説明

材料及び構造の非破壊評価及び監視に対する方法及び装置

材料又は構造に衝撃を与える1つ又は複数の高非線形パルス(又は高非線形波)の生成及び検出のための高非線形媒体を使用した構造及び材料の非破壊評価(NDE)の方法及び装置。該装置は、その調査される材料、システム又は構造における高非線形、弱非線形、又は線形応力波の伝搬を誘導するパルス励起子及び/又は試験中にある材料/構造からの出力はの観測及び検出のための検出器を含む。該NDE法は、同調可能な高非線形装置のインパルス励起子単体としての使用、又は出力パルスを検出するために加速度計又は非線形センサーとの組み合わせの使用を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、以下の同時係属の同一出願人による米国特許出願に関し、該出願の便益を主張する:2008年2月7日に出願された「Method and device for actuating and sensing highly nonlinear solitary waves in surfaces, structures and materials」と題する米国特許出願第61/063,903号明細書;及び2008年4月21日に出願された「Method and Apparatus for Nondestructive Evaluations and Structural Health Monitoring of Materials Structures」と題する米国特許出願第61/124,920号明細書であり;これらの出願の全ての内容が本文献に参考として取り入れられる。
1.分野
本開示は、選択可能なパルス特性を持つ高非線形パルスの励起及び構造又は材料の中への伝送に関し、その構造又は材料からの当該パルスの検出の方法及び装置に関する。さらに具体的に、本開示は、制御可能な高非線形パルスの選択された数を望まれる形状、振幅、周波数及び/又は持続時間で励起するための方法及び装置を記載しており、それらは次に、非破壊評価及び/又は構造健全性監視に使用され得る。
【背景技術】
【0002】
2.関連技術の記載
材料又は構造の非破壊評価は、衝撃実験の使用を通して成し遂げられる。衝撃実験において、材料又は構造は、通常、衝撃装置によって突かれる。その材料又は構造の中を伝搬する音波は、次に、その材料又は構造内における欠陥の幾分かの徴候を供給するように測定される。例えば、1992年11月24日付けのSansalon et al.による米国特許第5,165,270号明細書を参照されたい。該特許文献において、衝撃装置は、異なった持続時間を持つ衝撃を生成し、それによってテストされる構造の中へ異なった応力波を分け与えるように各々が設計されている多数の異なった重さを持つ球である。その異なる応力波は、衝撃持続時間に依存して異なった周波数の値を有する。各球は、スプリングスチールロッドの一端に置かれている。試験の開始において、選択された球は静止位置にある。その球は、その静止位置から一対のジョー(jaw)によってその構造の上方の所定の高さまで引き上げられる。この動作は、スプリングスチールロッドを反らせることから、衝撃球の位置エネルギーを増加させる。所定の解放点において、その球は切り離され、構造に衝撃をもたらし、その構造に所定のエネルギーを分け与える。その衝撃は、外部の表面及び/又はその構造の内部の欠陥から反射される応力(音)波を生成する。その反射波は、その波によってもたらされる垂直表面変位を電気信号に変換する変換器によって検出される。その電気信号は、次に、その構造の厚さ又はその中に位置する欠陥のいずれか一方を示す振幅/周波数スペクトルを供給するように処理される。
【0003】
他の衝撃試験装置及び技術が従来技術において知られているが、一般的に上記に記載されている技術に類似したアプローチを使用する(すなわち、試験されるべき材料を突き、応力波伝搬を測定する)。衝撃試験技術において使用される衝撃装置(すなわち、ストライカ)は、通常数百ドル又はそれ以上のコストがかかり、シグナルコンディショナーに結合される必要がある。ラインパワード・シグナルコンディショナーは、センサーに電力を供給し、それらの出力信号の読み出し及び記録器具への伝送に対して条件を整えるために使用される。衝撃ハンマーは、衝撃パルスを試験片の中に衝撃力を配送するために使用され、シグナルコンディショナーは、加えられた力の振幅及び周波数の電気測定信号を供給するために使用される。非破壊評価に使用されるハンマー及びコンディショナーは、非常に高価である。以下に記載される本発明の実施形態は、材料及び構造の非破壊評価に対する、費用がさらに低い装置を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願第61/063,903号明細書
【特許文献2】米国特許出願第61/124,920号明細書
【特許文献3】米国特許第5,165,270号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Porter,M.A.; Daraio,C.; Herbold,E.B.; Szelengowicz,I.; Kevrekidis,P.G. “Highly nonlinear solitary waves in phononic crystal dimers” Physical Review E, 77,015601(R), 2008
【非特許文献2】Sen, S., Manciu,M., and Wright,J.D., “Solitonlike Pulses in Perturbed and Drven Hertzian Chains and Their Possible Applications in Detecting Buried Impurities,” Phys.Rev.E,57,no.2, 2386-2397(1998)
【非特許文献3】Hong,J. & Xu,A., “Nondestructive identification of impurities in granular medium,” Appl.Phys.Lett.,81,4868-4870(2002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この開示は、材料又は構造に衝突する1つ又は複数の非線形パルス(又は高非線形波)の生成及び検出のために高非線形媒体を使用する、構造及び材料の非破壊評価(NDE)に対する方法及び装置を説明する。該装置は、調査される材料又は構造における高非線形、弱非線形又は線形の応力波の伝搬を誘導するパルス励起子及び/又は試験下にある材料/構造からの出力波の観測及び検出に対する検出器を含む。NDE法は、同調可能な、高非線形装置を衝撃励振器単体としての使用、又は加速度計又は出て行くパルスを検出するための非線形センサーとの組み合わせでの使用を含む。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態は、高非線形システム(すなわち、粒状、層状、繊維状又は多泡性の材料)において形成し移動することができる、高非線形孤立波(HNSWs)を含む高非線形波(HNWs)の使用に頼る。音波、超音波又は衝撃に基づいた技術を使用している従来技術システムにおいて使用される従来の応力波に比較して、HNWは、自由自在に調節できる単純で再現可能な設定において波長、波の速度(波の振幅及び材料特性に比例する)、発せられたパルスの数及び増幅制御に関してかなり高い同調性を提供する。
【0008】
本発明の実施形態は:1)検出可能なひびのサイズ、欠陥、及び材料における介在(すなわち、マルチスケールの欠陥、感度)のより広い範囲をもたらす、より高い同調性;2)測定システムの信頼性を改善し、従来技術の方法によって通常必要とされる高いオペレータ・スキルの必要性を回避する、測定の繰り返し性の改良;3)測定システム(波動アクチュエータ及びセンサーなど)内における器具の、より単純であり、異なる寸法へより簡単に拡大縮小が可能な設計(適用のさらなる汎用性も供給する);4)器具の低減された所要電力特性;及び5)処理構成部品、センサー及びアクチュエータの組み立て及び製造における低減された費用(現在の商用の衝撃ハンマーよりも2桁分まで低い);を含む点において従来技術システムを上回る改善を備える。
【0009】
本発明のいくつかの実施形態は、従来のセンサー及び/又はアクチュエータ法と組み合わされた又はそれらに結合された高非線形センサー及び/又はアクチュエータ(完全非線形システム)に基づいた非破壊評価及び/又は構造健全性監視(NDE/SHM)の方法及び装置を有する。例えば、ある1実施形態は、高非線形アクチュエータがクラシカル・レシーバ(加速度計、レーザー干渉計、圧電ゲージ又は他の従来技術において知られている検出器)と組み合わせとして使用される、NDE/SHM法を含む。そのアクチュエータは、調査されるべき材料に入力を供給し、クラシカル・レシーバは、出力を測定する。もう1つの実施形態は、作動のクラシカル衝撃エコー/タップ試験法が高非線形レシーバと一緒に使用されるNDE/SHM法を含み、そのクラシカル衝撃/タップ試験は、入力を供給し、その高非線形レシーバは、出力を測定する。さらにもう1つの実施形態は、高非線形アクチュエータ及び高非線形レシーバが一緒に使用され、アクチュエータが入力を供給し、レシーバが出力を測定するNDE/SHM法を含む。
【0010】
本発明の実施形態は:1つ又は複数の高非線形波を発する段階;1つ又は複数の高非線形波を調査される素子又は構造の中へと方向付ける段階;及び、その波動が調査される素子又は構造の少なくとも一部分の中を通って伝搬した後にその素子又は構造の中へ方向付けられた波動から派生するパルスを検出する段階;を含む、素子又は構造の調査を実施するための方法である。
【0011】
本発明のもう1つの実施形態は:高非線形波アクチュエータであり、高非線形パルスを調査される素子又は構造へと衝突させるように設定可能なアクチュエータ、及び調査される素子又は構造の少なくとも1部分の中を通って伝搬するアクチュエータからのパルスを検出するように設定が可能なパルス検出器、を含む素子又は構造を調査するためのシステムである。
【0012】
本発明のさらにもう1つの実施形態は:調査パルスを発する段階;その調査パルスを調査される素子又は構造の中へ方向付ける段階;その調査パルスをその調査される素子又は構造の少なくとも1部分の中を通って伝搬した後に方向付ける段階;及び調査パルスを、高非線形レシーバの少なくとも1部分の中を通って伝搬した後に検出する段階;を含む、素子又は構造の調査を実施するための方法である。
【0013】
本発明のさらにもう1つの実施形態は:調査される素子又は構造にパルスを加えるように設定可能であるアクチュエータ、及びその調査される素子又は構造の少なくとも1部分の中を通って伝搬している、アクチュエータからのパルスを検出するように設定可能な非線形レシーバ、を含む素子又は構造を調査するためのシステムである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1A】高非線形波の生成及び/又は検出のためのシステムの概略的に表わす図である。
【図1B】組み込まれた圧電素子とビーズを描く図である。
【図2A】高非線形波を生成又は検出するためのシステムを説明する図である。
【図2B】高非線形波を生成又は検出するためのシステムを説明する図である。
【図3A】高非線形孤立波の生成、伝搬及び検出を、高非線形、弱非線形又は線形のバルクに関して表わす概略図である。
【図3B】高非線形、弱非線形又は線形媒体で作られた導波管における高非線形波の伝送を表わす概略図である。
【図4】高非線形アクチュエータがクラシカル・レシーバと一緒に使用されるシステムを描く図である。
【図5】クラシカル衝撃エコー/タップ試験ハンマーが、高非線形レシーバと一緒に使用されるシステムを描く図である。
【図6】高非線形アクチュエータが高非線形レシーバと一緒に使用されるシステムを描く図である。
【図7】非破壊評価及び構造健全性監視を実施するための方法の段階を示すフローチャートである。
【図8】逆のアプローチを使用することによって材料の特性評価を行うための段階を示すフローチャートである。
【図9】高非線形波測定に基づいて材料又は構造が損傷を有するかを決定するための段階を示すフローチャートである。
【図10】損傷した構造への高非線形孤立波の適用及びその構造を通る高非線形孤立波の伝搬及びその損傷を検出するための試験設定を説明する図である。
【図11】損傷していない7本のスチールストランド及び損傷した7本のワイヤ・スチールストランド及び高非線形孤立波のそれらへの適用を描く図である。
【図12A】高非線形孤立波で導かれたパルスがスチールロッドの内部を伝搬する、実験結果を示す図である。
【図12B】高非線形孤立波で導かれたパルスがスチールロッドの内部を伝搬する、実験結果を示す図である。
【図13A】高非線形孤立波で導かれたパルスがスチールロッドの内部を伝搬する、図4において描写されている設定に似た試験設定を使用した実験結果を示す図である。
【図13B】高非線形孤立波で導かれたパルスがスチールロッドの内部を伝搬する、図4において描写されている設定に似た試験設定を使用した実験結果を示す図である。
【図14A】高非線形孤立波で導かれたパルスがスチールロッドの内部を伝搬する、図4において描写されている設定に似ているが2つのセンサーのみが使用された試験設定を使用した実験結果を示す図である。
【図14B】高非線形孤立波で導かれたパルスがスチールロッドの内部を伝搬する、図4において描写されている設定に似ているが2つのセンサーのみが使用された試験設定を使用した実験結果を示す図である。
【図15A】高非線形孤立波で導かれたパルスがスチールロッドの内部を伝搬し、予圧が使用されている時間履歴結果を示す図である。
【図15B】高非線形孤立波で導かれたパルスがスチールロッドの内部を伝搬し、予圧が使用されている時間履歴結果を示す図である。
【図16A】高非線形孤立波で導かれたパルスがスチールロッドの内部を伝搬し、予圧が使用されている周波数‐強度結果を示す図である。
【図16B】高非線形孤立波で導かれたパルスがスチールロッドの内部を伝搬し、予圧が使用されている周波数‐強度結果を示す図である。
【図17】舗装道路、線路、フロアスペース及び他のそのような構造の自動化された評価及び監視に対するシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態は、高非線形パルス及び粒状構成要素の1次元鎖において発生する高非線形パルス及び波動の使用を通した材料及び構造の非破壊評価及び監視を提供する。本開示では、粒状構成要素又は粒は、望ましくは線形又はネットワーク形状の配置における粒子の集合体又は互いに弾性接触している層として定義される、粒状物質を含んでもよい。本発明の実施形態は高非線形パルス及び波を使用する一方、追加の利点が高非線形孤立波又はパルスが使用される、生成される、及び/又は検出される場合に、提供され得る。本開示の目的に対して、高非線形孤立波は、高非線形波の特有のケースとして考慮されるべきである。さらに、高非線形孤立パルスは、高非線形パルスの特有のケースとして考慮されるべきである。従って、他の注釈が無い場合は、本文献における高非線形波の参照はいずれも高非線形孤立波を含むものとして見なされるべきであり、本文献における高非線形パルスの参照はいずれも高非線形孤立パルスを含むものとして見なされるべきである。
【0016】
粒間における接触相互作用は、数式1に示される高非線形力F‐変位δの関係によって調整される:
【0017】
【数1】

Aは材料のパラメータであり、nは非線形指数(n>1の場合)である。粒状状態の異常な特性は、圧縮されていない材料における音速がゼロになる原因となる隣り合う粒子間における相互作用力のごくわずかな線形範囲である。これは、Korteveg-de Vries(KdV)方程式に基づく線形及び弱非線形連続体アプローチを無効にし、それらの波動力学に従って特別分類における粒状材料を配置させる。粒状材料の動的応答は、高非線形小型孤立波の形成及び伝搬を支持する講非線形波理論によって制御される。
【0018】
完全な球形ビーズによって構成される粒状材料において、その高非線形性質は、接触相互作用の力学から生じ、ヘルツの法則によって調整され、数式1における指数nは1.5に等しい。この高非線形応答は、また、異なった形状を持つ粒によって構成される多くの他の非線形システムにおいて見られ、理論的形成は、n≠1である、全ての非線形指数nに拡張され統合されている。例えば、他の形状は、n=2である円錐状接触を持つ不規則な粒;n=2.2である垂直に整列されたカーボン・ナノチューブのフォレスト(forest);n=3である離散的粒子を持つ繊維における横方向の振動及びn=3であるプラグチェーン気体‐液体システム;を含む。高非線形波理論の連続処理は、チェーンを構成する粒子が同一でない粒状システムなどの周期的不均一媒体に拡張し、周期的欠陥は、その長さ全体を通して交互に起こる。
【0019】
高非線形孤立波は、それらの幾何学的非線形性のバランス効果及びその媒体において存在する分散によって順序付けられる粒状媒体において形成する定常パルスである。その高非線形孤立波の固有の(流体、原子論及び電磁波などの他の様々な物理的システムにおいて以前説明された全ての他の孤立波又はソリトンから区別される)特性は、それらの波長幅が振幅から独立していることである。ヘルツの法則が有効であり、指数n=1.5である粒状システムでは、波動振幅又は波動速度の如何なる値がそのシステムにおいて存在していても、それらの空間サイズは常に粒子5個の直径である。非線形理論の最も一般的な処理において見られる注釈を使用し、ヘルツの相互作用の法則(Hertzian interaction law)から導かれる均一の高非線形システムに対する波動方程式は、以下の数式2に示され:
【0020】
【数2】

uは変位であり、τは再度拡大縮小された時間であり、nは図1において見られる非線形指数であり、パラメータI、H、Gの明確な表現は、Porter,M.A.; Daraio,C.; Herbold,E.B.; Szelengowicz,I.; Kevrekidis,P.G. “Highly nonlinear solitary waves in phononic crystal dimers” Physical Review E, 77,015601(R), 2008において閲覧できる。
【0021】
高非線形孤立波の形状及び特性を説明する数式2に対する、直接的な積分による解答は、以下の数式3に示される形を持つ:
【0022】
【数3】

数式2に示される高非線形波動方程式の一般性は、それが波動伝搬の線形及び弱非線形の領域も含むという事実によって与えられる。これらの領域は、そのシステムへ初期に予ひずみ(予圧)を加えることによって外挿できる。その解答は、高非線形媒体において、2つの高調波だけが周期的信号の伝搬の定常モードに貢献することを論証する。孤立形状は、初期の予歪みζ0が0に近づいている場合、数式3によって供給される周期解の1つのハンプ(hump)として捉えられることができ、ヘルツの粒状システムの場合において、5個の粒子の直径にのみ等しい有限波長を持つ。KdV方程式に類似して、高非線形孤立波は超音波であり、それは、それらの位相速度が初期の音速(c0)よりも非線形媒体において大きい(特に、c0=0である圧縮されていないシステムの場合)ことを意味する。球形粒子によって構成される粒状チェーンに対して、孤立波Vsは、最大粒子動歪みの非線形関数として数式4に示されるように表わすことができ:
【0023】
【数4】

Fmは、離散的チェーンにおける粒子間の最大動的接触力である。
【0024】
数式4において示される関係は、材料の力学の分野における適用及び音波特性を供給してもよい。そのような波動は、理論によって予測され数値的及び実験的に論証されているように、同調特性を有する。HNWの形成を支持する高非線形媒体の力学的及び/又は幾何学的特性を変えることによって、移動しているパルスの形状及び特性が同調される。言い替えれば、高非線形媒体における高非線形波の特性は、特定の適用において「エンジニアリング」されることができる。これらの「制御可能」な波動は、次に、試験のための様々な構造における新しい境界条件として使用されてもよい。また、単一の非線形パルスよりも、むしろ非線形パルスのトレーンを生成することも望ましい。
【0025】
加えられた予圧が存在することによって導かれ、チェーンにおける粒子の離散化から得られる、ヘルツのシステムにおける孤立波の速度の同調性に対する分析的な式は、以下の数式5に示され:
【0026】
【数5】

F0はそのシステムに加えられた静的予応力(予圧)を表わし、fr=Fm/F0であり、Fmはその離散チェーンにおける粒子間の最大接触力である。
【0027】
孤立波特性の材料パラメータへの依存性は、予応力が加えられていないシステムに対しては数式4において示され、予応力が加えられたシステムに対して数式5において示されている。また、注目すべきは、HNSWに対しては、システムはサイズに依存しないが、チェーンにおける周期的不均一性の存在に敏感である。従って、孤立波は、特定の適用それぞれの必要に応じて、様々なサイズに拡大縮小が可能である。
【0028】
数式4及び5に従って、HNSWの同調性は、非線形媒体の1つ又は複数のパラメータを変更することによって得られる。例えば、高非線形媒体の粒子サイズを増加させることは、波長を増加させ、波動速度及び振幅を減少させる。この同調性は、所定の形状及び波長の応力波を励起させる必要がある、関数発生器などの電子装置を減らす又は排除することを可能にする。従って、本発明の実施形態は、従来技術のシステムによって必要とされた超音波作動における電力の需要を幾分か低減してもよく、従来技術において知られているテザー技術(tethered technology)の代わりに無線技術を使用することを可能にしてもよい。さらに、高非線形材料における波動振幅及び波動速度の応力状態に対する高感度は、加えられた応力の見積もりにおいて、従来型の音弾性法によって得られるよりも改善することも可能にする。
【0029】
本発明の実施形態は、また、古典的なヘルツ形状(n=1.5)によって説明されるものとは異なった形態を有する粒子の使用も可能にし、それは、同調性にもう1つの素子を加えることができ、すなわち、数式1におけるnを変更することによって波長(及び、従って信号周波数)がかなり変化する。さらに、硬いビーズ及び軟らかいビーズ(欠陥として解釈され得る)の短いチェーンが交互に存在するシステム又は全ての周期的不均一システムにおいて、移動するHNW又はHNSWは、移動しているパルスの特性において大きな変化を導く。異なる材料、質量及び直径の粒子を無秩序及び準無秩序な構成において含むチェーンなど、ランダムに集合している粒子で構成されるシステムは、パルスの分解及び高周波モードの励起を誘導する熱化現象を表わす。
【0030】
粒状媒体における欠陥及び不純物の検出に対して孤立波を使用することについては、Sen, S., Manciu,M., and Wright,J.D., “Solitonlike Pulses in Perturbed and Drven Hertzian Chains and Their Possible Applications in Detecting Buried Impurities,” Phys.Rev.E,57,no.2, 2386-2397(1998)及びHong,J. & Xu,A., “Nondestructive identification of impurities in granular medium,” Appl.Phys.Lett.,81,4868-4870(2002)において討論されている。孤立波は、弾性モジュールなどの粒状材料特性及び加えられた応力に敏感であることが論証されており、後方散乱された信号の速度及び形状の光の存在及び粒状チェーンにおける重い不純物への依存もまた注目されている。理論的な公式化によって予測されるように、数値的及び実験的な検証は、支持された孤立波の速度及び振幅において材料パラメータに応じてかなりの相違を示した。
【0031】
上記で討論された数式は一般的に、HNSWに適用する。しかし、本発明の実施形態は、HNWの生成及び/又は検出に依存し、HNSWの生成及び/又は検出を、まさにHNWの特別のケースとして処理する。HNWの生成及び/又は検出に対するシステムの概略的提示が、図1Aにおいて示されている。図1Aにおいて、粒子又はビーズ505、507、509のチェーン501は、ステー603の間に配置されている。第1粒子505を第2粒子507に衝突させることによって、HNWが発せられる(しかし、その発せられたHNWは、HNSWに安定する)。この構成において、第1粒子505は、ストライカー粒子として見なされてもよい。波動は、粒子505、507、509が接触している限り伝搬する。その波動の波長、速度、及び振幅は、チェーン・サイズ(直径及び粒子数)、粒子材料及びそれらの粒子の予圧の望まれる組み合わせを選択することによって同調され得る。粒子509のいくつかは、チェーン501内のHNWの伝搬を監視するために使用される内蔵された圧電素子又は他の検出装置を有してもよい。図1Aに示されるシステムは、また、そのシステムを材料又は構造に結合させ、検出器粒子50を圧電素子と一緒に波動を検出するために使用することいによって、HNWの検出にも使用されてよい。
【0032】
図1Bは、HNWを検出するための検出器粒子509を内蔵された圧電素子と共に説明する。その検出器粒子509は、半分の粒子62及び該半分の粒子の間に挟まれた圧電素子64を含む。圧電素子64は、完全に2つの半分の粒子62に接着層66によって付着されており、その接着層66は、エポキシ又は他の接着剤を含んでもよい。半分の粒子62は、粒子509の内部に埋め込まれるように、その圧電素子64に付随している超小型配線からリード線65を格納できるように切り欠きを有してもよい。圧電素子64は、その圧電素子の向かい合う面又は同じ面において、電極及びリード線接続の周りにラップ(wrap)を使用することによって配線を有してもよい。好ましくは、圧電素子64は、波動検出の精度を増やすためにキャリブレートされる。
【0033】
HNWを生成又は検出するためのシステムは、図2A及び2Bにおいて描写されている。図2Aは、作動している又は感知している装置の3次元ビューを示す。図2Aに示されるように、4つのロッド30が、素子20又は試験される材料に移送するために高非線形パルスを形成するために使用されるビーズのチェーン44を閉じ込めるために使用される。図2Bは、図2Aにおいて描写されたものに類似した装置の縦断面図を示し、4つのロッドは、中空円筒型容器32によって置き換えられ、その内部においてビーズのチェーン44が拘束されている。上記で討論されたように、高非線形波を同調させるために予圧を加えることが役に立つ。図2Aにおいて、素子50は、静的予圧を加えるために使用されてもよいシステムを表わす。素子50は、浮上している磁石リング、制御された重りを浮遊させるシステム、スクリュー/ロードセルで制御される予歪み装置、ビーズのチェーン44を圧縮することができるいくつかの他の素子又はシステムを含んでもよい。図2Bに示されるように、磁気ビーズ(又は浮遊している重りを保持するビーズ)42が、ビーズのチェーン44の上部に置かれてもよく、静的プレストレスを加えることを可能にする。図2Bも、また、素子20又は試験される構造上の中空円筒型容器30を扱い、固定するための外側のホルダー54を示す。
【0034】
図2A及び2Bに示されるビーズ44の拘束されたチェーンは、HNWを生成又は検出する働きをしてもよい。そのような波動の生成に対し試験ライカー40は、そのストライカー40がビーズのチェーン44に衝突するように、電磁石46の使用を通して作動されてよい。例えば、ストライカー40は、電磁石46によって生成される交互に発生する磁場を通して持ち上げられて解放されるステンレススチールのボールを含んでもよい。図2Bに示される磁気ビーズ42は、また、ビーズのチェーン44が衝突されパルスを生成する手段としての働きをしてもよい。磁気的又は電磁気的に制御される装置は、20kHzよりも大きい周波数でパルスを発することが可能である。代替的実施形態は、バネ荷重システム又は圧縮空気荷重システムなどの異なる作動機構を使用してもよい。
【0035】
図3Aは、高非線形、弱非線形又は線形媒体のバルクにおいてHNWの波動伝搬を表わす概略図である。高非線形パルス発生器10(ここでは高非線形アクチュエータ/励起子としても呼ばれる)は、素子20又は試験下にある構造の中へと方向付けられる単一の高非線形波14又はその高非線形波14のトレーンを発する。図3Aは、素子20を通る波動14の伝搬を示し、それは、高非線形、弱非線形又は線形バルク媒体を含んでもよい。その試験下にある媒体内を伝搬する波動は、線形応力波及び/又は高非線形波を含んでもよい。出力パルス16は、高非線形レシーバ12によって受けられる。図3Bは、素子20内のアクチュエータ10による単一のHNWの生成を示し、それは、高非線形、弱非線形又は線形媒体で作成された導波管構造を有してもよい。図3Bにおいて、HNWに対するアクチュエータ10は、また、導波管の端部及び欠陥によって反射されたパルス18に対する感知素子としても使用される。
【実施例1】
【0036】
本発明の1実施形態は、高非線形アクチュエータがクラシカル・レシーバ(加速度計、レーザー干渉計、圧電ゲージ又は他の当業者に知られている検出器など)と共に組み合わせられて使用される方法及びシステムを含む。図4は、この構成を持つシステムを描写する。図4において、高非線形アクチュエータ/励起子10は、可能な欠陥489を持つ、試験下にある素子20へとパルスを供給する。素子20は、バルク又は導波管形状を有してもよく、高非線形、弱非線形又は線形媒体を含んでもよい。非線形アクチュエータ/励起子10は、アクチュエータ10においてHNWの形成を開始するためにストライカー粒子40を有する。第1圧電ゲージ481は、試験下の素子20に入る信号を検出し、第2圧電ゲージ482は、その試験されている素子20内で移動した後の出力信号を検出する。コンピュータ90は、測定された素子20の特性の解析を供給するようにデータを処理し保存するために使用されてもよい。アクチュエータ10の素子内に配置された1つ又は複数のキャリブレートされた圧電ゲージ64は、所望の特性を持つHNWを生成するために、そのアクチュエータ/励起子10をさらに制御又は同調する機能を供給するように、そのアクチュエータ/励起子10の内部を伝搬するHNWを検出するために使用されてもよい。
【実施例2】
【0037】
本発明のもう1つの実施形態は、古典的な衝撃エコー/タップ試験ハンマー(又は従来技術において知られている他のそのような方法又は装置)が高非線形レシーバと共に組み合わされて使用される方法及びシステムを有する。図5は、この構成を持つシステムを描写する。図5において、古典的又はモード同調されたハンマー96が、試験下にある素子20又は構造にパルスを供給するために使用されている。素子20は、バルク又は導波管形状を有してもよく、高非線形、弱非線形又は線形媒体を含んでもよい。通常、ハンマー96は、そのハンマー96によって生成されるパルスを検出及び/又は制御するための圧電ゲージを含んでもよい。非線形レシーバ12は、試験下にある素子20に結合され、その試験下にある素子20の中を通って伝送されたパルスを受信する。非線形レシーバ12は、また、その非線形レシーバ12を通って伝搬したHNWを受信する圧電素子482に結合されてもよい。その非線形レシーバ12は、また、そのレシーバ12の内部を伝搬するHNWを検出するためにそのレシーバ12の素子の内部に配置された1つ又は複数の圧電素子64を有してもよい。レシーバ圧電ゲージ64は、試験下にある素子20の特性にデータを供給するために圧電ゲージ482に追加して、あるいは圧電ゲージ482の代わりに使用されてもよい。レシーバ圧電ゲージ64は、また、非線形レシーバ12の応答を同調する機能を備えてもよい。コンピュータ90は、試験下にある素子又は構造の解析を供給するために、圧電ゲージ64,482及びハンマー96からのデータを集めて保存するために使用されてもよい。
【実施例3】
【0038】
本発明のさらにもう1つの実施形態は、高非線形アクチュエータが、高非線形レシーバと組み合わせられて使用される方法及びシステムを有する。図6は、この構成を持つシステムを描写する。図6において、高非線形アクチュエータ/励起子10は、試験が実施されている素子20にパルスを供給する。以前討論されたように、アクチュエータ10は、HNW検出のために、アクチュエータ10の素子の内部に内蔵された1つ又は複数の圧電素子64を有してもよい。非線形レシーバ12は、試験下にある素子20に結合され、試験下にある素子20の中を通って伝送された高非線形パルス又は線形パルスのいずれか一方又は両パルスの組み合わせを受信する。素子20は、バルク又は導波管形状を有してもよく、高非線形、弱非線形又は線形媒体も含んでもよい。以前討論されたように、非線形レシーバ12は、また、そのレシーバ12の内部を伝搬するHNWを検出するためにそのレシーバ12の素子の内部に配置された1つ又は複数の圧電素子64を有してもよい。非線形レシーバ12は、また、試験下にある素子20から非線形レシーバ12を通って伝搬したHNWを受信する圧電素子482に結合されてもよい。コンピュータ90は、試験下にある素子又は構造の解析を供給するために圧電素子64、482からのデータを集めて保存するために使用されてもよい。
【0039】
図7は、本発明の実施形態に従って非破壊評価及び構造健全性監視を実施するための方法のステップを示すフローチャートである。ブロック105においてストライカーがパルスを発するために使用される。ブロック106において、そのパルスは、HNSWの形成に対する伝送器として働くビーズのチェーンに結合される。ブロック107は、その波動の、伝送器の内部及び/又はその伝送器と試験される材料若しくは構造との間のインターフェースでの検出及び測定を表わす。ブロック108は、HNSWの伝搬、あるいは、調査される材料又は構造の内部における線形バルク又は線形導波の伝搬を表わす。ブロック109は、レシーバとして作用する内蔵された圧電素子を持つビーズのチェーンによる1つ又は複数の波動の受信及びレシーバの内部及び/又はそのレシーバと試験下にある材料又は構造との間のインターフェースでの高非線形波の検出を表わす。試験下にある材料又は構造の前に検出された信号及び試験下にある材料又は構造の後に検出された信号は、ブロック110においてデジタル化され、それらのパルスの測定は、ブロック111で実行される。パルス測定ブロック111は、レシーバと試験下にある材料/構造との間のインターフェースで検出された線形波を含んでもよい。これらの非線形パルス測定は、次に、ブロック112に示されるように、逆のアプローチによって測定された材料の特性評価をするために使用されてもよく、及び/又はブロック113に示されるように、その構造又は材料の内部の損傷を検出するために使用されてもよい。
【0040】
図8は、本発明の実施形態に従って逆アプローチを使用することによって材料の特性評価をするためのステップを示すフローチャートである。図8において、ブロック114は、図7におけるブロック111に示されているように供給されたものなどの高非線形パルスの測定を表わす。次に、計算が、ブロック115に示されるように、測定された1つ又は複数のパルスの特性を決定するために実施される。ブロック117は、大分類の材料の弾性特性に関するデータのコレクションを示す。ブロック118は、選択された材料の種類に対する波動パルス伝搬の理論的モデルの計算を示す。決定ブロック116は、ブロック118によって供給されるような理論的特性を持つ、ブロック115によって供給されたような測定されたパルス特性の比較を示す。その測定された理論的パルス特性が同一又はほぼ同一である場合、ブロック120は、その測定された材料又は構造が測定されたパルスに基づいて特性評価され得ることを示す。測定された及び理論的なパルス特性が、十分に適合しない場合、その相違は、デジタイザー119に供給され、次に、ブロック118における理論的モデルの計算に対する、異なった種の材料を選択するために使用される。
【0041】
図9は、材料又は構造が、様々な励起に基づいた如何なる損傷も有しないかどうかを決定するためのステップを示すフローチャートである。図9において、ブロック121は、図7におけるブロック111に示されるようなものなどの測定されたパルスデータの取得を表わし、例えば、図4、5及び/又は図6において描写された方法のうち1つによって取得される。ブロック112は、測定されたパルスデータの時間領域に関する特性、周波数領域に関する特性、時間‐周波数統合領域の特性、又は他の数学的表現を抽出するためにそのパルスデータ上で実施されてもよいデジタル信号処理を示す。ブロック123は、損傷を識別及び/又は特性評価するために使用される対象の特徴を抽出するために実施されてよい計算を表わす。これらの特徴は、次に、ブロック124に示されるように、損傷指標ベクトルを構築するために使用されてもよく、それは、損傷識別に関連する1つ又は複数のパラメータを有してもよい。そして、管理された学習アルゴリズム(ブロック125に示されるように)又は、管理されていない学習アルゴリズム(ブロック126に示されるように)が、損傷指標ベクトルを処理し、測定された材料又は構造の内部における欠陥又は損傷の存在に関する情報を供給するように使用されてもよい。
【実施例4】
【0042】
図10は、損傷した構造へのHNWの適用及びその構造を通る励起したパルスの伝搬及びその損傷を検出するための試験設定を説明する。図10において、非線形アクチュエータ10が形成し、HNW14を試験下にある素子24に適用する。素子24は、バルク、導波管又は高非線形、弱非線形又は線形媒体で作られた半無限構造であってもよい。図10において描写されるように、素子24は、パネル、プレート、舗装路、タイル、フロアリングなどを含んでもよい。加速度計、レーザー干渉計、圧電ゲージ、圧力センサー又は他のそのような検出器などのセンサー48は、その素子を通るパルスの伝搬を検出し測定する。その素子におけるひび/空洞/変形22の存在は、検出器48からの出力信号において検出される波動の振幅及び形状を変えると予期される。そのセンサーから得られたデータの解析は、ユーザが欠陥22を位置付けて特性評価を行うことを可能にするべきである。
【0043】
本発明の実施形態は、また、高非線形、弱非線形、又は線形媒体で作られた円筒型導波管における欠陥を検出するために使用されてもよい。例えば、図11は、7つのワイヤのスチールストランド261及び損傷した7つのワイヤのスチールストランド263を描写する。そのようなワイヤストランドは、プレストレスコンクリート及び斜張つり橋における部分に広く使用される。図11において、非線形アクチュエータ10は、HNWを適用するために使用され、レシーバ12は、そのHNWを検出するために使用される。損傷したストランド263において、プレストレス/温度の存在によって誘導される応力/ひずみ及び/又はひび/空洞/変形(空洞22によって表わされるように)は、非線形レシーバ12によって検出される孤立波の振幅及び形状を変えると予期される。本発明の代替的実施形態は、ストランドのスチールとは他のケーブル構成の内部の欠陥の検出を可能にする。
【0044】
図12A及び12Bは、HNWで誘導されたパルスがスチールロッドの内部を伝搬する実験結果を示す。図12Aにおいて、パルスは、ステンレススチールビーズのチェーンの中へと様々なビーズの数で発せられる。図12Bにおいて、パルスは、超小型ハンマーに衝撃を与えることによって及びHNWで誘導されるビーズのn=10、30を使用することによって、発せられる。図12A及び12Bから分かるように、パルスの時間領域特性は、HNWを誘導するために使用されるビーズの数を変更し、HNWアクチュエータの同調性を示唆する。
【0045】
実験データは、HNWが損傷した構造及び損傷していない構造において励起されることができることを示す。損傷した構造において移動した後に検出されたパルスは、損傷していない構造の中を伝搬した後に検出されたパルスとは異なるであろう。図13A及び13Bは、図14において示される試験設定に対して得られる実験的曲線を示し、試験下にある素子20は、スチールロッドである。図13Aは、直径4.76mmのビーズを汚れていないスチールロッドの上に配置したことによって得られたデータを描く。センサーは、チェーンを構成する中央のビーズのうちの1つにおいて配置され(「ビーズセンサー」とラベル付けされた曲線であり、図4の素子64に対応する)、インターフェースに配置され(図4における素子481に対応する)、スチールロッドの下のベースに配置された(図4の素子482に対応する)。インパルスが0.45gのスチールビーズを〜3cmの高さからチェーンの最も上の粒子に落とすことによって発せられる。図14A及び14Bは、図4に示された設定に似た試験設定に対して得られた実験曲線を示し、試験下にある素子20は、再びスチールロッドである。しかし、センサーは、インターフェール及びロッドのベースにだけ配置された。図14Aは、直径2.38mmのビーズを損傷していないロッドの上に配置したことによって得られたデータを描く。図14Bは、直径2.38mmのビーズを損傷したロッドの上に配置したことによって得られたデータを描く。
【0046】
インパルスは、0.45gのスチールロッドを〜3cmの高さからチェーンの最も上の粒子に落としたことによって発せられた。
【0047】
上記で討論されたように、予圧も、また、非線形アクチュエータによって供給されるHNWを同調するように働く。図15A、15B、16A及び16Bは、予圧が有する効果を説明する。図15Aは、垂直に整列されたステンレススチール粒子を直径4.76mmのスチールロッドの上に静的予圧(F0=2.38N)を加えて配置したことによって得られた時間データを描く。試験設定は、図4に示されているものに似ており、センサーは、チェーンを構成する中央のビーズのうち1つにおいて配置され(「ビーズセンサー」とラベル付けされた曲線であり、図4の素子64に対応する)、インターフェースに配置され(図4における素子481に対応する)、スチールロッドの下のベースに配置された(図4の素子482に対応する)。図15Bは、損傷したロッドを使用する似た設定を用いて得られた時間データを示す。図16Aは、汚れていないロッドから測定したことから得られた強度vs周波数のデータを示す一方、図16Bは、損傷したロッドから得られた強度vs周波数のデータを示す。
【実施例5】
【0048】
本発明の実施形態は、舗装道路、線路、フロアスペース及び他のそのような構造の自動化された評価及び監視のための方法及びシステムを有する。図17は、そのような実施形態の概略的なビューである。図17において、トロリー80が非線形アクチュエータ10及びそれに搭載された非線形レシーバ12の両方を有する。非線形アクチュエータ10及び非線形レシーバ12は、両方とも、それらが試験下にある構造20に接触出来るような方法で搭載されている。作動中に、非線形アクチュエータ10は、高非線形パルスを供給し、非線形レシーバ12は、その高非線形パルスを検出する。上記のように、代替的実施形態は、従来技術において知られている古典的衝撃法(衝撃ハンマーなど)を非線形アクチュエータ10の代わりに使用し、非線形レシーバ12による検出に対するパルスを供給する。他の実施形態は、非線形アクチュエータ10を使用してもよいが、アクチュエータ10からのパルスは、非線形レシーバ12の代わりに古典的検出法又は装置によって検出されてもよい。
【0049】
図17において描写されるシステムにおいて、コンピュータ90は、非線形アクチュエータ10及び非線形レシーバ12に対する制御を供給してもよく、また、トロリーの動作も制御してもよい。非線形アクチュエータ10及び非線形レシーバ12の両方への及び両方からの信号は、データコレクション・ステーション70に結合されてもよく、そのデータコレクション・ステーションは、無線又は有線接続のいずれか一方でコンピュータ90に結合されてよい。例えば、データコレクション・ステーションは、LabView(登録商標)又は類似のハードウェア/ソフトウェアを実行するPXI技術を使用するナショナル・インスツルメンツからのユニットを含んでもよい。コンピュータ90は、データコレクション・ステーション70を持つクライアント・サーバのイーサネット・リンクを形成するように設定されてもよいノート型パソコンを含んでもよい。データコレクション・ステーション70は、非線形アクチュエータ10によって試験パルスの生成を制御するように設定され、非線形レシーバ12から信号を取得し、ノイズを制限するためにその信号を処理し、監視される構造20に対するリアルタイムの品質指数を生成してもよい。コンピュータ90は、次に、取得を開始及び停止し、パルス及びパルス処理設定を修正し、その結果をリアルタイムで監視し、レポートのウィンドウを供給するために使用されてもよい。
【0050】
図17において描写されるシステムは、ユーザに、構造20の厚さを横切って及びそれに沿って及び構造20自体の内部を伝搬するHNWによって誘導されるパルスを使用する機能を供給してもよい。図17は、単一のアクチュエータ10/レシーバ12の対を示すのみである一方、複数のアクチュエータ/レシーバの対が一度に構造20の大部分を覆うグリッドを形成するように配置されてもよい。これは、構造20が調査される速度を速くし、またその調査の質も改善する。
【0051】
前述の模範的及び好ましい実施形態の詳細な説明は、法律の必要条件に従って論証及び開示を目的として示されている。それは、包括的及び本発明を記載された正確な形に限定することを目的としておらず、他の当業者が、本発明が特定の使用又は実施にどのように適しているか理解することを可能にすることのみを目的としている。修正及び変形の可能性は、当業者にとって明確であるだろう。許容範囲、特徴寸法、特定の操作条件、技術仕様、又はそのようなものを含み、実施の間で又は従来技術への変更と共に変化する模範的実施形態の記載による限定は目的としておらず、それらから限定は暗示されていない。本開示は、最新技術に関して作成されているが、進歩及び将来における適合がこれらの進歩を考慮する(すなわち、その時点における最新技術に従って)ことも熟考する。本発明の範囲は、記載通りの請求項によって定義され、その均等物も適応可能であることを目的としている。単数形を現す請求項の記載の参照は、明確な提示が無い場合は「唯一」を意味することを目的としていない。さらに、本開示における要素、構成要素又は方法又は処理段階はどれも、その要素、構成要素又は段階が請求項において明確に記載されているか否かに関わらず、一般市民に捧げることを目的としていない。本文献における請求項の記載は、その記載が明確に「〜を意味する」という表現を使用して明確に記載されていない場合は、米国特許法第112条第6段落に準拠し、本文献における方法又は処理ステップは、その方法又は処理ステップが「〜に対するステップを含み」という表現を使用して明確に記載されていない場合は、それらの法律に準拠する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
素子又は構造の調査を実施するための方法であり:
1つ又は複数の高非線形波を発するステップ;
該1つ又は複数の高非線形波を調査するべき素子又は構造の中へ方向付けるステップ;
該素子又は構造の中へ方向付けられた該高非線形波から生成されたパルスを、該高非線形波が前記調査するべき素子又は構造の少なくとも1部分の中を通って伝搬した後に検出するステップ;
を含む方法。
【請求項2】
高非線形波を発するステップが、パルス又はパルス群を球形粒子のチェーンの中へ方向付けるステップを含み、該球形粒子のチェーンにおける各粒子は、該チェーンにおいて隣り合っている粒子と線形接触している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記粒子のチェーンにおける粒子は、直線的に拘束され、直線方向において圧縮される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記粒子のチェーンによって発せられた高非線形波の所望の波長、速度、パルス数、及び/又は振幅が:該粒子のチェーンにおける粒子の数;該粒子のチェーンにおける粒子のサイズ又はサイズ群;該粒子を含む材料;及び静的予圧の量;のうち1つ又は複数の選択によって制御される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記1つ又は複数の高非線形波は、1つ又は複数の高非線形孤立波を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
素子又は構造を調査するためのシステムであり:
高非線形波アクチュエータであり、高非線形パルスを調査されるべき素子又は構造に衝突させるように設定可能であるアクチュエータ、及び該調査されるべき素子又は構造の少なくとも1部分の中を取って伝搬する前記アクチュエータからのパルスを検出するように設定可能なパルス検出器、を含むシステム。
【請求項7】
前記高非線形波アクチュエータが:
球形粒子のチェーン及び該粒子のチェーンにおける第1粒子を打撃するように設定された打撃装置、を含む請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記高非線形波アクチュエータが、前記球形粒子のチェーンの直線方向に沿って圧縮力を加えるように設定された予圧装置を含む、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記高非線形波アクチュエータから発せられたパルスデータを受信するように設定され、前記パルス検出器から受信されたパルスデータを受信するように設定されたプロセッサをさらに含む請求項6に記載のシステムであり、該プロセッサは、調査結果を決定するために前記受信されたパルスデータを前記発せられたパルスデータに比較する、システム。
【請求項10】
前記高非線形波アクチュエータは、1つ又は複数の高非線形孤立波を発する、請求項6に記載にシステム。
【請求項11】
前記粒子のチェーンにおいて少なくとも1つの粒子が:波動検出素子;圧力検出素子;加速検出素子又は変位検出素子;の検出素子のうち少なくとも1つを含む、請求項2に記載の方法又は請求項7に記載のシステム。
【請求項12】
素子又は構造の調査を実施するための方法であり:
調査パルスを発するステップ;
該調査パルスを調査するべき該素子又は構造の中へ方向付けるステップ;
該調査パルスが、該調査するべき素子又は構造の少なくとも1部分の中を通って伝搬した後に、該調査パルスを非線形レシーバの中へ方向付けるステップ;及び
該調査パルスが、該非線形レシーバの少なくとも1部分の中を通って伝搬した後に、該調査パルスを検出するステップ;
を含む、方法。
【請求項13】
素子又は構造を調査するためのシステムであり:
調査するべき素子又は構造へパルスを発するように設定可能である、パルスアクチュエータ、及び
該調査するべき素子又は構造の少なくとも1部分の中を通って伝搬する前記アクチュエータからのパルスを検出するように設定可能な非線形レシーバ、
を含む、システム。
【請求項14】
前記非線形レシーバは球形粒子のチェーンを含み、該球形粒子のチェーンにおける各粒子は、該チェーンにおいて隣り合っている粒子と線形接触している、請求項13に記載の方法又はシステム。
【請求項15】
前記粒子のチェーンにおける粒子は、直線的に拘束され、直線方向において圧縮されている、請求項14に記載の方法又はシステム。
【請求項16】
前記調査パルスを検出するステップは、前記粒子のチェーンにおける少なくとも1つの粒子で該調査パルスを検出するステップを含み:波動検出素子;圧力検出素子;加速検出素子又は変位検出素子;のうち少なくとも1つの検出素子を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記調査パルスを検出するステップが、前記調査するべき素子又は構造に隣り合う、粒子のチェーンの端部の中へ該調査パルスを方向付けるステップ、及び前記調査するべき素子又は構造に隣り合う前記粒子のチェーンの端部とは反対側の、前記粒子のチェーンの端部において前記調査パルスを検出するステップを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記粒子のチェーンにおける少なくとも1つの粒子が:波動検出素子;圧力検出素子;加速検出素子又は変位検出素子;のうち少なくとも1つの検出素子を含む、請求項14に記載の方法又はシステム。
【請求項19】
前記非線形レシーバは、前記粒子のチェーンの端部に配置された少なくとも1つの検出素子を含み、該検出素子は:波動検出素子;圧力検出素子;加速検出素子又は変位検出素子;のうち少なくとも1つの検出素子を含む、請求項14に記載の方法又はシステム。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17】
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【公表番号】特表2011−511298(P2011−511298A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−545855(P2010−545855)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【国際出願番号】PCT/US2008/079860
【国際公開番号】WO2009/099469
【国際公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.イーサネット
【出願人】(508032284)カリフォルニア インスティチュート オブ テクノロジー (17)
【出願人】(510215592)ユニヴァーシティ オブ ピッツバーグ オブ ザ コモンウェルス システム オブ ハイアー エデュケーション (1)
【Fターム(参考)】