説明

杭打機

【課題】杭打機本体の前部が浮き上がった状態でフリー降下機構が作動状態になることを防止して油圧モータを保護することができる杭打機を提供する。
【解決手段】リーダに上下動可能に設けたオーガ駆動装置を昇降させるためのオーガ昇降用油圧モータ18を駆動する昇降用油圧回路20aと、オーガ昇降用油圧モータを自由回転させてオーガ駆動装置をフリー降下させるためのフリー降下用油圧回路20bと、オーガ駆動装置でオーガを回転駆動するための回転用油圧回路31とを備えた杭打機において、フリー降下用油圧回路を作動状態にするフリー降下用の電気回路に、回転用油圧回路を作動させる回転用電気回路が回転用油圧回路を作動状態にしたときにのみフリー降下用の電気回路を導通状態とする開閉回路(リレー回路)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭打機に関し、詳しくは、オーガの推進力によってオーガ駆動装置をフリー降下させるフリー降下機構を備えた杭打機に関する。
【背景技術】
【0002】
先端に螺旋状の羽根を有する鋼管杭やオーガスクリューを施工する際に、鋼管杭又はオーガスクリューを含むオーガ駆動装置の重量と、鋼管杭又はオーガスクリューの推進力とにより決まるオーガ駆動装置の降下速度を、オーガ昇降用油圧モータに供給される油量によらず、前記重量及び推進力でオーガを降下させるフリー降下用油圧回路を設けたフリー降下機構が知られている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【特許文献1】特開2001−98879号公報
【特許文献2】特許第3119343号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記螺旋羽根付きの鋼管杭やオーガスクリューを施工する場合でも、施工最終段階で固い地盤に鋼管杭を圧入する際には、フリー降下機構をカットして前記オーガ昇降用油圧モータを作動させることによりオーガ駆動装置を強制的に降下させ、オーガ駆動装置の押圧力で鋼管杭やオーガスクリューを地盤中にねじ込むことが行われる。このとき、オーガ駆動装置の降下速度が螺旋羽根によるねじ込み速度を上回ると、施工終了時に杭打機本体の前部が浮き上がった状態になってしまう。
【0004】
通常は、オーガ昇降用油圧モータの速度を調整しながらオーガ駆動装置を上昇させて杭打機本体の姿勢を戻すようにしているが、杭打機本体の前部が浮き上がった状態でフリー降下機構を作動させると、浮き上がっていた杭打機本体の前部が下降する際にオーガ駆動装置がリーダに沿って急上昇する状態になる。オーガ駆動装置が急上昇すると、オーガ昇降用油圧モータが上昇側に向かって急速に回転することになり、オーガ昇降用油圧モータが過回転状態になって焼き付いたり、オーガ駆動装置の上昇方向におけるオーガ昇降用油圧モータの吸込側が負圧になって破損したりするおそれがあった。
【0005】
そこで本発明は、杭打機本体の前部が浮き上がった施工終了状態でフリー降下機構が作動状態になることを防止し、油圧モータを保護することができる杭打機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の杭打機は、リーダに上下動可能に設けたオーガ駆動装置を昇降させるためのオーガ昇降用油圧モータを駆動する昇降用油圧回路と、前記オーガ昇降用油圧モータを自由回転させてオーガ駆動装置をフリー降下させるためのフリー降下用油圧回路と、前記オーガ駆動装置でオーガを回転駆動するための回転用油圧回路とを備えた杭打機において、前記フリー降下用油圧回路を作動状態にするフリー降下用電気回路に、前記回転用油圧回路を作動させる回転用電気回路が回転用油圧回路を作動状態にしたときにのみフリー降下用電気回路を導通状態とする開閉回路を設けたことを特徴としている。
【0007】
さらに、本発明の杭打機は、前記フリー降下用油圧回路を作動させた状態で、前記オーガ駆動装置が上昇したときに前記オーガ昇降用油圧モータから作動油が流出する油圧回路に、前記オーガ昇降用油圧モータからの作動油の流出を規制するためのチェック弁を設けたこと、また、前記チェック弁と並列に流量制御弁を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の杭打機によれば、杭打機本体の前部が浮き上がった状態で、フリー降下用油圧回路を作動状態にするフリー降下用電気回路のスイッチを投入しても、回転用油圧回路を作動させるスイッチが投入されて回転用電気回路が回転用油圧回路を作動状態にしたときにしかフリー降下用油圧回路を作動状態にならないので、杭打機本体の前部が浮き上がった施工終了状態でフリー降下用電気回路のスイッチを投入してもフリー降下用油圧回路が作動状態にはならず、オーガ昇降用油圧モータが自由回転することを防止できる。したがって、杭打機本体の前部が浮き上がった状態でフリー降下用電気回路のスイッチを投入しても、オーガ昇降用油圧モータが回転しないので、油圧モータが過回転状態になって焼き付いたり、油圧モータの吸込側が負圧になって破損したりすることを防止でき、オーガ昇降用油圧モータを保護することができる。
【0009】
さらに、万一、杭打機本体の前部が浮き上がった状態でフリー降下用油圧回路が作動状態になったとしても、オーガ昇降用油圧モータが上昇側に向かって回転する際のオーガ昇降用油圧モータから作動油が流出する油圧回路にチェック弁を設けることにより、作動油の流れを規制してオーガ昇降用油圧モータの回転を防止できる。また、チェック弁と並列に流量制御弁を設けることにより、過回転にならない範囲で油圧モータを回転させることができるので、杭打機本体の前部をゆっくりと降下させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は本発明の杭打機に設けられた油圧回路の一形態例を示す要部の油圧回路図、図2は油圧回路を制御する電気回路の一形態例を示す要部の電気回路図、図3は杭打機の一形態例を示す側面図である。
【0011】
まず、図3に示すように、先端に螺旋状の羽根11aを有する鋼管杭11を施工する杭打機12は、下部走行体13に旋回可能に設けた上部旋回体14の前部に立設したリーダ15をバックステー16により支持し、リーダ15に上下動可能に設けたオーガ駆動装置17を、リーダ15の下端部に設けたオーガ昇降用油圧モータ18により、リーダ15の上下に掛け渡されたチェーン15aを介して昇降させるように形成されている。鋼管杭11の埋設施工は、オーガ駆動装置17に設けたオーガ回転用油圧モータ19を油圧により作動させて鋼管杭11を回転させるとともに、オーガ昇降用油圧モータ18をフリー状態としてオーガ駆動装置17をフリー状態で降下させることにより行われる。
【0012】
図1に示すように、前記オーガ昇降用油圧モータ18を作動させる油圧回路は、オーガ駆動装置17を油圧によって昇降させるための昇降用油圧回路20aとして、昇降用油圧ポンプ21、昇降用コントロール弁22及びロードホールディング弁23を有するとともに、オーガ駆動装置17をフリー降下させるためのフリー降下機構を構成するフリー降下用油圧回路20bとして、フリー降下用ソレノイド弁25、フリー降下用第1切換弁26、フリー降下用第2切換弁27及び速度制御弁28と、オーガ昇降用油圧モータ18が上昇側に回転したときの作動油の流れを規制するためのチェック弁29及び流量制御弁30とを有している。さらに、前記オーガ回転用油圧モータ19を作動させる回転用油圧回路31は、回転用油圧ポンプ32,回転用コントロール弁33、右回転用、左回転用の各スイッチ34a,34b及び右回転用、左回転用の各パイロット弁35a,35bとを有している。
【0013】
また、前記オーガ昇降用油圧モータ18のフリー降下機構及び前記オーガ回転用油圧モータ19を作動させるための電気回路24は、図2に示すように、フリー降下機構のフリー降下用ソレノイド弁25を作動させるためのフリー降下スイッチ36及びフリー降下作動中を表示する表示ランプ36aと、オーガ回転用油圧モータ19を作動させる前記右回転用、左回転用の各スイッチ34a,34bと、右回転用、左回転用の各スイッチ34a,34bのいずれかが投入されて通電状態となり、回転用油圧回路31を作動状態にしたときにのみ、フリー降下スイッチ36とフリー降下用ソレノイド弁25のソレノイド25aとを導通状態とするための開閉回路としてリレー回路37とを有している。
【0014】
このように電気回路を構成することにより、右回転用、左回転用の各スイッチ34a,34bのいずれかが投入されていないときには、フリー降下スイッチ36とソレノイド25aとの間がリレー回路37により遮断された状態になっているため、フリー降下スイッチ36だけを投入してもフリー降下機構が作動しないようにしている。すなわち、フリー降下用油圧回路20bによるフリー降下機構の作動は、オーガ回転用油圧モータ19によって鋼管杭11を回転させている施工時のみに限られることになる。
【0015】
杭打機12が待機状態のときには、図1に示すように、昇降用コントロール弁22が中立位置、右回転用、左回転用の各スイッチ34a,34bが共にOFFの状態となっている。この状態で昇降用油圧ポンプ21の吐出回路21aは、昇降用コントロール弁22を介してタンク38に解放されるとともに、ロードホールディング弁23の解放弁23a,23bが閉じ状態になっており、オーガ昇降用油圧モータ18に設けられているブレーキ18aは制動状態となっている。したがって、オーガ昇降用油圧モータ18に作動油の流入、流出はなく、オーガ昇降用油圧モータ18は回転せずに、リーダ15に対する位置を保持した状態になる。
【0016】
オーガ駆動装置17を上昇させるために昇降用コントロール弁22を上昇側に切り換えると、昇降用油圧ポンプ21から吐出回路21aに吐出された作動油は、昇降用コントロール弁22から上昇側回路41を通り、ロードホールディング弁23の上昇側チェック弁23cを通過してオーガ昇降用油圧モータ18の上昇側流入口42に供給される。同時に、作動油の圧力によってロードホールディング弁23の上昇側の解放弁23aが開くとともに、ブレーキ18aが緩解状態になる。これにより、上昇側流入口42に供給された作動油は、オーガ昇降用油圧モータ18を上昇側に向けて回転駆動した後、オーガ昇降用油圧モータ18の降下側流入口43から降下側回路44に流出し、前記解放弁23bを通り、降下側回路44を逆方向に流れて昇降用コントロール弁22からタンク38に戻る。
【0017】
また、オーガ駆動装置17を降下させるために昇降用コントロール弁22を降下側に切り換えると、昇降用油圧ポンプ21から吐出された作動油は、昇降用コントロール弁22から降下側回路44を通り、ロードホールディング弁23の降下側チェック弁23dを通過してオーガ昇降用油圧モータ18の降下側流入口43に供給される。同時に、作動油の圧力によってロードホールディング弁23の降下側の解放弁23bが開くとともに、ブレーキ18aが緩解状態になる。これにより、降下側流入口43に供給された作動油は、オーガ昇降用油圧モータ18を降下側に向けて回転駆動した後、オーガ昇降用油圧モータ18の上昇側流入口42から上昇側回路41に流出して前記解放弁23aを通り、上昇側回路41を逆方向に流れて昇降用コントロール弁22からタンク38に戻る。
【0018】
鋼管杭11を施工する際に、鋼管杭11のねじ込み方向に対応したスイッチ、例えば、右回転用スイッチ34aを投入すると、右回転用パイロット弁35aが開き、パイロット管44からのパイロット圧が回転用コントロール弁33に作用して回転用コントロール弁33を右回転側に切り換える。これにより、回転用油圧ポンプ32から吐出された作動油は、回転用コントロール弁33から右回転側回路45を通り、回転用油圧ポンプ32の右回転側流入口46に供給され、鋼管杭11を右回転させる方向に回転用油圧ポンプ32を回転駆動した後、左回転側流入口47に流出して左回転側回路48を逆方向に流れ、回転用コントロール弁33を通ってタンク38に戻る。
【0019】
鋼管杭11を左方向に回転させる場合、左回転用スイッチ34bを投入すると、左回転用パイロット弁35bが開いて回転用コントロール弁33が左回転側に切り換わり、回転用油圧ポンプ32から吐出された作動油が、回転用コントロール弁33から左回転側回路48を経て回転用油圧ポンプ32の左回転側流入口47に供給され、回転用油圧ポンプ32を逆方向に回転駆動させた後、右回転側流入口46から右回転側回路45を逆方向に流れ、回転用コントロール弁33からタンク38に戻る状態になる。
【0020】
さらに、鋼管杭11を施工する際にフリー降下機構を作動させる際には、昇降用コントロール弁22を中立位置とした状態でフリー降下スイッチ36を投入する。このとき、右回転用スイッチ34a又は左回転用スイッチ34bのいずれかが投入されていれば、前記リレー回路37が作動してフリー降下スイッチ36とフリー降下用ソレノイド弁25のソレノイド25aとが導通状態となり、ソレノイド25aが作動してフリー降下用ソレノイド弁25がフリー降下側に切り換わるとともに、パイロット圧によってフリー降下用第1切換弁26及びフリー降下用第2切換弁27が開状態となる。
【0021】
これにより、オーガ昇降用油圧モータ18の降下側流入口43が前記吐出回路21aから分岐したフリー降下回路49、チェック弁29、流量制御弁30を介して昇降用油圧ポンプ21の吐出側及びタンク38に解放された状態になり、オーガ昇降用油圧モータ18の上昇側流入口42がフリー降下戻り回路50からフリー降下用第2切換弁27及び速度制御弁28を介してタンク38aに解放された状態になる。
【0022】
このとき、昇降用コントロール弁22が中立状態になっているため、上昇側回路41及び降下側回路44に作動油の圧力が作用していないことから、ロードホールディング弁23の解放弁23a,23bは共に閉じ状態となっている。また、フリー降下回路49には、チェック弁29と流量制御弁30とが並列に設けられているため、フリー降下回路49を流れる作動油は、降下側流入口43に流入する方向の流れは規制されず、降下側流入口43から流出する方向の流れは規制される状態となっている。
【0023】
このようにフリー降下機構を作動状態とすることにより、鋼管杭11を含むオーガ駆動装置17の重量と鋼管杭11の推進力とによってオーガ駆動装置17が降下し、これに伴ってオーガ昇降用油圧モータ18が降下側に回転する力が作用すると、昇降用油圧ポンプ21からの作動油の一部が吐出回路21aからフリー降下回路49に分岐し、フリー降下用第1切換弁26及びチェック弁29を通過してオーガ昇降用油圧モータ18の降下側流入口43に吸い込まれ、上昇側流入口42から流出してフリー降下戻り回路50を流れ、フリー降下用第2切換弁27及び速度制御弁28を通ってタンク38aに戻る状態になり、オーガ昇降用油圧モータ18は、オーガ駆動装置17の降下速度に追随して降下側に自由に回転する。これにより、フリー降下機構を利用した鋼管杭11の施工が行われる。
【0024】
なお、昇降用油圧ポンプ21の吐出圧力は、昇降用コントロール弁22を介してタンク38に解放されているため、オーガ昇降用油圧モータ18を降下側に回転させる作用はほとんどないが、オーガ昇降用油圧モータ18が降下側に回転する際の吸込側であるフリー降下回路49や昇降用油圧ポンプ21内に負圧が発生することを効果的に防止することができるので、フリー降下回路49をタンク38から作動油を吸い込むように設けるよりも、吐出回路21aから分岐させることが好ましい。
【0025】
また、フリー降下戻り回路50の速度制御弁28は、フリー降下機構を利用して鋼管杭11を施工する際のオーガ駆動装置17の降下速度に十分に追従できるように流量設定されており、この速度制御弁28を設けることにより、オーガ駆動装置17を上昇させた状態で、誤ってフリー降下機構を作動させた場合でも、速度制御弁28によってオーガ昇降用油圧モータ18から流出する作動油の流量が制御されるため、オーガ駆動装置17が急降下することを防止できる。
【0026】
そして、鋼管杭11の施工最終段階で鋼管杭11を固い地盤に圧入する際には、フリー降下スイッチ36を切ってフリー降下機構をカットし、昇降用コントロール弁22を降下側に切り換えてオーガ昇降用油圧モータ18を降下側に回転駆動し、オーガ駆動装置17を降下させて鋼管杭11を押し込み、鋼管杭11を固い地盤内に圧入した後、昇降用コントロール弁22を中立状態に戻すとともに、右回転用スイッチ34a又は左回転用スイッチ34bを切る。この最終段階で、羽根11aによる鋼管杭11の降下速度よりも、オーガ駆動装置17の降下速度が上回っていると、杭打機12の本体前部が浮き上がった状態になる。通常は、昇降用コントロール弁22を上昇側に切り換えてオーガ駆動装置17を適当な速度で上昇させることにより、杭打機12の本体前部を所定の姿勢に戻すようにする。
【0027】
このように杭打機12の本体前部が浮き上がった状態では、杭打機12の本体前部が重力で降下する方向の力がオーガ駆動装置17をリーダ15に沿って上昇させる方向の力として作用しているので、この状態でフリー降下機構が作動し、昇降用油圧ポンプ21が自由回転可能な状態になると、オーガ駆動装置17の上昇方向の力が昇降用油圧ポンプ21を上昇側に回転させる力となる。
【0028】
したがって、フリー降下スイッチ36を投入しただけでフリー降下機構が作動状態になると、前述のように、オーガ昇降用油圧モータ18が過回転状態になって焼き付いたり、上昇側流入口42側が負圧になったりするおそれがあるが、フリー降下スイッチ36とフリー降下用ソレノイド弁25のソレノイド25aとの間にリレー回路37を設け、右回転用スイッチ34a又は左回転用スイッチ34bを投入したときにのみリレー回路37が導通状態になるように形成しているので、鋼管杭11の施工終了時に右回転用スイッチ34a又は左回転用スイッチ34bを切ることにより、フリー降下スイッチ36を投入しても、リレー回路37の作用によってソレノイド25aに通電されず、フリー降下用ソレノイド弁25がフリー降下側に切り換わることがない。したがって、フリー降下スイッチ36を投入しただけでは、フリー降下用第1切換弁26及びフリー降下用第2切換弁27が閉じ状態のままであるからオーガ昇降用油圧モータ18が自由回転可能な状態になることはなく、オーガ駆動装置17から上昇方向の力が作用してもオーガ昇降用油圧モータ18が回転することはない。これにより、オーガ昇降用油圧モータ18が過回転状態になって焼き付いたり、上昇側流入口42側が負圧になったりすることがなく、オーガ昇降用油圧モータ18を保護することができる。
【0029】
また、本形態例に示すように、前記チェック弁29及び前記流量制御弁30を設けておくことにより、電気系統の異常などの原因でフリー降下機構が万一作動状態になったとしても、オーガ昇降用油圧モータ18を保護することができる。すなわち、オーガ昇降用油圧モータ18が上昇側に回転する場合、オーガ昇降用油圧モータ18の部分における作動油は、上昇側流入口42からオーガ昇降用油圧モータ18内に流入して降下側流入口43から流出する方向に流れる。このとき、昇降用コントロール弁22が中立位置で上昇側回路41に作動油の圧力が作用していないため、ロードホールディング弁23の解放弁23bが閉じ状態になっており、また、フリー降下回路49には、オーガ昇降用油圧モータ18が上昇側に回転したときに降下側流入口43から流出する作動油の流れを規制するためのチェック弁29及び流量制御弁30が設けられているため、オーガ昇降用油圧モータ18が上昇側に回転しようとして降下側流入口43側の作動油の圧力が上昇しても、ロードホールディング弁23の解放弁23bとチェック弁29とによって作動油の流れを規制することができるので、作動油は、流量制御弁30を所定流量で通過してフリー降下回路49を逆方向に流れ、フリー降下用第1切換弁26から昇降用コントロール弁22を通ってタンク38に戻る状態になる。
【0030】
また、オーガ昇降用油圧モータ18の上昇側流入口42には、タンク38a内の作動油が、速度制御弁28、フリー降下用第2切換弁27を介してフリー降下戻り回路50に吸い込まれる状態になる。このとき、流量制御弁30を通過する作動油の流量を、速度制御弁28を通過可能な最大流量より少なく設定することにより、上昇側流入口42に吸い込まれる作動油量が不足して上昇側流入口42側が負圧になることを防止できる。
【0031】
したがって、流量制御弁30の流量設定値を適切に設定することにより、オーガ昇降用油圧モータ18の上昇側への回転速度を低速とし、オーガ駆動装置17を低速で上昇させる状態にすることができ、浮き上がった状態の杭打機12の本体前部をゆっくりと下降させて所定の姿勢に戻すことができる。このようにしてオーガ昇降用油圧モータ18の回転速度を低速にすることにより、オーガ昇降用油圧モータ18が過回転状態になって焼き付くことがなくなり、この状態でオーガ昇降用油圧モータ18の吸込側となる上昇側流入口42に繋がるフリー降下戻り回路50に速度制御弁28を設けていても、上昇側流入口42側が負圧になることもなくなるので、オーガ昇降用油圧モータ18を保護することができる。
【0032】
また、本形態例では、チェック弁29と並列に流量制御弁30を設け、オーガ昇降用油圧モータ18の降下側流入口43からの作動油をあらかじめ設定した小流量で通過させることにより、浮き上がった状態の杭打機12の本体前部をゆっくりと下げるようにしているが、流量制御弁30を設けずにチェック弁29のみを設けるようにしてもよい。チェック弁29のみを設けた場合は、降下側流入口43からフリー降下回路49に向かう作動油の流れが遮断されるので、オーガ昇降用油圧モータ18が上昇側へ回転することを防止できる。したがって、前記同様に、オーガ昇降用油圧モータ18が過回転状態になって焼き付いたり、上昇側流入口42側が負圧になったりすることもなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の杭打機に設けられた油圧回路の一形態例を示す要部の油圧回路図である。
【図2】油圧回路を制御する電気回路の一形態例を示す要部の電気回路図である。
【図3】杭打機の一形態例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0034】
11…鋼管杭、11a…羽根、12…杭打機、13…下部走行体、14…上部旋回体、15…リーダ、15a…チェーン、16…バックステー、17…オーガ駆動装置、18…オーガ昇降用油圧モータ、18a…ブレーキ、19…オーガ回転用油圧モータ、20a…昇降用油圧回路、20b…フリー降下用油圧回路、21…昇降用油圧ポンプ、21a…吐出回路、22…昇降用コントロール弁、23…ロードホールディング弁、23a,23b…解放弁、23c…上昇側チェック弁、23d…降下側チェック弁、24…電気回路、25…フリー降下用ソレノイド弁、25a…ソレノイド、26…フリー降下用第1切換弁、27…フリー降下用第2切換弁、28…速度制御弁、29…チェック弁、30…流量制御弁、31…回転用油圧回路、32…回転用油圧ポンプ、33…回転用コントロール弁、34a…右回転用スイッチ、34b…左回転用スイッチ、35a…右回転用パイロット弁、35b…左回転用パイロット弁、36…フリー降下スイッチ、36a…表示ランプ、37…リレー回路、38,38a…タンク、41…上昇側回路、42…上昇側流入口、43…降下側流入口、44…降下側回路、45…右回転側回路、46…右回転側流入口、47…左回転側流入口、48…左回転側回路、49…フリー降下回路、50…フリー降下戻り回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リーダに上下動可能に設けたオーガ駆動装置を昇降させるためのオーガ昇降用油圧モータを駆動する昇降用油圧回路と、前記オーガ昇降用油圧モータを自由回転させてオーガ駆動装置をフリー降下させるためのフリー降下用油圧回路と、前記オーガ駆動装置でオーガを回転駆動するための回転用油圧回路とを備えた杭打機において、前記フリー降下用油圧回路を作動状態にするフリー降下用電気回路に、前記回転用油圧回路を作動させる回転用電気回路が回転用油圧回路を作動状態にしたときにのみフリー降下用電気回路を導通状態とする開閉回路を設けたことを特徴とする杭打機。
【請求項2】
前記フリー降下用油圧回路を作動させた状態で、前記オーガ駆動装置が上昇したときに前記オーガ昇降用油圧モータから作動油が流出する油圧回路に、前記オーガ昇降用油圧モータからの作動油の流出を規制するためのチェック弁を設けたことを特徴とする請求項1記載の杭打機。
【請求項3】
前記チェック弁と並列に流量制御弁を設けたことを特徴とする請求項2記載の杭打機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−197468(P2009−197468A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−39776(P2008−39776)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【Fターム(参考)】