説明

杭打機

【課題】オペレータが外部操作装置(リモコン装置)の操作を無理なく確実に行うことができる杭打機を提供する。
【解決手段】下部走行体12の上部に上部旋回体13を旋回可能に設け、該上部旋回体13の前方中央部にリーダ14を立設すると共に、上部旋回体13の前方両側部に一対のフロントジャッキ17を備える。フロントジャッキ17の上部に、杭打機11を操作するための外部操作装置(リモコン装置)26を支持する外部操作装置支持部材(リモコン支持部材)27を着脱可能に設ける。リモコン支持部材27は、リモコン装置26を上面に載置する平面視が長方形状の載置部27aと、載置部27aの下面から下方に突出してフロントジャッキ17の油圧シリンダ17aの上端部に被着される装着筒部27bとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭打機に係り、詳しくは、運転席から離れた位置で杭打ち作業を操作するための外部操作装置を備えた杭打機に関する。
【背景技術】
【0002】
橋の下や工場内、トンネル内、地下などの高さに制限のある場所で杭打ち作業を行うための杭打機として、運転室の上部を取り外し可能に形成するとともに、オペレータが遠隔操作によって杭打機を操作するための外部操作装置(以下、リモコン装置という。)を備えた杭打機がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−321480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、杭打ち作業では、下部走行体の走行、上部旋回体の旋回、リーダの角度調整、回転駆動装置のトルク調整、昇降装置の押し下げ力調整など、操作項目が多いためにリモコン装置の操作部の数が多くなり、さらに、微妙なコントロールも必要であることから、押しボタンなどの単なるON・OFFスイッチを用いることができず、無段階で制御できるレバー式(ジョイスティック式)のコントローラを操作部として用いる必要がある。
【0005】
また、杭打機のような大型の作業機では、混信による予期せぬ動作が非常に危険を伴うため、有線方式のリモコン装置であることが好ましく、工事現場の過酷な使用状況から、リモコン装置と杭打機本体とを接続する通信ケーブルにも太くて丈夫なものが求められる。したがって、通信ケーブルを含むリモコン装置が大型化し、重量も嵩むことから、一般的なリモコン装置のように、手に持ったり、肩や首に掛けたり、腰に巻き付けたりして操作することは、オペレータに大きな負担を強いることになる。
【0006】
そこで本発明は、オペレータがリモコン装置の操作を無理なく確実に行うことができる杭打機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の杭打機は、下部走行体の上部に上部旋回体を旋回可能に設け、該上部旋回体の前方中央部にリーダを立設すると共に、前記上部旋回体の前方両側部に一対のフロントジャッキを備えた杭打機において、前記フロントジャッキの上部に、杭打機を操作するための外部操作装置(リモコン装置)を支持する外部操作装置支持部材(リモコン支持部材)を着脱可能に設けたことを特徴とし、フロントジャッキは、上部旋回体の前方両側部に水平方向に揺動可能に設けられた揺動腕部に取り付けられているものでも良い。
【0008】
また、リモコン支持部材は、リモコン装置を上面に載置する平面視が長方形状の載置部と、該載置部の下面から下方に突出してフロントジャッキの油圧シリンダの上端部に被着される装着筒部とを備えていると好ましく、前記装着筒部は、油圧シリンダの上部外周面から突出した突出部に係合してリモコン支持部材の水平方向の回動を防止する係合部を備えているものでも良く、さらに、前記装着筒部は、載置部の中心に対して偏心した位置に設けられていても良い。また、前記装着筒部の周壁における前記載置部の中心側に、前記油圧シリンダの外周面に当接して前記リモコン支持部材を前記フロントジャッキの上部に固定するための固定ネジが螺合する雌ねじ部が設けられても良く、さらに、前記装着筒部は、前記載置部の下面に複数個が設けられていても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明の杭打機によれば、オペレータが運転席から降りて、リモコン装置を用いて杭打機を操作する際に、重量のあるリモコン装置を、リモコン支持部材に支持させて操作することができることから、操作性の向上を図ることができる。また、リモコン支持部材を、上部旋回体の前方両側部にそれぞれ配置されているフロントジャッキの上部に着脱可能に設けることにより、現場の状況に応じて杭打機の左右いずれの側にもリモコン支持部材を配置することができる。さらに、水平方向に揺動可能な揺動腕部の先端部にフロントジャッキを設けることにより、リモコン支持部材を配置できる範囲を広げることができる。
【0010】
また、リモコン支持部材を、リモコン装置を上面に載置する載置部と、該載置部の裏面の装着筒部とで形成することにより、フロントジャッキの油圧シリンダの上部に容易に着脱することができる。さらに、装着筒部に、油圧シリンダの上部外周面から突出した突出部に係合する係合部を設けておくことにより、使用中にリモコン支持部材が回動してしまうことを防止できる。特に、係合部を複数箇所に設けておくことにより、リモコン装置を操作しやすい方向にリモコン支持部材の向きを選択することができる。また、装着筒部を載置部の中心に対して偏心した位置に設けることにより、載置部をフロントジャッキの側方に張り出した状態に設置することができるので、オペレータの立ち位置を杭打機から離れた位置にすることができ、安全性を向上させることができる。さらに、装着筒部の載置部中心側に雌ねじ部を設けることにより、載置部に載置したリモコン装置の重量が、固定ネジを油圧シリンダの外周面に押し付けて固定ネジの緩み止めとして作用する。加えて、装着筒部を複数設けることにより、リモコン支持部材を配置する範囲をさらに広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1形態例を示す杭打機の側面図である。
【図2】同じく杭打機の平面図である。
【図3】同じく杭打機の要部平面図である。
【図4】図3のIV−IV断面図である。
【図5】図3のV-V断面図である。
【図6】図5のVI−VI断面図である。
【図7】本発明の第2形態例を示す杭打機の要部平面図である。
【図8】図7のVIII−VIII断面図である。
【図9】本発明の第3形態例を示す杭打機の要部平面図である。
【図10】図9のX−X断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1乃至図6は、本発明の第1形態例を示すもので、本形態例の杭打機11は、クローラ12aを備えた下部走行体12の上部に上部旋回体13を旋回可能に設け、該上部旋回体13の前方中央部に設けたフロントブラケット13aに短尺のリーダ14を立設し、フロントブラケット13aの上方に配置したリーダ支持シリンダ15にてリーダ14を後方から傾動可能に支持している。また、上部旋回体13の前後方向中央部左側には、複数の操作レバー16aなどを備えた運転席16が設けられ、さらに、上部旋回体13の前方両側部には一対のフロントジャッキ17,17が設けられるとともに、上部旋回体13の後方両側部には一対のリアジャッキ18,18が設けられている。
【0013】
リーダ14は、横断面四角形状に形成され、該リーダ14の両側面前端部には、回転駆動装置19の昇降を案内するガイドパイプ20がそれぞれ設けられ、リーダ14の下端部には、回転駆動装置19に装着された杭をガイドする振止部材21が設けられている。回転駆動装置19は、前記ガイドパイプ20に係合するガイドギブ22と、杭を回転させる杭回転油圧モータ23と、回転駆動装置19をリーダ14に沿って昇降させるための昇降シリンダ19aとを備えている。
【0014】
フロントジャッキ17は、上部旋回体13の前方両側部に突設したフロントジャッキ取付腕24に、鉛直方向の回動軸24aを介して水平方向に揺動可能に設けられた揺動腕部24bの先端部に固着された油圧シリンダ17aと、該油圧シリンダ17aから下方に向けて伸縮するロッド17bと、該ロッド17bの下端部に設けられた接地部17cとを備えており、鉛直方向に配置された油圧シリンダ17aの上下両端部には、ロッド17bを伸縮させる作動油の経路である油圧配管25がそれぞれ接続され、油圧シリンダ17aの外周面から水平方向に突出した状態となっている。
【0015】
このように形成された杭打機11を使用して、図1に示すような低空頭状態で杭打ち作業を行う場合には、前記運転席16に設けられている各種操作レバー16aと同等の機能を有するリモコン装置26を使用し、オペレータが杭打機11の脇に立った状態でリモコン装置26を操作して所定の杭打ち作業を行う。リモコン装置26は、偏平な直方体状の装置本体26aの上面に、クローラ12aによる下部走行体12の走行、上部旋回体13の旋回、リーダ支持シリンダ15によるリーダ14の角度調整、回転駆動装置19のトルク調整、昇降装置である昇降シリンダ19aの押し下げ力調整、両ジャッキ17,18の伸縮などの杭打ち作業に必要な各種操作を行うための複数の大型レバー式(ジョイスティック式)のコントローラ26bを備えたものであって、運転席16の近傍に設置されている制御装置とは、図示しない通信ケーブルにて接続されている。
【0016】
そして、本形態例では、上部旋回体13における運転席16の位置に合わせて上部旋回体13の前方左側に設けられたフロントジャッキ17の上部に、前記リモコン装置26を載置するための外部操作装置支持部材(以下、リモコン支持部材という。)27が着脱可能に取り付けられている。このリモコン支持部材27は、リモコン装置26における前記装置本体26aの下部形状に対応した平面視が長方形板状の載置部27aと、該載置部27aの下面から下方に突出して前記油圧シリンダ17aの上端部に被着される装着筒部27bとを備えている。
【0017】
装着筒部27bは、油圧シリンダ17aの上端部外径より僅かに大きな内径を有する円筒体からなるもので、装着筒部27bの周壁には、油圧シリンダ17aの上端部から突出している前記油圧配管25の外周に係合してリモコン支持部材27の水平方向の回動を防止するための係合部となる切欠部27cが周方向の複数箇所に形成されるとともに、周壁に設けられた通孔の外面部分に、リモコン支持部材27を固定するための固定ネジである蝶ボルト28が螺合する雌ねじ部となるナット27dが固着されている。
【0018】
このように形成されたリモコン支持部材27は、装着筒部27bをフロントジャッキ17の油圧シリンダ17aの上端部に被せ、所定の切欠部27cを油圧配管25に係合させた状態でナット27dに螺合した蝶ボルト28を締め付け、蝶ボルト28の先端を油圧シリンダ17aの外周面に当接させることにより、リモコン支持部材27がフロントジャッキ17の上部に取り付けられた状態となる。これにより、空頭高さの低い作業現場でリモコン装置26を操作して杭打機11を操作する際に、リモコン装置26をリモコン支持部材27に載置した状態で行うことができるので、リモコン装置26が大型で重い場合でも、運転席16aから降りて操作を行うオペレータに大きな負担を掛けることなく、リモコン装置26のコントローラ26bによって杭打機11による杭打ち作業を容易かつ確実に行うことができる。
【0019】
また、油圧配管25に係合する切欠部27cを装着筒部27bに設けておき、油圧配管25に切欠部27cを係合させることにより、リモコン装置26を操作中にリモコン支持部材27が回動してしまうことを防止でき、特に、切欠部27cを装着筒部27bの周壁周方向の複数箇所に設けておくことにより、リモコン装置26の操作性に応じてリモコン支持部材27を適宜な方向に向けて固定することができ、コントローラ26bの操作性や作業状態の視認性を向上させることができる。加えて、切欠部27cが係合する突出部として油圧配管25を利用することにより、油圧シリンダ17aの上部外周面に切欠部係合用の突出部を別に設ける必要がない。
【0020】
さらに、上部旋回体13の前方両側部に突設したフロントジャッキ取付腕24に揺動可能に設けた揺動腕部24bの先端部に油圧シリンダ17aを取り付けることにより、リモコン支持部材27を取り付けた状態でフロントジャッキ17を格納位置に回動させることができ、また、揺動腕部24bを揺動させて下部走行体12や上部旋回体13に対するリモコン支持部材27の位置を調整することも可能なので、コントローラ26bの操作性や作業状態の視認性を更に向上させることができ、下部走行体12による走行も安全に行うことができる。
【0021】
また、蝶ボルト28を緩めることによってリモコン支持部材27をフロントジャッキ17の上部から容易に取り外すことができるので、作業現場の状況に応じて左側のフロントジャッキ17にリモコン支持部材27を取り付けることができ、リモコン装置26を使用しないときには、リモコン支持部材27を取り外しておくことにより、通常の作業の邪魔になったりすることもない。
【0022】
図7及び図8は、本発明の第2形態例を示している。なお、以下の説明において、前記第1形態例に示した杭打機の構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0023】
本形態例に示すリモコン支持部材31は、平面視が長方形状の載置部31aの長手方向一端側に装着筒部31bを配置し、装着筒部31bを油圧シリンダ17aの上端部に被着した際に、載置部31aの中心C1が、装着筒部31bの中心、即ち油圧シリンダ17aの中心C2に対して偏心した位置になるように形成している。このように、装着筒部31bを載置部31aの長手方向一端側に設けることにより、載置部31aをフロントジャッキ17の外側方に張り出した状態に設置することができるので、オペレータの立ち位置を杭打機11のフロントジャッキ17やクローラ12aから離れた位置にすることができ、リモコン装置26を操作する際の安全性を更に向上させることができる。
【0024】
また、本形態例では、装着筒部31bの周壁における載置部31aの中心C1側に、前記蝶ボルト28が螺合するナット31cを配置している。このように、載置部31aの中心C1を油圧シリンダ17aの中心C2に対して偏心させると共に、装着筒部31bのナット31cを載置部31aの中心C1側に設けることにより、リモコン装置26の重量によって載置部31aの装着筒部31bの反対側が下方に傾斜した際に、蝶ボルト28の先端を油圧シリンダ17aの外周面に向けて押し付け、強く圧接させた状態にできるので、リモコン装置26の重量を蝶ボルト28の緩み止めとして利用することができる。
【0025】
図9及び図10は、本発明の第3形態例を示すもので、本形態例のリモコン支持部材32は、載置部32aの長手方向に、2つの装着筒部32b,32bを並設し、各装着筒部32bの周壁における載置部32aの中心側に、蝶ボルト28を螺合させるナット32cを設けている。本形態例では、2つの装着部32b,32bをフロントジャッキ17の油圧シリンダ17aに適宜付け替えることにより、リモコン支持部材32を配置できる範囲をさらに広げることができる。
【0026】
なお、リモコン支持部材における載置部は、長方形状に限らず、リモコン装置を載置可能な正方形状や円形状などの各種形状で形成することもでき、装着筒部の形状は油圧シリンダの上端部に被着可能な筒状であればよく、周壁が連続していなくてもよい。また、装着筒部の係合部の形状も任意であり、油圧配管とは別の突出部を油圧シリンダの上部外周面に設けておくこともできる。さらに、油圧シリンダの上端部にリモコン支持部材を取り付ける手段は任意であり、適宜な凹凸嵌合や螺合を用いることも可能であり、専用の取付金具を油圧シリンダの上端部に設けておくこともでき、リモコン支持部材の固定も蝶ボルトに限るものではない。また、リモコン装置を適宜な固定手段でリモコン支持部材に固定することもできる。
【符号の説明】
【0027】
11…杭打機、12…下部走行体、12a…クローラ、13…上部旋回体、13a…フロントブラケット、14…リーダ、15…リーダ支持シリンダ、16…運転席、16a…操作レバー、17…フロントジャッキ、17a…油圧シリンダ、17b…ロッド、17c…接地部、18…リアジャッキ、19…回転駆動装置、19a…昇降シリンダ、20…ガイドパイプ、21…振止部材、22…ガイドギブ、23…杭回転油圧モータ、24…フロントジャッキ取付腕、24a…回動軸、24b…揺動腕部、25…油圧配管、26…リモコン装置、26a…装置本体、26b…コントローラ、27…リモコン支持部材、27a…載置部、27b…装着筒部、27c…切欠部、27d…ナット、28…蝶ボルト、31,32…リモコン支持部材、31a,32a…載置部、31b,32b…装着部、31c,32c…ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体の上部に上部旋回体を旋回可能に設け、該上部旋回体の前方中央部にリーダを立設すると共に、前記上部旋回体の前方両側部に一対のフロントジャッキを備えた杭打機において、前記フロントジャッキの上部に、杭打機を操作するための外部操作装置を支持する外部操作装置支持部材を着脱可能に設けたことを特徴とする杭打機。
【請求項2】
前記フロントジャッキは、前記上部旋回体の前方両側部に水平方向に揺動可能に設けられた揺動腕部に取り付けられていることを特徴とする請求項1記載の杭打機。
【請求項3】
前記外部操作装置支持部材は、前記外部操作装置を上面に載置する平面視が長方形状の載置部と、該載置部の下面から下方に突出して前記フロントジャッキの油圧シリンダの上端部に被着される装着筒部とを備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の杭打機。
【請求項4】
前記装着筒部は、前記油圧シリンダの上部外周面から突出した突出部に係合して前記外部操作装置支持部材の水平方向の回動を防止する係合部を備えていることを特徴とする請求項3記載の杭打機。
【請求項5】
前記装着筒部は、前記載置部の中心に対して偏心した位置に設けられていることを特徴とする請求項3又は4記載の杭打機。
【請求項6】
前記装着筒部の周壁における前記載置部の中心側に、前記油圧シリンダの外周面に当接して前記外部操作装置支持部材を前記フロントジャッキの上部に固定するための固定ネジが螺合する雌ねじ部が設けられていることを特徴とする請求項5記載の杭打機。
【請求項7】
前記装着筒部は、前記載置部の下面に複数個が設けられていることを特徴とする請求項3乃至6のいずれか1記載の杭打機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−87436(P2013−87436A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226511(P2011−226511)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【Fターム(参考)】