説明

材料ガス濃度制御システム

【課題】材料ガスの濃度をある設定濃度で一定に保っている際において、材料ガスの分圧が非常に低くなり、バルブの可動範囲内では材料ガスの分圧に対応した全圧を達成することができず、材料ガスの濃度を設定濃度で一定に保てなくなるような状況が生じることを防ぐことができる材料ガス濃度制御システムを提供する。
【解決手段】材料気化システム100に用いられるものであって、前記導出管12上に設けられる第1バルブ23と、前記混合ガスにおける前記材料ガスの濃度を測定する濃度測定部CSと、前記濃度測定部CSで測定された前記材料ガスの測定濃度が、予め定められた設定濃度となるように前記第1バルブ23の開度を制御する濃度制御部CCと、前記タンク内の温度を設定温度となるように温調する温調器41と、前記温調器の設定温度を設定する温度設定部42とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンク内に収容されている固体又は液体の材料にキャリアガスを導入し、材料を気化させる材料気化システムにおいて、その気化した材料ガスの濃度を制御するシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の材料気化システムに用いられ、材料ガスの濃度を一定に保つための濃度制御システムを本出願人は現在出願中である。この濃度制御システムは、キャリアガスと材料ガスの混合ガスがタンク内から導出される導出管に、第1バルブと、前記材料ガスの分圧を測定する分圧測定センサと、前記混合ガスの圧力である全圧を測定する全圧測定センサとを具備し、測定された分圧を全圧で割ることにより混合ガスにおける材料ガスの濃度を測定する濃度測定部と、前記濃度測定部により測定された測定濃度が予め定められた設定濃度となるように前記第1バルブの開度を制御する濃度制御部とを備えたものである。
【0003】
このように構成された濃度制御システムによれば、タンク内の材料が飽和蒸気圧で気化しておらず、気化の状態が変動して材料ガスの分圧が変動しているとしても、その変動に合わせて混合ガスの全圧が前記第1バルブにより制御される。従って、タンク内の材料ガスの発生状況に関わらず、材料ガスの濃度を設定濃度で一定に保つことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特願2008−282622
【0005】
ところで、濃度制御を継続しているとタンク内の材料は、材料量が減少することにより気化する材料ガスの分圧が低下してくる。これは、材料が固体の場合であればその表面積が減少し、キャリアガスと接触する面積が小さくなることや、液体の場合であれば、液面が低下することによりキャリアガスのバブルが液体と接触できる時間が減少すること、蒸発時に奪われる気化熱によりタンク内の温度が低下する事等により、材料ガスの発生量が減少してしまうことに起因する。
【0006】
このように材料ガスの発生量が減少し、材料ガスの分圧が小さくなると、前述した濃度制御システムは、材料ガスの濃度を一定に保つために、全圧を小さくするように第1バルブを制御する。この場合、全圧を小さくするために、前記第1バルブの開度をより大きくするように制御される。
【0007】
しかしながら、前記第1バルブには可動範囲が存在するので、第1バルブが全開になってしまうとそれ以上混合ガスの全圧を小さくすることができなくなってしまう。従って、材料ガスの分圧が小さくなりすぎると、それに追従して全圧を小さくすることができないため、材料ガスの濃度を設定濃度に保つことができなくなってしまう。
【0008】
また、濃度を一定に保つ場合だけでなく、キャリアガスの流量を制御することにより材料ガスの流量を一定に保ちたい場合でも同様に材料ガスの発生量の低下に起因して、キャリアガスの流量制御用のバルブの開度が開放限界開度となってしまい、材料ガスの流量制御が不可能になってしまう場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上述したような問題を鑑みてなされたものであり、例えば、材料ガスの濃度をある設定濃度で一定に保っている際において、材料ガスの分圧が非常に低くなり、バルブの可動範囲内では材料ガスの分圧に対応した全圧を達成することができず、材料ガスの濃度を設定濃度で一定に保てなくなるような状況が生じることを防ぐことができる材料ガス濃度制御システムを提供することを目的とする。また、材料ガスの発生量が少なくなり材料ガスの流量を一定に保つことができなくなるような状況が生じるのを防ぐことができる材料ガス流量制御システムを提供する事も目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明の材料ガス濃度制御システムは、材料を収容するタンクと、収容された前記材料を気化させるキャリアガスを前記タンクに導入する導入管と、前記材料が気化した材料ガス及び前記キャリアガスの混合ガスを前記タンクから導出する導出管とを具備した材料気化システムに用いられるものであって、前記導出管上に設けられる第1バルブと、前記混合ガスにおける前記材料ガスの濃度を測定する濃度測定部と、前記濃度測定部で測定された前記材料ガスの測定濃度が、予め定められた設定濃度となるように前記第1バルブの開度を制御する濃度制御部と、前記タンク内の温度を設定温度となるように温調する温調器と、前記温調器の設定温度を設定する温度設定部とを備え、前記第1バルブの開度が、可動範囲の開放限界開度に基づいて定められる開放側閾値開度を超えた場合には、前記温度設定部が、その時点で設定されている設定温度よりも高い温度に設定温度を変更することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の材料ガス濃度制御システムに用いられるプログラムは、前記導出管上に設けられる第1バルブと、前記混合ガスにおける前記材料ガスの濃度を測定する濃度測定部と、予め定められた設定濃度となるように前記第1バルブの開度を制御する濃度制御部と、前記タンク内の温度を設定温度となるように温調する温調器とを備えた材料ガス濃度制御システムに用いられるプログラムであって、前記濃度測定部で測定された前記材料ガスの測定濃度が、前記温調器の設定温度を設定する温度設定部とを備え、前記第1バルブの開度が、可動範囲の開放限界開度に基づいて定められる開放側閾値開度を超えた場合には、前記温度設定部が、その時点で設定されている設定温度よりも高い温度に設定温度を変更することを特徴とする。
【0012】
このようなものであれば、材料ガスの濃度を設定濃度となるように濃度制御を継続している間に、材料ガスの発生量が減少し、その分圧が低下した場合において、材料ガスの濃度を設定濃度で保つために全圧を低下させ続けているうちに第1バルブの開度が開放限界開度に近づいた状態になったとしても、その時点で前記温度設定部が、設定温度を開放側閾値開度となった時点の温度よりも高く設定して、材料ガスの飽和蒸気圧を上昇させることにより材料ガスの発生量を増加させて、材料ガスの分圧を上昇させることができる。従って、材料ガスの分圧が上昇すると濃度を一定にするには、全圧も上昇させる必要があるので、バルブの開度は開放側閾値開度を超えた時点の開度よりも閉塞側の開度に制御されることになる。つまり、材料ガスの分圧がある限度の値よりも低下した場合には、温度設定部が設定温度をより高い温度に変更して、材料ガスの分圧を上昇させるので、第1バルブの開度を開放限界開度の近傍で濃度制御を行わせるのではなく、可動範囲の中央側において十分に余裕をもって濃度制御を行わせることができる。
【0013】
このように、材料ガスの分圧の低下に起因して、第1バルブの可動範囲を超えた領域での濃度制御が必要になり、第1バルブが開放限界開度の開度で止まってしまい濃度制御が不可能になってしまうことを防ぐことができる。
【0014】
さらに、このような構成の材料ガス濃度制御システムによれば、第1バルブを用いて全圧を制御することにより、材料ガスの分圧の変動を許容することができる濃度制御を実現できているので、温度制御により厳密に材料ガスの発生量を制御する必要はない。従って、濃度制御を行うには、第1バルブの可動範囲を超えてしまうような特殊な状況にのみ対応できる温調器及び温度設定部であればよいので、あまり精密な温度制御装置を用いなくてもよい。従って、高性能なものを用いる必要はないので簡易で安価な温調器及び温度設定部を用いるだけでも、上述したような第1バルブの可動範囲を超えることにより、濃度制御を行えなくなる問題を防ぐことができる。
【0015】
第1バルブの開度が、開放側閾値開度になった又はその開度に近づいているのを検出してから温度制御を開始した場合、温度制御の遅れによっては、材料ガスの分圧に低下する方向に慣性が働いてしまい、第1バルブが開放限界開度に到達してしまう恐れがある。そのような問題を防ぐには、前記閾値が前記第1バルブの開度の変化率に応じて変更されるものであればよい。このようなものであれば、変化率が大きい場合には、余裕を見て、開放側閾値開度と開放限界開度との差が大きくなるようにし、変化率が小さい場合に開度の差を小さくなるように設定する等すれば、制御不能となる状態をより回避しやすい安全な濃度制御を行うことができる。
【0016】
材料ガスの分圧をモニタリングしておき、分圧が低下してきた場合にはある程度分圧を上昇させて第1バルブの開度の可動範囲内で濃度制御を行うことができるようにしてもよい。具体的には、材料を収容するタンクと、収容された前記材料を気化させるキャリアガスを前記タンクに導入する導入管と、前記材料が気化した材料ガス及び前記キャリアガスの混合ガスを前記タンクから導出する導出管とを具備した材料気化システムに用いられるものであって、前記導出管上に設けられる第1バルブと、前記材料ガスの分圧を測定する分圧測定センサと、前記混合ガスの全圧を測定する全圧測定センサとを具備し、前記分圧と前記全圧に基づいて前記混合ガスにおける前記材料ガスの濃度を測定する濃度測定部と、前記濃度測定部で測定された前記材料ガスの測定濃度が、予め定めた設定濃度となるように前記第1バルブの開度を制御する濃度制御部と、前記タンク内の温度を設定温度となるように温調する温調器と、前記温調器に設定温度を設定する温度設定部とを備え、前記分圧測定センサにより測定される分圧が、前記第1バルブの可動範囲の開放限界開度に基づいて定められる下限閾値分圧を下回った場合には、前記温度設定部が、その時点で設定されている設定温度よりも高い温度に設定温度を変更することを特徴とする材料ガス濃度制御システムであればよい。
【0017】
第1バルブの開度が開放限界開度となることにより、濃度制御が不可能になるのを防ぐには、温度制御を用いて材料ガスの分圧を調整する方法以外のものを使用しても構わない。具体的には、材料を収容するタンクと、収容された前記材料を気化させるキャリアガスを前記タンクに導入する導入管と、前記材料が気化した材料ガス及び前記キャリアガスの混合ガスを前記タンクから導出する導出管とを具備した材料気化システムに用いられるものであって、前記導出管上に設けられる第1バルブと、前記混合ガスにおける前記材料ガスの濃度を測定する濃度測定部と、前記濃度測定部で測定された前記材料ガスの測定濃度が、予め定めた設定濃度となるように前記第1バルブの開度を制御する濃度制御部と、前記第1バルブの上流又は下流に設けられた補助バルブと、前記補助バルブの開度を制御する補助バルブ制御部と、を備え、前記第1バルブの開度が、可動範囲の開放限界開度に基づいて定められる開放側閾値開度を超えた場合には、前記補助バルブ制御部が、前記補助バルブの開度をその時点で設定されている開度よりも開放側の開度へと変更することを特徴とする材料ガス濃度制御システムであればよい。このようなものであれば、第1バルブが開放側限界開度に近づいた場合には、補助バルブの開度が開放されることにより補助的に全圧をさらに低下させることによって、材料ガスの分圧の低下に対応して濃度を設定濃度で一定に保つことができる。
【0018】
材料ガスの分圧が低下しすぎることにより、第1バルブが開放限界開度となっても設定濃度にする事が出来ない状況が生じるのを防ぐのと同様に、材料ガスの分圧が上昇しすぎることにより、それに合わせて全圧を上昇させるために第1バルブが閉塞限界開度となっても設定濃度にすることができない不具合を回避できるようにしても構わない。具体的には、 材料を収容するタンクと、収容された前記材料を気化させるキャリアガスを前記タンクに導入する導入管と、前記材料が気化した材料ガス及び前記キャリアガスの混合ガスを前記タンクから導出する導出管とを具備した材料気化システムに用いられるものであって、前記導出管上に設けられる第1バルブと、前記混合ガスにおける前記材料ガスの濃度を測定する濃度測定部と、前記濃度測定部で測定された前記材料ガスの測定濃度が、予め定められた設定濃度となるように前記第1バルブの開度を制御する濃度制御部と、前記タンク内の温度を設定温度となるように温調する温調器と、前記温調器に設定温度を設定する温度設定部とを備え、前記第1バルブの開度が、可動範囲の閉塞限界開度に基づいて定められる閉塞側閾値開度を下回った場合には、前記温度設定部が、その時点で設定されている設定温度よりも低い温度に設定温度を変更することを特徴とする材料ガス濃度制御システムであればよい。
【0019】
混合ガスにおける材料ガスの濃度ではなく、前記材料ガスの流量を略一定に保ちたい場合にも、材料の減少等により材料ガスの発生量が減少する事に起因して、流量制御用のバルブが開放限界開度となっても設定流量にする事が出来ない場合がある。そのような不具合を防ぐには、材料を収容するタンクと、収容された前記材料を気化させるキャリアガスを前記タンクに導入する導入管と、前記材料が気化した材料ガス及び前記キャリアガスの混合ガスを前記タンクから導出する導出管とを具備した材料気化システムに用いられるものであって、前記導入管上に設けられる第2バルブと、
【0020】
前記材料ガスの流量を測定する材料ガス流量測定部と、前記材料ガス流量測定部で測定された前記材料ガスの測定流量が、予め定められた設定流量となるように前記第1バルブの開度を制御する材料ガス流量制御部と、前記タンク内の温度を設定温度となるように温調する温調器と、前記温調器の設定温度を設定する温度設定部とを備え、前記第2バルブの開度が、可動範囲の開放限界開度に基づいて定められる開放側閾値開度を超えた場合には、前記温度設定部が、その時点で設定されている設定温度よりも高い温度に設定温度を変更することを特徴とする材料ガス流量制御システムであればよい。このようなものであれば、第2バルブが開放限界開度に近づいた場合には、タンク内の温度を上昇させて前記材料ガスの発生量を増加させ、前記第2バルブの開度を可動範囲の中央側で制御させることができるようになるので、材料ガスの流量が制御不能になる事態を回避でき、常に一定流量で材料ガスを流すことができるようになる。
【発明の効果】
【0021】
このように本発明の材料ガス濃度制御システムによれば、濃度制御中において材料ガスの分圧の低下が生じることにより、第1バルブの開度が開放限界開度に近づいてしまい、それ以上濃度制御が継続できなくなってしまう前に、前記温度設定部が設定温度を上昇させて、材料ガスの分圧をある程度上昇させようとするので、達成するべき全圧も上昇し、前記第1バルブの可動範囲内で確実に濃度制御を行うことができ、前記第1バルブが開放限界開度でありこれ以上動かせなくなることによって濃度制御が不可能になるという不具合を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る材料ガス濃度制御システムの模式的構造。
【図2】同実施形態における材料ガス濃度制御システムの機能ブロック図。
【図3】同実施形態における材料ガス濃度制御システムの濃度制御の動作を示すフローチャート。
【図4】同実施形態における材料ガス濃度制御システムの流量制御の動作を示すフローチャート。
【図5】同実施形態における材料ガス濃度制御システムの設定温度変更により第1バルブの可動範囲内で濃度制御が行えることを示すグラフ。
【図6】本発明の別の実施形態に係る材料ガス濃度制御システムの模式的構造。
【図7】本発明の更に別の実施形態に係る材料ガス濃度制御システムの模式的構造。
【図8】本発明の異なる実施形態に係る材料ガス濃度制御システムの模式的構造。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0023】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0024】
本実施形態の材料ガス濃度制御システム100は、例えば、半導体製造装置の一種であるMOCVD成膜装置にTMIn(トリメチルインジウム)を一定の濃度で供給するために用いられるものである。より具体的には、TMInの固体材料を気化させて成膜室であるチャンバに供給するバブリングシステム1に用いられるものである。なお、TMInが請求項での材料に対応し、バブリングシステム1が請求項での材料気化システムに対応する。ここで、材料は液体材料であっても本発明は同様の効果を奏し得る。また、本発明の材料濃度制御システムは、TMInの固体材料が気化した材料ガスの濃度制御に限られるものではない。例えば、CVD成膜装置等や、半導体製造プロセスに使用されるウエハ洗浄装置の乾燥処理槽内のIPA(イソプロピルアルコール)濃度を安定供給するために用いることもできる。加えて、半導体、FPD、光デバイス、MEMS等の製造プロセスに限らず、バブリングシステム1を用いたガス供給装置に用いることができる。
【0025】
図1に示すように、前記バブリングシステム1は、材料Lを貯留するタンク13と、前記タンク13に貯留された材料L中にキャリアガスを導入してバブリングさせる導入管11と、前記タンク13に貯留された材料Lの上方空間Nから材料Lが気化した材料ガス及び前記キャリアガスの混合ガスを導出する導出管12とを具備したものである。前記タンク13にはタンク13内の温度を測定するための温度センサTが取り付けてある。
【0026】
材料ガス濃度制御システム100は、前記導入管11に設けてあり、キャリアガスの流量制御を行うためのマスフローコントローラ3(流量制御器)と、前記導出管12に設けてあり、混合ガス中の材料ガスの濃度制御を行うためのコンクコントローラ2(濃度制御器)と、から構成してあるものである。本実施形態のコンクコントローラ2は、混合ガスの全圧を制御することによって濃度制御を行うものである。さらに、このような構成に加えて、本材料ガス濃度制御システム100は、さらにタンク13内の温度を一定に保つための温調機構を備えている。
【0027】
以下では図1及び図2を参照しながら各機器について、コンクコントローラ2、マスフローコントローラ3、温調機構の順で各部ごとに詳述する。
【0028】
<コンクコントローラの構成>
【0029】
前記コンクコントローラ2は、前記混合ガス中の材料ガスの濃度を測定する濃度測定部CSと、前記タンク13内の圧力である混合ガスの圧力(全圧)を測定する圧力測定部たる圧力計22と、弁体の開度によって混合ガスの全圧を制御するための第1バルブ23とをこの順に上流から設けてあるものであり、さらに、コンクコントローラ制御部24を具備したものである。ここで、混合ガス中の材料ガスの濃度を制御するためには、圧力計22は第1バルブ23よりも上流に設けておく必要がある。これは、タンク13内の全圧を正確に測定し、混合ガス中の材料ガスの濃度を正確に算出して、材料Lの気化状態の変化に合わせることができるようにするためである。
【0030】
前記濃度測定部CSは、非分散式赤外線吸収方式によって材料ガスの分圧を測定する分圧測定センサ21と、前記分圧測定センサ21によって測定される材料ガスの分圧と、前記圧力計22によって測定される測定圧力たる全圧に基づいて、混合ガス中の材料ガスの濃度を算出する濃度算出部241とを具備したものである。ここで、混合ガス中の材料ガスの濃度は、材料ガスの分圧を混合ガスの全圧によって割ることにより算出する。このような濃度の算出方法は、気体の状態方程式に基づいて導かれるものである。
【0031】
前記コンクコントローラ制御部24は、前述した濃度算出部241と、濃度制御部CCと、から構成してある。濃度制御部CCは、前記濃度測定部CSによって測定された測定濃度が予め定めた設定濃度に結果としてなるように第1バルブ23を制御するものであり、第1バルブ制御部242と、前記第1バルブ制御部242に設定圧力を設定する設定圧力設定部243と、から構成してあるものである。
【0032】
第1バルブ制御部242は、前記圧力計22で測定された圧力(全圧)が設定圧力設定部243によって設定された圧力である設定圧力になるように前記第1バルブ23の開度を制御するものである。
【0033】
設定圧力設定部243は、設定濃度が変更された後の一定期間においては、設定圧力を後述する全圧算出部244で算出されたタンク内圧力である仮設定圧力とする一方、その他の期間においては、予め定めた設定圧力を、濃度測定部CSによって測定された測定濃度と設定濃度との偏差が小さくなる向きに変更するものである。
【0034】
具体的には、測定された測定濃度が設定濃度よりも高い場合には、濃度は分圧/全圧で表されることから、全圧を大きくすることによって濃度を下げることができる。従って、測定濃度が設定濃度よりも高い場合には、設定圧力設定部243は、前記第1バルブ制御部242に対して全圧を大きくするように設定圧力を変更する。その結果、前記第1バルブ制御部242は、第1バルブ23の開度を小さくするように制御することになる。測定された測定濃度が設定濃度よりも低い場合には、この逆を行うことになる。
【0035】
このように測定濃度と設定濃度の偏差が小さくなる向きに設定圧力の変更を行うとは、測定濃度が設定濃度より高い場合には、設定圧力をより高く変更し、測定濃度が設定濃度よりも低い場合には、設定圧力をより低く変更することを言う。
【0036】
なお、コンクコントローラ制御部24はコンピュータを利用したものであり、内部バス、CPU、メモリ、I/Oチャネル、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ等を備えている。そして、メモリに予め記憶させた所定プログラムにしたがって前記CPUや周辺機器が動作することにより、第1バルブ制御部242、前記濃度算出部241、前記設定圧力設定部243としての機能を発揮するようにしてある。ここで、第1バルブ制御部242のみが独立した1チップマイコンなどの制御回路により構成されて、設定圧力を受け付けるようにしてあり、前記圧力計22及び前記第1バルブ23を1ユニットとして設定圧力を入力するだけで容易に圧力制御を行うことができるように構成してある。このような制御部の構成であれば、従来から圧力制御用に開発された制御回路やソフトウェアを濃度制御のために使うことができるので、設計や開発コストの増大を防ぐことができる。
【0037】
このように、コンクコントローラ2は、混合ガスの濃度制御を単体で行っているものである。
【0038】
<マスフローコントローラの構成>
【0039】
次に、マスフローコントローラ3について各部について説明する。前記マスフローコントローラ3は、前記導入管11に流入するキャリアガスの質量流量を測定する流量測定部たるサーマル式流量計31と、弁体の開度によってキャリアガスの流量を調節する第2バルブ32とをこの順に上流から設けてあるものであり、さらに、マスフローコントローラ制御部33を具備したものである。流量測定部は差圧式のものを用いてもよい。
【0040】
前記マスフローコントローラ制御部33は、前記サーマル式流量計31からの信号に基づいてキャリアガスの流量を算出するキャリアガス流量算出部331と、前記材料ガスの測定濃度及び前記キャリアガスの測定流量に基づいて、前記導出管12を流れる材料ガス又は混合ガスの流量を算出し、その算出流量が予め定めた設定流量となるように第2バルブ32の開度を制御する流量制御部FCとから構成してある。
【0041】
前記流量制御部FCは、第2バルブ制御部332と、前記第2バルブ制御部332に設定流量を設定する設定キャリアガス流量設定部333とを具備したものである。
【0042】
前記第2バルブ制御部332は、測定された測定キャリアガス流量を設定キャリアガス流量設定部333によって設定された設定キャリアガス流量となるように前記第2バルブ32の開度を制御するものである。
【0043】
前記設定キャリアガス流量設定部333は、前記算出流量と設定された設定流量との偏差が小さくなる向きに予め定めた設定キャリアガス流量を変更するものである。前記算出流量と設定された設定流量との偏差を小さくすることについて、具体的に説明すると、材料ガス又は混合ガスの算出流量が材料ガス又は混合ガスの設定流量よりも多い場合には、前記濃度制御部CCによって濃度が一定に保たれていると仮定して、流入するキャリアガスの流量を少なくするように前記第2バルブ制御部332に対して設定キャリアガス流量を変更することになる。算出された算出流量が設定流量よりも少ない場合にはこの逆を行うこととなる。これは、濃度が分圧/全圧で表されることから、(材料ガスの質量流量)/(全質量流量=材料ガスの質量流量+キャリアガスの質量流量)でも表せるので、濃度が一定に保たれているならば、キャリアガスの質量流量の増減がそのまま材料ガスの質量流量及び全流量の増減させることができるからである。なお、算出流量が設定流量よりも少ない場合には、多い場合とは逆の動作を行うことになる。
【0044】
なお、キャリアガス流量算出部331及び第2バルブ制御部332は、CPU、メモリ、I/Oチャネル、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ等を備えた制御回路BFなどによって機能するものである。この制御回路BFは、流量制御用に特化したものであり、マスフローコントローラ3が制御すべき流量の値である流量設定値の信号や前記サーマル式流量計31からの信号を受け付けるように構成されているものである。また、前記設定キャリアガス流量設定部333は、汎用の1チップマイコンなどによってその機能を実現されるものである。
【0045】
このように、マスフローコントローラ3は、導入管11におけるキャリアガスの流量制御のみを行い、結果として材料ガス又は混合ガスの流量制御を行っているものである。
【0046】
<コンクコントローラ、マスフローコントローラの動作>
【0047】
次に、混合ガス中の材料ガス濃度の制御動作及び混合ガス及び材料ガスの流量の制御動作について図3、図4のフローチャートを参照しながら説明する。
【0048】
まず、設定された設定濃度になるように第1バルブ23の開度を制御することによって濃度制御を行うときの動作について図3を参照しながら説明する。
【0049】
前記分圧測定センサ21によって測定された材料ガスの分圧と、前記圧力計22によって測定される混合ガスの全圧とによって、濃度算出部241は、混合ガスにおける材料ガスの濃度を式(1)によって算出する。
【0050】
C=Pz/Pt (1)
【0051】
ここで、Cは濃度、Pzは材料ガスの分圧、Ptは混合ガスの全圧。
【0052】
通常運転時においては、濃度測定部によって測定された濃度が、設定圧力設定部243に設定された設定濃度と異なっている場合には、前記分圧測定センサ21によって測定された材料ガスの分圧Pzと設定濃度C0に基づいて式(2)によって、設定圧力設定部243は次のように設定圧力Pt0を変更する(ステップS1)。
【0053】
Pt0=Pz/C0 (2)
【0054】
ここで、Pzは前記分圧測定センサ21によって常に測定されている値であり、C0は設定されている濃度であるので既知である。
【0055】
前記第1バルブ制御部242は、設定圧力がPt0に変更されると、前記圧力計22が測定する圧力(全圧)Ptと設定圧力Pt0の偏差が小さくなるように第1バルブ23の開度を制御する(ステップS2)。
【0056】
前記測定圧力Ptを設定圧力Pt0に追従させている間に材料ガスの分圧Pzが変動しなければ最終的に測定される混合ガス中の材料ガスの濃度は設定濃度C0となる。
【0057】
追従中に、材料ガスの分圧Pzが変動した場合には設定圧力設定部243は、式(2)によって再び設定圧力Pt0を変更しなおし、設定濃度C0となるようにする。
【0058】
次に導出管12における材料ガス又は全流量の流量制御について図4を参照しながら説明する。なお、前述したコンクコントーラ2の濃度制御に関わりなく、マスフローコントローラ3はキャリアガスの流量の制御をおこなっている。
【0059】
材料ガスの設定流量Qz0が設定キャリアガス流量設定部333に設定されているとする。まず、流量と濃度との間には以下の式(3)のような関係がある。
【0060】
C=Pz/Pt=Qz/Qt=Qz/(Qc+Qz) (3)
【0061】
ここでQzは材料の質量流量、Qtは混合ガスの質量流量、Qcはキャリアガスの質量流量である。
【0062】
前記設定キャリアガス流量設定部333は、式(3)を変形した以下の式(4)により設定キャリアガス流量Qc0を設定する(ステップST1)。
【0063】
Qc0=Qz0(1−C)/C (4)
【0064】
ここで、濃度Cは濃度測定部CSによって常に測定されている値であり、Qz0も設定されている値であるので既知である。
【0065】
前記第2バルブ制御部332は、設定キャリアガス流量がQc0に変更されると、前記流量測定部で測定されたキャリアガス流量Qcと設定キャリアガス流量Qc0の偏差が小さくなるように第2バルブ32の開度を制御する(ステップST2)。
【0066】
前記測定キャリアガス流量Qcを設定キャリアガス流量Qc0に追従させている間に濃度Cが変動しなければ最終的に測定される測定キャリアガスの流量は設定キャリアガス流量Qc0となる。
【0067】
追従中に、濃度Cが変動した場合には式(4)により、設定キャリアガス流量設定部333は再び設定キャリアガス流量Qc0を設定しなおし、所定の材料ガス流量Qz0となるようにする。
【0068】
このように前記コンクコントローラ2及び前記マスフローコントローラ3が協業することにより、第1バルブ23によって容易に制御することのできる全圧を制御変数として濃度制御を行うように構成してあるので、材料ガスが飽和蒸気圧まで十分に気化しなかったり、気化に変動があったりしたとしても、混合ガス中の材料ガスの濃度を設定濃度で一定に保つことができる。
【0069】
<温調機構の構成>
【0070】
次に温調機構4の構成及びその動作について説明する。前記温調機構4は、前記バブリングシステム1の設定温度となるように温調する温調器41と、前記温調器41の設定温度を設定する温度設定部42とから構成してある。
【0071】
前記温調器41は、ヒータであり、前記温度センサTからタンク内の温度を取得し、その測定温度が設定温度となるようにオンオフ制御を行うものである。また、温調器41及びタンクの周囲は断熱槽で囲んである。前記温調器41はPID制御によりタンク内の温度を一定に保つものであっても構わない。
【0072】
前記温度設定部42は、前記第1バルブ23の開度が、可動範囲の開放限界開度に基づいて定められる開放側閾値開度を超えた場合には、その時点で設定されている設定温度よりも高い温度に設定温度を変更するように構成してある。
【0073】
より具体的には、前記温度設定部42は、コンピュータ等によってその機能が実現されるものであって、前記第1バルブ23の開度を取得し、その測定された開度が前記開放側閾値開度を超えているかどうかをについて比較を行う開度比較部421と、前記開度比較部421において測定開度が前記開放側閾値開度を超えている場合には、設定温度を現状よりも高い温度に変更する温度変更部422とから構成されるものである。
【0074】
前記開度比較部421は、設定する開放側閾値開度を、材料の特性や、時間経過における開度の変化率に基づいて変更するように構成してある。具体的には、前記開度比較部421は、第1バルブ23の開度の変化率が大きいほど、それに相関して前記開放限界開度と、前記開放側閾値開度との差の絶対値が大きくなるように前記開放側閾値開度を設定するものである。そして、前記第1バルブ23の開度が前記開放側閾値開度を超えた場合には、前記温度変更部422へその旨を伝達する信号を送信する。
【0075】
前記温度変更部422は、前記第1バルブ23の開度が前記開放側閾値開度を超えた場合に、現在設定されている設定温度よりも高い設定温度に変更するものである。現状より高い温度に設定温度を設定するとは、本実施形態の場合、予め定めた温度分だけ上昇させるようにしてある。例えば、前記第1バルブ23の開度の可動範囲において略中央値近傍で濃度制御が行われるように設定温度を上昇させるように構成してある。
【0076】
このように構成された材料ガス濃度制御システム100において、タンク3から発生する材料ガスの分圧が低下した場合の前記温調機構4の動作について説明する。
【0077】
前記コンクコントローラ2により材料ガスの濃度が設定濃度で一定に保たれていると、時間が経過するにつれて、材料量の減少等に起因して材料から気化するガスの量が減少することになる。材料ガスの発生量が減少すると、タンク13内での材料ガスの分圧が低下する。前記コンクコントローラ2は、濃度を一定に保つために、材料ガスの分圧の減少に合わせて混合ガスの全圧を低下させるよう前記第1バルブ23の開度を開放側へ大きくするように制御する。
【0078】
前記開度比較部421は、設定濃度で材料ガスの濃度が一定に保たれており、前記第1バルブ23の開度が開放側閾値開度に到達していない間は、前記第1バルブ23の開度の変化率をモニタリングしており、そのサンプリング周期又は一定周期ごとに変化率に基づいて前記開放側閾値開度を変更する。そして、前記開度比較部421が、前記第1バルブ23の開度と開放側閾値開度と比較し、開放側閾値開度を超えたと判断するとその旨を前記温度変更部422へと送信する。
【0079】
前記温度変更部422は、現在設定されている設定温度から予め定められた所定値だけ設定温度を上昇させて新たな設定温度に変更する。
【0080】
このように設定温度が変更されることによって、前記第1バルブ23が常に可動範囲内で濃度制御を行うことができる理由について図5を用いて説明する。図5は横軸に設定濃度、縦軸に混合ガスの全圧をとるとともに、破線で第1バルブ23の開放限界開度のおける全圧、一点鎖線で第1バルブ23の閉塞限界開度における全圧を示してあり、その破線と一点鎖線とで挟まれる領域により第1バルブ23の可動範囲で達成できる全圧の範囲を示すものである。また、実線によって描かれる曲線は、ある温度において材料ガスの分圧Pzが一定の場合の曲線であり、式Pt=Pz/Cに基づいて描かれるものである。なお、下側に描かれる曲線は材料ガスの温度が15℃のときのものであり、上側に描かれる曲線は材料ガスの温度が25℃のときのものである。
【0081】
図5に示すように、仮に設定濃度が0.25%の時には、15℃の曲線の場合、開放限界開度を超えてしまうため、第1バルブ23では達成できない全圧となり濃度制御が不可能になってしまう。しかしながら、図5に示される開放側閾値開度において、設定温度を変更し、25℃にしておけば、設定濃度が0.25%の時には図5に示されるように可動範囲内で達成できる全圧であるので、設定濃度に制御することができる。
【0082】
このように本実施形態の材料ガス濃度制御システム100によれば、材料ガスの濃度及び流量を一定に保つように制御をし続けている間に材料ガスの分圧が低下してきたとしても、前記温調機構4が前記第1バルブ23の開度が開放側閾値開度を超えた時点で、設定温度をより高い温度に変更して、材料ガスの分圧を上昇させて第1バルブ23の可動範囲内で濃度制御を行うことができるようにすることができる。従って、開放限界開度に達することにより、濃度制御が不可能になるという不具合を防ぐことができ、常に材料ガス濃度を一定に保つことができるようになる。
【0083】
また、材料ガスの発生状況や、その残量等さまざまな要因によって変化するタンク13内の温度を常にごく短い時間で一定値に制御する事は難しいが、本実施形態の前記温調機構4は、前記第1バルブ23の開度が開放側閾値開度を超えた場合に設定温度を変更し大まかにタンク内の温度を上昇させる構成となっているので、非常に単純な温度制御を行うだけでよく、目的の制御を達成しやすい。つまり、安価な温調装置であっても十分に本実施形態の目的である第1制御バルブ23の可動範囲を超える制御指令が出されてしまい、止まってしまうことを防ぐことができる。
【0084】
その他の実施形態について説明する。以下の説明では前記実施形態に対応する部材には同じ符号を付すこととしている。
【0085】
前記実施形態では、混合ガスの全圧が設定圧力になるように第1バルブ23を制御することによって混合ガス中の材料ガスの濃度を制御していたが、濃度測定部CSによって測定された濃度を制御変数として、設定濃度となるように第1バルブ23を制御してもかまわない。
【0086】
前記実施形態では、材料ガスの濃度だけでなく、その流出流量も併せて制御するようにしていたが、濃度だけを制御すればよいのであれば、マスフローコントローラ3を設けずに、コンクコントローラ2のみによって制御を行うようにしてもかまわない。すなわち、材料を収容するタンクと、収容された材料を気化させるキャリアガスを前記タンクに導入する導入管と、材料が気化した材料ガス及び前記キャリアガスの混合ガスを前記タンクから導出する導出管とを具備した材料気化システムに用いられるものであって、前記導出管上に設けられた第1バルブと、前記混合ガスにおける材料ガスの濃度を測定する濃度測定部と、前記濃度測定部で測定された材料ガスの測定濃度が、予め定めた設定濃度となるように前記第1バルブの開度を制御する濃度制御部とを具備していることを特徴とする材料ガス濃度制御システムであっても構わない。
【0087】
このようなものであっても、濃度測定部によって混合ガスにおける材料ガスの濃度そのものを測定して、濃度制御部によって予め定めた設定濃度となるように第1バルブの開度を制御するので、タンク内で材料が飽和蒸気圧で気化していない場合や、バブリングの状態が変化する場合などにおいて材料ガスの発生する量が変動したとしても、その変動とは関係なく濃度を一定に保つことができる。
【0088】
前記濃度測定部CSは、分圧と全圧によって濃度を算出するものであったが、直接濃度を測定するようなものであってもかまわない。また、分圧測定センサ21としては非分散式赤外線吸収方式に限られず、FTIR分光方式や、レーザ吸収分光方式などであってもかまわない。
【0089】
材料ガスの流量制御を行うのは、設定された設定流量と、測定される濃度と測定されるキャリアガス流量に基づいて算出される材料ガスの算出流量との偏差が小さくなるように第2バルブ32を制御するようにしてもかまわない。
【0090】
混合ガス中の材料ガスの濃度のみを精度よく制御すればよく、流量はある決まった値ではなくとも安定して流れるだけでよい場合には、図6に示すようにコンクコントローラ2からマスフローコントローラ3へ測定濃度をフィードバックせずに、流量制御を行うようにしてもかまわない。この場合、設定キャリアガス流量は、設定濃度及び設定流量から式(3)に基づいて算出するようにすればよい。また、設定キャリアガス流量を予め定めておき、その流量でキャリアガスが流れるようにしておいても、コンクコントローラ2によって濃度が一定に保たれているならば、結果として、材料ガス又は混合ガスの流量も一定となる。設定キャリアガス流量を予め定める場合には、前記設定キャリアガス流量設定部333を省略した構成として、前記第2バルブ制御部332に直接設定キャリアガス流量を入力する構成とすればよい。
【0091】
また、前記実施形態では、濃度測定部が混合ガスの全圧を測定する圧力計と分圧測定センサを備えたものであったが、濃度測定部が超音波濃度計等のように単体で濃度を測定するものであっても構わない。また、濃度を測定するための圧力計と、第1バルブを制御するために用いる圧力計を共通して使用していたが、それぞれが、別々に設けてあるものであっても構わないし、濃度測定部が前述のように全圧を用いないものであっても構わない。
【0092】
前記実施形態では、前記第1バルブ23の開度を前記温調機構4がモニタリングすることにより、設定温度を変更するものであったが、前記材料ガスの分圧をモニタリングすることにより設定温度を適宜変更するものであってもよい。具体的には、図7に示すように前記分圧測定センサ21により測定される分圧が、前記第1バルブ23の可動範囲の開放限界開度に基づいて定められる下限閾値分圧を下回った場合には、前記温度設定部42が、その時点で設定されている設定温度よりも高い温度に設定温度を変更するものであってもよい。このような構成では、前記第1バルブ23の開度のモニタリングを行う必要がなく、分圧測定センサ21の値をそのまま使うによって、第1バルブ23が止まってしまう不具合を防ぐことができる。
【0093】
また材料ガスの分圧をモニタリングして、設定温度を変更する以外にも、例えば、圧力計から出力される混合ガスの全圧をモニタリングしておき、開放限界開度に基づいて定めた下限閾値全圧を測定全圧が下回った場合には、設定温度を変更するように構成しても構わない。
【0094】
前記実施形態では、前記タンク13内の温度を変更することにより材料ガスの分圧を上昇させて、前記第1バルブ23の可動範囲内で制御できるようにしていたが、材料ガスの分圧を変化させる以外の方法を取っても構わない。すなわち、図8に示すように前記第1バルブ23の上流又は下流に設けられた補助バルブ5と、前記補助バルブ5の開度を制御する補助バルブ制御部6と、を備え、前記第1バルブ5の開度が、可動範囲の開放限界開度に基づいて定められる開放側閾値開度を超えた場合には、前記補助バルブ制御部6が、前記補助バルブ5の開度をその時点で設定されている開度よりも開放側の開度へと変更することを特徴とする材料ガス濃度制御システム100であっても構わない。
【0095】
より具体的には、前記導出管12に接続される反応室等のチャンバCに設けてある補助バルブ5を用い、第1バルブ23の開度が開放側閾値開度となった場合には、前記補助バルブ5を開放して、より全圧を低下できるように構成してあればよい。また、前記第1バルブ23の開度をモニタリングするのではなく、材料ガスの分圧をモニタリングするようにしても構わない。加えて、補助バルブ5は、導出管12に設けてあるものであっても構わない。
【0096】
前記実施形態では、第1バルブが開放限界開度となってしまうのを防ぐことを意図した構成としていたが、逆に閉塞限界開度となってしまうのを防ぐものであっても構わない。具体的には、前記第1バルブの開度が、可動範囲の閉塞限界開度に基づいて定められる閉塞側閾値開度を下回った場合には、前記温度設定部が、その時点で設定されている設定温度よりも低い温度に設定温度を変更するように構成されていればよい。このようなものであれば、例えば、材料ガスの分圧が高くなりすぎてしまい、前記第1バルブの可動範囲では分圧に対応した全圧を達成することができないという不具合を防ぐことができる。
【0097】
開放側閾値開度は開放限界開度に基づいて定められるものであればよい。例えば、開放限界開度と可動範囲の中央値との間にあるような開度等でもよい。また、既存の材料ガス濃度制御システム等に、前記温度設定部及び前記濃度制御部としての機能を発揮させるプログラムをインストールしてもよい。また、前記実施形態では開度自体をモニタリングしておき、その開度に対して閾値を設けておいたが、例えば、測定される開度の変化率自体に上限閾値変化率を設定しておき、その上限閾値変化率を超えた場合には、設定温度を上昇させるように構成してあるものであっても構わない。この場合、変化率は絶対値だけをみるものであってもよいし、符号も考慮するものであっても構わない。また、前記開放側閾値開度は、前記第1バルブの開度の変化率に応じて変更されるものではなく、常に固定されているものであっても構わない。例えば、前記開放限界開度の95%を前記開放側閾値開度とする等のように、前記開放側閾値開度が、前記開放限界開度の所定の割合の開度で固定されているものであっても構わない。
【0098】
前記実施形態では、材料ガスの濃度を一定に保つ際において材料ガスの発生量が減少し、前記第1バルブの開度が開放限界開度となり濃度制御が不可能になるのを防ぐことを目的としていたが、例えば、材料ガスの流量が一定となるように流量制御をしている際に同様に流量制御用のバルブの開度が開放限界開度となり流量を一定に保つことができなくなるのを防ぐようにしてもよい。具体的には、材料を収容するタンクと、収容された前記材料を気化させるキャリアガスを前記タンクに導入する導入管と、前記材料が気化した材料ガス及び前記キャリアガスの混合ガスを前記タンクから導出する導出管とを具備した材料気化システムに用いられるものであって、前記導入管上に設けられる第2バルブと、前記材料ガスの流量を測定する材料ガス流量測定部と、前記材料ガス流量測定部で測定された前記材料ガスの測定流量が、予め定められた設定流量となるように前記第1バルブの開度を制御する材料ガス流量制御部と、前記タンク内の温度を設定温度となるように温調する温調器と、前記温調器の設定温度を設定する温度設定部とを備え、前記第2バルブの開度が、可動範囲の開放限界開度に基づいて定められる開放側閾値開度を超えた場合には、前記温度設定部が、その時点で設定されている設定温度よりも高い温度に設定温度を変更することを特徴とする材料ガス流量制御システムであればよい。このようなものであれば、タンクの温度を上昇させることにより大まかな材料ガスの流量を確保できるようにし、前記第2バルブの開度が開放限界開度となるのを防ぐとともに、前記第2バルブの開度が中央値側において、作動させて細かい流量の制御を行えるようにすることによって材料ガスの流量を常に一定にすることができる。前記材料ガス流量測定部としては、例えば、キャリアガス流量測定部と、前記濃度測定部とから構成され、前記式(3)に基づいて材料ガスの流量を測定するものであればよい。
【0099】
材料は前記実施形態では、固体の材料であったが、液体の材料でも構わない。
【0100】
その他、本発明の趣旨に反しない範囲において、種々の変形や実施形態の組み合わせを行っても構わない。
【符号の説明】
【0101】
L・・・材料
1・・・材料気化システム(バブリングシステム)
11・・・導入管
12・・・導出管
13・・・タンク
23・・・第1バルブ
CS・・・濃度測定部
CC・・・濃度制御部
41・・・温調器
42・・・温度設定部
5・・・補助バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料を収容するタンクと、収容された前記材料を気化させるキャリアガスを前記タンクに導入する導入管と、前記材料が気化した材料ガス及び前記キャリアガスの混合ガスを前記タンクから導出する導出管とを具備した材料気化システムに用いられるものであって、
前記導出管上に設けられる第1バルブと、
前記混合ガスにおける前記材料ガスの濃度を測定する濃度測定部と、
前記濃度測定部で測定された前記材料ガスの測定濃度が、予め定められた設定濃度となるように前記第1バルブの開度を制御する濃度制御部と、
前記タンク内の温度を設定温度となるように温調する温調器と、
前記温調器の設定温度を設定する温度設定部とを備え、
前記第1バルブの開度が、可動範囲の開放限界開度に基づいて定められる開放側閾値開度を超えた場合には、前記温度設定部が、その時点で設定されている設定温度よりも高い温度に設定温度を変更することを特徴とする材料ガス濃度制御システム。
【請求項2】
前記閾値が前記第1バルブの開度の変化率に応じて変更されるものである請求項1記載の材料ガス濃度制御システム。
【請求項3】
材料を収容するタンクと、収容された前記材料を気化させるキャリアガスを前記タンクに導入する導入管と、前記材料が気化した材料ガス及び前記キャリアガスの混合ガスを前記タンクから導出する導出管とを具備した材料気化システムに用いられるものであって、
前記導出管上に設けられる第1バルブと、
前記材料ガスの分圧を測定する分圧測定センサと、前記混合ガスの全圧を測定する全圧測定センサとを具備し、前記分圧と前記全圧に基づいて前記混合ガスにおける前記材料ガスの濃度を測定する濃度測定部と、
前記濃度測定部で測定された前記材料ガスの測定濃度が、予め定めた設定濃度となるように前記第1バルブの開度を制御する濃度制御部と、
前記タンク内の温度を設定温度となるように温調する温調器と、
前記温調器に設定温度を設定する温度設定部とを備え、
前記分圧測定センサにより測定される分圧が、前記第1バルブの可動範囲の開放限界開度に基づいて定められる下限閾値分圧を下回った場合には、前記温度設定部が、その時点で設定されている設定温度よりも高い温度に設定温度を変更することを特徴とする材料ガス濃度制御システム。
【請求項4】
材料を収容するタンクと、収容された前記材料を気化させるキャリアガスを前記タンクに導入する導入管と、前記材料が気化した材料ガス及び前記キャリアガスの混合ガスを前記タンクから導出する導出管とを具備した材料気化システムに用いられるものであって、
前記導入管上に設けられる第2バルブと、
前記材料ガスの流量を測定する材料ガス流量測定部と、
前記材料ガス流量測定部で測定された前記材料ガスの測定流量が、予め定められた設定流量となるように前記第1バルブの開度を制御する材料ガス流量制御部と、
前記タンク内の温度を設定温度となるように温調する温調器と、
前記温調器の設定温度を設定する温度設定部とを備え、
前記第2バルブの開度が、可動範囲の開放限界開度に基づいて定められる開放側閾値開度を超えた場合には、前記温度設定部が、その時点で設定されている設定温度よりも高い温度に設定温度を変更することを特徴とする材料ガス流量制御システム。
【請求項5】
材料を収容するタンクと、収容された前記材料を気化させるキャリアガスを前記タンクに導入する導入管と、前記材料が気化した材料ガス及び前記キャリアガスの混合ガスを前記タンクから導出する導出管とを具備した材料気化システムに用いられるものであり、
前記導出管上に設けられる第1バルブと、前記混合ガスにおける前記材料ガスの濃度を測定する濃度測定部と、前記濃度測定部で測定された前記材料ガスの測定濃度が、予め定められた設定濃度となるように前記第1バルブの開度を制御する濃度制御部と、前記タンク内の温度を設定温度となるように温調する温調器とを備えた材料ガス濃度制御システムに用いられるプログラムであって、
前記温調器の設定温度を設定する温度設定部とを備え、
前記第1バルブの開度が、可動範囲の開放限界開度に基づいて定められる開放側閾値開度を超えた場合には、前記温度設定部が、その時点で設定されている設定温度よりも高い温度に設定温度を変更することを特徴とする材料ガス濃度制御システム用プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−134916(P2011−134916A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293533(P2009−293533)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【出願人】(000127961)株式会社堀場エステック (88)
【Fターム(参考)】