説明

杭穴内へのパイプの埋設方法

【課題】ワイヤー操作だけで、容易に杭穴内にパイプを埋設する。
【解決手段】最下段の既製杭1Aの下端に、滑車14付きのワイヤー折り返し具10を取り付ける。貨車14に係止したワイヤー25の一端25aを中空部3から、他端25bは外面2側からそれぞれ上方に延ばす。杭穴7を掘削し、ワイヤー25の他端25bを、パイプ25を固定したパイプ埋設具20に取り付け、既製杭1Aにパイプ埋設具20を装着する(a)。ワイヤー25と滑車14との係止を維持して、パイプ埋設具20と既製杭1Aを下降する(a)。ワイヤー25の一端25aを保持して、既製杭1Aに、既製杭1B、最上段の既製杭1Cを連結して埋設する(b)。既製杭1A等の埋設後に、ワイヤー25の一端25aを操作して、パイプ埋設具20を所定深さに至らせ、パイプ25の埋設が完了する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基礎杭用の杭穴内に熱交換用のパイプを埋設して、地中の熱を利用するシステムにおいて、杭穴内に効率良くパイプを埋設する杭穴内へのパイプの埋設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地中の熱を利用するために、熱交換用のパイプを埋設して、地上に熱を取り出すシステムにおいて、地中深く掘削して形成する杭穴を利用する提案が多々なされている。例えば、地盤改良用その他の鋼管杭の中に、熱交換用のパイプを埋設する提案があった(特許文献1、2)。しかし、一般に、杭を埋設する杭穴内は掘削用の水や泥土で満たされており、事後的にパイプを埋設する場合には、浮力に抗して埋設する必要があった。
そこで、浮力を考慮して、既製杭の中空部に予め熱交換用のパイプを配置して既製杭に固定しておく提案もなされている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−261535
【特許文献2】特開2004−233031
【特許文献3】特開2008−96063
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常既製杭は10m程度の長さしかなく、例えば、50mの深さに埋設する場合には、既製杭を連結しながら埋設する必要があった。従って、予め既製杭に熱交換用のパイプを固定した場合には、既製杭の施工の際に、既製杭の連結作業に加え、パイプの連結作業を要し、作業が繁雑となる問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこでこの発明では、既製杭の下端部にワイヤー折り返し手段を設けるともに、ワイヤ折り返し手段で折り返したワイヤーの一端を地上で保持し、他端を既製杭に装着して上下に移動できるパイプ埋設手段を使って、熱交換用のパイプを埋設するので、前記問題点を解決した。
【0006】
すなわち、この発明は、以下のようにして、予め掘削された杭穴内に、中空の既製杭と共に熱交換用のパイプを埋設することを特徴とする杭穴内へのパイプの埋設方法である。
(1) 既製杭の下端部に、ワイヤー折り返し手段を取り付ける。
(2) 該ワイヤーの中間部を前記ワイヤー折り返し手段に係止して、前記ワイヤーの他端を地上に配置する。
(3) 前記ワイヤーを前記ワイヤー折り返し手段への係止を維持して、延ばしながら、前記既製杭を所定の方法により杭穴内に挿入する。
(4) 前記既製杭の中空部に挿入でき、あるいは前記既製杭の外周に配置できるパイプ埋設具に、前記パイプの下端部を固定する。
(5) 前記既製杭に前記パイプ埋設具を装着する。
(6) 前記既製杭を埋設したのち、あるいは埋設中、あるいは埋設する前に、前記ワイヤーを引き、前記パイプ埋設具を、前記既製杭に沿って所定深さまで移動させる。
【0007】
また、他の発明は、以下のようにして、予め掘削された杭穴内に、中空の既製杭と共に熱交換用のパイプを埋設することを特徴とする杭穴内へのパイプの埋設方法である。
(1) 最下段の既製杭の下端部に、ワイヤー折り返し手段を取り付ける。
(2) 前記既製杭の中空部に挿入でき、あるいは前記既製杭の外周に配置できるパイプ埋設具に、前記パイプの下端部を固定する。
(3) パイプ埋設手段にワイヤーを取り付け、該ワイヤーの中間部を前記ワイヤー折り返し手段に係止して、前記ワイヤーの他端を地上に配置する。
(4) 最下段の既製杭に前記パイプ埋設具を取り付けし、前記ワイヤーを延ばしながら、前記最下段の既製杭を所定の方法により杭穴内に下降する。
(5) 以下、必要な既製杭又は最上段の既製杭を連結して、連結した既製杭を埋設する。
(6) 前記(5)の各既製杭を埋設しながら、あるいは埋設した後に、前記ワイヤーを引いて、前記パイプ埋設具を既製杭に沿って、所定深さ位置まで移動させる。
【0008】
また、他の発明は、以下のようにして、予め掘削された杭穴内に、中空の既製杭と共に熱交換用のパイプを埋設することを特徴とする杭穴内へのパイプの埋設方法である。
(1) 最下段の既製杭の下端部に、ワイヤー折り返し手段を取り付ける。
(2) 該ワイヤーの中間部を前記ワイヤー折り返し手段に係止して、前記ワイヤーの他端を地上に配置する。
(3) 前記ワイヤーを前記ワイヤー折り返し手段への係止を維持して、延ばしながら、前記最下段の既製杭及び必要な中間の既製杭を所定の方法により杭穴内に挿入する。
(4) 任意の時期に、前記既製杭の中空部に挿入でき、あるいは前記既製杭の外周に配置できるパイプ埋設具に、前記パイプの下端部を固定する。
(5) 最上段の既製杭を連結したならば、前記パイプ埋設具を前記最上段の既製杭に取り付ける。
(6) 前記最上段の既製杭を連結した状態で既製杭全体を埋設したのち、あるいは埋設中、あるいは埋設する前に、前記ワイヤーを引き、前記パイプ埋設具を前記既製杭に沿って、所定深さまで移動させる。
【0009】
また、前記各発明において、パイプ埋設具を、複数のパイプ埋設具片から構成し、各パイプ埋設具片にパイプを固定して、かつ各パイプ埋設具が杭穴内で、上下に所定距離を保つように連結手段で連結することを特徴とする杭穴内へのパイプの埋設方法である。
【発明の効果】
【0010】
既製杭の下端部にワイヤー折り返し手段を設けるともに、ワイヤ折り返し手段で折り返したワイヤーの一端を地上で保持し、他端を既製杭に装着して上下に移動できるパイプ埋設手段を使って、熱交換用のパイプを埋設するので、ワイヤー操作するだけで、既製杭に沿ってワイヤー埋設具を移動でき、杭穴内の所定深さに、自由にパイプを埋設でき、地中の熱を容易に回収できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1はこの発明の実施で使用する第1の実施形態のワイヤー折り返し具で、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図2】図2はこの発明の実施で使用するパイプ埋設具で、(a)は既製杭に装着した状態の縦断面図、(b)は(a)の一部拡大図、(c)は底面図である。
【図3】図3(a)〜(c)はこの発明の第1の実施形態の埋設方法1を説明する概略した縦断面図である。
【図4】図4はこの発明の実施で使用する第での実施形態のワイヤー折り返し具で、(a)は縦断面図、(b)はA−A線における断面図である。
【図5】図5(a)〜(c)は、この発明の第2の実施形態の埋設方法2を説明する概略した縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.第1の実施形態
【0013】
この実施形態は、熱交換用のパイプ3を既製杭1の外周側(外面2の外側)に配置する構成である。
【0014】
(1) コンクリート製の既製杭1の下端板4と略同一平面形状のドーナツ形の基板11を形成する。基板11は、上面11aを既製杭1の下端板4に固定でき、下面11aに軸受け板12、12を固定する。軸受け板12、12は、それぞれ下方に向けて、かつ半径方向に並列して、既製杭1の外周付近下方と、内周(内面2aの内側=中空部3)付近下方に、それぞれ略水平方向の軸13を取り付ける。その軸13、13に、それぞれ、ワイヤーを係止できる滑車14を取り付ける。
軸受け板12、12は、一方の並列した軸受け板12、12と、他方の並列した軸受け板12、12と、2ヶ所に設け、それぞれは、直径対称な位置に配置される。既製杭1の外周(外面2)付近下方と、内周(内面2a)付近下方にそれぞれ軸13、13をそれぞれ取り付けるので、軸受け板12の外周側の縁12aは既製杭1の外面2より放射状に突出し、内周側の縁12bは既製杭1の内面2aよりも中心側に突出する(図2(b)(c))。
以上のようにして、ワイヤー折り返し具(ワイヤー折り返し手段)10を構成する(図2)。なお、前記において、基板11を省略して、既製杭1の下端板4の下面4aに直接に軸受け板12、12を固定することもできる(図示していない)。
【0015】
(2) この実施形態で使用するパイプ埋設具20は、熱交換用のU字状のパイプ30を、既製杭1の外周側(外面2の外側)に配置するためのもの構造である。
使用する既製杭1の外径よりも充分に大きな内径(中央開口23)を有する短い筒状の基体21の内面に、熱交換用のパイプ30、30を固定する。パイプ30は、循環できるようなU字状部30aを形成して折り返してあり、基体21にこのパイプ30を2つ取り付ける。また、基体21にワイヤー25の他端25bを連結するためのワイヤー固定部22、22を設ける。
以上のようにして、パイプ埋設具20を構成する(図1)。ここで、基体21を短い筒状としたので、杭穴充填物の抵抗が少なく最適であるが、パイプ30を固定して、既製杭1を挿通できる中央開口23を有すれば、ドーナツ状、リング状など任意である(図示していない)。
【0016】
(3) 次に、この発明のパイプの埋設方法で第1の方法を説明する。第1の方法は、最下段の既製杭1Aにパイプ埋設具20を装着した状態で、最下段の既製杭1Aを埋設して、順次既製杭1B、1Cを連結する例である。
任意の方法で、杭穴7を掘削する。ただし、杭穴7の側壁をドラムなどで均して、穴壁の崩落を防止する工法が望ましい。
【0017】
(a) 最下段の既製杭1Aの下端板4の下面4aに、ワイヤー折り返し具10の基板11の上面11bを固定する。また、地上32で一端25aを支持したワイヤー25を、最下段の既製杭1Aの上方から中空部3を通し、ワイヤー折り返し具10bの滑車14に係止して折り返して、既製杭1Aの外面2側を通って、既製杭1Aの上方にワイヤー25の他端25bを延ばしておく(図3(a))。
【0018】
(b) ワイヤー25の他端25bをパイプ埋設具20のワイヤー固定部22に固定して、ワイヤー25の一端25aを地上32で保持した状態で、最下段の既製杭1Aの外面2側にパイプ埋設具20の筒状の基体21を通す。
【0019】
(c) ワイヤー25の一端25aを引いて、ワイヤー25と滑車14との係止を維持して、パイプ埋設具20を装着した状態の最下段の既製杭1Aを、通常の方法で杭穴7内を下降する(図3(a)鎖線図示20)。
【0020】
(d) 続いて、ワイヤー25の一端25a側を保持して、最下段の既製杭1Aに、中間の既製杭1B、および最上段の既製杭1Cを連結して、同様に埋設する(図3(b))。この際に、ワイヤー25の一端25aを引いて、ワイヤー25と滑車14の係止を維持する。
【0021】
(e) 連結した既製杭1(既製杭1A、1B、1C)の埋設が完了したならば、ワイヤー25の一端25aを引いて、パイプ埋設具20を既製杭1(1A)の下端部に位置させる(図3(c))。なお、ここで、パイプ30の下端部(U字状部30a)の埋設深さは、任意であり、中間深さとすることもでき、埋設深さは自由に設定できる。既製杭1の上方にパイプ埋設具20を位置させる場合には、ワイヤー25の一端25aを弛めて、ワイヤー25と滑車14の係止を維持しながら、パイプ埋設具20を上昇させる。
【0022】
(f) 既製杭1(既製杭1A、1B、1C)の埋設前に、あるいは、埋設中、埋設後のいずれかに、杭穴7内にセメントミルクなどを充填すれば、セメントミルクなどが固化したならば地中の所定の深さに、熱交換用のパイプ30、30を埋設できる。パイプ30内に所定の液体を循環させれば、地中の埋設深さに応じた熱を地上に回収できる。
【0023】
(g) 前記実施形態において、ワイヤー25をワイヤー折り返し具10に係止した最下段の既製杭1Aを杭穴7内に、挿入した後に、パイプ埋設具20を最下段の既製杭1Aに装着したが、他の手順とすることもできる。例えば、地上32で、最下段の既製杭1Aを杭打ち機に吊って(あるいは地上32に横にして)、ワイヤー25の他端25bを固定したパイプ埋設具20を装着して、ワイヤー25の他端25bをワイヤー折り返し具10の滑車14に係止して、ワイヤーの他端を延ばした状態として、その後に、ワイヤー折り返し具10を装着した最下段の既製杭1Aを杭穴7に挿入する。
【0024】
(3) 次に、この発明のパイプの埋設方法で第2の方法を説明する。第2の方法は、既製杭1A、1B、1Cを連結して既製杭1とした後に、既製杭1にパイプ埋設具20を装着して、パイプ埋設具20を既製杭1の下端部に移動させる例である。第1の方法と同様に、杭穴7を掘削すると共に、杭穴壁をドラムなどで均して、穴壁の崩落を防止する。
【0025】
(a) 前記第1の実施例と同様に、杭穴7内に、最下段の既製杭1Aの下端板4の下面4aに、ワイヤー折り返し具10の基板11の上面11aを固定する。また、地上32で一端25aを支持したワイヤー25を、最下段の既製杭1Aの上方から中空部3を通し、滑車14に係止して折り返して、既製杭1Aの外面2側を通って、既製杭1Aの上方にワイヤー25の他端25bをを延ばしておく。
【0026】
(b) ワイヤー25と滑車14の係止を維持して、最下段の既製杭1Aを通常の方法で下降する。
【0027】
(c) 続いて、ワイヤー25の一端25a側を中間の既製杭1Bの下から中空部3を通って、既製杭1Bの上方に抜いて、地上32で一端25aを他端25bと共に保持する。この状態で、最下段の既製杭1Aに、中間の既製杭1Bを連結して、連結した既製杭1A、1Bを埋設する。
【0028】
(d) 続いて、ワイヤー25の一端25a側を最上段の既製杭1Cの下から中空部3を通って、既製杭1Cの上方に抜いて、地上32で一端25aを他端25bと共に保持する。この状態で、最上段の既製杭1Cを、中間の既製杭1Bに連結する。これと前後して、ワイヤー25の他端25bをパイプ埋設具20のワイヤー固定部22に固定して、ワイヤー25の一端25aを地上に保持した状態で、最上段の既製杭1Cの外面2側にパイプ埋設具20の基体21を通す。
【0029】
(e) 続いて、ワイヤー25の一端25aを引いて、パイプ埋設具20を連結した既製杭1(1A、1B、1C)の下端部に位置させる。なお、ここで、パイプ25の下端部(パイプ25のU字状部25a)の埋設深さは、任意であり、杭穴7の中間深さとすることもでき、埋設深さは自由に設定できる。これらの場合、ワイヤー25を調節するだけで、杭穴7内の任意深さにパイプ埋設具20(パイプ30のU字状部30a)を正確に、位置させることができる。
【0030】
(f) 既製杭1(1A、1B、1C)の埋設前に、あるいは、埋設中、埋設後のいずれかの時期に、杭穴7内にセメントミルクなどを埋設すれば、セメントミルクなどが固化したならば地中の所定の深さで、熱交換用のパイプ30、30が埋設される。パイプ30内に所定の液体を循環させれば、地中の埋設深さに応じた熱を地上に回収できる。
【0031】
(5)他の実施形態
【0032】
(a) 前記実施形態で、既製杭1を、最下段1A、中間1B、最上段1Cとしたが、中間の既製杭1Bは何本あっても良い。また、この方法は、少なくとも2本の既製杭1を連結して埋設する場合に最適であるが、1本の既製杭(単杭)1で実施することもでき、前記各実施形態では、中間の既製杭1Bが無くなり、最上段の既製杭1Cと最下段の既製杭1Aとが同一になる。
【0033】
(b) また、前記実施形態で、パイプ30はU字状のパイプを2組、パイプ埋設具20に取り付けたが、1つあるいは3つ以上とすることもできる(図示していない)。また、パイプ20はU字状に限らず、熱交換に適用できれば、先端閉塞など任意である(図示していない)。
【0034】
(c) また、前記実施形態において、2つ以上のパイプ埋設具20、20を上下に所定間隔を空けて、ワイヤー25などで連結した状態で、最も下側のパイプ埋設具20の下端に、ワイヤー25の他端25bを連結して、既製杭1に両パイプ埋設具20、20を装着することできる(図示していない)。この場合には、異なる高さに、正確にパイプ30を埋設できる。
【0035】
2.第2の実施形態
【0036】
この実施形態は、熱交換用のパイプ30を既製杭1の中空部3に配置する構成である。
【0037】
(1) コンクリート製の既製杭1の下端板4に固定できる帯板状の基板11を形成する。基板11は、上面11aの両端部を既製杭1の下端板4の下面4aに固定でき、上面11aの略中央部に軸受け板12、12を固定する。軸受け板12、12は、それぞれ上方に向けて突設してあり、また軸受け板12、12に、水平方向の軸13を取り付け、その軸13に、それぞれ、ワイヤー25を係止できる滑車14を取り付ける。以上のようにして、ワイヤー折り返し具(ワイヤー折り返し手段)10を構成する(図4)。
【0038】
(2) この実施形態で使用するパイプ埋設具20は、熱交換用のU字状のパイプ30の1つを、既製杭1の中空部3に配置した構造である。
前記実施形態の図1の構造と同じであるが、基体21が、使用する既製杭1の内径よりも充分に小さな内径を有する構造としてある。この筒状の基体21に、熱交換用のパイプ30を固定する。パイプ30は、前記実施形態と同様に、循環できるようなU字状部30aを形成してある。また、基体21にワイヤー25の他端25bを係止するためにワイヤー係止部22を設ける。以上のようにして、パイプ埋設具20を構成する(図1参照、図5(b))。
【0039】
(3) この前記実施形態と同様に、第1の埋設方法をとり、最初に最下段の既製杭1Aの中空部に挿入して、この状態を維持して、最下段の既製杭1Aを杭穴内にパイプ埋設具20と共に埋設し(図3(a)参照)、続いて、既製杭1B、1Cを連結して(図3(b)参照)、最後にワイヤー25を操作して、パイプ埋設具20を、連結した既製杭1の所定深さに納める(図3(c)参照)。
【0040】
(4) また、他の埋設方法も、前記実施形態の第2の埋設方法と同様であり、最初に既製杭1A、1B、1Cを連結した状態で杭穴7内に埋設して(図5(a)(b))、最後に、ワイヤー25を操作して、パイプ埋設装置20を所定深さに位置させる(図5(c))ものである。以下詳細に説明する(図5)。
【0041】
(a) 前記と同様に、最下段の既製杭1Aの下端板4の下面4aに、ワイヤー折り返し具10の基板11の上面11aを固定する。また、地上32で一端25aを支持したワイヤー25を、最下段の既製杭1Aの上方から中空部3を通し、滑車14に係止して折り返して、既製杭1Aの中空部3側を通って、既製杭1Aの上方にワイヤー25の他端25bを延ばしておく(図5(a))。
【0042】
(b) ワイヤー25と滑車14の係止を維持して、最下段の既製杭1Aを通常の方法で下降する。
【0043】
(c) 続いて、ワイヤー25の一端25a側を中間の既製杭1Bの下から中空部3を通って、既製杭1Bの上方に抜いて、地上32で一端25aを保持する。この状態で、最下段の既製杭1Aに中間の既製杭1Bを連結する。
【0044】
(d) 同様に、ワイヤー25を通した最上段の既製杭1Aに、中間の既製杭1Bに連結し、ワイヤー25の両端25a、25bを既製杭1Bの中空部を通して上端から取り出す。同様に、ワイヤー25の両端25a、25bを最上段の既製杭1Cの中空部を通して上端から取り出し、最上段の既製杭1Cを既製杭1Bに連結する(図5(b))。
【0045】
(e) パイプ埋設具20のワイヤー固定部22にワイヤー25の他端25bを固定して、ワイヤー25の一端25aを地上32に保持した状態で、最上段の既製杭1Cの中空部3内にパイプ埋設具20の基体21を通す(図5(b))。
【0046】
(f) 続いて、ワイヤー25の一端25aを引いて、パイプ埋設具20を連結した既製杭1(1A、1B、1C)の下端部に位置させる(図5(c))。なお、ここで、パイプ25(パイプ25のU字状部25a)の埋設深さは、前記同様に、任意であり、中間深さとすることもでき、埋設深さは自由に設定できる。
【0047】
(g) 既製杭1(1A、1B、1C)の埋設前に、あるいは、埋設中、埋設後のいずれかの時期に、杭穴7内にセメントミルクなどを埋設すれば、セメントミルクなどが固化したならば地中の所定の深さで、熱交換用のパイプ30、30が埋設される。パイプ30内に所定の液体を循環させれば、地中の埋設深さに応じた熱を地上に回収できる。
【符号の説明】
【0048】
1、1A、1B、1C 既製杭
2 既製杭の外面
2a 既製杭の内面
3 既製杭の中空部
7 杭穴
10 ワイヤー折り返し具
11 ワイヤー折り返し具の基板
12 ワイヤー折り返し具の軸受け板
13 ワイヤー折り返し具の軸
14 ワイヤー折り返し具の滑車
20 パイプ埋設具
21 パイプ埋設具の基体
22 パイプ埋設具のワイヤー固定部
23 パイプ埋設具の中央開口
30 パイプ
30a パイプのU字状部
32 地上

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のようにして、予め掘削された杭穴内に、中空の既製杭と共に熱交換用のパイプを埋設することを特徴とする杭穴内へのパイプの埋設方法。
(1) 既製杭の下端部に、ワイヤー折り返し手段を取り付ける。
(2) 該ワイヤーの中間部を前記ワイヤー折り返し手段に係止して、前記ワイヤーの他端を地上に配置する。
(3) 前記ワイヤーを前記ワイヤー折り返し手段への係止を維持して、延ばしながら、前記既製杭を所定の方法により杭穴内に挿入する。
(4) 前記既製杭の中空部に挿入でき、あるいは前記既製杭の外周に配置できるパイプ埋設具に、前記パイプの下端部を固定する。
(5) 前記既製杭に前記パイプ埋設具を装着する。
(6) 前記既製杭を埋設したのち、あるいは埋設中、あるいは埋設する前に、前記ワイヤーを引き、前記パイプ埋設具を、前記既製杭に沿って所定深さまで移動させる。
【請求項2】
以下のようにして、予め掘削された杭穴内に、中空の既製杭と共に熱交換用のパイプを埋設することを特徴とする杭穴内へのパイプの埋設方法。
(1) 最下段の既製杭の下端部に、ワイヤー折り返し手段を取り付ける。
(2) 前記既製杭の中空部に挿入でき、あるいは前記既製杭の外周に配置できるパイプ埋設具に、前記パイプの下端部を固定する。
(3) パイプ埋設手段にワイヤーを取り付け、該ワイヤーの中間部を前記ワイヤー折り返し手段に係止して、前記ワイヤーの他端を地上に配置する。
(4) 最下段の既製杭に前記パイプ埋設具を取り付けし、前記ワイヤーを延ばしながら、前記最下段の既製杭を所定の方法により杭穴内に下降する。
(5) 以下、必要な既製杭又は最上段の既製杭を連結して、連結した既製杭を埋設する。
(6) 前記(5)の各既製杭を埋設しながら、あるいは埋設した後に、前記ワイヤーを引いて、前記パイプ埋設具を既製杭に沿って、所定深さ位置まで移動させる。
【請求項3】
以下のようにして、予め掘削された杭穴内に、中空の既製杭と共に熱交換用のパイプを埋設することを特徴とする杭穴内へのパイプの埋設方法。
(1) 最下段の既製杭の下端部に、ワイヤー折り返し手段を取り付ける。
(2) 該ワイヤーの中間部を前記ワイヤー折り返し手段に係止して、前記ワイヤーの他端を地上に配置する。
(3) 前記ワイヤーを前記ワイヤー折り返し手段への係止を維持して、延ばしながら、前記最下段の既製杭及び必要な中間の既製杭を所定の方法により杭穴内に挿入する。
(4) 任意の時期に、前記既製杭の中空部に挿入でき、あるいは前記既製杭の外周に配置できるパイプ埋設具に、前記パイプの下端部を固定する。
(5) 最上段の既製杭を連結したならば、前記パイプ埋設具を前記最上段の既製杭に取り付ける。
(6) 前記最上段の既製杭を連結した状態で既製杭全体を埋設したのち、あるいは埋設中、あるいは埋設する前に、前記ワイヤーを引き、前記パイプ埋設具を前記既製杭に沿って、所定深さまで移動させる。
【請求項4】
パイプ埋設具を、複数のパイプ埋設具片から構成し、各パイプ埋設具片にパイプを固定して、かつ各パイプ埋設具が杭穴内で、上下に所定距離を保つように連結手段で連結することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の杭穴内へのパイプの埋設方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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