説明

杭打機及び鋼管杭の施工方法

【課題】鋼管杭を保持する杭保持筒の軽量化を図る。鋼管杭の係合突起を1箇所にして溶接作業の工数を削減し、低空頭杭打ち作業を効率よく行えるようにする。
【解決手段】回転駆動装置19の出力筒22の両端部に装着する上部杭係合筒25と下部杭係合筒26と、出力筒22内に配置し、上下の杭係合筒間を接続するガイドパイプ27とを備える。ガイドパイプ27は、鋼管杭23が挿通可能な内径を有し、杭係合筒25,26は、鋼管杭23の外径に対応した筒本体25a,26aと、筒本体に設けられて出力筒22の端部に止着されるフランジ部25b,26bと、筒本体の内周面に設けられて鋼管杭の係合突起23aが通過可能な凹溝25f,26fと、凹溝の軸方向中間部で凹溝の周方向に隣接する係合突起の係合部25g,26gと、杭係合筒の出力筒内部側に突出してガイドパイプ27の開口端が嵌合する嵌合筒部25d,26dとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭打機及び鋼管杭の施工方法に関し、詳しくは、橋の下や工場内などの高さに制限のある場所で鋼管杭を地中に埋設する杭打機及び該杭打機を使用した鋼管杭の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼管杭を地中に埋設する杭打機として、回転駆動装置の杭装着孔(出力筒)の内周に、鋼管杭の外径に対応した内径を有する杭保持筒を介して鋼管杭を保持し、また、杭保持筒に設けた係合部に係合する係合突起を外周面の上部及び下部の2箇所にそれぞれ突設した鋼管杭を用いることにより、橋の下や工場内、トンネル内、地下などの高さに制限のある場所での低空頭杭打ち作業を行う杭打機が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−1719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の特許文献1の杭打機で鋼管杭を保持するために使用する杭保持筒は、出力筒の長さに対応した長さを有するとともに、外径が出力筒の内径に対応し、内径が鋼管杭の外径に対応した円筒状に形成されているため、外径が小さな鋼管杭に対応した杭保持筒では外径と内径との差、即ち杭保持筒の肉厚が大きくなり、重量が嵩んで出力筒に対する脱着作業が面倒であり、また、回転駆動装置を上昇させたときの重心位置が高くなるという難点があった。また、鋼管杭の上下に係合突起を必要とすることから、鋼管杭の外周面に係合突起を溶着するための作業量が多いという難点もあった。
【0005】
そこで本発明は、鋼管杭を保持するための杭保持筒の軽量化を図るとともに、鋼管杭の係合突起を上部の1箇所にして溶接作業の工数を削減することができ、低空頭杭打ち作業を効率よく行うことができる杭打機及び該杭打機を使用した鋼管杭の施工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の杭打機は、ベースマシンに立設したリーダに回転駆動装置を昇降可能に設け、鋼管杭を保持した回転駆動装置をリーダに沿って下降させることにより前記鋼管杭を地中に埋設する杭打機において、前記回転駆動装置を回転軸方向に貫通して回転駆動装置により回転駆動される出力筒を回転可能に設けるとともに、該出力筒の両端部にそれぞれ着脱可能に装着される上下一対の上部杭係合筒及び下部杭係合筒と、前記出力筒の内部に配置されて上下の杭係合筒間を接続するガイドパイプとを備え、前記ガイドパイプは、上部外周面に係合突起を設けた前記鋼管杭が挿通可能な内径を有し、前記杭係合筒は、前記鋼管杭の外径に対応した内径を有する筒本体と、該筒本体の一端部外周に設けられて前記出力筒の端部に着脱可能に止着されるフランジ部と、該筒本体の内周面に設けられて前記鋼管杭の外周に突設した前記係合突起が回転軸方向に通過可能な凹溝と、該凹溝の軸方向中間部で該凹溝の周方向に隣接して設けられた前記係合突起の係合部と、該杭係合筒の出力筒内部側に突出して前記ガイドパイプの開口端が着脱可能に嵌合する嵌合筒部とを備えていることを特徴としている。
【0007】
また、前記杭係合筒及び前記ガイドパイプは、鋼管杭の外径に対応した内径をそれぞれ有する複数種の杭係合筒及びガイドパイプが、前記鋼管杭の外径に応じて前記回転駆動装置に交換可能に装着され、前記複数種の杭係合筒における各筒本体の肉厚は、施工する鋼管杭に設定された許容トルクに合わせた強度となる肉厚にそれぞれ設定され、前記ガイドパイプの肉厚が前記筒本体の肉厚より薄く形成されていることが好ましく、前記筒本体の両端開口部に、開口先端に向かって拡開した円錐形のガイド面がそれぞれ設けられていると好適である。さらに、前記係合部は、前記筒本体の周壁を貫通して外部に開口していることが好ましく、上部杭係合筒及び下部杭係合筒を同一形状に形成することが望ましい。
【0008】
また、本発明の鋼管杭の施工方法は、前記杭打機を使用した鋼管杭の施工方法であって、上下一対の前記上部杭係合筒及び前記下部杭係合筒及び前記ガイドパイプを出力筒にそれぞれ装着した前記回転駆動装置を前記リーダの上部に上昇させ、前記下部杭係合筒の前記係合部に第1の鋼管杭の前記係合突起を係合させた状態で、回転駆動装置をリーダに沿って下降させることにより第1の鋼管杭をあらかじめ設定された深さまで地中に圧入した後、下部杭係合筒の係合部と係合突起との係合状態を解除してから、第1の鋼管杭を圧入状態に保ったまま回転駆動装置をリーダに沿って上昇させ、第2の鋼管杭を前記上部杭係合筒及び前記下部杭係合筒及び前記ガイドパイプ内に挿通して上部杭係合筒の係合部と第2の鋼管杭の係合突起とを係合させるとともに、第1の鋼管杭の上端部と第2の鋼管杭の下端部とを連結した状態で、回転駆動装置をリーダに沿って下降させることにより、あらかじめ設定された第1回圧入量に相当する深さまで第1及び第2の鋼管杭を連結した状態で圧入した後、上部杭係合筒の係合部と第2の鋼管杭の係合突起との係合状態を解除してから、連結した鋼管杭を圧入状態に保ったまま回転駆動装置をリーダに沿って上昇させ、第2の鋼管杭の係合突起と下部杭係合筒の係合部とを係合させた状態で、回転駆動装置をリーダに沿って下降させることにより、あらかじめ設定された第2回圧入量に相当する深さまで第1及び第2の鋼管杭を連結した状態で圧入することを特徴とし、さらに、第1の鋼管杭と第2の鋼管杭とを連結した状態で地中に圧入した後、前記第2の鋼管杭の操作と同じ操作を繰り返すことにより、3番目以降の鋼管杭の下端部を先に連結状態で圧入した鋼管杭の上端部に連結して地中に圧入することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の杭打機によれば、鋼管杭を保持する筒状部材を、回転駆動装置の出力筒の両端部にそれぞれ着脱可能に装着される上部杭係合筒及び下部杭係合筒と、両杭係合筒間を接続するガイドパイプとで形成したので、従来の杭保持筒に比べて、鋼管杭を保持する筒状部材の軽量化を図ることができるとともに、両杭係合筒に係合突起が係合可能な係合部をそれぞれ設けているので、鋼管杭の係合突起を上部外周面のみにすることができる。また、両杭係合筒間にガイドパイプを設けているので、筒状部材内への鋼管杭の挿入も円滑に行うことができる。
【0010】
また、鋼管杭の外径に対応した内径を有する杭係合筒の筒本体の肉厚を、あらかじめ設定された肉厚、例えば、施工する鋼管杭に設定された許容トルクに合わせた強度となる肉厚にそれぞれ設定することにより、外形が小さな鋼管杭に対応した杭係合筒の強度を維持したまま軽量化が図れる。さらに、筒本体の両端開口部に円錐形のガイド面をそれぞれ設けることにより、鋼管杭の挿入作業をより円滑に行うことができる。また、係合部を筒本体の外部に開口させることにより、係合部と係合突起との位置関係を容易に確認することができる。
【0011】
さらに、本発明の鋼管杭の施工方法によれば、鋼管杭の係合突起を上下の杭係合筒に所定の順序で係合させて鋼管杭の埋設操作を行うことにより、複数の鋼管杭を連結した状態で効率よく地中に埋設することができる。したがって、施工する鋼管杭の外径に応じた杭係合筒及びガイドパイプを回転駆動装置の出力筒にそれぞれ装着することにより、低空頭杭打ち作業を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一形態例を示す杭打機の要部断面図である。
【図2】図1のII-II断面図である。
【図3】同じく杭打機の側面図である。
【図4】鋼管杭の施工手順の一例を示す説明図である。
【図5】小径の鋼管杭用の杭係合筒を連結した際の杭打機の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本形態例に示す杭打機11は、クローラ12aを備えた下部走行体12と、該下部走行体12の上部に旋回可能に設けられた上部旋回体13とで構成されたベースマシンと、前記上部旋回体13の前部に設けられたフロントブラケット14に傾動可能に取り付けられたリーダ15と、該リーダ15をフロントブラケット14の後部から支持する後部油圧シリンダ16と、前記上部旋回体13の前方左右に設けられた一対のフロントジャッキ17と、上部旋回体13の後方左右に設けられた一対のリアジャッキ18と、前記リーダ15に昇降可能に設けられた回転駆動装置19と、該回転駆動装置19をリーダ15に沿って昇降させるための昇降用油圧シリンダ20とを備えている。この杭打機の全高は2m程度に収められており、橋の下や工場内、トンネル内、地下などの高さに制限のある場所で低空頭杭打ち作業を行ったり、これらの場所を通過することができるように形成されている。
【0014】
回転駆動装置19は、該回転駆動装置19を回転軸方向に貫通して回転可能に設けられ、回転駆動用の油圧モータ19aで駆動される駆動ギア21により回転駆動される出力筒22の内側に鋼管杭23を挿通する、いわゆる中貫型回転駆動装置であって、出力筒22の上下両端部には、リング状の連結部材24を介して上下一対の上部杭係合筒25及び下部杭係合筒26が着脱可能な状態でそれぞれ装着され、出力筒22内には、上下各杭係合筒25,26の出力筒22内部側同士を接続するガイドパイプ27が配置されている。また、施工する鋼管杭23の上部外周面対向位置には、上部杭係合筒25又は下部杭係合筒26に係合する一対の係合突起23a,23aがそれぞれ溶接により固着されて鋼管杭23の外周面から突出した状態となっている。
【0015】
連結部材24は、出力筒22の内径よりも僅かに小さな内径と、出力筒22の外径よりも大きな外径を有するリング状に形成され、内周部の出力筒内部側には、出力筒22の開口端部内周に嵌入する環状の嵌入部24aが設けられるとともに、内周部の出力筒外部側には、杭係合筒25が嵌合する環状凹部24bが周設されている。この連結部材24は、複数の第1連結ボルト28によって出力筒22の上端面と下端面とにそれぞれ取り付けられ、出力筒22に一体化されて出力筒22と共に回転する。
【0016】
上下各杭係合筒25,26は、出力筒22に対して回転軸を一致させた状態で装着されるもので、鋼管杭23が挿入される筒本体25a,26aと、該筒本体25a,26aの一端部外周から突出したフランジ部25b,26bとをそれぞれ備えている。筒本体25a,26aは、施工する鋼管杭23の外径に対応する内径を有しており、出力筒内部側の一端部外周には、前記連結部材24の嵌入部24bに嵌合する環状の小径フランジ部25c,26cがそれぞれ設けられ、該小径フランジ部25c,26cの出力筒内部側には、ガイドパイプ27の内径に対応した外径を有し、ガイドパイプ27の開口端が嵌合する嵌合筒部25d,26dがそれぞれ設けられている。さらに、筒本体25a,26aの両端開口部内周面には、開口先端に向けて漸次拡開した円錐形のガイド面25e,26eがそれぞれ設けられている。
【0017】
フランジ部25b,26bは、前記連結部材24の外径に対応した外径を有しており、複数の第2連結ボルト29によって連結部材24に取り付けられる。また、筒本体25a,26aの内周面対向位置には、前記鋼管杭23に形成した係合突起23a,23aが回転軸方向に通過可能な一対の凹溝25f,26fがそれぞれ設けられるとともに、該凹溝25f,26fの軸方向中間部には、凹溝25f,26fの周方向に隣接して前記係合突起23a,23aが係合可能な一対の係合部25g,26gが、筒本体25a,26aの周壁を内外に貫通した状態でそれぞれ設けられている。
【0018】
ガイドパイプ27は、筒本体25a,26aの肉厚より薄く、肉厚が数mm程度の金属製パイプ部材からなるもので、係合突起23aを突設した鋼管杭23が挿通可能な内径で、かつ、上下両杭係合筒25,26の小径フランジ部25c,26c間の間隔に対応した長さに形成され、両開口端を上下各杭係合筒25,26の嵌合筒部25d,26dにそれぞれ嵌合させることにより、上下両杭係合筒25,26の出力筒内部側を接続した状態で出力筒22の内周に配置される。
【0019】
出力筒22への各杭係合筒25,26及びガイドパイプ27の装着は、通常、出力筒22の上下に各連結部材24を第1連結ボルト28であらかじめ固着した状態で行われ、最初に、出力筒22の下端部に取り付けられた連結部材24に、フランジ部26bを挿通した複数の第2連結ボルト29によって下部杭係合筒26を固着する。このとき、小径フランジ部26cを環状凹部24bに嵌合させることによって下部杭係合筒26が位置決めされる。
【0020】
次に、出力筒22の上端部に取り付けた連結部材24の内周を通して出力筒22の内部に上方からガイドパイプ27を挿入し、ガイドパイプ27の下端開口を下部杭係合筒26の小径筒部26dに嵌合させ、出力筒22の回転軸線とガイドパイプ27の中心軸とを一致させた状態とする。
【0021】
そして、出力筒22の上端部に取り付けられた連結部材24に、両凹溝25f,26fを一直線状に配置した状態で上部杭係合筒25を載置し、小径フランジ部25cを環状凹部24bに嵌合させるとともに、ガイドパイプ27の上端開口を小径筒部25dに嵌合させた状態で、フランジ部25bを挿通した複数の第2連結ボルト29で連結部材24に固着する。これにより、出力筒22の上下に杭係合筒25,26がそれぞれ装着され、上下の杭係合筒25,26同士の間がガイドパイプ27で接続された状態となり、出力筒22、連結部材24、上部杭係合筒25、下部杭係合筒26及びガイドパイプ27が一体化される。
【0022】
低空頭杭打ち作業によって複数の鋼管杭を接続して地中に埋設する施工手順は、次のようにして行われる。まず、リーダ15を所定の角度で立設し、昇降用油圧シリンダ20を伸長させて回転駆動装置19をリーダ15に沿って上昇させた状態で、係合突起23aを下部杭係合筒26の凹溝26f内に差し込むようにして1本目の鋼管杭23を下部杭係合筒26の下部開口から挿入する。
【0023】
そして、係合突起23aが下部杭係合筒26の凹溝26f内を上昇して係合部26gの位置に達したときに油圧モータ19aを作動させて出力筒22を僅かに回転させ、係合突起23aを凹溝26fから係合部26gに移動させることにより、係合突起23aと係合部26gとを係合させた状態とする。
【0024】
これにより、図4(a)に示すように、1本目の鋼管杭23が下部杭係合筒26を介して回転駆動装置19に保持された状態になるので、あらかじめ設定された位置で昇降用油圧シリンダ20を短縮させて、また、必要に応じて油圧モータ19aを作動させて鋼管杭23を回転させながら回転駆動装置19をリーダ15に沿って下降させことにより、係合凹部26gの上面が係合突起23aの上面に当接して鋼管杭23を下方に押動するとともに、係合凹部26gの側面が係合突起23aの側面に当接して鋼管杭23を出力筒22の回転方向に押動し、図4(b)に示すように、1本目の鋼管杭23が回転しながら地中に圧入される。通常、鋼管杭23の圧入操作は、回転駆動装置19をリーダ15の下端まで下降させた状態で終了する。
【0025】
1本目の鋼管杭23を地中に圧入した後、出力筒22を僅かに回転させて係合突起23aと係合部26gとの係合状態を解除し、係合突起23aを凹溝26f内に位置させてから回転駆動装置19を上昇させる。これにより、1本目の鋼管杭23を地中に圧入した状態に保ったまま、回転駆動装置19をリーダに沿って上昇させることができる。次に、2本目の鋼管杭23を下部杭係合筒26の下部開口から挿入し、ガイドパイプ27内を上昇させて2本目の鋼管杭23の係合突起23aを上部杭係合筒25の凹溝25fに差し込み、図4(c)に示すように、係合突起23aが係合部25gの位置に達したときに出力筒22を僅かに回転させて係合突起23aを上部杭係合筒25の係合部25gに係合させる。
【0026】
上部杭係合筒25を介して回転駆動装置19に2本目の鋼管杭23を保持した状態で、図4(d)に示すように、回転駆動装置19を僅かに下降させて1本目の鋼管杭23の上端と2本目の鋼管杭23の下端とを付き合わせ状態とし、両鋼管杭23を溶着して1本目の鋼管杭23の上部に2本目の鋼管杭23を連結する。連結後に回転駆動装置19をリーダ15の下端まで下降させることにより、図4(e)に示すように、連結状態の鋼管杭23をあらかじめ設定された第1回圧入量に相当する深さまで地中に圧入する。
【0027】
次に、出力筒22を僅かに回転させて係合突起23aを凹溝25f内に位置させてから、1本目及び2本目を連結した鋼管杭23を圧入状態に保ったまま回転駆動装置19を上昇させ、図4(f)に示すように、2本目の鋼管杭23の係合突起23aを下部杭係合筒26の係合部26gに係合させた後、回転駆動装置19をリーダ15の下端まで下降させることにより、図4(g)に示すように、連結状態の鋼管杭23をあらかじめ設定された第2回圧入量に相当する深さまで地中に圧入する。
【0028】
そして、3本目以降の鋼管杭23を先に圧入した連結状態の鋼管杭に連結して地中に圧入する際には、図4(g)に示す圧入後の状態から図4(c)に示す回転駆動装置19の上昇状態に戻り、前述の2本目の鋼管杭23を1本目の鋼管杭23に連結して圧入する操作と同じ操作を順次繰り返すことにより、複数の鋼管杭を連結した状態であらかじめ設定された深さまで埋設することができる。
【0029】
このようにして複数の鋼管杭23を埋設施工する際に、ガイドパイプ27の内径を係合突起23aが通過可能な内径に設定することにより、通常の金属製パイプをガイドパイプ27として用いることができ、ガイドパイプ27に杭係合筒25,26の凹溝25f,26fに相当する溝加工を施す必要がなく、下部杭係合筒26から挿入した鋼管杭23を大きく傾斜させずに上部杭係合筒25に向けてガイドすることができる。
【0030】
また、各杭係合筒25,26の両端開口部内周面に円錐形のガイド面25e,26eを設けているので、下部杭係合筒26内への鋼管杭23の挿入も容易に行うことができ、ガイドパイプ27内で鋼管杭23が僅かに傾斜しても、上部杭係合筒25内に確実に鋼管杭23をガイドすることができる。さらに、係合部25g,26gが筒本体25a,26aの周壁を貫通して外部に開口していることにより、鋼管杭23に目印などを設けることなく、係合突起23aの位置を外部から容易かつ確実に確認することができる。
【0031】
なお、2本目の鋼管杭23を下部杭係合筒26の下部開口から挿入する際には、上部旋回体13を旋回させたり、下部走行体12で後退させたりして、先に圧入した鋼管杭23が邪魔にならない状態で行えばよく、また、リーダ15に対して回転駆動装置19を回動させたり、フロントブラケット14に対してリーダ15を回動させたりして出力筒22の回転軸線を鉛直方向に対して傾斜させたり、水平方向に向けたりすることにより、旋回させたり走行させたりすることなく、その場で鋼管杭23に挿入を行うことができる。
【0032】
さらに、下部杭係合筒26内への鋼管杭23の挿入は、下部杭係合筒26内に向けて鋼管杭23を上昇させてもよく、回転駆動装置19を鋼管杭23に向けて下降させてもよい。また、回転駆動装置19の上下にスペースがある場合は、上下の杭係合筒25,26のどちらからでも鋼管杭23を挿入することが可能であり、係合突起23aと係合凹部25g,26gとの係合や係合解除は、鋼管杭23を回転させて行ってもよい。さらに、第1の鋼管杭23と第2の鋼管杭23との連結は、溶接に限らず、螺合などの連結構造を採用することもできる。
【0033】
図5は、前記鋼管杭23に比べて小径の鋼管杭30を施工する際に用いる上部杭係合筒31と下部杭係合筒32及びガイドパイプ33の一例を示すものである。なお、図1乃至図4に示した各構成要素と同一の構成要素には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。小径の鋼管杭30を施工する際には、杭係合筒31,32として、鋼管杭32の外径に対応した内径を有し、内径を小さくした分、外径も小さくした筒本体31a,32aを有し、フランジ部31b,32bを幅広に形成したものを使用するとともに、ガイドパイプ33にも、係合突起30aを突設した鋼管杭30が挿通可能な内径のものを使用する。通常、筒本体31a,32aの肉厚は、施工する鋼管杭に設定された許容トルクに合わせた強度となる肉厚にそれぞれ設定することにより、筒本体31a,32aの軽量化を図ることができる。
【0034】
このように、施工する鋼管杭23,30の径や強度(許容トルク)に応じた寸法及び強度で形成した杭係合筒25,26,31,32及びガイドパイプ27,33をそれぞれ用い、杭係合筒25,26,31,32は出力筒22の上下両端にそれぞれ装着し、上下の杭係合筒間をガイドパイプ27,33でそれぞれ接続した状態とすることにより、鋼管杭23,30を挿入する際の作業性を損なうことなく、従来の杭保持筒に比べて軽量化、小型化を図ることができる。
【0035】
さらに、上下の杭係合筒をそれぞれ同一形状とすることにより、製造コストの低減が図れ、出力筒への着脱を容易に行うことができるとともに管理も容易となる。また、上下の杭係合筒に鋼管杭の係合突起を係合させる係合部がそれぞれ設けられているので、鋼管杭に設ける係合突起を上部外周のみにしても、複数の鋼管杭を連結して埋設することが可能となり、鋼管杭に係合突起を設けるための作業工数を削減できる。なお、鋼管杭の長さは、回転駆動装置の昇降範囲によって設定され、1箇所に埋設する鋼管杭の本数や鋼管杭の径は、地盤の状況に応じて設定される。
【符号の説明】
【0036】
11…杭打機、12…下部走行体、12a…クローラ、13…上部旋回体、14…フロントブラケット、15…リーダ、16…後部油圧シリンダ、17…フロントジャッキ、18…リアジャッキ、19…回転駆動装置、19a…油圧モータ、20…昇降用油圧シリンダ、21…駆動ギア、22…出力筒、23…鋼管杭、23a…係合突起、24…連結部材、24a…嵌入部、24b…環状凹部、25…上部杭係合筒、26…下部杭係合筒、25a,26a…筒本体、25b,26b…フランジ部、25c,26c…小径フランジ部、25d,26d…嵌合筒部、25e,26e…ガイド面、25f,26f…凹溝、25g,26g…係合凹部、27…ガイドパイプ、28…第1連結ボルト、29…第2連結ボルト、30…鋼管杭、31…上部杭係合筒、32…下部杭係合筒、33…ガイドパイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースマシンに立設したリーダに回転駆動装置を昇降可能に設け、鋼管杭を保持した回転駆動装置をリーダに沿って下降させることにより前記鋼管杭を地中に埋設する杭打機において、前記回転駆動装置を回転軸方向に貫通して回転駆動装置により回転駆動される出力筒を回転可能に設けるとともに、該出力筒の両端部にそれぞれ着脱可能に装着される上下一対の上部杭係合筒及び下部杭係合筒と、前記出力筒の内部に配置されて上下の杭係合筒間を接続するガイドパイプとを備え、前記ガイドパイプは、上部外周面に係合突起を設けた前記鋼管杭が挿通可能な内径を有し、前記杭係合筒は、前記鋼管杭の外径に対応した内径を有する筒本体と、該筒本体の一端部外周に設けられて前記出力筒の端部に着脱可能に止着されるフランジ部と、前記筒本体の内周面に設けられて前記鋼管杭の外周に突設した前記係合突起が回転軸方向に通過可能な凹溝と、該凹溝の軸方向中間部で該凹溝の周方向に隣接して設けられた前記係合突起の係合部と、該杭係合筒の出力筒内部側に突出して前記ガイドパイプの開口端が着脱可能に嵌合する嵌合筒部とを備えていることを特徴とする杭打機。
【請求項2】
前記杭係合筒及び前記ガイドパイプは、鋼管杭の外径に対応した内径をそれぞれ有する複数種の杭係合筒及びガイドパイプが、前記鋼管杭の外径に応じて前記回転駆動装置に交換可能に装着され、前記複数種の杭係合筒における各筒本体の肉厚は、施工する鋼管杭に設定された許容トルクに合わせた強度となる肉厚にそれぞれ設定され、前記ガイドパイプの肉厚が前記筒本体の肉厚より薄く形成されていることを特徴とする請求項1記載の杭打機。
【請求項3】
前記筒本体の両端開口部に、開口先端に向かって拡開した円錐形のガイド面がそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の杭打機。
【請求項4】
前記係合部は、前記筒本体の周壁を貫通して外部に開口していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の杭打機。
【請求項5】
上部杭係合筒及び下部杭係合筒は同一形状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の杭打機。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項記載の杭打機を使用した鋼管杭の施工方法であって、上下一対の前記上部杭係合筒及び前記下部杭係合筒及び前記ガイドパイプを出力筒にそれぞれ装着した前記回転駆動装置を前記リーダの上部に上昇させ、前記下部杭係合筒の前記係合部に第1の鋼管杭の前記係合突起を係合させた状態で、回転駆動装置をリーダに沿って下降させることにより第1の鋼管杭をあらかじめ設定された深さまで地中に圧入した後、下部杭係合筒の係合部と係合突起との係合状態を解除してから、第1の鋼管杭を圧入状態に保ったまま回転駆動装置をリーダに沿って上昇させ、第2の鋼管杭を前記上部杭係合筒及び前記下部杭係合筒及び前記ガイドパイプ内に挿通して上部杭係合筒の係合部と第2の鋼管杭の係合突起とを係合させるとともに、第1の鋼管杭の上端部と第2の鋼管杭の下端部とを連結した状態で、回転駆動装置をリーダに沿って下降させることにより、あらかじめ設定された第1回圧入量に相当する深さまで第1及び第2の鋼管杭を連結した状態で圧入した後、上部杭係合筒の係合部と第2の鋼管杭の係合突起との係合状態を解除してから、連結した鋼管杭を圧入状態に保ったまま回転駆動装置をリーダに沿って上昇させ、第2の鋼管杭の係合突起と下部杭係合筒の係合部とを係合させた状態で、回転駆動装置をリーダに沿って下降させることにより、あらかじめ設定された第2回圧入量に相当する深さまで第1及び第2の鋼管杭を連結した状態で圧入することを特徴とする鋼管杭の施工方法。
【請求項7】
第1の鋼管杭と第2の鋼管杭とを連結した状態で地中に圧入した後、前記第2の鋼管杭の操作と同じ操作を繰り返して3番目以降の鋼管杭の下端部を先に連結状態で圧入した鋼管杭の上端部に連結して地中に圧入することを特徴とする請求項6記載の鋼管杭の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−251383(P2012−251383A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125965(P2011−125965)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【Fターム(参考)】