説明

杭の健全性診断方法、掘削装置、杭の損傷検出装置

【課題】既設基礎杭の健全性を診断するにあたり、掘削壁面を保護しつつ掘削土砂を低減できるようにする。
【解決手段】既設地上構造物1の周囲の地上から、既設地上構造物の下部に位置する基礎杭2に達するように削孔を行うとともに、孔内にケーシング13を設置し、しかる後、ケーシング13内を通して基礎杭2側面に損傷検出装置30を導入設置し、この損傷検出装置30により基礎杭2の側面から打撃を与えるとともに打撃開始時間及び反射波の到達時間を計測して損傷を検出し、杭の健全性を診断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地上から既設構造物の基礎杭の健全性を診断する方法、ならびにこれに公的に用いられる掘削装置および杭の損傷検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばビルの建替えに際しては、古いビルの既設基礎杭の健全性を診断し、再利用の可能性を調査することが行われる。新設の基礎杭や完全に解体したビルの基礎杭のように杭頭部が露出した状態の杭に対しては、その杭の露出部分に打撃を与えるとともに打撃開始時間及び反射波の到達時間を計測して、地中での破損状況を診断することが行われる(例えば特許文献1参照)。
一方、既設ビルの基礎杭を対象として健全性を診断する場合には、既設基礎杭の頭部が露出するように周囲地盤を3m程度開削し、杭の側面を露出させた後、計測員が開削部の中に入って計測するといった方法がとられている。
しかしながら、この場合、掘削壁面の保護や、掘削土砂の処理などの点で問題点があった。
【特許文献1】特開2002−296253号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明の主たる課題は、既設基礎杭の健全性を診断するにあたり、掘削壁面を保護しつつ掘削土砂を低減できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
既設地上構造物の周囲の地上から、既設地上構造物の下部地盤に位置する基礎杭に達するように削孔を行うとともに、孔内にケーシングを設置する、掘削工程と、
前記ケーシング内を通して基礎杭側面に損傷検出装置を導入設置し、この損傷検出装置により基礎杭側面から打撃を与えるとともに打撃開始時間及び反射波の到達時間を計測して損傷を検出する、計測工程とを含む、
ことを特徴とする杭の健全性診断方法。
【0005】
(作用効果)
本発明では、削孔により基礎杭の側面に達する孔を設けるとともに、孔内にケーシングを設置した後、ケーシング内を介して弾性波による損傷検出を行うため、掘削壁面の保護により計測作業を容易化しつつ、従来の開削と比べて掘削土砂を著しく低減できるようになるものである。
【0006】
<請求項2記載の発明>
前記掘削工程において、前記ケーシング内にオーガーを挿入した状態で、孔内に削孔水を供給せずに、オーガーを回転させて削孔しつつケーシングを挿入するとともに、オーガーによりケーシングの基端側に掘削土砂を移送して地上に排出させる、請求項1記載の杭の健全性診断方法。
【0007】
(作用効果)
このように、掘削に際して削孔水を供給せずに、オーガーを利用して掘削土砂を地上に排出させることで、掘削土砂の排出量を最小限度にすることができる。
【0008】
<請求項3記載の発明>
前記掘削工程において、前記オーガー内を通じてオーガー先端から検知ロッドを手動で突出させるとともに、この検知ロッド内を通じて検知ロッドの先端から削孔水を噴射させ、検知ロッドの先端が基礎杭の側面に突き当たるか否かを調べることによって、基礎杭の位置を確認する、請求項2記載の杭の健全性診断方法。
【0009】
(作用効果)
オーガーにより削孔を行う場合、オーガー先端を基礎杭に衝突させてしまうと杭を損傷させてしまうため、本項記載のように検知ロッドを手動で突出させて、杭の位置を確認するのが好ましい。
【0010】
<請求項4記載の発明>
前記掘削工程において、前記基礎杭の近傍まで前記オーガー及びケーシングを挿入した後、ケーシング前方に削孔水を噴射させて、前記ケーシング先端から基礎杭側面までの地盤を切削した後、切削部分の泥水を地上から吸引除去し、ケーシング先端から基礎杭側面までの検出装置進入スペースを形成する、請求項2または3記載の杭の健全性診断方法。
【0011】
(作用効果)
オーガーにより削孔を行う場合、杭の近傍まで削孔することはできても、杭の損傷のおそれなしに杭の側面を露出させることは極めて困難である。そこで、本項記載のように、杭近傍までオーガーで削孔した後は、ケーシング前方への削孔水噴射および泥水の除去により、ケーシング先端から基礎杭側面まで到達する検出装置進入スペースを形成すると、杭の損傷のおそれ無しに、基礎杭外面に対する計測が可能になるため好ましい。なお、本項の削孔水の噴射は、例えばオーガーの先端から行う他、これとともに或いはこれに代えて前述の検知ロッドの先端からの噴射を利用して行うこともできる。
【0012】
<請求項5記載の発明>
前記泥水の吸引に際して、前記ケーシングを残して前記オーガーを引き抜いた後、
地上から前記ケーシング内を介して泥水部位まで吸引管を挿入し、この吸引管を介して前記吸引を行う、請求項4記載の杭の健全性診断方法。
【0013】
(作用効果)
泥水の吸引は、オーガー内を介して行っても良いが、狭いスペースに泥水を通すと異物が詰まるおそれがあるため、本項記載のようにオーガーを引き抜いた後に、吸引管を別途挿入して吸引を行うのが好ましい。
【0014】
<請求項6記載の発明>
前記掘削工程において、前記基礎杭の側面に水を衝突させて基礎杭の側面を洗浄する、請求項2〜5のいずれか1項に記載の杭の健全性診断方法。
【0015】
(作用効果)
本発明は、露出した基礎杭の側面で損傷検出を行う。このため、基礎杭の側面に土砂が付着していると、土砂を介して打撃を与え、土砂を介して反射波の検出を行うことになり、計測精度が低下するおそれがある。そこで、本項記載のように、予め水により洗浄するのは非常に好ましい。なお、本項の洗浄は、前述の検出装置進入スペースの形成を目的とした削孔水の噴射を利用しても、またこれと別に行うこともできる。
【0016】
<請求項7記載の発明>
前記損傷検出装置は、地上から基礎杭近傍に達する支持軸と、この支持軸の先端部に設けられた計測部とを備えており、
この計測部は前記基礎杭の側面に押し付けられる押付板と、この押付板に取り付けられた加速度センサーと、前記押付板に打撃を与えるハンマーとを有しており、
前記計測工程において、前記支持軸を支持して前記計測部を前記ケーシング内に挿入して、前記計測部の押付板を基礎杭側面に押し当てた後、この状態で前記ハンマーにより打撃を与えるとともに加速度センサーにより加速度を測定し、この加速度測定結果に基づいて打撃開始時間及び反射波の到達時間を計測して損傷を検出する、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の杭の健全性診断方法。
【0017】
(作用効果)
このように支持軸の先端部に計測部を備えることにより、地上から支持軸を操作して、計測部を孔内を通じて計測部位に接近させて計測を行うことができ、計測が非常に容易になるとともに、孔の小径化及びそれによる掘削土砂の更なる低減を図ることができるようになる。
【0018】
<請求項8記載の発明>
前記計測工程において、前記支持軸の先端部をケーシングに対して固定するとともに、この支持軸の先端部に対して前記計測部を基礎杭側面に向けて押し付けることにより、前記押付板の基礎杭側面への押し当てを行う、請求項7記載の杭の健全性診断方法。
【0019】
(作用効果)
本項記載のように予め支持軸の先端をケーシングに固定し、これに反力をとって計測部の押付板を基礎杭側面に押し付けることで、容易かつ確実に検出を行うことができるようになる。
【0020】
<請求項9記載の発明>
前記押付板の押し付け面に突起が設けられている、請求項7または8記載の杭の健全性診断方法。
【0021】
(作用効果)
このような突起を有することで、杭表面に多少の土砂が付着していても、また洗浄を行う場合には洗浄が多少不十分であっても、打撃の伝達や反射波の計測をより正確に行うことができるようになる。
【0022】
<請求項10記載の発明>
前記ハンマー部と押付板とが緩衝材を介して連結されている、請求項7〜9のいずれか1項に記載の杭の健全性診断方法。
【0023】
(作用効果)
本項記載のような連結構造を有することにより、ハンマー及び押付板を一体化してコンパクトな装置構成にしても、効果的な打撃が可能になる。
【0024】
<請求項11記載の発明>
回転及び進退自在に支持されたオーガーと、
内部に前記オーガーが挿入され、オーガーとともに進退自在に支持されたケーシングと、
前記オーガー内を貫通してオーガー先端から手動で突出させうるように設けられた検知ロッドと、
この検知ロッドの先端に設けられた削孔水の噴射孔と、
を備えたことを特徴とする掘削装置。
【0025】
(作用効果)
請求項2及び請求項3記載の発明と同様の作用効果が奏せられる。
【0026】
<請求項12記載の発明>
前記オーガーの先端に、軸方向に対して斜め前方に削孔水を噴射する噴射孔を備えた、請求項11記載の掘削装置
【0027】
(作用効果)
請求項4記載の発明と同様の作用効果が奏せられる。特に、本項記載のような噴射孔を備えることにより、より容易に前述の検出装置進入スペースを形成することができる。
【0028】
<請求項13記載の発明>
支持軸と、この支持軸の先端部に設けられた計測部とを備え、
前記計測部は、杭の側面に押し付けられる押付板と、この押付板に取り付けられた加速度センサーと、前記押付板に打撃を与えるハンマーとを有し、
前記押付板を杭側面に押し当てた状態で前記ハンマーにより打撃を与えるとともに加速度センサーにより加速度を測定し、この加速度測定結果に基づいて打撃開始時間及び反射波の到達時間を計測して損傷を検出するように構成した、
ことを特徴とする杭の損傷検出装置。
【0029】
(作用効果)
請求項7と同様の作用効果が奏せられる。
【0030】
<請求項14記載の発明>
前記支持軸の先端部に、支持軸と直交する方向に伸張する固定シリンダーが設けられるとともに、前記支持軸の先端部に対して前記計測部を前方に向けて押し付ける押付シリンダー装置が設けられている、請求項13記載の杭の損傷検出装置。
【0031】
(作用効果)
請求項8と同様の作用効果が奏せられる。
【0032】
<請求項15記載の発明>
前記押付板の押し付け面に突起が設けられている、請求項13または14記載の杭の損傷検出装置。
【0033】
(作用効果)
請求項9と同様の作用効果が奏せられる。
【0034】
<請求項16記載の発明>
前記ハンマー部と押付板とが緩衝材を介して連結されている、請求項13〜15のいずれか1項に記載の杭の損傷検出装置。
【0035】
(作用効果)
請求項10と同様の作用効果が奏せられる。
【発明の効果】
【0036】
以上のとおり本発明によれば、掘削壁面を保護しつつ掘削土砂を低減できる等の利点がもたらされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照しながら詳説する。
図1は、本発明に係る診断方法における掘削工程の断面図を示しており、ビル等の既設地上構造物1の周囲の地上に設置した削孔装置10により、既設地上構造物1の下部地盤の基礎杭2に達するように斜めに削孔を行っている。
【0038】
削孔装置10は、図2及び図3にも示すように、ベースマシン11により回転及び進退自在に支持されたオーガー12と、このオーガー12が内空に同軸的に挿入され、オーガーとともに進退自在に支持されたケーシング13とを備えている。符号11Mはオーガー12を回転させるためのモーターを示している。
【0039】
ケーシング13は円筒体であり、基端部の側面に、内外に連通する排土口13hが形成されている。先端周縁にビットを有するケーシングを用いることもでき、この場合ケーシングも回転駆動することができる。
【0040】
オーガー12は、回転軸12aの先端部にビット12bが取り付けられるとともに、その基端側のケーシング13内部分の実質的に全体が、ケーシング13内面に近接もしくは接触する螺旋羽根12wが設けられたスクリュー軸とされているものである。螺旋羽根12wは回転軸12aの先端側部分にだけ設けるようにしても良い。
【0041】
回転軸12aは筒状の中空軸であり、内空に検知ロッド14が貫通されている。回転軸12aの内面と検知ロッド14外面との隙間12dは、回転軸12aの先端に形成された斜め前方を臨む傾斜噴射口12jに連通されており、基端はスイベル12sを介して図示しないポンプ等の水供給手段に連通されている。
【0042】
検知ロッド14は、先端にビット14bを有する中空軸であり、内空の先端は軸方向前方を臨む前方噴射口14jに連通されており、基端はオーガー12の基端から突出し、この突出部分に設けられたスイベル14sを介して図示しないポンプ等の水供給手段に連通されている。また、検知ロッド14は、その基端露出部分を作業員が手で抜き差しすることにより、オーガー12の先端から突出及び引き戻しができるようになっており、引き戻し状態では回転軸12aに対してピンやボルト等の固定手段により一体化することができる。この引き戻し状態では、検知ロッド14の先端ビット14bはオーガー12の先端ビットとして機能する。
【0043】
削孔に際しては、いわゆるケーシング掘削となる。すなわち、ケーシング13の先端からオーガー12先端を突出させた状態で、両噴射孔から削孔水を供給せずに、オーガー12を回転させ基礎杭に向けて削孔しつつケーシング13を回転挿入する。この際、掘削土砂はオーガー12の螺旋羽根によりケーシング13内に取り込まれて基端側に順次移送され、ケーシング13基端部の排土口13hを介して地上に排出される。排土口13hにはホースを連結しておき、近傍に設置した図示しない排土槽に排出させても良い。排土口13hに図示しない吸引ポンプを接続して排土を吸引により抜き出すこともできる。また、回転軸12aの先端側にのみ螺旋羽根12wを設けたオーガー12を用いる場合、ケーシング13内に溜まった土砂を排出するために、ある程度の時点でもしくは掘削完了後に、ケーシング13をそのままの位置に保持した状態でオーガー12を引き抜くことができ、掘削完了前であれば再度オーガー12を挿入して掘削を再開することができる。
【0044】
ベースマシン11のストローク量等を確認しながら、オーガー12をある程度まで挿入したならば、図4に示すように、オーガー12の先端から検知ロッド14を手動で突出させるとともに、この検知ロッド14の先端から削孔水を噴射させ、検知ロッド14の先端が基礎杭2の側面に突き当たるか否かを調べることによって、基礎杭2の位置を確認する。地盤が軟らかい場合等、必要に応じて検知ロッド14先端から削孔水を噴射させずに位置確認することもできる。基礎杭2の近傍まで到達していない場合には到達するまでオーガー12による削孔及び検知ロッド14による位置確認を繰り返し行う。
【0045】
基礎杭2の近傍まで到達していれば、次いで、図5に示すように、オーガー12を回転させながら傾斜噴射口12jおよび前方噴射口14jから削孔水を噴射させることによって、ケーシング13先端から基礎杭2の側面までの地盤をケーシング13と同程度の径で切削する。この際、基礎杭2の側面に水を衝突させて基礎杭2の側面の洗浄も行う。
【0046】
切削・洗浄を終えたならば、ケーシング13をそのままの位置に残してオーガー12を引き抜く。図6に示すように、オーガー12を引き抜いた後には、ケーシング13内から基礎杭2の側面までの部分に、切削により発生した泥水Mが残留している。
【0047】
続いて、図7に示すように、図示しない吸引ポンプに接続したホース等の吸引管15を、地上からケーシング13内を介して基礎杭2近傍まで挿入し、残留泥水Mの吸引除去を行う。吸引管15及び吸引ポンプに代えて、水中ポンプを用いて残留泥水の吸引除去を行うことができる。これにより、ケーシング13先端から基礎杭2側面までの検出装置進入スペース20が形成され、このスペース20及びケーシング13により、既設地上構造物1の周囲の地上から基礎杭2に達する孔が形成される。
【0048】
次いで、図8に示すように、この孔を介して基礎杭2側面に損傷検出装置30を導入設置し、損傷検出を行う。損傷検出装置30は、基礎杭側面から打撃を与えるとともに打撃開始時間及び反射波の到達時間を計測するものである。図8に示される損傷検出装置例30は特に好ましい形態のものであり、図9にも示すように、地上から基礎杭2近傍に達する長さを有する支持軸31と、支持軸31の先端部に設けられた計測部40とを備えているものである。
【0049】
支持軸31の先端部には、支持軸31と直交する方向に伸張する固定シリンダー32が設けられている。固定シリンダー32のピストンロッド33先端には当接板34がリンク軸を介して回動自由に取り付けられている。固定シリンダー32の伸張方向反対側にはシリンダーを介さずに当接板34がリンク軸を介して回動自由に取り付けられている。図10に示すように、支持軸31の先端部の両側のそれぞれに、固定シリンダー32を介して当接板34を設けても良い。
【0050】
支持軸31の先端部は、押付シリンダー35のシリンダー部により構成されており、そのピストンロッド36は軸方向に沿って突出するようになっている。
【0051】
計測部40は、基部41と、基部41の前方に離間し且つ基部41に対してゴム等の緩衝材42を介して前後動可能に連結された押付板43と、この押付板43の背面に取り付けられた加速度センサー44と、基部41に取り付けられ、押付板43の背面に打撃を与えるハンマー45とを備えている。計測部40は、基部41において、支持軸31先端部の押付シリンダー35のピストンロッド38先端部に、リンク軸を介して回動自由に取り付けられているものである。押付板43の前面は基礎杭2に押し当てられる面であり、所定の間隔及び配列で多数の突起43pが設けられている。
【0052】
なお、図には示していないが、加速度センサー44のための電源ケーブル、信号ケーブル類や、シリンダーやハンマーを作動させるための、エアーコンプレッサー等の圧縮空気供給手段あるいは油圧供給手段を備えていることはいうまでもない。
【0053】
計測に際しては、地上から支持軸31を操作して、計測部40をケーシング13内を通じて検出装置進入スペース内に進入させ、杭2の側面に近接もしくは軽く接触させた後、先ず固定シリンダー32を伸張させ、両当接板34をケーシング13の内面に押し当てて突っ張り、支持軸31の先端部をケーシング13の先端部内面に対して固定する。続いて、押付シリンダー35を伸張させることにより、固定された支持軸31の先端部に対して計測部40を押し出し、計測部40先端の押付板43を杭2表面に押し当てる。この際、押付板43に突起43pが設けられていることにより、杭表面に多少の土砂が付着していても、これを避けて押付板43を杭2表面に接触させ易くなり、打撃の伝達や反射波の計測をより正確に行うことができるようになる。
【0054】
押付板43を杭2表面に押し当てたならば、その状態でハンマーにより押付板43に打撃を与えるとともに加速度センサー44により加速度を測定し、記録する。そして、この加速度測定結果を解析し、打撃開始時間及び反射波の到達時間に基づき杭の長さや損傷箇所を特定することができる。かくして、既設地上構造物1の周囲の地上から、地上構造物1の下部にある基礎杭2の健全性を遠隔的に診断することができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、既設地上構造物の基礎杭の健全性の診断に好適なものである。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】掘削工程を示す断面図である。
【図2】図1の要部拡大断面図である。
【図3】図1の要部拡大断面図である。
【図4】検知工程の要部拡大断面図である。
【図5】検出装置進入スペース形成工程を示す要部拡大断面図である。
【図6】オーガー引き抜き後の状態を示す要部拡大断面図である。
【図7】残留泥水吸引工程を示す要部拡大断面図である。
【図8】計測工程を示す要部拡大断面図である。
【図9】損傷検出装置を示す要部拡大図である。
【図10】損傷検出装置を示す要部拡大図である。
【符号の説明】
【0057】
1…既設地上構造物、2…基礎杭、10…削孔装置、11…ベースマシン、12…オーガー、13…ケーシング、14…検知ロッド、15…吸引管、20…検出装置進入スペース、30…損傷検出装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設地上構造物の周囲の地上から、既設地上構造物の下部地盤に位置する基礎杭に達するように削孔を行うとともに、孔内にケーシングを設置する、掘削工程と、
前記ケーシング内を通して基礎杭側面に損傷検出装置を導入設置し、この損傷検出装置により基礎杭側面から打撃を与えるとともに打撃開始時間及び反射波の到達時間を計測して損傷を検出する、計測工程とを含む、
ことを特徴とする杭の健全性診断方法。
【請求項2】
前記掘削工程において、前記ケーシング内にオーガーを挿入した状態で、孔内に削孔水を供給せずに、オーガーを回転させて削孔しつつケーシングを挿入するとともに、オーガーによりケーシングの基端側に掘削土砂を移送して地上に排出させる、請求項1記載の杭の健全性診断方法。
【請求項3】
前記掘削工程において、前記オーガー内を通じてオーガー先端から検知ロッドを手動で突出させるとともに、この検知ロッド内を通じて検知ロッドの先端から削孔水を噴射させ、検知ロッドの先端が基礎杭の側面に突き当たるか否かを調べることによって、基礎杭の位置を確認する、請求項2記載の杭の健全性診断方法。
【請求項4】
前記掘削工程において、前記基礎杭の近傍まで前記オーガー及びケーシングを挿入した後、前記ケーシング前方に削孔水を噴射させて、前記ケーシング先端から基礎杭側面までの地盤を切削した後、切削部分の泥水を地上から吸引除去し、ケーシング先端から基礎杭側面までの検出装置進入スペースを形成する、請求項2または3記載の杭の健全性診断方法。
【請求項5】
前記泥水の吸引に際して、前記ケーシングを残して前記オーガーを引き抜いた後、
地上から前記ケーシング内を介して泥水部位まで吸引管を挿入し、この吸引管を介して前記吸引を行う、請求項4記載の杭の健全性診断方法。
【請求項6】
前記掘削工程において、前記基礎杭の側面に水を衝突させて基礎杭の側面を洗浄する、請求項2〜5のいずれか1項に記載の杭の健全性診断方法。
【請求項7】
前記損傷検出装置は、地上から基礎杭近傍に達する支持軸と、この支持軸の先端部に設けられた計測部とを備えており、
この計測部は前記基礎杭の側面に押し付けられる押付板と、この押付板に取り付けられた加速度センサーと、前記押付板に打撃を与えるハンマーとを有しており、
前記計測工程において、前記支持軸を支持して前記計測部を前記ケーシング内に挿入して、前記計測部の押付板を基礎杭側面に押し当てた後、この状態で前記ハンマーにより打撃を与えるとともに加速度センサーにより加速度を測定し、この加速度測定結果に基づいて打撃開始時間及び反射波の到達時間を計測して損傷を検出する、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の杭の健全性診断方法。
【請求項8】
前記計測工程において、前記支持軸の先端部をケーシングに対して固定するとともに、この支持軸の先端部に対して前記計測部を基礎杭側面に向けて押し付けることにより、前記押付板の基礎杭側面への押し当てを行う、請求項7記載の杭の健全性診断方法。
【請求項9】
前記押付板の押し付け面に突起が設けられている、請求項7または8記載の杭の健全性診断方法。
【請求項10】
前記ハンマー部と押付板とが緩衝材を介して連結されている、請求項7〜9のいずれか1項に記載の杭の健全性診断方法。
【請求項11】
回転及び進退自在に支持されたオーガーと、
内部に前記オーガーが挿入され、オーガーとともに進退自在に支持されたケーシングと、
前記オーガー内を貫通してオーガー先端から手動で突出させうるように設けられた検知ロッドと、
この検知ロッドの先端に設けられた削孔水の噴射孔と、
を備えたことを特徴とする掘削装置。
【請求項12】
前記オーガーの先端に、軸方向に対して斜め前方に削孔水を噴射する噴射孔を備えた、請求項11記載の掘削装置
【請求項13】
支持軸と、この支持軸の先端部に設けられた計測部とを備え、
前記計測部は、杭の側面に押し付けられる押付板と、この押付板に取り付けられた加速度センサーと、前記押付板に打撃を与えるハンマーとを有し、
前記押付板を杭側面に押し当てた状態で前記ハンマーにより打撃を与えるとともに加速度センサーにより加速度を測定し、この加速度測定結果に基づいて打撃開始時間及び反射波の到達時間を計測して損傷を検出するように構成した、
ことを特徴とする杭の損傷検出装置。
【請求項14】
前記支持軸の先端部に、支持軸と直交する方向に伸張する固定シリンダーが設けられるとともに、前記支持軸の先端部に対して前記計測部を前方に向けて押し付ける押付シリンダー装置が設けられている、請求項13記載の杭の損傷検出装置。
【請求項15】
前記押付板の押し付け面に突起が設けられている、請求項13または14記載の杭の損傷検出装置。
【請求項16】
前記ハンマー部と押付板とが緩衝材を介して連結されている、請求項13〜15のいずれか1項に記載の杭の損傷検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−271587(P2007−271587A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−101077(P2006−101077)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(595144880)
【出願人】(506111631)
【Fターム(参考)】