説明

杭の拡底部材の拡大確認装置及び拡大確認方法

【課題】杭の拡底部材が孔底拡開部内で拡大しているか否かを確認することができる拡底部材の拡大確認装置及び拡大確認方法を提供する。
【解決手段】杭14の下端に設けられている拡底部材1が径方向外側に拡大したか否かを確認するための拡底部材1の拡大確認装置Sであって、一端部20aが拡底部材1の拡底板5に接続され、他端部20bが杭14の軸方向の中空部14aを通って杭14の上端まで延びるワイヤ20と、他端部20bが接続され、他端部20bの下方への移動量Pを測定する測定手段30とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭の下端に設けられる拡底部材が径方向外側に拡大したか否かを確認するための拡底部材の拡大確認装置及び拡大確認方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物、構造物等を支持する基礎杭には、構造物等を支える支持力のほか、地震等による外力に対する引き抜き抵抗が要求される。そのため従来から、杭径よりも大きな拡底部を杭の下端に設けた拡底杭が広く知られている。この場合、あらかじめ杭孔の底部に杭径よりも大きな直径をした孔底拡開部を掘削してから、この孔底拡開部内にセメントミルクあるいはコンクリート等を打設して拡底部を設ける。
【0003】
しかし、このようにして設けられた拡底部が無鉄筋の状態では、拡底杭が十分な支持力および引き抜き抵抗を備えることができない。そのため、杭径よりも大きくなるように拡大させることのできる拡底部材を杭の下端に設け、孔底拡開部内で当該拡底部材を拡大させてからセメントミルクあるいはコンクリートを打設して、拡底部材により補強された拡底部を設ける方法が公知である。
【0004】
例えば、特許文献1の拡底部材は、杭の下端部に上下1対のバンドを設け、バンド外周面の上下対称位置にそれぞれバンドの長さ方向に沿って湾曲する複数個のアームを、杭の断面方向から見てそれぞれ一端がヒンジを介して他端が杭外側方向へ回動するように開閉可能に軸着すると共に、それぞれ上下の対応するアーム間に杭の長さ方向に沿った複数本の縦筋を連結した構成である。また、特許文献2の拡底部材は、杭の下端に軸支された拡底板が、回転することにより杭の外周面より外側に突出するようにした構成である。
【0005】
特許文献1及び2に開示された拡底部材は、孔底拡開部内で拡大することにより拡底部を補強する効果を発揮するが、拡底部材が孔底拡開部内で実際に拡大しているか否かを確認する手段はこれまで知られていなかった。
【0006】
【特許文献1】特開平6−287943号公報
【特許文献2】特開2009−275401号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、杭の拡底部材が孔底拡開部内で拡大しているか否かを確認することができる拡底部材の拡大確認装置及び拡大確認方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。即ち、本発明に係る拡底部材の拡大確認装置は、杭の下端に設けられている拡底部材が径方向外側に拡大したか否かを確認するための拡底部材の拡大確認装置であって、一端部が拡底部材の拡大部に接続され、他端部が杭の軸方向の中空部を通って杭の上端まで延びるワイヤと、前記他端部が接続され、前記他端部の下方への移動量を測定する測定手段とを備えるものである。
【0009】
この構成によれば、ワイヤの一端部が拡底部材の拡大部に接続されているので、拡大部を径方向外側に拡大させると、一端部は径方向外側に引っ張られ、これに伴い、他端部も下方に引っ張られる。他端部は測定手段に接続されており、他端部の下方への移動量を測定することができる。このとき、拡底部材が完全に拡大した場合の拡大量は予め分かっているので、他端部の移動量が拡大量に相当すれば、拡底部材が完全に拡大していると判断でき、他端部の移動量が拡大量に満たなければ、拡底部材が正確に拡大していないと判断できる。その結果、本発明によれば、杭の拡底部材が孔底拡開部内で拡大しているか否かを確認することができる。
【0010】
上記において、前記測定手段は、杭の上端に脱着可能に連結される埋設ロッドに設けられていることが好ましい。
【0011】
埋設ロッドは、杭の上端に着脱可能に連結され、杭を杭孔に埋設し、拡底部材を拡大させる際に使用されるものである。この埋設ロッドに測定手段を設けることで、杭の埋設と拡底部材の拡大を行うとともに、拡底部材が孔底拡開部内で拡大しているか否かを容易に確認することができる。
【0012】
上記において、前記測定手段は、前記他端部が接続される検出体と、前記検出体を上方に付勢するバネと、前記検出体がバネに抗して下方へ移動する移動量を表示する表示手段とを備えることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、ワイヤの他端部は上方に付勢されており、ワイヤがたるむのを防止できるため、測定手段によって他端部の移動量を正確に測定でき、拡底部材の拡大の成否を正しく確認することができる。
【0014】
上記において、前記中空部を延びるワイヤを、杭の下端において径方向外側へ案内するガイドを備えることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、測定手段と拡底部材の拡大部とに接続されたワイヤの移動をスムーズにすることができるため、他端部の移動量を正確に測定でき、拡底部材の拡大の成否を正しく確認することができる。
【0016】
また、上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。即ち、本発明に係る拡底部材の拡大確認方法は、杭の下端に設けられている拡底部材が径方向外側に拡大したか否かを確認するための拡底部材の拡大確認方法であって、ワイヤの一端部を拡底部材の拡大部に接続するとともに、他端部を杭の軸方向の中空部を通して杭の上端まで延ばし、他端部の移動量を測定可能な測定手段に接続する工程と、杭を杭孔に埋設し、前記拡大部を拡大させる工程と、前記他端部の移動量を測定する工程と、を含むことを特徴とする。
【0017】
かかる構成による拡底部材の拡大確認方法の作用効果はすでに述べた通りであり、本発明によれば、杭の拡底部材が孔底拡開部内で拡大しているか否かを確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】拡底部材の拡大確認装置の使用状態の一例を示す斜視図
【図2】図1の部分断面図
【図3】拡底部材の外観構成を示す斜視図
【図4】拡底部材の構成を示す縦断面図
【図5】拡底板の形状を示す正面図
【図6】拡底板の姿勢変換を説明するための図
【図7】測定手段の正面図、平面図、及び側面図
【図8】拡底板が拡大したときの拡大確認装置の動作を示す図
【図9】杭(拡底杭)の施工手順を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、拡底部材の拡大確認装置の使用状態の一例を示す斜視図である。図2は、図1の部分断面図である。本発明の拡大確認装置Sは、杭14の下端に設けられている拡底部材1が径方向外側に拡大したか否かを確認するためのものである。
【0020】
<拡底部材の構成>
図3は、拡底部材1の外観構成を示す斜視図である。図4は、拡底部材1の構成を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、拡底部材1の中心軸をOとし、図3の上側を拡底部材1の上側、図3の下側を拡底部材1の下側とする。
【0021】
拡底部材1の上部には支持板2が配置され、下部には座板3が配置される。支持板2と座板3は、連結部材4によって連結される。支持板2および座板3には、それぞれ複数の拡底板5がネジ6により回転可能に軸支される。本実施形態では、拡底板5が拡大部に相当する。
【0022】
拡底部材1は、支持板2を杭14の下端に溶接等することにより取り付けられる。拡底部材1が取り付けられる杭14は、例えば、鋼管杭や、PHC杭(プレテンション方式遠心力高強度プレストレストコンクリート杭)、RC杭(遠心力鉄筋コンクリート杭)等のコンクリート杭等が挙げられる。
【0023】
支持板2は、中心に貫通孔の開いた円盤状をしている。支持板2の外径は、拡底部材1が取り付けられる杭14の外径と同じか又は小さくなるように形成されている。なお、施工性や強度等を考慮し、支持板2の外径は杭14の外径と同じとすることが好ましい。これにより、下端に拡底部材1を取り付けた杭14を杭孔に挿入する際にも、支持板2が障害とならない。また、支持板2の中心には、貫通孔が設けられており、土砂、セメントミルク等の根固め材が支持板2を通過することができる。支持板2の貫通孔の周囲には、拡底板5をネジ6で取り付けるためのネジ穴が複数形成されている。本実施形態においては、ネジ穴は円周方向に均等に8つ配列して形成されている。
【0024】
座板3も支持板2と同じように、中心に貫通孔の開いた円盤状をしている。座板3の外径も、拡底部材1が取り付けられる杭14の外径と同じか又は小さくなるように形成しているが、支持板2と同じように、杭14の外径と同じとすることが好ましい。座板3にも、拡底板5をネジ6で取り付けるためのネジ穴が8つ形成されている。
【0025】
連結部材4は、円筒状をしており、上下端には、支持板2と座板3とに連結できるように突出部4aが設けられている。突出部4aは、円筒の外側方に突出しており、拡底板5を支持板2および座板3に軸支するためのネジ6によって、支持板2の下面側および座板3の上面側に締結される。なお、拡底板5は、突出部4aと支持板2との間、および突出部4aと座板3との間に挟まれる形で軸支される。
【0026】
拡底板5の形状について、図5を用いて説明する。図5は、拡底板5の正面図である。また、拡底板5の姿勢変換について、図6を用いて説明する。拡底板5は、支持板2および座板3にそれぞれ軸支されているが、ここでは、座板3に軸支されている拡底板5について説明を行なう。なお、支持板2に軸支されている拡底板5の形状は、図3に示すように、座板3に軸支されている拡底板5の形状と鏡映対称となっている。
【0027】
拡底板5が、ネジ6を中心に反時計回りに回転し、座板3の外径よりも内側に収容された収容姿勢を上方から見た図を図6(a)に示す。また、拡底板5が、ネジ6を中心に時計回りに回転し、座板3の外径よりも外側に突出した拡底姿勢を上方から見た図を図6(b)に示す。なお、ここでは、説明を容易にするために、連結部材4は図示していない。
【0028】
拡底板5は、図5に示すように、扇形状の一部を切り取った、略L字状をした板から形成されている。しかし、拡底板5は、平板ではなく、収容姿勢および拡底姿勢の両姿勢において、一の拡底板5は、他の拡底板5と一部が重なるため、重なる位置では、拡底板5は部分的に湾曲している。
【0029】
拡底板5には、扇形状の一部を切り取る切り取り部5aが形成されている。この切り取り部5aを形成することで、収容姿勢および拡底姿勢において、拡底板5と、隣接する拡底板5を軸支しているネジ6とが干渉することを防ぐことができる。
【0030】
また、拡底板5には、最小径部5bが形成されており、図6(a)の収容姿勢では、隣接する拡底板5の最小径部5bどうしが連続して、全体としてひとつの円盤の外径部を構成する。この収容姿勢においては、拡底板5の最小径部5bが座板3の外周と一致する。
【0031】
さらに、拡底板5には、最大径部5cが形成されており、図6(b)の拡底姿勢では、隣接する拡底板5の最大径部5cどうしが連続して、全体としてひとつの円盤の外径部を構成する。この拡底姿勢においては、拡底板5の最大径部5cが座板3の外周よりも突出する。
【0032】
また、拡底板5の最大径部5cには、抵抗部5dが形成されている。板状の抵抗部5dは、拡底板5の表面に対して中心軸O方向に立設されており、拡底部材1を中心軸Oの周りに回転させることで外部の抵抗、具体的には、地中の土砂や杭孔に投入されたセメントミルク等、またはこれらの混合物等の抵抗を受ける。抵抗部5dは、拡底部材1の円周方向に対して所定の傾きを有しており、拡底部材1を中心軸Oを中心に時計回りに回転させる場合には、抵抗部5dは抵抗を受けて、拡底板5をネジ6を中心に反時計回りに付勢する。一方、拡底部材1を中心軸Oを中心に反時計回りに回転させる場合には、抵抗部5dは抵抗を受けて、拡底板5をネジ6を中心に時計回りに付勢する。すなわち、拡底部材1を中心軸Oを中心に時計回りに回転させる場合には、拡底板5は収容姿勢を保持し、一方で拡底部材1を中心軸Oを中心に反時計回りに回転させる場合には、拡底板5は拡底姿勢を保持しようとする。
【0033】
<拡大確認装置の構成>
拡大確認装置Sは、ワイヤ20と測定手段30とを備える。ワイヤ20は、一端部20aが拡底部材1の拡底板5に接続され、他端部20bが杭14の軸方向の中空部14aを通って杭14の上端まで延びている。ワイヤ20の外径は、例えば3mmである。
【0034】
測定手段30は、杭14の上端に脱着可能に連結される埋設ロッド40に設けられている。埋設ロッド40は、ロッド本体41とキャップ42とで構成される。ロッド本体41は、杭14の埋設及び拡底部材1の拡大を行う際に、上下動及び/又は回転させられる。キャップ42は、杭14の上端を覆うようにして、杭14に連結される。キャップ42は、筒部43を備え、筒部43の下端部には、杭14の上端の径方向外側に突出する係止ピン14bに対応して、係止ピン14bを挿入する入口44と回転した係止ピン14bを係止できる収容部45を形成している。なお、係止ピン14bは、杭14の上端に周方向に適当な間隔を置いて複数設けられる。キャップ42の天井部46には、複数の開孔47が設けられている。杭14の中空部14aを通って杭14の上端まで延びたワイヤ20は、開孔47を通って測定手段30へとさらに延びている。
【0035】
次に、測定手段30の詳細について説明する。図7は、測定手段30の正面図、平面図、及び側面図である。測定手段30は、ワイヤ20の他端部20bの下方への移動量を測定する機能を有する。測定手段30は、固定部31により埋設ロッド40に固定される。固定部31は、ロッド本体41の外周に嵌合する円筒状となっている。固定部31の側面には、一対の縦板32,33が互いに平行に突設されている。一方の縦板32の外側面には、目盛り32aが形成されている。
【0036】
測定手段30は、ワイヤ20の他端部20bが接続される検出体34と、検出体34を上方に付勢するバネ35と、検出体34がバネ35に抗して下方へ移動する移動量を表示する表示手段36を備える。検出体34は、細長い板状をしており、下端部に他端部20bが連結される。検出体34は、一対の縦板32,33の間に配置されている。検出体34の下部には、断面略L字状の指示体37が設けられている。指示体37の長辺部37aは検出体34と平行に、短辺部37bは検出体34と垂直に設けられている。指示体37は指針37cを備え、表示手段36は、指針37cと目盛り32aとで構成されている。指示体37の短辺部37bには、縦板32の下端と対向する面に緩衝材38を設けている。
【0037】
バネ35の上端は、縦板32と縦板33との間に渡された梁部材39に固定され、下端は、検出体34に固定されており、バネ35は、検出体34を縦板32,33に対して上方に付勢することができる。
【0038】
拡大確認装置Sは、杭14の中空部14aを延びるワイヤ20を、杭14の下端において径方向外側へ案内するサヤ管50(ガイドに相当)を備えることが好ましい。サヤ管50は略L字状のパイプであって、内径はワイヤ20の外径よりも大きい(図2を参照)。サヤ管50の一方の開口には、フランジ51が設けられている。一方、拡底部材1の支持板2には、台座52が溶接等により固定され、台座52には、サヤ管50の外周よりわずかに大きな径を有する貫通孔53が設けられている(図8を参照)。フランジ51の下面と貫通孔53の外周を摺動可能とすることで、サヤ管50は貫通孔53を中心として台座52に対して回動自在に支持される。
【0039】
拡底部材1の拡底板5が拡大したとき、すなわち拡底板5が収容姿勢から拡底姿勢へと姿勢を変えたときの拡大確認装置Sの動作を図8を用いて説明する。図8は、説明の便宜のため、支持板2に軸支されている複数の拡底板5のうち、ワイヤ20の一端部20aが接続された1枚のみを示している。また、収容姿勢の拡底板5を破線で示し、拡底姿勢の拡底板5を実線で示している。
【0040】
拡底板5が収容姿勢から拡底姿勢へと姿勢を変えると、拡底板5の点Aは点Bへ移動する。このとき、貫通孔53の位置を基準として、点Bまでの距離D2から点Aまでの距離D1を引いた長さD2−D1を拡底部材1の拡大量Lとする。
【0041】
一方、拡底板5が拡大すると、拡底板5に接続されたワイヤ20の一端部20aは貫通孔53を中心に径方向外側に引っ張られ、これに伴い、他端部20bも下方に引っ張られる。これにより、他端部20bが接続された検出体34も下方に移動し、検出体34と連動して指針37cも下方に移動する。指針37cの移動量を目盛り32aにより測定することで、他端部20bの移動量Pを測定できる。
【0042】
このとき、拡底部材1の拡大量Lは予め分かっているので、他端部20bの移動量Pが拡大量Lに相当すれば、拡底部材1が完全に拡大していると判断でき、他端部20bの移動量Pが拡大量Lに満たなければ、拡底部材1が正確に拡大していないと判断できる。
【0043】
<拡底杭の施工手順>
拡底部を下端に設けた杭(拡底杭)の施工手順について、図9を用いて説明する。図9(a)のように、初めに、杭14を挿入するための杭孔11を地盤10の所定の深度まで掘削する。次いで、杭孔11の底部に杭径よりも大きな直径をした孔底拡開部12を掘削する。孔底拡開部12を掘削する方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、オーガーヘッドに設けた拡大翼を拡翼して拡大掘削する方法が知られている。この孔底拡開部12内にセメントミルクを投入し、拡大翼を上下反復し、セメントミルクと土砂とを攪拌混合させた混合物13を孔底拡開部12に充填する。
【0044】
拡底部材1は、あらかじめ杭14の下端に溶接等により固定される。また、杭14の上端には、測定手段30を固定した埋設ロッド40が連結されている(図9では不図示)。拡大確認装置Sのワイヤ20は、一端部20aを拡底部材1の拡底板5に接続するとともに、他端部20bを杭14の軸方向の中空部14aを通して杭14の上端まで延ばす。さらに、他端部20bを測定手段30に接続する。
【0045】
次いで、図9(b)のように、下端に拡底部材1を固定した杭14を、杭孔11内に挿入する。座板3および支持板2には中心に貫通孔を設けてあり、また、これらの貫通孔は拡底板5によって塞がれていないので、杭14の中空部14aには、セメントミルクと土砂の混合物13が充填される。
【0046】
杭14を杭孔11に挿入する際には、すべての拡底板5は、収容姿勢としておく。また、挿入過程では杭14を時計回りに回転させることで、拡底板5は、抵抗部5dにセメントミルクと土砂の混合物13からの抵抗を受け、収容姿勢を保つことができ、挿入する際の障害となりにくい。
【0047】
杭14を杭孔11に挿入していき、拡底部材1が孔底拡開部12に位置した時点で、杭14を逆回転、すなわち、反時計回りに回転させる。杭14を反時計回りに回転させると、拡底板5は、抵抗部5dにセメントミルクと土砂の混合物13からの抵抗を受け、図9(c)のように収容姿勢から拡底姿勢へと姿勢を変える。
【0048】
このとき、測定手段30によりワイヤ20の他端部20bの移動量Pを測定する。移動量Pを拡底部材1の拡大量Lと比較することで、前述のように拡底部材1が孔底拡開部12内で拡大しているか否かを確認することができる。
【0049】
拡底板5を拡底姿勢に保持したまま、セメントミルクを固化させる。これにより、拡底板5は、杭14の外周面より外側に突出した円盤を形成するので、この拡底部材1によれば、大きな支持力および引き抜き抵抗を備えた拡底部を杭14に形成することができる。
【0050】
<別実施形態>
測定手段30の構成としては、前述のものに限られず、ワイヤ20の他端部20bの下方への移動量を測定できる構成であればよい。また、ワイヤ20の一端部20a及び他端部20bは、それぞれ別のワイヤを介して拡底部材の拡大部及び測定手段に接続されてもよい。ワイヤ同士は、クリップ等のジョイント部材で連結される。
【0051】
前述の実施形態では、ワイヤ20の一端部20aを、支持板2に軸支されている拡底板5に接続しているが、座板3に軸支されている拡底板5に接続しても構わない。また、本発明の拡底部材の拡大確認装置及び拡大確認方法は、前述の拡底部材以外の公知の拡底部材に対して適用可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 拡底部材
5 拡底板
11 杭孔
12 孔底拡開部
14 杭
14a 中空部
20 ワイヤ
20a 一端部
20b 他端部
30 測定手段
34 検出体
35 バネ
36 表示手段
37 指示体
37c 指針
40 埋設ロッド
50 サヤ管
52 台座
53 貫通孔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭の下端に設けられている拡底部材が径方向外側に拡大したか否かを確認するための拡底部材の拡大確認装置であって、
一端部が拡底部材の拡大部に接続され、他端部が杭の軸方向の中空部を通って杭の上端まで延びるワイヤと、
前記他端部が接続され、前記他端部の下方への移動量を測定する測定手段とを備える拡底部材の拡大確認装置。
【請求項2】
前記測定手段は、杭の上端に脱着可能に連結される埋設ロッドに設けられている請求項1に記載の拡底部材の拡大確認装置。
【請求項3】
前記測定手段は、前記他端部が接続される検出体と、前記検出体を上方に付勢するバネと、前記検出体がバネに抗して下方へ移動する移動量を表示する表示手段とを備える請求項1又は2に記載の拡底部材の拡大確認装置。
【請求項4】
前記中空部を延びるワイヤを、杭の下端において径方向外側へ案内するガイドを備える請求項1〜3のいずれか1項に記載の拡底部材の拡大確認装置。
【請求項5】
杭の下端に設けられている拡底部材が径方向外側に拡大したか否かを確認するための拡底部材の拡大確認方法であって、
ワイヤの一端部を拡底部材の拡大部に接続するとともに、他端部を杭の軸方向の中空部を通して杭の上端まで延ばし、他端部の移動量を測定可能な測定手段に接続する工程と、
杭を杭孔に埋設し、前記拡大部を拡大させる工程と、
前記他端部の移動量を測定する工程と、
を含むことを特徴とする拡底部材の拡大確認方法。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−167493(P2012−167493A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29875(P2011−29875)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(511145959)
【Fターム(参考)】