説明

杭打機及び杭打機の重心位置測定方法

【課題】杭打機自体に荷重を検出するセンサを組み込むことにより、簡単な構造で、かつ、容易に杭打機の重心位置を測定することができる杭打機及び杭打機の重心位置測定方法を提供する。
【解決手段】上部旋回体15とリーダブラケット18とを連結するリーダブラケット連結部材として、リーダブラケット18に加わるリーダ16及びオーガ駆動装置29を含む荷重を検出する4個の第1ピン型ロードセル23を用いると共に、該第1ピン型ロードセル23をリーダブラケット18の右側部と左側部の上下にそれぞれ配置する。上方の第1ピン型ロードセル23を取り付ける取付孔23a,23bを、第1ピン型ロードセル23の径に対応した円形状に形成し、下方の取付孔23c,23dを、第1ピン型ロードセル23の径に対して鉛直方向に長い長円形状に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭打機及び杭打機の重心位置測定方法に関し、詳しくは、施工条件や施工方法に応じてリーダや作業装置、カウンタウエイトなどの各種機器を適宜選択して装着する杭打機及び各種機器を装着した作業状態の杭打機の重心位置を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下部走行体の上部に旋回ベアリングを介して上部旋回体を旋回可能に設け、該上部旋回体の前部に設けたリーダブラケット取付腕に上下左右の4箇所に配置された4本のリーダブラケット連結部材を介してリーダブラケットの後端部を連結し、該リーダブラケットの先端部でリーダを支持する杭打機では、施工条件や施工方法によって上部旋回体の前部に装着するリーダの長さやリーダに装着する作業装置を適宜選択することから、上部旋回体の前部に加わる荷重が変化する。さらに、上部旋回体の後部に装着するカウンタウエイトも、組み合わせにより重量を変えることができるようになっている。
【0003】
また、電動式の作業装置を使用する場合には、上部旋回体の後部に、発電機を載置する発電機架台を設けるようにしている。このため、上部旋回体に装着する各種機器の装着状態によって杭打機全体の重量や重心位置が変化することになり、前後左右の荷重のバランスによっては杭打機の安定度が低下して転倒するおそれがある。また、上部旋回体の後部の荷重が大きすぎると、旋回ベアリングに大きな負荷がかかり、旋回ベアリングの寿命を縮めてしまう。
【0004】
このようなことから、各種機器を装着した実際の作業状態における杭打機の安定度を求める必要があり、従来は、ベースマシンや各種機器の重量などをパソコンに入力して計算によって求めていた。また、作業状態における杭打機の安定度を直接的に測定する方法として、上部旋回体に設けられているフロントジャッキ及びリアジャッキ(アウトリガジャッキ)を所定の順序でそれぞれ作動させて杭打機を傾斜させ、各傾斜状態で各ジャッキに加わる荷重をそれぞれ検出し、検出した各荷重に基づいて杭打機の重量や重心位置を算出するとともに、杭打機の安定度を算出するものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−185204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述の特許文献1のものは、荷重や傾斜角度を検出するセンサを用意することにより、装置の装着状態が異なる各種杭打機の安定度を正確に求めることはできるが、各種センサを用意した状態でフロントジャッキ及びリアジャッキを所定の順序で作動させる必要があり、杭打機の重量や重心位置の算出に手間がかかるという問題があった。
【0007】
そこで本発明は、杭打機自体に荷重を検出するセンサを組み込むことにより、簡単な構造で、かつ、容易に杭打機の重心位置を測定することができる杭打機及び杭打機の重心位置測定方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の杭打機は、クローラを備えた下部走行体の上部に、旋回ベアリングを介して上部旋回体を旋回可能に設け、リーダを支持するリーダブラケットを連結するためのリーダブラケット取付腕を前記上部旋回体の前部の上下左右の4箇所に設け、前記リーダブラケットの後部に設けた上下左右の4箇所の連結腕と前記リーダブラケット取付腕との重合部に設けた上下左右の4箇所の取付孔にリーダブラケット連結部材をそれぞれ挿通することにより、前記リーダブラケットを前記リーダブラケット連結部材を介して前記上部旋回体の前部に取り付けた杭打機において、前記リーダブラケット連結部材としてピン型ロードセルを用いると共に、上下左右の4箇所の前記取付孔の上方又は下方のいずれか一方の取付孔を前記ピン型ロードセルの径に対応した円形状に形成し、他方の取付孔を前記ピン側ロードセルの径に対して鉛直方向に長い長円形状に形成したことを特徴としている。
【0009】
また、本発明の杭打機の重心位置測定方法は、前記円形状に形成した取付孔に挿通した前記ピン型ロードセルによって検出した鉛直方向荷重と回転モーメント反力との合力と、前記長円形状に形成した取付孔に挿通した前記ピン型ロードセルによって検出した回転モーメント反力と、左右の取付孔の水平方向距離と、上下の取付孔の鉛直方向距離と、前記上部旋回体の幅方向中心線と、取付孔の中心とフロント荷重の重心との間の前後水平方向の距離との関係から、フロント荷重の総重量と重心位置とを求めることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、リーダブラケット連結部材としてピン型ロードセルを用い、上下に配置された取付孔のいずれか一方をピン型ロードセルの径に対応した円形状に、他方をピン型ロードセルの径に対して鉛直方向に長い長円形状に形成することにより、左右の円形状の取付孔に挿通されるピン型ロードセルで検出される鉛直方向荷重及び回転モーメント反力と、左右の長円形状の取付孔に挿通されるピン型ロードセルで検出される回転モーメント反力と、各部の寸法との関係からリーダブラケットに加わるフロント荷重の総重量と重心位置とを算出することができる。
【0011】
これにより、あらかじめ求められているベースマシンの重量及び重心位置との関係から、リーダブラケットにリーダなどを取り付けた作業状態の杭打機の重量及び重心位置を算出することができ、各種機器を装着した実際の作業状態における杭打機の安定度を判定することができる。したがって、杭打機が転倒する危険性の有無を確実に確認することができるので、転倒の危険性がある際には、警告灯や警報音を発してオペレータに警告したり、杭打機の作動を自動的に停止させたりすることにより、作業中の杭打機が転倒することを確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一形態例を示す杭打機の側面図である。
【図2】同じく杭打機の平面図である。
【図3】同じくリーダブラケットの平面図である。
【図4】同じくリーダブラケットの左側面図である。
【図5】同じくリーダブラケットの右側面図である。
【図6】同じく杭打機の要部側面図である。
【図7】同じく杭打機の要部断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1乃至図7は本発明の杭打機の一形態例を示す図で、この杭打機11のベースマシン12は、クローラ13aを備えた下部走行体13の上部に、旋回ベアリング14を介して上部旋回体15を旋回可能に設けるとともに、該上部旋回体15の前部には、リーダ16及びフロントジャッキ17が取り付けられるリーダブラケット18が設けられ、上部旋回体15の後部には、リアジャッキ(アウトリガジャッキ)19,19と、カウンタウエイト20と、発電機載置台21を取り付けるアウトリガボックス22とが設けられている。
【0014】
リーダブラケット18は、後端部から上部旋回体15の方向に突設した上下左右4本の連結腕18a,18aと、前端部に設けられたリーダ保持部18bと、上面に設けられたシーブブラケット18cと、両側面にそれぞれ設けられた前記フロントジャッキ17,17とを備えている。各連結腕18a,18aは、上部旋回体15の前部に突設した上下左右の4箇所のリーダブラケット取付腕15a,15aの先端部にそれぞれ形成された二股部にそれぞれ差し込まれ、両者の重合部に形成された上下左右4箇所の取付孔23a,23b,23c,23dに、リーダブラケット連結部材となる4本の第1ピン型ロードセル23をそれぞれ挿通することにより、リーダブラケット18がリーダブラケット取付腕15aを介して上部旋回体15の前部に取り付けられた状態となる。
【0015】
4箇所の取付孔23a,23b,23c,23dは、リーダブラケット18の右側部と左側部の上下にそれぞれ配置されている。右側部及び左側部の上部側同一高さにそれぞれ配置された取付孔23a,23bは、第1ピン型ロードセル23の径に対応した円形状に形成され、該取付孔23a,23bに挿通した第1ピン型ロードセル23が全周方向の荷重を検出可能としている。一方、右側部及び左側部の下部側同一高さで、上部側の取付孔23a,23bと同じ間隔でそれぞれ配置された取付孔23c,23dは、第1ピン型ロードセル23の径に対して鉛直方向に長い長円形状に形成され、第1ピン型ロードセル23に鉛直方向の荷重が作用せず、前後方向(水平方向)の荷重のみを検出可能としている。
【0016】
リーダ保持部18bは、リーダ16の後方及び両側方を囲繞する前方が開口した平面視U字状のブラケット部18dを備えており、リーダ16の下端部を左右方向に貫通したリーダ取付軸24の両端部がブラケット部18dに取り付けられている。また、シーブブラケット18cには、上部旋回体15に設けられたウインチから巻出されたワイヤロープが掛け回される複数のガイドシーブ18eが回転可能に取り付けられている。前記フロントジャッキ17は、リーダブラケット18の中央部左右両側部に回動ピン17aを介してそれぞれ水平方向に回動可能に取り付けられる回動腕17bの先端部にジャッキシリンダ17cをそれぞれ設けたものであって、ジャッキシリンダ17cの下端から下方に突出したシリンダロッド17dの下端には接地板17eが設けられている。また、各回動腕17bの外側面には、回動腕17bを開いた状態で固定するための固定部材17fがそれぞれ設けられている。
【0017】
前記リーダ16は、前記リーダ取付軸24によってリーダブラケット18に対して前後左右に傾動可能に取り付けられるリーダ基部材16aの上部に、複数のリーダ部材16b、16bを連結したものであって、リーダ16の中間部には、リーダ16を回動可能に保持するリーダホルダ25が設けられている。このリーダホルダ25の後部には、前記リアジャッキ19,19の先端部上面に立設される左右一対のバックステー26,26の先端が連結され、該バックステー26,26によってリーダ16が後方から支持されている。
【0018】
また、リーダ基部材16aの上に連結されるリーダ部材16bには、リーダ基部材16aの外周に設けられた突片を把持してリーダ16の回動を防止する回り止め部材27が設けられ、リーダ16の頂部には、ワイヤロープが掛け回される複数のガイドシーブを回転可能に設けたトップシーブブロック28が設けられている。さらに、リーダ16の前面には、各種作業装置、例えば、オーガを駆動するオーガ駆動装置29がリーダ16に沿って昇降可能に設けられ、トップシーブブロック28から垂下したワイヤロープ30にて吊持され、上部旋回体15との間には、図示しない油圧配管あるいは電源ケーブルが接続されている。
【0019】
一方、前記アウトリガボックス22は、前端部両側から上部旋回体15の方向に突設した左右一対の連結腕22a,22bと、両側部にそれぞれ設けられた前記リアジャッキ19,19と、上面に設けられたカウンタウエイト載置部22bと、後部側に設けられた発電機載置台21の取付部とを備えている。連結腕22aの上端部及び下端部は、上部旋回体15の後部から突設した左右一対のアウトリガボックス連結腕15b,15bの上下に形成された二股部にそれぞれ差し込まれ、両者の重合部に形成された上下左右4箇所の取付孔に、アウトリガボックス連結部材となる4本の第2ピン型ロードセル31を挿通することにより連結され、アウトリガボックス22が4本の第2ピン型ロードセル31を介して上部旋回体15の後部に取り付けられた状態となる。
【0020】
カウンタウエイト載置部は、前記カウンタウエイト20を載置するもので、発電機載置台21は、前記オーガ駆動装置29が電動式の場合に、電源となる発電機32を載置するために設けられ、オーガ駆動装置29が油圧式の場合には、発電機載置台21はアウトリガボックス22から取り外される。
【0021】
リアジャッキ19は、アウトリガボックス22の両側部に回動ピン19aを介してそれぞれ水平方向に回動可能に取り付けられる回動腕19bと、該回動腕19bの中間部に設けられたジャッキシリンダ19cと、回動腕19bの先端上面に設けられたバックステー連結部16dとを備えている。前記ジャッキシリンダ19cの下端から下方に突出したシリンダロッドの下端には接地板19eが設けられており、回動腕19bの後部側面には、輸送時にリアジャッキ19を収納位置に移動させて固定するためのシリンダ19fが設けられている。
【0022】
リーダブラケット18やアウトリガボックス22を上部旋回体15に取り付けるための連結部材となる第1ピン型ロードセル23及び第2ピン型ロードセル31は、リーダブラケット取付腕15a及びアウトリガボックス連結腕15bの各二股部に両端が保持され、各二股部に差し込まれた連結腕18a,22aから加わる荷重を中間部で検出する周知のピン型ロードセルであって、4本の第1ピン型ロードセル23によってリーダブラケット18に加わるリーダ16やオーガ駆動装置29、フロントジャッキ17などからの荷重をフロント荷重として検出し、4本の第2ピン型ロードセル31によってアウトリガボックス22に加わるカウンタウエイト20や発電機載置台21、発電機32、リアジャッキ19などからの荷重をリア荷重として検出する。
【0023】
このように形成された杭打機11は、施工条件や施工方法に応じて、リーダブラケット18には、掘削深さに対応した長さ(高さ)を有するリーダ16が取り付けられるとともに、リーダ16には、一軸型や二軸型、電動式や油圧式のオーガ駆動装置(作業装置)29が選択して取り付けられ、さらに、リーダ16の長さに対応したバックステー26が取り付けられる。また、アウトリガボックス22には、カウンタウエイト20が載置され、オーガ駆動装置29が電動式の場合には発電機32を載置する発電機載置台21が取り付けられ、また、オーガ駆動装置の代わりに油圧ハンマを用いる場合には、発電機の代わりにハンマ用油圧ユニットを発電機載置台21に載置する。
【0024】
リーダブラケット18及びアウトリガボックス22に前記各種機器を取り付けた作業状態で、前記4本の第1ピン型ロードセル23によってフロント荷重の状態を検出することができ、前記4本の第2ピン型ロードセル31によってリア荷重の状態を検出することができる。
【0025】
フロント荷重の状態は、円形状の取付孔23a,23bに挿通した2本の第1ピン型ロードセル23が検出した荷重と、鉛直方向に長い長円形状の取付孔23c,23dに挿通した2本の第1ピン型ロードセル23が検出した荷重と、各第1ピン型ロードセル23の位置関係を示す各種数値とを使用して演算処理することにより、フロント荷重及び重心位置を測定することができる。
【0026】
リーダ16などの荷重は、リーダブラケット18の先端側に作用するため、リーダブラケット18の基部側に位置する各第1ピン型ロードセル23には、鉛直方向の荷重に加えて、リーダブラケット18の先端側が下方に向かって回動する方向の回転モーメントが作用する。この状態では、図3乃至図5に示すように、上方に配置した円形状の取付孔23a,23bに取り付けた上部側の2本の第1ピン型ロードセル23は全周方向の荷重を検出し、下方に配置した長円形状の取付孔23c,23dに取り付けた上部側の2本の第1ピン型ロードセル23は前後方向の荷重のみを検出することから、上部側の2本の第1ピン型ロードセル23は、鉛直方向に加わる荷重と前方に向かう回転モーメントとを合成した荷重を検出し、下部側の2本の第1ピン型ロードセル23は後方に向かう荷重、すなわち、回転モーメントを検出する状態となる。
【0027】
ここで、オーガ駆動装置29などを装着したリーダ16とリーダブラケット18とを合わせたフロント荷重の総重量をW、上方に配置した円形状の取付孔23a,23bの中心とフロント荷重の重心との間の前後水平方向の距離をa、上下の取付孔中心間の鉛直方向距離をb、上部旋回体15の幅方向中心線に対する重心の左右水平方向の偏心距離をc、リーダブラケット18の左右の連結腕18aの幅方向中心間同士の水平方向距離をd、左上の第1ピン型ロードセル23に作用する鉛直方向荷重をW、回転モーメント反力をR1L、右上の第1ピン型ロードセル23に作用する鉛直方向荷重をW、回転モーメント反力をR1R、左下の第1ピン型ロードセル23に作用する回転モーメント反力をR2L、右下の第1ピン型ロードセル23に作用する回転モーメント反力をR2Rとする。
【0028】
まず、左右方向の荷重の偏心分は、下部側左右の取付孔23c,23dに挿通した第1ピン型ロードセル23に作用する荷重、すなわち、回転モーメント反力R2L、回転モーメント反力R2Rの逆比で配分できるので、
2L/R2R=(c+d/2)/(d/2−c)
が成立することから、重心の左右水平方向の偏心距離cは、
2L×(d/2−c)=R2R×(c+d/2)
2L×d/2−R2L×c=R2R×c+R2R×d/2
c(R2R+R2L)=d/2×(R2L−R2R
c=d/2×(R2L−R2R)/(R2R+R2L
となり、総重量Wの重心位置が上部旋回体中心線から左右水平方向に偏心した距離cが算出される。
【0029】
また、左上の第1ピン型ロードセル23に作用する荷重をfとすると、この荷重fは、鉛直方向荷重Wと回転モーメント反力R1Lとの合力であるから、
=W+R1L
であり、左側上下の第1ピン型ロードセル23に作用する回転モーメント反力R1L,R2Lについては、作用する方向が逆で釣り合った状態にあるから、
1L=R2L
が成立するので、
=W+R2L
となり、
=√(f−R2L
となって左上の第1ピン型ロードセル23に作用する鉛直方向荷重Wを求めることができる。
【0030】
右上の第1ピン型ロードセル23に作用する荷重をfとして前記同様の演算を行うことにより、
=√(f−R2R
となり、右上の第1ピン型ロードセル23に作用する鉛直方向荷重Wを求めることができる。したがって、総重量Wは、
W=W+W
として求めることができる。
【0031】
さらに、回転モーメントとの釣り合いから、
×a=R2L×b
が成立し、
a=(R2L×b)/W
となることから、取付孔23a,23bの中心とフロント荷重の重心との間の前後水平方向の距離aを求めることができる。
【0032】
これらの算出結果から、リーダ16などのフロント荷重の総重量Wと、距離a及び距離cからフロント荷重の重心位置とを求めることができる。また、アウトリガボックス22に加わる荷重についても、4本の第2ピン型ロードセル31の取付孔を第1ピン型ロードセル23の取付孔23a,23b,23c,23dと同様に、上下いずれか一方を円形状、他方を鉛直方向に長い長円形状に形成することにより、リア荷重の総重量と重心位置とを求めることができる。
【0033】
この状態で、検出したフロントの総重量及びリアの総重量をそれぞれ表示することにより、オペレータがフロント荷重及びリア荷重を確認することができ、あらかじめ設定された最大フロント荷重や最大リア荷重との比較や、前後の荷重バランス、左右の荷重バランスが適切か否かを判定することができる。各荷重や荷重バランスが不適切であるとオペレータが判断した場合には、作業開始前に対応することができ、例えば、過大なリア荷重による旋回ベアリング14への悪影響も回避することができる。
【0034】
さらに、あらかじめ前記各種機器を取り付けていない状態で計算あるいは実測にて求めた前記ベースマシン12の重量及び重心位置と、算出したフロント荷重及び重心位置、リア荷重及び重心位置とに基づいて、作業状態における杭打機11の重量や重心位置を算出することにより、重量が杭打機11に設定されている最大重量を超えているか否か、重心位置があらかじめ設定された基準重心範囲内にあるか否かを判定することで作業状態における杭打機11の安定度を求めることができ、作業状態の杭打機11の重量が最大重量を超えている場合や、重心位置が基準重心範囲内から外れて安定度が低下している場合には、警告灯や警報音などの警報を発してオペレータに通知したり、下部走行体13による走行や上部旋回体15の旋回を含む杭打機11の各種動作を自動的に停止させることができる。これにより、杭打ち作業中の杭打機11を保護できるとともに、杭打機11が転倒する危険性も回避することができる。
【0035】
一方、フロントジャッキ17やリアジャッキ19が作動している場合、すなわち、ジャッキシリンダ17c,19cの伸び側に作動油を供給してシリンダロッドを伸長させ、接地板17e,19eを接地させた状態では、各ジャッキ17,19によってリーダブラケット18やアウトリガボックス22が支持された状態になり、リーダ16やカウンタウエイト20などの荷重の一部を各ジャッキ17,19が負担し、各ピン型ロードセル23,31で検出した荷重データが変化して正確な荷重を検出できなくなるため、ジャッキシリンダ17c,19cの伸び側に作動油を供給する経路の任意の位置に圧力センサを設け、該圧力センサが圧力上昇を検出したときに、各ピン型ロードセル23,31での荷重の検出を停止したり、重量や重心位置の算出を停止したりすることにより、誤った荷重データに基づいた誤判定を回避することができる。
【0036】
このように、施工条件や施工方法によって上部旋回体の前部に装着するリーダの長さやリーダに装着する作業装置を変更しても、上部旋回体15に作用するフロント荷重の状態(総重量及び重心位置)を容易に求めることができ、作業状態における杭打機11の全体の重量や重心位置から安定度を容易に求めることができるので、転倒などの事故発生を防止して杭打機11による杭打ち作業を安全かつ確実に行うことができる。
【0037】
なお、重量や重心位置の算出は、従来のパソコンによる計算と同様にして行うことができ、簡単な演算装置を用いることによって容易に算出することが可能である。さらに、上下左右4箇所の取付孔の下部側を円形状に、上部側を長円形状にすることもできる。また、長円形状にする取付孔は、リーダブラケット取付腕及びリーダブラケットのいずれか一方に形成する取付孔を長円形状に形成し、他方の取付孔はピン型ロードセルの外径に対応した円形状とすればよい。
【0038】
さらに、アウトリガボックス連結部材として4本の第2ピン型ロードセルを用いるとともに、第2ピン型ロードセルの取付孔の上下いずれか一方を円形状、他方を長円形状にすることによって、リア荷重における総重量及び重心位置をフロント荷重と同様にして求めることができるが、リア荷重における重心位置の変化が少ない場合は、第2ピン型ロードセルの取付孔を全て円形状に形成して重量のみを求めるようにしてもよく、リア荷重における重量の変化が少ない場合や、カウンタウエイトの状態や発電機の有無などから重量や重心位置を容易に求めることができる場合は、第2ピン型ロードセルを用いずに、アウトリガボックス連結部材として通常のピンを用いてアウトリガボックスを連結するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0039】
11…杭打機、12…ベースマシン、13…下部走行体、13a…クローラ、14…旋回ベアリング、15…上部旋回体、15a…リーダブラケット取付腕、15b…アウトリガボックス連結腕、16…リーダ、16a…リーダ基部材、16b…リーダ部材、17…フロントジャッキ、17a…回動ピン、17b…回動腕、17c…ジャッキシリンダ、17d…シリンダロッド、17e…接地板、17f…固定部材、18…リーダブラケット、18a…連結腕、18b…リーダ保持部、18c…シーブブラケット、18d…ブラケット部、18e…ガイドシーブ、19…リアジャッキ、19a…回動ピン、19b…回動腕、19c…ジャッキシリンダ、19d…バックステー連結部、19e…接地板、19f…シリンダ、20…カウンタウエイト、21…発電機載置台、22…アウトリガボックス、22a…連結腕、23…第1ピン型ロードセル、23a,23b,23c,23d…取付孔、24…リーダ取付軸、25…リーダホルダ、26…バックステー、27…回り止め部材、28…トップシーブブロック、29…オーガ駆動装置、30…ワイヤロープ、31…第2ピン型ロードセル、32…発電機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クローラを備えた下部走行体の上部に、旋回ベアリングを介して上部旋回体を旋回可能に設け、リーダを支持するリーダブラケットを連結するためのリーダブラケット取付腕を前記上部旋回体の前部の上下左右の4箇所に設け、前記リーダブラケットの後部に設けた上下左右の4箇所の連結腕と前記リーダブラケット取付腕との重合部に設けた上下左右の4箇所の取付孔にリーダブラケット連結部材をそれぞれ挿通することにより、前記リーダブラケットを前記リーダブラケット連結部材を介して前記上部旋回体の前部に取り付けた杭打機において、前記リーダブラケット連結部材としてピン型ロードセルを用いると共に、上下左右の4箇所の前記取付孔の
上方又は下方のいずれか一方の取付孔を前記ピン型ロードセルの径に対応した円形状に形成し、他方の取付孔を前記ピン側ロードセルの径に対して鉛直方向に長い長円形状に形成したことを特徴とする杭打機。
【請求項2】
請求項1記載の杭打機における重心位置の測定方法であって、前記円形状に形成した取付孔に挿通した前記ピン型ロードセルによって検出した鉛直方向荷重と回転モーメント反力との合力と、前記長円形状に形成した取付孔に挿通した前記ピン型ロードセルによって検出した回転モーメント反力と、左右の取付孔の水平方向距離と、上下の取付孔の鉛直方向距離と、前記上部旋回体の幅方向中心線と、取付孔の中心とフロント荷重の重心との間の前後水平方向の距離との関係から、フロント荷重の総重量と重心位置とを求めることを特徴とする杭打機の重心位置測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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