説明

杭抜き機

【課題】 作業者が一定の姿勢で杭抜き操作を行うことができるようにする。
【解決手段】 本発明の杭抜き機1は、地中に打ち込まれた杭Sの地上露出部Saを挿通する空間2aを有する接地部2と、該接地部2に立設された支柱3と、該支柱3に沿って昇降自在に設けられた昇降部4と、該昇降部4に取り付けられ、杭Sの地上露出部Saを係止するクランプ部5と、該支柱3の上部に回転自在に支持されたスプロケット6と、途中部が該スプロケット6に巻き掛けられ、一端部が引っ張りバネ8を介して支柱3におけるスプロケット6よりも下方に取り付けられ、他端部が昇降部4に取り付けられたチェーン9と、該スプロケット6に対し、相対回動自在に且つ軸心を一致させて支持されたハンドル10と、該ハンドル10の往復回動により、チェーン9を前記一端部側へ移動させる一方向への回転のみをスプロケット6に生じさせるラチェット部7とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭抜き機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の杭抜き機としては、特許文献1に記載された杭抜きを例示する。この杭抜きは、図11に示すように、打設された杭の地上露出部を挿通する空間を有するベースに立設されたラック103に添って進退動自在なケーシング104と、該ケーシング104に回転自在に取付けられ、前記ラック103の歯と歯合するピニオン107の歯と歯合する複数の歯送り爪110aの何れをピニオン107と歯合させるかを選択して切替える切替えピンを有するラチェット110と、前記ケーシング104に先端部が挿入されかつ先端に回転自在に取付けられたピニオン107の軸と同一軸108により回動自在に取付けられ、前記ラチェット110が先端部に回動自在に取り付けられたハンドル109と、該ケーシング104に回動自在に取付けられた解除レバー112aつきケーシング位置保持部材112と、該ケーシング104に着脱自在に取付けられ、杭の地上露出部を係止する係止突起106と、を有している。そして、ケーシング104に杭を係止し、ハンドル109を上下に往復回動させると、ラック103に沿ってケーシング104及び杭が上昇することで、杭が地中から抜けるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−297800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の杭抜きは、杭が係止されるケーシング104にハンドル109が取り付けられているので、杭の地上露出部の高さに応じてハンドルの高さも変更になる。特に、地上露出部の高さが低い杭に対して従来の杭抜きを使用する場合、ハンドル109の位置が低くなり、操作がし難いという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、第1の発明の杭抜き機は、
地中に打ち込まれた杭の地上露出部を挿通する空間を有する接地部と、
該接地部に立設された支柱と、
該支柱に沿って昇降自在に設けられた昇降部と、
該昇降部に取り付けられ、前記杭の地上露出部を係止するクランプ部と、
該支柱の上部に回転自在に支持されたスプロケットと、
途中部が該スプロケットに巻き掛けられ、一端部が引っ張り弾発手段を介して前記支柱における前記スプロケットよりも下方に取り付けられ、他端部が前記昇降部に取り付けられたチェーンと、
該スプロケットに対し、相対回動自在に且つ軸心を一致させて支持されたハンドルと、
該ハンドルの往復回動により、前記チェーンを前記一端部側へ移動させる一方向への回転のみを前記スプロケットに生じさせるラチェット部と
を備えている。
【0006】
この構成によれば、前記接地部を介して地面に立設される前記支柱の上部に前記ハンドルが支持されているので、杭の地上露出部の高さとは無関係に作業者が一定の姿勢でハンドル操作を行うことができ、操作性がよい。
【0007】
第2の発明の杭抜き機としては、前記第1の発明において、
前記杭抜き機としては、
前記ラチェット部は、前記スプロケットに軸心を一致させ且つ該スプロケットとともに一体的に回転するように設けられたラチェット歯車と、
前記ハンドルに対して前記一方向への回転のみを許容するように、該ラチェット歯車の歯に対し係脱可能に、前記ハンドルに取り付けられた送りラチェット爪と、
前記支柱に対して前記一方向への回転のみを許容するように、該ラチェット歯車の歯に対し係脱可能に、前記支柱に取り付けられた係止ラチェット爪と
を備えた態様を例示する。
【0008】
この構成によれば、前記ラチェット部をシンプルな構成で実現することができる。
【0009】
第3の発明の杭抜き機としては、前記第2の発明において、
前記送りラチェット爪及び前記係止ラチェット爪を前記ラチェット歯車の歯からそれぞれ離脱させるための送りラチェット爪レバー及び係止ラチェット爪レバーを備え、
前記ハンドルは、その先端側が前記支柱の後方に延設されるとともに、下方への回動が所定下限位置までに制限されるように構成されており、
前記送りラチェット爪レバー及び前記係止ラチェット爪レバーは、該ハンドルが該所定下限位置にある状態において片手で一緒に把持可能な程度に接近した位置となるように設けられ、且つ、該両レバーを同一方向に移動させる操作により前記送りラチェット爪及び前記係止ラチェット爪を前記ラチェット歯車の歯から同時に離脱させることが可能に構成された態様を例示する。
【0010】
この構成によれば、前記送りラチェット爪レバー及び前記係止ラチェット爪レバーを片手で一緒に把持し、前記同一方向に移動させる操作を行うことにより、前記送りラチェット爪及び前記係止ラチェット爪による前記ラチェット歯車への回転規制をワンタッチで解除することができる。
【0011】
第4の発明の杭抜き機としては、前記第3の発明において、
前記同一方向は、前記両レバーを上昇させる方向であり、
前記昇降部は、前記支柱の後方へ突設されたラチェット解除片を備え、
該ラチェット解除片は、前記昇降部を前記支柱に沿っての昇降範囲の略上限まで上昇させると、前記両レバーを下から押し上げて、前記送りラチェット爪及び前記係止ラチェット爪を前記ラチェット歯車の歯から同時に離脱させるように構成された態様を例示する。
【0012】
この構成によれば、前記昇降部の上昇に伴って前記ラチェット解除片が前記送りラチェット爪及び前記係止ラチェット爪を前記ラチェット歯車の歯から同時に離脱させた後は、前記ハンドルを操作しても、前記昇降部が上昇しなくなる。このため、該昇降部が前記昇降範囲を超えて上昇することによる不具合(例えば、前記昇降範囲の上部に設けられた部材に無理な力が加わることによる不具合。)を防止することができる。また、作業者は、前記昇降部が前記昇降範囲の上限に到達すると前記ハンドルの操作を止めなければならない、ということを注意しなくてもよくなり、気楽に作業できるようになる。
【0013】
第5の発明の杭抜き機としては、前記第1〜4のいずれかの発明において、
前記支柱は、その上端部に、左右いずれか一方に突出する取っ手が設けられており、
前記クランプ部は、該取っ手の突出方向の反対側が開口した平面視コ字状に形成されており、該反対側から前記杭の地上露出部を該コ字状の内部に受け入れ、該地上露出部を前後から係止するように構成された態様を例示する。
【0014】
この構成によれば、前記取っ手を操作することにより、前記支柱を傾けたり、該支柱の向きを変えたりすることにより、杭の地上露出部を、前記接地部の前記空間内に位置させることができる。
【0015】
第6の発明の杭抜き機としては、前記第1〜5のいずれかの発明において、
前記クランプ部は、前記支柱の前側に設けられており、
前記接地部は、前記空間が前記支柱の前方に設けられ、左右方向に延びる軸で回転自在の車輪が前記支柱の後方に設けられており、
該車輪は、前記支柱が直立した状態では地面に接地せず、該支柱が後方に傾斜した状態では地面に接地するように配設されており、
前記ハンドルは、その先端側が前記支柱の後方に延設されるとともに、上方への回動が所定上限位置までに制限されるように構成された態様を例示する。
【0016】
この構成によれば、作業者が前記ハンドルを持って前記所定上限位置まで上方へ回動させた状態にするとともに、該状態で前記支柱を後方に傾斜させ前記車輪を接地させると、前記杭抜き機を走行姿勢にすることができる。そして、この走行姿勢では、作業者が前記ハンドルを手押しすることにより、前記杭抜き機を走行させることができる。また、前記杭抜き機の前方に複数の杭が列設されている場合に、該杭抜き機をその前方に移動させながら、杭を順次抜いて行くことができるので、作業性がよい。また、前記ハンドルが前記杭抜き機の後方に延設されているので、畝間等の幅狭の空間においての走行操作やハンドル操作を行いやすい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る杭抜き機によれば、杭の地上露出部の高さとは無関係に作業者が一定の姿勢で杭抜き操作を行うことができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明を具体化した第一実施形態に係る杭抜き機の側面図である。
【図2】同杭抜き機の背面図である。
【図3】同杭抜き機の平面図である。
【図4】同杭抜き機による杭抜き動作を示す要部の拡大側面図である。
【図5】同杭抜き機のラチェットの回転規制解除動作を示す要部の拡大側面図である。
【図6】同杭抜き機が走行姿勢にある状態を示す側面図である。
【図7】本発明を具体化した第二実施形態に係る杭抜き機の側面図である。
【図8】同杭抜き機の背面図である。
【図9】同杭抜き機の平面図である。
【図10】同杭抜き機による杭抜き動作を示す要部の拡大側面図である。
【図11】従来の杭抜きの要部を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1〜図6は本発明を具体化した第一実施形態の杭抜き機1を示している。この杭抜き機1は、図1〜図3に示すように、地中に打ち込まれた杭Sの地上露出部Saを挿通する空間2aを有する接地部2と、該接地部2に立設された支柱3と、該支柱3に沿って昇降自在に設けられた昇降部4と、該昇降部4に取り付けられ、杭Sの地上露出部Saを係止するクランプ部5と、該支柱3の上部に回転自在に支持されたスプロケット6と、途中部が該スプロケット6に巻き掛けられ、一端部が引っ張り弾発手段としての引っ張りバネ8を介して支柱3におけるスプロケット6よりも下方に取り付けられ、他端部が昇降部4に取り付けられたチェーン9と、該スプロケット6に対し、相対回動自在に且つ軸心を一致させて支持されたハンドル10と、該ハンドル10の往復回動により、チェーン9を前記一端部側へ移動させる一方向への回転のみをスプロケット6に生じさせるラチェット部7とを備えている。なお、各図において、矢印Fは杭抜き機1の前側を指し示している。
【0020】
接地部2は、地面に接地する接地面2bを有している。接地部2の略中央には支柱3が取り付けられている。図3に示すように接地部2の前端部にはU字状の凹部が設けられ、該凹部内が杭Sの地上露出部Saを挿通する空間2aとなっている。接地部2の後端部には左右方向に延びる軸13aで回転自在の移動用車輪13が設けられている。車輪13は、支柱3が直立した状態(図1参照)では地面に接地せず、該支柱3が後方に傾斜した状態(図6参照)では地面に接地するように配設されている。
【0021】
支柱3は、本例では矩形パイプからなっている。支柱3の上端には、スプロケット6、ハンドル10、ラチェット部7が配設されたケース20が配設されている。ケース20には、左右いずれか一方向(本例では左方向)に突出する取っ手14が設けられている。
【0022】
昇降部4は、支柱3が嵌入する矩形穴が設けられており、支柱3に沿って上下にスライド移動可能に構成されている。
【0023】
クランプ部5は、左右方向に延びる前後一対のアーム片21a,21bと、該一対のアーム片21a,21bを取っ手14の突出方向側で連結する連結部21cとにより平面視コ字状に形成されたクランプアーム21と、両アーム片21a,21bにおける互いの対峙面に着脱可能に取り付けられたクランプ歯22と、連結部21cの外側に突設されたクランプハンドル23とを備えている。クランプアーム21は、取っ手14の突出方向の反対側が開口しており、杭Sの地上露出部Saを該開口から内部に受け入れるようになっている。クランプアーム21の後側のアーム片21bが左右方向に延びる軸21dを介して、昇降部4の前側に上下回動自在に取り付けられている。これにより、昇降部4が上昇すると、アーム片21aのクランプ歯22の下縁と、アーム片21bのクランプ歯22の上縁とが地上露出部Saの前後を係止する。本例のクランプ歯22は表面に多数の凹凸が形成された金属製となっているが、特にこれに限定されず、杭Sの仕様に応じて適宜変更することが好ましく、例えば表面が樹脂でコーティングされている杭Sに対してはゴム又は樹脂製のものに交換することが好ましい。
【0024】
スプロケット6は、左右方向に延びる軸25を介して回転自在に、支柱3の上端のケース20に支持されている。引っ張りバネ8は、その下端側が、支柱3の高さ方向の途中部における内部に固定されている。チェーン9は、その途中部がスプロケット6の上側に巻き掛けられ、一端部が支柱3の内部に垂れ下げられるとともに引っ張りバネ8の上端側に連結されており、他端部が支柱3の前側に垂れ下げられるとともに昇降部4に連結されている。
【0025】
ハンドル10は、その先端側が支柱3の後方に延設されるとともに、ケース20により、上方及び下方への回動がそれぞれ所定上限位置P1及び所定下限位置P2までに制限されるように構成されている。
【0026】
ラチェット部7は、スプロケット6に軸心を一致させ且つ該スプロケット6とともに一体的に回転するように設けられたラチェット歯車15と、ハンドル10に対して前記一方向への回転のみを許容するように、該ラチェット歯車15の歯に対し係脱可能に、ハンドル10に取り付けられた送りラチェット爪11と、支柱3に対して前記一方向への回転のみを許容するように、該ラチェット歯車15の歯に対し係脱可能に、支柱3に取り付けられた係止ラチェット爪12と、送りラチェット爪11及び係止ラチェット爪12をラチェット歯車15の歯からそれぞれ離脱させるための送りラチェット爪レバー16及び係止ラチェット爪レバー17とを備えている。送りラチェット爪11及び係止ラチェット爪12は、それぞれ付勢手段としてのバネ11a,12aにより、ラチェット歯車15の歯に係合する方向へ付勢されている。送りラチェット爪レバー16及び係止ラチェット爪レバー17は、ハンドル10が所定下限位置P2にある状態において片手で一緒に把持可能な程度に接近した位置となるように設けられ、且つ、該両レバー16,17を同一方向(本例では、両レバー16,17を上昇させる方向)に移動させる操作により送りラチェット爪11及び係止ラチェット爪12をラチェット歯車15の歯から同時に離脱させることが可能に構成されている。
【0027】
次に、本例の杭抜き機1の使用方法を、図4〜図6を参照しながら説明する。杭Sを抜くには、取っ手14の突出側の手(左手)で取っ手14を持ち、その反対側の手で支柱3を持って、杭Sの地上露出部Saを、接地部2の空間2a内に位置させる。次いで、クランプハンドル23の突出側の手(左手)でクランプハンドル23を持ち、その反対の手で支柱3を持ち、クランプアーム21の開口からその内部に地上露出部Saを受け入れさせる(図4(a)においてクランプアーム21を二点鎖線で示す状態にする)。次いで、クランプハンドル23を離すと、クランプアーム21が下方に回動し、地上露出部Saの前後が一対のクランプ歯22に挟持される(図4(a)においてクランプアーム21を実線で示す状態にする)。次いで、支柱3を直立させた状態で、ハンドル10を下から上に回動させる。このとき、ラチェット部7の作用により、チェーン9、昇降部4、クランプ部5は移動せず、それぞれの位置が保持されたままになっている。次いで、図4(a)に示す状態から図4(b)に示す状態になるように、ハンドル10を上から下に回動させると、ラチェット部7の作用より、チェーン9が前記一端部側(引っ張りバネ側)に送られることにより、昇降部4が上方に引き上げられる。すると、昇降部4に連結されたクランプ部5のクランプアーム21における後側のアーム片21aが上方に引き上げられることにより、クランプアーム21の前後のクランプ歯22,22が地上露出部Saをがっちりと係止するとともに、杭Sを上昇させる。そして、必要に応じてハンドル10をさらに上下に往復回動させると、杭Sをさらに上昇させることができる。このようにして杭Sを抜くことができる。
【0028】
また、杭Sを抜いた後に次の杭抜き作業に備えてクランプ部5を元の位置まで下降させるには、図5(a)に示すように、ハンドル10を所定下限位置P2まで下方に回動させた状態にする。このとき、送りラチェット爪レバー16及び係止ラチェット爪レバー17は、片手で一緒に把持可能な程度に接近した位置となる。次いで、図5(b)に示すように、該片手の親指をハンドル10の上に掛け、該片手の他の指で両レバー16,17を握ると、送りラチェット爪11及び係止ラチェット爪12がラチェット歯車15の歯から同時に離脱する。すると、チェーン9がその他端部側(昇降部側)へも移動可能になり、昇降部4及びクランプ部5がそれらの重量で下降する。このとき、チェーン9の一端部側が引っ張りバネ8で引っ張られているので、昇降部4及びクランプ部5はその下降速度を徐々に低下させ、最終的にソフトに停止し、図1に示す状態になる。
【0029】
また、杭抜き機1を走行させるには、図6に示すように、ハンドル10を持って所定上限位置P1まで上方へ回動させた状態にするとともに、該状態で支柱3を後方に傾斜させ車輪13を接地させると、杭抜き機1が走行姿勢になる。この走行姿勢では、ハンドル10を手押しすることにより、杭抜き機1を走行させることができる。
【0030】
以上のように構成された本例の杭抜き機1によれば、接地部2を介して地面に立設される支柱3の上部にハンドル10が支持されているので、杭Sの地上露出部Saの高さとは無関係に作業者が一定の姿勢でハンドル10の操作を行うことができ、操作性がよい。
【0031】
また、杭抜き機1は、作業者がハンドル10を持って所定上限位置P1まで上方へ回動させた状態にするとともに、該状態で支柱3を後方に傾斜させ車輪13を接地させると、杭抜き機1を走行姿勢にすることができる。そして、この走行姿勢では、作業者がハンドル10を手押しすることにより、杭抜き機1を走行させることができる。また、杭抜き機1の前方に複数の杭Sが列設されている場合に、該杭抜き機1をその前方に移動させながら、杭Sを順次抜いて行くことができるので、作業性がよい。また、ハンドル10が杭抜き機1の後方に延設されているので、畝間等の幅狭の空間においての走行操作やハンドル10の操作を行いやすい。
【0032】
また、取っ手14を操作することにより、支柱3を傾けたり、支柱3の向きを変えたりすることにより、杭Sの地上露出部Saを、接地部2の空間2a内に位置させることができる。
【0033】
また、送りラチェット爪レバー16及び係止ラチェット爪レバー17を片手で一緒に把持し、同一方向に移動させる操作を行うことにより、送りラチェット爪11及び係止ラチェット爪12によるラチェット歯車15への回転規制をワンタッチで解除することができる。
【0034】
次に、図7〜図10は本発明を具体化した第二実施形態を示している。この杭抜き機31は、以下に示す点において、主に第一実施形態と相違している。従って、同実施形態と共通する部分については、同一符号を付することにより重複説明を省く。
【0035】
(1)昇降部4は、支柱3の後方へ突設されたラチェット解除片32を備えている。本例のラチェット解除片32は、背面視で逆L字状に折曲形成された棒状の部材からなっており、下部が昇降部4に固定されており、上部が支柱3の後側へ傾斜するように形成されている。図10〜図12は昇降部4が昇降範囲の下限にある状態を示しており、この状態からハンドル10を上下に往復回動させると、第一実施形態と同様に、昇降部4及びクランプ部5とともに杭Sを上昇させることができる(図11(a)参照)。そして、昇降部4を支柱3に沿っての昇降範囲の略上限まで上昇させると、ラチェット解除片32の水平部32aが送りラチェット爪レバー16及び係止ラチェット爪レバー17を下から押し上げて、送りラチェット爪11及び係止ラチェット爪12をラチェット歯車15の歯から同時に離脱させるように構成されている(図11(b)参照)。
この構成によれば、昇降部4の上昇に伴ってラチェット解除片32が送りラチェット爪11及び係止ラチェット爪12をラチェット歯車15の歯から同時に離脱させた後は、ハンドル10を操作しても、昇降部4が上昇しなくなる。このため、昇降部4が前記昇降範囲を超えて上昇することによる不具合(例えば、前記昇降範囲の上部に設けられた部材(ケース20、ハンドル10、送りラチェット爪レバー16、係止ラチェット爪レバー17など)に無理な力が加わることによる不具合。)を防止することができる。また、作業者は、昇降部4が昇降範囲の上限に到達するとハンドル10の操作を止めなければならない、ということを注意しなくてもよくなり、気楽に作業できるようになる。
【0036】
(2)ハンドル10は、基端部33と先端部34が一対の固定手段35(本例ではボルト及びナット)で固定されている。このため、杭抜き機1の収納時に、一方の固定手段35を取り外し、もう一方の固定手段35による固定を緩めると、図10に二点鎖線で示すように、先端部34を折り畳むことができ、収納スペースを低減できるようになっている。
【0037】
(3)本例では、第一実施形態における移動用車輪13を省き、その代わりに、ケース20に、支柱の後方へ垂れ下がるように形成された提手36を設けており、この提手36を手で持ち上げて杭抜き機31を移動させるようになっている。これにより、部品点数を減らし、軽量化することができる。
【0038】
本例の杭抜き機31によれば、第一実施形態と同様の効果に加え、上記本例特有の効果を得ることができる。
【0039】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)本例の杭抜き機1を左右逆に構成すること。
(2)取っ手14又は/及びクランプアーム21の取り付け方向を左右いずれの方向にも取り付け可能に構成すること。
(3)クランプ部5による杭Sのクランプ方法を適宜変更すること。例えば、クランプ部に接続されたチェーンで杭Sを巻き付けることにより係止するように構成すること。
【符号の説明】
【0040】
1 杭抜き機
2 接地部
2a 空間
3 支柱
4 昇降部
5 クランプ部
6 スプロケット
7 ラチェット部
8 引っ張りバネ
9 チェーン
10 ハンドル
11 送りラチェット爪
12 係止ラチェット爪
13 車輪
13a 軸
14 取っ手
15 ラチェット歯車
16 送りラチェット爪レバー
17 係止ラチェット爪レバー
20 ケース
21 クランプアーム
21a,b アーム片
21c 連結部
21d 軸
22 クランプ歯
23 クランプハンドル
25 軸
31 杭抜き機
32 ラチェット解除片
32a 水平部
33 ハンドルの基端部
34 ハンドルの先端部
35 固定手段
36 提手
P1 所定上限位置
P2 所定下限位置
S 杭
Sa 地上露出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に打ち込まれた杭の地上露出部を挿通する空間を有する接地部と、
該接地部に立設された支柱と、
該支柱に沿って昇降自在に設けられた昇降部と、
該昇降部に取り付けられ、前記杭の地上露出部を係止するクランプ部と、
該支柱の上部に回転自在に支持されたスプロケットと、
途中部が該スプロケットに巻き掛けられ、一端部が引っ張り弾発手段を介して前記支柱における前記スプロケットよりも下方に取り付けられ、他端部が前記昇降部に取り付けられたチェーンと、
該スプロケットに対し、相対回動自在に且つ軸心を一致させて支持されたハンドルと、
該ハンドルの往復回動により、前記チェーンを前記一端部側へ移動させる一方向への回転のみを前記スプロケットに生じさせるラチェット部と
を備えた杭抜き機。
【請求項2】
前記ラチェット部は、前記スプロケットに軸心を一致させ且つ該スプロケットとともに一体的に回転するように設けられたラチェット歯車と、
前記ハンドルに対して前記一方向への回転のみを許容するように、該ラチェット歯車の歯に対し係脱可能に、前記ハンドルに取り付けられた送りラチェット爪と、
前記支柱に対して前記一方向への回転のみを許容するように、該ラチェット歯車の歯に対し係脱可能に、前記支柱に取り付けられた係止ラチェット爪と
を備えた請求項1記載の杭抜き機。
【請求項3】
前記送りラチェット爪及び前記係止ラチェット爪を前記ラチェット歯車の歯からそれぞれ離脱させるための送りラチェット爪レバー及び係止ラチェット爪レバーを備え、
前記ハンドルは、その先端側が前記支柱の後方に延設されるとともに、下方への回動が所定下限位置までに制限されるように構成されており、
前記送りラチェット爪レバー及び前記係止ラチェット爪レバーは、該ハンドルが該所定下限位置にある状態において片手で一緒に把持可能な程度に接近した位置となるように設けられ、且つ、該両レバーを同一方向に移動させる操作により前記送りラチェット爪及び前記係止ラチェット爪を前記ラチェット歯車の歯から同時に離脱させることが可能に構成された請求項2記載の杭抜き機。
【請求項4】
前記同一方向は、前記両レバーを上昇させる方向であり、
前記昇降部は、前記支柱の後方へ突設されたラチェット解除片を備え、
該ラチェット解除片は、前記昇降部を前記支柱に沿っての昇降範囲の略上限まで上昇させると、前記両レバーを下から押し上げて、前記送りラチェット爪及び前記係止ラチェット爪を前記ラチェット歯車の歯から同時に離脱させるように構成された請求項3記載の杭抜き機。
【請求項5】
前記支柱は、その上端部に、左右いずれか一方に突出する取っ手が設けられており、
前記クランプ部は、該取っ手の突出方向の反対側が開口した平面視コ字状に形成されており、該反対側から前記杭の地上露出部を該コ字状の内部に受け入れ、該地上露出部を前後から係止するように構成された請求項1〜4のいずれか一項に記載の杭抜き機。
【請求項6】
前記クランプ部は、前記支柱の前側に設けられており、
前記接地部は、前記空間が前記支柱の前方に設けられ、左右方向に延びる軸で回転自在の車輪が前記支柱の後方に設けられており、
該車輪は、前記支柱が直立した状態では地面に接地せず、該支柱が後方に傾斜した状態では地面に接地するように配設されており、
前記ハンドルは、その先端側が前記支柱の後方に延設されるとともに、上方への回動が所定上限位置までに制限されるように構成された請求項1〜5のいずれか一項に記載の杭抜き機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−107487(P2012−107487A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50403(P2011−50403)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000100469)みのる産業株式会社 (158)
【Fターム(参考)】