説明

杭打機のロッドドライブ着脱方法

【課題】杭打機の基本構成を大きく変更することなく、リーダの長さを短くして空頭高さ制限が厳しい場所でも掘削作業を行うことが可能な杭打機のロッドドライブ着脱方法を提供する。
【解決手段】杭打機11のリーダ17に昇降可能に設けられた回転駆動装置19に、上端にスイベルジョイント26を取り付けたロッドドライブ24を装着し、該ロッドドライブの下端に掘削ロッド27を連結して掘削作業を行う杭打機におけるロッドドライブの着脱方法において、前記ロッドドライブ24をトップシーブブロック22から繰り出されたワイヤ29によって吊り上げて回転駆動装置19に着脱する際に、ロッドドライブの軸線から外れた位置を吊り上げてロッドドライブを傾斜状態とすることで、スイベルジョイントとトップシーブブロックとが干渉しないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭打機のロッドドライブ着脱方法に関し、詳しくは、リーダに沿って昇降可能に設けられた回転駆動装置によって回転駆動されるロッドドライブの下端に掘削ロッドを連結して掘削作業を行う杭打機における前記ロッドドライブを回転駆動装置に着脱する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上端にトップシーブブロックを備えたリーダに沿って回転駆動装置を昇降可能に設け、この回転駆動装置で掘削ロッドを回転させながら回転駆動装置を昇降させることにより、掘削ロッドの下端に取り付けた掘削具で掘削作業を行う杭打機が広く用いられている。このような杭打機で橋の下や建屋内、トンネル内、地下などの空頭高さに制限のある場所で掘削作業を行う場合、リーダの長さ(高さ)が制限されるため、掘削ロッドの長さも制限されてしまう。このため、複数の掘削ロッドを継ぎ足して掘削作業を行うようにしており、掘削ロッドを継ぎ足すための機構や構造が種々提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−163337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、BH工法のように、泥水を供給しながら掘削作業を行う場合は、上端にスイベルジョイントを取り付けたロッドドライブを回転駆動装置に装着し、このロッドドライブの下端に掘削ロッドを連結するようにしている。このようなロッドドライブを回転駆動装置に着脱する場合は、リーダの上端に設けたトップシーブブロックから繰り出されるワイヤをスイベルジョイントの上端に設けられている吊り具に連結し、ウインチでワイヤを操作してスイベルジョイント付きのロッドドライブを鉛直状態で吊り上げるようにしているため、リーダの最下部に下降させた状態の回転駆動装置とトップシーブブロックとの間の寸法を、スイベルジョイント付きのロッドドライブの寸法に吊り具の寸法を加えた寸法より十分に長くしておく必要がある。このため、リーダの長さを短くすることができず、一般的な構造の杭打機では空頭高さが小さい場所での杭打ち作業を行うことができず、特殊な機器を用いて掘削作業を行わなければならなかった。
【0005】
そこで本発明は、杭打機の基本構成を大きく変更することなく、リーダの長さを短くして空頭高さ制限が厳しい場所でも掘削作業を行うことが可能な杭打機のロッドドライブ着脱方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の杭打機のロッドドライブ着脱方法は、杭打機のリーダに昇降可能に設けられた回転駆動装置に、上端にスイベルジョイントを取り付けたロッドドライブを装着し、該ロッドドライブの下端に掘削ロッドを連結して掘削作業を行う杭打機における前記ロッドドライブの着脱方法において、前記ロッドドライブをトップシーブブロックから繰り出されたワイヤによって吊り上げて前記回転駆動装置に着脱する際に、前記ロッドドライブの軸線から外れた位置を吊り上げて前記ロッドドライブを傾斜状態とすることを特徴としている。
【0007】
また、前記ロッドドライブは、前記回転駆動装置の嵌合孔に嵌合する角軸部の上端に前記嵌合孔より大きな径のフランジを有するとともに、該フランジに前記ワイヤの連結部を有していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の杭打機のロッドドライブ着脱方法によれば、トップシーブブロックからのワイヤでロッドドライブを吊り上げた際に、スイベルジョイント付きのロッドドライブが傾斜してスイベルジョイントがトップシーブブロックに干渉することがなくなるので、回転駆動装置とトップシーブブロックとの間の寸法を小さくすることができ、リーダの長さを短くすることができる。したがって、走行装置を備えた一般的な杭打機に本発明を適用することにより、空頭高さが小さい場所、例えば空頭高さが3m以下の場所でも効率よく杭打ち作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】トップシーブからのワイヤでロッドドライブを着脱位置に吊り上げた状態を示す杭打機の側面図である。
【図2】同じく要部の拡大側面図である。
【図3】トップシーブからのワイヤでロッドドライブを中間位置に吊り上げた状態を示す杭打機の側面図である。
【図4】回転駆動装置をリーダ最下部に下降させた状態を示す杭打機の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本形態例に示す杭打機11は、クローラ12を備えた下部走行体13と、該下部走行体13の上部に旋回可能に設けられた上部旋回体14とで構成されたベースマシン15と、前記上部旋回体14の前部に設けられたフロントブラケット16に傾動可能に取り付けられたリーダ17と、該リーダ17をフロントブラケット16の後部から支持する起伏シリンダ18と、前記リーダ17に昇降可能に設けられた回転駆動装置19と、該回転駆動装置19をリーダ17に沿って昇降させるための昇降用チェーン20及び該昇降用チェーン20を駆動するための昇降用油圧モータ21と、前記リーダ17の頂部に設けられたトップシーブブロック22と、リーダ17の下端部に設けられたロック装置付きの下部ガイド23とを備えている。
【0011】
図2に示すように、回転駆動装置19に装着されるロッドドライブ24は、回転駆動装置19の駆動部19aに設けられている嵌合孔(角穴)19bに嵌合する角軸部24aを有しており、該角軸部24aの下部には円筒部24bを介して雄ねじ24cが設けられ、角軸部24aの上部には前記嵌合孔19bの開口寸法より大きな直径を有するフランジ24dが設けられるとともに、角軸部24aの上端内周には雌ねじ24eが設けられている。さらに、前記フランジ24dには、上方に突出するアイボルト25が取り付けられている。
【0012】
このロッドドライブ24は、上端の雌ねじ24eにスイベルジョイント26の下端に設けられている雄ねじが螺着し、下端の雄ねじ24cが掘削ロッド27の上端に設けられている雌ねじに螺着した状態で掘削作業に用いられ、ロッドドライブ24及び掘削ロッド27の内部には、スイベルジョイント26から掘削ロッド27の下端部に設けた掘削具に泥水を供給するための内部流路が設けられている。
【0013】
杭打機11は、上端にスイベルジョイント26を取り付けたロッドドライブ24を回転駆動装置19に装着し、ロッドドライブ24の下端に掘削ロッド27をねじ結合した状態で、回転駆動装置19を作動させてロッドドライブ24を正方向に回転駆動するとともに、昇降用油圧モータ21により昇降用チェーン20を介して回転駆動装置19をリーダ17に沿って下降させ、さらに、前記スイベルジョイント26からロッドドライブ24及び掘削ロッド27の内部流路を介して掘削ロッド27の下端部に設けた掘削具に泥水を連続供給することで掘削作業を行うように形成されている。
【0014】
掘削作業を開始するには、最初に、スイベルジョイント26を連結したロッドドライブ24を回転駆動装置19に装着する。まず、ウインチ28からトップシーブブロック22を介して繰り出されたワイヤ29の先端を、ロッドドライブ24のフランジ24dに設けたアイボルト25に接続し、ウインチ28を操作してロッドドライブ24を吊り上げ、図1及び図2に示すように、ロッドドライブ下端の雄ねじ24cを回転駆動装置19の嵌合孔19bに臨ませた状態とする。
【0015】
そして、ワイヤ29をトップシーブブロック22から徐々に繰り出しながら、手作業あるいは適宜な治具や機器によってロッドドライブ24を直立状態とし、図3に示すように、円筒部24bを嵌合孔19b内に挿入するとともに、角軸部24aと嵌合孔19bとの角位置合わせを行う。角軸部24aを嵌合孔19bに嵌合可能な状態とした後、ロッドドライブ24を更に下降させて角軸部24aを嵌合孔19bに嵌合させ、図4に示すように、フランジ24dの下面を駆動部19aの上面に当接させてロッドドライブ装着状態とする。その後、アイボルト25からワイヤ29を取り外すことで作業可能な状態となる。
【0016】
このようにしてロッドドライブ24を回転駆動装置19に装着した後は、従来の掘削作業と同様に、回転駆動装置19から垂下させた吊りワイヤで1本目の掘削ロッド27を吊り下げた状態で回転駆動装置19を所定位置まで上昇させ、掘削ロッド27の下部を下部ガイド23で保持するとともに、掘削ロッド27の上端の雌ねじとロッドドライブ24の雄ねじ24cとを螺合させ、また、掘削ロッド27の下端の雄ねじと所定の掘削具に設けられている雌ねじとを螺合させる。そして、吊りワイヤを取り外して回転駆動装置19を正回転させながら回転駆動装置19をリーダ17に沿って下降させていくと、各ネジ部がそれぞれ完全に螺着した状態になり、スイベルジョイント26からの泥水が漏れ出すことなく最下端の掘削具に確実に供給されながら所定の掘削作業が行われる。
【0017】
回転駆動装置19がリーダ17の最下部まで下降した後に掘削ロッド27を継ぎ足す際には、従来と同様に、掘削中の掘削ロッド27に設けられている角軸部を下部ガイド23のロック装置でロックした状態で、回転駆動装置19を逆方向に回転させながら僅かに上昇させることでロッドドライブ24の下端と掘削中の掘削ロッド27の上端とのねじ結合を切り離した後、回転駆動装置19から垂下させた吊りワイヤで新たな掘削ロッド27を吊り下げた状態で回転駆動装置19を所定位置まで上昇させ、新たな掘削ロッド27の下端を掘削中の掘削ロッド27の上端にねじ結合し、新たな掘削ロッド27の上端をロッドドライブ24の下端にねじ結合させる。その後、下部ガイド23のロック状態を解除して回転駆動装置19を正方向に作動させながら下降させることにより、掘削ロッド27を継ぎ足した状態で掘削作業を行うことができる。このとき、前記同様に、ロッドドライブ24が正方向に回転することで各ねじ結合部が確実にねじ結合された状態になる。
【0018】
掘削作業終了後は、最上部に連結されている掘削ロッド27の角軸部を下部ガイド23でロックした状態とした後、回転駆動装置19を逆方向に作動させながら僅かに上昇させてロッドドライブ24と掘削ロッド27とのねじ結合を解除する。なお、掘削ロッド27の角軸部と下部ガイド23との位置が合っていない場合には、回転駆動装置19を適宜上昇させることで位置合わせを行うことができる。
【0019】
次に、図4に示すように、ウインチ28からトップシーブブロック22を介して繰り出したワイヤ29を、ロッドドライブ24のフランジ24dに設けたアイボルト25に接続し、ワイヤ29でロッドドライブ24を吊持した状態とし、回転駆動装置19をリーダ17の最下端に下降させる。そして、ウインチ28を巻き上げ方向に作動させ、ワイヤ29でロッドドライブ24を吊り上げていく。
【0020】
ロッドドライブ24の角軸部24aが回転駆動装置19の嵌合孔19bに嵌合している間は、ロッドドライブ24は上方に向かって真っ直ぐ吊り上げられていくが、図3に示すように、角軸部24aが嵌合孔19bから抜け出て角軸部24aより小径の円筒部24bが嵌合孔19b内に位置する状態になると、アイボルト25の位置がロッドドライブ24の軸線から外れた位置にあるため、重心位置の関係でロッドドライブ24の吊り上げ力がロッドドライブ24に対して傾斜方向に作用する状態になり、円筒部24bの外面下端部が嵌合孔19bの内面に当接しつつ上昇する。
【0021】
そして、図1に示すように、円筒部24bが嵌合孔19bから抜け出て、より小径の雄ねじ24cのみが嵌合孔19b内に位置する状態になると、ロッドドライブ24は、アイボルト25の位置に対する重心位置に応じてロッドドライブ24が大きく傾斜し、スイベルジョイント26の上部がトップシーブブロック22の下方から離れた位置になる。これにより、スイベルジョイント26とトップシーブブロック22とが干渉することがなくなり、ワイヤ29を巻き上げてロッドドライブ24を更に上昇させることができ、嵌合孔19b内からロッドドライブ24を完全に抜き取ることができる。ロッドドライブ24を抜き取った後は、従来と同様に、回転駆動装置19から垂下させたワイヤで、掘削ロッド27を上から順番に抜き取っていけばよい。
【0022】
このように、ロッドドライブ24の軸線から外れた位置に、トップシーブブロック22からのワイヤ29を連結するための連結部となるアイボルト25を設けたことにより、ロッドドライブ24を吊り上げた際にロッドドライブ24が傾いた状態になるため、ロッドドライブ24の上端に連結したスイベルジョイント26の上端がトップシーブブロック22に干渉することがなくなる。これにより、トップシーブブロック22を低い位置に設けてもロッドドライブ24を回転駆動装置19に着脱することができることになり、リーダ17の長さを短くすることができ、杭打機11の全高を低く設定して従来より空頭高さが小さい場所での杭打ち作業を効率よく行うことができる。
【0023】
なお、トップシーブブロックからのワイヤを連結してロッドドライブを吊り上げる位置は、ロッドドライブの軸線から外れた位置ならばよく、フランジにアイボルトを設けるほか、ワイヤを連結可能な連結具を別途取り付けるようにしてもよい。また、この杭打機は、複数のリーダ部材を連結してリーダを長くすることにより、通常の杭打ち作業を行うことができ、必要に応じて低空頭用杭打機として用いることができ、低空頭専用のものに比べて杭打機の稼働率を向上させて掘削作業コストの低減を図ることができる。
【符号の説明】
【0024】
11…杭打機、12…クローラ、13…下部走行体、14…上部旋回体、15…ベースマシン、16…フロントブラケット、17…リーダ、18…起伏シリンダ、19…回転駆動装置、19a…駆動部、19b…嵌合孔、20…昇降用チェーン、21…昇降用油圧モータ、22…トップシーブブロック、23…下部ガイド、24…ロッドドライブ、24a…角軸部、24b…円筒部、24c…雄ねじ、24d…フランジ、24e…雌ねじ、25…アイボルト、26…スイベルジョイント、27…掘削ロッド、28…ウインチ、29…ワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭打機のリーダに昇降可能に設けられた回転駆動装置に、上端にスイベルジョイントを取り付けたロッドドライブを装着し、該ロッドドライブの下端に掘削ロッドを連結して掘削作業を行う杭打機における前記ロッドドライブの着脱方法において、前記ロッドドライブをトップシーブブロックから繰り出されたワイヤによって吊り上げて前記回転駆動装置に着脱する際に、前記ロッドドライブの軸線から外れた位置を吊り上げて前記ロッドドライブを傾斜状態とすることを特徴とする杭打機のロッドドライブ着脱方法。
【請求項2】
前記ロッドドライブは、前記回転駆動装置の嵌合孔に嵌合する角軸部の上端に前記嵌合孔より大きな径のフランジを有するとともに、該フランジに前記ワイヤの連結部を有していることを特徴とする請求項1又は2記載の杭打機のロッドドライブ着脱方法。
【請求項3】
請求項1記載の杭打機のロッドドライブ着脱方法で使用するロッドドライブであって、該ロッドドライブは、前記回転駆動装置の嵌合孔に嵌合する角軸部の上端に前記嵌合孔より大きな径のフランジを有するとともに、該フランジに前記ワイヤの連結部を有していることを特徴とするロッドドライブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−140800(P2011−140800A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1805(P2010−1805)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【Fターム(参考)】