説明

杭の連結構造

【解決手段】互いに隣接する両分割杭の相対向端部に設けた接続部3と、両分割杭の接続部3の外周に取り付けた連結体10と、連結体10を両接続部3に締め付けて両接続部3を連結体10により互いに連結する締付手段Mとを備えている。締付手段Mは、両接続部3に配置した内側締付部材と、連結体10を内側締付部材との間で挟むように配置した外側締付部材とを互いに連結するものである。内側締付部材では、互いに面する両接続部3の外周に形成した環状の係止溝9に嵌め込んだ係止環13と、係止環13に設けた複数の雌ねじ15とを備え、外側締付部材では、係止環13の各雌ねじ15に螺合したボルト14を備えている。
【効果】一方の分割杭の接続部3と連結体10とを連結する締付手段Mと、他方の分割杭の接続部3と連結体10とを連結する締付手段Mとを互いに兼用しているため、部品点数が減るとともに、締付け作業が簡単になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築基礎工事などで地中に埋め込まれる杭に係り、必要な長さに応じて複数の分割杭を互いに連結する構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1の継手構造においては、上コンクリートパイルと下コンクリートパイルとの相対向端部にそれぞれ端面金具が嵌着され、それらの端面金具の外周に複数の連結片が当てがわれて環状に配置され、この各連結片の上下両側にそれぞれ外側から複数のボルトが挿通されて周方向へ並べられている。この上側の各ボルトは上コンクリートパイルの端面金具に螺合され、この下側の各ボルトは下コンクリートパイルの端面金具に螺合されている。
【特許文献1】特許第2664653号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記特許文献1の継手構造においては、上コンクリートパイルの端面金具と各連結片とを固定する上側の各ボルトと、下コンクリートパイルの端面金具と各連結片とを固定する下側の各ボルトとをそれぞれ別々に必要とするため、ボルトの本数が増えるとともに、それらのボルトの締付け作業が面倒になる問題があった。
【0004】
この発明は、連結体(前記連結片に該当)を両接続部(前記両端面金具に該当)に締め付けて両接続部を連結体により互いに連結する締付手段を兼用することにより、部品点数を減らすとともに締付け作業を簡単にすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
後記実施形態の図面(図1〜3に示す第1実施形態、図4〜6に示す第2実施形態、図7〜9に示す第3実施形態)の符号を援用して本発明を説明する。
請求項1の発明にかかる杭の連結構造は、第1〜3実施形態に対応し、下記のように構成されている。
【0006】
この杭の連結構造においては、互いに隣接する両分割杭1,2の相対向端部に設けた接続部3と、この両分割杭1,2の接続部3の外周に取り付けた連結体10と、この連結体10をこの両接続部3に締め付けて両接続部3を連結体10により互いに連結する締付手段Mとを備えている。この締付手段Mは、前記両接続部3間に配置した内側締付部材13,16,18,20と、前記連結体10をこの内側締付部材13,16,18,20との間で挟むように配置した外側締付部材14,21とを互いに連結するものである。
【0007】
請求項1の発明では、一方の分割杭1の接続部3と連結体10とを連結する締付手段M(内側締付部材13,16,18,20及び外側締付部材14,21)と、他方の分割杭2の接続部3と連結体10とを連結する締付手段M(内側締付部材13,16,18,20及び外側締付部材14,21)とを互いに兼用しているため、部品点数が減るとともに、締付け作業が簡単になる。
【0008】
請求項1の発明を前提とする請求項2の発明(第1〜3実施形態に対応)においては、前記締付手段Mで内側締付部材13,16,18,20と外側締付部材14,21とのうち、一方のものが雌ねじ部材であり、他方のものが雄ねじ部材である。請求項2の発明では、雌雄ねじ機構を採用することにより、締付手段M(内側締付部材13,16,18,20及び外側締付部材14,21)を簡単にすることができる。
【0009】
請求項1の発明を前提とする請求項3の発明(第1実施形態に対応)にかかる締付手段Mにおいて、内側締付部材では、互いに面する両分割杭1,2の接続部3の外周に形成した環状の係止凹部9に嵌め込んだ係止環13と、この係止環13に設けた複数の雌ねじ15とを備え、外側締付部材では、この係止環13の各雌ねじ15に螺合した雄ねじ部材14を備えている。請求項3の発明では、締付手段Mを簡単にすることができる。
【0010】
請求項1の発明を前提とする請求項4の発明(第1〜3実施形態に対応)にかかる締付手段Mにおいて、内側締付部材では、両分割杭1,2の接続部3間に配置した締付体13,16,18と、この締付体13,16,18に設けた雌ねじ15,17,18とを備え、外側締付部材では、この締付体13,16,18の雌ねじ15,17,18に螺合した雄ねじ部材14を備えている。請求項4の発明では、締付手段Mを簡単にすることができる。
【0011】
請求項1の発明を前提とする請求項5の発明(第3実施形態に対応)にかかる締付手段Mにおいて、内側締付部材では、互いに面する両分割杭1,2の接続部3の外周に形成した複数の係止凹部19に嵌め込んだ雌ねじ部材18を備え、外側締付部材では、この各雌ねじ部材18に螺合した雄ねじ部材14を備えている。請求項5の発明では、締付手段Mを簡単にすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、締付手段Mにおいて、部品点数を減らすことができるとともに、締付け作業を簡単にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
まず、本発明の第1実施形態にかかる杭の連結構造について図1〜2及び図3(a)を参照して説明する。
この杭は金属により成形され、互いに隣接する両分割杭1,2で円筒状の外周壁1a,2aの相対向端部にそれぞれ同一構造の接続部3が取着されている。この接続部3は、外周壁1a,2aの端部の内周に嵌着された補強環4と、その端部及び補強環4に対しそれらの外側から当てがわれて溶着された外環部5と、この外環部5の内周に設けられた内環部6とを備えている。この外環部5の外周には周方向全体で環状に延びる係止溝7が形成されている。この外環部5の端部には半径方向へ延びる半割状の止め孔8が複数個(6個)形成されて周方向へ等間隔で並べられている。この内環部6には周方向全体で環状に延びる係止溝9(係止凹部)がこの各止め孔8に連通するように形成されている。この両分割杭1,2の接続部3を互いに対向させた状態で、両外環部5の各止め孔8が互いに重なり合うとともに、両内環部6の係止溝9が互いに重なり合う。複数(三つ)に分割された各分割連結体10は、この両接続部3の外環部5の外周で環状に配置される。この各分割連結体10の内側にはこれらの外環部5の係止溝7に嵌め込まれる一対の係止突部11が周方向へ延設されている。この各分割連結体10には一対の止め孔12が周方向で並ぶように形成されている。この両分割杭1,2の接続部3を各分割連結体10により互いに連結する締付手段Mを詳述する。
【0014】
この締付手段Mは、前記両内環部6の係止溝9に嵌め込まれて位置決めされる環状の締付体としての係止環13(内側締付部材である雌ねじ部材)と、前記各分割連結体10の両止め孔12及び両外環部5の各止め孔8に外側から挿通される複数個(6個)のボルト14(外側締付部材である雄ねじ部材)とを備えている。この係止環13には複数個(6個)の雌ねじ15が形成されて周方向へ等間隔で並べられている。この係止環13の各雌ねじ15に各ボルト14を螺合させて締め付けると、この各ボルト14の頭部14aと係止環13との間で両接続部3の外環部5及び各分割連結体10が挟持されてこの両外環部5の係止溝7と各分割連結体10の両係止突部11とが互いに合致し、両分割杭1,2の接続部3が互いに連結される。
【0015】
また、図3(b)に示す第1実施形態の別例においては、両分割杭1,2の接続部3で前記各止め孔8と環状係止溝9とを一つにまとめ、その各止め孔8がある位置に段差状係止凹部9が環状に形成されている。両分割杭1,2の接続部3を互いに対向させた状態で、この段差状係止凹部9が互いに重なり合う。この段差状係止凹部9に係止環13が嵌め込まれて位置決めされている。この係止環13の各雌ねじ15に各ボルト14を螺合させて締め付けると、この各ボルト14の頭部14aと係止環13との間で各分割連結体10が挟持される。
【0016】
なお、図3(c)に示すように、両内環部6の係止溝9側から係止環13と両外環部5と各分割連結体10とにボルト20を挿通し、各分割連結体10の外側でこのボルト20にナット21を螺合してもよい。
【0017】
次に、本発明の第2実施形態にかかる杭の連結構造について第1実施形態との相違点を中心に図4〜5及び図6(a)を参照して説明する。
外環部5の端部には第1実施形態における止め孔8が形成されていない。内環部6には第1実施形態における係止溝9が形成されていない。両接続部3の外環部5及び内環部6間に環状の締付体としての締付環16(内側締付部材である雌ねじ部材)が挟持され、この締付環16には複数個(6個)の雌ねじ17が形成されて周方向へ等間隔で並べられている。この締付環16の各雌ねじ17に各ボルト14を螺合させて締め付けると、この各ボルト14の頭部14aと締付環16との間で各分割連結体10が挟持されて両外環部5の係止溝7と各分割連結体10の両係止突部11とが互いに合致し、両分割杭1,2の接続部3が互いに連結される。
【0018】
なお、図6(b)に示すように、両内環部6側から締付環16と各分割連結体10とにボルト20を挿通し、各分割連結体10の外側でこのボルト20にナット21を螺合してもよい。
【0019】
次に、本発明の第3実施形態にかかる杭の連結構造について第1実施形態との相違点を中心に図7〜8及び図9(a)を参照して説明する。
各雌ねじ15を有する係止環13に代えて、複数個(6個)のナット18(締付体)が内側締付部材である雌ねじ部材として設けられている。内環部6には第1実施形態における係止溝9に代えて複数個(6個)の係止凹部19が外環部5の各止め孔8に連通するように形成されて周方向へ等間隔で並べられている。この各ナット18はこの各係止凹部19に嵌め込まれて位置決めされている。この各ナット18に各ボルト14を螺合させて締め付けると、この各ボルト14の頭部14aと各ナット18との間で両接続部3の外環部5及び各分割連結体10が挟持されてこの両外環部5の係止溝7と各分割連結体10の両係止突部11とが互いに合致し、両分割杭1,2の接続部3が互いに連結される。
【0020】
なお、図9(b)に示すように、両内環部6の係止溝9側から両外環部5と各分割連結体10とにボルト20を挿通し、各分割連結体10の外側でこのボルト20にナット21を螺合してもよい。
【0021】
次に、請求項以外の技術的思想を述べる。
* 請求項1から請求項5のうちいずれかの請求項の発明を前提とする第6の発明において、前記連結体10は、両分割杭1,2の接続部3の外周に形成した係止溝7に嵌め込んだ係止突部11を有している。第6の発明では、この係止溝7に対する係止突部11の係止により、両分割杭1,2の接続部3を確実に連結することができる。
【0022】
* 請求項1から請求項5のうちいずれかの請求項の発明または第6の発明を前提とする第7の発明において、前記連結体は両分割杭1,2の接続部3の外周で複数に分割されて環状に配置された分割連結体10を備えている。第7の発明では、各分割連結体10を両分割杭1,2の接続部3の外周に容易に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)は第1実施形態にかかる杭の連結構造を示す分解斜視図であり、(b)は同じく組付け斜視図である。
【図2】(a)は図1(b)の縦断面図であり、(b)は同じく横断面図である。
【図3】(a)は図2(a)の部分拡大断面図であり、(b)は第1実施形態の別例を示す部分拡大断面図であり、(c)は同じく第1実施形態の別例を示す部分拡大断面図である。
【図4】(a)は第2実施形態にかかる杭の連結構造を示す分解斜視図であり、(b)は同じく組付け斜視図である。
【図5】(a)は図4(b)の縦断面図であり、(b)は同じく横断面図である。
【図6】(a)は図5(a)の部分拡大断面図であり、(b)は第2実施形態の別例を示す部分拡大断面図である。
【図7】(a)は第3実施形態にかかる杭の連結構造を示す分解斜視図であり、(b)は同じく組付け斜視図である。
【図8】(a)は図7(b)の縦断面図であり、(b)は同じく横断面図である。
【図9】(a)は図8(a)の部分拡大断面図であり、(b)は第3実施形態の別例を示す部分拡大断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1,2…分割杭、3…接続部、9…係止溝、10…分割連結体、13…係止環、14…ボルト、15…雌ねじ、16…締付環、17…雌ねじ、18…ナット、19…係止凹部、20…ボルト、21…ナット、M…締付手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに隣接する両分割杭の相対向端部に設けた接続部と、この両分割杭の接続部の外周に取り付けた連結体と、この連結体をこの両接続部に締め付けて両接続部を連結体により互いに連結する締付手段とを備えた杭の連結構造において、前記締付手段は、前記両接続部間に配置した内側締付部材と、前記連結体をこの内側締付部材との間で挟むように配置した外側締付部材とを互いに連結するものであることを特徴とする杭の連結構造。
【請求項2】
前記締付手段において内側締付部材と外側締付部材とのうち、一方のものが雌ねじ部材であり、他方のものが雄ねじ部材であることを特徴とする請求項1に記載の杭の連結構造。
【請求項3】
前記締付手段において、内側締付部材では、互いに面する両分割杭の接続部の外周に形成した環状の係止凹部に嵌め込んだ係止環と、この係止環に設けた複数の雌ねじとを備え、外側締付部材では、この係止環の各雌ねじに螺合した雄ねじ部材を備えていることを特徴とする請求項1に記載の杭の連結構造。
【請求項4】
前記締付手段において、内側締付部材では、両分割杭の接続部間に配置した締付体と、この締付体に設けた雌ねじとを備え、外側締付部材では、この締付体の雌ねじに螺合した雄ねじ部材を備えていることを特徴とする請求項1に記載の杭の連結構造。
【請求項5】
前記締付手段において、内側締付部材では、互いに面する両分割杭の接続部の外周に形成した複数の係止凹部に嵌め込んだ雌ねじ部材を備え、外側締付部材では、この各雌ねじ部材に螺合した雄ねじ部材を備えていることを特徴とする請求項1に記載の杭の連結構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−56587(P2007−56587A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−244574(P2005−244574)
【出願日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(595081013)株式会社小島製作所 (4)
【Fターム(参考)】