説明

束縛されたプラズマビームを生成させるための方法及びビーム発生器

【課題】
本発明は、流れるワーキングガスを供給しながらアーク放電によって束縛されたプラズマビームを生成させるための、前記ワーキングガスの流れの中で互いに距離をあけて配置された2つの電極及びこれらの2つの電極間に電圧を発生させる電圧源を有するビーム発生器に関する。
【解決手段】
前記電圧源は、アーク放電のための点弧電圧とパルス周波数とを有する電圧パルスを生成し、この電圧パルスは、前後して続く2つの電圧インパルス間ごとにアークを消弧することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流れるワーキングガスを供給しながらアーク放電によって束縛されたプラズマビームを生成させるための、当該ワーキングガスの流れの中で互いに距離をあけて配置された2つの電極及び当該電極間に電圧を発生させる電圧源を有するビーム発生器に関する。さらに、本発明は、束縛されたプラズマビームを発生させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械の表面が、コーティング、塗装又は接着されなければならない場合、多くの場合に前処理が必要である。当該表面が、接着剤、塗料等のような液体によってより良好に湿潤され得るように、当該表面の汚れが、この前処理によって除去され、及び/又は、分子構造が、この前処理によって変化される。
【0003】
表面を処理するため、及び、表面を洗浄するため、束縛されたプラズマビームを生成させるためのビーム発生器が使用される。当該ビーム発生器の場合、非熱放電による2つの電極間のノズル管内の電圧の印加の下で、プラズマビームが、ワーキングガスから生成される。この場合、このワーキングガスは、特に大気圧下にある。好ましくは、空気が、ワーキングガスとして使用される。
【0004】
プラズマによる前処理及び洗浄は、多数の利点を有する。これらの利点のうちの特に、高い脱脂率、無公害性、ほぼ全ての材料に対する適応性、僅かな運転コスト及び異なる製造工程への優れた統合性を強調することができる。
ヨーロッパ特許第0 761 415号明細書及びドイツ連邦共和国特許第195 32 412号明細書から、束縛されたプラズマビームを生成させるためのこのような種類のビーム発生器が公知である。このビーム発生器は、ワーキングガス用の供給部を側面に有する合成樹脂製の深なべ形のハウジングを備える。セラミック製のノズル管が、この深なべ形のハウジング内に同軸に保持されている。銅製のピン電極が、この深なべ形のハウジング内の中心に配置されている。このピン電極は、ノズル管内に突出している。このノズル管の外周が、深なべ形のハウジングの外側で電気伝導性の材料から成る被筒によって包囲されている。この被筒は、ノズル管の自由端部に沿って環状電極を形成する。この環状電極は、同時にノズル口を画定する。このノズル口の直径は、当該ノズル管の内径より小さい。その結果、確実な束縛が、ノズル管の流出口で達成される。
【0005】
この公知のビーム発生器の欠点は、処理すべき表面の大きい熱負荷にある。電圧源が、10〜30kVの範囲内の非常に高い点弧電圧を必要とする。僅かな効率も欠点である。特に、プラズマ中の僅かなイオン化率が、当該僅かな効率に関する原因である。さらに、ビーム発生器から発生するワーキングガスが、高い温度を有する一方で、電極は、非常に低い温度を有する。しかしながら、表面を処理するビーム発生器を運転するためには、電極が重粒子(分子、原子、イオン)より遥かに高い温度を有する、非熱プラズマの生成を実現しなければならない。しかしながら、技術的に製造された非熱プラズマは、通常は僅かなイオン化率を呈したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】ヨーロッパ特許第0 761 415号明細書
【特許文献2】ドイツ連邦共和国特許第195 32 412号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、当該従来の技術から出発して、ビーム発生器から発生する低温のプラズマビームを有する特に非熱プラズマを生成する、冒頭で述べた種類のビーム発生器を提供することにある。さらに、コンパクトな構造のビーム発生器が実現されなければならない。また、低温のプラズマビームを有する特に非熱プラズマを生成することができる方法が提供されなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
冒頭で述べた種類のビーム発生器の場合、この課題は、電圧源がアーク放電のための点弧電圧とパルス周波数とを有する電圧パルスを生成し、この電圧パルスは、前後して続く2つの電圧インパルス間ごとにアークを消弧することができることによって解決される。低温のプラズマビームを有する非熱プラズマを生成するための方法が、請求項15及び16の特徴に記載されている。
【0009】
流れているワーキングガス中の束縛されたプラズマビームが、アーク放電によって生成される。当該アークは、互いに距離をあけて配置された2つの電極間のガス放電を意味する。当該ガス放電に必要な高い電流密度を衝突イオン化によって生成するため、十分に高い電圧が、これらの電圧に印加される。当該ガス放電が、プラズマを形成する。重粒子の一部が、このプラズマ中でイオン化されている。
【0010】
点弧電圧は、ガス放電を両電極間で開始するために必要である電圧である。この点弧電圧は、電源によって生成されるか又は一次電源からの電圧源から取り出される。本発明では、基本的に直流電圧源及び交流電圧源が考えられるものの、特に直流電圧源が使用される。しかしながら、電圧源が前後して続く2つの電圧インパルス間ごとに消弧することができる電圧パルスを生成することが、非常に重要である。この場合、電圧源によって出力される電圧が、最初に下の値、特に零から出発して、点弧電圧より大きいか又は点弧電圧に等しい最高値に上昇し、短期間後に再び下の値、特に零に降下することが、電圧インパルスに関して考えられる。周期的に連続する複数の電圧インパルスは、電圧パルスと呼ばれる。
【0011】
各電圧インパルスの間に、電圧が、必要な点弧電圧の遥か下方に低下する。その結果、点弧電圧が、その次の電圧インパルス中で再び生成され、新たなアーク放電が、電極間で起こるまで、アークが、各電圧インパルスと一緒に消弧する。各電圧インパルスと共に得られるアークの消弧によって、高い電極温度の下で、低い温度のワーキングガスが、ビーム発生器から流出される。電子が、高い点弧電圧の到達時に突然に流出することによって、高加速された多数の電子が、プラズマ中で発生する。これらの電子は、高い電子温度を有する。点弧電圧に達した後又は点弧電圧を越えた後に、10アンペア〜1000アンペアの大きさの最大の電流の強さを有する電流が、1ナノ秒〜1000ナノ秒の非常に短い期間に両電極間で流れる。これから生じる高い電流密度は、いわゆるピンチ効果をもたらす。このピンチ効果は、大電流によって流れるプラズマがプラズマ流とこのプラズマ流によって発生した磁場との相互作用の結果として薄く圧縮されたプラズマシェル又はプラズマ糸に縮小することを意味する。
【0012】
電圧源が、電圧パルスのパルス周波数を好ましくは10kHz〜100kHzの範囲内で、特に20kHz〜70kHzの範囲内で生成するために構成されている。これらのパルス周波数の場合、プラズマの発生及びプラズマビームが中断されないことが保証されている。本発明のビーム発生器による特に粉末での基板面の中断のない活性化及びコーティングが、この手段によって実施可能である。アークが、同時に基板面の非常に僅かな熱負荷の下で消弧しても、プラズマビームが、特に20kHz〜70kHzの範囲内のパルス周波数によって維持される。
【0013】
プラズマ中の上記電流の強さが、2kV〜10kVの点弧電圧によって得られるように、ビーム発生器の電極間の距離及びワーキングガスの圧力が決定される。電極間距離を算出するための根拠は、パッシェンの法則である。したがって、当該点弧電圧は、ワーキングガスのガス圧と放電距離、すなわち電極間の距離との積の関数である。対向する電極の形及び使用されるワーキングガス、特に空気に応じて、当該計算の補正パラメータを考慮する必要がある。
【0014】
電圧源によって生成された電圧インパルスは、整流又は逆変換され得る。
当該電圧源の好適な実施の形態は、この電圧源が、出力電圧用の1つのプラグと電源内で変圧された電圧用の2つの出力部とを有する当該電源を備えることを特徴とする。この場合、少なくとも1つのコンデンサが、これらの出力部に対して並列に接続されている。このコンデンサは、少なくとも1つの抵抗を介して当該電源に接続されている。この場合、選択的に、これらの出力部のうちの1つの出力部が、接地電位に接続され得、当該共通のアースが、基準電位及びコンデンサ用の接続部として使用され得る。この場合、当該電源は、配電網によって給電された入力電圧をビーム発生器に必要となる出力電圧に変換する構成要素である。
【0015】
当該電源によって出力されている電力が、コンデンサに一時的に充電されることによって、コンデンサと抵抗とから構成された回路が、アークを消弧させる。アーク放電のための点弧電圧に達するまで、この電源によって出力されている電力が、最初にコンデンサによって充電される。点弧電圧に達した時に、放電が開始し、コンデンサ中に蓄えられたエネルギーが、1ナノ秒〜1000ナノ秒内に10アンペア〜1000アンペアの程度の大きさの電流の強さで流出する。コンデンサから供給されたアークを維持するため、不足分の電流が、少なくとも1つの充電抵抗器を通じて持続して流れる。当該少なくとも1つのコンデンサは、この充電抵抗器を介してこの電源に接続されている。その後、アークが自然に消弧、その次の電圧インパルスのための当該コンデンサの充電が新たに開始する。
本発明のコンパクトな構造のビーム発生器及び効率のさらなる向上の関係で、電圧源の電源は、特にスイッチング電源装置として構成されている。このスイッチング電源装置は、50Hz用の変圧器又は60Hz用の変圧器を有する従来の電源と違って、配電電圧が、遥かにより高い周波数の交流電圧に変換され、変圧器の後方で最後に再び整流される点で優れている。変圧器が、より高い周波数で動作する結果、同じ出力の場合に、変圧器の質量が明らかに低減され得る。その結果、同じ出力の場合に、スイッチング電源装置が、よりコンパクトで且つより軽い。さらに、当該スイッチング電源装置の効率が、従来の電源より高い。
【0016】
第1電極を電圧源に接続する電線が、絶縁体によって包囲されることによって、特にスペースを節減するように、電圧源のコンデンサを遮蔽されたケーブルとして構成することができる。電気伝導性の遮蔽体が、少なくとも部分長上でこの絶縁体を包囲する。この遮蔽体は、スイッチング電源装置と別の電極との間の電気伝導性の接続部分の構成要素である。この場合、外側の絶縁体が、この遮蔽体を包囲する。
【0017】
当該コンデンサの容量は、特に1nF〜200μFの範囲内にある。
一方の電極が、ピン電極として形成されていて、他方の電極が、環状電極として形成されていて、ピン電極に対して絶縁された電気伝導性材料から成る中空シリンダ状の被筒が、当該ピン電極に対して同心円状に配置されていて、当該環状電極が、この被筒の一方の前面に配置されていて、この環状電極は、ノズル口を画定し、このノズル口の直径は、当該中空シリンダ状の被筒の直径より小さく、ワーキングガス用の供給部が、この被筒の対向する前面に配置されていることによって、ビーム発生器のコンパクトな構造が、同時にワーキングガスの均質な流れを維持して実現される。
【0018】
ワーキングガスの温度のさらなる低下が、流れを最適にすることによって達成され得る。この理由から、本発明のビーム発生器は、ワーキングガスの渦流を発生させる手段として中空シリンダ状の被筒の前面に差し込まれてピン電極を保持する電気絶縁性の材料から成るシースを有する。螺旋形部材として形成された少なくとも1つのウェブが、このシースの表面に沿って配置されている。このウェブは、中空シリンダ状の被筒の内壁とシースの表面との間にワーキングガス用の流路を形成する。プラズマビームの温度が、当該螺旋形ウェブの勾配によって有効に影響され得る。より大きい勾配が、プラズマビームをより強く冷却する一方で、より小さい勾配が、プラズマビームをより高温にする。より大きい勾配の場合、同じ流れ速度のときのワーキングガスの滞在期間が、ビーム発生器を通じたより短い流路に起因してより短い。これによって、ワーキングガスの冷却作用が増幅される。螺旋形部材として形成されたウェブのより小さい勾配の場合、同じ流れ速度のときのワーキングガスの滞在期間が、ビーム発生器を通じたより長い流路に起因してより長い。これによって、ワーキングガスの冷却作用が低減される。
ワーキングガス用の当該流路を形成するシースは同時に、ピン電極を電気伝導性の被筒内に固定し、ピン電極と被筒との間の必要な電気絶縁を保証する。当該シースは、取り付けし易いだけではなくて、さらにピン形のビーム発生器を本発明の課題とされたコンパクトな寸法にする。
【0019】
10nm〜100μmの粒子径を有する粉末を供給するための少なくとも1つの流入口が、ノズル口の領域内に配置されている場合、本発明のビーム発生器は、プラズマビームを使用して基板面を活性化してコーティングするために使用することができる。プラズマビームの電子が、供給された粉末粒子をスパッタし、プラズマの依然として比較的高い温度で、特に高い温度の電子でこれらの粉末粒子を溶融する。当該溶融のためのエネルギー消費及びノズル口までのプラズマのさらなる流路に起因して、プラズマが冷却される。その結果、基板面のコーティングを形成する細粒状の粉末が、当該基板面上に比較的冷えて到達する。それ故に、本発明のビーム発生器は、特に温度に敏感な基板面の粉末コーティング法に対しても適している。
【0020】
特に、粉末用の流入口は、ビーム発生器の中空シリンダ状の被筒の、環状電極の方向に円錐形に先細りしている部材に存在する。基板の温度は、細粒状の粉末でコーティングする工程中及び当該工程後は、明らかに100℃の下にある。それにもかかわらず、本発明のビーム発生器を使用した場合は、コーティングされた粉末が良好に付着する。基板面は、特別な前処理を必要としない。当該表面は、ビーム発生器のプラズマビーム自体によって洗浄される。当該粉末は、例えば保護膜、磨耗膜又は絶縁膜のような機能膜としてコーティングされる、例えば金属、セラミック、熱可塑性樹脂又はこれらの混合物である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のビーム発生器の第1の実施の形態の概略図である。
【図2】本発明のビーム発生器の第2の実施の形態を示す。
【図3】本発明のビーム発生器の第3の実施の形態を示す。
【図4】本発明のビーム発生器の電圧源の電圧及び電流の経時変化の概略図である。
【図5】基板面を粉末コーティングするための本発明のビーム発生器の第4の実施の形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
束縛されたプラズマビーム(2)を生成させるためのビーム発生器(1)は、ワーキングガス(3)の流れの中に配置された2つの電極(4,5)及びこれらの電極(4,5)の間に電圧を発生させる電圧源(6)を有する。ワーキングガス(3)が、中空シリンダ状の被筒(7)内で流れる。電極(4,5)が、この被筒(7)によって包囲されている中空空間内に互いに距離(8)をあけて配置されている。
【0023】
電圧源(6)は、入力電圧、特に電源用のプラグ(10)及びスイッチング電源装置(9)内で変換された電圧用の2つの出力部(11,12)を有するこのスイッチング電源装置(9)を備える。コンデンサ(13)が、これらの出力部(11,12)に対して並列に接続されている。このコンデンサ(13)は、充電抵抗器とも呼ばれる抵抗(14)を介してスイッチング電源装置(9)に接続されている。
【0024】
スイッチング電源装置(9)内では、プラグ(10)に接続している電源が、最初に整流器(15)によって整流される。引き続き、遥かにより高い周波数の交流電圧が、変圧器(17)の1次巻線に供給される前に、直流電圧が、インバータとも呼ばれる逆変換器(16)によって当該遥かにより高い周波数の交流電圧に変換される。変圧器(17)の2次側で電源電圧に比べて高く昇圧されている電圧が、別の整流器(18)に供給される。この整流器(18)は、変圧された交流電圧を整流する。
【0025】
以下に、本発明のビーム発生器(1)の動作方式を図4に関連して詳しく説明する。
図4は、電圧/時間グラフ中の左半分の図中に電圧インパルス(21)の経時変化を示し、当該図の下に図示された電流/時間グラフ中に本発明のビーム発生器(1)のプラズマの中で生じる電流の経時変化を示す。
【0026】
電極(4,5)間にアークを形成するための点弧電圧(19)が、これらの電極(4,5)間に印加されるまで、スイッチング電源装置(9)によって出力されている電力が、最初にコンデンサ(13)によって充電される。点弧電圧(19)に達した時に、電極(4,5)間の空隙(8)が電気伝導可能になり、図4中の電流/時間グラフから分かるように、コンデンサ(13)内に充電された全てのエネルギーが、約10ns内に放出する。この場合、電極(4,5)間の電圧が急降下し、0ボルトに近い下の値に低下する。
点弧電圧(19)に達すると共に、最大電流(20)が、電極(4,5)間のアークの中で流れる。当該アークを維持するため、不足分の電流(電荷)が、スイッチング電源装置(9)から抵抗(14)を通じて持続して流れる。このため、電極(4,5)間のアークを通じて同時に流出するより少ない電力が、当該スイッチング電源装置からコンデンサ(13)に流れるように、抵抗(14)が仕様決定されている。この抵抗(14)の当該仕様決定の結果、アークが、次の電圧インパルス(21)の点弧電圧(19)の到達によって再び点弧される前に、アークが、前後して続く2つの電圧インパルス間ごとに消弧する。当該パルス周波数は、特に1kHz〜100kHzの範囲内にあり、図示された実施の形態では60kHzである。
【0027】
図2は、本発明のビーム発生器(1)の別の実施の形態を示す。このビーム発生器(1)は、図1によるビーム発生器(1)と一致するので、一致しない構成部分を説明する。相違点は、被筒(7)内の電極の配置に関して生じる。第1電極は、ピン電極(22)として形成されている。その一方で、この第1電極に対して距離(8)をあけて配置された第2電極は、環状電極(23)として形成されている。電気伝導性の材料から成る被筒(7)は、ピン電極(22)に対して同心円状に配置されていて且つこのピン電極(22)に対して絶縁されている。ワーキングガス(3)用の供給部(24)が、環状電極(23)に対向する前面に配置されている。ワーキングガス(3)用のこの供給部は、当該前面側から中空シリンダ状の被筒(7)内に差し込まれてピン電極(22)を保持する電気絶縁材料から成るシース(25)を有する。螺旋形部材として形成されたウェブ(26)が、このシース(25)の表面に沿って配置されている。このウェブ(26)は、中空シリンダ状の被筒(7)の内壁(27)とシース(25)の表面(28)との間にワーキングガス(3)用の流路を形成する。したがって、当該螺旋形部材を進行するワーキングガスが、ピン電極(22)と被筒(7)の内壁(27)との間の環状空間内に渦流状に流入する。この渦流は、プラズマビーム(2)を特に有益に束ねて誘導させる。このプラズマビーム(2)は、ピン電極(22)に沿って環状電極(23)の方向に進行してこの環状電極(23)を通過する。
【0028】
図3aは、図2に対応するビーム発生器(1)を示す。この図3aの場合、スイッチング電源装置(9)は、分かり易いように1つの記号だけによって示されている。この実施の形態の場合、図3bから分かるように、電極(22)をスイッチング電源装置(9)に接続させている電線(29)が、絶縁体(30)によって包囲されることによって、コンデンサが形成される。電気伝導性の遮蔽体(32)が、少なくとも部分長(31)上でこの絶縁体(30)を包囲する。この遮蔽体(32)は、スイッチング電源装置(9)と別の電極(23)との間の電気伝導性の接続部分の構成要素である。同様に、外側の絶縁体(33)が、この遮蔽体(32)を包囲する。
【0029】
図3c中には、遮蔽体(32)と電線(29)とによって構成されたコンデンサ(34)が、等価回路図として示されている。抵抗(14)を介してスイッチング電源装置(9)に接続されているコンデンサが、部分的に遮蔽されたケーブルによってこのスイッチング電源装置の出力部に対して並列に接続されていることが分かる。
【0030】
最後の図5は、図2及び3に対応するビーム発生器(1)を示す。このビーム発生器(1)は、基板面(35)を微粒状の粉末でコーティングするために仕様決定されている。中空シリンダ状の被筒(7)は、その前面に環状電極(23)の方向に円錐形に先細りしている部材(36)を有する。2つの流入口(37)が、この部材(36)内に配置されている。微粒状の粉末用の導管(38)が、これらの両流入口(37)の各々に当接している。粉末流/ガス流(39)が、この導管(38)に供給される。当該粉末粒子(40)が、流入口(37)を経由してプラズマビーム(2)中に達する。当該粉末粒子(40)は、プラズマビーム(2)と一緒に環状電極(23)を通過してビーム発生器(1)から離れる。基板面(35)に指向されたノズル口(41)を有するビーム発生器(1)が、方向(42)に沿って移動されることによって、粉末粒子(40)が、この基板面(35)上に沈着される。この基板面上の沈着層(43)が、図5中に示されている。
【符号の説明】
【0031】
1 ビーム発生器
2 プラズマビーム
3 ワーキングガス
4 電極
5 電極
6 電圧源
7 被筒
8 距離、空隙
9 スイッチング電源装置
10 プラグ
11 出力部
12 出力部
13 コンデンサ
14 抵抗
15 整流器
16 逆変換器
17 変圧器
18 整流器
19 点弧電圧
20 最大電流
21 電圧インパルス
22 ピン電極
23 環状電極
24 供給部
25 シース
26 ウェブ
27 内壁
28 表面
29 電線
30 絶縁体
31 部分長
32 遮蔽体
33 外側の絶縁体
34 コンデンサ
35 基板面
36 円錐形部材
37 流入口
38 導管
39 粉末流/ガス流
40 粉末粒子
41 ノズル口
42 方向
43 沈着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流れるワーキングガスを供給しながらアーク放電によって束縛されたプラズマビームを生成させるための、前記ワーキングガスの流れの中で互いに距離をあけて配置された2つの電極及びこれらの2つの電極間に電圧を発生させる電圧源を有するビーム発生器において、
前記電圧源(6)は、アーク放電のための点弧電圧(19)とパルス周波数とを有する電圧パルスを生成し、この電圧パルスは、前後して続く2つの電圧インパルス(21)間ごとにアークを消弧することができることを特徴とするビーム発生器。
【請求項2】
前記パルス周波数は、10kHz〜100kHzの範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載のビーム発生器。
【請求項3】
前記パルス周波数は、20kHz〜70kHzの範囲内にあることを特徴とする請求項2に記載のビーム発生器。
【請求項4】
前記点弧電圧(19)に達した後に、10アンペア〜1000アンペアの程度の最大の電流の強さ(20)を有する電流が、1ナノ秒〜1000ナノ秒の期間に両前記電極(4,5)間で流れることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のビーム発生器。
【請求項5】
前記点弧電圧(19)は、1kV〜10kVであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のビーム発生器。
【請求項6】
前記電圧源(6)は、入力電圧用のプラグ(10)及び電源内で変換された前記入力電圧用の2つの出力部(11,12)を有する前記電源を備え、少なくとも1つのコンデンサ(13)が、これらの出力部に対して並列に接続されていて、このコンデンサ(13)は、少なくとも1つの抵抗(14)を介して前記電源に接続されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のビーム発生器。
【請求項7】
前記電源は、スイッチング電源装置(9)であることを特徴とする請求項6に記載のビーム発生器。
【請求項8】
前記電極(22,23)を前記電源(9)に接続する電線(29)のうちの1つの電線が、絶縁体(30)によって包囲され、電気伝導性の遮蔽体(32)が、少なくとも部分長(31)上で前記絶縁体(30)を包囲し、前記遮蔽体(32)は、前記電源(9)と別の前記電極(23)との間の電気伝導性の別の接続部分の構成要素であり、外側の絶縁体(33)が、前記遮蔽体(32)を包囲することを特徴とする請求項6又は7に記載のビーム発生器。
【請求項9】
前記コンデンサ(13,29,30,32)の容量は、10nF〜200μFの範囲内にあることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載のビーム発生器。
【請求項10】
一方の電極が、ピン電極(22)として形成されていて、他方の電極が、環状電極(23)として形成されていて、
前記ピン電極に対して絶縁された電気伝導性材料から成る被筒(7)が、このピン電極(22)に対して同心円状に配置されていて、
前記環状電極(23)が、前記被筒(7)の一方の前面に配置されていて、この環状電極(23)は、ノズル口(41)を画定し、このノズル口(41)の直径は、中空シリンダ状の前記被筒の直径より小さく、
前記ワーキングガス(3)用の供給部(24)が、前記被筒(7)の対向する前面に配置されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のビーム発生器。
【請求項11】
前記ワーキングガス(3)用の前記供給部(24)は、前記ワーキングガスの渦流を発生させるための手段を有することを特徴とする請求項10に記載のビーム発生器。
【請求項12】
前記ワーキングガス(3)の渦流を発生させるための前記手段は、中空シリンダ状の前記被筒(7)の前面に差し込まれて前記ピン電極(22)を保持する電気絶縁性の材料から成るシース(25)を有し、螺旋形部材として形成された少なくとも1つのウェブ(26)が、前記シース(25)の表面に沿って配置されていて、前記ウェブ(26)は、中空シリンダ状の前記被筒(7)の内壁(27)と前記シース(25)の表面(28)との間に前記ワーキングガス(3)用の流路を形成することを特徴とする請求項11に記載のビーム発生器。
【請求項13】
粉末を供給するための少なくとも1つの流入口(37)が、前記ノズル口(41)の領域内に配置されていることを特徴とする請求項10〜12のいずれか1項に記載のビーム発生器。
【請求項14】
中空シリンダ状の前記被筒(7)は、その前面に前記環状電極(23)の方向に円錐形に先細りしている部材(36)を有し、各流入口(37)は、前記部材(36)内に配置されていることを特徴とする請求項13に記載のビーム発生器。
【請求項15】
前記ワーキングガスの流れの中で互いに距離をあけて配置された2つの電極間のアーク放電によって流れているこのワーキングガス中にプラズマビームを生成するための方法において、
アーク放電のための点弧電圧とパルス周波数とを有する電圧パルスが生成され、前記電圧パルスは、前後して続く2つの電圧インパルス(21)間ごとにアークを消弧することができることを特徴とする方法。
【請求項16】
前記ワーキングガスの流れの中で前後して距離をあけて配置された2つの電極間のアーク放電によって流れているこのワーキングガス中にプラズマビームを生成するための方法において、
アーク放電のための点弧電圧とパルス周波数とを有する電圧パルスが生成され、前記電圧パルスは、前後して続く2つの電圧インパルス(21)間ごとにアークを消弧することができることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3a)】
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【図3b)】
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【図3c)】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−522888(P2012−522888A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502577(P2012−502577)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【国際出願番号】PCT/EP2010/053816
【国際公開番号】WO2010/112378
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(511153367)ラインハウゼン・プラスマ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (2)
【Fターム(参考)】