説明

杭打機のリーダ装置

【課題】一般的な液圧シリンダを用いて回転駆動装置の比較的大きな昇降ストロークが得られ、もって構成の簡略化と昇降速度の均一化が図れる杭打機のリーダ装置を提供する。
【解決手段】ベースマシンに取付けられる前面開口型のリーダ9と、このリーダ9内に昇降可能に収容された可動フレーム15と、この可動フレーム15にチューブが連結されると共に、ピストンロッドがそれぞれ上下逆向きに取付けられた同サイズの2本の液圧シリンダ13,14とを備える。2本の液圧シリンダ13,14のうち、ピストンロッドが下向きに設けられた一方の液圧シリンダ13はそのピストンロッドが前記リーダ9の下部に連結される。ピストンロッドが上向きに設けられた他方の液圧シリンダ14のピストンロッドはリーダ9に沿って昇降される杭作業用の回転駆動装置19に連結される。2本の液圧シリンダ13,14を同時に伸縮させて回転駆動装置19を昇降させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭打ちに使用されるオーガやケーシング等を回転させる回転駆動装置をリーダに沿って昇降させる杭打機のリーダ装置に係わり、特に低空頭用杭打機に用いる場合に好適なものに関する。
【背景技術】
【0002】
杭打機は長尺の基礎杭を垂直に施工するため、一般的には杭の長さに合わせた長尺のリーダを装備している。しかし、施工現場によっては施工位置での空頭制限がある場合も多くあり、分割杭を用いたり、場所打ち杭とする等の施工方法の変更がなされている。その施工方法に適合する杭打機においてはリーダの短縮化が必須であり、さらに施工時は空頭に合わせて現場でリーダを伸縮できることも望まれる。このようなリーダを備えた従来の杭打機として特許文献1に記載のように、油圧シリンダにより昇降可能にした上部リーダにオーガの回転駆動装置を取付けたものがある。
【0003】
【特許文献1】実開平6−79894号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように油圧シリンダにより回転駆動装置を昇降させる場合、1本の油圧シリンダにより比較的大きな昇降ストロークを得るには、長い油圧シリンダを使用する必要がある。しかし長い油圧シリンダの場合、収縮状態におけるリーダの長さが長くなり、低空頭用としては不適となる場合がある。そこで収縮状態では短い伸縮リーダおよび油圧シリンダを用いて大きなストロークを得るために多段伸縮シリンダが用いられる。しかしながら、多段伸縮シリンダの場合、各段のロッド(シリンダ)の伸縮速度が異なるため、一定の油圧でこの多段伸縮シリンダを伸縮させると、伸縮の初期、後期で伸縮速度が異なる。そこでこの伸縮に伴う伸縮速度の不揃いを無くすため、伸縮の過程で伸縮速度や圧力を調整する必要がある。このため、多くの調整用機材を使用しており、コストアップと構造の複雑化を招いていた。またこれらの調整用機材を使用したとしても、伸縮速度を均一にすることは困難であった。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑み、一般的な液圧シリンダを用いて回転駆動装置の比較的大きな昇降ストロークが得られ、もって構成の簡略化と昇降速度の均一化が図れる杭打機のリーダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の杭打機のリーダ装置は、ベースマシンに取付けられる前面開口型のリーダと、
このリーダ内に昇降可能に収容された可動フレームと、
この可動フレームにチューブが連結されると共に、ピストンロッドがそれぞれ上下逆向きに取付けられた同サイズの2本の液圧シリンダとを備え、
前記2本の液圧シリンダのうち、ピストンロッドが下向きに設けられた一方の液圧シリンダはそのピストンロッドが前記リーダの下部に連結され、ピストンロッドが上向きに設けられた他方の液圧シリンダのピストンロッドは前記リーダに沿って昇降される杭作業用の回転駆動装置に連結されることを特徴とする。
【0007】
請求項2の杭打機のリーダ装置は、請求項1に記載の杭打機のリーダ装置において、
前記2本の液圧シリンダに作動液を供給する液圧回路に、液圧シリンダの収縮方向の作動液の流量を調整する流量調整弁を設けたことを特徴とする。
【0008】
請求項3の杭打機のリーダ装置は、請求項1または2に記載の杭打機のリーダ装置において、
前記2本の液圧シリンダに作動液を供給する液圧回路に、最低設定圧がタンク圧となる圧力調整範囲を有する圧力調整弁を設けたことを特徴とする。
【0009】
請求項4の杭打機のリーダ装置は、請求項1から3までのいずれかに記載の杭打機のリーダ装置において、
前記リーダが伸縮リーダであり、前記回転駆動装置を前記伸縮リーダの可動リーダに収容した前記可動フレームに取付けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、同じサイズの2本の液圧シリンダのチューブを可動フレームにおいてピストンロッドの向きを上下反対にして連結してリーダ内に昇降可能に収容し、2本の液圧シリンダに作動液を供給して可動フレームを昇降させるようにしたので、可動フレームひいては回転駆動装置を一定の速度で昇降させることができ、多段シリンダで必要とされた昇降速度一定化のための調整用部材が不要となり、構成が簡単となる。また、2本の液圧シリンダを用いたので、回転駆動装置の大きな昇降ストロークが得られる。
【0011】
請求項2の発明によれば、前記2本の液圧シリンダに作動液を供給する液圧回路に、液圧シリンダの収縮方向の作動液の流量を調整する流量調整弁を設けたので、ケーシングやオーガあるいは既成杭のチャックを可能に構成した場合の既成杭の継ぎ足しの際に回転駆動装置を遅い速度で降下させて接続作業を行なうことができ、ケーシングやオーガあるいは既成杭の破損を防止し、一方、掘削の際には流量を増大させて掘削等の能率を上げることができる。
【0012】
請求項3の発明によれば、2本の液圧シリンダに作動液を供給する液圧回路に、最低設定圧がタンク圧となる圧力調整範囲を有する圧力調整弁を設けたので、地質に応じた圧力で掘削やケーシングあるいは既成杭の埋設を行なうことができる。また、比較的軟弱な地盤においては、フリーホール状態での掘削を行なう等、状況に応じた好適な掘削作業や埋設作業を行なうことができる。
【0013】
請求項4の発明によれば、リーダが伸縮リーダであり、前記回転駆動装置を伸縮リーダの可動リーダに収容した前記可動フレームに取付けたので、リーダを伸縮させることにより、回転駆動装置の昇降ストロークをさらに拡大することができる。また、上部に障害物が存在する場合にはリーダを縮めた状態で作業を行なうことにより、オーガやケーシングによる掘削や杭の埋設を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は本発明によるリーダ装置の一実施の形態を示す杭打機の一部断面側面図である。この杭打機の本体(べースマシン)1は、走行体2上に旋回装置3を介して旋回体4を設置し、旋回体4上に油圧源となるパワーユニット5や運転室6を搭載して構成される。7は伸縮リーダであり、この伸縮リーダ7は図2、図3の横断面図に示すように、固定リーダ8に可動リーダ9を液圧シリンダ10の伸縮により昇降可能に装着したものである。この伸縮リーダ7は、旋回体4に軸11を中心に液圧シリンダ12により後方に倒すことができるように起伏可能に取付けられる。
【0015】
可動リーダ9は前面が開口された構造を有し、内部に同サイズの2本の液圧シリンダ13,14が収容される。これらの液圧シリンダ13,14は、図3〜図5に示すように、可動リーダ9内に摺動可能に収容された可動フレーム15に、それぞれチューブ13a,14aをピン16,17により、各ピストンロッド13b、14bがそれぞれ下向き、上向きになるように連結する。また、一方の液圧シリンダ13のピストンロッド13bは可動フレーム15の下部にピン18により連結し、他方の油圧シリンダ14のピストンロッド14bはケーシングやオーガ等の回転駆動装置19を取付けたブラケット20にピン21により連結する。前記可動フレーム15の上下の四隅には、可動リーダ9の内面に摺動してこの可動フレーム15の上下動を円滑化するための硬質樹脂等からなるスライド板22を設ける、
図2に示すように、前記回転駆動装置19のブラケット20の左右にガイドギブ23を有し、これらのガイドギブ23を、可動リーダ9の左右に設けたガイドレール24に摺動可能に嵌合することにより、回転駆動装置19を可動リーダ9に沿って昇降可能に装着する。回転駆動装置19は、ケーシングやオーガ等を回転させるための駆動用液圧モータ25を左右に備える。また、図4、図5に示すように、ケーシングやオーガを回転駆動装置19の回転体19aに固定するためのチャック装置26を有する。このチャック装置26は既成杭をチャックするものであってもよい。図4は液圧シリンダ13,14を収縮させて回転駆動装置19を下げた状態を示し、図5は液圧シリンダ13,14を伸長させて回転駆動装置19を上げた状態を示す。
【0016】
なお、可動リーダ9の頂部にはケーシングやオーガ等をチャック装置26に吊り込むための吊り込み装置が設けられるが、図示を省略している。
【0017】
図6は液圧シリンダ13,14を駆動する液圧回路を示す図である。30は前記パワーユニット5に備えられた液圧源である。31は液圧シリンダ13,14のコントロール弁である。32は液圧源30とコントロール弁31との間とタンク33との間に設けた圧力調整弁(可変リリーフ弁)であり、ソレノイド(または液圧操作室)32aに加える電流(または操作液圧)により液圧源30から吐出される液圧をタンク圧から液圧シリンダ13,14で必要とされる最高圧にわたって調整するものである。34はコントロール弁31の一方の二次側ポートを液圧シリンダ13,14のボトム室35,36に共通に接続する液圧回路であり、この液圧回路34には、流量調整弁37を設ける。この流量調整弁37は、ソレノイド(または液圧操作室)37aに加える電流(または操作液圧)に応じて流量を調整するものである。この流量調整弁37はボトム室35,36から排出される作動液の流量のみが調整可能となるように、すなわち可動フレーム15が下降する場合にのみ速度が調整されるように、ボトム室35,36に供給する方向の作動液を通す逆止弁38が流量調整弁37に並列に設けられる。39はコントロール弁31の他方の二次側ポートを液圧シリンダ13,14のロッド室40,41に共通に接続する液圧回路である。前記流量調整弁37や逆止弁38はこの液圧回路39に設けてもよい。
【0018】
この液圧回路において、液圧シリンダ13,14が収縮した状態において、オペレータが不図示の操作手段によりコントロール弁31のソレノイド31aに通電すると、コントロール弁31が右位置に切換わり、液圧源30からの作動液は液圧回路34および逆止弁38を通して液圧シリンダ13,14のボトム室35,36に供給され、液圧シリンダ13,14が伸長する。これにより可動フレーム15が可動リーダ9内で上昇し、回転駆動装置19が上がる。
【0019】
反対に、液圧シリンダ13,14が伸長した状態において、オペレータが不図示の操作手段によりコントロール弁31のソレノイド31bに通電すると、コントロール弁31が左位置に切換わり、液圧源30からの作動液は液圧回路39を通して液圧シリンダ13,14のロッド室40,41に供給され、液圧シリンダ13,14が収縮する。これにより可動フレーム15が可動リーダ9内で下降し、回転駆動装置19が下がる。
【0020】
この回転駆動装置19の下降の際には、ボトム室35,36から流出する作動液は、流量調整弁37を通る。このため、オペレータが不図示の操作手段により流量調整弁37における流量を調整することにより、液圧シリンダ13,14の収縮速度、すなわち回転駆動装置19の下降速度を調整することができる。また、この下降の際に、オペレータが不図示の操作手段により圧力調整弁32を操作してリリーフ圧を調整することにより、回転駆動装置19によるオーガやケーシング等の押し込み圧力を調整することができる。この圧力調整弁32はリリーフ圧をタンク圧にまで調整可能にしてあり、このため、フリーホール状態で回転駆動装置19を降下させることができる。
【0021】
このように、本実施の形態においては、同じサイズの2本の液圧シリンダ13,14のチューブ13a,14aを可動フレーム15においてピストンロッドの向きを上下反対にして連結して可動リーダ9内に昇降可能に収容し、2本の液圧シリンダ13,14に作動液を供給して可動フレーム15を昇降させるようにしたので、可動フレーム15ひいては回転駆動装置19を一定の速度で昇降させることができ、多段シリンダで必要とされた昇降速度一定化のための部材が不要となり、構成が簡単となる。また、回転駆動装置19の大きな昇降ストロークが得られる上、一般的に多用される液圧シリンダを用いたので、製造が容易であると共に安価に提供できる。
【0022】
本発明は、リーダが伸縮リーダでない場合にも適用可能であるが、本実施の形態のようにおいては伸縮リーダ7を用いたので、リーダ7を伸縮させることにより、回転駆動装置19の昇降ストロークをさらに拡大することができる。また、上部に障害物が存在する場合にはリーダ7を縮めた状態で作業を行なうことにより、容易に対応できる。
【0023】
また、本実施の形態においては、2本の液圧シリンダ13,14に作動液を供給する液圧回路に、液圧シリンダ13,14の収縮方向の作動液の流量を調整する流量調整弁37を設けたので、ケーシングやオーガあるいは杭の継ぎ足しの際に回転駆動装置19を遅い速度で降下させて接続作業を行なうことができ、ケーシングやオーガあるいは杭の破損を防止しうる一方、掘削の際には流量を増大させて掘削等の能率を上げることができる。
【0024】
また、本実施の形態においては、2本の液圧シリンダ13,14に作動液を供給する液圧回路に、最低設定圧がタンク圧となる圧力調整範囲を有する圧力調整弁32を設けたので、地質に応じた圧力でオーガやケーシングによる掘削あるいは杭の埋設を行なうことができる。また、比較的軟弱な地盤においては、フリーホール状態での掘削やケーシングあるいは杭の埋設を行なう等、状況に応じた好適な押し込み圧力で作業を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明によるリーダ装置の一実施の形態を示す杭打機の一部断面側面図である。
【図2】本実施の形態の伸縮リーダの頂部の構造を示す横断面図である。
【図3】本実施の形態の伸縮リーダの可動フレーム部の構造を示す横断面図である。
【図4】本実施の形態の伸縮リーダを回転駆動装置が下降した状態で示す縦断面図である。
【図5】本実施の形態の伸縮リーダを回転駆動装置が上昇した状態で示す縦断面図である。
【図6】本実施の形態の伸縮リーダの回転駆動装置昇降用液圧回路図である。
【符号の説明】
【0026】
1:杭打機本体(べースマシン)、2:走行体、3:旋回装置、4:旋回体、5:パワーユニット、6:運転室、7:伸縮リーダ、8:固定リーダ、9:可動リーダ、10:液圧シリンダ、11:軸、12〜14:液圧シリンダ、15:可動フレーム、16〜18、21:ピン、19:回転駆動装置、20:ブラケット、22:スライド板、23:ガイドギブ、24:ガイドレール、25:液圧モータ、26:チャック装置、30:液圧源、31:コントロール弁、32:圧力調整弁、33:タンク、34,39:液圧回路、35,36:ボトム室、37:流量調整弁、38:逆止弁、40,41:ロッド室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースマシンに取付けられる前面開口型のリーダと、
このリーダ内に昇降可能に収容された可動フレームと、
この可動フレームにチューブが連結されると共に、ピストンロッドがそれぞれ上下逆向きに取付けられた同じサイズの2本の液圧シリンダとを備え、
前記2本の液圧シリンダのうち、ピストンロッドが下向きに設けられた一方の液圧シリンダはそのピストンロッドが前記リーダの下部に連結され、ピストンロッドが上向きに設けられた他方の液圧シリンダのピストンロッドは前記リーダに沿って昇降される杭作業用の回転駆動装置に連結されることを特徴とする杭打機のリーダ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の杭打機のリーダ装置において、
前記2本の液圧シリンダに作動液を供給する液圧回路に、液圧シリンダの収縮方向の作動液の流量を調整する流量調整弁を設けたことを特徴とする杭打機のリーダ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の杭打機のリーダ装置において、
前記2本の液圧シリンダに作動液を供給する液圧回路に、最低設定圧がタンク圧となる圧力調整範囲を有する圧力調整弁を設けたことを特徴とする杭打機のリーダ装置。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれかに記載の杭打機のリーダ装置において、
前記リーダが伸縮リーダであり、前記回転駆動装置を前記伸縮リーダの可動リーダに収容した前記可動フレームに取付けたことを特徴とする杭打機のリーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−277869(P2007−277869A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−103642(P2006−103642)
【出願日】平成18年4月4日(2006.4.4)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】