説明

杭及びその形成方法

鋼管用のグラウト杭は、下部杭と、下部杭へと打ち込み力が作用するように構成された一体式の打ち込み部を有する上部杭とを備える。上部杭は、基端開口部及び内孔へと延設されるように寸法決めされ、上部杭と下部杭の内表面との間の環状空間を形成するためのスタッブ部を有する。打ち込み部の壁厚は、スタッブ部の壁厚よりも厚くすることができる。打ち込み部は、下部杭の基端部に接触するように設けられた環状ランドを有しうる。グラウトディストリビュータアセンブリはグラウトを受け入れるように上部杭に取り付けられうる。グラウトラインアセンブリを上部杭内に挿入し、環状空間にグラウトを注入するためにディストリビュータアセンブリと結合する。上部杭の接合方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には杭に関するものである。特に、本発明は、例えば、組み立て式で取り付けられる大口径長尺鋼管の管杭を用いた海洋基礎などにおける杭及びその形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の海洋基礎には、鉛直又は斜めの大口径長尺鋼管杭が用いられている。これらの管杭基礎は、60年以上にわたり海洋プラットフォームを支えるのに使われてきた。プラットフォームが大型化して、より大きくなっていく上方からの荷重を支えるために、杭の直径や長さが増加してきている。海洋構造物において、より大きな杭を取り付け、その杭をテンプレートとして役立て、そして、より深く突き刺すように杭を打ち込むために、杭は組み立て式で組み立てられている。組み立ては杭接合部で接合されており、接合は通常現場で行われる。この接合部は、プラットフォームの基礎を設置する打ち込み作業時に、通常、現場で溶接して連結される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
最近では、小口径管に対して機械的コネクタが用いられている。しかし、機械的コネクタでは、接合部で杭を連結するために上部杭を回転することが一般的に求められており、斜めの杭を回転させるのは通常実用的ではない。また、杭を溶接することも考えられるが、この場合、溶接し、その後、その部位で溶接の検査を行う作業を行うための人員及び装置が必要となり、その時間とコストは、プラットフォームの設置において相当な費用となりうる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
クレームされた発明と一致した実施形態には、基端部、基端開口部、内表面、及び内孔を有する下部杭を備えたグラウト杭を含む。杭は、下部杭へと打ち込み力が作用するように構成された一体式の打ち込み部を有する上部杭を備える。上部杭は、下部杭の基端開口部内及び内孔へと延設されるように寸法決めされ、上部杭と下部杭の内表面との間の環状空間を形成するためのスタッブ部を有している。環状空間は、上部杭と下部杭とを連結するグラウトを受け入れるように寸法決めされている。打ち込み部の壁厚は、スタッブ部の壁厚よりも厚くすることができる。打ち込み部は、下部杭の基端部に接触するように設けられた環状ランドを有しうる。
【0005】
グラウト杭は、打ち込み杭を下部杭に連結するグラウトを受け入れるように上部杭に取り付けられたグラウトディストリビュータアセンブリをさらに備える。スタッブ部は、スタッブ部内を流体が流れることができるような開口部を有しうる。グラウトディストリビュータアセンブリは、流体を開口部からスタッブ部内に流すための逃し通路を有しうる。グラウトディストリビュータアセンブリは、上部杭の内表面にしっかりと連結された上部アセンブリと、上部アセンブリに連結され、上部杭の長手方向軸に沿って軸方向に移動できるように取り付けられた下部アセンブリとをさらに備えうる。グラウト杭は、上部杭の内表面に連結され、下部アセンブリを横方向から支えるために半径方向内方に延びる側方ガイドをさらに備えうる。上部アセンブリ及び側方ガイドの各々は、流体を上部杭内に流すための逃し通路を有しうる。スタッブ部は、グラウトが環状空間からスタッブ部内へと流れこむことができるように配置されたグラウト戻り孔を有しうる。
【0006】
クレームされた発明に一致する他の実施形態は、基端開口部、内表面、及び内孔を備えた下部杭を準備する工程と、下部杭の基端開口部内及び内孔へと延びるように寸法決めさ
れ、上部杭と下部杭の内表面との間の環状空間を形成するためのスタッブ部を有する上部杭を準備する工程とを備えたグラウト杭の形成方法である。本方法は、また、上部杭を、基端開口部を通過させて下部杭の内孔へと挿入する工程と、下部杭に対して上部杭を打ち込み、上部杭が下部杭に挿入され、上部杭による下部杭への打ち込み力を適用することによって、下部杭を支持体表面内へと十分に移動させる工程とを備える。本方法は、上部杭と下部杭とが連結されるように環状空間にグラウトを供給する工程を含みうる。本方法は、また、上部杭と下部杭とが一体化されて結合されないように下部杭に対して上記上部杭を打ち込みうる。本方法は、上部杭に取り付けられたグラウトディストリビュータアセンブリをさらに備え、環状空間にグラウトを供給する工程の前に、グラウトディストリビュータアセンブリにグラウトラインアセンブリを挿入する工程を備えうる。また、本方法は、上部杭の内表面にしっかりと連結された上部アセンブリと、上部アセンブリに連結され、上部杭の長手方向軸に沿って軸方向に移動できるように取り付けられた下部アセンブリとを取り付けたグラウトディストリビュータアセンブリを準備する工程をさらに備えうる。
【0007】
クレームされた発明のある実施形態は、他の杭に挿入できるように寸法決めされた先端部と、先端部近傍に設けられた打ち込み部とを有する細長筒状本体を備えた打ち込み杭をも含む。打ち込み杭は、また、他の杭へ打ち込み力を適用するために、他の杭に接触するようなサイズ及び形状を有する打ち込み部と、打ち込み杭と他の杭とを連結するためのグラウトを受け入れるために筒状本体に取り付けられたグラウトディストリビュータアセンブリとを備える。打ち込み部の外径は、先端部の外径よりも大きくすることができる。打ち込み部は、他の杭の端部に接触する環状ランドをも有しうる。先端部は、筒状本体内に流体を流すための開口部を有し、グラウトディストリビュータアセンブリは開口部から筒状本体内へと流体を流すための逃し通路を有しうる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】完全に挿入された杭及び例示的な実施形態に従って上部杭と下部杭との間の杭接合部を示した一部が挿入された一般的な杭を描いた海底テンプレートの構造形式の側面図である。
【図2】例示的な実施形態におけるグラウト杭の立面図における切欠横断面図である。
【図3】図2の例示的な実施形態における、グラウトラインアセンブリの下部における針状先端部及びグラウト試料収集容器の立面図における切欠横断面図である。
【図4】例示的な実施形態における、グラウトラインアセンブリの持ち上げ、挿入、嵌合、及び回収の方法を示した一連の側面図である。
【図5】図5aは、他の例示的な実施形態におけるグラウト杭の立面図における切欠横断面図である。図5b、5c、5dは、図5aにおけるグラウト杭の面b−b、面c−c、面d−dに沿った断面図である。
【図6】図5aの例示的な実施形態における、グラウトラインアセンブリの下部の針状先端部の立面図における切欠横断面図である。
【図7】図5aの杭の中に図6の針状先端部を挿入した状態の立面図における切欠横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
クレームされた発明と一致した例示的な実施形態において、上部杭と下部杭との間に形成された環状空間に注入されたグラウトによって接続される管杭に関して説明する。しかし、不必要にクレームされた発明の実施形態を不明瞭にしないために、以下の説明では、概略化した又はブロック図の形で示されたよく知られている構造及び装置の詳細を省略する。説明上、例示的な実施形態の完全な理解を提供するために数々の特定の詳細を記載している。これらの特定の詳細を越えて様々な方法で実施形態を実施できることが理解されよう。さらに、図には例示的な距離、寸法、及び規模を示しているが、ここに示された装
置や方法の距離、寸法、及び規模は、石油掘削装置や風力タービンの支持用途を含みうるいかなる具体的な実施例に応じて変えることができることが理解されよう。
【0010】
図1は、一般的な海底テンプレートの構造形式1を表し、例示的な実施形態のグラウト杭の接合部と打ち込み杭とを含んでいる。具体的には、全長3を有する斜管杭2は、海底面5より下に根入れ長4を有しており、水面6の上方に延びている。部分的に挿入されたもう1つの管杭は、下部杭7、上部杭8、及び下部杭7と上部杭8とを接続する杭接合部(杭継手)9を有することを示し、上部杭8の頂部に結合した杭うちハンマー10による打ち込み力を用いて打ち込みを行う。打ち込み力は、例えば、ハンマー10による上部杭8に対する複数回にわたる打撃によって発生する複数の打ち込み力である。本発明の杭及び接合方法は、鉛直の杭と斜めの杭との両方において用いることができる点に留意すべきである。
【0011】
図2は、クレームされた、上部杭8を有するグラウト杭の例示的な実施形態における切欠横断面図である。上部杭8は、一体式の打ち込みヘッドすなわち打ち込み部11を有し、打ち込み部11は、杭接合部9で接触面60を形成するように、下部杭7の上に取り付けられている。打ち込みヘッド、すなわち打ち込み部11は、杭接合部9の強度が上部杭8における杭接合部9の上方及び下方にあたる部分よりも強くなるように上部杭8に一体化して形成されている。例えば、本実施形態では、打ち込み部11は、杭接合部9における接触面60の位置及び接触面60よりもすぐ上方の位置に放射状に配置された壁で形成される。また、打ち込み部11は、接触面60よりも長手方向下方に所定の長さで形成されており、その部分はスタッブガイド12(後述)の壁の厚さよりも厚く形成されていることが好ましい。また、上部杭8の上部よりも打ち込み部11の強度を強くして、ハンマー10によって生じた打ち込み力に耐え、打ち込み力を下部杭7へと効果的に加え、伝達し、分散するのに必要な強度を与えるのが好ましい。本実施形態では、スタッブガイド12及び打ち込み部11は、製造時のフライス作業によって、適切な寸法となっている一体型の管から形成されている。なお、図5a〜図7のもう一つの例示的な実施形態では、打ち込み部及びスタッブガイドは別々に形成されており、例えば、現場に運ぶ前の製造段階で、打ち込み部とスタッブガイドとを溶接して接続し、一体化することにより上部杭を形成し、他の管に接続する構成とすることができる。
【0012】
本実施形態では、下部杭7は、基端部50、基端開口部52、内壁すなわち内表面54、及び内孔56を有する。上部杭8は、先端部、即ち、杭スタッブ部(スタッブガイド)12を有する長方形状の円筒体で形成されており、杭スタッブガイド12はスタッブコーン13を有し、下部杭7の内孔56に挿入できるように寸法決めされ、下部杭7の内表面54と杭スタッブガイド12の外壁すなわち外表面58との間に環状空間17を形成する。実施形態では、スタッブコーン13は、所定の位置に杭スタッブガイド12を導くために、下部杭7の内表面54に溶接されたセントラライザー14の下方へと延設されている。一般的な摺動式のグラウトのシール15は、グラウトの一般的なシールプロテクターのシム16の上方に設けられており、環状空間17の下端部を密封する。スタッブコーン13は、流体をスタッブガイド12内に流すための開口部を有する。打ち込み部11の外径は、杭スタッブガイド12の外径よりも大きく、打ち込み部11は、グラウト杭の長手方向軸と交差する方向に延設され、下部杭7の基端部50に環状接触又は当接するように下部杭7の基端部50と面する環状ランド62を有する。
【0013】
グラウトディストリビュータアセンブリ70は、グラウトを受け取り、環状空間17内にグラウトを導くために、上部杭8の杭スタッブガイド12の中に取り付けられている。グラウトディストリビュータアセンブリ70は、スタッブガイド12の内表面74にしっかりと連結された上部アセンブリ72と、上部アセンブリ72から延設された下部アセンブリ76とを有する。上部アセンブリ72は、杭スタッブガイド12の内壁に、上縁でし
っかりと(即ち、溶接されて)固定された支持コーン付きグラウト戻りシュート26を有する。また、上部アセンブリ72は、支持コーン付きグラウト戻りシュート26にしっかりと(即ち、溶接されて)固定され、下方へと延設されているグラウトラインレセプタクル24を有する。下部アセンブリ76は、ディストリビュータ20と、グラウトラインレセプタクル24とグラウトディストリビュータ20との間に延設された下降管23とを有する。ディストリビュータ20は、閉端部78と、端部78に形成された複数の出口80と、フレキシブルホース18とを有する。フレキシブルグラウトホース18は、例えば、ねじ込み継手(threaded fittings)のような接続部21を複数有し、各接続部21は、一端を出口80に、他端を杭スタッブガイド12に形成されたグラウト孔19に各々接続されている。下部杭7に対して上部杭8による打ち込み力を与える間、フレキシブルホース18により、下降管23及びディストリビュータ20が杭スタッブガイド12に対して、軸方向に動くことが可能なる。杭スタッブガイド12の内壁に溶接などによって固定され、その中に形成された流路を有するグラウトディストリビュータガイドプレート25により、グラウトディストリビュータ下降管23は側方から支えられている。ガイドスリーブ25aは流路に取り付けられ、プレート25に固定されているが、下降管23の軸方向への移動を妨げないように、下降管23を横方向に支える大きさに定めてられており、それによって、スリーブ25aを介してグラウトディストリビュータ下降管23を上下方向に摺動することができる。従って、下降管23の下部アセンブリ76は、例えば、溶接等により、スタッブガイド12の下部と厳格には連結されておらず、スリーブ25aによって側方に/横方向に支えられた状態で、フレキシブルホース18によって連結されている。従って、打ち込み力に起因して応力波が生じたことによるスタッブガイド12と下部アセンブリ76との間の軸方向における相対的な移動は、自由に(または、制限なく)行うことができるので、その移動によって構成要素への損傷を引き起こす原因となる応力波が発生するおそれは低くなり、溶接接続を行った場合の損傷の発生を回避することができる。また、グラウトディストリビュータ下降管23の長さは、グラウトラインアセンブリ36(後述)を杭から抜き出した後、下部杭7と杭スタッブガイド12との間の環状空間17からグラウトが逆流するのを防ぐことができる長さに決定する。
【0014】
スタッブコーン13が水面6の下方にあるとき、挿入時及び打ち込み時にスタッブガイド12内を水が流れるように、支持コーン付きグラウト戻りシュート26及びグラウトディストリビュータガイドプレート25に水抜き用の割止め孔27が設けられている。また、杭を挿入するときの抵抗による水圧の発生や水圧の上昇を防止するとの観点から、シュート26及びプレート25にある各々の割止め孔27の流路断面積の合計が、スタッブガイド12内を水が自由に流動するのに十分な大きさとなるように、割止め孔27の大きさを決定する。また、複数のグラウト戻りポート28が、杭スタッブガイド12の周りであって、環状空間17の頂部付近にある支持コーン付きグラウト戻りシュート26の上方かつランド62の下方に並べて形成されており、グラウトはスタッブガイド12内に流れ出て、外表面でグラウトを回収して後の検証に用いるための収集容器(後述)に流れ込む。溶接ビード29は、グラウトされる環状空間の長さを最短にする継目歯形(shear key)として機能するように、下部杭7の内壁及び杭スタッブガイド12の外壁に用いられる。
【0015】
図3では、グラウトライン31の針状先端部30の切欠横断面図を示しており、グラウトライン31の針状先端部30は、上部杭8の開端へと挿入され、下部杭7の内孔56へと移動し、グラウトラインレセプタクル24と下降管23とディストリビュータ20の閉端部78と結合する。針状先端部30の底部は、隙間32を有し、隙間32により、グラウトは細長部39から流れ出て、閉端部78に流れ込み、その後、複数の出口80に流れ込む。先端部30の先端は、先端部30の挿入時や回収時/抜き出し時に、先端が上部杭8や水抜き用の割止め孔27に起因して動けなくなったり引っかかるのを防止する先端ガード33によって保護される。グラウト試料収集容器34は、針状先端部30の壁の外表面に溶接されており、これにより、戻りポート28を介して環状空間17から戻ってきたグラウトを収集する環状ギャップ、または容器の空洞が形成され、外表面でグラ
ウトが回収される。その後、グラウト強度の後の検証を行うために、円柱供試体に、回収されたグラウト試料を移すことができる。グラウト試料収集容器34の頂部には、グラウトを環状空間内で循環させて、グラウトラインレセプタクル24とグラウト試料収集容器34との間に形成された空間を通ってグラウトが逆流するのを防ぐために、一般的なグラウトワイパブレードのシール35が設けられている。シールプロテクターシム40は、先端部30の移動時に、他の部品を撓ませるために、シール35の上下に用いられており、その結果、シールプロテクターシム40によって、不注意に起因するシール35の損傷やシール35の除去という不都合の発生を防止する。
【0016】
図4a〜dでは、例示的な実施形態におけるグラウトを注入する手順について一連の図を示している。図4aに示されているように、グラウトラインアセンブリ36は、ホース39によりグラウトポンプ37に連結されており、上部杭8の上方に持ち上げられている。グラウトラインアセンブリ36は、先端部30、グラウト試料収集容器34、及び針状先端部30をグラウトラインレセプタクル24と一直線にするための、柔軟性を有するクランプ式セントラライザー38を有する。そして、このセントラライザー38により、グラウトラインアセンブリの挿入時及び回収時に、杭に対してグラウトラインアセンブリ36が詰まってしまうという不都合の発生を低減することが可能になるとともに、挿入時にグラウトレセプタクルに対する先端部30の位置合わせを容易に行うことが可能になる。また、グラウトラインアセンブリ36は、先端部30がグラウトラインレセプタクル24と結合する(図4c)まで、上部杭8に挿入される(図4b)。グラウトは、その後、グラウトポンプ37からグラウトラインアセンブリ36を通して、下部杭7の内壁と杭スタッブガイド12の外壁との間に形成された環状空間17に送りこまれる。そして、溢れ出たグラウトは、グラウト試料収集容器34内に収集される。予め測定した量のグラウトを送りこんだ後、グラウトポンプ37を停止し、グラウトラインアセンブリ36を上部杭8から抜き出す(図4d)。なお、グラウト試料収集容器34内に収集されたグラウトは、検査のために取り除かれる場合がある。
【0017】
図5a〜d及び図6、7では、クレームされた発明と一致した他の実施形態を示しており、図1〜4dの実施形態と類似している。そのため、実施形態と同一又は実質的に類似の特徴及び構成要素には同じ参照符号を付し、これらの特徴及び構成要素についての説明は省略する。本実施形態は、先の実施形態といくつかの点で異なる。第一に、杭接合部98は、別々の管から形成されている打ち込み部102及びスタッブ部104を有する上部杭100を備える。例えば、現場に運ぶ前の製造段階で、溶接継手106を形成して、打ち込み部102とスタッブ部104とを溶接して、一体化することにより互いに接続され、上部管に接続されている。また、本実施形態においても、短い下降管108と、グラウト戻りシュートとして機能しない支持コーン109と、中央に孔が形成された横板111によって下降管108に取り付けられるコネクタ110とが使用される。コネクタ110は、細長いパイプ112を有し、パイプ112は、横手に設けられた上部入口114と、閉端部78へとグラウトを向かわせるための下部出口116とを有する。更に、本実施形態においては、針状先端部118は、グラウトラインレセプタクルを有していないが、挿入時に針状先端部118の下端部の位置合わせを補助するための環状のセンタリングコーン120を有する。また、針状先端部118は、コネクタレシーバーアセンブリ122を有しており、コネクタレシーバーアセンブリ122は、図7に示すように、パイプと、コネクタ110へグラウトを供給するために設けられ、コネクタ110を受け入れて、コネクタ110と連結するように、摺動可能で入れ子式(telescopingly)であるコネクタレシーバー124とにより構成されている。なお、本実施形態では、割止め孔27が、コーン120及びプレート25の周りに環状に等間隔に孔が配列されていることが明確に示されており(図5b及び図5c)、割止め孔27及びフレキシブルホース18は、先の実施形態における割止め孔及びホースと同一又は類似している。また、センタリングコーン120は、孔27の水の流れ/戻り機能を妨げないような位置に配置されており、また、孔27の水の流れ/戻り機能を妨げないようなサイズ及び形状を有している。
【0018】
従って、第1の杭は第2の杭に結合され、第1の杭は、第2の杭を用いて、支持体表面の中に突き刺すように打ち込まれる。第2の杭は、杭スタッブガイド、グラウトディストリビュータアセンブリ、及び一体式の打ち込み部または打ち込みヘッドの組み合わせを含む。下部杭と上部杭との間をしっかりと連結させ(例えば、溶接して連結させ、または留め金具で連結させ)ることなく、鉛直又は斜めの杭を突き刺して打ち込んだ後、シールされた針状先端部を有するグラウトラインアセンブリ36を、第2の杭すなわち上部杭の中の低い場所に移動させ、杭スタッブガイド上部に取り付けられたグラウトラインレセプタクルと結合して、グラウトをグラウトディストリビュータを通過させて、杭スタッブガイド上部と下部杭との間の環状空間に押し込め、それによって、グラウトを硬化または養生させ、上部杭と下部杭とをしっかりと連結させることができる。
【0019】
クレームされた発明と一致するグラウト杭及びその接合方法は、以下のような場合を含め様々な効果をもたらす。正常に作動する間及び過度に負荷がかかる間、杭に発生する最大の力及びモーメントを、グラウト結合によって、管の最も強い強度を発現するように杭中に伝える。従って、正常に作動する間及び過度な負荷がかかる間、杭接合部は杭に発生する力及びモーメントに耐えることが可能である。また、本実施形態の杭及び接合方法には、上部杭と下部杭との間の溶接による連結が含まれていないので、本実施形態の杭及び接合方法によって、従来の溶接による接合方法を用いる場合と比べて、杭をつなげるのに必要な時間が大幅に減少する。更に、グラウトディストリビュータの支持フレームによって、打ち込み時に発生する応力波は、溶接接続を弱めることなく、支持フレームを通過する。支持コーン及びグラウトディストリビュータガイドに設けられた水抜き用の割止め孔によって、打ち込み時に杭の内部で生ずる水圧が、支持コーン及びグラウトディストリビュータガイドを通して軽減される。更に、グラウトラインアセンブリは、グラウト戻りポート上部から流れ出たグラウトを、グラウト戻りシュート(支持コーン)に流し、グラウトラインアセンブリの針状先端部の上方に取り付けられたグラウト試料収集容器内に回収するために使うことができる。
【0020】
グラウト杭及び杭をグラウトする方法が本発明に従って提供されることが明らかである。好ましい実施形態に関して本発明を説明したが、多くの代替、変更、および変形は、当業者にとって明らかである。従って、本開示は、発明の精神および範囲内に入るすべての代替、修正、等価および変形を包含することを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端部、基端開口部、内表面、及び内孔を有する下部杭と、
上記下部杭へと打ち込み力が作用するように構成された一体式の打ち込み部を有する上部杭とを備えたグラウト杭であって、
上記上部杭は、上記下部杭の上記基端開口部内及び内孔へと延設されるように寸法決めされ、上記上部杭と上記下部杭の内表面との間の環状空間を形成するためのスタッブ部を有し、
上記環状空間は、上記上部杭と上記下部杭とを連結するグラウトを受け入れるように寸法決めされている
ことを特徴とするグラウト杭。
【請求項2】
請求項1に記載のグラウト杭において、
上記打ち込み部の壁厚は、上記スタッブ部の壁厚よりも厚い
ことを特徴とするグラウト杭。
【請求項3】
請求項2に記載のグラウト杭において、
上記打ち込み部は、上記下部杭の基端部に接触するように設けられた環状ランドを有する
ことを特徴とするグラウト杭。
【請求項4】
請求項1に記載のグラウト杭において、
打ち込み杭を上記下部杭に連結するグラウトを受け入れるように上記上部杭に取り付けられたグラウトディストリビュータアセンブリをさらに備え、
上記スタッブ部は、上記スタッブ部内を流体が流れることができるような開口部を有し、
上記グラウトディストリビュータアセンブリは、流体を上記開口部から上記スタッブ部内に流すための逃し通路を有する
ことを特徴とするグラウト杭。
【請求項5】
請求項1に記載のグラウト杭において、
上記上部杭に取り付けられたグラウトディストリビュータアセンブリをさらに備え、
上記グラウトディストリビュータアセンブリは、上記上部杭の内表面にしっかりと連結された上部アセンブリと、上記上部アセンブリに連結され、上記上部杭の長手方向軸に沿って軸方向に移動できるように取り付けられた下部アセンブリとをさらに備える
ことを特徴とするグラウト杭。
【請求項6】
請求項5に記載のグラウト杭において、
上記上部杭の内表面に連結され、上記下部アセンブリを横方向から支えるために半径方向内方に延びる側方ガイドをさらに備える
ことを特徴とするグラウト杭。
【請求項7】
請求項6に記載のグラウト杭において、
上記上部アセンブリ及び上記側方ガイドの各々は、流体を上記上部杭内に流すための逃し通路を有する
ことを特徴とするグラウト杭。
【請求項8】
請求項1に記載のグラウト杭において、
上記スタッブ部は、グラウトが上記環状空間から上記スタッブ部内へと流れこむことができるように配置されたグラウト戻り孔を有する
ことを特徴とするグラウト杭。
【請求項9】
グラウト杭の形成方法であって、
基端開口部、内表面、及び内孔を備えた下部杭を準備する工程と、
上記下部杭の上記基端開口部内及び内孔へと延びるように寸法決めされ、上記上部杭と上記下部杭の内表面との間の環状空間を形成するためのスタッブ部を有する上部杭を準備する工程と、
上記上部杭を、上記基端開口部を通過させて上記下部杭の内孔へと挿入する工程と、
上記上部杭を上記下部杭に挿入した状態で上記下部杭に対して上記上部杭を打ち込み、、上記上部杭による上記下部杭への打ち込み力を適用することによって、上記下部杭を支持体表面内へと十分に移動させる工程と、
上記上部杭と上記下部杭とが連結されるように上記環状空間にグラウトを供給する工程とを備える
ことを特徴とするグラウト杭の形成方法。
【請求項10】
請求項9に記載のグラウト杭の形成方法において、
上記上部杭と上記下部杭とが一体化されて結合されないように上記下部杭に対して上記上部杭を打ち込む
ことを特徴とするグラウト杭の形成方法。
【請求項11】
請求項9に記載のグラウト杭の形成方法において、
上記上部杭に取り付けられたグラウトディストリビュータアセンブリを準備する工程と、
上記環状空間にグラウトを供給する工程の前に、上記グラウトディストリビュータアセンブリにグラウトラインアセンブリを挿入する工程とを備える
ことを特徴とするグラウト杭の形成方法。
【請求項12】
請求項9に記載のグラウト杭の形成方法において、
上記下部杭に対して上記上部杭を打ち込む上記工程の後に、上記環状空間にグラウトを供給する工程を備える
ことを特徴とするグラウト杭の形成方法。
【請求項13】
請求項9に記載のグラウト杭の形成方法において、
上記上部杭に取り付けられたグラウトディストリビュータアセンブリをさらに備え、
上記グラウトディストリビュータアセンブリは、上記上部杭の内表面にしっかりと連結された上部アセンブリと、上記上部アセンブリに連結され、上記上部杭の長手方向軸に沿って軸方向に移動できるように取り付けられた下部アセンブリとをさらに備える
ことを特徴とするグラウト杭の形成方法。
【請求項14】
他の杭と連結される打ち込み杭であって、
他の杭に挿入できるように寸法決めされた先端部と、上記先端部近傍に設けられ、他の杭へ打ち込み力を適用するために、上記他の杭に接触するようなサイズ及び形状を有する打ち込み部とを有する細長筒状本体と、
上記打ち込み杭と他の杭とを連結するためのグラウトを受け入れるために上記筒状本体に取り付けられたグラウトディストリビュータアセンブリと
を備える打ち込み杭。
【請求項15】
請求項14に記載の打ち込み杭において、
上記打ち込み部の外径は、上記先端部の外径よりも大きい
ことを特徴とする打ち込み杭。
【請求項16】
請求項15に記載の打ち込み杭において、
上記打ち込み部は、上記他の杭の端部に接触する環状ランドを有する
ことを特徴とする打ち込み杭。
【請求項17】
請求項14に記載の打ち込み杭において、
上記先端部は、上記筒状本体内に流体を流すための開口部を有し、
上記グラウトディストリビュータアセンブリは、上記開口部から上記筒状本体内へと流体を流すための逃し通路を有する
ことを特徴とする打ち込み杭。
【請求項18】
請求項14に記載の打ち込み杭において、
上記グラウトディストリビュータアセンブリは、上記筒状本体の内表面にしっかりと連結された上部グラウトディストリビュータアセンブリと、上記上部グラウトディストリビュータアセンブリに連結され、上記筒状本体の長手方向軸に沿って軸方向に移動できるように取り付けられた下部グラウトディストリビュータアセンブリとを有する
ことを特徴とする打ち込み杭。
【請求項19】
請求項18に記載の打ち込み杭において、
上記筒状本体の内表面に連結され、上記下部グラウトディストリビュータアセンブリを横方向から支えるために半径方向内方に延びる側方ガイドをさらに備える
ことを特徴とする打ち込み杭。
【請求項20】
請求項19に記載の打ち込み杭において、
上記上部グラウトディストリビュータアセンブリ及び上記側方ガイドの各々は、流体を上記筒状本体内に流すための逃し通路を有する
ことを特徴とする打ち込み杭。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2012−528968(P2012−528968A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514123(P2012−514123)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際出願番号】PCT/US2010/037233
【国際公開番号】WO2010/141700
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(511295667)キーストーン エンジニアリング,インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】