説明

杭建込み施工管理装置およびプログラム

【課題】施工品質を向上させることのできる杭建込み施工管理装置およびプログラムを得る。
【解決手段】杭建込み施工管理装置30により、管理対象とする杭の少なくとも径および長さが含まれる杭仕様情報、および杭を建込む地盤の土質を示す土質情報を取得し、取得した杭仕様情報および土質情報に基づいて、掘削機20により、建込み孔を掘削により造成した後に当該建込み孔に杭を建込む施工を行う際の、施工時間の経過に伴う建込み孔の造成時の掘削ヘッドの先端位置および杭の建込み時の当該杭の先端位置の変化を示す施工サイクルタイム情報を導出し、杭建込み施工支援装置40により、施工サイクルタイム情報に基づいて、当該施工サイクルタイム情報により示される施工時間の経過を一方の軸とし、掘削ヘッドの先端位置および杭の先端位置を他方の軸としたグラフを示すグラフ情報を作成し、作成したグラフ情報により示されるグラフを表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭建込み施工管理装置およびプログラムに係り、より詳しくは、杭の建込み孔の掘削から杭の建込みまでの施工を管理する杭建込み施工管理装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
高支持力埋込み杭等の杭の建込み施工の工法は、パイルメーカ各社を中心に百花繚乱のごとく、それぞれ独自に開発され、認定されているが、実際の杭の施工にあたっては、杭打ち機のオペレータの勘と経験に頼っている場合が多く、必ずしも施工品質が十分であるとは言えなかった。
【0003】
これに対し、特許文献1には、縦向きの支柱に設置されたガイドレールに沿って上下に移動される昇降台と、該昇降台に設置された掘削軸回転駆動手段と、前記昇降台の下側に吊り下げ支持され、前記掘削軸回転駆動手段によって回転される掘削回転軸と、該掘削回転軸の下端に固定した掘削ヘッドとを備えると共に、前記掘削ヘッドには、正転させることによって掘削土を上昇させるオーガスクリューと、逆転させることによって該オーガスクリューの外径より外側に突出する拡大掘削刃と、前記掘削回転軸内を通して掘削補助液やセメント系固化材等の液状材を吐出する液状材噴射ノズルと、を備えた既製杭建込み用削孔装置を使用し、前記掘削ヘッドを地中に回転させつつ挿入する既製杭建込み穴の形成、該建込み穴下端の拡大球根形成部の形成、前記固化材の注入および既製杭の前記建込み穴への建込みを行うプレボーリング式既製杭建込みにおける既製杭建込み施工管理装置であって、前記既製杭建込み穴の形成から固化材の注入完了までの一連の工程を複数の施工段階に区分けし、施工段階毎に掘削ヘッド深度、固化材注入量等の所定の基本条件データを予め入力しておく基本条件データ記録手段と、前記掘削ヘッド先端の深度を計測する掘削ヘッド深度計測手段、前記既製杭の先端深度を計測する既製杭深度計測手段および/または該液状材噴射ノズルへの液状材注入量を計測する注入量計測手段等の実施工データ計測手段と、該実施工データ計測手段による計測データおよび前記施工段階毎の基本条件データを表示するデータ表示手段と、前記計測データを経時的に記録する記録手段と、を備え、前記実施工データ計測手段によって計測された実施工時計測データと前記所定の基本条件データとをコンピュータによるデータ処理によって比較し、実施工時計測データが各施工段階の前記基本条件データを満足することによって各施工段階の終了を判別できる表示を前記表示手段に表示させるようにしたことを特徴としてなる既製杭建込み施工管理装置が開示されている。
【0004】
また、この既製杭建込み施工管理装置では、前記表示手段により、施工段階毎に必要なデータを表示させる段階毎表示画面に切り換え表示させるようにし、その段階毎表示画面に、当該施工段階の前記予め入力された基本条件データと実施工時計測データとを表示させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−243186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示されている技術では、各施工段階の基本条件データと実施工時計測データとを表示するようにしているため、施工段階毎に基本条件を満足するように施工を進めることはできるものの、各施工段階内における施工自体はオペレータの勘や経験に頼るものとされているため、その施工品質がオペレータの能力に左右されてしまう、という問題点があった。
【0007】
なお、この問題点は、プレボーリング工法に限らず、中堀工法にも生じ得る問題点である。
【0008】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、施工者による施工能力のばらつきを抑制し、施工品質を向上させることのできる杭建込み施工管理装置およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1記載の杭建込み施工管理装置は、管理対象とする杭の少なくとも径および長さが含まれる杭仕様情報、および前記杭を建込む地盤の土質を示す土質情報を取得する取得手段と、前記取得手段によって取得された前記杭仕様情報および前記土質情報に基づいて、掘削機により、前記杭を建込む建込み孔を掘削により造成した後に当該建込み孔に前記杭を建込む施工を行う際の、施工時間の経過に伴う前記建込み孔の造成時の掘削ヘッドの先端位置および前記杭の建込み時の当該杭の先端位置の変化を示す施工サイクルタイム情報を導出する導出手段と、前記導出手段によって導出された前記施工サイクルタイム情報に基づいて、当該施工サイクルタイム情報により示される前記施工時間の経過を一方の軸とし、前記掘削ヘッドの先端位置および前記杭の先端位置を他方の軸としたグラフを示すグラフ情報を作成する作成手段と、前記作成手段によって作成されたグラフ情報により示されるグラフを表示する表示手段と、を備えている。
【0010】
請求項1記載の杭建込み施工管理装置によれば、取得手段により、管理対象とする杭の少なくとも径および長さが含まれる杭仕様情報、および前記杭を建込む地盤の土質を示す土質情報が取得される。なお、上記取得手段による各情報の取得には、キーボード、タッチパネル等の入力手段による取得、記憶手段から読み出すことによる取得、およびネットワーク等の通信回線を介した外部装置からの受信による取得が含まれる。
【0011】
ここで、本発明では、導出手段により、前記取得手段によって取得された前記杭仕様情報および前記土質情報に基づいて、掘削機により、前記杭を建込む建込み孔を掘削により造成した後に当該建込み孔に前記杭を建込む施工を行う際の、施工時間の経過に伴う前記建込み孔の造成時の掘削ヘッドの先端位置および前記杭の建込み時の当該杭の先端位置の変化を示す施工サイクルタイム情報が導出される。
【0012】
そして、本発明では、作成手段により、前記導出手段によって導出された前記施工サイクルタイム情報に基づいて、当該施工サイクルタイム情報により示される前記施工時間の経過を一方の軸とし、前記掘削ヘッドの先端位置および前記杭の先端位置を他方の軸としたグラフを示すグラフ情報が作成され、前記作成手段によって作成されたグラフ情報により示されるグラフが表示手段によって表示される。
【0013】
このように、請求項1記載の杭建込み施工管理装置によれば、管理対象とする杭の少なくとも径および長さが含まれる杭仕様情報、および前記杭を建込む地盤の土質を示す土質情報を取得し、取得した前記杭仕様情報および前記土質情報に基づいて、掘削機により、前記杭を建込む建込み孔を掘削により造成した後に当該建込み孔に前記杭を建込む施工を行う際の、施工時間の経過に伴う前記建込み孔の造成時の掘削ヘッドの先端位置および前記杭の建込み時の当該杭の先端位置の変化を示す施工サイクルタイム情報を導出し、導出した前記施工サイクルタイム情報に基づいて、当該施工サイクルタイム情報により示される前記施工時間の経過を一方の軸とし、前記掘削ヘッドの先端位置および前記杭の先端位置を他方の軸としたグラフを示すグラフ情報を作成し、作成したグラフ情報により示されるグラフを表示しているので、施工者による施工能力のばらつきを抑制し、施工品質を向上させることができる。
【0014】
なお、本発明は、請求項2に記載の発明のように、前記掘削機により実際に施工した際の施工時間の経過に伴う前記掘削ヘッドの先端位置および前記杭の先端位置を測定する測定手段をさらに備え、前記表示手段が、前記グラフに前記測定手段による測定結果を重ねて表示してもよい。これにより、より施工品質を向上させることができる。
【0015】
一方、上記目的を達成するために、請求項3記載のプログラムは、コンピュータを、管理対象とする杭の少なくとも径および長さが含まれる杭仕様情報、および前記杭を建込む地盤の土質を示す土質情報を取得する取得手段と、前記取得手段によって取得された前記杭仕様情報および前記土質情報に基づいて、掘削機により、前記杭を建込む建込み孔を掘削により造成した後に当該建込み孔に前記杭を建込む施工を行う際の、施工時間の経過に伴う前記建込み孔の造成時の掘削ヘッドの先端位置および前記杭の建込み時の当該杭の先端位置の変化を示す施工サイクルタイム情報を導出する導出手段と、前記導出手段によって導出された前記施工サイクルタイム情報に基づいて、当該施工サイクルタイム情報により示される前記施工時間の経過を一方の軸とし、前記掘削ヘッドの先端位置および前記杭の先端位置を他方の軸としたグラフを示すグラフ情報を作成する作成手段と、前記作成手段によって作成されたグラフ情報により示されるグラフを表示する表示手段と、として機能させるためのものである。
【0016】
従って、請求項3に記載のプログラムによれば、コンピュータに対して請求項1記載の発明と同様に作用させることができるので、請求項1記載の発明と同様に、施工者による施工能力のばらつきを抑制し、施工品質を向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、管理対象とする杭の少なくとも径および長さが含まれる杭仕様情報、および前記杭を建込む地盤の土質を示す土質情報を取得し、取得した前記杭仕様情報および前記土質情報に基づいて、掘削機により、前記杭を建込む建込み孔を掘削により造成した後に当該建込み孔に前記杭を建込む施工を行う際の、施工時間の経過に伴う前記建込み孔の造成時の掘削ヘッドの先端位置および前記杭の建込み時の当該杭の先端位置の変化を示す施工サイクルタイム情報を導出し、導出した前記施工サイクルタイム情報に基づいて、当該施工サイクルタイム情報により示される前記施工時間の経過を一方の軸とし、前記掘削ヘッドの先端位置および前記杭の先端位置を他方の軸としたグラフを示すグラフ情報を作成し、作成したグラフ情報により示されるグラフを表示しているので、施工者による施工能力のばらつきを抑制し、施工品質を向上させることができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施の形態に係る杭建込み施工管理システムの全体構成を示す概略側面図である。
【図2】実施の形態に係る杭建込み施工管理装置の電気系の要部構成を示すブロック図である。
【図3】実施の形態に係る杭建込み施工支援装置の電気系の要部構成を示すブロック図である。
【図4】実施の形態に係る杭建込み施工管理装置に備えられた二次記憶部の主な記憶内容を示す模式図である。
【図5】実施の形態に係る基本情報データベースの構成を示す模式図である。
【図6】実施の形態に係るセメントミルク情報データベースの構成を示す模式図である。
【図7】実施の形態に係る施工サイクルタイム情報データベースの構成を示す模式図である。
【図8】実施の形態に係るセメントミルク注入量データベースの構成を示す模式図である。
【図9】実施の形態に係る施工サイクルタイム作成処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】実施の形態に係る初期入力画面の一例を示す概略図である。
【図11】実施の形態に係る施工処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】実施の形態に係る施工サイクルタイム表示画面の構成例を示す概略図である。
【図13】実施の形態に係る施工サイクルタイム表示画面の更新状態の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、ここでは、本発明を、プレボーリング工法により杭を建込む形態に適用した場合を例に説明する。
【0020】
まず、図1を参照して、本実施の形態に係る杭建込み施工管理システム10の全体構成を説明する。
【0021】
同図に示すように、本実施の形態に係る杭建込み施工管理システム10は、施工対象とする杭(以下、「施工対象杭」という。)を建込む建込み孔を掘削により造成すると共に、造成した建込み孔に施工対象杭を建込む掘削機20と、施工対象杭を建込む施工を行う施工現場に設置された施工管理室に設けられた杭建込み施工管理装置30と、掘削機20の操作室に設けられた杭建込み施工支援装置40と、を備えている。
【0022】
本実施の形態に係る掘削機20は、クローラ21により移動可能とされており、本体22の先端部近傍に立設された支柱23を備えている。支柱23には、ガイドレール24が固定されており、これに昇降台25が昇降自在に支持されている。昇降台25は、支柱23の上端部を経由させたワイヤー26に吊り下げられ、本体22に設けられたウインチ27によって昇降操作される。なお、本実施の形態に係るウインチ27には、ワイヤー26の送り出し量および巻き戻し量を検出するためのローラ型検出器27Aが備えられている。
【0023】
昇降台25には、外周部にオーガスクリューが設けられた掘削回転軸28が垂下されており、掘削回転軸28は昇降台25に設けられたモータにより正方向および逆方向に回転される。
【0024】
掘削回転軸28の下端には、オーガスクリューが軸部周辺に設けられた掘削ヘッド29が固定されている。なお、掘削ヘッド29には、先端(下端)に下向きに多数の掘削刃(図示省略。)が備えられており、掘削回転軸28をオーガスクリューによって掘削土を上昇させる方向、すなわち正転させることにより、当該掘削刃によって地盤が掘削され、オーガスクリューによって揚土される。
【0025】
また、掘削ヘッド29の側面中間部には一対の拡大掘削刃(図示省略。)が設けられている。この拡大掘削刃は、施工対象杭の外径より大きな拡大根固め部を形成するためのものであり、掘削回転軸28を正転させている状態ではオーガスクリューの外径より内側にたたまれた状態とされ、掘削回転軸28を逆転させることによってオーガスクリューの外径より外側に突出し、先端が杭の外径より外側に拡開される。
【0026】
さらに、掘削ヘッド29の側面および下端面には、掘削補助液(本実施の形態では、水)およびセメントミルクを噴射する液体噴射ノズル(図示省略。)が設けられている。これらの掘削補助液およびセメントミルクは、施工現場の敷地内に設けられた、掘削補助液を貯留する第1タンク50およびセメントミルクを貯留する第2タンク51から、切り替えバルブ53により、共通搬送管60を介して選択的に供給される。ここで、共通搬送管60には、当該共通搬送管60の内部を流れる掘削補助液およびセメントミルクの流量を検出する流量検出器54が設けられている。
【0027】
なお、本実施の形態に係る掘削機20は、掘削回転軸28を継ぎ足すことにより、より深い位置まで掘削することができるものとされている。
【0028】
次に、図2を参照して、本実施の形態に係る杭建込み施工管理装置30の電気系の要部構成を説明する。
【0029】
同図に示すように、本実施の形態に係る杭建込み施工管理装置30は、当該装置全体の動作を司るCPU(Central Processing Unit、中央処理装置)30Aと、CPU30Aによる各種処理プログラムの実行時のワークエリア等として用いられるRAM(Random Access Memory)30Bと、各種パラメータ等が予め記憶されたROM(Read Only Memory)30Cと、各種情報を記憶するために用いられる記憶手段として機能する二次記憶部(ここでは、ハードディスク装置)30Dと、各種情報を入力するために用いられるキーボード30Eと、各種情報を表示するために用いられるディスプレイ30Fと、外部装置等との間で通信を行う通信部30Hと、が備えられており、これら各部はシステムバス30Iにより電気的に相互に接続されている。
【0030】
従って、CPU30Aは、RAM30B、ROM30C、および二次記憶部30Dに対するアクセス、キーボード30Eを介した各種入力情報の取得、ディスプレイ30Fに対する各種情報の表示、および通信部30Hを介した外部装置等との間の通信を各々行うことができる。
【0031】
次に、図3を参照して、本実施の形態に係る杭建込み施工支援装置40の電気系の要部構成を説明する。
【0032】
同図に示すように、本実施の形態に係る杭建込み施工支援装置40は、杭建込み施工管理装置30と略同様の構成とされており、当該装置全体の動作を司るCPU40Aと、CPU40Aによる各種処理プログラムの実行時のワークエリア等として用いられるRAM40Bと、各種パラメータ等が予め記憶されたROM40Cと、各種情報を記憶するために用いられる記憶手段として機能する二次記憶部(ここでは、ハードディスク装置)40Dと、各種情報を入力するために用いられるキーボード40Eと、各種情報を表示するために用いられるディスプレイ40Fと、各種センサ等との間で各種信号の授受を行う外部インタフェース(I/F)40Gと、外部装置等との間で通信を行う通信部40Hと、が備えられており、これら各部はシステムバス40Iにより電気的に相互に接続されている。
【0033】
従って、CPU40Aは、RAM40B、ROM40C、および二次記憶部40Dに対するアクセス、キーボード40Eを介した各種入力情報の取得、ディスプレイ40Fに対する各種情報の表示、外部インタフェース40Gを介したセンサ等との間の各種信号の授受、および通信部40Hを介した外部装置等との間の通信を各々行うことができる。
【0034】
なお、外部インタフェース40Gには、前述したローラ型検出器27Aおよび流量検出器54が電気的に接続されており、CPU40Aは、これらのセンサからの出力信号を受信することができる。
【0035】
また、本実施の形態に係る杭建込み施工管理システム10では、杭建込み施工管理装置30に設けられた通信部30Hおよび杭建込み施工支援装置40に設けられた通信部40Hが、共に無線で相互に通信できるものとされているが、これに限らず、有線で相互に通信できる形態としてもよい。
【0036】
一方、図4には、杭建込み施工管理装置30に備えられた二次記憶部30Dの主な記憶内容が模式的に示されている。
【0037】
同図に示すように、二次記憶部30Dには、各種データベースを記憶するためのデータベース領域DBと、杭建込み施工管理装置30の各部を制御するための制御プログラムや各種処理を行うためのアプリケーション・プログラム等を記憶するためのプログラム領域PGと、が設けられている。
【0038】
また、データベース領域DBには、基本情報データベースDB1、セメントミルク情報データベースDB2、施工サイクルタイム情報データベースDB3、およびセメントミルク注入量データベースDB4が含まれる。以下、各データベースの構成について詳細に説明する。
【0039】
本実施の形態に係る杭建込み施工管理システム10は、掘削機20により、施工対象杭を建込む建込み孔を掘削により造成した後に当該建込み孔に施工対象杭を建込む施工を行う際の、施工時間の経過に伴う建込み孔の造成時における掘削ヘッド29の先端部の位置および施工対象杭の建込み時における施工対象杭の先端部の位置の変化を示す施工サイクルタイム情報を事前に導出する施工サイクルタイム情報作成機能が搭載されている。
【0040】
基本情報データベースDB1およびセメントミルク情報データベースDB2は、この施工サイクルタイム情報作成機能を実現するために予め構築されたものであり、基本情報データベースDB1は、一例として図5に示すように、土質および基本情報の各情報が記憶されるように構成されている。
【0041】
上記土質は、施工対象とする地盤の土質を示す情報であり、上記基本情報は、対応する土質の地盤に対する建込み孔の造成および施工対象杭の建込みを行う際の基本的な条件を示す情報である。
【0042】
なお、本実施の形態に係る杭建込み施工管理システム10では、同図に示すように、上記基本情報として、掘削速度、掘削時反復回数、拡大掘削速度、拡大掘削時反復回数、混合攪拌速度、混合攪拌時反復回数、引上速度、および引上時反復回数の8種類の情報が適用されている。
【0043】
上記掘削速度および掘削時反復回数は、対応する土質の地盤を掘削機20によって掘削する際の掘削速度およびこの際の掘削ヘッド29の反復回数(掘削ヘッド29の上下方向に対する往復移動の回数)を示す情報である。また、上記拡大掘削速度および拡大掘削時反復回数は、対応する土質の地盤に掘削機20によって拡大根固め部を形成するために拡大掘削する際の掘削速度およびこの際の反復回数を示す情報である。
【0044】
また、上記混合攪拌速度および混合攪拌時反復回数は、対応する土質の地盤に形成した拡大根固め部にセメントミルクを注入しつつ、当該セメントミルクを混合・攪拌する際の掘削ヘッド29の移動速度およびこの際の反復回数を示す情報である。さらに、上記引上速度および引上時反復回数は、拡大根固め部の形成が終了した後に掘削ヘッド29を引上げる際の掘削ヘッド29の移動速度およびこの際の反復回数を示す情報である。
【0045】
例えば、図5に示す例では、埋土を掘削する際の掘削速度は1(m/分)で、この際の反復回数は0(零)、すなわち掘削ヘッド29の上下方向に対する往復移動は行わず、拡大掘削を行う際の掘削速度も1(m/分)である一方、この際には掘削ヘッド29の反復回数が1回であること等を示している。
【0046】
一方、セメントミルク情報データベースDB2は、建込み孔の施工時に当該建込み孔に注入されるセメントミルクの量を示す情報であり、一例として図6に示されるように、部位およびセメントミルク注入率の各情報が記憶されるように構成されている。
【0047】
上記部位は、造成すべき建込み孔の拡大根固め部および杭周部の別を示す情報であり、上記セメントミルク注入率は、対応する部位に対するセメントミルクの注入率、すなわち、建込み孔の対応する部位の体積に対するセメントミルクの注入量の割合を示す情報である。例えば、図6に示す例では、拡大根固め部に対するセメントミルク注入率が200%であり、拡大根固め部には、当該拡大根固め部の体積の2倍の量のセメントミルクを注入することが示されている。なお、本実施の形態に係る杭建込み施工管理システム10では、上記セメントミルク注入率を、実際に施工を行う地盤に対する室内配合試験によって、施工対象杭に要求される支持力を得ることのできる値として予め得られた値を適用している。
【0048】
一方、施工サイクルタイム情報データベースDB3は、後述する施工サイクルタイム作成処理によって作成された施工サイクルタイム情報が記憶されるものであり、一例として図7に示されるように、経過時間、施工種別、深度対象、および深度の各情報が記憶されるように構成されている。
【0049】
上記経過時間は、施工開始時からの経過時間を示す情報であり、上記施工種別は、対応する経過時間時における施工の種別を示す情報である。本実施の形態に係る杭建込み施工管理システム10では、上記施工種別として、「掘削」、「拡大掘削」、「根固め液(セメントミルク)注入・混合攪拌」、「掘削ヘッド引上げ」、および「杭建込み」の5種類の情報が適用されている。
【0050】
また、上記深度対象は、対応する経過時間時における、施工サイクルタイム情報に記憶する先端部の深度の対象とする部位を示す情報であり、本実施の形態に係る杭建込み施工管理システム10では、「掘削ヘッド」および「杭」の2種類が適用されている。さらに、上記深度は、対応する経過時間時において、対応する深度対象の先端部の深度を示す情報である。
【0051】
例えば、図7に示す例では、少なくとも施工開始時から3分が経過するまでは掘削を行っており、施工開始から1分が経過したときの掘削ヘッド29の先端部の深度が1.0(m)で、2分経過したときの掘削ヘッド29の先端部の深度が2.0(m)であること等を示している。
【0052】
一方、セメントミルク注入量データベースDB4は、後述する施工サイクルタイム作成処理によって得られた、造成対象とする建込み孔の予め定められた深度毎のセメントミルクの注入量を示す情報が記憶されるものであり、一例として図8に示されるように、深度およびセメントミルク注入量の各情報が記憶されるように構成されている。
【0053】
例えば、図8に示す例では、建込み孔における深度が0から2.0(m)の区間については、セメントミルクを101(リットル)注入すること等を示している。
【0054】
次に、本実施の形態に係る杭建込み施工管理システム10の作用を説明する。
【0055】
まず、図9を参照して、施工サイクルタイム情報を作成する際の作用を説明する。なお、図9は、杭建込み施工管理装置30のキーボード30Eを介して実行指示が入力された際に杭建込み施工管理装置30のCPU30Aによって実行される施工サイクルタイム作成処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムは二次記憶部30Dのプログラム領域PGに予め記憶されている。また、ここでは、錯綜を回避するために、基本情報データベースDB1およびセメントミルク情報データベースDB2が予め構築されている場合について説明する。
【0056】
同図のステップ100では、予め定められた初期入力画面を表示するようにディスプレイ30Fを制御し、次のステップ102にて、所定情報の入力待ちを行う。
【0057】
図10には、上記ステップ100の処理によってディスプレイ30Fに表示される初期入力画面の一例が示されている。同図に示すように、本実施の形態に係る初期入力画面は、施工対象杭の杭径および杭長を入力するための杭仕様情報入力領域と、施工対象とする地盤の土質を示す情報を、その深さの範囲を示す情報と共に入力するための土質情報入力領域と、が含まれている。
【0058】
なお、同図に示されるように、本実施の形態に係る杭建込み施工管理システム10では、施工対象杭が、上杭,中杭,下杭の3つの杭により構成されている場合に対応しているが、これに限らず、施工対象杭が3つ以外の数で構成されていてもよい。
【0059】
同図に示される初期入力画面がディスプレイ30Fに表示されると、ユーザは、杭仕様情報入力領域および土質情報入力領域の各領域に対応する情報を入力した後、当該画面の下端部に表示されている「終了」ボタンを指定する。これに応じて、上記ステップ102が肯定判定となってステップ104に移行する。なお、杭仕様情報入力領域に入力する情報は、施工対象杭の仕様を示す設計図書等から得ることができ、土質情報入力領域に入力する情報は、施工対象とする地盤に対する地質調査会社等による調査によって予め得られている土質柱状図等から得ることができる。
【0060】
ステップ104では、上記初期入力画面を介して入力された情報(以下、「初期入力情報」という。)を二次記憶部30Dの所定領域に記憶し、次のステップ106にて、基本情報データベースDB1およびセメントミルク情報データベースDB2から全ての情報を読み出す。
【0061】
次のステップ108では、初期入力情報に含まれる下杭の杭径に基づいて、造成する建込み孔における拡大根固め部の形状および体積(以下、「根固め部情報」という。)を導出し、次のステップ110にて、導出した根固め部情報を二次記憶部30Dの所定領域に記憶する。
【0062】
本実施の形態に係る杭建込み施工管理システム10では、下杭の杭径に応じて拡大根固め部の形状および体積が一意に決定されるものとされており、予め定められた下杭の互いに異なる杭径の各々毎に、拡大根固め部の形状(本実施の形態では、底面の直径および高さが規定される円柱状)および体積を示す情報が二次記憶部30Dのデータベース領域DBに予め記憶されている。そこで、上記ステップ108では、当該情報から、初期入力情報に含まれる下杭の杭径に対応する情報を読み出すことにより、根固め部情報を導出する。
【0063】
次のステップ112では、上記ステップ106の処理によって基本情報データベースDB1から読み出した、対応する土質毎の掘削速度および掘削時反復回数の各情報と、初期入力情報とに基づいて、作成すべき施工サイクルタイム情報における掘削機20による掘削時に対応する情報(以下、「掘削情報」という。)を次のように作成する。
【0064】
まず、初期入力情報に含まれる上杭,中杭,下杭の各杭の杭長を合算することにより、施工対象杭の全長を算出し、算出した施工対象杭の全長、および上記ステップ108の処理により導出した根固め部情報に基づいて、造成すべき建込み孔の深さ(建込み孔の底面部の深度)を導出する。次に、導出した建込み孔の深さに基づいて、掘削機20における掘削回転軸28の継ぎ足しを行う際の建込み孔の深さを特定する。
【0065】
そして、初期入力情報により示される建込み孔の各土質の層別に、基本情報データベースDB1から読み出した情報における対応する土質の地盤に対する掘削速度および掘削時反復回数の各情報に基づいて、掘削機20により掘削を開始した時点から掘削を終了する時点までの予め定められた刻み幅(本実施の形態では、1分間)毎の掘削ヘッド29の先端部の深度を導出する。
【0066】
なお、この際、掘削ヘッド29の先端部の深度が、掘削回転軸28の継ぎ足しを行う際の建込み孔の深度に達した際には、予め定められた当該継ぎ足しの作業時間(本実施の形態では、5分)は、掘削ヘッド29の先端部の深度が変わらないものとする。
【0067】
次のステップ114では、上記ステップ112の処理によって導出した掘削情報を、対応する施工種別(ここでは、「掘削」。)および深度対象(ここでは、「掘削ヘッド」。)の各情報と共に施工サイクルタイム情報データベースDB3の対応する領域に記憶し、次のステップ116では、上記ステップ106の処理によって基本情報データベースDB1から読み出した、対応する土質毎の拡大掘削速度および拡大掘削時反復回数の各情報と、上記ステップ108の処理により導出した根固め部情報とに基づいて、作成すべき施工サイクルタイム情報における掘削機20による拡大掘削時に対応する情報(以下、「拡大掘削情報」という。)を次のように作成する。
【0068】
すなわち、建込み孔の各土質の層別に、基本情報データベースDB1から読み出した情報における対応する土質の地盤に対する拡大掘削速度および拡大掘削時反復回数の各情報と根固め部情報とに基づいて、掘削機20により掘削を終了した時点から拡大掘削を終了する時点までの上記予め定められた刻み幅(本実施の形態では、1分間)毎の掘削ヘッド29の先端部の深度を導出する。
【0069】
次のステップ118では、上記ステップ116の処理によって導出した拡大掘削情報を、対応する施工種別(ここでは、「拡大掘削」。)および深度対象(ここでは、「掘削ヘッド」。)の各情報と共に施工サイクルタイム情報データベースDB3の対応する領域に記憶し、次のステップ120では、上記ステップ106の処理によって基本情報データベースDB1から読み出した、対応する土質毎の混合攪拌速度および混合攪拌時反復回数の各情報と、上記ステップ108の処理により導出した根固め部情報とに基づいて、作成すべき施工サイクルタイム情報における掘削機20による根固め液注入・混合攪拌時に対応する情報(以下、「混合攪拌情報」という。)を次のように作成する。
【0070】
すなわち、建込み孔の各土質の層別に、基本情報データベースDB1から読み出した情報における対応する土質の地盤に対する混合攪拌速度および混合攪拌時反復回数の各情報と根固め部情報とに基づいて、掘削機20により拡大掘削を終了した時点から根固め液注入・混合攪拌を終了する時点までの上記予め定められた刻み幅(本実施の形態では、1分間)毎の掘削ヘッド29の先端部の深度を導出する。
【0071】
次のステップ122では、上記ステップ120の処理によって導出した混合攪拌情報を、対応する施工種別(ここでは、「根固め液注入・混合攪拌」。)および深度対象(ここでは、「掘削ヘッド」。)の各情報と共に施工サイクルタイム情報データベースDB3の対応する領域に記憶し、次のステップ124では、上記ステップ106の処理によって基本情報データベースDB1から読み出した、対応する土質毎の引上速度および引上時反復回数の各情報に基づいて、作成すべき施工サイクルタイム情報における掘削機20による掘削ヘッド29の引上げ時に対応する情報(以下、「引上げ情報」という。)を次のように作成する。
【0072】
すなわち、建込み孔の各土質の層別に、基本情報データベースDB1から読み出した情報における対応する土質の地盤に対する引上速度および引上時反復回数の各情報に基づいて、掘削機20により根固め液注入・混合攪拌を終了した時点から掘削ヘッド29の引上げを終了する時点までの上記予め定められた刻み幅(本実施の形態では、1分間)毎の掘削ヘッド29の先端部の深度を導出する。
【0073】
なお、この際、掘削ヘッド29の先端部の深度が、上記ステップ112の処理によって特定した、掘削回転軸28の継ぎ足しを行う際の建込み孔の深度まで上昇した際には、継ぎ足した掘削回転軸28の離脱作業を行う予め定められた作業時間(本実施の形態では、10分)は、掘削ヘッド29の先端部の深度が変わらないものとする。
【0074】
次のステップ126では、上記ステップ124の処理によって導出した引上げ情報を、対応する施工種別(ここでは、「掘削ヘッド引上げ」。)および深度対象(ここでは、「掘削ヘッド」。)の各情報と共に施工サイクルタイム情報データベースDB3の対応する領域に記憶し、次のステップ128では、初期入力情報に基づいて、作成すべき施工サイクルタイム情報における掘削機20による施工対象杭の建込み時に対応する情報(以下、「建込み情報」という。)を次のように作成する。
【0075】
まず、初期入力情報に含まれる上杭,中杭,下杭の各杭の杭長に基づいて、下杭に対して中杭の継ぎ足しを行う際の建込み孔の深さ、および中杭に対して上杭の継ぎ足しを行う際の建込み孔の深さを特定する。
【0076】
そして、掘削機20により施工対象杭の建込みを開始した時点から建込みを終了する時点までの上記予め定められた刻み幅(本実施の形態では、1分間)毎の、予め定められた建込み速度(本実施の形態では、2.0(m/分))で建込んだ場合における施工対象杭の先端部の深度を導出する。
【0077】
なお、この際、施工対象杭の先端部の深度が、下杭に対して中杭の継ぎ足しを行う際の建込み孔の深さに達した際と、中杭に対して上杭の継ぎ足しを行う際の建込み孔の深さに達した際には、予め定められた当該継ぎ足しの作業時間(本実施の形態では、10分)は、施工対象杭の先端部の深度が変わらないものとする。
【0078】
次のステップ130では、上記ステップ128の処理によって導出した建込み情報を、対応する施工種別(ここでは、「杭建込み」。)および深度対象(ここでは、「杭」。)の各情報と共に施工サイクルタイム情報データベースDB3の対応する領域に記憶し、次のステップ132では、初期入力情報と、上記ステップ106の処理によってセメントミルク情報データベースDB2から読み出した根固め部および杭周部のセメントミルク注入率と、上記ステップ108の処理によって導出した根固め部情報に基づいて、建込み孔の予め定められた深度毎のセメントミルクの注入量を示す情報(以下、「セメントミルク注入量情報」という。)を次のように導出する。
【0079】
まず、建込み孔を、予め定められた深度毎に区分する。本実施の形態では、建込み孔を拡大根固め部と、当該拡大根固め部を除く杭周部(軸部)とに区分した後、さらに、拡大根固め部および杭周部の各々別に予め定められた深度毎(本実施の形態では、拡大根固め部が50(cm)毎で、杭周部が3(m)毎)に区分する。なお、建込み孔の全体の形状および大きさは、上記ステップ108の処理によって導出した根固め部情報、上記ステップ112の処理によって算出された施工対象杭の全長、および初期入力情報に含まれる杭径に基づいて導出することができる。
【0080】
そして、以上により区分した区分領域毎に建込み孔の体積を導出し、導出した体積に対応するセメントミルク注入率を乗算することにより、上記区分領域毎のセメントミルク注入量情報を算出する。なお、上記区分領域毎の体積は、拡大根固め部については上記ステップ108の処理によって導出した根固め部情報に基づいて算出することができ、杭周部については、上記ステップ112の処理によって算出された施工対象杭の全長および初期入力情報に含まれる杭径に基づいて算出することができる。
【0081】
次のステップ134では、上記ステップ132の処理によって導出したセメントミルク注入量情報をセメントミルク注入量データベースDB4に記憶し、その後に本施工サイクルタイム作成処理プログラムを終了する。
【0082】
以上の施工サイクルタイム作成処理プログラムにより、一例として図7に示される施工サイクルタイム情報データベースDB3、および一例として図8に示されるセメントミルク注入量データベースDB4が構築される。
【0083】
次に、図11を参照して、実際に建込み孔の造成および施工対象杭の建込みを行う際の杭建込み施工管理システム10の作用を説明する。なお、図11は、この際に掘削機20の操作室に設けられた杭建込み施工支援装置40のキーボード40Eを介して実行指示が入力されることにより、杭建込み施工支援装置40のCPU40Aによって実行される施工処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムは二次記憶部40Dに予め記憶されている。また、ここでは、施工サイクルタイム情報データベースDB3およびセメントミルク注入量データベースDB4が予め構築されている場合について説明する。さらに、ここでは、掘削機20のオペレータ等によって、建込み孔の造成対象とする位置を掘削可能な位置に掘削機20が位置されている場合について説明する。
【0084】
同図のステップ200では、施工サイクルタイム情報データベースDB3の全ての情報(以下、「施工サイクルタイム情報」という。)、セメントミルク注入量データベースDB4の全ての情報(以下、「セメントミルク注入量情報」という。)、初期入力情報、および根固め部情報を、通信部40Hおよび杭建込み施工管理装置30を介して読み出し、次のステップ202にて、読み出した情報に基づいて、予め定められたフォーマットとされた施工サイクルタイム表示画面を示す情報を作成した後、次のステップ204にて、作成した施工サイクルタイム表示画面をディスプレイ40Fにより表示するように制御する。
【0085】
図12には、上記ステップ204の処理によってディスプレイ40Fにより表示される施工サイクルタイム表示画面の一例が示されている。
【0086】
同図に示すように、本実施の形態に係る施工サイクルタイム表示画面では、施工サイクルタイム情報に基づいて、当該施工サイクルタイム情報により示される施工時間の経過(当該情報における「経過時間」により示される時間経過)を一方の軸(本実施の形態では、横軸)とし、掘削ヘッド29の先端部の位置および施工対象杭の先端部の位置を他方の軸(本実施の形態では、縦軸)としたグラフが表示される。
【0087】
また、本実施の形態に係る施工サイクルタイム表示画面では、上記グラフの左側に、施工対象杭および建込み孔の姿図が当該グラフの深度に適合するように表示される。なお、当該姿図における施工対象杭および建込み孔の形状および大きさは、上記ステップ200の処理によって読み出した根固め部情報および初期入力情報に基づいて導出することができる。
【0088】
さらに、本実施の形態に係る施工サイクルタイム表示画面では、上記グラフの右側に、深度毎のセメントミルク注入量が当該グラフの深度に適合するように表示される。なお、当該セメントミルク注入量は、上記ステップ200の処理によって読み出したセメントミルク注入量情報から得ることができる。
【0089】
次のステップ206では、掘削機20による施工対象杭に関する施工が開始されるまで待機する。
【0090】
ここで、現場作業者は、掘削機20の昇降台25に、先端部(最下部)に掘削ヘッド29が設けられた掘削回転軸28を取り付け、掘削補助液が掘削ヘッド29の液体噴射ノズルから吐出されるように切り替えバルブ53の設定を行うといった、建込み孔の掘削を行うための準備作業を行う。そして、掘削機20のオペレータは、当該準備作業が終了すると、杭建込み施工支援装置40のキーボード40Eを介して施工を開始することを示す情報を入力する。これに応じて、上記ステップ206が肯定判定となってステップ208に移行する。
【0091】
ステップ208では、この時点で掘削機20により掘削または拡大掘削を行っているか否かを判定し、肯定判定となった場合はステップ210に移行する。
【0092】
掘削機20のオペレータは、上記施工を開始することを示す情報を入力すると、ディスプレイ40Fによって表示されている施工サイクルタイム表示画面を参照して、当該画面に表示されているグラフにできるだけ合致するように掘削を行った後に拡大掘削を行う。なお、このとき、掘削回転軸28を継ぎ足す際には、掘削を中断して当該掘削回転軸28を継ぎ足す作業を現場作業者が行う。
【0093】
そして、拡大掘削が終了すると、現場作業者は、セメントミルクが掘削ヘッド29の液体噴射ノズルから吐出されるように切り替えバルブ53の設定を行うといった、根固め液注入・混合攪拌を行うための準備作業を行う。そして、掘削機20のオペレータは、当該準備作業が終了すると、杭建込み施工支援装置40のキーボード40Eを介して根固め液注入・混合攪拌を開始することを示す情報を入力する。
【0094】
そこで、上記ステップ208では、上記根固め液注入・混合攪拌を開始することを示す情報が未だ入力されていないか否かを判定することにより、この時点で掘削機20により掘削または拡大掘削を行っているか否かを判定する。
【0095】
ステップ210では、ローラ型検出器27Aからの出力信号に基づいて特定されるワイヤー26の送り出し量およびこの時点の掘削回転軸28の長さに基づいて、この時点の掘削ヘッド29の先端部の位置を導出し、次のステップ212にて、導出した掘削ヘッド29の先端部の位置を示すマーカ(本実施の形態では、黒丸)を施工サイクルタイム表示画面のグラフにおける対応する位置に重ねて表示した後、ステップ226に移行する。
【0096】
一方、上記ステップ208において否定判定された場合はステップ214に移行し、この時点で掘削機20により根固め液注入・混合攪拌または掘削ヘッド29の引上げを行っているか否かを判定して、肯定判定となった場合はステップ216に移行する。
【0097】
掘削機20のオペレータは、上記根固め液注入・混合攪拌を開始することを示す情報を入力すると、ディスプレイ40Fによって表示されている施工サイクルタイム表示画面を参照して、当該画面に表示されているグラフにできるだけ合致するように根固め液注入・混合攪拌を行った後に掘削ヘッド29の引上げを行う。なお、この掘削ヘッド29の引上げ時において、掘削回転軸28を離脱する際には、掘削ヘッド29の引上げを中断して当該掘削回転軸28を離脱する作業を現場作業者が行う。
【0098】
そして、掘削ヘッド29の引上げが終了すると、現場作業者は、昇降台25から掘削回転軸28を取り外した後、施工対象杭のうちの下杭を昇降台25に取り付けるといった、施工対象杭の建込みを行うための準備作業を行う。そして、掘削機20のオペレータは、当該準備作業が終了すると、杭建込み施工支援装置40のキーボード40Eを介して施工対象杭の建込みを開始することを示す情報を入力する。
【0099】
そこで、上記ステップ214では、上記建込みを開始することを示す情報が未だ入力されていないか否かを判定することにより、この時点で掘削機20により根固め液注入・混合攪拌または掘削ヘッド29の引上げを行っているか否かを判定する。
【0100】
ステップ216では、ローラ型検出器27Aからの出力信号に基づいて特定されるワイヤー26の送り出し量およびこの時点の掘削回転軸28の長さに基づいて、この時点の掘削ヘッド29の先端部の位置を導出し、次のステップ218にて、導出した掘削ヘッド29の先端部の位置を示す上記マーカ(本実施の形態では、黒丸)を施工サイクルタイム表示画面のグラフにおける対応する位置に重ねて表示した後、ステップ220に移行する。
【0101】
ステップ220では、流量検出器54からの出力信号に基づいて、上記ステップ200の処理によって読み出したセメントミルク注入量情報に含まれる各深度の区間別にセメントミルク注入量を積算して二次記憶部40Dの所定領域に記憶し、その後にステップ226に移行する。
【0102】
ところで、掘削機20のオペレータは、上記施工対象杭の建込みを開始することを示す情報を入力すると、ディスプレイ40Fによって表示されている施工サイクルタイム表示画面を参照して、当該画面に表示されているグラフにできるだけ合致するように施工対象杭の建込みを行い、当該建込みが終了すると、杭建込み施工支援装置40のキーボード40Eを介して施工対象杭の建込みが終了したことを示す情報を入力する。
【0103】
一方、上記ステップ214において否定判定となった場合は、施工対象杭の建込みが開始されたものと見なしてステップ222に移行し、ローラ型検出器27Aからの出力信号に基づいて特定されるワイヤー26の送り出し量およびこの時点で昇降台25に取り付けられている施工対象杭の長さに基づいて、この時点の施工対象杭の先端部の位置を導出し、次のステップ224にて、導出した施工対象杭の先端部の位置を示す上記マーカ(本実施の形態では、黒丸)を施工サイクルタイム表示画面のグラフにおける対応する位置に重ねて表示した後、ステップ226に移行する。
【0104】
ステップ226では、上記ステップ212、ステップ218、およびステップ224の何れかの処理によって施工サイクルタイム表示画面のグラフに重ねて上記マーカを表示した掘削ヘッド29または施工対象杭の先端部の位置に対応する施工予定経過時間と、この時点との時間的なずれ量が予め定められた閾値以上であるか否かを判定し、否定判定となった場合はステップ230に移行する一方、肯定判定となった場合にはステップ228に移行する。
【0105】
ステップ228では、予め定められた警告を行うように制御し、その後にステップ230に移行する。なお、本実施の形態に係る施工処理プログラムでは、本ステップ228における警告を、杭建込み施工支援装置40に内蔵されたブザー(図示省略。)を所定期間鳴動させることにより行っているが、これに限らず、例えば、ディスプレイ40Fにより警告を示す情報を表示する形態や、警告を示す情報を、通信部40Hを介して杭建込み施工管理装置30等の外部装置に送信することにより、他の装置を介して警告を行う形態等の他の形態としてもよい。
【0106】
ステップ230では、上記施工対象杭の建込みが終了したことを示す情報が入力されたか否かを判定することにより、施工が終了したか否かを判定し、否定判定となった場合は上記ステップ208に戻る一方、肯定判定となった時点でステップ232に移行する。
【0107】
ステップ232では、セメントミルクの注入量が適切であるか否かを判定するセメントミルク注入量判定処理を実行し、その後に本施工処理プログラムを終了する。なお、本実施の形態に係る施工処理プログラムでは、上記セメントミルク注入量判定処理を次のように行う。
【0108】
まず、上記ステップ220の処理によってセメントミルク注入量情報に含まれる各深度の区間別に積算されたセメントミルク注入量と、セメントミルク注入量情報に含まれる、対応する区間のセメントミルク注入量との差分が予め定められた閾値以内である場合に適切であると判定し、当該閾値より大きい場合は不適切であると判定する。
【0109】
そして、以上の判定の結果を施工サイクルタイム表示画面の右端に表示された、対応する深度の区間に対応する「判定」欄にセメントミルク注入量の判定結果を示す情報(本実施の形態では、適切である場合は「OK」を示し、不適切である場合は「NG」を示す情報)を表示するようにディスプレイ40Fを制御する。
【0110】
図13には、以上の施工処理プログラムの実行により、実際の施工状態を重ねて表示した場合の施工サイクルタイム表示画面の表示状態の一例が示されている。同図に示される施工サイクルタイム表示画面を参照することにより、予め作成した施工サイクルタイムに対する実際の施工状況が視覚的にリアルタイムで把握することができる。
【0111】
以上詳細に説明したように、本実施の形態では、管理対象とする杭の少なくとも径および長さが含まれる杭仕様情報、および前記杭を建込む地盤の土質を示す土質情報を取得し、取得した前記杭仕様情報および前記土質情報に基づいて、掘削機により、前記杭を建込む建込み孔を掘削により造成した後に当該建込み孔に前記杭を建込む施工を行う際の、施工時間の経過に伴う前記建込み孔の造成時の掘削ヘッドの先端位置および前記杭の建込み時の当該杭の先端位置の変化を示す施工サイクルタイム情報を導出し、導出した前記施工サイクルタイム情報に基づいて、当該施工サイクルタイム情報により示される前記施工時間の経過を一方の軸(本実施の形態では、横軸)とし、前記掘削ヘッドの先端位置および前記杭の先端位置を他方の軸(本実施の形態では、縦軸)としたグラフを示すグラフ情報を作成し、作成したグラフ情報により示されるグラフを表示しているので、当該グラフを参照しつつ、施工を行うことにより、施工者による施工能力のばらつきを抑制し、施工品質を向上させることができる。
【0112】
また、本実施の形態では、前記掘削機により実際に施工した際の施工時間の経過に伴う前記掘削ヘッドの先端位置および前記杭の先端位置を測定し、前記グラフに測定結果を重ねて表示しているので、より施工品質を向上させることができる。
【0113】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施の形態に多様な変更または改良を加えることができ、当該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0114】
また、上記の実施の形態は、クレーム(請求項)にかかる発明を限定するものではなく、また実施の形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。前述した実施の形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜の組み合わせにより種々の発明を抽出できる。実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0115】
例えば、上記実施の形態では、本発明をプレボーリング工法で施工する形態に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、本発明を中堀工法で施工する形態に適用する形態としてもよい。
【0116】
また、上記実施の形態では、施工サイクルタイム作成処理および施工処理をソフトウェアの処理により実現した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、これらの処理の一部、または全部をハードウェアの処理により実現する形態としてもよい。この場合、上記実施の形態に比較して、ハードウェアにより実現した処理を高速化することができる。
【0117】
その他、上記実施の形態で説明した杭建込み施工管理システム10、掘削機20、杭建込み施工管理装置30、および杭建込み施工支援装置40の構成(図1〜図4参照。)は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、不要な構成要素を削除したり、新たな構成要素を追加したりしてもよいことは言うまでもない。
【0118】
また、上記実施の形態で示した施工サイクルタイム作成処理プログラムおよび施工処理プログラムの処理の流れ(図9,図11参照。)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、不要な処理ステップを削除したり、新たな処理ステップを追加したり、処理ステップの順序を入れ替えたりしてもよいことは言うまでもない。
【0119】
また、上記実施の形態で示した各種画面の構成(図10,図12,図13参照。)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、表示内容を変更してもよいことは言うまでもない。
【0120】
例えば、図12,図13に示した施工サイクルタイム表示画面に対して、施工対象杭、使用するセメントミルク、杭建込み施工管理システム10の各構成装置の仕様を示す情報等の他の情報を重ねて表示する形態としてもよい。
【0121】
さらに、上記実施の形態で示した各種データベースの構成(図5〜図8参照。)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、一部の情報を削除したり、新たな情報を追加したり、記憶位置を入れ替えたりしてもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0122】
10 杭建込み施工管理システム
20 掘削機
27A ローラ型検出器(測定手段)
28 掘削回転軸
29 掘削ヘッド
30 杭建込み施工管理装置
30A CPU(導出手段)
30D 二次記憶部
30E キーボード(取得手段)
40 杭建込み施工支援装置
40A CPU(作成手段)
40D 二次記憶部
40F ディスプレイ(表示手段)
54 流量検出器
DB1 基本情報データベース
DB2 セメントミルク情報データベース
DB3 施工サイクルタイム情報データベース
DB4 セメントミルク注入量データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管理対象とする杭の少なくとも径および長さが含まれる杭仕様情報、および前記杭を建込む地盤の土質を示す土質情報を取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得された前記杭仕様情報および前記土質情報に基づいて、掘削機により、前記杭を建込む建込み孔を掘削により造成した後に当該建込み孔に前記杭を建込む施工を行う際の、施工時間の経過に伴う前記建込み孔の造成時の掘削ヘッドの先端位置および前記杭の建込み時の当該杭の先端位置の変化を示す施工サイクルタイム情報を導出する導出手段と、
前記導出手段によって導出された前記施工サイクルタイム情報に基づいて、当該施工サイクルタイム情報により示される前記施工時間の経過を一方の軸とし、前記掘削ヘッドの先端位置および前記杭の先端位置を他方の軸としたグラフを示すグラフ情報を作成する作成手段と、
前記作成手段によって作成されたグラフ情報により示されるグラフを表示する表示手段と、
を備えた杭建込み施工管理装置。
【請求項2】
前記掘削機により実際に施工した際の施工時間の経過に伴う前記掘削ヘッドの先端位置および前記杭の先端位置を測定する測定手段をさらに備え、
前記表示手段は、前記グラフに前記測定手段による測定結果を重ねて表示する
請求項1記載の杭建込み施工管理装置。
【請求項3】
コンピュータを、
管理対象とする杭の少なくとも径および長さが含まれる杭仕様情報、および前記杭を建込む地盤の土質を示す土質情報を取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得された前記杭仕様情報および前記土質情報に基づいて、掘削機により、前記杭を建込む建込み孔を掘削により造成した後に当該建込み孔に前記杭を建込む施工を行う際の、施工時間の経過に伴う前記建込み孔の造成時の掘削ヘッドの先端位置および前記杭の建込み時の当該杭の先端位置の変化を示す施工サイクルタイム情報を導出する導出手段と、
前記導出手段によって導出された前記施工サイクルタイム情報に基づいて、当該施工サイクルタイム情報により示される前記施工時間の経過を一方の軸とし、前記掘削ヘッドの先端位置および前記杭の先端位置を他方の軸としたグラフを示すグラフ情報を作成する作成手段と、
前記作成手段によって作成されたグラフ情報により示されるグラフを表示する表示手段と、
として機能させるためのプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2012−46961(P2012−46961A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190038(P2010−190038)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】