説明

材料の冷却及び処理

材料を冷却して処理するシステム及び方法が開示される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)本願は、2010年1月15日出願の米国仮出願第61/295,476の優先権を主張する。この仮出願全体の開示を本明細書に援用する。本願は、材料の冷却及び処理に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオマス、特に廃棄バイオマスが豊富に利用可能である。バイオマスからエタノールなどの材料と燃料を抽出することが有用であり得る。
【0003】
また、燃料や他の生産物を得るように、材料を含む石油をより効率的に処理することも有用であり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書で開示した方法は、構造を変化させ、ひいては材料の更なる処理を容易化するように、単独又は他の処理技術との1以上の組み合わせにより、材料の冷却と処理を利用する。たとえば、バイオマスのケースでは、冷却は、燃料など生産物内でのバイオマス処理を容易化するように、バイオマスの処理しにくさの低減に用いる。本明細書で開示した方法の1以上の工程(ステップ)は輸送中、例えば、列車、船、はしけ、タンクローリなどで行ってもよく、及び/又は、この方法の2以上の工程は異なった場所で行われてもよい。幾つかの実施形態では、プロセスの1以上の工程を行うために用いる装置は、例えば材料及び/又は他の資源の利用可能性に従って処理設備をある生産拠点から別の生産拠点に移動できるように搬送可能である。たとえば、この方法は、米国特許出願第12/374,549号明細書に記載の1以上の可動性処理システムを含んでいてもよく、この文献の全体開示を本明細書に援用する。
【0005】
バイオマス材料又は他の材料を冷却することで、バイオマス材料又は他の材料(例えば、ヘミセルロース、リグニン、タンパク質、ペクチン、及び/又はミネラル)の様々な成分の脆性が増大し得る。その結果、材料の改質に用いる処理技術の有効性が顕著に向上する。材料の脆性の増大によって、様々な処理工程の結果、材料を破壊(例えば、繊維の縁を破壊)又は分解できる。この破壊は、例えば微小破壊であってもよい。
【0006】
また、材料の冷却は、材料の様々な成分の膨張及び/又は収縮の速度差から生じる他の効果を有していてもよい。たとえば、ある成分(例えば、水分を有するリグニン)は、これらと関連した他の成分(例えば、ヘミセルロース、セルロース)より速い速度で、又は他の成分とは異なった量で収縮又は膨張してもよい。その結果、対象の材料は、その様々な成分の改質、再構築、及び/又は分離(例えば、相分離、層間剥離、界面分裂、分解、又は破壊、例えば微小破壊)を促進しながら、弱化できる。他の処理技術とは独立して、又は他の処理技術に関連して起こり得るこれらのプロセスは、生産物、例えば、ヘミセルロース又はセルロースから得られたエタノール及び/又はブタノールの収量も向上できる。冷却によって材料の処理しにくさが低減することで、材料のセルロース材料成分の砂糖水への変換(酵素によるセルロースの糖化)が容易になる。理論による拘束を受けずに、材料破壊によって酵素が破壊部位の材料を貫通できることで、糖化が加速されると考えられている。その後、糖化された材料は、生産物に変換してもよく、例えばエタノール及び/又はブタノールへと発酵してもよい。
【0007】
冷却を他の処理技術、例えば放射及び/又は酸化に組み合わせるときに、同等な結果を得るように他の技術をある程度まで用いてもよい。たとえば、冷却を放射と共に用いるとき、処理しにくさの低減量が同一程度であるように、より低い線量で放射を用いてもよい。他の処理技術は、例えば挽き、製粉、撹拌、研磨、切断、せん断、水切断、ガス切断、蒸気切断、1以上の放射線処理工程(例えば電子及び/又はイオンなどの荷電粒子への暴露)、1以上の超音波処理工程、1以上の化学処理工程(例えば、酸、塩基、酸化剤、還元剤、及び/又は溶媒などの作用物質を使用する工程)、及び/又は1以上の熱処理工程(例えば、酸化剤及び/又は他の作用物質存在下での熱分解、及び/又は減圧環境での熱分解)を含んでいてもよい。これらの他処理技術を用いる場合、冷却前、冷却中又は冷却後に行われてもよい。
【0008】
材料の他の材料への改質及び/又は変換に用いる多様な処理技術中に、有効な熱量が材料内に生じてもよい。燃焼を回避するため、又はそうでなければ材料の好ましくない熱変性の開始を回避するために、本明細書で開示した冷却方法を余分な熱を放散又は消失させるよう用いてもよい。材料の処理中に発生する熱量に従って、冷却の範囲(例えば、材料からの排熱の量)を変更してもよい。また、バイオマス材料の脆性などのある特性を調整して、ある一定のその後の処理工程の効率を高めるように冷却の範囲を調整してもよい。たとえば、本明細書で開示した方法によって、ヘミセルロース、セルロース、及びリグニンの粉砕、並びにこれらの成分の分離を強化してもよい。
【0009】
また、炭化水素を含有する材料(例えば、石油を含有する材料)などの他のタイプの材料を処理するように冷却方法及び処理方法を用いてもよい。様々なタイプの石油を含有する材料(例えば、重油及び軽油、天然ガス、オイルサンド、オイルシェール、タールサンド、ビチューメン、石炭、及び/又は多様な炭化水素混合物を含む)を本明細書で開示した方法を用いて次のように冷却して処理してもよい。すなわち、材料の種々成分の抽出、分解、粉砕、分離、及び精練を促進するように、かつ、分解、改質(触媒作用及び非触媒作用の改質)、蒸留、触媒変換などの精練プロセス、変換プロセス、及び精製プロセス中に温度を調整するように材料を冷却して処理してもよい。
【0010】
本明細書で用いるように、「極低温」材料とは、200K(ケルビン)以下(例えば、170K以下、150K以下、130K以下、120K以下、110K以下、100K以下、90K以下、80K以下、70K以下、60K以下、50K以下、40K以下、30K以下)の温度における材料のことである。したがって、例えば「極低温液体」とは、200K以下の温度の液体のことである。
【0011】
以下で詳細に議論するように、例えば液体窒素、二酸化炭素、及び氷を含む多様な材料を冷却用に用いてもよい。
【0012】
本明細書で開示した方法は、材料粒子(例えば、繊維)の直径に対する長さの比が5:1以上(例えば、6:1以上、8:1以上、10:1以上、12:1以上、15:1以上、20:1以上)となるように材料粒子を生産してもよい。
【0013】
また、本明細書で開示した方法は、例えば、2000nm未満、1000nm未満、750nm未満、500nm未満、250nm未満、100nm未満、50nm未満、25nm未満、20nm未満、10nm未満、5nm未満、又は1nm未満さえもの最大直径を有する粒子を生産してもよい。
【0014】
本明細書で開示した方法は、低減された嵩密度を有する材料を生産してもよい。例えば、本明細書で開示した方法を用いて生産された材料の嵩密度は0.8g/cm以下(好適には、0.6g/cm以下、0.5g/cm以下、0.4g/cm以下、0.3g/cm以下、0.2g/cm以下、より好適には、0.1g/cm)であってもよい。
【0015】
本明細書で開示した方法は、脆性を増大させるように材料を冷却する効果と、本明細書に開示した技術のいずれか1以上を用いて材料を処理する効果との組み合わせによって、比較的薄い断面を有する材料を生産してもよい。一般に、薄い断面図を有する材料は、相対的に厚い断面を有する材料より効率的に冷却できる。その結果、材料処理(例えば、特に、処理技術におけるエネルギー消費に関するコスト)のコスト(例えば、エネルギー消費)を削減できる。
【0016】
一態様では、本発明は、微生物及び/又は酵素を利用して、冷却されたバイオマス材料を生産物に変換することを含む方法を特徴とし、バイオマス材料の冷却及び変換の少なくとも1つは、可動性処理設備を用いて行われる。
【0017】
幾つかの実施形態は、以下の特徴の1以上を含む。バイオマス材料は、例えば、冷却前、冷却中又は冷却後にバイオマス材料を挽くか又は粉砕することで処理してもよい。例えば、冷却前、冷却中又は冷却後にバイオマス材料に照射してもよい。冷凍挽き装置又は冷凍製粉装置で粉砕が行われてもよい。生産物は、好適にはアルコール、より好適にはエタノール及び/又はブタノールであってもよい。バイオマス材料はセルロース材料又はリグノセルロース材料であってもよく、或いはこれら材料のいずれかを含んでいてもよい。
【0018】
幾つかの実施例では、バイオマス材料はセルロースを含み、冷却された材料の変換は、セルロースを糖化するように酵素を利用することを含む。このような場合、当該方法は、アルコールを生産するように、糖化された生産物を発酵させることを更に含んでいてもよい。
【0019】
また、本発明は、材料が炭化水素を含有する材料を含む、同様の方法を特徴とする。たとえば、一態様では、本発明は、微生物及び/又は酵素を利用して、冷却された炭化水素を含有する材料を生産物に変換することを含む方法を特徴とし、材料の冷却及び変換の少なくとも1つは、可動性処理設備を用いて行われる。
【0020】
また、本発明は本明細書に記載した任意の方法で形成された生産物を特徴とする。
【0021】
別の方法で定義されない限り、本明細書で用いたすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載した方法及び材料と類似又は均等の方法及び材料を本開示の実施形態又は試験で用いてもよいが、好適な方法及び材料を以下に記載する。本明細書で言及したすべての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、その全体を本明細書に援用する。矛盾がある場合には、定義を含む本明細書が調整するものとする。また、材料、方法、及び実施例は例示のみを意図し、限定を意図しない。
【0022】
本願は、以下の各出願の内容全体を本明細書に援用する。すなわち、これらの出願は米国特許出願第12/374,549号明細書、第12/417,699号明細書、第12/417,707号明細書、第12/417,720号明細書、第12/417,723号明細書、第12/417,731号明細書、第12/417,786号明細書、第12/417,840号明細書、第12/417,880号明細書、第12/417,900号明細書、第12/417,904号明細書、第12/429,045号明細書、第12/486,436号明細書、第12/502,629号明細書、及び米国特許仮出願第61/151.695号明細書である。
【0023】
他の特徴及び利点は、発明を実施するための形態、図面、及び請求項から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】バイオマス処理システムを示す模式図である。
【図2】バイオマス処理システムを示す模式図である。
【図3】製粉装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
幾つかの場合、本明細書に記載したプロセスは、例えば、製造工場(例えばエタノールを製造するようにされたプラント)において、セルロース材料又はリグノセルロース材料を容易に輸送して利用できる、便利で集中した形態に変換するように用いる。このような場合、プロセスは、材料の糖化、及び遠隔地(例えば、材料が生産又は貯蔵される場所)から製造工場までの材料の輸送を含む。幾つかの場合、糖化は、輸送中にその一部又はそのすべてを行ってもよい。糖化を容易化するように、このプロセスは、以下で詳細に記載するように材料を冷却することで、糖化前又は糖化中に材料の処理しにくさを低減することを更に含む。
【0026】
幾つかの実施形態では、冷却は最初の場所にて、或いは輸送中(例えば、軌道車内、トラック内、はしけ上、又は船上)に行われ、糖化及び/又は他の更なる処理(発酵など)は他の1以上の場所で行われる。幾つかの場合、材料が冷たい周囲条件、例えば氷点下の周囲温度で輸送されるため、材料の冷却は輸送中に行われる。
【0027】
幾つかの実施形態では、冷却及び/又は更なる処理工程で用いる設備は可動であって、例えば、材料の利用可能性に基づき、ある製造サイトから別の製造サイトまで輸送される。
【0028】
これらシステムの幾つかによって、出発材料(例えばバイオマスであって、多くの場合嵩密度が小さい)を固定の大規模生産設備まで輸送する必要性が排除されるか、或いは少なくとも低減される。また、これらシステムの幾つかによって、可動性設備で生産された所望の生産物をエンドユーザ又は配送工場まで長距離に亘って輸送する必要性を低減できる。
【0029】
可動処理
【0030】
本明細書に記載した1以上の方法工程を行うように可動性設備を用いてもよい。材料の多くがエネルギー(例えば、バイオエタノール、ガソリン、水素、天然ガス)の生産に用いられるか、或いは他の所望の生産物が、季節的であるか又は定期的にのみ利用可能であり得るとすると、バイオマス出発材料の輸送よりむしろ生産設備又は設備の要素の輸送が、特に有用で経済的である。そのため、材料又は他のバイオマス材料が処理に利用可能であるときに、生産設備は、その地域では運転可能であればよい。処理が完了した後に、材料又は他のバイオマス材料が所望の生産物に変換されるに利用可能な状態で、設備又は設備のある一定部分を別の地域まで移動してもよい。
【0031】
設備又はその要素を水路、空路、陸路、又はこれらの任意の組み合わせで輸送してもよい。たとえば、生産設備又はその要素は、ボート、はしけ、船、又は他の航海用船舶で輸送可能であってもよい。このような設備は、藻(例えば、ホンダワラ)又は水生植物などの水生バイオマスからエタノール、ブタノール、又は他の生産物を生産するのに特に有用である。また、これらの設備は、所望の生産物の生産に適したバイオマスを備えた異なる地域まで水域を移動する(例えば、川の上又は海洋の上を移動して、処理に適したバイオマスを有する地域でドッキングする)際に有用である。また、この可動性設備又はその要素は陸路輸送してもよい。たとえば、この設備は、車、トラック、トレーラトラック、及び貨車で輸送してもよい。また、可動性設備を備えた陸上車は、所望の生産物の生産に適したバイオマスを有する地域まで移動してもよい。最終的に、設備は空路で輸送してもよい。この設備は飛行機、ヘリコプター、及び飛行船で輸送してもよい。設備の空路輸送によって、通常は生産設備から遠過ぎて使用できないバイオマスが使用可能となる。この設備は飛行機内にあってもよい。あるいは、設備又はその要素は、飛行機から落下させるか、或いは飛行機で輸送してもよい。可動性設備は、この設備及び/又はその個々の要素を簡易に輸送するように、通常便利な大きさに分けられて組織化されている。陸路輸送の場合では、運搬用車両は、車、トラック、及びトレーラトラックが使用する道路と高速道路を通常移動できる。海上輸送の場合では、設備又はその要素は、ボート、又はボートによって移動されるはしけで通常運搬する。航空輸送の場合では、設備又はその要素は、飛行機(例えば、貨物機)又はヘリコプターにうまく嵌め込むように大きさが定められている。
【0032】
可動性設備又は可動性要素から構成された設備は、所望の生産物(例えば、エタノール又はブタノール)を生産する際に有用な以下の装置のいずれか又はすべてを含んでいてもよい。すなわち、この装置は、例えば冷却、及び/又は放射などの他の処理でバイオマスを前処理する機器、粉砕機、調理器具、冷却容器、保持容器、発酵槽、蒸留装置、カラム、配管切替容器、及び混合容器を含む。ある実施形態では、生産設備の異なったステージは共に効率的に結び付けられるため、ユーザは、生産プロセスのあるステージから別のステージへと材料を容易に移送できる。また、設備は生産プロセスで必要である任意の試薬を含んでいてもよく、この試薬は、酵母又は他の微生物(遺伝子組み換えの微生物を含む)、酵素(例えば、アミラーゼ、及びセルラーゼ)、酸(例えば、硫酸、塩酸)、塩基(例えば、水酸化ナトリウム)、化学試薬、水、塩、モレキュラーシーブ、及びカラムを含む。ある実施形態では、エタノールが生産されているときに、設備は、エタノールを変性させるガソリン又は他のアルコールなどの変性剤を含む。設備は、これを扱いやすく使用可能にする、設備に便利に格納されたすべての必要な機器と試薬を含んでいてもよい。
【0033】
ある実施形態では、設備は、工場、町、村、及び島のエネルギー需要を満たすに十分なエタノール、ブタノール、又は他のエネルギー源を生産する。ある実施形態では、生産設備は、1年あたり500万ガロン未満のエタノール又はブタノールを生産する。また、その設備は、国際法、連邦法、州法、又は地域法によって義務付けられた任意の機器を選択的に含んでいてもよく、この機器は、例えば、漏水、火災、又は他の非常時の防止又は処理に必要な安全機器を含んでいてもよい。
【0034】
生産設備は様々な輸送可能な要素から組み立ててもよい。この設備は、輸送不可能な要素を含んでいてもよい。この要素は、現場での作動設備の簡易な組立体用として設計されるのが好ましい。要素は予め製造してもよい。要素は交換可能であってもよく、かつ設備のスケーラビリティを提供してもよい。ある場合には、要素システムによって、設備は、可動性を容易にするように、容易に組み立てられ、壊れることが可能となる。設備の様々な要素は、輸送手段(例えば、空気、水、及び陸)の任意の組み合わせを用いて現場に搬入してもよい。ある実施形態では、要素はあるインフラを用いて現場まで搬入する。このインフラは、電気、避難所、基礎、下水道、水、及び天然ガスラインを含んでいてもよい。すべて又は幾つかの要素を後で分解して新しい現場まで運んでもよい。ある実施形態では、特定の要素及び/又はインフラは、再び選択的に用いるように現場に残してもよい。
【0035】
幾つかの実施形態では、設備又はその要素は、適切なバイオマスを備えて方々輸送されることになっている。設備は、バイオマスの追加のみを必要とする完全に自給自足の形態であってもよい。あるいは、設備は、水、電気、天然ガス、ガソリン、下水道などその他の要素又は設備を必要としてもよい。たとえば、可動性設備によって生産されたエタノール、ブタノール、又は他のエネルギーは、設備に電気を供給する発電機に電力を供給するように用いてもよい。あるいは、エタノール、ブタノール、又は他のエネルギー源は、調理器具でバイオマスを分解する熱、又は蒸留を行う熱を提供するように燃焼してもよい。また、エタノール、ブタノール又は他のエネルギー源は、設備又はその要素を輸送するように用いる車両に電力を供給するよう用いてもよい。
【0036】
この設備は、例えば、500万ガロン未満、又は100万ガロン未満を生産する小規模生産設備であってもよい。これらの小規模の設備は、材料を冷却するモジュールを含んでいてもよいか、或いは別の場所において又は輸送中に冷却を行ってもよい。ある実施形態では、設備は、工場、町、村、及び島の需要を満たすに十分な燃料を生産する。ある実施形態では、設備は1年あたり500万ガロン未満を生産する。
【0037】
幾つかの場合、前記プロセスは、所望の生産物を現地で生産するように、小規模及び/又は可動性の生産設備の局部からのバイオマスを使用する。現地で生産された生産物(例えば、エタノール、ブタノール、ガソリン、天然ガス、水素ガス、及び炭化水素)は、その後、バイオマスと最終生産物の両方を輸送するコストを無くすように現地で用いるのが好ましい。現地の水源を生産プロセスで用いるのが好ましい。プロセスに必要な他の試薬は、設備によって供給するか、又は現地で供給してもよい。生産プロセスからの廃棄物又は副産物(例えば、蒸留かす)は、非常に栄養価の高い家畜の飼料として又は肥料として現地で用いてもよい。また、生体分子、炭水化物、タンパク質、高分子など、このプロセスからの他の廃棄物又は副産物は、パッケージし、使用し、及び/又は販売してもよい。
【0038】
可動性要素ベースの生産設備と小規模の生産設備は、より大きい規模の生産設備(すなわち、1年あたり1000万ガロンから2000万ガロンを超えるエタノールを生産する設備)を補完する。幾つかの場合、本発明の設備によって、幾つかの地域の大規模生産設備の必要性を排除できる。様々な地理上の区域の作物と他のバイオマスの周期的な特性を考慮すると、あるシステムの可動性の特性は特に良く機能する。また、これらの本発明の設備によって、低価格バイオマスからエタノール及び/又は他の燃料を経済的に生産でき、これは、例えば、エタノールを競争力のある燃料添加剤とすることに役立つ。
【0039】
可動性処理の更なる詳細は、米国特許出願第12/374,549号明細書で開示され、この開示は上で援用した。
【0040】
冷却
【0041】
本明細書に開示した方法は、例えばセルロース及び/又はヘミセルロースの好ましくない熱分解が材料の処理中に生じないことを例えば確実化するように、例えば極低温の冷却技術などの冷却技術を用いる。材料の処理しにくさを低減することで、材料の特性を改質するように、かつ材料の変換を容易化するようにも冷却を用いてよい。
【0042】
特に、本明細書で開示した冷却方法は、材料の脆性を増大させるように単独又は組み合わせで用いてもよく、これにより、冷却された材料は以下の1以上の処理工程による改質の影響をより受けやすくなる。その処理工程は、1以上の処理工程(例えば、挽き、分解、破砕、圧縮、粉砕、撹拌、研磨、切断、せん断)、1以上の放射線処理工程(例えば、電子及び/又はイオンなどの荷電粒子への暴露)、1以上の超音波処理工程、1以上の化学処理工程(例えば、酸、塩基、酸化剤、還元剤、及び/又は溶媒などの作用物質を使用する)、及び/又は1以上の熱処理工程(例えば、酸化剤及び/又は他の作用物質存在下での減圧環境における熱分解)を含む。冷却によって材料の脆性を増大させて、冷却された材料を例えば粉砕又は分離で処理し得ることで効率を改善することで、処理コスト(例えば、エネルギー関連の処理コスト)を削減でき、目的の生産物の収量を増大できる。
【0043】
さらに、多成分系の材料を冷却するときに、その異なった成分は、異なる速度及び/又は異なる量で収縮及び/又は膨張する。ある実施形態では、このプロセスは、材料中の化学結合の切断に繋がり得る。たとえば、この冷却の挙動によって各結合成分間に応力が生じ得ることで、結合成分の層間剥離、破砕、剥離、分離、及び分離などのプロセスに繋がる。その結果、成分を分離可能な効率と、材料から得られた様々な目的の生産物の収量とが増大するか、減少するか、又は均衡を保つことができる。
【0044】
線維性の材料の機能化を制御するように、すなわち、材料上又は材料内に存在している官能基を制御するように、冷却を単独で、或いは照射及び/又は酸化などの他の処理と組み合わせて用いてもよい。材料の機能化によって、溶解度及び/又は分散性を増大できて、材料を酵素及び/又は微生物による変換に更に敏感にできる。
【0045】
材料が冷却される温度は、材料の改質に用いる処理技術と材料の特性を含む多数の要因に依存する。幾つかの実施形態では、例えば、材料はリグニンのガラス転移温度までは冷却されず、このガラス転移温度は、約100℃から170℃であり、好適には約120℃から150℃、より好適には約125℃である。リグニンがそのガラス転移温度未満まで冷却されると、リグニンは柔らかくて変形可能な材料から脆くてガラス質の材料に変化する。脆くてガラス質のリグニンは、上で開示されたプロセスを含む様々な工程でより容易に改質してもよい。さらに、リグニンをそのガラス転移温度未満まで冷却することで、リグニンの物理的構造を変えてもよい。リグニン構造の変化によって、リグニンがセルロース及び/又はヘミセルロースに拘束される材料内に内部応力が生じ得る。これらの内部応力によって、セルロース及び/又はヘミセルロースからリグニンが層間剥離し、その結果、リグニンが分離し得る。幾つかの実施形態では、材料はこれが脆くなる温度(材料の「脆化点」)未満で冷却される。特定の材料のこの脆化点は、商業上利用可能な試験設備、例えばロードアイランド州、プロビデンスのベンツ材料試験計器(Benz Material Testing Instruments)社から入手可能なベンツBPT2100脆化点テスターを用いて測定してもよい。
【0046】
幾つかの実施形態では、材料は、ヘミセルロースなどの材料内の1以上の他の要素又は成分のガラス転移温度未満まで冷却してもよい。リグニンに関連して上で議論した考察と同様の考察をヘミセルロースにも適用する。特に、ヘミセルロースの冷却によってヘミセルロースをより脆くすることができ、これにより、その後の処理工程の効率が高められる。また、冷却によってバイオマス構造内で内部応力が生じ得ることで、材料内でヘミセルロースが他の成分(例えば、セルロース)から分離し得る。
【0047】
材料は、例えば400K以下(例えば、380K以下、360K以下、340K以下、320K以下、300K以下、280K以下、260K以下、240K以下、220K以下、200K以下、150K以下、100K以下、80K以下、77K以下、70K以下、50K以下)の温度まで冷却してもよい。幾つかの実施形態では、常温(例えば、293K)以下まで材料を冷却してもよい。ある実施形態では、およそ液体窒素の温度(例えば、77K)以下の温度まで材料を冷却してもよい。液体窒素の温度未満の温度まで材料を冷却することは、液体窒素(例えば、液体ヘリウム)より低い沸点を有する冷却液を用いて達せられる。
【0048】
材料の成分の分離を促進するように、材料が冷却される速度を制御してもよい。たとえば、急速に材料を冷却することで、バイオマス中の関連成分の最も低いエネルギー配置は、これを形成するほどの時間がないほどである。言い換えれば、冷却された材料は最小のエネルギー状態ではないエネルギー状態にあり得ることで、この材料は不安定であって、更なる処理工程を用いてより容易に改質され得る。ある実施形態では、例えば、材料が冷却される速度は、1K/s(毎秒1K)以上(例えば、2K/s以上、3K/s以上、5K/s以上、7.5K/s以上、10K/s以上、15K/s以上、20K/s以上、30K/s以上、40K/s以上、50K/s以上、75K/s以上、100K/s以上、又はこれら以上の速度)である。
【0049】
本明細書で開示した様々な処理技術のいずれか1以上を用いて、材料の処理中、選択された温度に及び/又は選択された温度範囲内に材料を維持してもよい。たとえば、材料は、400K以下(例えば、380K以下、360K以下、340K以下、320K以下、300K以下、280K以下、260K以下、240K以下、220K以下、200K以下、150K以下、100K以下、80K以下、77K以下、70K以下、50K以下)の温度に維持してもよい。幾つかの実施形態では、常温(例えば、293K)又は常温未満に材料を維持してもよい。ある実施形態では、液体窒素の温度(例えば、77K)以下にバイオマスを維持してもよい。
【0050】
ある実施形態では、材料は一連の加熱ステージ及び冷却ステージを受けてもよく、これらのステージは、リグニンとセルロース及び/又はヘミセルロースとの結合(例えば、疑似共有結合)に対して更なる分裂を引き起こすように選択される。材料の急速な熱サイクルによって、材料内で内部応力が生じ得ることで、例えば、更なる処理なしに、又は更なる処理工程の結果として、バイオマス成分の分離に繋がり得る。
【0051】
幾つかの実施形態では、複数の異なった冷却ステージを用いてもよく、各冷却ステージは、異なった温度まで材料を冷却するように構成されている。たとえば、処理の初期ステージでは、材料を選択された温度まで冷却し、例えば、機械式に、放射線暴露で、超音波処理で、及び/又は他の様々な技術で処理してもよい。たとえば、処理のその後の各ステージでは、材料粒子がますますより小さくなり得るため、材料を順次より低い温度まで冷却してもよい。さらに、粒子のサイズを低減し、及び/又は、バイオマスなどの材料の成分を更に分離(例えば、セルロース及び/又はヘミセルロースからリグニンを分離する)し続けるように更に処理し、或いは構造を変え続けるように更に処理してもよい。
【0052】
幾つかの場合、冷却は、寒冷気候の野外又は熱くならないビルか筐体内に材料を置くことで行ってもよい(例えば、そこでの冷却期間の平均周囲温度は、0℃未満、−5℃未満、−10℃未満、又は15℃未満でさえある)。あるいは、材料を輸送中に、例えば、列車、はしけ又は船の上で冷却を行ってもよい。
【0053】
冷却処理の更なる詳細は、米国特許出願第12/502,629号明細書に記載され、この開示は上で援用した。
【0054】
処理システム
【0055】
本明細書に記載した方法に用いる処理システムの実施例を図1から図3に示し、以下に記す。これらのシステムでは、システムの1以上の要素、又はシステム全体として可動であってもよい。さらに、1以上の要素は、システムの他の1以上の要素から離れて配置してもよい。
【0056】
図1にバイオマス処理システム100の模式図を示す。システム100は、材料格納装置102、第1の材料処理サブシステム104、冷却導管106、第2の材料処理サブシステム108、処理材料貯蔵装置110、及び冷却液供給装置112を含む。操作中、格納装置102に格納された材料は、導管114を通して第1の材料処理サブシステムまで輸送される。
【0057】
サブシステム104は多様に異なった処理装置を含んでいてもよい。例えば、幾つかの実施形態では、サブシステム104は1以上の機械式処理装置(例えば、挽き装置、撹拌、粉砕装置、研磨装置、切断装置、せん断装置)を含んでいてもよい。ある実施形態では、サブシステム104は1以上の放射線処理装置以上を含んでいてもよい。放射線処理装置は荷電粒子源(例えば、電子ビーム源及び/又はイオン源)を含んでいてもよく、この場合、材料は、材料の改質を引き起こすように荷電粒子に暴露される。幾つかの実施形態では、サブシステム104は1以上の超音波処理装置以上を含んでいてもよく、この場合、材料は、材料を改質するように超音波にさらされている。ある実施形態では、サブシステム104は1以上の熱分解装置及び/又は1以上の化学処理装置を含んでいてもよい。幾つかの実施形態では、サブシステム104は1以上の蒸気爆発処理装置を含んでいてもよい。幾つかの実施形態では、サブシステム104は、これらの処理装置の1以上の組み合わせを含んでいてもよい。
【0058】
一般に、サブシステム104は上の、任意の1以上の処理装置を任意の組み合わせで含んでいてもよい。サブシステム104は、概して、更なる処理工程に備え、初期ステージの材料の改質を提供するように構成されている。幾つかの実施形態では、サブシステム104は全く存在していなくてもよく、格納装置102から直接冷却導管106まで材料を移送してもよい。図2に処理サブシステム104を含まない材料処理システムの実施形態を示す。図2の様々な要素は、上で図1に関連して議論したため、それら要素の説明はここで繰り返さない。
【0059】
図1を再び参照すると、材料がサブシステム104で処理(例えば、切断、裁断、せん断、又は粉砕)された後に、材料は、導管116を介して冷却導管106まで移送される。冷却液供給装置112は、冷却液(例えば、液体窒素及び/又は冷却された窒素ガス、及び/又は液体ヘリウム及び/又は冷却されたヘリウムガス、及び/又は液体アルゴン及び/又は冷却されたアルゴンガス、及び/又は固体二酸化炭素及び/又は液体二酸化炭素、及び/又は液体空気及び/又は冷却された気体空気)を導管120を介して冷却導管106に供給する。材料は、矢印128によって示す方向に冷却導管106を通って輸送される。材料が、例えば、コンベヤベルト及び/又はオーガーなどの輸送装置上の導管106を通って動くと、材料は、冷却液供給装置112によって供給された冷却液と熱交換することで冷却される。
【0060】
材料が冷却導管106の端部に達すると、材料は、導管118を通して第2の材料処理サブシステム108まで輸送される。幾つかの実施形態では、図1に示すように、冷却液供給装置112は、導管122を介して冷却液を第2のサブシステム108に供給する。一般に、第2の処理サブシステム108は、第1の処理サブシステム104に関連した本明細書に開示の1以上の処理装置のいずれかを含んでいてもよい。例示的な処理装置は、挽き装置、切断装置、せん断装置、放射線処理装置、超音波処理装置、熱分解処理装置、蒸気爆発処理装置、及び化学処理装置などの1以上の処理装置を含む。導管124を通して流体を輸送することで、冷却液は、冷却導管106内で更に使用するように再生してもよい。
【0061】
処理材料は、これが第2の処理サブシステム108から現れた後に、導管126を通して材料貯蔵装置110まで輸送される。貯蔵装置110内の処理材料が貯蔵された時点で、材料は、処理サブシステム104と108に関連して上で開示した工程からの1以上の任意の追加工程を含む、更なる処理工程を受けてもよい。代替的に、又は追加的に、処理材料は追加処理工程を受けてもよい。この追加工程は、酵素及び/又は微生物など、バクテリア及び/又は酵母などの生物剤、様々な化学物質、及び化学製剤や化学溶液を用いる1以上のプロセスを含む。
【0062】
幾つかの実施形態では、材料は、冷却中に粉砕、例えば、製粉又は挽かれる。たとえば、図3に、処理サブシステム104及び108のいずれか又は両方の一部を形成可能な製粉装置200の例示的な実施形態を示す。製粉装置200は、材料が輸送される導管202を含む。固定ブレード204が導管内に位置決めされている。回転ブレード206が中心に位置決めされたシャフト208に取り付けられている。操作中、材料は、ブレード204と206の切断作用で製粉される。
【0063】
商業上利用可能な冷凍製粉装置、冷凍挽き装置、極低温製粉装置及び極低温挽き装置を用いてもよい。このような装置によって、材料の冷却と材料の粉砕とが組み合わされる。商業上利用可能な極低温挽き装置の実施例は、ニュージャージー州、メタチェンのSPEX CertiPrep社から入手可能なFreezer/Mill6870、及びペンシルベニア州、サクソンバーグのPulva社から入手可能な極低温挽き装置を含む。他のサプライヤーは、Air Products社、Praxair社、及びAir Liquid社を含む。幾つかの実施形態では、装置は予冷却領域、例えば冷却されたスクリュー押し出し機などの冷却コンベアを含んでいてもよい。幾つかの場合、液体窒素は、予冷却領域内で冷却されるように材料に噴霧される。挽きは、例えば、往復ピン又は他の要素で提供してもよい。たとえば、挽き装置はピン・ミルであってもよい。一般に、材料の温度は、供給中及び挽き中にモニターされて制御されるのが好ましい。
【0064】
冷凍挽きを照射に組み合わせてもよく、この場合、冷凍挽き前、冷凍挽き中、又は冷凍挽き後に照射を行ってもよい。幾つかの場合、冷凍挽きによって放射線量を低減でき、この放射線量は、バイオマス材料の処理しにくさを低減するか、或いは炭化水素を含有する材料を処理するに必要なものである。
【0065】
他の処理工程
【0066】
一般に、本明細書で開示した冷却方法は、多岐にわたる異なったバイオマス及び他の材料の処理技術と共に用いてもよい。本明細書で議論した冷却方法を使用可能な例示的な技術は、例えば、以下の特許出願に開示される。すなわち、これら特許文献は、国際公開第WO2008/073186号公報、米国特許出願第12/417,699号明細書、第12/417,707号明細書、第12/417,720号明細書、第12/417,723号明細書、第12/417,731号明細書、第12/417,786号明細書、第12/417,840号明細書、第12/417,880号明細書、第12/417,900号明細書、第12/417,904号明細書、第12/429,045号明細書、及び第12/486,436号明細書である。本開示の冷却方法は、概して、上で記載した処理技術のいずれかが実施される前、実施中、及び/又は実施後に方法を用いてもよい。
【0067】
ある実施形態では、超音波処理技術を、例えば本明細書で開示した冷却方法前、方法の後すぐ、方法中に組み合わせて使用すると、超音波処理技術は特に有利であり得る。一般に、材料の超音波処理は、力学的な波(例えば、音波)を介して材料に供給された熱によって材料を改質する点で有効である。冷却方法を材料の温度低減に用いると、材料はより脆くなって、入射した力学的な波に反応して変形できにくくなり、及び/又は、局所的な加熱のため急速に膨張できにくくなる。その結果、超音波処理によって材料が効果的に改質することで効率が増大する。
【0068】
幾つかの実施形態では、材料を処理するように放射線(例えば、電子ビーム及び/又はイオンビーム)を使用する技術は、例えば、材料の冷却前、冷却後すぐ、冷却中に組み合わせて使用すると、特に有利であり得る。たとえば、ある実施形態では、材料を冷却する前に、最初に材料に照射してもよい(例えば、サブシステム104において)。あるいはまた、最初に材料を冷却して、次に照射してもよい(例えば、サブシステム108において)。たとえば、放射線量は、例えば約0.1mRad(ミリラド)から200mRadであってもよく、好適には約10mRadから100mRadであってもよく、より好適には約30mRadから90mRadであってもよい。放射は、単一の照射工程又は複数の照射工程で行ってもよく、必要に応じて、各照射工程間に材料を冷却してもよい。このような冷却は米国特許出願第12/417,880号明細書に記載されている。
【0069】
照射のあるタイプへの材料の暴露と放射線量によって材料の脆性が増大してもよい。材料の温度が減少し、材料の脆性が更に増大するように、材料を冷却してもよい。材料の冷却中及び/又はその後に、有用な生産物を生産する更なる処理工程に備えて材料を改質するように、例えば、製粉、挽き、せん断、及び他のこのような技術によって材料を処理してもよい。代替的に、又は追加的に、材料を更に改質するように、及び/又は材料をより脆くするように、材料冷却後に材料の放射線暴露(例えば、電子ビーム暴露及び/又はイオンビーム暴露)も用いてよい。放射線暴露と冷却の両方が材料をより脆くするように用いると、生産物収量(例えば、エタノール及び/又は他のアルコール)を顕著に増大でき、材料処理に必要なエネルギー量を低減できる。
【0070】
ある実施形態では、複数の冷却ステージ及び機械式処理ステージ、又は交互の冷却ステージ及び加熱ステージは、例えば、追加的な機械式処理又は他の物理的な処理の有無にかかわらず、例えばバイオマスなどの材料を処理するように用いてもよい。たとえば、各連続したステージは、バイオマス粒子の平均サイズを所望の粒子サイズに達するまで更に減少させてもよい。各冷却ステージは、類似していてもよいか、或いは異なっていてもよい(例えば、システムは、複数の類似した冷却サブシステムを含んでいてもよい)。幾つかの実施形態では、システムは、材料が複数回通過する単一の冷却サブシステムを含んでいてもよい。あるいはまた、ある実施形態では、材料を処理するように、別の冷却ステージ(例えば、徐々に低下する温度までなど、別の温度までバイオマスを冷却する冷却ステージ)を用いてもよい。
【0071】
同様に、ある実施形態では、バイオマス、又は石油生産物などの他の材料を処理するように複数の機械式処理ステージを用いてもよい。材料は同じ処理装置を通して複数回再循環させてもよく、及び/又は、システムは複数の機械装置を含んでいてもよい。これらの装置は、互いにすべて類似していてもよく、或いは、装置の幾つかは、例えば構造において互いに異なっていてもよい。
【0072】
一般に、材料を冷却するように多様に異なった冷却液を用いてもよい。上で議論した実施形態では、液体窒素及び/又は冷たい気体窒素を冷却液として用いた。しかしながら、幾つかの実施形態では、他の1以上の冷却液を用いてもよく、この冷却液は、液体ヘリウム、液体酸素、液体水素、液体空気、他のこのような流体、及びこれらの組み合わせを含む。ある実施形態では、冷却液は、液体よりむしろ気体であったほうがよく、或いは、液体と混合した固体(例えば、氷、固体二酸化炭素)又は液体の代わりの固体を含んでいてもよい。たとえば、多様な冷却気体(冷却された希ガス、冷却された窒素ガス、冷却された酸素ガス、冷却された水素ガスを含む)を液体冷却液の代わりに、又はこれと共に用いてもよい。
【0073】
ある実施形態では、材料処理を促進するように材料に固体を付加してもよい。たとえば、1以上の処理装置で材料の改質を促進するように固体二酸化炭素を材料に付加してもよい。また、使用し得る他の固体は、例えば氷を含む。また、固体は、例えば1以上のボール、ピン、又は他の固体製粉要素などの材料から後で除去又は分離される固体元素であってもよい。
【0074】
選択的に、本明細書で開示した処理システムは、材料が冷却されて処理された後に材料の様々な成分を分離するように機能する分離サブシステムを含んでいてもよい。たとえば、セルロース及び/又はヘミセルロースからリグニンを分離するように材料が処理されるときに、処理システムは、分離されたリグニンを除去するように構成された分離サブシステムを含んでいてもよい。例えばリグノセルロース材料の他の成分からのリグニンの分離、又はオイルサンド中の炭化水素からの砂の分離などの成分の分離に、デカント、遠心分離、蒸留、及び抽出などの物理的分離方法を含む様々な方法を用いてもよい。分離サブシステムで実施可能な他の方法は、熱化学処理、化学処理、及び放射線暴露処理を含む。
【0075】
本明細書で開示した処理システムは、様々な湿潤剤(特に水及び/又はジメチル・スルホキシドなどの他の液体)を材料中に導入する1以上の湿潤ステーションを任意に含んでいてもよい。たとえば、図3に示す製粉装置などの以下の機械式処理装置に続いて、処理システムは、材料に水及び/又は他の作用物質を加える噴霧器を含んでいてもよい。噴霧器は、材料粒子の表面にかかるファインミストを生成してもよい。ミストの適用中又は適用後に材料を冷却するならば、ミストは、付着が確実になるように粒子表面上で凍結してもよい。材料の温度は、適用されたミストで更に材料を膨張させるように1以上の加熱‐冷却サイクルを受けてもよい。さらに、ある実施形態では、材料の温度変化、例えば急激な温度変化によって更に材料構造を改質させてもよい。
【0076】
幾つかの実施形態では、複数の湿潤ステージを用いてもよい。複数の湿潤ステージの各々は、材料中に同一の作用物質を導入してもよいか、或いは別のステージは別の作用物質を導入してもよい。導入する作用物質の選択は、材料の目的の適用、材料の物理化学的状態、及びそれ以降の材料処理ステージの状態などの要因に依存する。
【0077】
処理前、処理中、及び処理後に材料の湿潤性を高めるシステム及び方法は、例えば、米国特許出願第12/417,880号明細書に開示され、その開示を本明細書に援用する。
【0078】
幾つかの実施形態では、本明細書で開示した方法を用いて材料が処理された後に、処理された材料は、酵素などの生物剤と接触し、及び/又は酵母(例えば、P.Stipitis)及び/又はバクテリアなどの微生物と接触することで、処理材料から多様な有用生産物を抽出してもよい。これらの有用生産物は、水素、アルコール(例えば、エタノール及び/又はブタノール)、有機酸(例えば、酢酸)、炭化水素、副産物(例えば、タンパク質)又はこれらのいずれかの混合物などの生産物を含む。材料の更なる処理用の好適な生物剤と微生物は、例えば、米国特許出願第12/429,045号明細書で開示され、これは上で援用されたものである。
【0079】
たとえば、上述のように、幾つかの実施形態では、本明細書に記載した技術は、リグノセルロース材料からリグニンを分離して除去するように用いた後、残りのセルロース成分は、例えば酵素を使用して糖化される。リグニンの除去によって材料の処理しにくさが低減することで、セルロースを砂糖に変換できる。その後、アルコールを生産するように砂糖を発酵してもよい。
【0080】
材料
【0081】
バイオマス材料の実施例は任意のバイオマス材料を含んでいてもよく、このバイオマス材料は、1以上の糖類群で全体が構成された炭水化物であるか、又はこの炭水化物を含む。あるいは、このバイオマス材料は、本明細書に記載した方法のいずれかによって処理可能な1以上の糖類群を含む炭水化物であるか、又はこの炭水化物を含む。たとえば、原料又はバイオマス材料は、セルロース材料若しくはリグノセルロース材料、トウモロコシの粒などのでんぷん質、米粒若しくは他の食物の粒、又はショ糖若しくはセロビオースなどの1以上の低分子量の砂糖である材料若しくはこの砂糖を含む材料であってもよい。
【0082】
たとえば、このような原料又はバイオマス材料は、紙、紙生産物、木、木関連の材料、パーティクルボード、草、もみ殻、バガス、綿、ジュート、麻、亜麻、竹、サイザル麻、マニラ麻、わら、トウモロコシ穂軸、もみ殻、ココナッツヘア(coconut hair)、藻、海藻、綿、合成セルロース、又はこれらの任意の混合物を含んでいてもよい。
【0083】
また、バイオマスは、紙と紙生産物(例えば、ポリエチレン被覆紙(polycoated paper)とクラフト紙)を含むセルロース系繊維源と、木、及び例えばパーティクルボードなどの木関連の材料を含むリグノセルロース繊維源とを含む。更に他のバイオマスは、天然繊維源(例えば草、もみ殻、バガス、綿、ジュート、麻、亜麻、竹、サイザル麻、マニラ麻、わら、トウモロコシ穂軸、もみ殻、ココナッツヘア);αセルロース含有量が多い繊維源(例えば、綿);及び合成繊維源(例えば、押出された糸(指向性のある糸又は指向なしの糸))を含む。天然繊維源又は合成繊維源は、未使用の不用品の繊維材料、例えば半端物から得てもよいか、或いは、天然繊維源又は合成繊維源は、使用済みの廃棄物、例えばぼろ切れであってもよい。紙生産物を用いるとき、これら生産物は未使用の材料(不用品の未使用材料)であってもよく、或いは、これら生産物は使用済みの廃棄物であってもよい。未使用の原料は別として、使用済みの廃棄物、産業廃棄物(例えば、ゴミ)、及び処理廃棄物(例えば、紙の処理からの流出物)も用いてよい。また、繊維源は、人間廃棄物(例えば、下水)、動物廃棄物又は植物廃棄物から得てもよく、或いはこれら由来であってもよい。追加的なバイオマス源は、米国特許第6,448,307号明細書、米国特許第6,258,876号明細書、米国特許第6,207,729号明細書、米国特許第5,973,035号明細書及び米国特許第5,952,105号明細書に記載されている。
【0084】
材料の冷却前、冷却中、及び/又は冷却後に多様で異なった作用物質を材料に加えてもよい。付加可能な例示的な作用物質は、水(及び、より一般的には、冷却されると、膨張又は収縮する任意の他の化合物)、酸化剤、還元剤、酸、塩基、及び冷却の際に顕著に収縮する材料を含む。概して、水和されると成分の膨張を引き起こすように、材料の1以上の成分中に水などの作用物質を導入してもよい。たとえば、材料(例えば、バイオマス)が冷却されるとき、水は膨張及び/又は収縮するため材料内に周期的な内部応力が生成され、これにより、材料内の結合(例えば、リグニンとセルロース及び/又はヘミセルロースとの間の結合)が切断し得る。また、同様の結果を生むように、昇華される他の作用物質(例えば、二酸化炭素)を用いてもよい。昇華する作用物質は、一般に相転移の際のモル体積の変化が著しい。材料の比較的急速な膨張及び/又は収縮が、付加された作用物質の結果として生じるときに、成分の分離を更に促進するように、このような作用物質を材料中に導入してもよい。
【0085】
上で述べたように、酸化剤、還元剤、酸及び/又は塩基などの様々な化学作用物質を材料に加えてもよい。生産物の形成と抽出前に材料の改質を更に促進するように、冷却前、冷却中、及び/又は冷却後に、様々な作用物質は材料と反応してもよい。一般に、材料のある成分は、ある作用物質存在下で安定している一方で、他の作用物質存在下でよく反応してもよい。たとえば、セルロースは塩基に対しては安定している一方で、酸によって改質される。様々な処理サブシステムの1以上に塩基を導入することで、材料の1以上の選択成分、例えばリグニンは、他の成分、例えばセルロース及び/又はヘミセルロースから選択的に改質して分離できる。これにより、材料から得られた生産物の収量が向上する。化学作用物質は、液体として、溶液中で、及び/又は気体として様々な処理サブシステムに加えてもよい。幾つかの実施形態では、作用物質は、気体の形態で導入してもよく、かつ材料が冷却されるときに液体に凝縮してもよい。
【0086】
ある実施形態では、様々な化学酸化剤及び/又は還元剤は、化学反応によって少なくとも幾つかの材料成分の分離を促進するように冷却前、冷却中、及び/又は冷却後に加えてもよい。改質、再構築、及び/又は分離(例えばセルロース及び/又はヘミセルロースからのリグニンの分離)を促進するように、冷却単独で、又は上で開示された処理技術の1以上と共に冷却を用いてもよい。この改質、再構築、及び/又は分離は、セルロース、ヘミセルロース、及び/又はリグニンを作用物質と反応させることで更に促進してもよい。そのため、このような反応の生成物は容易には再結合しなくなる。例示的な酸化剤及び還元剤は、オゾン、酸素、空気、アンモニア、及び多様な他の作用物質を含む。
【0087】
他の実施形態
【0088】
また、本明細書に開示した冷却方法及び処理方法は、炭化水素を含有する材料(例えば、石油を含有する材料)などの他のタイプの材料を処理するように用いてもよい。様々なタイプの石油を含有する材料(重油及び軽油、天然ガス、オイルサンド、オイルシェール、タールサンド、ビチューメン、石炭、及び/又は様々な炭化水素混合物を含む)は、材料の様々な成分の分離を促進するように、かつ、分解、改質(触媒作用及び非触媒作用の改質)、蒸留、触媒変換などの精練プロセス、変換プロセス、及び精製プロセス中に温度を調整するように本明細書で開示した方法を用いて冷却して処理してもよい。これにより、効率が向上し、このようなプロセスのコストが削減される。
【0089】
幾つかの実施形態では、本明細書で開示した方法は、オイルサンド、オイルシェール、及びタールサンドなどの材料から炭化水素を含有する材料を抽出及び/又は分離するように用いてもよい。たとえば、この方法は、砂、岩石、及び他の無機物並びに有機物から石油を含有する材料を分離するように用いてもよい。
【0090】
以下のセクションでは、様々な石油処理工程について議論する。概して、冷却単独、又は本明細書で開示した処理技術のいずれかとの冷却の組み合わせは、これらの様々な処理工程の効率を高めるように用いてもよい。
【0091】
原油は、多数の異なった炭化水素種を通常含み、比較的軽くて、揮発性があり、低分子量の炭化水素から重く、濃くて、高い粘性摩擦(例えば、重油、ビチューメン)の高分子量まで及ぶ。重油は、ニューヨーク商品取引所で取り引きされるウェストテキサスインターメディエイトなどのより軽くて、より甘い原油に対して、より多くの硫黄、窒素、及び/又は金属を通常含む。一般に、スイート原油は比較的少量の硫黄含有化合物を含み、サワー原油は多量の硫黄含有化合物を含む。一般に、簡易な製油所は、スイート原油を処理するように設計されている一方、より複雑で深い変換の製油所は、重油、サワー原油の処理に必要とされる。
【0092】
原油内の多数の異なった炭化水素種(及び他の種)は、比較的デリケートにバランスをとったコロイド性の溶解度システムを通常形成する。原油のある特性(例えば、温度、圧力、及び/又は組成)を変えるときに、溶解度バランスを不安定化させてもよい。これにより、単相の原油原料が多相の多成分混合物(1以上の気相、液相、及び固相を含んでいてもよい)に変化する。常温と常圧にて、原油の様々な成分は異なった物理的な状態にある。たとえば、より軽い炭化水素(例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン)は常温、常圧で気体である。中間分子量の成分(例えば、ペンタン、ヘキサン、オクタン、ガソリン、灯油、及びディーゼル燃料)は、これらの条件では液体である。重い留分(例えば、アスファルト、ワックス)は、標準温度と標準気圧で固体である。物理的状態がこの範囲にあるため、従来の製油所は、原油の炭化水素留分の大部分(又はすべて)が液体か気体のいずれかであることを確実化するように、高温及び/又は高圧で原油を処理するのが通常である。
【0093】
原油精製は、原油内の様々な炭化水素及び他の成分を分離するプロセスを含み、幾つかの場合、分子内転位(例えば、結合を断つ化学反応)によってある炭化水素を他の炭化水素種に変換するプロセスを含む。幾つかの実施形態では、精製プロセスの第1の工程は、原油から塩などの可溶性成分を除去する水洗工程である。通常、その後、洗浄された原油は予熱用の炉に向けられる。上で議論したように、原油は、異なった粘性を有する多数の異なった成分を含んでいてもよく、幾つかの成分は常温で固体でさえあってもよい。原油を加熱することで、成分混合物は、精製中にある処理システムから別の処理システムまで(及び処理システムの一端から他端まで)流れることが可能な混合物に変換されてもよい。
【0094】
その後、予熱された原油を蒸留塔に送る。そこでは、原油混合物内の様々な成分の分別が、蒸留塔内で暖まるように起こる。蒸留プロセスで原油混合物に供給した熱エネルギーの量は、原油の組成に一部依存するが、一般に、重要なエネルギーは、蒸留中の原油を加熱して、蒸留液を冷却して、蒸留塔を加圧して、このような工程の他の工程に費やされる。適度に、ある製油所は、異なる原油原料と生成物を処理するように再構成してもよい。しかしながら、一般に、比較的特殊化した精製装置であるため、顕著に異なる原油原料を処理する製油所の能力は制限される。
【0095】
幾つかの実施形態では、1以上の冷却工程を含む本明細書で開示した方法を使用する原油原料の前処理によって、精製装置が異なった組成を有する原油を受け入れる能力を向上できる。たとえば、原油混合物の様々な化学的特性及び/又は物理的特性を変更できる。すなわち、より高い粘性のより重い成分からよい低い粘性のより低分子量の成分を生産できる。また、ある成分は異性化できる。新たに形成された異性体は、これらが形成される成分より低い粘性を有していてもよい。次に、低い粘性を有する、より低分子量の成分及び/又は異性体を製油所に導入してもよく、これにより、初めは処理に適さなかった原油原料の処理が可能となる。
【0096】
一般に、原油の様々な成分は、蒸留塔の異なった鉛直高さに対応して異なった温度範囲で蒸留される。通常、例えば、製油所蒸留塔は、多くの異なった温度切断範囲での生成物の流れを含み、最も低い沸点(及び、一般に最も小さい分子量)の成分が塔の頂部から引き出され、最も高い沸点の最も重い分子量の成分が塔のより低い位置から引き出される。実施例として、塔の上部から抽出された軽い蒸留液は、航空ガソリン、自動車用ガソリン、ナフサ、灯油、及び白絞油の1以上を通常含む。塔の中央部から取り除かれた中間蒸留液は、軽油、炉用の重油、及びディーゼル油の1以上を含んでいてもよい。重い蒸留液(一般に、塔のより低い位置から抽出される)は、潤滑油、グリース、重油、ワックス、又は分解ストックの1以上を含んでいてもよい。まだ残っている残留物は、潤滑油、重油、ワセリン、道路油、アスファルト、石油コークスなどの多様な高沸点成分を含んでいてもよい。また、塔からは他のある生成物を抽出してもよく、この生成物は、天然ガス(これは、暖房用燃料、天然ガソリン、液化石油ガス、カーボンブラック、及び他の石油化学生成物などの成分を生産するように更に精製及び/又は処理してもよい)、及び様々な副産物(例えば肥料、アンモニア、及び硫酸を含む)を含む。
【0097】
概して、本明細書で開示した方法を使用する原油及び/又は原油成分の処理は、処理された原料の分子量、化学構造、粘性、溶解度、密度、蒸気圧、及び他の物理的性質を変更するように用いてもよい。一般に、原料の組成と物理的性質に従って、多数の異なった処理プロトコルを実施してもよい。
【0098】
製油所での蒸留前及び/又は蒸留後に、原油及び/又は原油成分は、他の生成物に成分を生成するように多様な他の精製プロセスを経てもよい。
【0099】
(i)接触分解
【0100】
接触分解は、分解を促進するように、触媒の存在下で重油を熱と圧力にさらす広く用いられる精製プロセス(例えば、より低い分子量の生成物への変換)である。元々、分解は熱で行われたが、接触分解は、より高いオクタン価を有するガソリンの収量が相対的に大きく、重油と軽油の収量が相対的に小さいため、熱分解に対して大きく取って代わった。ほとんどの接触分解プロセスは、移動層プロセス又は流動層プロセスのいずれかとして分類してもよく、流動層プロセスの方がより普及している。プロセスの流れは概して以下の通りである。熱い原油原料が、供給ライザーライン(feed riser line)又は反応炉のいずれかにある触媒と接触する。分解反応中、触媒表面でのコークスの形成により、触媒は次第に不活性化する。触媒と炭化水素蒸気は機械式に分離され、触媒上に残っている油は水蒸気蒸留によって除去される。その後、触媒は再生器に入り、ここで、空気中のコークス沈着物を慎重に焼き尽くすことで触媒を再活性化する。炭化水素蒸気は、特定の沸点範囲にて生成物の流れを分離するように分別塔に向けられる。
【0101】
より旧式の分解装置(例えば、1965年以前)は、通常、反応炉容器内に離散的な濃密相の流動化触媒床を有するように設計され、ほとんどの分解が反応炉床で起こるように操作された。分解の範囲は、反応炉床の深さ(例えば、時間)と温度を変えることで制御した。より反応性の良いゼオライト触媒を採用することで現代の反応炉デザインは改良され、この反応炉は、触媒と炭化水素蒸気とを分離する分離手段として操作される。さらに、この分解プロセスは、ライザー反応炉内で再生触媒を特定の速度まで加速することで制御した後に、このライザー反応炉に触媒を導入して、ライザー反応炉に原料を注入する。
【0102】
本明細書で開示した方法は、接触分解前、接触分解中、及び/又は前接触分解後に原油の成分を処理するように用いてもよい。特に、本明細書で開示した方法は、ライザーへの原料注入前に原料を予め処理し、分解中、炭化水素(炭化水素蒸気を含む)を処理し、及び/又は接触分解のプロセスの生成物を処理するように用いてもよい。
【0103】
接触触媒は、通常、酸で処理された天然アルミノケイ酸塩、非晶質の合成シリカアルミナの組み合わせ、結晶質の合成シリカアルミナ触媒(例えば、ゼオライト)などの材料を含む。接触分解のプロセス中、これらの触媒の効率を増大させるように、1以上のイオンビームからのイオンに原油の成分をさらしてもよい。たとえば、触媒反応に関与することで触媒活性を改良する1以上の異なったタイプの金属イオンに原油成分をさらしてもよい。代替的に、又は追加的に、窒素化合物、鉄、ニッケル、バナジウム、及び銅などの典型的な触媒毒を除去するイオンに原油成分をさらしてもよい。これにより、触媒効率は確実に高いままとなる。さらに、イオンは、分解中又は触媒再生中に、コークスを除去するように(例えば、スパッタリングなどのプロセスによって、及び/又は化学反応によって)触媒の表面に形成されるコークスと反応してもよい。
【0104】
(ii)アルキル化
【0105】
石油用語で、アルキル化とは、より高い分子量のイソパラフィンを形成するようにイソパラフィン(例えば、イソブタン)と低分子量のオレフィンの反応のことを言う。アルキル化は、触媒なしで高温と高圧で起こり得るが、商業上の実施形態は、通常、硫酸触媒又はフッ化水素酸触媒のいずれかが存在する際の低温アルキル化を含む。硫酸のプロセスは、概してフッ化水素酸ベースのプロセスよりも温度に敏感であるため、タールと二酸化硫黄の形成に繋がる酸化還元反応を最小にするように注意が払われる。両方のプロセスでは、使用される酸の体積は、液体炭化水素の投入量と通常ほとんど等しく、反応槽は、炭化水素と酸を液体状態に維持するように加圧される。酸の相と炭化水素相との接触を促進するように撹拌を用い、接触時間は概して約10分から40分までである。酸の濃度が、硫酸又はフッ化水素酸の重さの約88%未満となるならば、余剰のポリマー化は反応生成物内に起こり得る。強酸を大量に用いることで、アルキル化のプロセスは高価となり、かつ潜在的に危険になる。本明細書で開示した方法は、原油の成分を処理するようにアルキル化前、アルキル化中、及び/又はアルキル化後に用いてもよい。
【0106】
(iii)接触改質と異性化
【0107】
接触改質プロセスでは、炭化水素の分子構造は、ガソリンの生産用に、より高いオクタン価の芳香族化合物を形成するように再配置され、比較的少量の分解が起こる。接触改質は自動車用ガソリンのオクタン価を主として増大させる。
【0108】
接触改質装置への典型的な原料は、重い直留ナフサと重い水素化分解ナフサであり、これらのナフサは、パラフィン、オレフィン、ナフテン、及び芳香族化合物を含む。パラフィンとナフテンは、より高いオクタン価成分への変換中に2つのタイプの反応、すなわち環化、及び異性化を受ける。通常、パラフィンは、ある程度ナフテンに異性化されて変換される。ナフテンは次に芳香族化合物に変換される。オレフィンは、パラフィンを形成するように飽和状態にされた後、上記のように反応する。芳香族化合物は、本質的に変化がないままである。
【0109】
改質中、芳香族化合物の形成に繋がる主要な反応は、ナフテンの脱水素化とパラフィンの脱水素環化である。本明細書で開示した方法は、原油の成分を処理するように接触改質前、接触改質中、及び/又は接触改質後に用いてもよい。一般に、接触改質に用いる触媒は、アルミナ塩基上に担持された白金を含む。この改質プロセスのより低い圧力での操作を可能にするより安定した触媒を形成するように、レニウムを白金と組み合わせてもよい。理論により拘束されないことを願い、白金は、水素化反応と脱水素反応用の触媒部位として機能し、塩素化アルミナは、異性化反応、環化反応、及び水素化分解反応用の酸性部位を提供すると考えられている。一般に、触媒活性は、コークス沈着及び/又はアルミナ担体からの塩化物の低下で抑えられる。触媒活性の回復は、沈着したコークスの高温酸化によって起こってもよく、その後、アルミナ担体が塩素化される。
【0110】
(iv)接触水素化分解
【0111】
一般に、接触水素化分解(通常の接触分解への対応するプロセス)は、接触分解に抵抗性がある原油成分に適用される。接触分解装置は、通常、より容易に分解された大気中と真空中のパラフィン系ガスオイルを原料として受け取る。対照的に、水素化分解装置は、通常、芳香族化合物のオイルとコークス蒸留液を原料として受け取る。水素化分解装置のより高い圧力と水素雰囲気によって、これらの成分は比較的容易に分解する。
【0112】
一般に、多くの異なった同時の化学反応が接触水素化分解装置内に起こるが、全体的な化学反応メカニズムは、水素化に伴う接触分解のメカニズムである。一般に、水素化反応は、発熱反応であって、(通常は)吸熱の分解反応に熱を提供し、過剰な熱は、水素化分解装置に注入された冷たい水素ガスによって吸収される。通常、水素化分解反応は、550°Fから750°Fの温度及び8275kPaから15,200kPaの圧力の下行われる。原料と共に大量の水素を循環させることで、触媒の汚れと再生の抑制が促進される。原料は、通常、最初の水素化分解ステージに入る前に硫黄、窒素化合物、及び金属を除去するように水素化処理され、これらの各原料は水素化分解触媒に毒として作用してもよい。
【0113】
ほとんどの水素化分解触媒は、シリカアルミナの結晶質の混合物を含み、この混合物は、小さくて、結晶格子内に含まれている1以上の希土類金属(例えば、白金、パラジウム、タングステン、及びニッケル)の量が比較的一様に分布している。理論により拘束されないことを願い、触媒のシリカアルミナ部分は分解活性を提供し、希土類金属は水素化を促進すると考えられている。一般に、触媒活性が、反応速度と生成物変換速度を維持するように水素化分解中に減少すると、反応温度は上昇する。一般に、触媒の再生は、触媒の表面に蓄積する沈着物を焼き尽くすことによって達せられる。本明細書で開示した方法は、原油の成分を処理するように接触水素化分解前、接触水素化分解中、及び/又は接触水素化分解後に用いてもよい。
【0114】
(v)他のプロセス
【0115】
また、原油精製の進行中に起こる他の多様なプロセスが、本明細書で開示した方法によって改良されるか、或いはこの方法に取って代わられる。たとえば、本明細書で開示した方法は、効率と全収率を向上させて、このようなプロセスから発生する廃棄物を抑えるように、コークス化、熱処理(熱分解を含む)、水素化処理、及びポリマー化などの精製プロセス前、精製プロセス中、及び/又は精製プロセス後に用いてもよい。
【0116】
たとえば、本明細書で開示した方法及びシステムは、他の生産物(生成物)に更に処理可能な多様に異なった生産物、又は中間生産物を生産するように用いてもよい。たとえば、任意の本開示の機械式処理方法は、ポリエチレン、ポリプロピレン、及び/又はリグニンなどの樹脂を含む樹脂繊維複合材を製造するように用いてもよい。
【0117】
多数の実施形態について記載してきた。それでもなお、本発明の精神及び範囲から逸脱せずに様々な修正がなされてもよいことが理解されるであろう。したがって、他の実施形態は請求項の範囲内にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物及び/又は酵素を利用して、冷却されたバイオマス材料を生産物に変換する方法であって、
前記バイオマス材料の冷却及び変換の少なくとも1つは、可動性処理設備を用いて行われる、
方法。
【請求項2】
前記バイオマス材料を挽くか又は粉砕することを更に有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記バイオマス材料を冷却する前に、前記挽き又は前記粉砕を行う、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記処理は、前記バイオマス材料に照射することを更に有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記冷却されたバイオマス材料は、その嵩密度が約0.8g/cm未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記粉砕は、冷凍挽き装置又は冷凍製粉装置で行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記生産物はアルコールを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記生産物はエタノール及び/又はブタノールを有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記バイオマス材料はセルロース材料又はリグノセルロース材料を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記バイオマス材料はセルロースを有し、前記冷却された材料の変換は、セルロースを糖化するように酵素を利用することを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
アルコールを生産するように、糖化された生産物を発酵させることを更に有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記冷却は、前記材料の脆化点未満の温度まで該材料を冷却することを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記冷却及び/又は前記変換は、前記材料の輸送中に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記材料は、船、はしけ、列車、又はトラックによって輸送される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記可動性処理設備は、船、はしけ、列車、又はトラックによって輸送可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
炭化水素を含有する材料を冷却することで該材料を処理することと、
冷却された前記炭化水素を含有する材料を更に処理することで、冷却された前記材料を生産物に変換することと、
を有する方法であって、
前記処理及び/又は前記変換は、可動性処理設備を用いて行われる、
方法。
【請求項17】
前記炭化水素を含有する材料は、タールサンド、オイルサンド、オイルシェール、原油、ビチューメン、石炭、及び液化天然ガスから成る群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記処理は、出発材料に照射することを更に有する、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記冷却は前記照射より先に行われる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記処理は、前記出発材料を循環させる温度を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記処理及び/又は前記変換は、前記材料の輸送中に行われる、請求項16に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−516987(P2013−516987A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−548983(P2012−548983)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【国際出願番号】PCT/US2011/020583
【国際公開番号】WO2011/087965
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(512175199)ザイレコ,インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】