説明

材料表面上にNOx除去コーティングを設けるのに有用な組成物

本発明は、材料表面上のNO除去コーティングとして使用する光触媒自己清浄特性を有する組成物に関し、その組成物は、
a)少なくとも脱NOx活性を有する光触媒二酸化チタン粒子、
b)脱HNO3活性を有する粒子、
c)乳白剤、および
d)前記粒子が分散されているケイ素系材料、
[ここで、前記光触媒粒子は、1〜50nmの結晶サイズを有する]
を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料表面上のNOx除去コーティングとして使用する、光触媒自己洗浄特性を有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
建物およびコーティング剤の分野において、環境汚染は、建物および野外建物に対する外部材料の汚染の深刻な問題を生じている。空気中に浮遊する粉塵および粒子は、晴天のときに建物の屋根外壁上に沈着する。降雨に曝すと、この沈着物は、雨と一緒に流れ、建物の外壁に沿って流れ落ちる。結果として、汚染物質が雨水の走路に沿って付着する。表面が乾燥すると、汚れが縞模様に現れる。
【0003】
少なくとも部分的にこの問題を解決するために、建設材料表面にコーティングを付着させることが既に提案されてきた。あるいは、さらにこのコーティングは、大気汚染に対して光触媒自己洗浄特性を示すものである。このように、酸化チタン光触媒コーティング剤が、EP0901991、WO97/07069、WO97/10186およびWO98/41480に開示されている。
【0004】
さらに特に、半導体である二酸化チタン(TiO2)は、UV放射線(例えば、UV光からの)を電子および正孔に変換させ、これが有害な有機化合物の無害な物質への分解を最終的に開始させることができる。典型的大気汚染物質は、例えば材料の塗装された表面に吸着された窒素酸化物、オゾンおよび有機汚染物質である。このことは、高層地域、例えば市街において特に有利であり、ここでは、有機汚染物質の濃度が比較的高いことがあり、特に太陽が強く、しかもまた材料の利用可能表面が比較的広い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、水および酸素の存在下において、NO2およびNOと、TiO2/UV光との反応〜形成されたHNO3などの、そのように形成された酸化種に関連する1つの問題は、材料のコートされた表面上にそれらが吸着し、そこで汚れおよび/または腐食の問題を引き起こし得ることである。
【0006】
したがって、脱汚染特性、非汚れ性および顕著な耐久性において、従来のコーティングよりも著しい改良を有するコーティングに対する必要性は、依然として存在する。
【0007】
驚くことには、本発明者らは、このような目的が、コーティングとして使用する特定の組成物によって効率的に実現することができることを見出した。
【0008】
したがって、本発明の目的は、材料の表面にコーティングとして塗布した場合に、NOxおよび場合によってVOCx(即ち、キシレンおよびベンゼンなどのVolatile Organic Content(揮発性有機化合物)の改良された除去特性を示す組成物を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、材料の表面にコーティングとして塗布した場合に、特に降雨によってまたは水で洗浄することによって、表面から汚染物質を容易に剥離することができる組成物を提供することである。とりわけ、この組成物は、基材の表面上に塗布して、被膜を形成したとき、表面上に付着した汚染物質またはその誘導体を水で容易に洗い流すことができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様によれば、本発明は、建設材料表面に不透明なコーティングとして使用するためのNOx除去組成物を対象とし、少なくとも、
a)少なくとも脱NOx活性を有する光触媒二酸化チタン粒子、
b)脱HNO3活性を有する粒子、
c)乳白剤、および
d)前記粒子が分散されているケイ素系材料、
[ここで、前記光触媒粒子は、1〜50nmの結晶サイズを有する]
を含む。
【0011】
他の態様によれば、本発明は、材料の表面において大気中の汚染物質に対して自己洗浄特性を与えるための方法に関し、前記方法は、少なくとも材料の表面上に本発明による組成物を塗布するステップと、前記組成物を乾燥または硬化して、不透明コーティング系を提供するステップとを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明により得られるコーティングは、特に水およびUV光に曝された後に、実施例において以下に示すように高耐久性および高脱NO3効率を示す。
【0013】
光触媒二酸化チタン粒子:
本発明による組成物は、少なくとも脱NOx活性を有する少なくとも分散された光触媒二酸化チタン粒子を含み、NOxはNOおよび/またはNO2を意味する。特定の実施形態によれば、前記光触媒粒子は、また脱VOC活性を有する。
【0014】
本明細書に使用される用語「脱NOx活性および/または脱VOC」活性は、NOxおよび/またはVOC種を、NOxに対するHNO3のように、それらの各々の酸化種に変換する能力を指す。
【0015】
詳細には、本発明において、本明細書に使用される用語「光触媒粒子」は、結晶の伝導帯と価電子帯間のエネルギーギャップよりも高いエネルギー(即ち、より短波長)を有する光(励起光)に曝した場合に、価電子帯において電子の励起(光励起)を起こし、伝導電子および原子価正孔を生成することができる材料に基づく粒子を意味する。
【0016】
本発明による組成物中に含まれる光触媒二酸化チタン粒子は、基本的に酸化チタンのアナターゼまたはルチル形およびその混合物を含む。
【0017】
例えば、コーティングの二酸化チタン粒子については、この粒子の性質は、主にアナターゼ結晶形であってよい。「主に」とは、コーティング組成物の二酸化チタン粒子中のアナターゼの割合が、50質量%を超えることを意味する。コーティング組成物の粒子は、アナターゼの割合が80%を超えてもよい。
【0018】
結晶化の度合いおよび結晶相の性質は、X線回折によって求められる。
【0019】
コーティング中に組み込まれた結晶性二酸化チタン粒子は、1〜300nm、好ましくは2〜100nm、より好ましくは5〜50nmの平均サイズを示す。この直径は、透過型電子顕微鏡法(TEM)およびまたXRDによって測定される。
【0020】
好ましい光触媒粒子は、1グラム当たりの高い表面積、例えばBET法によって測定して50m2/g、好ましくは100m2/gを超える1グラム当たりの表面積を有する。
【0021】
それに対して、通常の、即ち光触媒特性を有する、TiO2顔料の1グラム当たりの表面積は約1〜30m2/gである。光触媒粒子が、さらに小さい粒子および微結晶であると、さらに大きな表面積をもたらす。
【0022】
販売されている光触媒TiO2、例えばミレニアムインオーガニックケミカルズ社製のS5−300AおよびB、すなわち専売の中性ゾルは、本発明にとって特に便利である。
【0023】
光触媒活性を有する粒子は、前記組成物の総重量の0.1〜25重量%、好ましくは0.5〜20重量%、最も好ましくは1〜15重量%(乾燥物として)の量で添加する。
【0024】
特に、本発明による組成物は、少なくとも1重量%の光触媒粒子を含む。
【0025】
特定の実施形態によれば、また光触媒粒子は、脱VOC除去特性を示す。
【0026】
光触媒二酸化チタン粒子は、水中に分散させて調製されたゾルとして、水または溶剤含有ペーストとして、または粉体として使用することができる。ゾルを調製するために使用される分散剤の好ましい例には、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、およびイソブタノールなどのアルコール;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトンが含まれる。
【0027】
脱HNO3粒子:
本発明による組成物は、NOx粒子〜光触媒的に形成された酸化物種HNO3を除去するための分散された粒子を含む。粒子のこれらの第2のタイプは、「HNO3除去粒子」または脱HNO3粒子と呼ばれる。
【0028】
脱HNO3粒子の例には、塩基性化合物、特に任意の不溶性炭酸塩、例えば炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウムおよびその混合物が含まれる。とりわけ、このような化合物の好ましい例には、炭酸カルシウムが含まれる。この量には、特に制限はなく、HNO3のアルカリ性塩への変換の実現ために十分であるべきであり、第2には、それを含むコーティングと馴染みのよいものであるべきである。前記組成物の総重量の0.05〜50重量%、特に0.1〜30重量%(乾燥物として)の量が、特に好都合である。
【0029】
脱HNO3粒子/光触媒粒子比は、0.05〜5、特に0.1〜3、より特別には0.2〜2.0で変化することができる。
【0030】
前記粒子、即ち脱HNO3粒子および光触媒粒子は、本発明による組成物中に、組成物の総重量の1重量%(乾燥物として)を超える、特に50重量%より少ない量、およびより特別には35重量%より少ない量で含まれる。
【0031】
ケイ素系成分:
本発明の組成物は、少なくとも先に開示された粒子が封じ込められているケイ素系成分を含む。
【0032】
詳細には、本発明において、本明細書に使用される用語「ケイ素系材料」とは、シリカをベースとする任意の材料またはその混合物を指し、このケイ素系材料はコーティング用に便利なケイ素系被膜を供給することができる。
【0033】
ケイ素系材料は、有利にはポリシロキサンポリマー被膜を提供する。
【0034】
一実施形態によれば、ケイ素系材料は、特に次式を有する少なくとも1つのポリシロキサン誘導体を含み、
【0035】
【化1】

【0036】
[式中、nは、40〜70%の固形物を有するポリシロキサンの水性分散液を供給できるための値を有し、
−R1およびR2は、1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、またはフェニルなどのアリール基である]。
【0037】
一般に、nの値は、約5〜2000の範囲にある。
【0038】
1およびR2基の例は、アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、2−エチルブチル、オクチル)、シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル)、アルケニル基(例えば、ビニル、ヘキセニルアリル)、アリール基(例えば、フェニル、トリル、キシリル、ナフチル、ジフェニル)、アラルキル基(例えば、ベンジル、フェニルエチル)、炭素に結合している水素のいくつかまたは全てが置換されている(ハロゲン原子またはシアノ等で)任意の前述の基、または例えば、アミノ基、エーテル基(−O−)、カルボニル基(−CO−)、カルボキシル基(−COOH−)またはスルホニル基(−SO2−)(例えば、クロロメチル、トリフルオロプロピル、2−シアノエチル、3−シアノプロピル)により置換されているまたは含んでいる基である。特にポリシロキサンの分子量は、500〜5000、特に1500〜5000の範囲にある。
【0039】
ワッカーケミ社から商品名ワッカーBS45で市販されているポリシロキサンが本発明に対して特に好都合である。
【0040】
本発明による組成物中のポリシロキサンの含有量は、適切に決定することができる。特定の実施形態によれば、ポリシロキサンの含有量は、組成物の総重量の1〜60重量%、特に5〜50重量%(乾燥物として)の範囲であってよい。
【0041】
特定の実施形態によれば、本発明による組成物は、また有機バインダーを含む。
【0042】
有機バインダー:
有機バインダーは、スチレン/ブタジエンのコポリマー、アクリル酸のエステルのポリマーおよびコポリマー、特に、ポリビニルアクリルのコポリマー、スチレン/アクリル酸エステルのコポリマーの中〜選ぶことができる。
【0043】
本発明において、スチレンアクリルコポリマーは、スチレン/アクリル酸エステルのコポリマーを含む。
【0044】
本発明者らは、このような化合物が、高い脱NOx効率を有する、光触媒的に活性なコーティングを得るために特に有利であることを意外にも発見した。
【0045】
このような効果は、この化合物がスチレン/アクリルコポリマーであり、さらに特に、0.3〜4.5、特に0.5〜3.6、さらに特に1〜3.5の範囲である光触媒TiO2粒子/有機バインダー(特にスチレン/アクリルコポリマー場合)の重量比で使用される場合に特に認められた。
【0046】
特に、BASF社製のアクロナール290Dなどのスチレンアクリルエマルジョンを使用することができる。
【0047】
組成物が有機バインダーを含む場合、有機バインダーは、好ましくはケイ素系材料の一部分の換わりに導入される。
【0048】
組成物は、20〜1の範囲にある、ケイ素系材料/有機バインダーの重量比を有することができる。
【0049】
乳白剤
本発明によれば、乳白剤は、コーティングに隠蔽力を与えることができる任意の有機または無機化合物を含む。乳白剤には、以下に挙げるように、顔料、着色剤および/または充填剤が含まれる。さらに好ましくは、乳白剤は、ルチルまたはアナターゼの二酸化チタンのような少なくとも1つの無機化合物を含む。
【0050】
光活性でないこのような二酸化チタン顔料は、米国特許第6 342 099号(ミレニアムインオーガニックケミカルズ社)において開示されている。
【0051】
特に、ミレニアムインオーガニックケミカルズ社によって販売されているチオナ595の粒子および/またはチオナAT−1の粒子を使用することができる。
【0052】
組成物は、0.5〜20重量%、特に0.5〜35重量%の範囲の量でこのような乳白剤を含むことができる。
【0053】
本発明による組成物は、少なくとも1種の溶剤を含むことができる。
【0054】
本明細書において使用できる溶剤の例には、水、有機溶剤、および水と有機溶剤を有する混合溶剤が含まれる。水、およびアルコールが特に好ましい。
【0055】
本発明による組成物は、その添加が貯蔵安定性、UV耐久性、隠蔽力または非汚染特性を損なわないことを前提条件に、任意の成分を含むことができる。このような追加の化合物の例には、石英、カルサイト、クレー、タルク、バライトおよび/またはNa−Alシリケートなどの充填剤;TiO2、リトポンおよび他の無機顔料などの顔料;ポリホスフェート、ポリアクリレート、ホスホネート、ナフテンおよびリグニンスルホネートなどの分散剤;アニオン性、カチオン性、両性および非イオン性界面活性剤などの湿潤剤;ケイ素エマルジョン、炭化水素、長鎖アルコールなどの脱泡剤;主としてカチオン性化合物などの安定剤;アルカリ−安定性エステル、グリコール、炭化水素などの合体剤;セルロース誘導体(CMC、HEC)、キサンタンガム、ポリウレタン、ポリアクリレート、変性澱粉、ベントンおよび他の板状シリケートなどのレオロジー添加剤;アルキルシリコネート、シロキサン、ワックスエマルジョン、脂肪酸Li塩などの撥水剤、および通常の殺カビ剤または殺生剤が含まれる。
【0056】
本発明の組成物は、任意の適切な方法によって材料表面上に塗布することができ、適切な方法の例には、スプレーコーティング、浸漬コーティング、フローコーティング、スピンコーティング、ロールコーティング、刷毛塗り、およびスポンジコーティングが含まれる。
【0057】
基材の表面上に塗布した後に、次いで、組成物を乾燥させるか、硬化させて薄膜を形成する。本明細書において使用される用語「乾燥されたまたは硬化された」は、本発明による組成物中に含まれるケイ素系材料をケイ素系被膜に変換させることを意味する。したがって、乾燥を空気乾燥または熱乾燥によって実施することができる。別法として、先駆物質がケイ素被膜に変換される限り、重合を起こすために紫外線照射などが実施できる。
【0058】
本発明による組成物は、非常に多種の材料の表面に塗布することができる。
【0059】
材料は、特に限定されず、その例には、金属、セラミック、ガラス、プラスチック、木材、石、セメント、コンクリート、繊維、織物、および上記材料の組合せおよび上記材料のラミネートが含まれる。組成物を適用することができる特定の例には、家屋、建築材料;建築物外装;建築物内装;サッシ;窓ガラス;構造材料;装置または物品の外装;防塵カバーおよびコーティング剤;フィルム、シート、シール;トンネルおよび駐車場が含まれる。
【0060】
本発明の好ましい実施形態を調製する際、種々の代替物を本発明の目的を促進するために使用することができる。
【実施例】
【0061】
以下の実施例は、本発明の理解を助けるために示され、いかなる点においても本発明を限定することを意図するものではなく、限定するものと解釈されるべきではない。本開示を読んで、当分野の通常の技術者に明らかとなり得る、全ての代替案、変更形態および同等のものは、本発明の精神および技術的範囲に含まれる。
実施例
組成物を以下の材料を使用して調製した:
− 光触媒二酸化チタン:ミレニアムインオーガニックケミカルズ社製のPC 105(ナトリウムヘキサメタホスフェート1%を含む、水中の42重量%TiO2)、
− 二酸化チタン顔料:ミレニアムインオーガニックケミカルズ社製のチオナ 595、
− 炭酸カルシウム(充填剤):オムヤ社製のスノウカル60、
− ヒドロキシエチルセルロース:ハーキュレス社製のナトロゾール250MR 3%水溶液、
− ワッカーBS45: ワッカーケミ社製のポリシロキサンポリマーラテックス、
− イーストマンケミカル社製のテキサノール:2,2,4トリメチル−1,3ペンタンジオールモノイソブチレート、
− ポリアクリル酸のナトリウム塩:アライドコロイズ社製のディスペックスN40。
【0062】
塗料をA、BおよびCと呼ぶ3つの部において調製する。
【0063】
部Aでは、TiO2を水に添加し、次いで、これにナトロゾールl250MR、ディスぺックスN40およびスノウカル60を添加する。
【0064】
この成分を高せん断下に混合する。
【0065】
部Bでは、部Aにポリシロキサンポリマーを添加し、次いで、部Cでは、部Aおよび部Bにテキサノールを添加する。
このように調製した塗料の組成を表Iに挙げる。
【0066】
【表1】

【0067】
メチレンブルーに対するコーティングの光活性の決定方法
二酸化チタンを紫外光で照射すると、正孔および電子の生成をもたらし、これらは、次いで、過酸化物、ヒドロペルオキシドおよびヒドロキシルイオンなど反応性種を形成することができる。次いで、これらは、メチレンブルーなどの有機分子を、水、二酸化炭素および窒素含有種に酸化する能力を持ち、付随して色の減少を伴う。光活性のレベルをL*(輝度)およびb*値(青色/黄色度)を測定することによって観察する。
【0068】
この方法は、ラテックスまたはエマルジョン塗料などの水で湿潤されたコーティングに最も適する。コーティングの多孔性が、被膜が捕捉する汚染の量に影響するが、これは、メチレンブルー溶液に増粘剤を添加することによって最小になる。また、pH効果による青の色変化があり得る。
【0069】
メチレンブルー溶液の調製
メチレンブルーを、0.05重量%の濃度まで脱イオン水中に先ず溶解する。低速撹拌しながら、1%のナトラゾールMR(登録商標)(ヒドロキシエチルセルロース)の当量を次いで添加する。ナトラゾールを水和させるために、希アンモニアでpHを約8.0に上げる。これに必要となるのは、数滴だけである。この溶液をさらに1時間撹拌して、ナトラゾールを完全に水和する。
【0070】
塗料被膜汚染
試験すべき塗料被膜は、螺旋巻きロッドを使用して薄膜を引き落とすことによって、メチレンブルー溶液の薄膜で上塗りされる。試験被膜は30ミクロン厚さのメリネックスまたはマイラーシートに未乾燥塗料被膜を塗布することによって予め調製した。螺旋巻きロッドは、種々の膜厚を得るために指定されているが、25〜50ミクロン未乾燥被膜を与える螺旋巻きロッドが一般に使用される。コーティングを23℃、50%RHにおいて終夜放置して乾燥する。
【0071】
測定
被膜から適切なサイズの面積をカットし、分光光度計を使用して、L*およびb*測定を行う。次いで塗料被膜を、250〜765nmの551W/m2の光出力を与えるようセットされたアトラスサンセット機からの光に曝した。塗料被膜を適切な間隔、一般に18〜24時間で再測定する。
【0072】
未曝露と曝露後の結果の間のL*およびb*の差は、自己洗浄に対するコーティングの光活性の尺度である。
【0073】
データを以下の表に示す。
【0074】
【表2】

【0075】
耐久性の決定方法
コーティングの耐久性を、ステンレススチールパネル上でコーティングを調製し、それをそのために設計された機器の、シミュレートされた屋外曝露条件に曝すことによって評価した。コーティングが曝露中に失った重量が、その耐久性の尺度であった。
【0076】
ステンレススチールパネルは、75×150mmおよび厚さ0.75mmであった。このパネルは、コーティングの重量を計算できるように塗料被膜の塗布前後で0.0001gまで計量した。
【0077】
パネルは、刷毛塗り、スプレー、スピニングを含む任意の都合のいい手段によって、または螺旋巻きロッドアプリケターによって塗布することができる。曝露されるべき表面だけが塗布された。乾燥被膜の厚さは、一般に20〜50ミクロンの範囲にある。
【0078】
ウェザオメーター中で曝露する前に、コーティングを7日間放置乾燥した。
【0079】
曝露に使用したウェザオメーターは、アトラスエレクトロニックデバイスシカゴ製のCi65Aであった。光源は、340nmにおいて0.5W/m2UVを放射する6.5kWキセノン源であった。ブラックパネル温度は、摂氏63度であった。水噴霧は、120分毎に18分間行い、暗サイクルはなかった。
【0080】
そうして得られた値を図1に提示する。これらは、本発明によるF1およびF2から得られたコーティングの初期総重量の約15または38%だけが、1500時間曝露後に、失われたことを示す。
【0081】
コーティング剤によるNO/NO2除去の決定
塗料被膜を、試験を実施する前に、フィルターをかけたキセノン光源(アトラスウェザオメーターCi65A)を使用して168時間、340nmにおいて0.5W/m2UVで照射した。これは、未曝露コーティング剤と比較してコーティング剤の活性を活性化または増加させる。NOx測定に対しては、300〜400nmの範囲において10W/m2UVを放射するUV蛍光灯で試料を照射した。使用されたNOxは、窒素中、225ppbのNOである。
1.装置
窒素酸化物分析機 ML9841B型 モニターユーロープ製
UVランプ VL−6LM型 365&312ナノメートル波長 BDH製
気密試料チャンバー
3チャネルガス混合機 ブルックインスツルメンツ、オランダ製
2.ガス
NO 酸化窒素
混合ガスストリーム中で50%相対湿度を与える水蒸気を含む圧縮空気。
3.方法
1.分析器および排気ポンプのスイッチを入れる。大気への排気パイプの確保。
2.暖気運転させる。分析器が作動を開始する前に、いくつかの内部構成部品は、作動温度に到達させ必要がある。一般に、このプロセスは、無準備スタートから60分間かかり、メッセージ「開始操作作動中」が作動条件が満足されるまで表示される。
3.暖気運転後に、空気および試験ガスをガス混合機に供給開始。
4.製作者の指令に従い、試験ガス供給だけで分析器を検量する(ガス混合機の空気チャネルをゼロにする)。
5.検量後に、ガス混合機の試験ガス供給を切る。
6.試験チャンバー中に試験試料を入れ、チャンバーを閉じる。
7.空気と試験ガスの両方を出し、分析器出力により示される、試験ガスの必要レベルが達成されるまで、それぞれを調整する。レベルを記録する。相対湿度が、50%プラスマイナス5%内であることを確認する。
8.試験ガスレベルが所望の所にあるときに、UVランプのスイッチを入れる。
9.照射された試料値を平衡に到達させる、一般に3分間まで。
10.分析器上に示された値を記録。
11.「初期値」即ちUVなし、設定時間UV曝露後の「最終値」を報告。
12.除去されたNOx(%)=(初期値−最終値)×100/初期値
データを以下の表に提示する。
【0082】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明によるコーティングが曝露試験中に失った重量を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、
a)少なくとも脱NOx活性を有する光触媒二酸化チタン粒子、
b)脱HNO3活性を有する粒子、
c)乳白剤、および
d)前記粒子が分散されているケイ素系材料、
[ここで、前記光触媒粒子は、1〜50nmの結晶サイズを有する]
を含む、材料表面上にコーティングとして使用するためのNOx除去組成物。
【請求項2】
光触媒粒子が、少なくとも二酸化チタンのアナターゼ形、二酸化チタンのルチル形またはその混合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
二酸化チタン粒子が主にアナターゼ結晶形である、請求項1〜2のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項4】
結晶二酸化チタン粒子が、1〜300nm、特に2〜100nm、さらに特に5〜50nmの平均サイズを示す、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
光触媒粒子が、5m2/gを超える表面積を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
光触媒粒子が、前記組成物の総重量の0.1〜25重量%、好ましくは0.5〜20重量%、最も好ましくは1〜15重量%(乾燥物として)の量で存在する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
脱HNO3粒子が塩基性化合物を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
脱HNO3粒子が、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛またはその混合物を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
脱HNO3粒子が、前記組成物の総重量の0.05〜50重量%、特に0.1〜30重量%の量で存在する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
光触媒二酸化チタンおよび脱HNO3粒子が、0.05〜5、特に0.1〜3、より特別には0.2〜2の脱HNO3粒子/二酸化チタン粒子比で含まれる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
ケイ素系材料がポリシロキサン皮膜を提供する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
ケイ素系材料が少なくともポリシロキサンポリマーを含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
乳白剤が、アナターゼまたはルチルTiO2粒子をベースとする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記a)およびb)の粒子が、前記組成物の総重量の50重量%未満の量で存在する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
有機バインダーをさらに含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
有機バインダーが、ポリビニルアクリルおよびスチレン/(メタ)アクリル酸エステルのコポリマーからなる群より選択される、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
材料の表面上に請求項1〜16のいずれか一項に記載の組成物を塗布するステップ、および前記組成物を乾燥または硬化して、その上に不透明コーティングを得るステップを少なくとも含む、大気汚染に対する自己洗浄特性を材料の表面に与える方法。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2008−513188(P2008−513188A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−530781(P2007−530781)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【国際出願番号】PCT/IB2004/002975
【国際公開番号】WO2006/030250
【国際公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(506036493)ミレニアム インオーガニック ケミカルズ、 インコーポレイテッド (11)
【氏名又は名称原語表記】MILLENNIUM INORGANIC CHEMICALS, INC.
【Fターム(参考)】