説明

杭施工方法、杭施工装置および地盤施工用杭

【課題】所望の支持力と引き抜き抵抗力を実現することができ、尚かつ、地盤の孔掘削から拡径体(アンカー)を形成するまでを単一の工程とすることができるようにする。
【解決手段】当該杭10の外周面10aよりも外側に拡開可能な袋体11を備えた杭10を地盤Gに施工する方法であって、杭10を回転させ、当該杭10の外周面10aに形成された螺旋状羽根12により地中への推進力を生じさせて当該杭10を掘進させ、当該地盤G中の所定箇所を螺旋状羽根12を用いて乱した状態とし、該乱された箇所に当該杭10の袋体11を位置させ、該袋体11に流動体を導入して当該袋体11を拡開させ、当該流動体を固化させることにより拡径体11’を形成する。杭10の掘進を抑制した状態で当該杭10を回転させ続けることによって地盤G中の所定箇所を乱した状態とすることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭施工方法、杭施工装置および地盤施工用杭に関する。さらに詳述すると、本発明は、外側に拡開可能な袋体を備えた杭を地盤に施工する技術の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高い鉛直支持力を発現させるために袋体を有する回転杭やその施工方法が提案されている。このような袋体付きの回転杭を地盤に施工する際は、従来、当該杭を回転させ、螺旋状羽根による推進力を得ながら地盤に埋設させた後、袋体内にセメントミルク等を導入して充填し、所定の深度において当該杭に拡径体を築造し、かかる拡径体を、支持力及び引き抜き抵抗力の大きいアンカー(根固め部)として機能させている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−57113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の袋体付き回転杭によっては、所望の支持力や引き抜き抵抗力を実現するのが困難な場合がある。
【0005】
また、従来の袋体付き回転杭の施工方法には、孔の掘削から拡径体の形成までに複数の工程を要し、杭施工にその分の手間と時間が費やされるものがあった。
【0006】
そこで、本発明は、所望の支持力と引き抜き抵抗力を実現することができ、尚かつ、地盤の孔掘削から拡径体(アンカー)を形成するまでを単一の工程とすることができるようにした杭施工方法、杭施工装置および地盤施工用杭を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するべく本発明者は種々の検討を行った。従来の袋体付き回転杭の施工においては、回転埋設と同時に袋体付き杭を地盤中に押し込むことになるため、袋体に抵抗が生じやすい。したがって、そのような状況で回転埋設を進めれば当該袋体が破損するおそれがある。また、一般的に袋体は当該杭の周面に筒状に取り付けられていることが一般的であり、回転埋設時に生じる周辺地盤からの抵抗によってねじれが生じやすい。袋体がねじれてしまうと、当該袋体中に所定量のセメントミルクを充填することができず、所望の支持力や引き抜き抵抗力を実現するのが困難になる。さらに、上述した特許文献1のごとき袋体付き回転杭の施工方法では、回転埋設時に周辺地盤が排土されていない。この場合、袋体が膨らむ余裕がなく、袋体内にセメントミルク等を均一に充填することが難しいため、支持力や引き抜き抵抗力にバラツキが生じることがある。これらの問題から、従来の袋体付き回転杭は、周辺地盤の強度が小さい現場でしか採用することができない場合があるなど、適用範囲に制限があることがあった。
【0008】
さらに、従来のごとく複数の工程を要すると、回転杭の施工にその分の手間と時間が費やされる。また、例えば海上風車の建設などに伴い海底地盤に回転杭を施工するような場合にあっては、多くの工程を経ると、地盤から海中への排土や掘削泥水を抑制することが難しくなり、環境保護といった観点からも好ましくない。
【0009】
これらの点をふまえつつ、支持力等の実現と、杭施工に要する工程削減とについて検討を重ねた本発明者は、かかる課題の解決に結び付く新たな知見を得るに至った。本発明はかかる知見に基づくものであり、当該杭の外周面よりも外側に拡開可能な袋体を備えた杭を地盤に施工する方法において、杭を回転させ、当該杭の外周面に形成された螺旋状羽根により地中への推進力を生じさせて当該杭を掘進させ、当該地盤中の所定箇所を螺旋状羽根を用いて乱した状態とし、該乱された箇所に当該杭の袋体を位置させ、該袋体に流動体を導入して当該袋体を拡開させ、当該流動体を固化させることにより拡径体を形成する、というものである。
【0010】
かかる杭施行方法によれば、螺旋状羽根による推進力を利用して杭を回転させながら掘進させて地盤に埋設することができる。しかも、螺旋状羽根を用いて地盤中を乱した状態とし、当該乱した箇所に袋体を位置させて拡開させるので、袋体が膨らむ余裕を地盤中に形成し、当該袋体内にセメントミルク等の流動体を均一に充填しやすい状態とすることができる。このため、当該拡径体(アンカー)によって、従来よりも大きな杭の支持力や引き抜き抵抗力を実現することが可能となる。
【0011】
また、この杭施工方法によれば、杭を掘進させて埋設し、さらに地盤中の一部を乱して拡径体を形成するという一連の工程を経て杭をそのまま地盤中に定着させることができるので、従来のような複数の工程(例えば、プレボーリングにより孔を掘削した後、掘削用機器を引き上げ、当該掘削孔に杭を埋設するといった各工程)を経ずとも杭施工を実施することが可能であり、その分の手間と時間を少なくすることができる。しかも、杭を掘進させてそのまま地盤に埋設することができるので、海底地盤に杭を施工する場合にあっても地盤から海中へ多くの排土や掘削泥水が生じて環境が汚染されるのを抑制することができる。
【0012】
かかる杭施工方法においては、杭の掘進を抑制した状態で当該杭を回転させ続けることによって地盤中の所定箇所を乱した状態とすることが好ましい。これにより、地表へ向け排土しながら、地盤中の所定箇所を拡径体を形成するに好適な状態とすることができる。
【0013】
また、地盤の一部を泥土化するとともに、螺旋状羽根によって泥土を排土することによって地盤中の所定箇所を乱した状態とすることも好ましい。
【0014】
さらには、杭を鉛直軸方向に往復動させ、螺旋状羽根によって地盤中の所定箇所を乱すことも好ましい。
【0015】
また、本発明にかかる杭施工方法により海底地盤に杭を施工することも好ましい。
【0016】
また、本発明は、当該杭の外周面よりも外側に拡開可能な袋体を備えた杭を地盤に施工する装置において、杭を回転させ、当該杭の外周面に形成された螺旋状羽根により地中への推進力を生じさせて当該杭を掘進させる回転装置と、袋体に流動体を導入するための導入路と、を備え、当該地盤中の所定箇所を螺旋状羽根を用いて乱した状態とし、該乱された箇所に当該杭の袋体を位置させ、該袋体に流動体を導入して当該袋体を拡開させ、当該流動体を固化させることにより拡径体を形成する、というものである。
【0017】
かかる杭施行装置によれば、螺旋状羽根による推進力を利用して杭を回転させながら掘進させて地盤に埋設することができる。しかも、螺旋状羽根を用いて地盤中を乱した状態とし、当該乱した箇所に袋体を位置させて拡開させるので、袋体が膨らむ余裕を地盤中に形成し、当該袋体内にセメントミルク等の流動体を均一に充填しやすい状態とすることができる。このため、当該拡径体によって、従来よりも大きな杭の支持力や引き抜き抵抗力を実現することが可能となる。
【0018】
また、この杭施工装置によれば、杭を掘進させて埋設し、さらに地盤中の一部を乱して拡径体を形成するという一連の工程を経て杭をそのまま地盤中に定着させることができるので、従来のような複数の工程を経ずとも杭施工を実施することが可能であり、その分の手間と時間を少なくすることができる。しかも、杭を掘進させてそのまま地盤に埋設することができるので、海底地盤に杭を施工する場合にあっても地盤から海中へ多くの排土や掘削泥水が生じて環境が汚染されるのを抑制することができる。
【0019】
かかる杭施工装置は、掘削水などを高圧噴射して地盤の一部を泥土化するジェット装置を備え、螺旋状羽根によって泥土を排土することによって地盤中の所定箇所を乱した状態とするものであることが好ましい。
【0020】
さらに、本発明にかかる地盤施工用杭は、地盤に施工される杭であって、当該杭の回転時に地中への推進力を生じさせる螺旋状羽根と、当該杭の外周面よりも外側に拡開可能であり、当該杭のうち外径が他の箇所よりも細い細径部に設けられている袋体と、を備え、螺旋状羽根により乱した地盤中の箇所にて袋体に流動体を導入して拡開させ、該流動体を固化させることにより拡径体を形成する、というものである。
【0021】
かかる地盤施工用杭は、当該杭のうち外径が他の箇所よりも細い細径部に袋体が設けられているものであることが好ましい。
【0022】
また、かかる地盤施工用杭は、掘削時に袋体に作用する抵抗を軽減させる抵抗低減部を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、従来技術における種々の課題を踏まえつつ、所望の支持力と引き抜き抵抗力を実現することができ、尚かつ、地盤の孔掘削から拡径体(アンカー)を形成するまでを単一の工程とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による杭施工の手順の一例を(A)〜(D)の順に示す地盤の断面図である。
【図2】本発明にかかる地盤施工用杭の細径部付近の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
【0026】
図1〜図2に本発明にかかる杭施工方法、杭施工装置および地盤施工用杭の実施形態を示す。杭施工装置1は、当該杭10の外周面10aよりも外側に拡開可能な袋体11と螺旋状羽根12とを備えた杭10を地盤Gに施工するための装置である。本実施形態の杭施工装置1は、回転装置2、流動体の導入路3、ジェット装置4などを備えており、地盤G中の所定箇所を螺旋状羽根12を用いて乱した状態とし、該乱された箇所に当該杭10の袋体11を位置させ、該袋体11に流動体を導入して拡開させ、当該流動体を固化させることにより拡径体11’を形成する装置である(図1等参照)。
【0027】
ここで、杭10は、例えば鋼管からなる既製杭、あるいは、内面が鋼管に密着した中空コンクリート部からなる鋼管コンクリート複合杭などである。どのような構成の杭10とするかは、目的や地盤Gの性状などに応じて適宜選択される。
【0028】
また、本実施形態の杭施工装置1が対象とする杭10は、当該杭10の回転時に地中への推進力を生じさせる連続または間欠状の螺旋状羽根12を備えた回転杭である(図1参照)。杭10の長手方向(鉛直方向)の例えば中央付近には、外径が他の箇所よりも細い細径部10bが形成されている(図1、図2参照)。当該細径部10bには螺旋状羽根12は形成されずに例えば環状の袋体11が設けられている(図2参照)。細径部10bに設けられた袋体11は、杭10の埋設時に周辺地盤Gからの抵抗受けにくいため、杭10の回転埋設を進めても破損するおそれが少ない。細径部10bとそれ以外の部分との隣接部には、必要に応じてテーパ部、あるいは段落とし部(例えば杭10の中心軸に垂直な環状面を含む段)が形成されている。
【0029】
袋体11は、杭10を支持する杭10の外周面10aよりも外側に拡開可能であり、内部に導入された流動体が固化することによって拡径体11’を形成する。杭10の沈設後に袋体11に導入される流動体は、例えばセメントミルク等の水硬性材料を含む地盤改良材などである。特に図示していないが、袋体11は、例えばその上下部を鋼製バンドなどの袋体拘束具によって杭10の外周面10aに締め付けられている。この袋体11の材質は、導入される流動体中の水分を透過させる脱水機能と強度の点からナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、ビニロンなどの合成繊維であることが好ましい。このように流動体の水分を透過させうる材質の袋体11を用いた場合、袋体11への流動体の導入時または導入後、所定の圧力を作用させることにより、流動体中の水分を透過させて脱水することができ、硬化後により緻密で強固な硬化体(拡径体11’)を得ることが可能となる。
【0030】
また、杭10は、掘削時に袋体11に作用する抵抗を軽減させる抵抗低減部13を備えることが好ましい。抵抗低減部は、例えばフリクションカッター、練り付け治具などで構成することができる。例えば本実施形態では、細径部10bの下端付近に抵抗低減部13が形成されている杭10を施工対象としている(図2参照)。
【0031】
杭施工装置1の回転装置2は、杭10を回転させ、当該杭10の外周面10aに形成された螺旋状羽根12により地中への推進力を生じさせて当該杭10を掘進させる装置である。特に詳しく図示していないが、例えば本実施形態では、鉛直方向に立設するリーダーの長手方向に沿って昇降するオーガーなどを含む回転装置2を用い、当該オーガーを回転駆動することによって杭10を回転させて埋設するようにしている(図1(A)参照)。
【0032】
導入路3は、地盤G中の所定箇所に位置させた袋体11に流動体を導入するための流路である。本実施形態では特に詳しくは図示していないが、導入路13は、杭10の内周に設置された、流動体の供給用パイプといった公知の構成のものでよい(図1(D)参照)。
【0033】
ジェット装置4は、掘削水などを高圧噴射して地盤Gの一部を泥土化する装置である。上述の回転装置2によって杭10を回転させるだけでも当該杭10を地盤Gに埋設することが可能であるが、本実施形態では必要に応じてジェット装置4を用い、ジェット工法を利用して地盤Gに杭10を埋設することとしている。例示すれば、ジェット装置4は、杭10の先端(下端)に構成された鉛直方向下向きの吐出口、該吐出口に掘削水などを供給する供給パイプ(図示省略)などで構成される(図1(B)参照)。このジェット装置4により掘削水を高圧噴射すれば地盤Gの一部を泥土化(水をさらに多く噴射すれば泥水化)することができる。なお、海水等の掘削水のほか、セメントミルクなどの流動体をこのジェット装置4から噴射することもできる。
【0034】
続いて、上述のごとき構成の杭施行装置1を用いた杭施工の一例について説明する。以下では、海底の地盤Gに杭10を施工する場合を例示して説明する(図1参照)。
【0035】
まず、地盤Gの所定箇所において回転装置2により杭10を回転させ、螺旋状羽根12による地中への推進力を生じさせて当該杭10を埋設させる(図1(A)参照)。杭10の埋設時、必要に応じてジェット装置4から掘削水などを高圧噴射し、地盤Gの一部を泥土化すれば排土しやすくすることができる(図1(B)参照)。あるいは、ジェット装置4からセメントミルクなどの流動体を噴射すれば、当該杭10の周囲を固化して当該杭10をより堅固に定着させることができる。なお、環境汚染の低減などの観点からすれば、例えば船体に備え付けのバキューム装置(図示省略)を用いて排土(残土や泥水を含む)を吸引することが好ましい。排土しながら掘削すれば、杭10を回転埋設するために要する回転トルクを低減させることも可能である。
【0036】
杭10を所定の深さまで埋設したら、地盤G中の所定箇所を乱し、人為的に軟弱な層を形成する。本実施形態では、ジェット装置4によって地盤Gの一部を泥土化しながら螺旋状羽根12で当該泥土を排土することにより地盤G中の所定箇所を乱した状態とする(図1(C)参照)。要は、拡径体(アンカー)11’の定着層(図1(D)において符号21で示す)付近においては排土するために螺旋状羽根12を使用する。また、杭10の掘進を抑制した状態(止めた状態を含む)で回転させ続ければ、細径部10bよりも上側の螺旋状羽根12(12a)による泥土の地表への排土作用が促される(図1(C)参照)。さらには、回転装置2のオーガーなどを用いて杭10を所定量上下動させる(杭10の鉛直軸方向へ往復動させる)動作を適宜併用することで、当該杭10の螺旋状羽根12によって地盤G中の所定箇所を効率的に乱し、拡径可能な領域を当該螺旋状羽根12の羽根径まで拡大することが可能である(図1(B)参照)。
【0037】
所定箇所を乱したら、当該箇所に袋体11を位置させた状態で、導入路3を介し当該袋体11にセメントミルク等の流動体を導入する。これにより、袋体11は、乱された所定箇所において拡径した状態となる(図1(D)参照)。この後、所定時間が経過すると、袋体11の内部に導入された流動体が固化し、拡径体11’が形成される。杭10の外周面10aよりも径が大きくなるように地盤G中に形成された拡径体11’は、周囲の地盤G(掘削孔20の周面)に密着し、当該杭10を引き抜く方向の外力に対する抵抗力、さらにはこれ以外の外力に抵抗して杭10を支持する支持力を発揮するアンカー(根固め部)として機能する。
【0038】
なお、杭10の埋設時、ジェット装置4からセメントミルク等を噴射し、当該セメントミルク等を袋体11と掘削孔20との間に介在した状態で固化させれば、杭10を地盤G中でより堅固に定着させることができる。さらには、杭10の袋体11以外の外周面10aと掘削孔20との間にもセメントミルク等を介在させることがより好ましい。また、杭10をできるだけ堅固に定着させるという観点からすれば、杭頭(杭10の頭部)付近にセメントミルク等を打設して地盤改良することも好適である。
【0039】
上述のように地盤G中の乱した箇所にて袋体11を拡開させる本実施形態によれば、当該袋体11が膨らむ余裕を地盤G中に形成することから、袋体11内にセメントミルク等の流動体を均一に充填しやすい。したがって、拡径体(アンカー)11’により、従来よりも大きな杭10の支持力や引き抜き抵抗力を実現することが可能である。
【0040】
しかも、本実施形態では杭10の細径部10bに袋体11を設けているため、杭10の掘進時に袋体11が受ける抵抗をさらに低減させることができる。袋体11がねじれていたり傷が付いていたりすると所定量の流動体を充填することができず、所望の支持力や引き抜き抵抗力を実現するのが困難な場合があるが、上述のごとく本実施形態によればこのような事態を回避し、所定量の流動体を導入・充填して所望の支持力や引き抜き抵抗力を実現することが可能である。したがって、当該杭10を利用した海上施設等の構造物の設計を効率よく行うことが可能となる。
【0041】
また、本実施形態によれば、袋体11を備えた杭10を、地盤Gを掘削しながら埋設することができる。すなわち、従来であれば、まずは地盤に掘削孔を形成し、それから当該掘削孔に杭を埋設するという少なくとも複数の工程を要していたのに対し、本実施形態においては単一工程(つまり掘削と杭10の埋設との同時工程)にて同様の施工を行うことができ、さらにはアンカー(拡径11’)の形成工程を引き続き行うことができる。
【0042】
また、このように掘削から拡径体11’の形成までを少ない工程にて実施可能な本実施形態は、環境面においても優れるという利点がある。すなわち、従来のごとく複数工程にて杭10を施工する場合、特に海底地盤Gに杭10を施工する場合においては、掘削時点、掘削装置を引き上げる時点、さらには掘削孔20に杭10を沈設する時点それぞれで排土が生じることから、施工完了までの排土量を効果的に抑制することが難しい。これに対し、本実施形態の場合には工程数が少なく、施工時間が短くて済むことから排土量を効果的に抑制し、環境に対する影響を極力抑えることが可能である(要は、掘削孔20にアンカー体を埋めるのではなく、掘削しながらアンカー体を埋めることができる)。また、少ない工程にて杭10を施工する本実施形態の杭施工装置1および杭施工方法は、特に海底の地盤G、なかでも崩壊の可能性がある比較的緩い地盤(一例として連続した砂地盤)においても安定して定着層21の深度まで杭10を埋設し、海底面以下にて確実に定着させることができる点でも好適である。
【0043】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、当該杭の外周面よりも外側に拡開可能な袋体を備えた杭を地盤に施工する場合、特に海底地盤に施工する場合に適用して好適なものである。
【符号の説明】
【0045】
1…杭施工装置、2…回転装置、3…導入路、4…ジェット装置、10…杭(地盤施工用杭)、10a…外周面、10b…細径部、11…袋体、11’…拡径体、12…螺旋状羽根、13…抵抗低減部、20…掘削孔、21…定着層、G…地盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
当該杭の外周面よりも外側に拡開可能な袋体を備えた杭を地盤に施工する方法において、
前記杭を回転させ、当該杭の外周面に形成された螺旋状羽根により地中への推進力を生じさせて当該杭を掘進させ、
当該地盤中の所定箇所を前記螺旋状羽根を用いて乱した状態とし、
該乱された箇所に当該杭の前記袋体を位置させ、
該袋体に流動体を導入して当該袋体を拡開させ、
当該流動体を固化させることにより拡径体を形成する、杭施工方法。
【請求項2】
前記杭の掘進を抑制した状態で当該杭を回転させ続けることによって前記地盤中の所定箇所を乱した状態とする、請求項1に記載の杭施工方法。
【請求項3】
前記地盤の一部を泥土化するとともに、前記螺旋状羽根によって泥土を排土することによって前記地盤中の所定箇所を乱した状態とする、請求項1に記載の杭施工方法。
【請求項4】
前記杭を鉛直軸方向に往復動させ、前記螺旋状羽根によって前記地盤中の所定箇所を乱す、請求項1から3のいずれか一項に記載の杭施工方法。
【請求項5】
海底地盤に前記杭を施工する、請求項1から4のいずれか一項に記載の杭施工方法。
【請求項6】
当該杭の外周面よりも外側に拡開可能な袋体を備えた杭を地盤に施工する装置において、
前記杭を回転させ、当該杭の外周面に形成された螺旋状羽根により地中への推進力を生じさせて当該杭を掘進させる回転装置と、
前記袋体に流動体を導入するための導入路と、
を備え、
当該地盤中の所定箇所を前記螺旋状羽根を用いて乱した状態とし、該乱された箇所に当該杭の前記袋体を位置させ、該袋体に流動体を導入して当該袋体を拡開させ、当該流動体を固化させることにより拡径体を形成する、杭施工装置。
【請求項7】
掘削水などを高圧噴射して前記地盤の一部を泥土化するジェット装置を備え、前記螺旋状羽根によって泥土を排土することによって前記地盤中の所定箇所を乱した状態とする、請求項6に記載の杭施工装置。
【請求項8】
地盤に施工される杭であって、
当該杭の回転時に地中への推進力を生じさせる螺旋状羽根と、
当該杭の外周面よりも外側に拡開可能であり、当該杭のうち外径が他の箇所よりも細い細径部に設けられている袋体と、
を備え、前記螺旋状羽根により乱した地盤中の箇所にて前記袋体に流動体を導入して拡開させ、該流動体を固化させることにより拡径体を形成する、地盤施工用杭。
【請求項9】
当該杭のうち外径が他の箇所よりも細い細径部に前記袋体が設けられている、請求項8に記載の地盤施工用杭。
【請求項10】
掘削時に前記袋体に作用する抵抗を軽減させる抵抗低減部を備える、請求項9に記載の地盤施工用杭。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−196023(P2011−196023A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61330(P2010−61330)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(390018717)旭化成建材株式会社 (249)
【Fターム(参考)】