説明

杭体形状測定方法及び装置

【課題】杭体の測定孔から弾性波を発振させ、杭体外周面からの反射波を検出することによって杭体外周面までの距離を測定し、杭体の形状(場合によっては品質など)を推定(測定)するプローブとして、超磁歪素子を採用して杭体の形状などを測定する杭体形状測定方法及び装置を提供する。
【解決手段】プローブ4は超磁歪素子5とコンデンサ型マイクロホン6を組み合わせた構成とし、超磁歪素子5により弾性波を発振させ、コンデンサ型マイクロホン6により反射波を受振させ、同反射波のピークを検出することにより杭体1の断面形状等を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、杭体の測定孔へ挿入したプローブにより弾性波を発振させ、杭体外周面からの反射波を検出することによって杭体外周面までの距離を測定し、杭体の形状(場合によっては品質など)を推定(測定)する技術分野に属し、更に云えば、超磁歪素子を用いた構成のプローブにより杭体形状を測定する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今日では図1に示すように、先端に軸部1bよりも大きな径の根固め部1cを有する高支持力杭1を使用する支持杭工法が実施され始めている。この高支持力杭工法は、既成杭2の外周に充填したモルタルで形成する先端根固め部1cの品質や形状の如何が支持力機構大きく影響する。そこで従来、前記先端根固め部1cの品質や形状の出来具合を推定(測定)するため、既成杭2の断面中心位置に形成された測定孔3へプローブ4(弾性波を発振し、その反射波を測定してコンクリートの形状などを測定する装置)を挿入し、弾性波を半径方向に発振させ、杭体外周面からの反射波を検出することによって杭体外周面までの距離を測定して、杭体の形状を測定する杭体形状測定方法や測定装置が広く実用に供されている。
【0003】
従来のプローブは、ソレノイドハンマーにより弾性波を発振させ、受振装置として圧電素子を用いた圧力計により反射波を受振する構成で実施されている。
また、下記の特許文献1には、二種類の弾性波発振器によりP波(縦波)とS波(横波)の弾性波を発振し、各圧電素子によりそれぞれの反射波を受振して杭体形状を測定する技術が開示されている。その発振周波数は、P波、S波共に10kHzで、発振電圧300Vで発振させることが記載されている。
【0004】
特許文献2には、超音波発振器により一定の弾性波(超音波)を発振し、杭体外周面からの反射波を受振器により受振して既存杭の健全性を調査する技術が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2001−153638号公報
【特許文献2】特開2000−73389号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
プローブによる測定の分解能を向上させるためには、発振する弾性波パルスの振動周波数をなるべく高くすることが必要であるが、振動周波数を高くすると弾性波の伝播過程での減衰が大きくなり反射波を検出することが難しくなる。これを補うためには強力な発振力が必要とされる。
しかし、従来のソレノイドハンマーを発振源に用いる技術は、発振周波数2kHzで弾性波の波長2m程度、発振力(打撃力)150N程度が限度であり、分解能が極めて低く高い精度での測定は望めない。上記特許文献1及び2は、高い周波数で発振しているが、やはり強力な発振力を発揮できない技術である。
【0007】
また、上記特許文献1と2の技術は、一定の周波数に設定されており、杭体の半径や形状等々に応じて適切な周波数に可変することが難しく、正確な杭形状を判断できない欠点がある。
【0008】
更に、上記特許文献1及び2は、発振手段と受振手段が個々に独立した構成とされているので、それぞれの取付位置を設定して個々に取り付けることが面倒である。特に特許文献1では、二種類の発振手段と二種類の受振手段が必須条件であり、測定装置の部材点数の多さから取り付けやメンテナンス作業が非常に面倒であるし、電力消費が高い。
【0009】
本発明の目的は、超磁歪素子を採用することで、高い周波数の弾性波を強力な発振力で可変可能に発振でき、杭体の半径が大きい場合でも、杭体形状等を高い精度で測定できる、杭形状測定方法及び装置を提供することにある。
【0010】
本発明の次の目的は、一体型超磁歪素子により発振と受振の両方を行わせ、取り付けやメンテナンス作業の面倒さを飛躍的に向上できる杭形状測定方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記従来技術の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係る杭体形状測定方法は、
杭体1に形成した測定孔3の中へプローブ4を挿入して弾性波を発振させ、弾性波が杭体1中を伝播し、杭体外周面1aからの反射波を検出することによって杭体外周面1aまでの距離を測定し、杭体1の形状などを測定する杭体形状測定方法において、
プローブ4は超磁歪素子5とコンデンサ型マイクロホン6を組み合わせた構成とし、前記超磁歪素子5により弾性波を発振させ、コンデンサ型マイクロホン6により反射波を受振させ、同反射波のピークを検出することにより杭体1の断面形状等を測定すること特徴とする。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載した杭体形状測定方法において、
超磁歪素子5から弾性波を1kHz〜20kHzの範囲で発振周波数を可変可能に発振させ、その反射波をコンデンサ型マイクロホン6により検出すること特徴とする。
【0013】
請求項3に記載した発明に係る杭体形状測定装置は、
杭体1に形成した測定孔3の中へプローブ4を挿入して弾性波を発振させ、弾性波が杭体1中を伝播し、杭体外周面1aからの反射波を検出することによって杭体外周面1aまでの距離を測定し、杭体1の形状などを測定する杭体形状測定方法において、
プローブ21を構成する一体型超磁歪素子26は、超磁歪材料13の周りに発振用コイル260と受振用コイル261を別々に巻き、前記受振用コイル261の外周面にバイアス用の永久磁石14を取り付けた構成とし、一台の一体型超磁歪素子26で弾性波の発振と反射波の受振を行い、同反射波のピークを検出することにより杭体1の断面形状等を測定すること特徴とする。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項3に記載した杭体形状測定方法において、
一体型超磁歪素子26から弾性波を1kHz〜100kHzの範囲で発振周波数を可変可能に発振・受振させることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載した発明に係る杭体形状測定装置は、
1kHz〜20kHzの発振周波数で弾性波を発振する超磁歪素子5と、その反射波を受振し検出するコンデンサ型マイクロホン6との組み合わせでプローブ4が構成されていることを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載した発明に係る杭体形状測定装置は、
超磁歪材料13の周りに、1kHz〜100kHzの発振周波数で弾性波を発振する発振用コイル260とその反射波を受振し検出する受振用コイル261とが別々に巻かれ、前記受振用コイル261の外周面にバイアス用の永久磁石14が設置された一体型超磁歪素子26によりプローブ21が構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る杭体形状測定方法及び装置は、プローブ4を、1〜20kHzの周波数で弾性波を発振する超磁歪素子5とコンデンサ型マイクロホン6を組み合わせた構成とし、超磁歪素子は、1〜20kHzの高い周波数の弾性波を、270N以上の強力な発振力で発振し、コンデンサ型マイクロホン6が広い周波数領域で反射波のピークを検出するので、伝播過程での減衰の問題が無く、反射波をクリアーに検出でき、杭体1の半径が大きい場合でも分解能が極めて高く高精度の測定を可能ならしめる。
また、発振周波数を可変可能に発振できるので、杭体1の半径や形状等々に応じて適宜調整し、高い精度の杭形状の判断が可能となる。
【0018】
請求項3、4、6によれば、プローブ21を構成する一体型超磁歪素子26は、超磁歪材料13の周りに発振用コイル260と受振用コイル261を別々に巻き、前記受振用コイル261の外周面にバイアス用の永久磁石14、14を取り付けて、一台の素子で弾性波の発振と反射波の受振を行う構成であるから、小型で電力消費が少なく、取り付けやメンテナンス作業の面倒さを飛躍的に向上できる。また、請求項1の受振手段であるコンデンサー型マイクロフォン6の問題点である防水性と検知可能な周波数が低い(20kHz程度)という問題点を改善し、1〜100kHzの周波数を発振・受振できる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
杭体1に形成した測定孔3の中へプローブ4を挿入して弾性波を発振させ、弾性波が杭体1中を伝播し、杭体外周面1aからの反射波を検出することによって杭体外周面1aまでの距離を測定し、杭体1の形状を測定する杭体形状測定方法である。
プローブ4は超磁歪素子5とコンデンサ型マイクロホン6を組み合わせた構成とし、前記超磁歪素子5により弾性波を発振させ、コンデンサ型マイクロホン6により反射波を受振させ、同反射波のピークを検出することにより杭体1の断面形状等を測定する。
【実施例1】
【0020】
以下に、本発明の杭体形状測定方法及び装置の実施例1を図面に基づいて説明する。
図1に示す杭体形状測定装置は、既成杭2の中心部の軸線方向に形成された測定孔3内に挿入されるプローブ4と、同プローブ4を高支持力杭1の根固め部1cの測定位置まで案内するロッド7と、前記ロッド7及びプローブ4を回転させる回転機構8と、プローブ4及び回転機構8を遠隔操作する操作器9と、前記プローブ4で測定した測定結果を表示する表示器10とで構成されている。上記プローブ4が発振する弾性波で前記高支持力杭1の根固め部1cの半径や形状などを測定する。なお、前記測定孔3を形成するためコアボーリングされたコアブロックは、弾性波の伝播速度を測定する検査に利用される。
【0021】
図1及び図2に示す前記プローブ4は、その一側面に超磁歪素子5(超磁歪アクチュエータ)とコンデンサ型マイクロホン6(以下、単にマイクロホンともいう。)が一定距離をあけて配設されており、他側に設置された押圧部材11がエアシリンダ12により壁面3aに押圧される構成であることを示している。
【0022】
上記超磁歪素子5は、既に知られているとおり、超磁歪材料の周りに巻かれた励磁コイルにパルス状電流が通電されると、このパルス状電流の大きさに応じて超磁歪材料が高速応答で大きく弾性変形し、壁面3aから1〜20kHzの高い周波数で、且つ、270N以上の発進力で弾性波を発振する構成である。
【0023】
前記弾性波は、高支持力杭1(以下、単に杭体1と云う。)を狭い範囲に広がって伝播し、外周面1a(地盤と杭体1との境界面)で反射し、反射波の圧力(ピーク)がマイクロホン6で検出される。前記マイクロホン6は、0〜20kHzの広い周波数帯で高精度の圧力検出が可能な構成とされている。
【0024】
前記超磁歪素子5による弾性波の発振と、マイクロホン6による反射波の初動ピークの検出とにより、弾性波の発達時刻から到達時刻までの伝播時間(Δt)を算出できる。すると、上記コアブロックで予め測定しておいた弾性波の伝搬速度(Vp)に基づき、下記の式
L=Vp×Δt/2
により、壁面3aから外周面1aまでの距離L(杭体1の半径)を算出できる。
上記作業を、上記回転機構8によりプローブ4を円周方向に例えば15度ずつ360度回転させて弾性波の発振と反射波の初動ピークの検出を行うと、壁面3aから外周面1aまでの距離を全周に渡って測定できる。
図3に、上記測定された杭体1の断面における測定波形例を示した。
この測定波形は、杭体1の中心から弾性波の発振方向に時間軸をとり、各時間軸に対して振幅をとった波形である。各反射波の初動ピーク位置を破線aで結ぶことにより、杭体1の根固め部1cの設計径を測定できる。
【0025】
また、前記破線aに示した杭の設計径の内側に発生する測定波形の孤立した初動ピークbは、杭体1の欠損部を示し、隣り合う初動ピークの始点を結ぶ円弧cは、杭体1の断面周縁部の縮小箇所を示している。よってこれらの総合評価で杭体1の断面形状と品質の測定ができる。
【0026】
次に、本実施例の杭体形状測定装置を用いてコンクリート試験体を測定した結果を図4〜図6に基づいて説明する。
使用した試験体は、幅と奥行きが2m、高さが1mの無筋コンクリートで、弾性波速度は、3500m/sである。
図4に、超磁歪素子5が発振する弾性波の周波数を2kHz〜20kHzの間で変化させて測定した出力結果を示した。
横軸を時間(単位ms)、縦軸を振幅(音圧の変化する幅)とし、周波数2、5、10、20kHzにおける発振波形をc、d、e、fと示す。
前記周波数2、5、10、20kHzの発振波形c、d、e、fは、ほぼリニアな出力であって、ガウス波形に近いものになっている。周波数5、10、20kHzの各発振波形d、e、fは、周波数2kHzの発振波形cに比べて、鋭角なピークを示している。その中でも周波数10kHzの発振波形eは、最も鋭角なピークを示しており、測定に最も適した波形であることが分かる。
【0027】
そこで、図5に、前記超磁歪素子5の発振周波数を最適な10kHzと設定し、発振力を270Nに設定した弾性波を発振し、超磁歪素子5と5cm離して設けたマイクロホン6で直達波と反射波を検出した試験結果を示した。
反射波hは、試験体の測定孔の壁面から外周面までの距離を1.5mとし、同壁面に向かって水平方向に弾性波を発振したときの波形であり、入力パルスgと共に示している。横軸は時間(単位ms)、縦軸は振幅である。なお、弾性波の波長は、30cm程度である。
この反射波hは、図示の通り発振時刻から0.875ms後に反射波hの初動ピークと考えられる波形が検出された。また、視認できる波形は反射波hのみであり、直達波はほとんど検出されていない。
【0028】
次に、前記初動ピークが杭体外周面からの反射波であることを確認するべく、試験体の外周面で、弾性波の発振方向に正対した位置(以下、正対位置という。)にマイクロホン6を設置して弾性波の直達波を測定した。また、振動エネルギーがどの程度の範囲に拡散するかを確認するため、試験体の外周面で弾性波の発振方向から30°ずらした位置(以下、30°位置という。)にマイクロホン6を設けて弾性波の直達波を測定した結果を図6に示す。
図6は、横軸を時間(単位ms)、縦軸を振幅とし、正対位置と30°位置にそれぞれ設けたマイクロホン6で検出した直達波の波形を示す。
【0029】
正対位置(0°)で検出した直達波iは、0.428msの時刻に明瞭なピークが確認され、これが直達波の到達時刻であると考えられる。このピーク値は、図5の時刻0.875msに見られるピークの略1/2に相当し、初動ピークが杭体外周面からの反射波であることを示している。また、図6に示す30°位置で検出した直達波jは、正対位置で検出した直達波iに比べて振動エネルギーが1/5以下であり、弾性波の振動エネルギーは拡散することなく狭い円錐状の範囲に集中していると推定され、図5に示す初動ピークは精度の高い値であるといえる。
【0030】
したがって、上記したように超磁歪素子5とマイクロホン6とを組み合わせたプローブ4は、超磁歪素子5の超磁歪材料が高速応答で大きく弾性変形し、壁面3aから杭体1の半径に応じた高い周波数の弾性波を必要十分な大きさの振動エネルギー(270N)で発振でき、杭体1を伝播する過程で減衰しても、マイクロホン6が反射波の圧力(ピーク)を広い周波数範囲で効率的、且つ高い精度で検出でき、杭体1の半径が大きい場合でも、杭体1の半径を高精度に測定できることが明らかである。
【0031】
次に、本発明のプローブのプロトタイプと従来のプローブとを現場において比較実験した結果について説明する。
図7に、0°方向における本発明のプローブによる受振波形と、従来のプローブによる受振波形とを比較して示した。図中の横軸を時間(単位μsec)とし、左側縦軸を発振力(単位N)、右側縦軸を振幅とした。符号mは本発明のプローブによる受振波形を示す。符号nは従来によるプローブの受振波形を示した。
上述したように超磁歪素子5は高い周波数と大きな発振力で弾性波を発振するので、本発明のプローブによる受振波形mは、従来のプローブによる受振波形nに比べて、波長の周期が短く大きな発振力で受振しており、初動ピーク(約210μsec)を一目瞭然に検出することができた。
【0032】
図8には、本発明の杭体形状測定装置による測定対象の杭体の半径と最適な周波数の関係を示した。
縦軸に測定対象の杭体の半径(単位m)、横軸に周波数(単位kHz)をとると、杭体1の半径0.5〜2.5mに対する最適な周波数10〜50kHzは略反比例となる。つまり、大きな半径の杭体の測定を行う際、周波数を高くすると減衰量が大きくなり、波動は小さくなるため、周波数をある程度低減することが求められるからである。とはいえ、本実施例の測定装置は、例えば半径2.5mの大きな杭体に対して周波数10kHz(発進力270N以上)という従来の5〜6倍の高い弾性波による測定が可能であり、精度の高い杭体形状の推定(測定)が行えることは明らかである。
【実施例2】
【0033】
図9a、図9bは、上記の杭体形状測定方法及び装置に使用するプローブ21を、発振器及び受振器を一体構造とした一体型超磁歪素子26で構成した実施例で示す。図9aは非測定時の状態を示し、図9bは測定時の状態を示した。
図9aに示すプローブ21は、一対の上下の支持板22及び左右の押圧板23が4本のリンク24で回動自在に支持され、上下の支持板22間にエアシリンダ25が取り付けられたパンタグラフ構造で、左右の押圧板23に一体型超磁歪素子26がそれぞれ取り付けられた構成とされている。
この一体型超磁歪素子26は、図10に示すように、超磁歪材料13の周りに1kHz〜100kHzの発振周波数で弾性波を発振する発振用コイル260と、その反射波を受振し検出する受振用コイル261とが上下に分かれた別々の位置に巻かれ、前記受振用コイル260の外周面にバイアス用の永久磁石14、14が設置された構成である。
前記発振用コイル260にパルス状電流が通電されると、パルス状電流の大きさに応じて超磁歪材料13が高速応答で大きく弾性変形し、測定孔3の壁面3aから一定の周波数の弾性波を必要な振動エネルギー(発振力)で発振させる。また、杭体1の外周面1aから反射してきた弾性波の圧力に応じて、超磁歪材料13が弾性変形して受振用コイル261に流れる電流の変化として受振する。前記一体型超磁歪素子26は、上記コンデンサー型マイクロフォンを使用する場合の問題点である防水性と検知可能な周波数が低い(20kHz程度)という問題点を改善でき、1〜100kHzの周波数を発振・受振できる。
【0034】
上記の構成とされたプローブ21は、図9bに示すように、エアシリンダ25の収縮作動により左右の押圧板23を広げて一対の一体型超磁歪素子26を測定孔3の壁面3aへ圧接させ、一体型超磁歪素子26の発振用コイル260に周波数範囲が0〜100kHzの弾性波を270N以上の発振力で半径方向(水平方向)に発振させる。その一方で、受振用コイル261は反射波の圧力(ピーク)を検出し、杭体1の根固め部1cの半径と形状などを測定することになる。
【0035】
上述したように、本実施例2では、1個の超磁歪素子で構成した一体型超磁歪素子26を用いるので、小型で電力消費が少なく、取り付けやメンテナンス作業を飛躍的に簡便なものにできる。
【0036】
また、本実施例2では、左右一対の一体型超磁歪素子26が、弾性波を左右から同時に発振し、その反射波を受振するので、測定時間を短縮できる。
【0037】
以上に本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は、実施例の内容に何ら限定されるものでない、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、いわゆる当業者が通常に行う設計変更、応用のバリエーションの範囲を含むことを念のために言及する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施例1において杭体の測定孔に挿入されているプローブを示す図である。
【図2】杭体の根固め部とプローブとを示す拡大図である。
【図3】杭体の断面における測定波形を示す図である。
【図4】超磁歪素子の周波数を変えた場合の発振波形を示す図である。
【図5】超磁歪素子の周波数を10kHzとした場合の反射波の波形を示す図である。
【図6】超磁歪素子に正対する試験体外周面の位置と超磁歪素子から弾性波の発振方向に対して30°となる試験体外周面の位置とにそれぞれ設けたマイクロホンで検出した直達波の波形を示す図である。
【図7】0°方向における本発明のプローブによる受振波形と従来のプローブによる受振波形との比較を示す図である。
【図8】測定対象の杭体の半径と最適な周波数の関係を示す図である。
【図9】a、bは、実施例2に係るプローブの支持構造の模式図である。
【図10】一体型超磁歪素子の構成を示す参考図である。
【符号の説明】
【0039】
1 杭体
1a 外周面
2 既成杭
3 測定孔
3a 壁面
4、21 プローブ
5 超磁歪素子
6 コンデンサ型マイクロホン
26 一体型超磁歪素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭体に形成した測定孔の中へプローブを挿入して弾性波を発振させ、弾性波が杭体中を伝播し、杭体外周面からの反射波を検出することによって杭体外周面までの距離を測定し、杭体の形状などを測定する杭体形状測定方法において、
プローブは超磁歪素子とコンデンサ型マイクロホンを組み合わせた構成とし、前記超磁歪素子により弾性波を発振させ、コンデンサ型マイクロホンにより反射波を受振させ、同反射波のピークを検出することにより杭体の断面形状等を測定すること特徴とする、杭体形状測定方法。
【請求項2】
超磁歪素子から弾性波を1kHz〜20kHzの範囲で発振周波数を可変可能に発振させ、その反射波をコンデンサ型マイクロホンにより検出すること特徴とする、請求項1に記載した杭体形状測定方法。
【請求項3】
杭体に形成した測定孔の中へプローブを挿入して弾性波を発振させ、弾性波が杭体中を伝播し、杭体外周面からの反射波を検出することによって杭体外周面までの距離を測定し、杭体の形状などを測定する杭体形状測定方法において、
プローブを構成する一体型超磁歪素子は、超磁歪材料の周りに発振用コイルと受振用コイルを別々に巻き、前記受振用コイルの外周面にバイアス用の永久磁石を取り付けた構成とし、一台の一体型超磁歪素子で弾性波の発振と反射波の受振を行い、同反射波のピークを検出することにより杭体の断面形状等を測定すること特徴とする、杭体形状測定方法。
【請求項4】
一体型超磁歪素子から弾性波を1kHz〜100kHzの範囲で発振周波数を可変可能に発振・受振させることを特徴とする、請求項3に記載した杭体形状測定方法。
【請求項5】
1kHz〜20kHzの発振周波数で弾性波を発振する超磁歪素子と、その反射波を受振し検出するコンデンサ型マイクロホンとの組み合わせでプローブが構成されていることを特徴とする、杭体形状測定装置。
【請求項6】
超磁歪材料の周りに、1kHz〜100kHzの発振周波数で弾性波を発振する発振用コイルとその反射波を受振し検出する受振用コイルとが別々に巻かれ、前記受振用コイルの外周面にバイアス用の永久磁石が設置された一体型超磁歪素子によりプローブが構成されていることを特徴とする、杭体形状測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−92444(P2009−92444A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−261566(P2007−261566)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年6月11日 社団法人 地盤工学会発行の「第42回地盤工学研究発表会 −平成19年度発表講演集(2分冊の1)−」に発表
【出願人】(000151368)株式会社東京ソイルリサーチ (5)
【Fターム(参考)】