説明

杭打機

【課題】リーダの下部一側にチェーン駆動装置のような突出したものが存在する場合でも、回動アームを上部旋回体の旋回に支障しない位置まで回動させることができる杭打機を提供する。
【解決手段】振止部材18は、ブラケット27に設けた第1回動軸28a、第2回動軸28bに回動可能に取り付けた第1回動アーム18a及び該第1回動アームより短い第2回動アーム18bを備える。両回動アーム18a,18bの回動端部に両回動アームの回動端同士を連結する連結部18i,18kを備え、連結部18i,18jの位置は、第1回動軸と第2回動軸との間の中間点M1と鋼管杭の中心C1とを通る直線L1と、第1回動軸の中心C2と鋼管杭の中心C1とを通る直線L2との間の範囲内に配置し、両回動アームを全開状態としたときに、上部旋回体の旋回中心C3を中心とし、鋼管杭のリーダ側の外周面に接する円R1の内周側に両回動アームを位置させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭打機に関し、詳しくは、リーダの下部前方に、作業装置に装着した鋼管杭を回転可能かつ軸方向に移動可能に支持する振止部材を備えた杭打機に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼管杭を埋設する杭打機では、施工中の鋼管杭が傾斜したり芯ズレしたりしないように、リーダの下部に鋼管杭の振れ止めを図る振止部材が設けられている。この振止部材は、一般に、リーダの下部に固設されたブラケットに開閉可能に取り付けられた左右一対の同形状の回動アームで形成されており、両回動アームの先端部には、両先端部同士を連結する連結部がそれぞれ設けられ、アームを回動させて連結部同士を連結し、両回動アームを閉じて鋼管杭を抱持した状態とすることにより、鋼管杭を回転可能かつ軸線方向に移動可能に支持した状態となる(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、杭打機として、下部走行体の上部に上部旋回体を旋回可能に配置してベースマシンを構成し、上部旋回体の前部に起伏可能に立設したリーダの下部に駆動スプロケットを、上部に従動スプロケットをそれぞれ配置し、該上下のスプロケットに、リーダの前方に昇降可能に配置された作業装置に連結するチェーンを架け渡し、リーダの下部一側に設けたチェーン駆動装置(油圧モータ)によって駆動スプロケットを駆動することにより、チェーンを介して前記作業装置を昇降させるものがある(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−293319号公報
【特許文献2】特開平10−121474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述の特許文献2のようにリーダの下部一側にチェーン駆動装置を配置したものに、特許文献1のような振止部材を設けたものでは、図3に示されるように、従来の振止部材51における両回動アーム52,52が略同一形状に形成されており、連結部52a,52aは、連結部52a,52aを連結して両回動アーム52,52を閉じた状態で、鋼管杭の中心C1とベースマシンの旋回中心C3とを結ぶ直線L3の近傍で、リーダの反対側の鋼管杭外周面に位置している。
【0006】
このように形成された振止部材51を、リーダ下端部のチェーン駆動装置53の前方部分に配置した場合、連結部52a,52aの連結を解除して両回動アーム52,52を開いたときに、チェーン駆動装置53側に位置する一方の回動アーム52がチェーン駆動装置53に当たって全開状態にすることができなくなり、上部旋回体を旋回させると一方の回動アーム52の先端部が埋設施工中の鋼管杭54に当たることがあるため、上部旋回体の旋回方向が限定されてしまうという問題があった。
【0007】
そこで本発明は、リーダの下部一側にチェーン駆動装置のような突出したものが存在する場合でも、上部旋回体が旋回可能な位置まで回動アームを回動させることができる構造の振止部材を備えた杭打機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の杭打機は、下部走行体の上部に旋回可能に配置した上部旋回体の前部にリーダを立設し、該リーダに沿って作業装置を昇降可能に配置するとともに、前記リーダの下部に、前記作業装置によって回転駆動される鋼管杭の外周面を抱持する円弧状凹部を備えた振止部材を配置した杭打機において、前記振止部材は、前記リーダの下部に設けられたリーダ高さ方向に軸線を有する第1回動軸及び第2回動軸を中心としてそれぞれ回動可能に取り付けられた第1回動アーム及び該第1回動アームより短い第2回動アームを備え、両回動アームの回動端部に両回動アームの回動端同士を連結して両回動アームにより前記鋼管杭を抱持した閉じ状態とする連結部を備えるとともに、両回動アームの連結部の位置が、第1回動軸と第2回動軸との間の中間点と鋼管杭の中心とを通る直線と、第1回動軸の中心と鋼管杭の中心とを通る直線との間の範囲内に配置し、第1回動アーム及び第2回動アームを第1回動軸及び第2回動軸を中心として回動させ、両回動アームを全開状態としたときに、両回動アームが、前記上部旋回体の旋回中心を中心とし、前記鋼管杭のリーダ側の外周面に接する円の内周側に位置させたことを特徴としている。
【0009】
また、前記第1回動軸及び第2回動軸は、前記リーダの幅方向両側縁部に設けられ、両回動軸の間隔は、前記鋼管杭の外径より大きいと良く、前記第1回動軸及び第2回動軸は、両側部に軸受部を有するブラケットを介して前記リーダの下端部に設けられていると好適である。
【0010】
さらに、前記リーダの下端部一側面に前記作業装置を昇降させるための駆動源が設けられ、該駆動源が設けられたリーダ下端部一側面側に、前記第2回動アームの第2回動軸が設けられたものでも良く、前記第1回動軸及び第2回動軸は、前記駆動源をリーダの下端部に装着するケースの前面に設けられていても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明の杭打機によれば、振止部材の回動アームを、長さが長い第1回動アームと、長さが短い第2回動アームとで形成し、両回動アームを閉じたときの連結部の位置を、第1回動軸と第2回動軸との間の中間点と鋼管杭の中心とを通る直線と、第1回動軸の中心と鋼管杭の中心とを通る直線との間の範囲内に配置し、第1回動アーム及び第2回動アームを第1回動軸及び第2回動軸を中心として回動させ、両回動アームを全開状態としたときに、両回動アームが、前記上部旋回体の旋回中心を中心とし、前記鋼管杭のリーダ側の外周面に接する円の内周側に位置させたことにより、両回動アームを全開状態として上部旋回体を旋回させたときに両回動アームが埋設施工中の鋼管杭に当たることがなくなり、上部旋回体を任意の方向に旋回させることができる。
【0012】
特に、リーダの下端部一側面に作業装置昇降用の駆動源が設けられている場合でも、該駆動源側に短い第2回動アームを配置することにより、駆動源に支障しない範囲で第2回動アームを所定の全開状態まで回動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図2のI−I断面図である。
【図2】本発明の一形態例を示す杭打機の側面図である。
【図3】従来の杭打機の振止部材を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1及び図2は本発明の杭打機の一形態例を示す図である。この杭打機11は、クローラ12aを備えた下部走行体12の上部に旋回可能に設けられた上部旋回体13とでベースマシン14が構成され、上部旋回体13は、ベースマシン14の前部に起伏可能に設けられたリーダ15と、該リーダ15を後方から支持する起伏シリンダ16とを備えている。
【0015】
リーダ15は、上部旋回体13の前部に設けられたフロントブラケット13aに取り付けられる基本リーダ15aと、該基本リーダ15aの上部に連結される中間リーダ15bと、該中間リーダ15bの上部に連結される上部リーダ15cとに分割形成され、各リーダ部材を、それぞれボルト・ナットを使用したフランジ結合によって着脱可能に連結して形成されている。
【0016】
上部リーダ15cの上端部にはトップシーブ17が、基本リーダ15aの下部前方には、振止部材18がそれぞれ配置されており、リーダ15の前面にはオーガ駆動装置などの作業装置19が昇降可能に装着されると共に、基本リーダ15aの下端部左側には、前記作業装置19を昇降させるためのチェーン駆動装置20が設けられている。
【0017】
作業装置19は、リーダ15の両側に設けられた一対のガイドパイプ21を作業装置19の後部側に設けたガイドギブ22で把持した状態でリーダ15に沿って昇降するもので、作業装置19の上下には、基本リーダ15aの下端部に設けられた駆動スプロケット23と、上部リーダ15cの上端部に設けられた従動スプロケット24との間に掛け渡されたチェーン25の両端がそれぞれ取り付けられている。
【0018】
チェーン駆動装置20は、基本リーダ15aの車体左側下端に突出して設けられたケース20a内に油圧モータ26を収納したものであって、該油圧モータ26によって駆動スプロケット23を駆動し、該駆動スプロケット23と従動スプロケット24とに掛け回されたチェーン25を上下方向に移動させることにより、作業装置19をリーダ15に沿って昇降させる。
【0019】
振止部材18は、リーダ15の下端部に設けられたブラケット27を介して取り付けられ、ブラケット27の両側部には、リーダ高さ方向に軸線を有する第1回動軸28aと第2回動軸28bとが設けられ、第1回動軸28aには第1回動アーム18aが回動可能に取り付けられ、第2回動軸28bには、第1回動アーム18aよりも短い第2回動アーム18bが回動可能に取り付けられている。また、第1回動軸28aと第2回動軸28bとは、リーダ15の幅方向両側縁部に配置され、両回動軸28a,28bの間隔は、鋼管杭40の外径より大きくなっている。
【0020】
各回動アーム18a,18bは、前記第1回動軸28a及び第2回動軸28bにそれぞれ回動可能に連結される回動基部18c,18dと、該回動基部18c,18dの先端側に形成され、杭40の外周面を包持する円弧状凹部18e,18fをそれぞれ内側に備えた杭抱持部18g,18hと、杭抱持部18g,18hの先端部、すなわち、各回動アーム18a,18bの回動端部に設けられ、両杭抱持部18g,18hの回動端同士を連結ピン29で連結して杭抱持部18g,18hにより鋼管杭40を抱持した閉じ状態とする連結部18i,18kとを備えている。
【0021】
第1回動アーム18aの杭抱持部18gにおける円弧状凹部18eの開き角は180度近くに、第2回動アーム18bの杭抱持部18hにおける円弧状凹部18fの開き角は120度程度にそれぞれ設定され、連結部18i,18kを連結して回動アーム18a,18bを閉じた状態にしたときの連結部18i,18kの位置は、鋼管杭40を挟んで第1回動軸28aに対向する位置で、第1回動軸28aと第2回動軸28bとの間の中間点M1と鋼管杭40の中心C1とを通る直線L1と、第1回動軸28aの中心C2と鋼管杭40の中心C1とを通る直線L2との間の範囲内に配置されている。本形態例では、前記中心C1を通る直線であって、前記直線L1に対して第2回動軸28b側に30度の角度を有する直線上に配置している。
【0022】
さらに、第1回動アーム18a及び第2回動アーム18bの形状は、第1回動アーム18a及び第2回動アーム18bを第1回動軸28a及び第2回動軸28bを中心としてそれぞれ回動させ、第2回動アーム18bの外周面がケース20aに当たる直前まで回動させて両回動アーム18a,18bを図1に想像線で示す全開状態としたときに、両回動アーム18a,18bが、上部旋回体13の旋回中心C3を中心とし、前記鋼管杭40のリーダ側外周面40aに接する円R1の内周側に位置する形状に設定されている。
【0023】
このように形成した振止部材18を備えた杭打機11で鋼管杭40の埋設作業を行う際には、振止部材18の第1回動アーム18aと第2回動アーム18bとを全開状態にするとともに、作業装置19をリーダ15の上部に上昇させた状態で、鋼管杭40の上端を連結キャップ41を介して作業装置19に装着する。次に、第1回動アーム18aと第2回動アーム18bとを閉じ方向に回動させて連結部18i,18kを重ねた状態とし、連結部18i,18kに連結ピン29を挿入して第1回動アーム18aと第2回動アーム18bとを閉じ状態に固定する。これにより、鋼管杭40が杭抱持部18g,18hの内周側に回転可能かつ軸方向に移動可能に支持された状態となり、作業装置19で鋼管杭40を回転させながら地中に圧入する際の鋼管杭40の傾斜や芯ズレが防止される。
【0024】
鋼管杭40の圧入は、あらかじめ設定された作業装置19の下降限、例えば、連結キャップ41の下端が第1回動アーム18a及び第2回動アーム18bの上面に当接する直前まで作業装置19がリーダ15に沿って下降した状態で終了する。この圧入終了時の状態では、鋼管杭40の上端部は、地面から突出して杭抱持部18g,18hの内周側に位置している。
【0025】
この状態で連結部18i,18kから連結ピン29を抜き取り、第1回動アーム18aと第2回動アーム18bとを開き方向に回動させて図1に示す全開状態にすることにより、両回動アーム18a,18bは、上部旋回体13の旋回中心C3を中心とし、鋼管杭40のリーダ側外周面40aに接する前記円R1の内周側に位置しているので、旋回中心C3を中心として上部旋回体13を左右いずれの方向に旋回させても両回動アーム18a,18bが地面から突出している鋼管杭40に当たることはなく、また、第2回動アーム18bが外周面がケース20aに当たることもなく、両回動アーム18a,18bが鋼管杭40に当たって破損したり、第2回動アーム18bの外周面がチェーン駆動装置20のケース20aに当たってケース20aを損傷させたりすることもなくなる。
【0026】
したがって、先に埋設した鋼管杭の近傍に新たな鋼管杭を圧入する際や、先に埋設した鋼管杭に新たな鋼管杭を連結する際など、杭打機11を走行させずに上部旋回体13を旋回させて行う各種操作における上部旋回体13の旋回方向を任意に設定することができ、鋼管杭の埋設施工を効率よく行うことができる。
【0027】
なお、下部走行体や上部旋回体の構成、リーダの構成は任意であり、本発明の振止部材は、通常使用されている各種杭打機に適用することができる。また、リーダの下部一側に突出するものも任意であり、振止部材の両回動アームの形状は、施工する鋼管杭のサイズなどの各種条件に応じて適宜に設定することができる。
【符号の説明】
【0028】
11…杭打機、12…下部走行体、12a…クローラ、13…上部旋回体、13a…フロントブラケット、14…ベースマシン、15…リーダ、15a…基本リーダ、15b…中間リーダ、15c…上部リーダ、16…起伏シリンダ、17…トップシーブ、18…振止部材、18a…第1回転アーム、18b…第2回転アーム、18c,18d…回動基部、18e,18f…円弧状凹部、18g,18h…杭抱持部、18i,18k…連結部、18m,18n…ピン挿通孔、19…作業装置、20…チェーン駆動装置、20a…ケース、21…ガイドパイプ、22…ガイドギブ、23…駆動スプロケット、24…従動スプロケット、25…チェーン、26…油圧モータ、27…ブラケット、28a…第1回動軸、28b…第2回動軸、29…連結ピン、40…鋼管杭、40a…リーダ側外周面、41…連結キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体の上部に旋回可能に配置した上部旋回体の前部にリーダを立設し、該リーダに沿って作業装置を昇降可能に配置するとともに、前記リーダの下部に、前記作業装置によって回転駆動される鋼管杭の外周面を抱持する円弧状凹部を備えた振止部材を配置した杭打機において、前記振止部材は、前記リーダの下部に設けられたリーダ高さ方向に軸線を有する第1回動軸及び第2回動軸を中心としてそれぞれ回動可能に取り付けられた第1回動アーム及び該第1回動アームより短い第2回動アームを備え、両回動アームの回動端部に両回動アームの回動端同士を連結して両回動アームにより前記鋼管杭を抱持した閉じ状態とする連結部を備えるとともに、両回動アームの連結部の位置が、第1回動軸と第2回動軸との間の中間点と鋼管杭の中心とを通る直線と、第1回動軸の中心と鋼管杭の中心とを通る直線との間の範囲内に配置し、第1回動アーム及び第2回動アームを第1回動軸及び第2回動軸を中心として回動させ、両回動アームを全開状態としたときに、両回動アームが、前記上部旋回体の旋回中心を中心とし、前記鋼管杭のリーダ側の外周面に接する円の内周側に位置させたことを特徴とする杭打機。
【請求項2】
前記第1回動軸及び第2回動軸は、前記リーダの幅方向両側縁部に設けられ、両回動軸の間隔は、前記鋼管杭の外径より大きいことを特徴とする請求項1記載の杭打機。
【請求項3】
前記第1回動軸及び第2回動軸は、両側部に軸受部を有するブラケットを介して前記リーダの下端部に設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の杭打機。
【請求項4】
前記リーダの下端部一側面に前記作業装置を昇降させるための駆動源が設けられ、該駆動源が設けられたリーダ下端部一側面側に、前記第2回動アームの第2回動軸が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の杭打機。
【請求項5】
前記第1回動軸及び第2回動軸は、前記駆動源をリーダの下端部に装着するケースの前面に設けられていることを特徴とする請求項4記載の杭打機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−251384(P2012−251384A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125966(P2011−125966)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【Fターム(参考)】