説明

杭構造、鋼管杭の挿入方法

【課題】複数に分割された鋼管を接続して鋼管杭を構成する場合に、鋼管同士の接続部が複雑にならないようにする。
【解決手段】鋼管杭1は、地盤内に形成されたソイルセメントからなる地盤改良体140と、地盤改良体140内に埋設された鋼管杭本体100とを備え、鋼管杭本体100は、両端部にフランジ111が接続された複数の鋼管110が、フランジ111同士を固定することで連結されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の鋼管を接続した鋼管杭が地盤内に埋設されてなる杭構造及び鋼管杭の挿入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、地盤耐力が小さい敷地において住宅等の建築物を構築する場合には、建築物を強固に支持できるように、建築物の下部に杭基礎が設けられている。住宅地等において施工する際には、周囲への騒音、振動が問題となるため、杭基礎として周囲にスパイラルウイングを取り付けた鋼管杭が用いられている(例えば、特許文献1参照)。かかる鋼管杭によれば、鋼管杭を地盤に回転圧入することで施工時の騒音、振動を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許2592079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の方法において、鋼管杭を一体に成形してしまうと、資材の搬入、載置をする際に広い敷地が必要となるため、狭隘な敷地での施工に適さない。そこで、複数に分割された鋼管を接続して鋼管杭を構成することが考えられるが、地盤を掘削しながら鋼管を回転圧入させなければならず、鋼管同士の接続部に大きな力が作用する。このため、鋼管同士を強固に接続しなければならず、接続部の構成が複雑になる。
そこで、現在、発明者らは、地盤を改良してソイルセメントを製造しておき、このソイルセメント内に鋼管杭を挿入する方法を開発している。この方法によれば、鋼管杭を圧入する際の力を抑えて鋼管同士の接続部の構成を簡易にすることが可能となる。しかし、この方法を用いる場合には、鋼管杭とソイルセメントとの間で効率よく応力伝達が可能である必要がある。
【0005】
本発明は、上記の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、地盤改良体内に鋼管杭を埋設する方法を用いる際に、複数に分割された鋼管同士の接続部の構成が複雑にならないようにするとともに、鋼管と地盤改良体との間で効率良く応力伝達できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の杭構造は、地盤内に形成されたソイルセメントからなる地盤改良体と、前記地盤改良体内に埋設された鋼管杭本体とを備え、前記鋼管杭本体は、両端部にフランジが接続された複数の鋼管が、前記フランジ同士を固定することで連結されてなることを特徴とする。
【0007】
上記の杭構造において、前記鋼管杭本体は、その一部に他の鋼管に比べて径が大きな鋼管が連結されていてもよい。また、 前記径の異なる鋼管と、他の鋼管との間には、前記他の鋼管の側から前記径の異なる鋼管に向かって径が次第に大きくなるテーパーを有する鋼管が介在されていてもよい。
【0008】
また、本発明の鋼管杭の構築方法は、地盤を削孔攪拌しながらセメントミルクを注入することで地盤内にソイルセメントを形成するソイルセメント形成ステップと、両端部にフランジが接続された複数の鋼管を、前記フランジ同士を固定することで継ぎ足しながら、前記ソイルセメント内に挿入する鋼管挿入ステップとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、予め、地盤を削孔攪拌することで形成した地盤改良体に、鋼管杭本体を埋入させることとしたため、大きな力を作用させなくても鋼管杭本体を地盤内に挿入することができる。このため、鋼管の端部に取り付けられたフランジ同士を固定することで、鋼管を接続する構成を採用することができ、鋼管同士の接続部の構成が複雑にならない。また、フランジにより地盤改良体との間で支圧力が作用するため、鋼管と地盤改良体との間で効率良く応力伝達できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態の鋼管杭を示す鉛直断面図である。
【図2】圧入装置を示す図であり、(A)は地盤を掘削する際の状態を示し、(B)は鋼管杭本体を圧入する際の状態を示す。
【図3】掘削ビットの詳細な構成を示し、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は見上げ図である。
【図4A】鋼管杭本体の圧入方法を説明するための図(その1)である。
【図4B】鋼管杭本体の圧入方法を説明するための図(その2)である。
【図4C】鋼管杭本体の圧入方法を説明するための図(その3)である。
【図5】大径の鋼管と小径の鋼管との間に介在させる別の実施形態の鋼管を示す図である。
【図6】別の実施形態の鋼管杭の下端部を示す図である。
【図7】別の実施形態の鋼管杭の中間部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の杭構造の一実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態の杭構造1を示す鉛直断面図である。同図に示すように、本実施形態の杭構造1は、鋼管杭本体100が、地盤中に形成された地盤改良体140内に埋設されてなる。
【0012】
地盤改良体140は、地盤中に構築された円柱状のソイルセメントからなり、下端が支持層2まで到達している。
【0013】
鋼管杭本体100は、複数の鋼管110が上下に接続されて構成されている。各鋼管110の上下端部には、複数のボルト孔111Aが形成された円環状のフランジ111が取り付けられており、上下の鋼管110は、上方の鋼管110の下端のフランジ111と、下方の鋼管110の上端のフランジ111が、ボルト112及びナット113により固定されることにより、接続されている。
【0014】
鋼管杭本体100を構成する鋼管110のうち、上部の鋼管110Aは、下部の鋼管110Cよりも大径のものが用いられており、これらの鋼管110A、110Cの間には、下方から上方に向かって次第に径が大きくなるようなテーパーを有する鋼管が介在している。
【0015】
最下端の鋼管110Dには、下端から所定の高さ位置に円環状の支圧板120が取り付けられている。そして、この鋼管110Dは、その支圧板120よりも下方の部分が支持層2内に埋入されており、支圧板120の下面が支持層2の上面に当接している。
【0016】
次に、鋼管杭本体100を圧入する際に用いられる圧入装置について説明する。図2は圧入装置10を示す図であり、(A)は地盤を削孔攪拌する際の状態を示し、(B)は鋼管杭本体100を圧入する際の状態を示す。同図に示すように、圧入装置10はキャタピラからなる移動機構20と、移動機構20によって移動可能な台座部30と、台座部30により鉛直方向に延びるように支持された案内部40と、案内部40に取り付けられた起振装置50と、起振装置50に接続されたロッド70と、ロッド70を回転させる回転装置60とを備える。
【0017】
起振装置50は、例えば、偏芯重錘を回転させることにより生じた起振力をロッド70に伝達する装置である。起振装置50は、ロッド70及び回転装置60とともに案内部40に沿って上下に移動可能である。
回転装置60は、ロッド70にその軸を中心とした回転力を加える装置である。
【0018】
図2(A)に示すように、地盤を削孔攪拌する際には、起振装置50のロッド70の先端に掘削ビット80が取り付けられ、また、外部からロッド70の内部を通じて掘削ビット80の先端からセメントミルクを排出するセメントミルク供給装置90が接続される。
【0019】
図3は、掘削ビット80の詳細な構成を示し、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は見上げ図である。同図に示すように、掘削ビット80は、ロッド70の先端に接続される軸部81と、軸部81の先端部に側方に延びるように取り付けられた掘削翼本体83と、掘削翼本体83に取り付けられたビット84と、外周に向かって延びるように軸部81に接続された複数の攪拌翼82と、軸部81の先端に取り付けられたビット85とを備える。セメントミルク供給装置90によりロッド70を通じて供給されたセメントミルクは、軸部81の先端から排出される。
【0020】
図2(A)に示すように、圧入装置10は、ロッド70の先端に掘削ビット80を取り付けた状態で、回転装置60によりロッド70を介して掘削ビット80を回転させることで、掘削翼本体83に取り付けられたビット84により地盤を削孔攪拌することができる。また、セメントミルク供給装置90により削孔攪拌部内にセメントミルクを噴射するとともに、掘削ビット80が回転することで、攪拌翼82がセメントミルクと掘削土とを混合攪拌し、ソイルセメントを形成することができる。
【0021】
また、図2(B)に示すように、鋼管杭本体100を圧入する際には、ロッド70の先端にアタッチメント95を取り付ける。このアタッチメント95は、ロッド70の先端に着脱可能であるとともに、鋼管杭本体100の上部をロッド70と同軸に保持可能なものである。
【0022】
図4A〜図4Cは、鋼管杭本体100の圧入方法を説明するための図である。
本実施形態では下部に強度の高い支持層2を備えた地盤3において鋼管杭本体100を圧入する場合について説明する。
まず、図4Aに示すように、圧入装置10のロッド70の先端に掘削ビット80を取り付けるとともに、セメントミルク供給装置90を圧入装置10に接続する。そして、回転装置60によりロッド70を介して掘削ビット80を毎分20〜60回転の速度で回転させながら、下端が支持層2の上部に到達するまで地盤3を削孔攪拌して削孔攪拌部4を形成する。この際、起振装置50によりロッド70を介して掘削ビット80に例えば、20〜50Hz程度の起振力を加える。これにより、掘削ビット80が回転力及び起振力により地盤を削孔攪拌するため、掘削ビット80の切削効率が向上する。また、掘削ビット80から起振力が地盤3に伝達されることで、地盤3内の大きな礫や岩が振動により移動するため、地盤3内に礫や岩がある場合であっても容易に削孔攪拌を行える。
【0023】
また、上記の掘削作業と平行して、セメントミルク供給装置90により、ロッド70の内部を通じて削孔攪拌部4内にセメントミルクを噴射する。掘削ビット80の下方の地盤3にはロッド70の先端からセメントミルクが噴射されるとともに掘削ビット80から起振力が伝達されることにより、地盤3がセメントミルクを含んだ状態で振動することで液状化して軟化するため、掘削ビット80により容易に削孔攪拌することができる。このように、圧入装置10によれば、起振装置50により起振力が加えられることで削孔攪拌部4の掘削効率が向上する。
【0024】
そして、掘削ビット80により切削された土砂とロッド70の先端から噴射されたセメントミルクとが、攪拌翼82により攪拌されることで削孔攪拌部4内にソイルセメント5が形成される
【0025】
次に、圧入装置10から掘削ビット80及びセメントミルク供給装置90を撤去する。そして、図4Bに示すように、ロッド70の先端にアタッチメント95を接続し、このアタッチメント95に鋼管杭本体100を構成する最下段の鋼管110を取り付ける。そして、圧入装置10により、ソイルセメント5が満たされた削孔攪拌部4内に最下段の鋼管110を圧入する。この際、上記のように予め地盤を削孔攪拌して削孔攪拌部4を形成しておくことで、鋼管110を大きな力を加えることなく、削孔攪拌部4内に挿入することができる。
【0026】
さらに、圧入した鋼管110の上部に新たに鋼管110を配置し、フランジ111のボルト孔111Aにボルト112を挿通させてナット113を締め付けて鋼管110を接続する。そして、この接続した鋼管110を上記と同様に圧入する。この際、圧入装置10の起振装置50により鋼管110に起振力を加えるとともに、回転装置60によりロッド70を介して回転を加えることで、上述したように、鋼管110の周囲のソイルセメントが液状化するため、鋼管110をよりスムーズに圧入することができる。
【0027】
次に、図4Cに示すように、鋼管杭本体100の下端が支持層2の上部まで達した後、さらに、環状部120が支持層2の上面に当接するまで、起振装置50により起振力を加えるとともに、回転装置60により回転を加えながら鋼管110を圧入する。そして、環状部120が支持層2の上部に当接するまで鋼管杭本体100を圧入した後、削孔攪拌部4内に満たされたソイルセメント5が硬化することで、鋼管杭本体100の圧入作業が完了する。なお、環状部120が支持層2に当接したことは、予め、地盤調査により支持層2の深さを調査しておき、鋼管杭本体100を圧入する際に圧入した深さを測定し、これらを比較することで検知できる。
【0028】
本実施形態によれば、予め、削孔攪拌部4を形成するとともに、削孔攪拌部4内にソイルセメント5を製造しておき、このソイルセメント5内に鋼管110を圧入することとしたため、大きな力を作用させなくても鋼管110を地盤3内に挿入することができる。このため、鋼管110の端部に取り付けられたフランジ同士を固定することで、鋼管110を接続することができ、鋼管同士の接続部の構成が複雑にならない。
【0029】
また、本実施形態の杭構造1によれば、鋼管110をその周囲に突出するフランジ111により接続して鋼管杭本体100を構成しているため、このフランジ111が支圧部として機能することで周囲の地盤改良体140へ応力伝達が可能となる。これにより、鋼管杭本体100と地盤改良体140とが一体となり、地盤改良体140と地盤3との間での摩擦力による支持力を得ることができ、摩擦杭としての支持力を向上することができる。
【0030】
また、鋼管杭本体100の下端部の周囲に円環状の環状部120を設け、この環状部120が支持層2の上部に当接するように鋼管杭本体100を埋設したため、環状部120の面積分だけ支持面積が大きくなり、支持杭としての支持力を向上することができる。
【0031】
また、鋼管杭本体100の上部を構成する鋼管110Aのみに大径のものを用いているので、鋼管杭本体100と、この鋼管杭本体100により支持される建物とをより強固に接続することができる。これにより、地震時などには、鋼管杭本体100と建物との接続部に大きな曲げモーメントが作用するが、これに抵抗することができる。
【0032】
なお、本実施形態では、鋼管杭本体100の中間に、上下全長に亘ってテーパーを有する鋼管110Bを介在させることとしたが、これに限らず、図5(A)に示すように中間部より上部のみにテーパーを有する鋼管210Bを介在させてもよいし、同図(B)に示すように、上部のフランジ111と鋼管220Bとの間にリブ221を取り付けた鋼管220Bを介在させることとしてもよい。また、同図(C)に示すように、上下全長に亘ってリブプレート231が取り付けられた鋼管230Bを介在させてもよいし、同図(D)に示すように、大径の鋼管110Aよりも小径、かつ、小径の鋼管110Cよりも大径の鋼管240Bを用いてもよい。
【0033】
また、図6(A)に示すように、鋼管杭本体100の下端に下方に向かって径が大きくなるようなテーパー211を有する鋼管210Dを用いてもよい。この場合、テーパー211の内側にはフランジを設けるとよい。また、同図(B)に示すように、下端の支圧板120とフランジ111との間にリブプレート121を有する鋼管220Dを用いてもよい。これにより支持杭としての機能を向上することができる。
【0034】
また、図7に示すように、鋼管杭本体100の中間部に上下の鋼管310Cに比べて径の大きな鋼管310Aを介在させてもよい。この場合、同図に示すように、大径の鋼管310Aと小径の鋼管310Cとの間にテーパーを有する鋼管310Bを介在させてもよい。これにより、鋼管杭を節付杭として利用することができる。
【0035】
また、上記のように、必ずしも、異なる径の鋼管を用いる必要はなく、全体に亘って一定の径の鋼管を用いてもよい。
【0036】
また、本実施形態では、環状部120を支持層2の上部に当接させているが、これに限らず、支持層2内に埋設しても同様の効果が得られる。また、本実施形態では、環状部120を設けることとしたが、必ずしも環状にする必要はなく、鋼管から外周方向に突出していればよい。
【符号の説明】
【0037】
1 杭構造
2 支持層 3 地盤
4 削孔攪拌部 5 ソイルセメント
10 圧入装置 20 移動機構
30 台座部 40 案内部
50 起振装置 60 回転装置
70 ロッド 80 掘削ビット
81 軸部 82 攪拌翼
83 掘削翼本体 84 ビット
90 セメントミルク供給装置 95 アタッチメント
100 鋼管杭本体 110 鋼管
111 フランジ 112 ボルト
113 ナット 120 環状部
131 リブプレート 140 地盤改良体
210B,210D 鋼管 211 テーパー
220B、220D 鋼管 221 リブ
230B,240B、310A,310B、310C 鋼管
231 リブプレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤内に形成されたソイルセメントからなる地盤改良体と、
前記地盤改良体内に埋設された鋼管杭本体とを備え、
前記鋼管杭本体は、両端部にフランジが接続された複数の鋼管が、前記フランジ同士を固定することで連結されてなることを特徴とする杭構造。
【請求項2】
請求項1記載の杭構造であって、
前記鋼管杭本体は、その一部に他の鋼管に比べて径が大きな鋼管が連結されていることを特徴とする杭構造。
【請求項3】
請求項2記載の杭構造であって、
前記径の異なる鋼管と、他の鋼管との間には、前記他の鋼管の側から前記径の異なる鋼管に向かって径が次第に大きくなるテーパーを有する鋼管が介在されていることを特徴とする杭構造。
【請求項4】
地盤を削孔攪拌しながらセメントミルクを注入することで地盤内にソイルセメントを形成するソイルセメント形成ステップと、
両端部にフランジが接続された複数の鋼管を、前記フランジ同士を固定することで継ぎ足しながら、前記ソイルセメント内に挿入する鋼管挿入ステップとを備えることを特徴とする鋼管杭の挿入方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−157731(P2011−157731A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20562(P2010−20562)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(507234357)立正工業株式会社 (12)
【Fターム(参考)】