説明

材料への水素チャージ方法および材料の水素脆化特性の評価方法

【課題】材料への水素チャージ方法およびこの水素チャージ方法を利用した水素脆化特性の評価方法において、材料の溶失をほとんど生じさせることなく、材料に対して、必要とされるレベルの拡散性水素濃度に水素を簡便且つ低コストにチャージする。
【解決手段】 pH2.5以上に調整されたクエン酸−リン酸水素二ナトリウム緩衝液に水素チャージ用触媒を添加した溶液に材料を浸漬することにより、材料に水素をチャージする。試験片や部品等の任意の材料に対して、材料の溶失をほとんど生じさせることなく、必要とされるレベルの拡散性水素濃度に水素を簡便且つ低コストにチャージすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車製造や建築等のような種々の技術分野で使用される材料であって、遅れ破壊等の水素脆化を生じる危険性のある材料について、その水素脆化特性を評価するために材料内に水素をチャージする方法、および材料内に水素をチャージして耐水素脆化特性を評価する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の燃費向上および自動車の衝突安全性向上の観点から、車体材料の高強度化により薄肉化を図り、車体そのものを軽量化且つ高強度化しようとする動きが活発であり、従来使用されたことのないTS1500MPa級鋼の使用も検討され始めている。それら超高強度鋼の実用化の大きな阻害因子の一つとして、遅れ破壊が挙げられる。遅れ破壊は水素脆化の一種であり、鋼板が使用開始後数ヶ月から数年後に突如破壊する現象である。
薄鋼板の耐遅れ破壊特性を評価するためには、鋼板中に水素を導入する必要がある。従来は、非特許文献1,2に示されるように、評価試験片をpH1〜2の酸に浸漬することにより水素を導入し、破壊の有無を調査する手法が採られてきた。
【0003】
一方、近年、非特許文献3に示すように、遅れ破壊が発生する限界の鋼中の拡散性水素濃度を定量化することにより遅れ破壊特性を評価する手法が提案されている。この手法で厳密に遅れ破壊限界を評価する場合、試験片中心部まで平衝濃度になるように水素をチャージすることが最も好ましい。しかし、従来のpH1〜2の酸に浸漬する方法では、鋼板が多量に溶解し、その溶解に伴って鋼板表層の状態が溶失し、また浸漬液のpHも変化するため、鋼板表面の状態を保ったまま、試験片中心部まで平衝濃度になるように水素をチャージすることは困難である。一方、pH3程度の溶液を使用すれば鋼板の溶失量は少なくなるが、チャージできる水素量が少なくなる。
【0004】
以上のような問題を解決するために、試験片を陰極として水素を電気的にチャージする電気チャージ法が特許文献1に提案されている。しかし、この手法では、工業規模で大量の材料の試験を行う際に、水素チャージセルおよび電極装置が多数必要であり、また、試験片すべてに電極を取り付ける作業数も膨大なものとなる。また、この電気チャージ法には、試験片に接続する陽極に近いほうが水素濃度が高くなること、チャージ時間とともにpHが低くなること、電極の取り付け方によっても水素チャージ量が影響されること等により、試験片内に均一に再現性よく水素をチャージすることが困難であるという問題もある。
【0005】
また、非特許文献4には、チオシアン酸アンモニウム水溶液に試験片や部品を浸漬する手法が提案されている。この手法は、鋼板溶解量が少ない状態での水素チャージが可能であるが、溶液に浸漬する試験片の個数や体積に依存して溶液のpHが経時的に変化するため、多量の試験片をテストする場合には水素チャージ量が不安定になる。また、拡散性水素を多量にチャージするためには、溶液のチオシアン酸アンモニウム濃度を高くする必要があり、溶液コストが大幅に増大するという難点がある。さらには、チオシアン酸アンモニウム(NHSCN)溶液に鋼板を浸漬した場合、溶出した鉄がFe2+イオンからFe3+イオンに酸化され、このFe3+イオンがチオシアン酸イオン(SCN)と金属錯体を形成することにより赤褐色の沈殿が発生し、溶液内の視認性が低下するという問題もある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】松山晋作著「遅れ破壊」、日刊工業新聞社、1989年、p.183
【非特許文献2】細谷佳弘 他、「高強度冷延鋼板の組織制御」、NKK技報、日本鋼管株式会社、1994年、No.145、p.33
【非特許文献3】山崎真吾 他、「高強度鋼の耐遅れ破壊特性の定量的評価方法」、鉄と鋼、社団法人日本鉄鋼協会、1997年、Vol.83、p.454
【非特許文献4】高木周作 他、「チオシアン酸アンモニウム水溶液を用いた高強度薄鋼板の耐水素脆化特性評価」、材料とプロセス、社団法人日本鉄鋼協会、2008年、Vol.22、p.1454
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−134152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって本発明の目的は、上述した従来技術の課題を解決し、試験片や部品等の材料に対して、材料の溶失をほとんど生じさせることなく、必要とされるレベルの拡散性水素濃度(例えば0.2質量ppm以上)に水素を簡便且つ低コストにチャージすることができる水素チャージ方法、およびこの水素チャージ方法を利用した水素脆化特性の評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決できる水素チャージ方法について検討を重ねた結果、pHを安定させる効果を有する緩衝液にチオシアン酸アンモニウムなどのような水素チャージ用触媒を添加した溶液に材料を浸漬するという簡便な方法により、材料の溶失をほとんど生じさせることなく、必要とされるレベルの拡散性水素濃度に水素を安定してチャージできることを見出した。
【0010】
本発明はこのような知見に基づきなされたもので、以下を要旨とするものである。
[1]pH2.5以上に調整されたクエン酸−リン酸水素二ナトリウム緩衝液に水素チャージ用触媒を添加した溶液に材料を浸漬することを特徴とする材料への水素チャージ方法。
[2]上記[1]の水素チャージ方法において、溶液が水素チャージ用触媒を0.001質量%以上含むことを特徴とする材料への水素チャージ方法。
【0011】
[3]上記[1]または[2]の水素チャージ方法において、緩衝液がpH7.5以下に調整されることを特徴とする材料への水素チャージ方法。
[4]上記[1]〜[3]のいずれかに記載のチャージ方法で材料に水素をチャージして、材料の水素脆化特性を評価することを特徴とする水素脆化特性の評価方法。
[5]上記[4]の評価方法において、材料が、薄鋼板を加工した後応力を付与した試験片または薄鋼板を素材とした成形品であることを特徴とする水素脆化特性の評価方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の水素チャージ方法によれば、試験片や部品等の任意の材料に対して、材料の溶失をほとんど生じさせることなく、必要とされるレベルの拡散性水素濃度に水素を簡便且つ低コストにチャージすることができる。
また、本発明の水素脆化特性の評価方法によれば、上記のような水素チャージ方法を利用することにより、水素脆化特性を簡便且つ低コストに評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】ハット断面形状のプレス成形品を示す説明図
【図2】実施例3の本発明例で用いた図1のプレス成形品について、水素脆化特性の評価試験を行った際に遅れ破壊が優先的に生じた箇所を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明では、pH2.5以上の緩衝液に水素チャージ用触媒を添加した溶液に材料を浸漬することにより、材料に水素をチャージする。
材料浸漬用の溶液に緩衝液を用いることにより、浸漬試験中のpHの変化がほとんどなく安定した状態で水素チャージを行うことができる。緩衝液としては、例えば、酢酸−酢酸ナトリウム水溶液(酢酸緩衝液)、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、酒石酸緩衝液、ほう酸緩衝液などが挙げられるが、本発明では、pH2.5以上に調整されたクエン酸−リン酸水素二ナトリウム緩衝液を用いる。pHの調整は、クエン酸とリン酸水素二ナトリウムのモル混合比(リン酸水素二ナトリウム/クエン酸)を制御することにより可能である。当該モル混合比を0.2以上に制御することにより、pH2.5以上の広範囲のpH領域にわたって緩衝効果を得ることができる。
【0015】
緩衝液のpHが2.5未満であると、鋼板などの材料の溶解量が極度に大きくなるとともに、緩衝液のpH緩衝効果が低減し、試験溶液のpH安定性が低下(例えば、浸漬試験前の試験溶液pHと96hr浸漬試験後の試験溶液pHの差が1以上となる)するため、pHは2.5以上とする。
また、鋼板などの材料への水素チャージ量を安定して確保する観点から、緩衝液のpHは7.5以下が好ましい。
モル混合比(リン酸水素二ナトリウム/クエン酸)を0.2〜15に制御することにより、pH2.5〜pH7.5のpH領域にわたって緩衝効果を得ることができるため、好ましい。
【0016】
緩衝液に添加する水素チャージ用触媒としては、例えば、チオシアン酸アンモニウム、チオ尿素、亜ヒ酸等が挙げられ、これらの1種以上を用いることができる。これらの成分は、微量の添加で水素チャージ量を効果的に増加させることができる。
溶液中での水素チャージ用触媒の含有量は0.001質量%以上とすることが好ましい。水素チャージ用触媒の含有量が0.001質量%未満では、水素チャージ量が不足し、必要なレベルの拡散性水素濃度(例えば、薄鋼板の曲げ半径10mmのU曲げ試験片の曲げ頂点部の場合は0.2質量ppm以上)が得られにくい場合がある。一方、溶液中での水素チャージ用触媒の含有量に特別な上限はないが、50質量%を超えると試験コストが高くなるので、50質量%以下が好ましい。
【0017】
本発明において溶液に浸漬して水素チャージを行う材料は、主として鋼であるが、これに限定されるものではない。また、材料の形態に特別な制限はなく、例えば、試験片、試験片でない鋼材、それらより製造された部品(例えば、プレス成形品、ボルト等)など、いずれの形態でもよく、部品の場合には、大型で複雑な形状のプレス成形品でも問題ない。
また、試験片の場合には、用途によって種々の形態があるが、例えば、自動車用薄鋼板の場合には、U字形やV字形に曲げ加工したものをボルトで所定の量だけ締め込んだ試験片等がある。また、荷重を負荷できる装置に試験片をセットし、溶液に浸漬しながら荷重を負荷してもよいし、浸漬により水素チャージを行った後に荷重を負荷してもよい。
【0018】
本発明の水素脆化特性の評価(試験)方法では、例えば、(1)上述のようにU字形やV字形に曲げ加工したものをボルトで所定の量だけ締め込んで溶液に浸漬し、破壊の有無を調査する、(2)荷重を負荷できる装置に試験片(平板、U曲げ試験片、V曲げ試験片など)をセットし、溶液に浸漬しながら荷重を負荷して破断限界を求める、(3)浸漬により水素チャージを行った試験片を、必要に応じて水素逃散防止のためのめっきを施した後に、装置にセットして荷重を負荷して破断限界を求める、(4)所定の形状に成形加工した部品を溶液に浸漬し、破壊の有無を調査する、などの方法が採られる。
【0019】
以上のように本発明法は、溶液に材料を浸漬するという簡便な方法であるため、どのような形態の材料に対しても、また試験対象の材料が大量であっても、簡便且つ低コストに実施することができる。また、水素チャージ法としての性能面でも、任意の材料に対して、材料の溶失をほとんど生じさせることなく、必要とされるレベルの拡散性水素濃度(例えば、薄鋼板の曲げ半径10mmのU曲げ試験片の曲げ頂点部の場合は0.2質量ppm以上)に水素を均一にチャージすることができる。このため特に、自動車、橋梁、建築、土木等の技術分野で使用されるTS980MPa以上の鋼板、鋼材およびそれらより製造される部品、ボルト等の耐遅れ破壊特性評価に好適な方法であると言える。
【実施例】
【0020】
[実施例1]
表1に示す化学成分と機械的性質を有する板厚1.6mmの鋼板を剪断して110mm×35mmのサイズの平板とし、この平板の長手方向両端を各5mm、幅方向両側端を各2.5mmずつ機械研削により研削加工し、100mm×30mmのサイズの平板とした。この平板をJIS−Z2204に準拠して曲げ半径10mmで180°U曲げ加工した。遅れ破壊試験を行う試験片(遅れ破壊試験片)は、スプリングバックにより開きが生じた試験片両端の間隔が(曲げ半径×2)mmになるように、ボルトにより締め付けを行った。
【0021】
水素チャージ用の溶液は、表2に示す成分およびpHのものを用いた。No.1〜No.17の発明例は、種々の混合モル比で作製したクエン酸−リン酸水素二ナトリウム緩衝液にチオシアン酸アンモニウムを0.0002〜5質量%添加したものである。
No.18〜No.21の比較例は、pHを1〜4にそれぞれ調整した塩酸水溶液である。No.22の比較例はイオン交換水である。No.23およびNo.24の比較例は、イオン交換水にチオシアン酸アンモニウムをそれぞれ0.1質量%、20質量%添加した水溶液である。No.25の比較例は、クエン酸−リン酸水素二ナトリウム緩衝液に、チオシアン酸アンモニウムを添加したものであるが、pHが本発明範囲より低いものである。
【0022】
これらの溶液500mLに上記した曲げ半径10mmで180°U曲げ加工した試験片を96時間浸漬し、溶液のpH変化、試験片の拡散性水素濃度、溶液中への鋼板溶解量(鋼板溶解量(%)={1−(浸漬後の質量)/(浸漬前の質量)}×100)を測定した。なお、拡散性水素濃度は、上記曲げ加工した試験片のU曲げ頂点部から切り出した幅5mmの板片をサンプルとし、ガスクロマトグラフ法を用いた昇温分析法により測定し、200℃までに放出された水素量(質量分率)を拡散性水素濃度とした。これらの結果を表2に併せて示す。
【0023】
表2によれば、本発明例は溶液中の鋼板溶解量が1%未満と少なく、溶液のpH変化も1.0未満と小さいことが判る。一方、拡散性水素濃度は高く、本発明の要求レベルである0.2質量ppm以上の拡散性水素濃度が得られていることが判る。さらに、水素チャージ量は溶液pHが小さいほど高くなる傾向が認められ、緩衝液を構成する化学種の混合モル比により溶液pHを適切に制御することで、水素チャージ量を0.2質量ppm〜2質量ppm超まで広範囲に制御できることが判る。なお、チオシアン酸アンモニウム水溶液を用いた比較例であるNo.23、No.24では、浸漬試験中にFe3+とチオシアン酸イオンとの金属錯体と思われる赤褐色沈殿が生成し、溶液内の視認性が著しく低下したのに対し、本発明例ではいずれも96hr浸漬試験後も赤褐色の沈殿は生成しておらず、溶液色は透明なままであり、本発明例が試験中の溶液内の視認性にも優れることが確認された。
【0024】
【表1】

【0025】
【表2】

【0026】
[実施例2]
表1に示す化学成分と機械的性質を有する板厚1.6mmの鋼板を実施例1と同様の平板に加工し、この平板をJIS−Z2204に準拠して曲げ半径5mmで180°U曲げ加工後、スプリングバックにより開きが生じた試験片両端の間隔が[曲げ半径×2]mmになるように、ボルトにより締め付けを行い、曲げ頂点部に約900MPaの応力を負荷した。この試験片を表2のNo.9〜No.12の溶液(発明例)500mLに浸漬して遅れ破壊試験を行い、目視により割れの判定を行った。その結果を表3に示すが、拡散性水素濃度0.7質量ppm以上において割れが発生しており、同0.5質量ppmでは割れは発生しなかった。このことから、本試験片に約900MPaの応力が負荷された場合に破壊が生じる限界の拡散性水素濃度(限界拡散性水素濃度)が0.5質量ppm超、0.7質量ppm以下の範囲に存在することを簡便に決定できることが判る。
【0027】
【表3】

【0028】
[実施例3]
表1に示す化学成分と機械的性質を有する板厚1.6mmの鋼板を、曲げ加工を主体とした冷間プレス加工により、図1に示すような曲げ部とフランジ部を有するハット断面形状に成形した。水素チャージ用の溶液は、表4に示す成分およびpHのものを用いた。No.1〜No.5の発明例は、クエン酸−リン酸水素二ナトリウム緩衝液にチオシアン酸アンモニウムを0.1質量%添加した溶液である。No.6およびNo.7の比較例では、それぞれpH1とpH3の塩酸を用いた。
【0029】
これらの溶液90Lを満たした水槽に上記プレス成形品を96時間浸漬し、溶液のpH変化、溶液中への鋼板溶解量を測定した。また、上記プレス成形品に用いたものと同じ鋼板を、[実施例1]と同じ手法で加工および曲げ半径10mmで180°U曲げ加工して試験片とし、この試験片を上記溶液に96時間浸浸した後に、[実施例1]と同じ手法で拡散性水素濃度を測定した。また、試験に伴うプレス成形品の割れ発生の有無および割れ発生箇所の判定は、96時間浸漬した当該プレス成形品を水槽から取り出し、十分な洗浄および乾燥を行った後、目視により行った。以上の結果を表4に併せて示す。また、図2に、本発明例で水素チャージがなされたプレス成形品について、遅れ破壊が優先的に発生した箇所を示す。
【0030】
表4によれば、比較例(No.6、No.7)では96時間浸漬により0.2〜0.4質量ppmの拡散性水素がチャージされているものの、鋼板の溶解が顕著に生じているとともに、浸漬前後でpHが2〜4程度上昇しており、試験環境が一定に保たれていない。これに対して、本発明例(No.1〜No.5)では、浸漬による鋼板溶解が質量減少率で最大で0.7%と少ないにも関わらず、比較例(No.6、No.7)と同程度の0.3質量ppmから、比較例を上回る1.9質量ppmもの拡散性水素がチャージされている。また、本発明例における浸漬前後のpH変化は最大で0.49と小さく、溶液のpHがほぼ一定に保たれた状態で水素チャージが実施されていることが判る。したがって、本発明では、一定水素浸入環境下で鋼板溶解をほとんど生じさせることなく試験を実施することができ、表4の「割れ発生の有無」および「割れ発生箇所」(割れ発生箇所の模式図を図2に示す)に示したように、対象部材に多量の拡散性水素がチャージされた場合に遅れ破壊が優先的に生じる箇所が曲げ部およびフランジ部であること、さらには割れが発生する限界拡散性水素量が1.1質量ppm超、1.5質量ppm以下の範囲に存在することを、顕著な鋼板溶解を生じさせることなく的確に特定することが可能である。
【0031】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明を用いることにより、遅れ破壊が懸念される、例えば引張強度で980MPa以上の高強度鋼板を用いたプレス成形部材について、優先的に水素脆化が生じる箇所を的確に特定することができる。この試験と鋼板の加工性に基づく部材成形評価法を併用することにより、実使用中に遅れ破壊が生じる可能性が低い、高強度鋼板を適用したプレス成形部材を設計することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
pH2.5以上に調整されたクエン酸−リン酸水素二ナトリウム緩衝液に水素チャージ用触媒を添加した溶液に材料を浸漬することを特徴とする材料への水素チャージ方法。
【請求項2】
溶液が水素チャージ用触媒を0.001質量%以上含むことを特徴とする請求項1に記載の材料への水素チャージ方法。
【請求項3】
緩衝液がpH7.5以下に調整されることを特徴とする請求項1または2に記載の材料への水素チャージ方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のチャージ方法で材料に水素をチャージして、材料の水素脆化特性を評価することを特徴とする水素脆化特性の評価方法。
【請求項5】
材料が、薄鋼板を加工した後応力を付与した試験片または薄鋼板を素材とした成形品であることを特徴とする請求項4に記載の水素脆化特性の評価方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−47540(P2012−47540A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188708(P2010−188708)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】