説明

本来の機能とその外観が異なるストッキング、パンティストッキング等の靴下類

【課題】 商品本来の機能とは異なり、着用したときに、一見すると、他の商品のように見える外観を有するストッキング、パンティストッキング、タイツ等の靴下類を提案する。
【解決手段】 商品の全体形状自体はパンティストッキングやタイツ、ストッキング(ショートストッキング又はロングストッキング)であるが、所定の部分に黒色又はその他肌色以外の色彩の原着糸を使用して編成し、それ以外の部分には無着色の糸を使用して編成し、上記のような商品全体を編成した後、全体に染色を施すことにより、無着色糸で編成した部分は肌と同系色の色相として、素材糸による染色効果の違いを利用して、原着糸を使用して編成した部分が際立つようにし、着用したときに、原着糸による編成部分が、例えばレギンスやトレンカ、フットカバー、トゥクッション、ひざ上丈ストッキング、ひざ下丈ストッキング、あるいはパンティストッキングの上にオーバーパンツを履いたような外観に見せるようにしたことを特徴する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商品本来の機能や形状、着用感等を損なうことなく、着用したときに、一見すると他の商品のように見える外観を有するストッキング、パンティストッキング、タイツ等の靴下類に関するものである。
【背景技術】
【0002】
靴下売り場における商品バリエーションの区分としては、パンティストッキング、ストッキング(セパレートストッキングを含む)、タイツ、レギンス、トレンカ、フットカバー、トゥクッション等が代表的な例である。
【0003】
これらの商品は、それぞれ独自の機能性やファッション性、外観等も異なり、着用の仕方や着用感もそれぞれ商品毎に異なる。
【0004】
例えば、レギンスの場合、商品の形は足先部(フット部)の無いパンティストッキング又はタイツの形状をしている。市場には、丸編タイプのストレッチ性のあるレギンスが非常に多く、ストレッチ性のある商品はフィット性が良い。しかし、一方で、伸縮性があるために、レギンスの足口がフラットの状態に戻ろうとして、ずり上がり易いという欠点がある。
【0005】
また、素足にパンプス等の組み合わせなどに用いられることが多いフットカバーの場合、蒸れ対策や靴擦れ対策、あるいは靴からフットカバーを見せるファッション性などには効果的であるが、靴とフットカバーとの摩擦力により、着用時にフットカバーが脱げ易く、そのため、かかと部にシリコンゴムやウレタンゴム等の滑り止めを止着する方法等を行って、改善した商品もあるが、上記のような着用感が無くなるなるわけではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−266106号公報
【特許文献2】特許第3874676号公報
【特許文献3】特開2006−63461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、商品本来の機能とは異なり、着用したときに、一見すると、レギンスやフットカバー、あるいはショートストッキングやロングストッキング、トレンカなど、他の商品のように見える外観を有するストッキング、パンティストッキング、タイツ等の靴下類に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明では、商品の全体形状自体はパンティストッキングやタイツ、ストッキング(ショートストッキング又はロングストッキング)であるが、所定の部分に黒色又はその他肌色以外の色彩の原着糸を使用して編成し、それ以外の部分には無着色の糸を使用して編成し、上記のような商品全体を編成した後、全体に肌色系の染色を施すことにより、無着色糸で編成した部分は肌と同系色の色相として、素材糸による染色効果の違いを利用して、原着糸を使用して編成した部分が際立つようにし、着用したときに、原着糸による編成部分が、例えばレギンスやフットカバー、トレンカ、ひざ上丈ストッキング、ひざ下丈ストッキング、あるいはパンティストッキングの上にオーバーパンツを履いたような外観等に見せるようにしたものである。
【0009】
本発明によれば、着用したときに、通常のレギンスのように足口部がずり上がったり、フットカバーのように脱げ易くなったりすることがなく、ストッキングのように履き口がずり下がることもない。
【0010】
なお、原着糸は、使用する顔料によって種々の色彩とすることができるが、商品全体に対するその後の染色工程において、多少色彩が変わる場合があるので、最も染色の影響を受けない黒色の原着糸を使用するのが最も好ましい。
【発明の効果】
【0011】
このように、本発明に係る靴下類によれば、本来の機能と形状はパンティストッキングやタイツ、ストッキング(ショートストッキング又はロングストッキング)であり、その着用感も本来の商品と変わりないが、原着糸を使用して編成した部位により、これを着用したときの見た目が、レギンスやフットカバー、トレンカ、ひざ上丈ストッキング、ひざ下丈ストッキング、あるいはパンティストッキングの上にオーバーパンツを履いたような外観を呈し、ファッション性と趣向のあるパンティストッキング等の靴下類とすることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る靴下類の一例であって、本来の機能と形状はパンティストッキングであるが、外観を一見レギンス風としたものの説明図である。
【図2】本発明に係る靴下類の一例であって、本来の機能と形状はパンティストッキングであるが、外観を一見フットカバー風としたものの説明図である。
【図3】本発明に係る靴下類の一例であって、本来の機能と形状はパンティストッキングであるが、外観を一見ひざ下丈のショートストッキングとしたものの説明図である。
【図4】本発明に係る靴下類の一例であって、本来の機能と形状はパンティストッキングであるが、外観を一見ひざ上丈のいわゆるオーバーニーストッキングとしたものの説明図である。
【図5】本発明に係る靴下類の一例であって、本来の機能と形状はパンティストッキングであるが、外観を一見パンティストッキングの上にオーバーパンツを履いたような外観としたものの説明図である。
【図6】本発明に係る靴下類の一例であって、本来の機能と形状はパンティストッキングであるが、外観を一見トレンカ風としたものの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付の図1〜6は、いずれも本来の機能と形状はパンティストッキングであるが、その外観を一見パンティストッキング以外の商品のように見せることができる例を示したものである。
【0014】
例えば、通常のレギンスを着用したときの足口部のずり上がりを完全に防止するためには、ストッキングやパンティストッキング、タイツのように、足先で生地の戻りを抑える必要がある。そのためには、爪先部まで生地を作る必要がある。
【0015】
図1は、本来の機能と形状はパンティストッキングであるが、外観を一見レギンス風とした例を示すもので、染色効果の異なる素材を組み合わせる。
【0016】
即ち、図1で黒色で表示されたレギンス風に見える部分(以下、レギンス部分という)2は、例えば芯糸に黒原着ポリウレタン糸を使用し、カバリング糸(シングルカバリングの場合もあれば、ダブルカバンリングの場合もある)にも黒原着ナイロン糸を使用した糸で編成して行き、レギンス部分2のふくらはぎ近傍にある足口2aからは糸を切替え、爪先部分までを通常のストッキングで用いられる無着色の芯糸であるポリウレタン糸と無着色のカバンリング糸(シングルカバリング又はダブルカバンリング)であるナイロン糸からなる編成糸で編成する(符号1の部分)。
【0017】
そして、このようにして全体が編成されたパンティストッキング生地のレギンス部分足口2aからつま先1aまでの部分1だけがベージュ等の肌色と同系色の色相で染色されるように、肌色系の酸性染料等の染料で染色を行う。
【0018】
これにより、上記黒原着糸によるレギンス部分2が肌色染料によって染色されても、色相上、肌色は黒色に勝てないので、外観上は肌色となることなく黒色のままでなり、レギンス部分2は黒色のレギンス、ふくらはぎから爪先までの部分1が通常の肌色と同系色のストッキング生地でできたパンティストッキングの最終商品ができる。この商品を着用すると、ふくらはぎから爪先までの部分1は一見すると肌の様に見え、それ以外はレギンスを着用しているように見せることができるのであり、着用感はパンティストッキングであるが、見た目はレギンスという商品が製作される。
なお、カバリング糸のナイロン糸だけでなく、芯糸のポリウレタン糸にも黒原着糸を使用するのは、着用によって糸全体が伸張したときに、無着色の芯糸を使用すると、染色されることのない無着色の芯糸部分が外部に多少露呈することとなって、糸全体の黒色が薄くなってしまうからであり、芯糸及びカバリング糸共に黒原着糸を使用することにより、着用しても黒色が薄くなるようなこともない。
【0019】
図2は、本来の機能と形状はパンティストッキングであるが、外観を一見フットカバー風とした例を示すもので、この場合も、上記レギンス風のものと同様に、染色効果の異なる素材を組み合わせる。
【0020】
フットカバー着用するときのずり下がりを完全に防止するためには、パンティストッキングやストッキングのように、くるぶしより上方部分まで生地があることが必要である。
【0021】
そこで、フットカバー風に見せるために、パンティストッキング(あるいはストッキング又はタイツ)をベースとして、部分的に染色効果の異なる素材を組み合わせる。
【0022】
即ち、フットカバー部分3に黒原着ポリウレタン糸(芯糸)と黒原着ナイロン糸(カバリング糸)とを組み合わせた糸を使用して編成し、フットカバー部分3より上方部分1(ウエスト部分まで)は通常のストッキングで用いられる無着色のナイロン糸でカバリングされた無着色のポリウレタン糸により編成して行く。このようにして編成された全体形状がパンティストッキングとなっているものを、肌色と同系色の色相で染色されるように、肌色の酸性染料等の染料で染色を行う。
【0023】
これにより、フットカバー部分3が黒原着糸による黒いフットカバー、それ以外の部分が通常の肌色のストッキング生地でできたパンティストッキングの最終商品ができる。
【0024】
従って、この商品パンティストッキングを着用すると、上記と同様にフットカバー部分3は黒色となり、一見すると黒色のフットカバーを着用しているように見え、それ以外の部分は通常の肌色のパンティストッキングを着用しているように見せることができので、全体形状と着用感はパンティストッキングであるが、見た目上はフットカバーという商品ができるのである。
【0025】
なお、フットカバーを着用しているように見せる場合には、全体形状をパンティストッキングとしなくてもよく、フットカバー部分3に黒原着糸を使用すれば、全体形状はショートストッキングやロングストッキングであってもよい。
【0026】
上述では、本来の機能と形状はパンティストッキングであるが、外観を一見レギンス風やフットカバー風とした例を説明したが、本発明は、これに限られるものではなく、上記した黒原着糸で編成する部分を変えれば、商品の組み合わせは多様となる。
【0027】
例えば、図3は、一見ひざ下丈のいわゆるショートストッキングを着用しているように見せるもので、爪先からひざ下までの部分4を上記と同様の構成の黒原着糸で編成し、それより上方部分はパンティ部を含め通常の無着色のナイロン糸でカバリングされた無着色のポリウレタン糸により編成して行き、全体形状をパンティストッキングとしたものを、肌色と同系色の色相で染色されるように、肌色の酸性染料等の染料で染色を行えばよく、これによりショートストッキング風に見えるパンティストッキングを製造することができる。
【0028】
また、図4は、全体形状はパンティストッキングであるが、一見ひざ上丈のいわゆるオーバーニーストッキング5を着用しているように見せるもので、該ストッキング5部分だけを前記と同様に黒原着糸で編成するものである。
【0029】
なお、同様にして、黒原着糸によるストッキング部分を更に上方の太腿丈とするいわゆるロングストッキングとすることもできる。
【0030】
図5は、パンティストッキングの上に一見オーバーパンツ6を履いたように見せるものであり、該パンツ部6を黒原着糸により編成したものである。
【0031】
図6は、全体形状はパンティストッキングであるが、一見トレンカ7を履いているように見せるもので、フット部の甲より爪先側部分1a及び踵部分1bのみを通常の無着色のナイロン糸でカバリングされた無着色のポリウレタン糸によって編成され、それ以外の部分7を前記と同様の構成の黒原着糸により編成したものである。
【0032】
なお、上記した説明では、全体形状をパンティストッキングとした場合を例としたが、全体形状がバンティ部を有するタイツであってもよく、また、フットカバー風に見せる場合やトゥクッション風に見せる場合には、全体形状がバンティ部を有しないストッキング(ショートストッキングあるいはロングストッキング)であってもよい。
【0033】
また、上述では原着糸として、芯糸としての黒原着ポリウレタン糸とカバリング糸としての黒原着ナイロン糸との組合せを例にしたが、これに限られるものではない。例えば、同じ素材の原着糸(芯糸とカバリング糸とが、共に黒原着ポリウレタン糸あるいは黒原着ナイロン糸)、あるいは異素材の組み合わせ(例えば、芯糸に黒原着ポリエステル糸、カバリング糸に黒原着ナイロン糸など)、更に染色効果の異なる同じ素材糸も可能である。
【0034】
また、原着糸の断面形状を円形ではなく、異形断面のものを使用し、例えばポリエステル製の黒色又は肌色以外の異形断面ブライト原着糸を使用して、これをウエストテープ部分に使用すれば、キラメキ感を引き出すことができるので、意匠的効果を上げることができると共に、バックマーク等がなくても、多数の同種商品から自社商品を容易に判別することができるので、商標的効果をも発揮させることができる。
【符号の説明】
【0035】
1−染色により肌色又は肌と同系色となる原着糸を使用しないで編成された部分
2−原着糸を使用して編成されたレギンス部分
3−原着糸により編成されたフットカバー部分
4−原着糸により編成されたひざ下丈のショートストッキング部分
5−原着糸により編成されたひざ上丈のストッキング部分
6−原着糸により編成されたオーバーパンツ部分


【特許請求の範囲】
【請求項1】
商品の全体形状はパンティストッキング、タイツ又はストッキングであって、所定の部分に黒色又はその他肌色以外の色彩の原着糸を使用して編成し、それ以外の部分には無着色の糸を使用して商品全体を編成した後、全体に肌色系の染色を施すことにより、無着色糸で編成した部分を肌と同系色の色相とし、原着糸を使用して編成した部分が際立つようにして、着用したときに、一見すると上記以外の商品のように見える外観を有するようにしたことを特徴とするストッキング、パンティストッキング、タイツ等の靴下類の製造方法。
【請求項2】
商品の全体形状はパンティストッキング、タイツ又はストッキングであって、所定の個所に黒色又はその他肌色以外の色彩の原着糸を使用して編成された部分と、無着色の糸を使用して編成されたそれ以外の部分とから構成され、かかる商品全体に対する染色によって、上記無着色糸で編成した部分が肌と同系色の色相となるようにして、原着糸を使用して編成した部分のみが際立つようにし、一見すると上記した本来の商品以外の商品のように見える外観を有するように構成されてなることを特徴とするストッキング、パンティストッキング、タイツ等の靴下類。
【請求項3】
前記原着糸が、芯糸に黒原着ポリウレタン糸を使用し、カバリング糸に黒原着ナイロン糸を使用してなる請求項2記載のストッキング、パンティストッキング、タイツ等の靴下類。
【請求項4】
前記原着糸による編成部分が、レギンス、フットカバー、トレンカ、ひざ上丈ストッキング、ひざ下丈ストッキング、トゥクッション、あるいはパンティストッキングの上にオーバーパンツを履いたような外観のいずれかに見える外観を有するようにした請求項2又は3記載のストッキング、パンティストッキング、タイツ等の靴下類。
【請求項5】
前記原着糸として、異形断面のポリエステル製の黒色又は肌色以外の異形ブライト原着糸を使用して、これをウエストテープ部分に使用することにより、キラメキ感を出すようにした請求項2記載のストッキング、パンティストッキング、タイツ等の靴下類。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−207321(P2012−207321A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71883(P2011−71883)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000000398)アツギ株式会社 (13)
【Fターム(参考)】