するために免許証2をスキャナでスキャンし、カラープリンタで印刷すると、カラープリンタは、ほんのわずかに黄色い色を実現しようとして、図8に示すように、画像81の背景部分に疎な黄色い点85を印刷する。
【0061】
このような、黄色い点85が存在する偽造免許証をスキャナ3でスキャンして読み取った場合、CPU16は、スキャナ3で読み取ったカラー画像から、予め設定された背景が含まれる画像を切り出して、切り出した背景を含む画像から、青色成分の青色画像、赤色成分の赤色画像、緑色成分の緑色画像を分離する。
このようにカラー分離した中で、背景色に近似する色の画像、例えば図9に示すように、青色画像84には、文字以外の箇所(背景部分)に疎な点86のパターンが現れる。
【0062】
このような疎な点86のパターンが出現した場合、CPU16は、スキャナ3で読み取った免許証2を、カラープリンタで印刷された偽物、つまり「偽造免許証」と判定する。この方法は背景が完璧な白色でない本人確認書類に広く適用できる。
【0063】
なお、本願発明は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形してもよい。
【0064】
例えば上記実施形態では、免許証2の写真の青色の背景部分からモアレ縞を検出したが、この他、免許証2の有効期限の欄も単色の塗りつぶし領域(金色、青色または若草色)のため、この部分のモアレ縞を検出するようにしてもよい。
【0065】
また、例えば各構成要素を、コンピュータのハードディスク装置などのストレージにインストールしたプログラムで実現してもよく、また上記プログラムを、コンピュータ読取可能な電子媒体:electronic mediaに記憶しておき、プログラムを電子媒体からコンピュータに読み取らせることで本発明の機能をコンピュータが実現するようにしてもよい。電子媒体としては、例えばCD−ROM等の記録媒体やフラッシュメモリ、リムーバブルメディア:Removable media等が含まれる。さらに、ネットワークを介して接続した異なるコンピュータに構成要素を分散して記憶し、各構成要素を機能させたコンピュータ間で通信することで実現してもよい。
【符号の説明】
【0066】
1…本人確認書類真贋判定装置、2…運転免許証(免許証)、3…イメージスキャナ(スキャナ)、5…健康保険証、10…コンピュータ、11…操作部、13…メモリ、13a…書類フォーマット、13b…真贋判定情報、14…表示部、15…ハードディスク装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本人確認書類の画像を読み取る画像読取部と、
前記画像読取部により読み取られた前記画像から単色の塗りつぶし領域を切り出す切出部と、
前記切出部により切り出された前記単色の塗りつぶし領域に特定の画像パターンが存在した場合、前記本人確認書類を偽造と判定し、前記塗りつぶし領域に前記特定の画像パターンが存在しない前記本人確認書類を非偽造と判定する判定部と
を具備することを特徴とする本人確認書類真贋判定装置。
【請求項2】
本人確認書類の画像を読み取る画像読取部と、
前記画像読取部により読み取られた前記画像から単色の塗りつぶし領域を切り出す切出部と、
前記切出部により切り出された前記単色の塗りつぶし領域を、異なる色の画像に分離し、分離したいずれか一つの色の画像に、特定の画像パターンが存在した前記本人確認書類を偽造と判定し、前記塗りつぶし領域に前記特定の画像パターンが存在しない前記本人確認書類を非偽造と判定する判定部と
を具備することを特徴とする本人確認書類真贋判定装置。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図9】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−34535(P2011−34535A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183158(P2009−183158)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(301063496)東芝ソリューション株式会社 (1,478)
【Fターム(参考)】